説明

成形シート材料の成形方法並びに成形装置

【課題】成形シート材料を加熱軟化処理した後、成形金型内に供給し、所要形状に成形する成形シート材料の成形方法並びに成形装置であって、成形性を高め、かつ成形サイクルを短縮化する。
【解決手段】材料投入機40により成形シート材料Sを台車90から取り出し、コンベア50にセットして、本加熱用ヒーター80に搬送する前段階で、コンベア50にセットする前の成形シート材料Sの待機位置Aにおいて予備加熱用ヒーター70を設け、予備加熱処理を行なうことで、全体の成形サイクルを短縮化するとともに、本加熱用ヒーター80の温度調整や時間調整を簡素化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品の素材として好適な成形シート材料の成形方法並びに成形装置に係り、特に、コンベアに素材をセットする前の待機位置で素材に予備加熱を施すことにより、成形シート材料の温度管理を精度良く実施でき、成形不良を大幅に低減できるとともに、成形サイクルも短縮化できるようにした成形シート材料の成形方法並びに成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用内装部品の一例として、ドアトリムを例示して図13,図14を基に説明する。このドアトリム1は、所望の曲面形状に成形され、図示しないドアパネルに対する取付剛性並びに所望の保形性を備えた樹脂基材2の表面側に、良好な表面風合い、クッション性能を付与する表皮3を一体貼着して構成されている。
【0003】
そして、このドアトリム1を成形する際に使用する成形装置4の概略構成について説明する。図15,図16に示すように、成形装置4は、ドアトリム1における樹脂基材2の素材である熱成形可能な成形シート材料Sを複数枚重ね合わせて収容している成形シート材料Sの台車から成形シート材料Sを取り上げる材料投入機5と、材料投入機5から投入された成形シート材料Sを搬送するコンベア6と、コンベア6により供給される成形シート材料Sを所要形状に成形する成形金型7と、コンベア6の経路に設けられ、成形金型7に搬送する前に、成形シート材料Sを成形可能な状態まで加熱軟化させるヒーター8とから構成されている。
【0004】
従って、図示しない台車から成形シート材料Sを材料投入機5により取り出し、図15中X矢印方向に材料投入機5が移動して、コンベア6に成形シート材料Sをセットする。そして、図15中Y矢印方向にコンベア6が循環駆動することで、成形シート材料Sは、ヒーター8により所定温度に加熱軟化された後、成形金型7内に供給され、成形上型7aと成形下型7bとの間で型締めされて所要形状に樹脂基材2が成形される。尚、樹脂基材2の表面に貼付される表皮3は、樹脂基材2の成形後、次工程で貼付しても良く、また、樹脂基材2の原反素材である成形シート材料Sの片面に予め表皮3がラミネートされていても良い。
【0005】
このように、熱成形可能な成形シート材料Sをコンベア6により成形金型7内に供給する前に、ヒーター8により所定温度に加熱軟化させて成形を行なう従来方法については、特許文献1に詳細に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−300379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の成形シート材料Sの成形方法においては、材料投入機5により成形シート材料Sをコンベア6上にセットし、コンベア6の循環駆動により、ヒーター8を通過させて、成形シート材料Sを所定温度に加熱軟化処理した後、コンベア6の終端が成形金型7に位置した時、加熱軟化処理された成形シート材料Sを成形金型7内に供給して成形が行なわれる。しかしながら、ヒーター8による加熱工程において、四季の環境温度により、成形条件を調整しながら生産を実施する必要があるため、温度設定や時間設定等、条件設定が面倒であるとともに、成形時の材料温度のバラツキにより、シワ、パンク、絞転写不足等の不具合が出易く、生産性を低下させる傾向にあり、かつ成形サイクルも長期化するという欠点が指摘されている。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、熱成形可能な成形シート材料を加熱軟化処理して成形金型内に供給して成形を行なう成形シート材料の成形方法並びに成形装置であって、材料投入機により台車等から成形シート材料を取り出してコンベアにセットする前の成形シート材料の待機位置において、待機時間を有効に利用して、予備加熱用ヒーターにより加熱処理を施すことで、材料の温度管理が容易に行なえ、不良率を低減できるとともに、成形サイクルも短縮化できるようにした成形シート材料の成形方法並びに成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、熱成形可能な成形シート材料を材料投入機によりコンベアにセットする前の成形シート材料の待機位置において、待機時間を有効に利用して、予備加熱処理を行なうことで、全体の温度管理が容易に行なえ、かつ全体の成形サイクルを短縮化できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、熱成形可能な成形シート材料を加熱軟化処理した後、成形金型内に供給して成形する成形シート材料の成形方法であって、材料投入機により台車上に積層された成形シート材料を取り出してコンベアにセットする前の待機位置において、予備加熱用ヒーターにより成形シート材料に対して予備加熱処理を行ない、所定温度に予備加熱された成形シート材料をコンベアにセットし、本加熱用ヒーターで最終温度にまで成形シート材料を本加熱処理した後、成形金型内に供給し、所要形状に成形することを特徴とする。
【0011】
更に、本発明方法に使用する成形装置は、熱成形可能な成形シート材料を加熱軟化処理した後、成形金型内に供給して成形する成形シート材料の成形装置において、成形シート材料を収容した台車から成形シート材料を取り出し搬送する材料投入機と、成形シート材料のセット位置から成形位置まで成形シート材料を搬送するコンベアと、コンベアにより供給された成形シート材料を所要形状に成形する成形金型と、コンベアに成形シート材料をセットする前の待機位置に設けられた予備加熱用ヒーターと、コンベアの搬送途中に設けられた本加熱用ヒーターとからなることを特徴とする。
【0012】
ここで、成形シート材料としては、熱成形が可能な熱可塑性樹脂成分を含んだシート全般に適用できる。すなわち、熱可塑性樹脂シートや、熱可塑性樹脂シートに木粉、炭酸カルシウム等のフィラーを混入した複合樹脂シート、あるいは熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した発泡樹脂シートの形態で使用することができる。尚、熱可塑性樹脂は、一種類の熱可塑性樹脂でも、二種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、発泡樹脂シートを使用する場合、上記熱可塑性樹脂中に添加する発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。
【0013】
そして、成形シート材料の適用対象としては、その用途として、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品や、鉄道車両や軌道車両等の内装に用いる内装パネル、あるいは住宅の内装パネル等に使用することができる。更に、使用形態としては、成形シート材料を加熱軟化処理した後、所要形状に成形してなる樹脂基材単体の使用でも良いが、樹脂基材の表面に良好な表面風合いやクッション性能を付与する表皮を一体化しても良く、また、発泡樹脂基材等を使用した際には、製品の剛性を付与するために、基材の裏面で外周縁や荷重が加わり易い箇所に樹脂リブ等の補強構造を付設するのが好ましい。
【0014】
更に、成形装置の具体的な構成として、材料投入機は、搬送プレート下面に複数の吸盤が設けられている。この吸盤は、真空吸引力等、シートを吸着保持する機能を備えており、台車等に積層された成形シート材料の最上位の成形シート材料一枚のみを吸盤等により吸着保持して、搬送プレートに連結した駆動機構により上方に持ち上げ、かつコンベアに向けて水平方向に搬送することができる。そして、材料投入機により一枚の成形シート材料を保持した状態でコンベアにセットする前の成形シート材料の待機位置において、予備加熱用ヒーターが設けられている。この待機位置に配設されている予備加熱用ヒーターは、昇降シリンダに連結されており、成形シート材料が待機位置にきた時に予備加熱用ヒーターが上昇して、成形シート材料を所定温度に予備加熱する。そして、コンベアは、循環駆動によりコンベアの一方端にセットされた成形シート材料を他方端に位置する成形金型内に供給するが、その途中で、本加熱用ヒーターにより成形シート材料は最終温度にまで加熱軟化処理されている。また、成形金型は、相互に型締め、型開き可能であり、内部に冷却配管を有するコールドプレス成形用金型、あるいは成形金型の型面形状に沿って真空吸引力を作用させる真空成形用金型、また、コールドプレス成形用金型に射出機を連設して、成形シート材料をプレス成形してなる樹脂基材の裏面に、樹脂リブ等を射出成形する複合タイプの成形金型を使用することもできる。
【0015】
従って、本発明方法によれば、成形シート材料をコンベアにセットする前の待機位置で、予備加熱用ヒーターを使用して成形シート材料に対して所定温度の予備加熱処理を行なうことにより、成形シート材料の温度管理が容易となり、シワ、パンク、絞転写不足等の成形不良を有効に抑えることができるとともに、本加熱用ヒーターによる加熱時間を短縮することにより、成形サイクルを短縮化することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明に係る成形シート材料の成形方法並びに成形装置は、材料投入機により成形シート材料をコンベアにセットする前の待機位置において、予備加熱用ヒーターにより成形シート材料を予備加熱処理するというものであるから、成形シート材料の待機時間を有効に利用して、所定温度まで成形シート材料を加熱できるため、コンベアで搬送途中に行なう本加熱用ヒーターでの加熱時間を短縮することができ、全体の成形サイクルを短縮化できるとともに、成形シート材料の温度管理が精度良く、かつ簡単に行なえ、シワ、パンク、絞転写不足等の成形不良を有効に抑え、成形不良を低減することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明方法により成形した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示すドアトリムにおける樹脂リブのパターン形状を示す説明図である。
【図4】本発明に係る成形シート材料の成形装置の概略構成を示す説明図である。
【図5】図4に示す成形装置における材料投入機、予備加熱用ヒーター、コンベアの相互関係を示す説明図である。
【図6】図4に示す成形装置におけるコンベア、本加熱用ヒーター、成形金型の相互関係を示す説明図である。
【図7】本発明に係る成形シート材料の成形方法における材料投入機による成形シート材料の取り出し工程を示す説明図である。
【図8】本発明に係る成形シート材料の成形方法における予備加熱工程を示す説明図である。
【図9】本発明に係る成形シート材料の成形方法における材料投入機から成形シート材料をコンベアにセットする工程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る成形シート材料の成形方法における本加熱用ヒーターによる本加熱工程を示す説明図である。
【図11】本発明に係る成形シート材料の成形方法における成形金型への成形シート材料の供給工程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る成形シート材料の成形方法における成形金型によるプレス成形工程を示す説明図である。
【図13】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図14】図13中XIV −XIV 線断面図である。
【図15】従来の成形シート材料の成形装置の概要を示す説明図である。
【図16】従来の成形シート材料の成形装置の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る成形シート材料の成形方法並びに成形装置の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0019】
図1乃至図12は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法を適用して成形したドアトリムを示す正面図、図2,図3は同ドアトリムの構成を示す断面図並びに説明図、図4乃至図6は本発明に係る成形シート材料の成形装置の構成を示すもので、図4は全体構成を示す概要図、図5は材料投入機、予備加熱用ヒーター、コンベアの相互関係を示す説明図、図6はコンベア、本加熱用ヒーター、成形金型の相互関係を示す説明図、図7乃至図12は本発明方法の各工程を示す説明図である。
【0020】
図1乃至図3において、本発明方法により成形した自動車用ドアトリム10の構成について説明する。自動車用ドアトリム10は、所要形状に成形されたドアトリム本体20に各種機能部品を装着して構成されている。すなわち、ドアトリム本体20の中接ややフロント側にドアの開閉操作時に使用するインサイドハンドルユニット11が装着され、ドアトリム本体20のほぼ中央には、乗員が肘を掛けて休めるアームレスト20aが室内側に膨出状に形成され、このアームレスト20aの上面にプルハンドルユニット12、パワーウインドウスイッチ等のスイッチ群を装備したスイッチユニット13が取り付けられている。また、ドアトリム本体20におけるアームレスト20aの下方には、備品を収容できるドアポケット14が取り付けられており、ドアポケット14のフロント側にドアトリム本体20と一体、あるいは別体にスピーカグリル15が設けられている。
【0021】
次いで、ドアトリム本体20の構成について説明すると、図2に示すように、ドアトリム本体20は、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の表面に一体化される表皮22と、発泡樹脂基材21の裏面に一体化され、ドアトリム本体20に剛性を付与する樹脂リブ23とから構成されている。
【0022】
上記発泡樹脂基材21は、保形性を備えるように、発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形して、所望の形状が付与されている。上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施例では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmの範囲に設定されている。
【0023】
また、発泡樹脂基材21の表面に貼付される表皮22は、この実施例では、トップ層22aの裏面にクッション層22bを一体化した積層シート材料が使用されており、トップ層22aとしては、織布、不織布、編布等の布地シートや、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート、PVCシート等の合成樹脂シートが使用でき、クッション層22bとしては、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等のポリオレフィン系フォームや、ポリウレタンフォーム等を使用することができる。
【0024】
次いで、樹脂リブ23は、図3に示すように、縦横方向、あるいは斜め方向等に延びる格子状パターンに設定されている。そして、この樹脂リブ23は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。また、この樹脂リブ23には、上記熱可塑性樹脂中に、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填材が混入されていても良い。
【0025】
次いで、上述した構成のドアトリム1におけるドアトリム本体20の成形方法について以下説明する。まず、図4乃至図6に基づいて、ドアトリム本体20を成形する際に使用する成形装置30の概略構成について説明する。図4に示すように、成形装置30は、材料投入機40と、材料投入機40によりセットされる成形シート材料Sを所定位置に搬送するコンベア50と、コンベア50により供給される成形シート材料Sを所定形状に成形する成形金型60と、コンベア50の手前とコンベア50の経路上の2箇所で成形シート材料Sを予備加熱処理及び本加熱処理するための予備加熱用ヒーター70、本加熱用ヒーター80とから大略構成されている。
【0026】
すなわち、本発明方法は、コンベア50による成形シート材料Sの搬送工程で、単一の加熱処理を行なう従来方法に対して、特に、コンベア50に成形シート材料Sをセットする前の待機位置Aにおいて、予備加熱用ヒーター70による加熱処理を行なうことで全体の成形サイクルを短縮化することができ、かつ環境温度に見合った最適な温度管理が容易に行なえ、外観不良を有効に抑えることを可能にしたことが特徴である。
【0027】
以下、成形装置30を更に具体的に説明すると、材料投入機40は、図5に示すように、搬送プレート41下面の複数個所(4箇所)に吸盤42が取り付けられており、この吸盤42は、真空吸引力が作用するように図示しない真空吸引機構と連結している。また、搬送プレート41は、これも図示しない駆動機構により、昇降可能で、かつ水平方向にスライド可能に駆動される。従って、材料投入機40は、台車90に積層状態で収容されている複数の成形シート材料Sのうち、最上位の成形シート材料Sに対して搬送プレート41が降下して、吸盤42の真空吸引力で真空吸引し、その状態で搬送プレート41が上昇し、コンベア50の上方位置まで搬送機構により材料投入機40が成形シート材料Sを搬送する。この時、材料投入機40は、図5(a)成形シート材料Sの取出位置、図5(b)成形シート材料Sの待機位置、図5(c)コンベア50へのセット位置まで搬送機構により移動するが、特に、図5(b)に示す成形シート材料Sの待機位置Aに成形シート材料Sの予備加熱を行なう予備加熱用ヒーター70が設けられている。この予備加熱用ヒーター70は昇降シリンダ71の駆動により所定ストローク昇降操作される。
【0028】
次いで、図4,図6に基づいて、コンベア50、成形金型60、本加熱用ヒーター80の関係について説明する。図5(c)に示すように、材料投入機40からコンベア50の所定位置に予備加熱処理を施した成形シート材料Sがセットされた後、コンベア50は図6中矢印方向に循環駆動するため、成形シート材料Sは搬送の途中で本加熱用ヒーター80により、最終温度に加熱処理される。その後、コンベア50の更なる循環駆動により、成形金型60に供給される。ここで、成形金型60は、相互に型締め、型開き可能な成形上型61、成形下型62と、成形下型62に連結される射出機63とから構成されており、成形上型61は、昇降シリンダ61aの駆動により所定ストローク上下動作を行ない、成形上下型61,62で型開き、型締めが行なわれる。また、射出機63から供給される樹脂材料Mは、ホットランナ62a、ゲート62bを通じて発泡樹脂基材21の裏面に射出充填され、樹脂リブ23が成形される。
【0029】
このように、本発明方法に使用する成形シート材料Sの成形装置30は、コンベア50に成形シート材料Sをセットする前に、材料投入機40により成形シート材料Sを保持して、コンベア50にセットする前の待機位置Aにおいて、予備加熱用ヒーター70を使用することにより、待機時間を有効に利用して、所定温度まで予備加熱を行なうというものであるから、本加熱用ヒーター80による加熱時間を短縮化することができるため、全体の成形サイクルを短縮化できるとともに、本加熱用ヒーター80の加熱温度や加熱時間は、予備加熱用ヒーター70による予備加熱を行なうため、管理が容易に行なえ、環境温度の変動に有効に対応することができ、シワ、パンク、絞転写不足等の成形不良を有効に抑えることができる。
【0030】
次に、図7乃至図12に基づいて、本発明方法の各工程について説明する。まず、図7に示すように、材料投入機40は、図中矢印方向に下降して、台車90上に積層されている成形シート材料Sの最上位の一枚のみを材料投入機40の吸盤42が真空吸引作用により掴み取り、搬送プレート41が上昇して、搬送機構により横方向にスライドさせて待機位置Aに搬送する。そして、この成形シート材料Sの待機位置Aにおいては、図8に示すように、予備加熱用ヒーター70がシリンダ71の動作により上昇し、材料投入機40によりサポートされている成形シート材料Sは、予備加熱用ヒーター70により所定温度まで予備加熱処理が施される。
【0031】
その後、図9に示すように、待機位置Aからコンベア50のセット位置まで材料投入機40が図示しない搬送機構により搬送され、コンベア50のセット位置に成形シート材料Sをセットできるように材料投入機40が下降して、予備加熱処理が施された成形シート材料Sをコンベア50の所定ポジションにセットする。そして、コンベア50の循環駆動により、予備加熱処理が施された成形シート材料Sは、図10に示すように、本加熱用ヒーター80に送られ、本加熱用ヒーター80の本加熱処理により、最終的な温度まで上昇する。次いで、コンベア50の更なる循環駆動により、加熱された状態で図11に示す成形金型60内に成形シート材料Sが供給される。尚、この実施例では、発泡樹脂基材21の表面に表皮22を貼付した積層構造体が使用されているため、成形金型60における成形上型61の型面には、表皮22が予めセットされており、図12に示すように、成形上下型61,62が型締めされて、所定の温度に加熱軟化処理された成形シート材料Sが絞り成形されて所要形状に発泡樹脂基材21が成形されると同時に、発泡樹脂基材21の表面に表皮22が一体化される。また、このプレス成形工程と同時に、成形下型62に連結する射出機63から溶融樹脂Mが発泡樹脂基材21の裏面に射出成形され、樹脂リブ23が一体化されて図1乃至図3に示すドアトリム10におけるドアトリム本体20の成形が完了する。
【0032】
このように、本発明方法によれば、コンベア50にセットする前の待機位置Aにおいて、予備加熱用ヒーター70により成形シート材料Sに予備加熱処理を施すことで、本加熱処理時間が短縮化でき、全体の成形サイクル時間を短縮化できるとともに、二段階の加熱処理を行なうことで、シワ、パンク、絞転写不足等の成形不良を有効に抑え、外観性能を高めることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した実施例は、ドアトリム本体20における発泡樹脂基材21の素材として使用する成形シート材料Sの成形方法並びに成形装置30に適用したが、適用対象としては、ドアトリム10以外の内装部品、例えば、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等、内装部品全般に適用することができる。また、成形シート材料Sとしては、発泡剤を混入しない単なる合成樹脂シートや木粉等のフィラーを混入した複合樹脂シートを使用することもできるとともに、コールドプレス成形、真空成形等の成形工法に適用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 自動車用ドアトリム
20 ドアトリム本体
21 発泡樹脂基材
22 表皮
23 樹脂リブ
30 成形装置
40 材料投入機
41 搬送プレート
42 吸盤
50 コンベア
60 成形金型
61 成形上型
62 成形下型
63 射出機
70 予備加熱用ヒーター
71 昇降シリンダ
80 本加熱用ヒーター
90 台車
A 待機位置
S 成形シート材料
M 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形可能な成形シート材料(S)を加熱軟化処理した後、成形金型(60)内に供給して成形する成形シート材料(S)の成形方法であって、材料投入機(40)により台車(90)上に積層された成形シート材料(S)を取り出してコンベア(50)にセットする前の待機位置(A)において、予備加熱用ヒーター(70)により成形シート材料(S)に対して予備加熱処理を行ない、所定温度に予備加熱された成形シート材料(S)をコンベア(50)にセットし、本加熱用ヒーター(80)で最終温度にまで成形シート材料(S)を本加熱処理した後、成形金型(60)内に供給し、所要形状に成形することを特徴とする成形シート材料の成形方法。
【請求項2】
熱成形可能な成形シート材料(S)を加熱軟化処理した後、成形金型(60)内に供給して成形する成形シート材料(S)の成形装置(30)において、成形シート材料(S)を収容した台車(90)から成形シート材料(S)を取り出し搬送する材料投入機(40)と、成形シート材料(S)のセット位置から成形位置まで成形シート材料(S)を搬送するコンベア(50)と、コンベア(50)により供給された成形シート材料(S)を所要形状に成形する成形金型(60)と、コンベア(50)に成形シート材料(S)をセットする前の待機位置(A)に設けられた予備加熱用ヒーター(70)と、コンベア(50)の搬送途中に設けられた本加熱用ヒーター(80)とからなることを特徴とする成形シート材料の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−234690(P2010−234690A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86115(P2009−86115)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】