説明

成形プロセスのための動的シール及びその使用方法

【課題】シート状基板材料の周縁部上の少なくとも一部に高分子材料を簡単にかつコスト効率よく成形する。
【解決手段】本発明は、成形装置でガラス板の周縁部上に高分子フレームまたはガスケットを成形する方法に用いるための動的な型シールを提供する。本発明のシール及び方法は、自動車窓を形成するために利用されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状基板材料の周縁部上の少なくとも一部に高分子材料を成形する改良された方法を可能にする型シールに関する。より詳細には、本発明は、成形装置において当該シールを使用し、自動車用ガラス窓の周縁部上に高分子フレームまたはガスケットを成形することに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車窓などの製品を製造するために、ガラスなどの基板の周縁部上にエラストマーガスケットまたはフレーム部材を成形することが知られている。一般的な形成方法は、反応射出成形(RIM)及び射出成形である。そのような成形物が成形される部材は、ますます複雑になっており、その結果、そのような成形物が成形される部材の製造に用いられる成形装置も、同様に、より複雑になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのようなエラストマー部材の望ましい輪郭形状を作り出すために、成形装置内での高分子成形材料の流れをコントロールすることが必要になることがある。そのような液体高分子成形材料のコントロールのために利用される種々の方法の1つは、いわゆる「ソフトシール」である。一般的な既知のソフトシールでは、多くの場合、ガスケットを成形する基板の各主表面に接するようにして、互いに対向する関係でソフトシールを設ける必要がある。そのようなシール配置では、一般的に、成形物を基板の主表面の端部まで成形することができず、審美的にも機能的にも好ましくないであろう。従って、ソフトシールを1つだけしか必要とせず、複雑な輪郭形状を有する成形物が基板の主表面の端部まで、そしてさらには端部を越えて延在することを可能にする成形方法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、シート状基板材料の周縁部上の少なくとも一部に高分子材料を簡単にかつコスト効率よく成形する改良された方法を可能にする型シールに関する。より詳細には、本発明は、成形装置において当該シールを使用し、自動車用ガラス窓の周縁部上に高分子フレームまたはガスケットを成形することに関する。さらに詳細には、本発明は、少なくとも1つの可動型部分と協働して、成形物を、シート状基板材料の主表面の端部まで、あるいは必要に応じてさらにはシート状基板材料の主表面の端部を越えて成形できるようにする動的な型シールに関する。
【0005】
本発明の動的な型シールには、ベース部分と、中間部分と、真直アーム部分と、フレキシブルアーム部分とが含まれる。本発明の型シールは、上述の構成要素を含む一体型アセンブリであることが望ましい。任意の所望の構成において、中間部分はベース部分から延出しており、真直アーム部分及びフレキシブルアーム部分は中間部分から、しかし互いに異なる方向に延出している。フレキシブルアームは、「エルボ部分」が存在するおかげで、シート状基板材料の周縁端の少なくとも一部と封止接触したり離れたりするように動作可能である。同時に、真直アーム部分は、基板材料の主表面の少なくとも一部に封止状態で係合するように適合されている。
【0006】
本発明はまた、別の態様において、既に述べた動的な型シールを成形装置において利用することにより、被覆基板(例えばフレームまたはガスケットが成形された自動車窓など)を形成することに関する。
【0007】
動的シールを利用した成形装置には、上型(上半型)及び下型(下半型)からなる成形用型が含まれており、一方または両方の半型に成形用キャビティを形成することができる。成形用キャビティを含む半型には、本発明の動的シールのベース部分を受容するために、シール用キャビティも形成されることになる。シール用キャビティを有する半型には、少なくとも1つの可動型部分も含まれる。この少なくとも1つの可動型部分は、該可動型部分の動作範囲内に動的シールのフレキシブルアーム部分が位置するように配置される。
【0008】
成形作業を行う準備をする際に、本発明の動的シールは、キャビティシールに取り付けられていることになる。シート状基板材料、例えば自動車用ガラス窓は、自動車窓の周縁端の少なくとも一部が本発明の動的シールに近接するように、成形用キャビティ内に載置されることになる。シールの真直アーム部分は、自動車窓の主表面すなわち自動車窓の内側主表面に封止接触した状態にある。型閉めにより可動型部分が動かされ、可動型部分は本発明のシールのフレキシブルアームと押圧接触させられる。フレキシブルアームは、自動車窓の周縁端の少なくとも一部に向かって、該周縁端の少なくとも一部と封止接触するように、向きを変えられる。その後、成形装置内に液体高分子材料が射出されて成形用キャビティが充填される。本発明のシールの働きにより、そのような液体高分子材料が自動車窓の周縁端の少なくとも一部かまたは自動車窓の内側主表面の一部のいずれかと成形接触(molding contact)することが防止される。しかし、自動車窓の周縁部の残りの部分の周りには、高分子フレームまたはガスケットが形成される。
【0009】
液体高分子材料は、成形用キャビティ内で硬化させられるので、自動車窓の周縁部の少なくとも一部に結合することができる。液体高分子材料が十分に硬化したら、上型及び下型が型開きされ、型の可動部分が稼働位置から引込位置に戻り、本発明のシールのフレキシブルアームに加えられた圧力が解放される。シールのフレキシブルアームは、新たに被覆された自動車窓の周縁端から遠ざけられ、この自動車窓は、成形用キャビティから取り出されることができる。
【0010】
本明細書に記載の利点及び本発明の他の数々の利点については、当業者が添付の図面を踏まえて考慮すると、以下に示す好適実施形態の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う成形装置の下型の斜視図である。
【図2】本発明に従い本発明の動的シールと成形接触しかつ該動的シールを収容する上型及び下型の断面図である。
【図3】動的シールと相互作用する可動型部分を特に示している本発明に従う成形装置の断面詳細図である。
【図4】a〜cは、本発明のシール及び方法を用いて成形することができる種々の代表的なフレームまたはガスケットの輪郭形状の断面図である。
【図5】特許文献に開示されている一般的なソフトシールを含む成形装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例えば自動車窓の周縁部上にエラストマーフレームまたはガスケットを成形していわゆるモジュラー式の窓アセンブリを作り、その後、車体の開口に簡単に取り付けることができることは公知である。しかし、たとえそうであっても、1枚のガラスを射出成形装置内に載置し、ガラスと高分子フレームまたはガスケットとの間の強い結合を得る一方で、ガラスを割ることなくガラスの周縁部上に高分子フレームまたはガスケットを成形するために、1平方インチ当たり数千ポンド(1平方センチメートル当たり数十〜数百キログラム)の成形圧力を印加することは、数々の技術的課題を伴う。
【0013】
上記したように、成形物の複雑な輪郭形状を作り出すための非常に複雑な成形装置が提案されていた。通常、そのような装置は、液体高分子成形材料を型の特定領域に方向付けるようにするかまたは反対に高分子材料が型の特定部分に流入しないようにする1若しくは複数の手段を有する。上記したように、可動型部分及びいわゆる「ソフトシール」は、そのような手段の1つである。一般的な既知のソフトシールの一例が図5に示されている。図5に示した一般的な以前から知られているソフトシールには、互いに対向するシール60及び62が必要とされる。図5に示したソフトシールでは、成形工程中に、成形物を自動車窓の端部まで、または端部を越えて成形することができない。また、一般的なソフトシールは、ガラスの寸法及び形状の変化を幾分か許容するが、これに関しては一般的にかなり限定的である。一般的なソフトシールはまた、成形工程によって生じる型内の圧力によって、型内の所定位置から外れやすい。これは特に、射出成形プロセスに関して問題である。
【0014】
対照的に、本発明の型シールは、図5に示されているような2つ若しくはそれ以上のシールではなく1つのシールしか必要としない点において比較的単純であるが、成形物をガラス板の周縁端まで及び周縁端を越えて成形することができ、かつ成形プロセス中のガラスのサイズ及び形状の著しい変化に適応する。さらに、可動型部分と本発明の型シールとの連携が、型シールを基板と封止係合させたり離したりすることによって型シールの効果的な機能をもたらすのみならず、可動型部分は、成形工程中に成形用キャビティから型シールが外れないようにするのに役立つ。
【0015】
図1は、本発明の成形半型10を示しており、液体高分子成形材料を受容することになる成形用キャビティ12が設けられている。例えば1若しくは複数のスプルー及び1つのコールド/ホットランナーシステムなど、高分子材料を成形用キャビティ12内に運ぶ1若しくは複数の手段(図示せず)が提供されることになるが、そのような手段は公知であり、本発明の一部ではない。半型10に載置されたとき、ガラス板14は、シール用キャビティ18に近接した1若しくは複数の弾性支持部材16によって支持されかつ可動型部分20の動作範囲内にあることになる。詳細については後述するが、型シール22のベースは、シール用キャビティ18内に挿入可能であるように構成される。下型10は、鋼鉄、アルミニウムまたは他の適切な材料で製造することができる。
【0016】
図2は、図1の上型24に密接に成形接触している下型10の断面図である。ガラス板14は、閉じられた成形装置内にあり、いつでも成形作業を行える状態にある。下型10と同様に、上型24も、アルミニウム、鋼鉄または他の適切な材料から製造することができる。
【0017】
図3は、図2に大まかに示した本発明の型シール22を、より詳細に示している。図のように、本発明の型シール22は、シール用キャビティ18内に挿入されるように構成されたベース部分26と、シールのベース部分26と連結する中間シール部分28と、フレキシブルアーム30と、真直アーム32とからなる。型シール22は、任意の適切な弾性高分子材料、例えば、EPDM、シリコーン及び熱可塑性エラストマー(TPE)、並びにこれらの組合せから製造することができる。
【0018】
フレキシブルアーム30及び真直アーム32は、真直アーム32がガラス板14の主表面34に封止状態で接触するように、中間シール部分28から互いに異なる方向に延出している。対照的に、フレキシブルアーム30は、エルボ部分、例えば切欠き36または他の適切な手段のおかげで「フレキシブル」に、すなわち柔軟性を持つようにされており、ガラス板14の周縁端38に近接して配置されている。成形が行われていない状態では、フレキシブルアーム30は周縁端38と接触していない。成形作業中には、可動型部分20は、図2及び図3に示すようにフレキシブルアーム30を周縁端38と封止接触させることになる。可動型部分20が動く方向は、具体的には矢印によって示されている。フレキシブルアーム30は、約10°〜15°動くことができる。図4に示すような成形物の異なる輪郭形状を形成するために、液体高分子成形材料を様々な割合でガラス板の周縁端に結合させるように、フレキシブルアーム30と周縁端38とが接触する点を調整することができる。上型24及び下型10の型閉時に、可動型部分20が動かされる。成形サイクル完了後、上型24及び下型10が型開きされると、可動型部分は引込位置に戻るので、フレキシブルアーム30は再び、周縁端38との成形接触状態から解放される。
【0019】
型シール22、シール用キャビティ18及び可動型部分20が、ガラス板14の周縁部の選択された部分にのみ存在する形態のみならず、図1に示されているようにガラス板14の全周縁部の周りにも存在する形態も、本発明の範囲内である。
【0020】
図4は、型シール22の多様性の一部を示している。図4のaは、成形物を主表面40とガラス板14の周縁端38の間の移行部まで成形することができることを示している。図4のbは、型シール22の位置を調整することにより、どのように成形物を主表面40と周縁端38の間の移行点を越えてガラス板の端部の中間位置まで成形することができるかを示している。最後に、図4のcは、高分子フレーム、ガスケット、または同様のものを成形して、いわゆる二面被覆(すなわち主表面の周縁部及びガラス板の周縁端)を形成するために、どのように本発明の型シール22を利用することができるかを示している。
【0021】
特許法の規定により、本明細書において、好適実施形態を代表すると考えられる本発明の原理及び動作モードについて説明した。しかし、当然のことながら、特許請求の範囲から逸脱することなしに、具体的に図示及び記載された形態以外の方法で本発明を実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形装置であって、
少なくとも一方に、成形用キャビティ、シール用キャビティ及び少なくとも1つの可動型部分が設けられた成形用上型及び下型と、
前記シール用キャビティ内の少なくとも一部に配置されたベース部分、中間シール部分並びに、該中間シール部分から延出する真直アーム部分及びフレキシブルアーム部分を含む動的シールとを含み、
前記上型及び下型の間にシート状基板材料が載置されるときに、前記シート状基板材料の前記周縁部の少なくとも一部が、前記動的シールに近接する前記成形用キャビティ内に配置され、前記真直アーム部分が前記シート状基板材料の主表面と封止接触し、かつ前記フレキシブルアーム部分が前記シート状基板材料の周縁端の少なくとも一部に近接し、前記上型及び下型の型閉時に、前記少なくとも1つの可動型部分が、前記フレキシブルアーム部分に接触しかつ該フレキシブルアーム部分を前記シート状基板材料の前記周縁端に封止状態で押し付けるようにしたことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記フレキシブルアーム部分が動くことができるように、前記シールが、前記フレキシブルアーム部分を前記中間シール部分に連結する一体型のエルボ部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記エルボ部分が、前記フレキシブルアーム部分に設けられた切欠きによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の動的シール。
【請求項4】
前記シールが、エチレンプロピレンジエンMクラスゴム材料からなることを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項5】
前記シールが、シリコーン材料からなることを特徴とする請求項1に記載の動的シール。
【請求項6】
前記フレキシブルアーム部分が少なくとも10°の弧を描くように動くことができるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の動的シール。
【請求項7】
前記フレキシブルアーム部分が10〜15°の弧を描くように動くことができるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の動的シール。
【請求項8】
成形装置において動的シールを利用して成形物を製造する方法であって、
少なくとも一方に、成形用キャビティ、シール用キャビティ及び少なくとも1つの可動型部分が設けられた成形用上型及び下型を含む成形装置を提供するステップと、
ベース部分、中間シール部分並びに、該中間シール部分から異なる方向に延出する真直アーム部分及びフレキシブルアーム部分を含む予め形成された一体型の動的シールを提供するステップと、
前記動的シールが前記シール用キャビティ内で動いたりまたは該シール用キャビティから外れたりしないように、かつ前記中間シール部分及び前記両アーム部分が前記シール用キャビティから前記成形用キャビティ内へと延在できるように、前記動的シールの前記ベース部分を前記シール用キャビティ内の少なくとも一部に配置するステップと、
シート状基板材料を、該シート状基板材料の周縁部の少なくとも一部が前記動的シールに近接し、前記真直アーム部分が前記シート状基板材料の主表面と封止接触し、かつ前記フレキシブルアーム部分が前記シート状基板材料の周縁端の少なくとも一部に近接した状態で、前記成形用キャビティ内に載置するステップと、
前記上型及び下型を型閉めし、それに呼応して、前記少なくとも1つの可動型部分が、前記フレキシブルアーム部分に接触しかつ該フレキシブルアーム部分を前記シート状基板材料の前記周縁端に封止状態で押し付けるようにするステップと、
液体高分子材料を、少なくとも前記シート状基板材料の前記周縁端の端部までは流れるが、前記フレキシブルアーム部分が前記シート状基板材料の前記周縁端と封止接触している所を越えて流れることがないように、前記成形用キャビティ内に射出するステップと、
前記高分子材料を十分に時間をかけて硬化させるステップと、
前記上型及び下型を型開きし、ひいては前記可動型部分を前記動的シールの前記フレキシブルアーム部分との封止接触から解放し、かつ前記フレキシブルアーム部分を前記基板材料の前記周縁端の前記部分との封止接触から解放するステップと、
前記高分子材料が成形された前記基板を、前記成形装置から取り出すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記高分子成形材料が熱可塑性材料であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記高分子成形材料がポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記成形圧力が2000psi以上であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記液体高分子材料を、前記基板材料の外側主表面が終わって前記基板材料の周縁部が始まる所を越えて流すことができることを特徴とする請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515101(P2012−515101A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546257(P2011−546257)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/000061
【国際公開番号】WO2010/083027
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】