説明

成年動物の健康または健全を促進する方法

【課題】年長、老年、肥満、体重超過および腎不全または腎機能障害に罹りやすい、または罹っている動物を含む成年動物の健康または健全性を促進させる方法、成年動物による食物摂取を調整する方法および成年動物による窒素保持を増加させる方法の提供。
【解決手段】全タンパク質の少なくとも約3重量%のリシンを含む食物を動物に与えることによって、窒素保持を増加させる方法を主体とし、更に健康障害が疑われる個体に対しては、腎臓薬又は胃腸改善薬と一緒に食物を与えることを含む方法の説明書を含むキットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス・リファレンス
本出願は、米国仮出願出願番号60/682,978、2005年5月20日提出、に対して優先権を主張し、その開示を本明細書中に参照として採り入れる。
【0002】
本発明は、一般には成年動物の健康(health)または健全(wellness)を促進する方法、特に動物に比較的高い量のリシンを含む食物を与えることによって成年動物の健康または健全を促進する方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
成年動物の食物を開発する場合、該動物の健康または健全を維持するために必要な粗タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミンおよびミネラルの日常食摂取を考慮しなければならない。窒素出納(nitrogen balance)を維持することに加えて、日常食タンパク質は、体内で合成できない具体的必須アミノ酸を持続要求に見合う充分な量供給する。日常食に必要とされる特別な型または源のタンパク質の量は、必須アミノ酸の動物代謝要求に見合うタンパク質の能力に依存する。
【0004】
体重超過、または肥満と考えられる動物の数は、増え続けている。ヒトの約20%が肥満であると考えられ、米国のコンパニオン動物の25%−40%が、体重超過または肥満であると考えられる、と概算される。動物は、その体重が理想体重より10%重ければ超過体重であると考えられ、理想体重より15%重ければ肥満であると考えられる。動物の肋骨をさわることはできるが見ることができない場合、コンパニオン動物は理想体重である。コンパニオン動物の肥満は、真性糖尿病、関節炎、膵炎、肝性リピドーシス、整形外科的疾病、心臓血管疾患、呼吸性の病気、股関節部形成異常、肝臓病、胃腸疾患および皮膚障害の危険性の増加と関わる。飼い主は、時として、ごちそう、カロリーおよび脂質の高い食物ならびに食べ残しでペットを甘やかす。この甘やかしすぎは、動物の健康および健全に逆効果であり、時には短命な体重超過動物を生み出す。飼い主と一緒のペットは、運動するより寝椅子でより多くの時間を過ごし、問題を悪化させる。いくつかの種類のイヌまたはネコは、ペットの体重増加を抑制しようとする勤勉な飼い主の試みにもかかわらず、急速に体重を獲得する特殊な傾向がある。
【0005】
ヒトおよびコンパニオン動物を、規定食スキームおよび運動療法で激しくせめて、動物の体重調整を助ける。減カロリー食、低脂質食、不溶性繊維を増やした食物、低炭水化物/高タンパク質食および体重調整に注目したその他の食物の開発に前進が認められる。なお、統計学は、改良の機会が残っており、動物の健康または健全を促進する技術のさらなる進歩が必要であることを示している。
【0006】
高蛋白質、低炭水化物食は、肥満または体重超過の動物の体重損失を助けることができる人気の規定食である。しかしながら、過剰な規定食タンパク質は、特に年長動物および腎疾患のある動物にとって、安全でないことがある。例えば、3匹のかなりの年のネコの内の一匹は、慢性腎不全で早めに死ぬため、慢性腎不全は、ネコ死亡の主な原因の一つとなっている。慢性腎不全は、特に7歳の年齢を超えたネコに影響を与え、腎臓の領域が徐々に損傷を受けた場合に起こり、死に至る。治療せずに放置すると、腎機能が連続的に下降し、身体が老廃物を除外し、電解質を調整し、水を保持することが不可能になる。このことは、血流の脱水および老廃物の増加を導き、従って動物は害される。規定食タンパク質を増やすと、尿による窒素損失が増加し、すでにストレスを受けている腎臓にさらなる緊張を与え、さらなる損傷の潜在的原因となる。
【0007】
それ故、特に年長動物、老年動物、および腎疾患を持つ動物にとっては、動物の健康または健全を促進する食物が必要である。またそのような食物は、窒素排出を減少させねばならず、その結果食物は動物に安全である。
【発明の概要】
【0008】
それ故、本発明の目的は、成年動物の健康または健全を促進する方法を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、成年動物による食物摂取を調整する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、成年動物による窒素保持を増加する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、成年動物の健康または健全の促進に有用な食物、化合物および装置の組み合わせを含むキットの形で製品を提供することである。
【0012】
これらおよびその他の目的は、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を動物に与えることによって成年動物の健康または健全を促進する新規の方法を用いることで達成される。成年動物の健康または健全の促進に有効な食物、化合物、および装置の組み合わせを含むキットもまた、提供される。
【0013】
本発明のその他の、およびさらなる目的、特徴ならびに長所は、当業者らには容易に明らかになるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0014】
定義
「成年動物(adult animal)」という用語は、年長および老年の動物を含む、少年期の成長および発育を終えた後の、任意の年齢の動物を意味する。例えば、ヒトで「成年」とは、典型的には、約18歳から生命の残り期間を意味し、ネコおよびイヌで「成年」とは、典型的には、約1歳からその生命の残り期間を意味する。
【0015】
「動物」という用語は、ヒト、またはトリ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、hicrine、ネズミ、ヒツジおよびブタを含むその他の動物を意味する。
【0016】
「食物(food)」という用語は、動物による消費に適した組成物を意味し、限定するものではないが、乾燥食物組成物、湿潤食物組成物および液体食物組成物を含む。
【0017】
「老年動物(geriatric animal)」という用語は、外面的な加齢の徴候を示す動物を意味する。典型的には、ヒトでは75歳より上であり、イヌまたはネコでは、11歳より上である。
【0018】
「動物の健康(health)」という用語は、動物が病気でなく虚弱でないことを意味する。
【0019】
「一緒に(同時に)」という用語は、本発明の食物および腎臓薬またはその他の化合物を、(1)食物組成物中に一緒に;または(2)おおよそ同時または定期的に、同一または異なる投与経路を用いて、同一または異なる頻度で別々に;動物に投与することを意味する。「定期的に」は、腎臓薬を具体的薬剤で受け入れうる投薬スケジュールで投与すること、および食物を特定の動物に適当な様に日常的に動物に与えること、を意味する。「おおよそ同時」とは、一般的に、食物および腎薬を同時または互いに約72時間以内に投与することを意味する。「一緒に(同時に)」は、具体的には、腎薬を規定周期で投与し、組成物を不定期に投与する投与スキームを含む。
【0020】
「リシン:MEの比率」という用語は、食物のME含量と比較した食物中のリシンの量を意味する。比率は、任意の適当な単位、例えばg/Mcalまたはg/MJで表すことができる。他に示さない限り、MEに対するリシンの比率を、本明細書中では、g/Mcalで表す。
【0021】
食物中の「代謝可能エネルギー(metabolizable energy)(ME)」という用語は、食物の消費によって動物が入手できるエネルギーであって、糞便、尿および可燃性ガスで排出されるエネルギーを引いた後のエネルギーを意味する。
【0022】
「窒素保持(nitrogen retention)」という用語は、動物によって消費された窒素と動物によって排出された窒素の差を意味する。
【0023】
「タンパク質」という用語は、実質上アミノ酸からなる分子を意味する。
【0024】
「腎臓薬(renal drug)」という用語は、腎不全または腎機能障害の予防または治療に有効な任意の化合物、組成物または薬剤を意味する。
【0025】
「年長動物(senior animal)」という用語は、加齢関連病の危険が上昇する年齢の動物を意味するが、加齢による明らかな身体的または行動的特徴を有する場合もあるが、有していない場合もある。典型的には、年長のヒトは、人種に依存するが、約60から約75歳およびそれより年長であり、年長のイヌは、種に依存して、約5から約11歳であり、年長のネコは、約7から約11歳である。
【0026】
「単一パッケージ」という用語は、キットの成分が物理的に1以上の容器に入れられており、製造、分配、販売または使用のための単位が考慮されていることを意味する。容器には、限定するのもではないが、袋、箱、瓶、収縮包装パッケージ、ステープルで留められた、あるいは別の方法で添付された成分またはその組み合わせが含まれる。単一パッケージは、製造、分配、販売または使用のための単位を考慮されるような、物理的に関連する個々の食物組成物の容器であって良い。
【0027】
食物中の「全タンパク質」という用語は、全粗タンパク質(crude protein)(CP)を意味する。CPは、典型的には、食物中の全窒素量を定量することにより測定され、例えばg/kg、次にその数に換算係数を掛ける。食物の主なタンパク質源がトウモロコシ、卵あるいは肉またはいくつかのタンパク質源の組み合わせである場合、適当な換算係数は、6.25である。AAFCO(American Association of Feed Control Officials)のガイドラインは、乾燥物基準で、ドッグフードでは最低で18%の全タンパク質、キャットフード中では最低で26%の総タンパク質を要求している。(AAFCO(2005)公式発表)。
【0028】
「実質的パッケージ」という用語は、1以上の物理的または実質的キット成分についての説明書が使用者にその他の成分を得る方法を説明することによって、例えば1つの袋の中に1つの成分と、使用者にウェッブサイトを見る、記録されたメッセージにと接触する、視覚化されたメッセージを見る、またはケアギバー(caregiver)あるいはインストラクターと接触してキットを使用する方法についての使用説明書を得ることを教える説明書を含むことによって、キットの成分が関連していることを意味する。
【0029】
「動物の健全(wellness of an animal)」という用語は、動物が単に病気または虚弱でないだけでなく、動物が身体的、精神的および社会的に完全に良好である状態を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明
本発明は、成年動物の健康または健全を促進する方法を提供する。該方法は、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を動物に与えることを含む。該方法は、年長動物、老年動物、肥満動物、体重超過動物、および腎不全または腎機能障害に罹りやすい、または罹っていることが分かった動物を含む任意の年齢または種類の成年動物の健康または健全の促進に有効である。
【0031】
もう一つの態様では、本発明は、成年動物による食物摂取を調整する方法を提供する。該方法は、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量のリシンを含む食物を動物に与えることを含む。該方法は、特に体重超過または肥満の動物および肥満傾向を有する動物にとって、動物の体重の調整に特に有効である。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、成年動物による窒素保持を増加させる方法を提供する。該方法は、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を動物に与えることを含む。過剰な窒素排泄は、特に年長動物、老年動物および腎不全または腎機能障害を持つ動物の腎臓に一般に耐え難い負担であるので、そのような動物では窒素保持の増加が望ましい。
【0033】
本発明に有効なリシンは、任意の源、例えば、食物、タンパク質、およびアミノ酸またはその誘導体の形での補足リシン(supplemental lysine)から得られる。タンパク質内にある20程度のアミノ酸の内のいくつかは、身体の必要に見合う充分量を体内で合成できるが、その他は合成できず、食餌として与えられねばならない。食餌に必要とされるそれらは必須アミノ酸として知られており;ヒトは8必須アミノ酸を必要とし、ネコは11の必須アミノ酸を必要とし、さらに、イヌは、10の必須アミノ酸を必要とする。リシンは、バランスのとれた栄養のために食餌中に必要とされる必須アミノ酸である。リシンは、動物が成長するために食餌中に必要であり、一般に成長および発育における制限アミノ酸である。NRC(1985)(上記引用)に従って、イヌの成長には、食物中に乾燥物質ベースで0.49%のリシンを必要とする。AAFCO(1999)(上記引用)では、イヌの成長には、ドッグフード中に乾燥物質ベースで0.77%のリシンを要求している。ネコの成長では、NRC(1985)は、キャットフード中乾燥物質ベースで0.8%のリシンを示唆しているが、AAFCOは1.2%を要求している。しかしながら、ひとたび動物がその成長を完成させたならば、工業的標準は、食餌中のリシン要求レベルを実質上低くしている。NRC(1995)は、成年動物では、ドッグフード中に乾燥物質ベースで0.24%のリシンを要求しているが、これは、イヌの成長に要求される値の半分より小さい。AAFCOは、成年イヌでは0.63%のリシン、成年ネコでは、0.83%のリシンを要求している。これらの値は、維持に要求される最少のレベルである。リシンの必要性は、典型的には、成長動物でより、成年動物でその重要性についてほとんど試験されておらず、健康または健全を促進するために一般的に最適化されたこともなかった。
【0034】
表1は、食餌が全食物中の%として必要とされる最少のリシン(イヌで0.70%、ネコで0.80%)を含んでいると仮定した場合、ネコおよびイヌの食餌中で、リシンと比較した比率で表した理想的アミノ酸プロフィールを示している。該比率は、子犬および子猫での研究から概算された。BakerおよびCzarnecki-Maulden(1991)、Comparative Nutrition of Cats and Dogs,11,239-263。
【0035】
表1.ネコおよびイヌでの(リシンに対する)理想的アミノ酸比率
【0036】
【表1】

【0037】
食物中のリシンの量は、食物および動物の種類ならびに性質、例えば、動物の年齢、体重、包括的健康状態および食餌、に基づき当業者らによって決定される。約3%より大きい任意の量が受け入れ可能であるが、典型的なリシンの量は、約3%から約15%、または約3%から約9%、または約3%から約6%の範囲である。様々な実施態様では、リシンの量は、全タンパク質の少なくとも約3.5重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約4.5重量%、または少なくとも約5重量%である。
【0038】
一般に、本発明による有効な食物のリシン:MEの比率は、少なくとも約1.5:1である。1つの実施態様では、本発明による有効なドッグフードのリシン:MEの比率は、少なくとも約1.7:1である。他の実施態様では、ドッグフードのリシン:MEの比率は、少なくとも約2:1、約1.7:1から約5:1、または約2:1から約5:1である。もう一つの実施態様では、本発明による有効なキャットフードのリシン:MEの比率は、少なくとも約3.2:1である。他の実施態様では、キャットフードのリシン:MEの比率は、少なくとも約5:1、約3.2:1からから約10:1、または約5:1から約10:1である。熟練者らは、様々な動物についての望ましい比率を計算することができる。
【0039】
本発明に有効な食物は、動物によって食用になる任意の共通の食物であることができる。食物の調合に用いられる共通のタンパク質源には、肉および魚、乳製品および卵生産品、野菜ならびにパン酵母が含まれる。そのような食餌タンパク質源は、食物内で用いる場合、エネルギーならびに組織、酵素、アルブミン、ホルモンおよびその他の窒素含有化合物の合成に必要なアミノ酸を提供する。
【0040】
本発明の食物には、本明細書中に示した量で構成要素としてのリシンを含む、缶入りの湿性食物(moist food)および押し出し成形された乾燥食物が含まれる。食物中にそのようなレベルでリシンを含有することから、どのような動物も利益を得ることができる。1つの実施態様では、食物は、主要な(少なくとも約25重量%、例えば少なくとも約50重量%の)構成成分が筋肉組織および/またはあらを含む動物(例えば、哺乳動物、鳥、魚または海産物)のタンパク質組織から誘導され、所望により穀物(cereal grains)のような炭水化物源を含む、食物である。
【0041】
実質上タンパク質源のすべてがリシンを含む。典型的タンパク質源を食物内に調合した場合の、この天然に存在するリシンが、リシンの基準量となる。本明細書中では、補足リシンは、基準量を上回って食物に加えられる任意のリシンである。補足リシンを、リシン自体として、またはより典型的には、カゼイン、ホエー、魚肉、鶏および食用鳥類副産物、乾燥全卵、または大豆粉のようなリシンリッチタンパク質の形で加えることができる。補足リシンは、食物を通して多少均一に分配することができ、また、厚切り肉または乾燥キブルのような食物片の表面に存在させることができる。
【0042】
補足リシンが食物片表面にある場合、全体として食物中の総量が全タンパク質の%またはリシン:MEの比率として本明細書中に示した量内である限りにおいて、局部濃度は本発明の濃度を超えることができる。
【0043】
本発明による有効な食物の製造では、食物の構成成分を調整し、その結果、基準リシンおよび補足リシンが一緒になって(または全リシンが)全タンパク質の所望の%およびリシン:MEの比率で食物中に存在する。補足リシンを、例えば、組成物のその他の成分を混合中および/またはその後のような調合中に食物内に取り込むことができる。組成物内へのこれら成分の分配は、標準混合法を含む任意の慣用の方法で行うことができる。
【0044】
本発明の方法に有効な食物を、慣用のペットフードプロセスを用いて、湿潤または容器入り(例えば、缶入りまたは袋入り)の形で製造できる。1つの予測される実施態様では、基礎動物(例えば、哺乳動物、鳥、魚および/または海産物)タンパク質組織を、例えば、動物脂肉および野菜油、穀物、その他の栄養バランス成分および特別な目的の付加物(例えば、ビタミンおよびミネラル混合物、無機塩、セルロースおよびビートパルプ、充填剤等)を含むその他の成分と混合する。プロセシングに充分な水もまた加えられる。典型的には、これら成分を、成分混合中の加熱に適した容器内で混合する。混合物の加熱を、例えば、上記の直接注入によって、または熱交換器に合う容器を用いることによって、のような任意の適当な様式で行うことができる。これら成分の最終付加物を加えた後、混合物を調理前段階で最大約100℃の温度に加熱する。より高い温度も受け入れ可能であるが、その他のプロセシング補助の使用なしには商業的に実行できない。適当な温度に加熱した場合、材料は典型的には濃厚な液体の形である。濃厚液体を、缶、ジャーまたは袋等のような適当な容器内に満たす。フタを適用し、容器を密封する。密封容器をその後内容物を無菌化するように設計された慣用の装置内に置く。これは、少なくとも約110℃の温度で適当な時間加熱することによって通常成し遂げられ、その時間は、例えば、用いられる温度および組成物に依存する。生成物もまた、無菌化容器内に包装する前に内容物を商業的無菌化まで加熱する無菌プロセスによって製造できる。調理前段階前、その間または後に、補足リシンを容器に入れた食物生成物に加えることができる。
【0045】
本発明の方法に有効な食物を、慣用の方法を用いて乾燥形で製造できる。1つの予想される実施態様では、例えば動物タンパク質源、植物タンパク質源、穀物等を含む乾燥成分を、すりつぶし、一緒に混合する。脂肉、油、動物タンパク質源、ミネラル、水等を含む水分を含むまたは液体の成分をその後に加え、乾燥混合物と混合する。次に、混合物をキブルまたは類似の乾燥片に加工処理する。場合によっては、乾燥および湿潤成分の混合物を高圧高温で機械にかけ、小さい口から押し出し、回転ナイフによってキブルに切断する、押し出し成形プロセスを用いて、キブルを成形する。次に、湿潤キブルを乾燥させ、所望により、例えば香味料、脂肉、脂および粉末等を含むことができる1以上の局所コーティングによって被覆する。また、キブルを押し出し成形よりむしろパン焼き方法を用いて生パンから作ることもでき、その場合、生パンを乾燥加熱処理する前に型に入れる。また、キブルを、小さく丸めた食物マトリックスから作ることもできる。
【0046】
補足リシンを、押し出し成形前に上記混合物に加えることによって、または局所コーティングの成分として補足リシンで押し出し成形したキブルまたはペレットをコーティングすることによって、取り込むことができる。例えば、補足リシンを乾燥プロセシングライン内の液体に、プレコンディショナー組成物に、またはコーティング組成物に加えることができる。所望により、補足リシンを食物系内にカプセル化することもできる。例えば、補足リシンをパラタント(palatant)加工処理中の任意の時間に(消化物または肉汁培地のような)パラタントに加えることができる。
【0047】
本発明の方法は、ヒト、ならびにヒト以外の霊長類(例えば、モンキー、チンパンジー等)、コンパニオン動物(例えばイヌ、ネコ、ウマ等)、食用動物(例えば、ヤギ、鶏、ヒツジ、ブタ、ウシ等)、研究室用動物(例えばマウス、ラット等)、トリ(例えばカナリア、オウム等のような飼育鳥類、およびニワトリ、アヒル、七面鳥等のような商業用鳥類)、齧歯類(例えば、ハムスター、ギアナブタ、あれちネズミ、ウサギ、ヤマアラシ、フェレット、チンチラ等)、ならびに野生、外来および動物園の動物(例えばオオカミ、クマ、シカ等)のようなヒト以外の動物を含む、様々な動物の健康または健全を促進するために有用である。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、成年動物の健康または健全を促進する方法を提供する。該方法は、健康または健全を促進する量の腎薬および全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を一緒に与えることを含む。本発明に有効な腎薬は、腎不全または腎機能障害との戦いに有効であることが熟練者に既知の任意の腎薬である。望ましい薬剤には、米国特許(USPN)第6,589,748号に記載されている化合物のようなリソゾーム-活性化化合物、USPN第6,784,159号に記載のようなトリテルペンサポニン、USPN第6,599,876号および米国特許出願番号(US Patent Application Number)(USPAN)20020028762に記載されているようなアクチビン阻害剤、USPN第6,492,325号に記載されているようなインテグリンレセプター阻害剤およびTGF阻害剤、USPN第6,458,767号に記載されているようなTGF活性化阻害剤、ならびにUSPN第5,723,441号に記載のようなインスリン様増殖因子(insulin-like growth factor)(IGF)が含まれる。大多数の好ましい薬剤には、変換酵素(ACE)阻害剤、アンドロゲン、エリスロポイエチンおよびカルシトリオールが含まれる。アンギオテンシンおよびエンドテリンは、進行性腎臓損傷の一因となる特定の腎臓内影響を持つ有力な全身性血管収縮薬である。様々な腎薬を用いて、該血管収縮薬の影響を和らげる。アンギオテンシン変換酵素阻害剤(エナラプリル-EnacardおよびVasotec、ベナゼプリル-Lotensin)は、タンパク尿の重傷度の軽減および腎不全の進行の緩慢化と関連する。ACE阻害剤エナラプリル(Enacard、Vasotec)は、糸球体および全身性高血圧、タンパク尿ならびに糸球体および管状間隙性損傷を制限する。アンギオテンシン遮断剤およびエンドテリン阻害剤は、腎臓病に有益な影響を有する。バソペプチド阻害剤は、ACEと中性エンドペプチダーゼの両方を阻害する薬剤であり、該酵素は、ナトリウム排泄増加性ペプチド、アドレノメヂュリン(adrenomedullin)およびブラジキニンの崩壊に含まれる。これらの腎薬は、アンギオテンシンIIの生成を減少し、血管拡張剤の蓄積を増加する。全身性高血圧を持つ腎臓患者は、アムロジピン(amlodipine)(Norvasc)のようなカルシウムチャンネル遮断剤に応答する。尿毒症性胃炎(食道炎、胃炎、胃潰瘍および出血)は、H2レセプターアンタゴニスト(シネチジン-Tagamet、ファモチジン-Pepcid)、プロトンポンプ遮断剤(オメプラゾール(omeprazole)-Prilosec)、細胞保護剤(cytoprotective agents)(ミソプロストー
ル-cytotec)、および催吐性中枢に影響を与える抗嘔吐作用薬(クロルプロマジン-Thorazine、パークロルペラジン-Compazine、メトクロプラミド-Reglan)で治療される。アンドロゲンまたは同化促進ステロイド(Stanozol、Winstrol-V)を、慢性腎不全と関連する貧血の治療に用いる。組み換えヒト(またはその他の種)エリトロポイエチン(Epoetin α、Epogem、Procrit)を用いたホルモン置換治療は、腎不全と関連する重症の貧血で選択される治療である。ホスフェート結合剤(水酸化アルミニウム-Amphojel、炭酸アルミニウム-Basaljel)を用いて、高リン酸血症および続発性腎臓上皮小体亢進症を調整する。カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール(Rocaltrol)およびビタミンD類似体は、上皮小体ホルモン(parathyroid hormone)(PTH)のカルシウム-独立抑制の原因となる。リン酸結合剤、カルシトリオールおよび関連化合物の投与は、慢性腎不全に支持され、PTHを原因とする多系統毒性を防ぐ。カリウム枯渇および低カリウム血症は、慢性腎不全のネコに共通する。グルコン酸カリウムの形でのカリウムの経口補足(Tumil K、RenaKare,Kolyum)またはクエン酸塩の形でのそれを推薦する。全体論としての腎臓薬および組成物もまた、本発明に含まれる。好ましい全体論的腎臓薬には、クランベリー抽出物およびマンノースが含まれる。クランベリー抽出物を、腎機能の長期減退の共通危険因子である尿路感染の有病率を減少するために、試みる。腎臓薬には、典型的な小分子薬剤、小分子タンパク質、巨大分子タンパク質および分子ならびに抗体が含まれ、さらに、腎臓病を防ぐように設計されたワクチンも含まれる。抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗原と反応し、天然抗体と同一の生体機能を果たすその他の抗原結合抗体サブ配列のような免疫グロブリンフラグメントが含まれる。腎臓薬を、腎臓薬に適当な任意の方法を用いて、腎臓病を治療または予防するに充分な熟練者らに既知の量で患者に投与する。
【0049】
もう一つの態様では、本発明はまた、成年動物の健康または健全を促進する方法をも提供する。方法は、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスからなるグループから選択された、健康または健全を促進する量の胃腸管改善薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%のリシンを含む食物を一緒に与えることを含む。プロバイオティクスは、摂取した場合に、特定の医療を必要とする健康状態の予防および治療に有益な効果を持つ生きた微生物である。プロバイオティクスは、コロニー形成耐性として知られる現象を通して生体効果を及ぼすと信じられている。プロバイオティクスは、元々存在する嫌気性微生物叢が消化管内の潜在的に有害な(たいてい好気性の)微生物の濃度を制限するプロセスを容易にする。酵素を供給する、または胃腸管内の酵素活性に影響を及ぼすような、その他の作用様式もまた、プロバイオティクスに帰するその他の機能のいくつかを説明する。プレバイオティクスは、結腸内の細菌の増殖および/または活性を選択的に刺激することによって、宿主の健康に有利に影響する不消化の食物成分である。プレバイオティック、フルクトオリゴサッカライド(FOS)は、小麦、タマネギ、バナナ、蜂蜜、ニンニクおよびリーキのような多くの食物内に天然に認められる。また、FOSを、チコリの根から単離することができ、またスクロースから酵素を用いて合成することもできる。結腸内でのFOS発酵は、結腸内でのビフィドバクテリウム属の数の増加、カルシウム吸収の増加、糞重量の増加、胃腸通過時間の短縮および血液油脂レベルのできる限りの低下を含む、多数の生理学的影響を結果としてもたらす。ビフィドバクテリアの増加は、潜在的病原体を阻害する化合物を生成することによって、血中アンモニアレベルを減少させることによって、さらにビタミンおよび消化酵素を生成することによって、人の健康に有益であると仮定される。ラクトバシリ(Lactobacilli)およびビフィドバクテリア(Bifidobacteria)のようなプロバイオティック細菌は、白血球細胞の抗体生成および食細胞(捕食または殺す)活性の強化を導く、腸内微生物バランスを改善することによって免疫応答に好影響を与えると信じられている。ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)は、年輩での細胞内免疫のいくつかの態様を強化するために有効なプロバイオティックダイエタリーサプリメントであることができる。プロバイオティクスは、全身の細胞免疫応答を強化し、他の点では健康な大人の天然の免疫を押し上げるダイエタリーサプリメントとして有効であって良い。プロバイオティクスは、多くの型の細菌を含むが、一般的には、細菌の4つの属;Lactobacillus acidophillus 、Bifidobacteria、 LactococcusおよびPediococcus;から選択される。動物に投与されるプロバイオティクスおよびプレバイオティクスの量は、プレバイオティックおよびプロバイオティックの種類および性質ならびに動物の種類および性質;例えば、動物の年齢、体重、一般的健康状態、性別、微生物枯渇の範囲、有害細菌の存在および食餌;を基本として熟練者らによって決定される。一般的に、プロバイオティクスを、腸内微生物叢の健康維持のために、1日当たり約10億から約200億のコロニー形成単位(colony forming units)(CFUs)、好ましくは1日当たり約50億から約100億の生きた細菌、の量で動物に投与する。一般的には、プレバイオティクスを、消化管内の健康な微生物叢を正に刺激する充分な量投与し、これらの「良好な」細菌を再生産する原因とする。典型的な量は、一供給当たり約1から約10g、または動物に推奨される毎日の飲食繊維の約5%から約40%である。プロバイオティクスおよびプレバイオティクスを、任意の適当な手段によって組成物の部分として作ることができる。一般的に、薬剤は組成物と混合される、または、組成物表面に、例えば振りかけることによって、適用される。薬剤がキットの部分である場合、薬剤を、その他の材料と、またはそれら自身のパッケージ内で混合できる。
【0050】
もう一つの態様では、本発明は、成年動物の健康または健全を促進する情報または説明を伝える手段、成年動物による食物摂取を調整する手段、成年動物による窒素保持を増加させる手段、健康または健全を促進する量の腎臓薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物とを合わせて与える手段、および腎臓機能を測定し腎不全または腎機能障害の存在または重症度を評価する腎臓診断装置を用いる手段を提供する。伝達手段は、該情報および説明を含む、書類、デジタル保存媒体、光学保存媒体、音声表示、または視覚ディスプレーを含む。好ましくは、伝達は、該情報または説明を含む、表示されたウェッブサイトまたはパンフレット、製品ラベル、パッケージ挿入、広告または視覚表示である。有効な情報は、少なくとも1つの(1)リシン、食物および腎臓薬を合わせて食物として与える方法および技術、(2)腎臓診断装置を使用するための情報、(3)もしあるならば、他の薬剤と組み合わせて本発明を用いることを原因とする副作用についての詳細、および(4)患者が本発明およびその使用について質問を持った場合に使用するための患者との接触情報;を含む。有用な教えには、服用量、投与の量および頻度、ならびに投与経路が含まれる。伝達手段は、本発明を使用するための教え、および本発明を動物に作るまたは餌として与えるための承認された方法の伝達に有効である。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、単一パッケージ内にリシンと食物の個別の容器を含むキットを提供し、該容器内には、リシンおよび食物が、合わせた場合に全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を作り出すために充分な量で存在する。その他の実施態様では、キットは、1以上の腎臓薬をさらに含む。典型的には、腎臓薬は、分かれたパッケージ内、または1つの別のキット成分を含むパッケージ内にある。その他の実施態様では、キットは、さらに、動物の腎機能を測定し腎不全または腎機能障害の存在および重症度を評価するための1以上の腎臓診断装置を含む。腎臓診断装置は、典型的には、別のパッケージ内にあるが、別のキット成分の1つを含むパッケージ内にあっても良い。本発明で有効な腎臓診断装置には、動物の腎機能の測定、および腎不全または腎機能障害の存在および重症度の評価に適当な任意の装置が含まれる。好ましい診断方法には、USPN第6,589,748号、USPN第6,447,989号、およびUSPAN20050026225に記載されたようなアルブミンの尿アッセイを含む、血清尿素窒素(serum urea nitrogen)(SUN)、クレアチニンレベル、尿比重、およびDNA損傷が含まれる。診断方法は、(1)高血液尿素窒素濃度、高血清クレアチニン濃度、高リン酸血、高カリウム血または低カリウム血、代謝性アシドーシスおよび低アルブミン血のような、血液マーカー、(2)損傷した尿濃縮能力、蛋白尿、円柱尿、腎性血尿、不適切な尿pH、不適切な尿グルコース濃度およびシスチン尿のような、尿マーカー、(3)大きさ、形、位置および密度のような、物理的、映像および診断用マーカー、(4)WO2004113570A2に開示されているような,シングルヌクレオチド多形性(single nucleotide polymorphisms)(SNPs)、(5)腎不全または腎機能障害を示す遺伝プロフィール、(6)腎不全または腎機能障害を示す蛋白プロフィール(proteomic profiles)、および(7)腎不全または腎機能障害を示す代謝プロフィール;を含む、既知の技術を基礎にしている。そのような方法を基礎としたこれらの診断方法および装置(例えば、テストストリップ、ELISAアッセイ、コメットアッセイ(comet assays))は、科学者およびヘルスエア専門家のような熟練者が通常入手でき、その多く、例えば尿中の少量のアルブミン(“microalbuminuria)を検出する Heska Corporation(Fort Collins Colorado)のE.R.D-Health Screen Urine Tests、は消費者にも入手できる。さらなる実施態様では、キットはさらに、成年動物の健康または健全を促進すること、成年動物による食物摂取を調整すること、成年動物による窒素保持を増加させること、健康または健全を促進する量の腎薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を一緒に与えること、さらに、腎臓機能を測定して腎不全または腎機能障害の存在または重症度を評価するための腎臓診断用装置を用いることに関する情報または説明を伝達する少なくとも1つの手段を含む。その他の実施態様では、キットはさらに、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスからなるグループから選択される、1以上の胃腸管改善薬を含む。
【0052】
さらなる態様では、本発明は、単一パッケージ内に個別の容器を含む、または実質的パッケージ内に個別の容器を含むキットを提供し、適当には、該キットは、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物、ならびに、少なくとも1つの(1)腎臓薬、(2)腎臓用装置、(3)成年動物の健康または健全を促進すること、成年動物による食物摂取を調節すること、成年動物による窒素保持を増加させること、健康および健全を促進する量の腎臓薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシン含む食物を一緒に与えること、および腎機能を測定し腎不全または腎機能障害の存在および重症度を評価するための腎臓診断装置を用いることに関する情報または説明を伝達する1以上の手段、および(4)プロバイオティクスおよびプレバイオティクスからなるグループより選択された胃腸管改善薬;を含む。
【0053】
キット成分は、典型的には、キット成分の様式に適当な様に、別々のパッケージ内、1つの別のキット成分を持つパッケージ内あるいはパッケージ上、または、実質的パッケージ内、にある。キットが実質的パッケージを含む場合、キットは、1以上の他の物理的キット成分を組み合わせた実質的包囲内の使用説明書に限定される。
【0054】
本発明はさらに、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物の製造工程を提供する。工程は、全タンパク質の少なくとも約3重量%を有する食物を生成するに充分な量で食物に補足リシンを付加することを含む。該方法は、例えば、リシンを食物中に混合することによる、リシンを食物上に粉末で、あるいは食物上へのリシンの噴霧溶液で、適用することによる;熟練者に既知の方法を用いて成し遂げることができる。また、本発明は、工程によって作り出された製造物を提供する。また、本発明は、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を提供する。食物のリシン:MEの比率は、少なくとも約1.5:1である。
【0055】
該方法、キット、プロセスおよび組成物は、(1)成年動物の健康または健全の促進、(2)成年動物による食物摂取の調整、または(3)成年動物による窒素保持の増加、に有効である。該方法、キット、プロセスおよび組成物は、年長動物、老年の動物、肥満動物、肥満傾向にある動物、および腎不全または腎機能障害に罹りやすいまたは罹っていることが分かった動物に特に有益である。
【実施例】
【0056】
さらに、本発明を、その好ましい実施態様の以下の実施例によって説明できるが、該実施例は、説明の目的のためだけに含まれており、特に指摘しない限り発明の範囲を制限するものではない。
【0057】
実施例1
42匹のネコを7つのグループに分け、個々のグループに7種類の食餌の内の1つを与えた。個々の食物の組成を表2に示す。歴史的データから誘導された栄養物の計算値を、組成物の個々の成分によって提供された栄養物の量を加えることにより、計算する。栄養物測定値は、最終組成物の分析によって定量されたような組成物内の栄養物の量である。ネコに、21日間毎日、規定食を与え、摂取の測定を、それぞれの食事後24時間に行った。結果を表2に示す。最も高いリシン:ME比率の計算値および測定値を有する2つの食餌、食物6および7は、kg体重当たり最も低い毎日の平均摂取を示した。
【0058】
表2.キャットフードの栄養値および摂取量
【0059】
【表2】

【0060】
実施例2
8匹のイヌを5つのグループに分け、それぞれのグループに5種類の食餌の内の1つを与えた。個々の食餌の組成を下の表3に示す。イヌに、14日間毎日、規定食を与えた。結果を表3に示す。食物5は、最大のリシン:MEの比率(ME計算値またはME測定値)を持ち、また、窒素保持はより大きかった。
【0061】
表3.ドッグフード規定食の栄養値および窒素保持
【0062】
【表3】

【0063】
表2および3に示すように、結果は、動物にリシンを比較的多く含む食餌を与えると、動物の健康または健全が促進されることを示している。
【0064】
本発明は、本明細書中に記載した特定の方法論、プロトコールおよび薬剤に限定されるものではない。なぜなら、それらは変更して良いものであるからである。さらに、本明細書中に用いた用語は、特定の実施態様について述べる目的のためだけのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書および特許請求の範囲中、名詞は単数形が使われているが、文脈から明らかに複数でないことが分からない限りにおいて、複数を含む。言葉「含む」は、排他的と言うよりむしろ包括的に解釈されるべきである。
【0065】
別に定義されない限りにおいて、本明細書中に用いられているすべての技術的化学的用語および任意の頭字語は、本発明の分野の当業者によって一般に理解されている意味と同一の意味を持つ。本明細書中に記載された方法および原料と類似または同等の任意の方法および原料を本発明の実行に用いることができるが、本明細書中には、好ましい方法、装置および原料を記載している。
【0066】
すべての特許、特許出願、および本明細書中に特記した文献を、本発明で用いても良いその中に報告された化合物および方法論を評し開示する目的のために、法律の許す範囲で本明細書中に参照として採用する。しかしながら、本発明は、前発明のおかげでそのような開示をはやい日付にする権利はない。
【0067】
明細書には、本発明の典型的な好ましい実施態様が開示されており、特定の用語が用いられているが、それらの用語は一般的記述的意味でのみ用いられており、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定する目的で用いられているものではない。明らかに、本発明の数多くの修飾および変更は上記の教えにかんがみて可能である。それ故、添付クレイムの範囲内に置いて、本発明は、具体的記載としてよりむしろ別の方法で実行しても良いことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成年動物(adult animal)に全タンパク質の少なくとも3重量%の量のリシンを含む食物(food)を与えることを含む、該動物の健康(health)または健全(wellness)を促進する方法。
【請求項2】
食物が少なくとも約1.5:1のリシン:代謝可能エネルギー比率(metabolic energy ratio)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
動物がコンパニオン動物または食用動物である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
動物がイヌ科動物またはネコ科動物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
動物が年長動物(senior animal)または老年動物(geriatric animal)である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
健康または健全を促進することが、動物の体重を調整することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
動物が超過体重、肥満であるか、または肥満になる傾向がある、請求項6記載の方法。
【請求項8】
健康または健全を促進することが窒素保持を増加させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
動物が腎不全または腎機能障害に罹りやすいまたは罹っていることが分かっている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
健康または健全を促進する量の腎臓薬と一緒に食物を与えることをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
プロバイオティクスおよびプレバイオティクスからなるグループより選択された、健康または健全を促進する量の胃腸管改善薬と一緒に食物を与えることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
食物が缶入り湿性食物または乾燥食物である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を動物に与えることを含む、成年動物による食物摂取を調節する方法。
【請求項14】
動物が体重超過、肥満または肥満の傾向を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
食物が少なくとも約1.5:1のリシン:代謝可能エネルギー比率を有する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
動物がコンパニオン動物または食用動物である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
動物がイヌまたはネコである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
動物が年長または老年の動物である、請求項13記載の方法。
【請求項19】
リシンおよび食物を個別の容器に単一パッケージ(single package)で含むキットであって、リシンおよび食物が、合わせた場合に全タンパク質の少なくとも3重量%の量でリシンを含む食物を作るために充分な量で存在する、該キット。
【請求項20】
少なくとも1つの(1)腎臓薬、(2)腎臓用装置、(3)成年動物の健康または健全を促進すること、成年動物による食物摂取を調節すること、成年動物による窒素保持を増加させること、健康および健全を促進する量の腎臓薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシン含む食物を一緒に与えること、および腎機能を測定し腎不全または腎機能障害の存在および重症度を評価するための腎臓診断装置を用いることに関する情報または説明を伝達する1以上の手段、ならびに(4)プロバイオティクスおよびプレバイオティクスからなるグループより選択された胃腸管改善薬;をさらに含む、請求項19記載のキット。
【請求項21】
全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物;ならびに、少なくとも1つの(1)腎臓薬、(2)腎臓用装置、(3)成年動物の健康または健全を促進すること、成年動物による食物摂取を調節すること、成年動物による窒素保持を増加させること、健康および健全を促進する量の腎臓薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシン含む食物を一緒に与えること、および腎機能を測定し腎不全または腎機能障害の存在および重症度を評価するための腎臓診断装置を用いることに関する情報または説明を伝達する1以上の手段、および(4)プロバイオティクスおよびプレバイオティクスからなるグループより選択された胃腸管改善薬;を単一パッケージ内に個別の容器で含むキット。
【請求項22】
成年動物の健康あるいは健全を促進し;成年動物による食物摂取を調整し、成年動物による窒素保持を増加させ;健康あるいは健全を促進する量の腎臓薬と全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を一緒に与え;さらに、腎臓機能を測定し腎不全あるいは機能障害の存在および重症度を評価するための腎臓診断装置であって、情報または説明を含有する、文書、デジタル保存媒体、光学保存媒体、音声表示、視覚ディスプレーを含む該装置を用いることに関する情報または説明を伝達する手段。
【請求項23】
ディスプレーウェッブサイト、パンフレット、製品ラベル、パッケージ挿入物、広告または視覚ディスプレーを含む、請求項23記載の伝達手段。
【請求項24】
全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を動物に与えることを含む、成年動物による窒素保持を増大させる方法。
【請求項25】
動物が腎不全または腎機能障害に罹りやすいか、または罹っているかを決定する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
食物が少なくとも約1.5:1のリシン:窒素代謝可能エネルギー比率を有する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
動物がコンパニオン動物または食用動物である、請求項23記載の方法。
【請求項28】
動物がイヌまたはネコである、請求項23記載の方法。
【請求項29】
全タンパク質の少なくとも約3重量%を有する食物を製造するために充分な量で食物に補足リシン(supplemental lysine)を加えることを含む、全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物を製造するプロセス。
【請求項30】
請求項29記載のプロセス製造物。
【請求項31】
全タンパク質の少なくとも約3重量%の量でリシンを含む食物。
【請求項32】
リシン:代謝可能エネルギーの比率が少なくとも約1.5:1である、請求項31記載の食物。
【請求項33】
動物がイヌである、請求項4記載の方法。
【請求項34】
食物が、少なくとも約1.7:1のリシン:代謝可能エネルギー比率を有する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
該比率が少なくとも約2:1である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
該比率が約1.7:1から約5:1である、請求項34記載の方法。
【請求項37】
動物がネコである、請求項4記載の方法。
【請求項38】
ペットフードが少なくとも約3.2:1のリシン:代謝可能エネルギー比率を有する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該比率が少なくとも約5:1である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
該比率が約3.2:1から約10:1である、請求項38記載の方法。

【公開番号】特開2011−142912(P2011−142912A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18426(P2011−18426)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【分割の表示】特願2008−512526(P2008−512526)の分割
【原出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】