説明

成形体の加工方法および光学部品

【課題】透明性を損なうことなく、はんだリフロー工程に耐え得る優れた耐熱性を有する光学部品を得る方法として好適な成形体の加工方法、および該加工方法により得られる光学部品を提供すること。
【解決手段】本発明の成形体の加工方法は、特定の構造を有する化合物を含む単量体を(共)重合して得られたノルボルネン系樹脂からなる成形体を、水酸化カリウムおよび/ま
たは水酸化ナトリウムと炭素原子数3〜8のアルコールとを含む溶液に浸漬してアルカリ処理する工程(I)と、該工程(I)を経た成形体を加熱処理する工程(II)と、該工程(II)を経た成形体を、下記式(2)で表される化合物を含有する溶液に浸漬する工程(III)と、該工程(III)を経た成形体を加熱処理する工程(IV)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形体の加工方法および光学部品に関する。より詳しくは、本発明は、環状ノルボルネン系樹脂成形体をアルカリ処理および金属処理することを含む加工方法、ならびに該加工方法により得られる光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系樹脂は、透明性、耐熱性および耐薬品性等に優れることから、各種光学部品の材料として注目されている。しかしながら、近年の電子機器の製造においては、各種の電子部品を小型化し、かつ生産性良く基盤上に実装するプロセスとして、はんだリフロー工程が採用されている。
【0003】
はんだリフロー工程では、はんだの溶融と接着のため、基盤上の電子部品は220〜270℃の高温で加熱される。そのため、電子部品に搭載されるレンズ、プリズムおよび透明カバーといった光学部品にも、はんだリフロー工程への耐久性が求められている。したがって、ノルボルネン系樹脂を光学部品としてより広範に適用させるためには、リフロー工程に耐え得るより高い耐熱性をノルボルネン系樹脂成形体に付与する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ノルボルネン系樹脂を電子線により架橋し、さらにその他の耐熱樹脂および無機粒子の添加により、リフロー工程での耐熱性を保持する方法が提案されている。しかしながら、この手法では、無機粒子を多量に混合するためノルボルネン系樹脂本来の透明性が損なわれるという問題がある。
【0005】
同様に、特許文献2や3にも、ノルボルネン系樹脂に架橋助剤およびガラスフィラーを混合した後、電子線照射により架橋させることにより、リフロー工程に耐えうる光学部品が得られることが記載されているが、その透明性は無機粒子の混合により光学部品として不充分であった。
【特許文献1】特開平10−130473号公報
【特許文献2】特開2008−044971号公報
【特許文献3】特開2008−088303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、ノルボルネン系樹脂本来の透明性を損なうことなく、はんだリフロー工程に耐え得る優れた耐熱性を有するノルボルネン系樹脂からなる光学部品を得る方法として好適な成形体の加工方法、および該加工方法により得られる光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ノルボルネン系樹脂からなる成形体の加工処理方法を鋭意検討した。その結果、水酸化カリウム等の水酸化物を含むアルコール中に前記成形体を浸漬した後、数時間加熱処理し、さらに金属化合物溶液中に浸漬した後、さらに加熱処理することにより、はんだリフロー工程に耐え得る優れた耐熱性を有する光学部品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の成形体の加工方法は、
(I)下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られたノルボルネン系樹脂からなる成形体を、少なくとも1種のアルカリ金属の水酸化物
と少なくとも1種の炭素原子数3〜8のアルコール(A)とを含む溶液に浸漬してアルカリ処理する工程と、
(II)前記工程(I)を経た成形体を加熱処理する工程と、
(III)前記工程(II)を経た成形体を、下記式(2)で表される少なくとも1種の
化合物を含有する溶液に浸漬する工程と、
(IV)前記工程(III)を経た成形体を加熱処理する工程と
を含むことを特徴とする。
【0009】
【化1】

式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含有する1価の基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基;または、−R5−COOR6で表される基を表し、
5は、単結合;置換もしくは非置換のメチレン基;置換もしくは非置換の炭素原子数
2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基;または、エーテル性酸素原子を含む置換もしくは非置換の炭素原子数2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、
6は、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のア
ルキル基;エーテル性酸素原子を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;または、置換もしくは非置換のアリール基を表す。
【0010】
ただし、R1〜R4の少なくとも1つは−R5−COOR6で表される基を表し、
1とR2、またはR3とR4とは、相互に結合している場合、アルキリデン基を形成し、
1とR2、R3とR4、またはR2とR3とは、相互に結合している場合、単環もしくは多環の炭素環または複素環を形成し、
1とR4、またはR2とR3とは、相互に結合している場合、二重結合もしくは三重結合を形成している。
【0011】
xは0または1〜3の整数を表し、yは0または1を表す。
MLn …(2)
式(2)中、Mは2価以上の金属原子、Lは1価以上の配位子、nは1以上の整数を表す。ただし、(金属Mの価数)=n×(配位子Lの価数)の関係を満たす。
【0012】
上記成形体の加工方法は、上記工程(I)を経た成形体を、上記工程(II)の前に、アルコール(B)を含む溶液により洗浄する工程を、さらに含むことが好ましい。
本発明の光学部品は、上記成形体の加工方法により得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノルボルネン系樹脂から成形された従来の光学部品と比較し、ノルボルネン系樹脂本来の透明性を損なうことなく、はんだリフロー工程に耐え得る、より優れた耐熱性を有する光学成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る成形体の加工方法および光学部品について詳細に説明する。
[成形体の加工方法]
本発明の成形体の加工方法は、上記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られたノルボルネン系樹脂からなる成形体を、少なくとも1種のアルカリ金属の水酸化物と少なくとも1種の炭素原子数3〜8のアルコール(A)とを含む溶液に浸漬してアルカリ処理する工程(I)と、前記工程(I)を経た成形体を加熱処理する工程(II)と、前記工程(II)を経た成形体を、上記式(2)で表される少なくとも1種の化合物を含有する溶液に浸漬する工程(III)と、前記工程(III)
を経た成形体を加熱処理する工程(IV)とを含む。また、本発明の成形体の加工方法は、前記工程(I)を経た成形体を、前記工程(II)の前に、アルコール(B)を含む溶液により洗浄する工程(以下「洗浄工程」ともいう)を、さらに含むことが好ましい。
【0015】
<工程(I)>
上記工程(I)では、特定のノルボルネン系樹脂成形体をアルコール(A)を含む溶液(以下「アルカリ処理溶液」ともいう)でアルカリ処理する。
【0016】
(アルカリ処理)
上記アルカリ処理溶液に用いられるアルカリは、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、より好ましくは水酸化カリウムである。また、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなども使用することができる。前記アルカリ金属の水酸化物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、上記アルカリ処理溶液に用いられるアルコール(A)は、炭素原子数3〜8のアルコールから選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは炭素原子数3〜5のアルコールから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはイソプロパノール(以下「IPA」ともいう。)および/またはn−ブタノール(以下「NBA」ともいう。)である。
【0018】
上記アルカリ処理溶液中の水酸化物の濃度は、好ましくは1〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%であり、特に好ましくは3〜8重量%である。また、上記溶液は、水を含んでいてもよく、水の含量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0019】
上記アルカリ処理溶液の温度は、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは60〜80℃である。
上記アルカリ処理溶液中にノルボルネン系樹脂成形体を浸漬する時間は、好ましくは0.5〜10時間であり、より好ましくは1〜5時間である。
【0020】
上記条件の範囲でアルカリ処理を行うと、ノルボルネン系樹脂成形体が黄変または白化せずに透明性を維持するとともに、浸漬中に成形体が変形することを抑制できるため好適である。
【0021】
(ノルボルネン系樹脂成形体)
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂成形体を構成するノルボルネン系樹脂は、下記式(1)で表されるノルボルネン系化合物(以下「ノルボルネン系化合物(1)」ともいう)を少なくとも1種含む単量体または単量体組成物(これらを併せて、以下「単量体組成物」ともいう。)を(共)重合し、必要に応じて、さらに水素添加して得られた樹脂である。
【0022】
【化2】

上記式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含有する1価の基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基;または、−R5−COOR6で表される基を表す。R5は、
単結合;置換もしくは非置換のメチレン基;置換もしくは非置換の炭素原子数2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基;または、エーテル性酸素原子を含む炭素原子数2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表す。R6は、置換もしくは非置換の炭素原
子数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;エーテル性酸素原子を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;または、置換もしくは非置換のアリール基を表す。
【0023】
ただし、R1〜R4の少なくとも1つは、−R5−COOR6で表される基を表し、R1
2、またはR3とR4とは、相互に結合している場合、アルキリデン基を形成し、R1とR2、R3とR4、またはR2とR3とは、相互に結合している場合、単環もしくは多環の炭素
環または複素環を形成し、R1とR4、もしくはR2とR3とは、相互に結合している場合、二重結合もしくは三重結合を形成している。上記炭素環または複素環としては、脂環式および芳香族環などが挙げられる。
【0024】
上記式(1)中、xは0または1〜3の整数を表し、yは0または1を表す。上記式(1)において、xが0または1を表し、yが0または1を表す場合、ノルボルネン系化合物(1)は、反応性が高く、高収率でノルボルネン系樹脂が得られる点、耐熱性が高いノルボルネン系樹脂水素添加物が得られる点、工業的に入手しやすい点などにおいて好適である。
【0025】
ここで、「R1とR2とは、相互に結合している場合、アルキリデン基を形成する」とは、R1およびR2のいずれか一方が脱離し、残りの基が二重結合により環構造と結合している、下記式(1’)に示す状態を意味する。R3とR4との場合も同様である。
【0026】
【化3】

1.単量体組成物
上記単量体組成物に含まれる上記ノルボルネン系化合物(1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ノルボルネン系化合物(1)の種類および使用量は、求められる特性に応じて適宜選択される。
【0027】
上記ノルボルネン系化合物(1)としては、例えば、以下の化合物を例示できるが、これらの化合物に限定されるものではない。
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2’−メトキシ)エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2’−エトキシ)エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−iso−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1’−メチル)−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−iso−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−tert−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−ヘキシルオキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0028】
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エ
ン、
8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−
エン、
8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ
−3−エン、
8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−
3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ド
デカ−3−エン(DMN)、
8−メチル−8−(2’−メトキシ)エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ド
デカ−3−エン、
8−メチル−8−(2’−エトキシ)エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−iso−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5
7,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−(1’−メチル)−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−iso−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−tert−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5
7,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−ヘキシルオキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5
7,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン。
【0029】
上記ノルボルネン系化合物(1)のうち、酸素原子、窒素原子、イオウ原子およびケイ素原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を、分子内に少なくとも1個含む構造(以下「極性構造」ともいう。)を有する化合物は、他の素材との接着性および密着性に優れている点で好ましい。特に、上記式(1)中、R1およびR3が、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基、好ましくは少なくとも一方がメチル基であり、R2またはR4が、極性構造を有する基であり、もう一方が水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基である化合物は、得られる樹脂の吸水(湿)性が低くなる点で好ましい。
【0030】
さらに、極性構造を有する基が、下記式(3)で表わされる基であるノルボルネン系化合物は、得られる樹脂の耐熱性と吸水(湿)性とのバランス性に富み好適である。
−R5−COOR6 …(3)
上記式(3)中、R5およびR6は、上記式(1)で定義したとおりである。
【0031】
上記式(3)において、R5は、炭素原子数が小さいほど、得られるノルボルネン系樹
脂の水素添加物のガラス転移温度が高く、耐熱性に優れるので、炭素原子数が0または1〜3であることが好ましく、炭素数が0である単量体はその合成が容易である点でさらに好ましい。
【0032】
上記式(3)において、R6は、炭素原子数が多いほど、得られるノルボルネン系樹脂
の吸水(湿)性が低下する傾向にあるが、ガラス転移温度が低下する傾向もあるので、耐熱性を保持する観点から炭素原子数1〜10が好ましく、特に炭素原子数1〜6であることが好ましい。
【0033】
上記式(1)において、上記式(3)で表される基が結合した炭素原子に炭素原子数1〜3のアルキル基、特にメチル基が結合しているノルボルネン系化合物は、耐熱性と吸水(湿)性とのバランスの点で好ましい。
【0034】
上記単量体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記ノルボルネン系化合物(1)と共重合可能な単量体を含んでもよい。
上記共重合可能な単量体としては、上記式(3)で表される基を有さず、上記ノルボルネン系化合物(1)と共重合可能な単量体であれば特に限定されないが、例えば、
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン等の環状オレフィン;
1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、シクロドデカトリエン等の非共役環状ポリエン;
エチレン等のα−オレフィン;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
【0035】
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン、
ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン、
【0036】
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エ
ン、
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−
3−エン、
8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン

8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデ
カ−3−エン、
8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等の上記ノ
ルボルネン系化合物(1)以外のノルボルネン系化合物
などが挙げられる。これらの共重合可能な単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0037】
2.重合方法
ノルボルネン系樹脂の重合方法については、上記ノルボルネン系化合物(1)を含む単量体組成物の重合が可能である限り、特に制限されるものではないが、例えば、特開2008−76552号公報に記載の開環(共)重合または付加(共)重合と同様の重合方法によって重合することができ、さらに該公報に記載の水素添加反応と同様にしてノルボルネン系樹脂を水素添加することができる。なお、開環(共)重合とは、開環重合または開環共重合を意味し、付加(共)重合とは、付加重合または付加共重合を意味する。
【0038】
また、ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系化合物を開環(共)重合反応させる、またはノルボルネン系化合物と共重合可能な単量体とを開環(共)重合反応させて得ることができるが、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなど、主鎖に炭素―炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下でノルボルネン系化合物を含む単量体組成物を開環(共)重合反応させてもよい。
【0039】
3.添加剤
上記のようにして得られるノルボルネン系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲において、さらに酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0040】
酸化防止剤は、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル
フェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。これらのうち、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートが好ましい。
【0041】
また、後述する射出成型、プレス成型によりノルボルネン系樹脂成形体を製造する場合には、ノルボルネン系樹脂に離型剤を添加することで樹脂成形体の製造を容易にすることができる。
【0042】
これら添加剤は、ノルボルネン系樹脂成形体を製造する際に、上記ノルボルネン系樹脂とともに添加してもよいし、上記ノルボルネン系樹脂を製造する前に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるが、上記ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部であることが望ましい。
【0043】
4.ノルボルネン系樹脂の特性
上記ノルボルネン系樹脂は、30℃のクロロホルム中における固有粘度〔η〕inhが好
ましくは0.2〜2.0dl/g、さらに好ましくは0.35〜1.0dl/g、特に好ましくは0.4〜0.85dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が好ましくは5000〜100万、さらに好ましくは1万〜50万、特に好ましくは1.5万〜25万であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜200万、さらに好ましくは2万〜100万、特に好ましくは3万〜50万であることが望ましい。固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平
均分子量が上記範囲内であると、機械的強度に優れ、破損しにくいノルボルネン系樹脂成形体が得られる。
【0044】
また、上記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常120℃以上、好ましくは130℃以上である。Tgが上記範囲内であると、長期使用においても高い信頼性を有するノルボルネン系樹脂成形体が得られる。
【0045】
5.ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法
本発明で用いられる成形体は、上記ノルボルネン系樹脂を、または上記ノルボルネン系樹脂と上記添加剤とを含有する樹脂組成物を、(I)直接射出成形する、または(II)射出成型または溶融押出し成型等で樹脂シートを作成し、さらに熱プレス転写することによって好適に成形することができる。
【0046】
(5-1)射出成形
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂成形体は、上記ノルボルネン系樹脂を、または上記ノルボルネン系樹脂と上記添加剤とを含有する樹脂組成物を、射出成形することにより製造することができる。射出成形に用いられる射出成形機は、たとえば、シリンダーの方式としてはインライン方式、プリプラ方式; 駆動方式としては油圧式、電動式、ハイ
ブリッド式; 型締め方式としては直圧式、トグル式; 射出方向としては横型、縦型などが挙げられる。
【0047】
(5-2)熱プレス成型
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂成形体は、上記ノルボルネン系樹脂および必要に応じて上記添加剤とを溶媒に溶解した液状樹脂組成物を、上記射出成型または溶融押出し成型等により厚み0.3mm〜10mmのシート状に成型し、さらに適当な金型を装着したプレス機により熱プレスすることにより製造することができる。
【0048】
<洗浄工程>
本発明の成形体の加工方法において好ましく行なわれる洗浄工程では、上記工程(I)でアルカリ処理したノルボルネン系樹脂成形体を、アルコール(B)を含む溶液(以下「洗浄液」ともいう)により洗浄する。前記洗浄工程は、上記工程(I)の後、かつ、後述
する工程(II)の前に行なうことが好ましい。
【0049】
上記アルコール(B)は、アルカリ処理後に成形体表面に残留する水酸化物を溶解し、成形体表面を洗浄することができるものであれば特に限定されないが、溶媒の沸点、融点、粘度等の操作性の観点から、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール等が好ましく、特にメタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0050】
上記洗浄液は、アルコール(B)濃度が100重量%であることが望ましいが、残留水酸化物の洗浄性向上のため、水等のその他の溶媒を含んでいてもよい。その他の溶媒の含量は、好ましくは0.01〜50重量%であり、より好ましくは0.01〜10重量%である。
【0051】
上記洗浄液の温度は、好ましくは20〜80℃であり、より好ましくは25〜60℃である。
洗浄方法は特に限定されず、たとえば、上記工程(I)を経たノルボルネン系樹脂成形体を上記洗浄液に浸漬してもよい。この場合、浸漬時間は、好ましくは0.1〜5時間であり、より好ましくは0.2〜1時間である。また、洗浄液の量は、ノルボルネン系樹脂成形体が充分に浸漬される量であれば特に限定されない。
【0052】
<工程(II)>
上記工程(II)では、上記工程(I)でアルカリ処理したノルボルネン系樹脂成形体、好ましくは上記洗浄工程を経たノルボルネン系樹脂成形体を加熱処理する。
【0053】
加熱条件としては、ノルボルネン系樹脂成形体中に残存するアルコール等の溶媒を取り除くことができれば特に限定されないが、たとえば、60〜180℃で30分〜10時間、好ましくは100〜150℃で1時間〜5時間である。高温下および長時間加熱すると、成形体の変形や黄色変化が起こるため好ましくない。
【0054】
加熱処理方法としては、特に限定されず、例えば、窒素ガスをパージした熱風乾燥機(ヤマト科学(株)製「イナートオーブン(DN6101型(商品名))等を用いて加熱してもよい。
【0055】
この工程により、ノルボルネン系樹脂成形体中に残存するアルコール等の溶媒が取り除かれるとともに、成形体がアニールされる。
<工程(III)>
上記工程(III)では、上記工程(II)を経たノルボルネン系樹脂成形体を、下記式(2)で表される少なくとも1種の化合物(以下「化合物(2)」ともいう)を含有する溶液(以下「金属処理液」ともいう)に浸漬して金属処理する。
【0056】
MLn …(2)
式(2)中、Mは2価以上の金属原子、Lは1価以上の配位子、nは1以上の整数を表す。ただし、(金属Mの価数)=n×(配位子Lの価数)の関係を満たす。
【0057】
金属原子Mとしては、たとえば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Zn、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biなどが挙げられる。汎用性、金属処理後の着色防止の観点から、Zr、Al、Si、Snが好ましい。
【0058】
また、1価以上の配位子Lとしては、たとえば、ハロゲンアニオン、アルコキシレート
、アルキルアニオン、ケトン、アミン、ホスフィン、カルボキシレート、β−ケトエノラート、ジケトン、ジアミン、ジホスフィンなどが挙げられる。配位子の脱離能の高さから、アルコキシレート、ケトン、カルボキシレート、β−ケトエノラート、ジケトンが好ましい。
【0059】
上記化合物(2)としては、たとえば、
テトラノルマルプロポキシジルコニウム、
テトライソプロポキシジルコニウム、
テトラノルマルブトキシジルコニウム、
テトラs−ブトキシジルコニウム、
ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、
ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、
ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、
ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、
ジルコニウムトリブトキシステアレート、
トリノルマルプロポキシアルミニウム、
トリイソプロポキシアルミニウム、
トリノルマルブトキシアルミニウム、
トリs−ブトキシアルミニウム、
アルミニウムジプロポキシアセチルアセトネート、
アルミニウムジノルマルブトキシアセチルアセトネート、
アルミニウムトリアセチルアセトネート、
テトラメトキシシラン、
テトラエトキシシラン、
テトライソプロポキシシラン
などが挙げられる。
【0060】
上記化合物(2)を含有する金属処理液の溶媒としては、これらの金属化合物が溶解するものであれば特に限定されないが、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類、DMF、DMSO等の高極性溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化溶媒、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、THF等のエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの中では、溶解した金属化合物の安定性や取扱の容易性の観点から、アルコール系溶媒が好ましい。
【0061】
上記金属処理液中における上記化合物(2)の濃度は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは5〜20重量%である。
上記金属処理溶液の温度は、好ましくは25〜100℃であり、より好ましくは40〜80℃である。
【0062】
上記金属処理液中に上記工程(II)を経たノルボルネン系樹脂成形体を浸漬する時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは30分〜2時間である。
<工程(IV)>
上記工程(IV)では、上記工程(III)を経たノルボルネン系樹脂成形体を加熱処理する。
【0063】
加熱条件としては、たとえば、60〜150℃で30分〜10時間、好ましくは100〜150℃で1時間〜7時間である。高温下および長時間加熱すると、成形体の変形や黄
色変化が起こるため好ましくない。
【0064】
加熱方法としては、特に限定されず、例えば、窒素ガスをパージした熱風乾燥機(ヤマト科学(株)製「イナートオーブン(DN6101型(商品名))等を用いて加熱してもよい。
【0065】
この工程により、ノルボルネン系樹脂成形体中に残存する溶媒が取り除かれるとともに、金属化合物の作用による架橋反応が進行する。
[光学部品]
本発明の光学部品は、上述した本発明の成形体の加工方法によって得られ、従来のノルボルネン系樹脂成形体と比較して、はんだリフロー工程に耐え得る、より優れた耐熱性を有することから、光学レンズやガラス代替光学板材などの光学部品として好適である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」はことわりがない限り「重量部」を表す。また、製造例および実施例で得られた成形体の各種物性の測定は、下記(1)〜(5)に記載の方法に従った。
【0067】
(1)水素添加率
核磁気共鳴分光計(NMR)はBruker社製AVANCE500を用い、測定溶媒はd−クロロホルムで1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3
.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、水素添加率を算出した。
【0068】
(2)ガラス転移温度(Tg)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0069】
(3)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8重量%、注入量:70μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0070】
(4)対数粘度
ウベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中(試料濃度:0.5g/dL)、30℃
で対数粘度を測定した。
【0071】
(5)耐はんだリフロー試験
千住金属工業株式会社製リフロー炉(STR−2010N2M−III型)を用い、コンベア速度19.8cm/minとし、サンプルの実側温度が最大265℃となるよう、第1ゾーンを310℃、第2ゾーンを237℃、第3ゾーンを212℃、第4ゾーンを50℃、第5ゾーンを320℃に設定した。炉内の温度が安定した後、コンベアに成形体サンプルを乗せ、成形体に炉内を通過させた。この操作を3回実施し、目視で成形体の形状
変化があるものを評価×、ないものを評価○とした。
【0072】
<合成例1>
下記式(4)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下「DNM」ともいう。)100部と、1−ヘ
キセン(分子量調節剤)41部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)300部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0073】
【化4】

このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反
応を行った。
【0074】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂(A)」ともいう。)を得た。
【0075】
このようにして得られた樹脂(A)の水素添加率は99.9%、Tgは164℃、数平均分子量(Mn)は21,000、重量平均分子量(Mw)は67,000(分子量分布=3.2)、対数粘度は0.45dl/gであった。
【0076】
<製造例1>
合成例1で得られた樹脂(A)100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部を加え、100℃で4時間真空乾燥した。次いで、窒素雰囲気下で常圧に戻した後、窒素を封入したアルミニウム製の袋に密封して保管した。
【0077】
このようにして調製した樹脂(A)を含む樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製arufwa2000i100B、シリンダー径26mm、ノズル径2.5mm、型締め100ton)を用いて、下記表1に示す成形条件で射出成形した。なお、計量時のスクリュー回転数は40rpm、背圧は60kgf/cm2、成形サイクルは45secで行った。また、成形条件設定後30ショット成形を行い、その後得られたレンズを製品とし、成形体(A)を得た。
【0078】
【表1】

[実施例1]
<工程(I)>
ガラス製容器に入れた水酸化カリウムのイソプロパノール5重量%溶液中に、製造例1で得られた成形体(A)を浸漬し、60℃で1時間加温してアルカリ処理した。
【0079】
<洗浄工程>
次いで、プラスティック容器に入れたイソプロパノール溶液中に、前記アルカリ処理した成形体を25℃で3分間浸漬して洗浄した。
【0080】
<工程(II)>
次いで、前記洗浄した成形体を、乾燥機(ヤマト科学(株)製「イナートオーブン(DN6101型)」(商品名))にて窒素ガス下100℃で1時間加熱処理し、さらに窒素ガス下150℃で1時間加熱処理した。
【0081】
<工程(III)>
次いで、ガラス製容器に入れたZr(OnBu)3(acac)(ジルコニウムトリブ
トキシアセチルアセトネート)のイソプロパノール5重量%溶液中に、前記乾燥後の成形体を浸漬し、60℃で0.5時間加温して金属処理した。
【0082】
<工程(IV)>
次いで、前記金属処理した成形体を、乾燥機(ヤマト科学(株)製「イナートオーブン(DN6101型)」(商品名))にて窒素ガス下100℃で1時間加熱処理し、さらに窒素ガス下150℃で5時間加熱処理し、処理成形体(B)を得た。得られた処理成形体(B)の外観、耐はんだリフロー試験の評価結果を表2に示す。
【0083】
[実施例2]
実施例1の工程(III)において、60℃での加温時間を1時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして処理成形体(C)を得た。得られた処理成形体(C)の外観、耐はんだリフロー試験の評価結果を表2に示す。
【0084】
[実施例3]
実施例1の工程(III)において、Zr(OnBu)3(acac)の代わりにZr
(OnPr)4(テトラノルマルプロポキシジルコニウム)を用いたこと以外は実施例1
と同様にして処理成形体(D)を得た。得られた処理成形体(D)の外観、耐はんだリフロー試験の評価結果を表2に示す。
【0085】
[実施例4]
実施例1の工程(III)において、Zr(OnBu)3(acac)の代わりにAl
(Os−Bu)3(トリs−ブトキシアルミニウム)を用いたこと以外は実施例1と同様
にして処理成形体(E)を得た。得られた処理成形体(E)の外観、耐はんだリフロー試験の評価結果を表2に示す。
【0086】
[比較例1]
実施例1の工程(I)、洗浄工程、工程(II)、工程(III)および工程(IV)を施さない成形体(A)そのものの耐はんだリフロー試験の評価結果を表2に示す。
【0087】
[比較例2]
実施例1において、工程(III)および工程(IV)を施さず、工程(I)、洗浄工程および工程(II)まで施した処理成形体(F)の外観、耐はんだリフロー試験の評価結果を表2に示す。
【0088】
表2に示す通り、成形体(A)をアルカリ処理、加熱処理、金属処理、そして再度加熱処理することにより、成形体(A)の透明性を損なうことなく、耐熱性が向上し、はんだリフロー試験において成形体の変形はなかった。一方、未処理またはアルカリ処理しただけでは耐熱性が不充分であり、はんだリフロー試験において成形体が大きく変形した。
【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
従来のノルボルネン系樹脂成形体と比較し、透明性を損なうことなく耐熱性に優れる本発明の加工方法により得られる成形体は、耐熱性光ディスク、光学レンズ、ミラー、タッチパネル基板、ガラス代替光学板材等の光学部品に使用でき、特に、はんだリフロー工程の耐久性が求められる光学レンズに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られたノルボルネン系樹脂からなる成形体を、少なくとも1種のアルカリ金属の水酸化物と少なくとも1種の炭素原子数3〜8のアルコール(A)とを含む溶液に浸漬してアルカリ処理する工程と、
(II)前記工程(I)を経た成形体を加熱処理する工程と、
(III)前記工程(II)を経た成形体を、下記式(2)で表される少なくとも1種の
化合物を含有する溶液に浸漬する工程と、
(IV)前記工程(III)を経た成形体を加熱処理する工程と
を含むことを特徴とする成形体の加工方法。
【化1】

[式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含有する1価の基;置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基;または、−R5−COOR6で表される基を表し、
5は、単結合;置換もしくは非置換のメチレン基;置換もしくは非置換の炭素原子数
2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基;または、エーテル性酸素原子を含む置換もしくは非置換の炭素原子数2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、
6は、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のア
ルキル基;エーテル性酸素原子を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;または、置換もしくは非置換のアリール基を表す。
ただし、R1〜R4の少なくとも1つは−R5−COOR6で表される基を表し、
1とR2、またはR3とR4とは、相互に結合している場合、アルキリデン基を形成し、
1とR2、R3とR4、またはR2とR3とは、相互に結合している場合、単環もしくは多環の炭素環または複素環を形成し、
1とR4、またはR2とR3とは、相互に結合している場合、二重結合もしくは三重結合を形成している。
xは0または1〜3の整数を表し、yは0または1を表す。]
MLn …(2)
[式(2)中、Mは2価以上の金属原子、Lは1価以上の配位子、nは1以上の整数を表す。ただし、(金属Mの価数)=n×(配位子Lの価数)の関係を満たす。]
【請求項2】
上記工程(I)を経た成形体を、上記工程(II)の前に、アルコール(B)を含む溶液により洗浄する工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の成形体の加工方法。
【請求項3】
上記アルコール(B)が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールおよびn−ヘキサノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の成形体の
加工方法。
【請求項4】
上記アルコール(A)が、イソプロパノールおよびn−ブタノールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体の加工方法。
【請求項5】
上記加工方法によって加工された成形体が光学部品であることを特徴とする請求項1または2に記載の成形体の加工方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の成形体の加工方法により得られたことを特徴とする光学部品。

【公開番号】特開2010−53247(P2010−53247A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219823(P2008−219823)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】