説明

成形体及び成形体用樹脂組成物

【課題】適度な弾性及び粘着性を有するとともに、透明性や耐久性に優れ、光伝送性の低下を充分に抑制することが可能であって、表示装置等の光学機器内に存在する空隙等に介在させる光伝送粘着性シート等の部材として好適な成形体を提供する。
【解決手段】脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として形成される成形体であって、該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、主鎖に脂肪族炭化水素基を有し、かつ、主鎖及び/又は側鎖に非炭化水素基を有するものであり、該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上、500000以下である成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及び成形体用樹脂組成物に関する。より詳しくは、種々の光学機器等における光学部材・部品として有用な成形体及び成形体用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめとする非発光型の表示装置においては、表示パネルの背面に設置されたバックライトにより照明が行われる。このようなバックライトとしては、例えば、冷陰極管やLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)等の光源と導光板とを備えたエッジライト方式のバックライトを挙げることができる。従来、このようなエッジライト方式のバックライトにおいては、光源と導光板との間に空隙が存在しており、光源からの光が導光板の端面で反射されることによって導光板への入射効率が低下するという問題があった。また、表示パネルの破損を防止する目的で、表示装置の前面に保護パネルを設ける工夫がしばしばなされている。通常、このような保護パネルと表示パネルとの間にはスペーサによって空隙が設けられており、空気層と保護パネルとによって衝撃が分散、吸収されるように構成されているが、空気層と表示パネル又は保護パネルとの屈折率差に起因して光が散乱し、画像の視認性が低下するという問題があった。そこで、これらの問題を解消すべく、上述した空隙に透明性を有する部材を介在させることにより、光損失を低減させる技術が研究、開発されている。
【0003】
エッジライト方式のバックライトにおける光損失を低減するための技術としては、光源と導光板との間に両者を密着させる透明接着剤層を設けることが開示され(特許文献1参照。)、透明接着剤層としては、可視光の吸収がないアクリル系粘着剤が例示されている。また、光源と導光板とを透明な弾性体を介して接合することにより、接合面に多少の凹凸があっても空気層ができず、光の導入効率を向上できるとする光源と導光板との接合方法が開示されている(特許文献2参照。)。特許文献2には、弾性体としてシリコーン樹脂を用いることが記載されているが、通常、シリコーン樹脂は透明性が不充分であり、光の伝送性が低下するという問題がある。そこで、光学用途にも好適な透明性に優れたシリコーン樹脂が検討されており、例えば、特許文献3には、シルセスキオキサン誘導体を用いて得られるシリコーン樹脂が開示されている。
【0004】
一方、保護パネルを設けた表示装置における光損失を低減するための技術としては、画像表示部と保護部との間の空隙に硬化収縮率が一定以下の硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させることにより、画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物層を介在させることが開示されている(特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−308487号公報
【特許文献2】特開平9−50704号公報
【特許文献3】特開2006−233154号公報
【特許文献4】特開2008−282000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、空隙の存在に起因する光損失を低減させる技術が種々検討されているが、これら従来の技術には、空隙に介在させる樹脂の耐久性や画像の視認性を確保しつつ、光損失を低減するという点においては改善の余地があった。具体的には、例えば特許文献1のように空隙に接着剤層を設ける形態では、使用環境下での水分や温度変化に起因して接着剤層が劣化したり剥離したりすることにより光伝送性が低下したり、接着剤層の膨張又は収縮によって表示部が変形し、表示不良を生じたりするおそれがある。また、特許文献2に記載されるようなシリコーン樹脂は透明性が不充分であり、光伝送性が低いという問題がある。特許文献3のように透明性を高めたシリコーン樹脂も検討されているが、粘着性が充分ではなく光損失を充分に低減できないおそれがある。また、一般にシリコーン樹脂は高価であるため、部材の低コスト化を図るうえでも不利である。また、特許文献4のように空隙に樹脂組成物を塗布して硬化させることにより硬化樹脂層を形成する方法では、硬化収縮に起因する応力によって表示パネルが変形し、液晶材料の配向乱れ等、表示不良の原因を生じるおそれがある。また、接着剤層を設ける場合と同様に、硬化樹脂層の劣化や剥離により光伝送性が低下するという問題もある。このように、従来の技術には、高い耐久性を有するとともに、画像表示に影響を及ぼすことなく光損失を低減することができる部材を得るための工夫の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、適度な弾性及び粘着性を有するとともに、透明性や耐久性に優れ、光伝送性の低下を充分に抑制することが可能であって、表示装置等の光学機器内に存在する空隙等に介在させる光伝送粘着性シート等の部材として好適な成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、表示装置における光損失を低減するための部材について種々検討し、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として形成される成形体に着目した。そして、特定の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることにより、得られる成形体が適度な粘着性及び弾性を有し、透明性や耐久性にも優れるものとなることを見出した。更に、このような成形体を表示装置のバックライトにおける光源と導光板との間の空隙や、表示パネルと保護パネルとの間の空隙等に介在させた場合に、画像表示に影響を及ぼすことなく、不要な反射による光損失を充分に低減し、光伝送性の低下を抑制できることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として形成される成形体であって、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、主鎖に脂肪族炭化水素基を有し、かつ、主鎖及び/又は側鎖に非炭化水素基を有するものであり、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上、500000以下であることを特徴とする成形体である。
本発明はまた、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として含有する成形体用組成物であって、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、主鎖に脂肪族炭化水素基を有し、かつ、主鎖及び/又は側鎖に非炭化水素基を有するものであり、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上、500000以下であることを特徴とする成形体用樹脂組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
<脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー>
本発明の成形体を形成する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、重量平均分子量が1000以上、500000以下であるものである。重量平均分子量が1000未満であると、得られる成形体が脆くなり、取り扱い性に劣るものとなる。一方、重量平均分子量が500000を超えると、上記オリゴマーを含む樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、成形や取り扱いが困難となる。また、後述する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとの相溶性が悪くなり、得られる成形体の透明性が充分に高くならない。上記重量平均分子量として好ましくは、1500以上、450000未満であり、より好ましくは、2000以上、400000未満である。
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定することができる。
【0011】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するものである。適度な粘着性及び弾性を有する成形体を得る観点からは、上記オリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するもの、すなわち、多官能のオリゴマーであることが好ましい。
【0012】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーはまた、主鎖に脂肪族炭化水素基を有し、かつ、主鎖及び/又は側鎖に非炭化水素基を有するものである。上記オリゴマーがこのような構造を有するものであると、得られる成形体が透明性や耐久性、粘着性に優れたものとなる。非炭化水素基とは、例えば、ウレタン結合(−O−C(=O)−N(H)−)やエステル結合(−O−C(=O)−)のように、構造中に炭素及び水素以外の原子を少なくとも1つ有し、かつ、構造中に炭化水素を含まない部位である。
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、主鎖及び側鎖のいずれか一方のみに非炭化水素基を有していてもよいし、主鎖及び側鎖の両方に非炭化水素基を有していてもよい。
【0013】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーが主鎖に非炭化水素基を有する形態においては、該主鎖が、脂肪族炭化水素基と非炭化水素基とを含む有機骨格を有することになる。
上記主鎖が有する、脂肪族炭化水素基と非炭化水素基とを含む有機骨格としては、例えば、脂肪族炭化水素基(R)とウレタン結合とを有するウレタン骨格(−O−C(=O)−N(H)−R−);脂肪族炭化水素基(R)とエステル結合とを有するエステル骨格(−O−C(=O)−R−);脂肪族炭化水素基(R)とエーテル結合とを有するエーテル骨格(−O−R−);脂肪族炭化水素基(R)とカーボネート結合とを有するカーボネート骨格(−O−C(=O)−O−R−)等の1種又は2種以上が好適である。なお、上記エーテル骨格は、オキシアルキレン基からなるオキシアルキレン骨格(−RO−)を含むものとする。
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーが側鎖に非炭化水素基を有する形態としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマーの(共)重合体からなる(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格を有するオリゴマーを挙げることができる。
【0014】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ウレタン骨格、エステル骨格、エーテル骨格、カーボネート骨格、及び、(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有するものであることが好ましい。オリゴマーがこのような骨格を有するものであると、得られる成形体が透明性や耐久性、粘着性に更に優れたものとなる。
より好ましくは、ウレタン骨格、エステル骨格、エーテル骨格及びカーボネート骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有することであり、更に好ましくは、ウレタン骨格、エステル骨格及びエーテル骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有することである。
更により好ましくは、ウレタン骨格、エステル骨格、エーテル骨格及びカーボネート骨格のいずれかを2個以上有すること、すなわち、ポリウレタン骨格、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有することである。
一層好ましくは、ウレタン骨格、エステル骨格、エーテル骨格及びカーボネート骨格からなる群より選択される少なくとも2種の骨格を有することであり、特に好ましくは、ウレタン骨格と、非炭化水素基を有する他の有機骨格(例えば、(ポリ)エステル骨格、(ポリ)エーテル骨格、(ポリ)カーボネート骨格、(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格等)とを有することである。最も好ましくは、ウレタン骨格と(ポリ)エステル骨格とを有することである。
【0015】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーが主鎖にウレタン骨格を含むものであると、得られる成形体が機械的強度に優れたものとなる。また、上記オリゴマーが主鎖にエステル骨格、エーテル骨格又はカーボネート骨格、特に、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を含むものであると、得られる成形体の屈折率が、表示装置の保護部に使用されるアクリル樹脂(板)やガラス、光源ランプに使用されるガラス、導光板に使用されるアクリル樹脂(板)やポリカーボネート樹脂(板)等の屈折率に近くなるため、光の伝送効率を高めることができる。
なお、本明細書中では、主鎖にウレタン骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーをウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとも称することとし、ウレタン骨格の他に、例えば、エステル骨格やエーテル骨格等の他の有機骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、全て、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに分類されるものとする。つまり、例えばエステル骨格やエーテル骨格等を分子中に有するものであっても、更にウレタン骨格を有するものであれば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに含むものとする。
【0016】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。なお、この反応は、通常用いられる反応条件を採用することができる。
上記ポリオールとしては、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられる。ポリオールとして脂肪族ポリエステルポリオールを用いると、構造中にウレタン骨格とエステル骨格とを有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが得られることになる。同様に、ポリオールとして脂肪族ポリエーテルポリオールを用いると、構造中にウレタン骨格とエーテル骨格とを有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが得られ、ポリオールとして脂肪族ポリカーボネートジオールを用いると、構造中にウレタン骨格とカーボネート骨格とを有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが得られることになる。
【0017】
上記脂肪族ポリエステルポリオールの製造方法は特に限定されず、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸若しくは脂肪族ジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させても、ジオール又はジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させてもよい。この反応は、通常用いられる反応条件を採用することができる。
上記脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のアルキレングリコール類の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
上記脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸等の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0018】
上記脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合等のポリアルキレンオキシド類の1種又は2種以上を用いることができる。
上記脂肪族ポリカーボネートジオールは、低分子カーボネート化合物と脂肪族ジオールとのエステル交換反応で作られ、低分子カーボネート化合物としては、炭酸ジメチルを用いることができる。脂肪族ジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等の脂肪族炭化水素ジオール類の1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
上記ジイソシアネートとしては、直鎖式又は環式の脂肪族ジイソシアネートを用いることができる。代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペタアクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えば、EBECRYL230、270、9260、8296(ダイセルサイテック社製);CN9893、9788、983、980、981、991、9006、9010、9178(サートマー社製);UF−8001G(共栄社製);UV−7550B、6100B、3310B、3200B、3000B、3700B、3520TL、3210EA(日本合成化学社製)等が挙げられる。
なお、本明細書中、製造又は販売会社名が示された化合物等は、商品名を表すものとする。
【0021】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーのうち、ポリエステル骨格を有するオリゴマー(ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとも称する。)や、ポリエーテル骨格を有するオリゴマー(ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとも称する。)としては、構造中に、エステル骨格やエーテル骨格の他に、ウレタン骨格以外のその他の骨格を有していてもよく、(メタ)アクリロキシ基を構造の末端に有していても側鎖に有していてもよい。
上記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えば、CN294、CN2280、CN2270、CN2297、CN2470(サートマー社製)等が挙げられる。
【0022】
エーテル骨格を有する脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(たとえば、(ポリ)エーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー)におけるエーテル骨格のうち、オキシアルキレン骨格(オキシアルキレン鎖)としては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜30のオキシアルキレン鎖であることが好適である。
また上記(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格としては、任意の脂肪族(メタ)アクリレートモノマーを(共)重合してなる構造であればよく、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの他、後述する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー等の1種又は2種以上を(共)重合してなる構造等が挙げられる。粘着性に優れる成形体とするためには、上記(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格を形成する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとして、炭素数4以上の脂肪族鎖状炭化水素基を有するモノマー、脂肪族環状構造を有するモノマー、複素環構造を有するモノマー、ネオペンチル構造及び/又はアルキレングリコール構造(オキシアルキレン鎖)を有するモノマー、及び、1分子内に(メタ)アクリロイル基とその他の極性基とを有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましい。更に(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格が、(メタ)アクリレート系(共)重合体骨格を形成するモノマー全量100質量%に対して上記好ましいモノマーを50質量%以上含むものであることが好ましい。上記好ましいモノマーの具体例は、後述する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーにおいて例示する化合物と同様である。
【0023】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、成形体の耐光性や耐熱性を害しない範囲で芳香環を構造中に含んでいてもよい。例えば、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの総量を100質量%とすると、当該オリゴマー総量中に、芳香環の質量割合が20質量%以下となる範囲で含むことが好ましい。より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%、最も好ましくは0質量%、すなわち芳香環を含まないことである。
【0024】
<脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー>
本発明の成形体を形成する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとしては、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の脂肪族(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。なお、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの原料として用いた脂肪族(メタ)アクリレート化合物を、上記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとして用いることもできる。すなわち、原料として用いた脂肪族(メタ)アクリレート化合物は、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーそのものには該当しないため、「脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の脂肪族(メタ)アクリレート化合物」に該当する。
【0025】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとしては、炭素数4以上の脂肪族鎖状炭化水素基を有するモノマー、脂肪族環状構造を有するモノマー、複素環構造を有するモノマー、ネオペンチル構造及び/又はアルキレングリコール構造(オキシアルキレン鎖)を有するモノマー、1分子内に(メタ)アクリロイル基とその他の極性基とを有するモノマーであることが好ましい。このような構造を有する(メタ)アクリレートは、耐久性(耐光性や耐熱性、耐湿性)に優れた成形体を与えるモノマーである。より好ましくは、1分子内に(メタ)アクリロイル基とその他の極性基とを有するモノマーである。このようなモノマーは、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーとの相溶性に優れるため、得られる成形体が透明性に優れたものとなる。また、得られる成形体の耐湿性を向上させることもできる。
【0026】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーはまた、多官能、単官能のいずれのモノマーであってもよいが、単官能のモノマーであることが好ましい。これにより、適度な粘着性及び弾性を有する成形体を得ることができる。
【0027】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メタアクリレートモノマーよりもアクリレートモノマーの方が反応性が高く、しかも、軟質性に優れる成形体が得られやすい点で好ましい。
【0028】
上記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーのうち、炭素数4以上の脂肪族鎖状炭化水素基を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーにおける脂肪族鎖状炭化水素基は、特に限定されないが、炭素数4以上の、アルキル基やアルケニル基が好適である。
炭素数の上限は特に制限されないが、前記オリゴマーとの相溶性に優れる点から炭素数12以下が好ましい。特に好ましくは、炭素数4以上、12以下のアルキル基である。
上記炭素数4以上の脂肪族鎖状炭化水素基を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ブテニル(メタ)アクリレート、4−ペンテニル(メタ)アクリレート等のアルケニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
上記脂肪族環状構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーにおける脂肪族環状構造としては、例えば、シクロヘキシル構造、イソボルニル構造、ジシクロペンタニル構造、アダマンチル構造等が好適である。これにより、耐光性や耐熱性に更に優れたものとすることができる。中でも、より好ましくは、シクロヘキシル構造、イソボルニル構造である。
【0030】
上記脂肪族環状構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のシクロヘキシル構造を有する(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート等のイソボルニル構造を有する(メタ)アクリレート;アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート等のアダマンチル構造を有する(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましい。より好ましくは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートである。
【0031】
上記複素環構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のPT810;UCC社製のERL4234、4299、4221、4206;日立化成社製のFA−731A(トリアジン環を有する化合物;トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート)等が挙げられる。
【0032】
上記ネオペンチル構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー及びネオペンチル構造とアルキレングリコール構造とを有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。より好ましくは、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0033】
上記アルキレングリコール構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、エトキシ化ネオペンチルグリコール、プロポキシ化ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール、ジオールの(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールのいずれかのグリコールの(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートが好ましい。アルキレングリコール鎖が長過ぎると、得られる成形体の吸湿性をより充分に低減できないことがあり、アルキレングリコール鎖が短過ぎると、得られる成形体が、弾性が充分でないものとなる可能性がある。より好ましくは、これらのいずれかのグリコールのジ(メタ)アクリレートである。そのような、いずれかのグリコールのジ(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。より好ましくは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートである。これらの中でも、更に好ましくは、これらのいずれかのグリコールのジアクリレートである。メタクリレートよりもアクリレートの方が反応性が高く、しかも、軟質性に優れる成形体が得られやすい点で好ましい。
なお、上記アルキレングリコール構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーのうち、オキシアルキレン鎖の繰り返し構造を有し、かつ、重量平均分子量が1000以上のものは、構造上は上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーにも該当するものである。
【0035】
上記1分子内に(メタ)アクリロイル基とその他の極性基とを有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーは、その構造中に(メタ)アクリロイル基を1個と、その他の極性基を1個以上有していればよい。上記モノマーがその他の極性基を2個以上有する場合、その他の極性基は同じものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
上記その他の極性基は、極性を有する基(結合)であれば特に限定されないが、酸素原子を有する極性基であることが好ましい。上記酸素原子を有する極性基としては、ヒドロキシル基、ウレタン基(結合)、エステル基(結合)、エーテル基(結合)、カーボネート基(結合)、及び、これらの極性基を有する官能基等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基及びヒドロキシル基を有する官能基が好適である。さらに好ましくはヒドロキシル基を有する炭化水素基であり、特に好ましくは、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。
なお、(メタ)アクリロキシアルキル基のように、構造中に(メタ)アクリロイル基を含む極性基も、上記その他の極性基に含めることとする。
また、上述した複素環構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーや、アルキレングリコール構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーも、1分子内に(メタ)アクリロイル基とその他の極性基とを有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーに該当する。
【0036】
上記(メタ)アクリロイル基以外の極性基を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの好適な具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(エチルカルビトールアクリレート)、カプロラクトンアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレートである。
【0037】
上記成形体を形成するための脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとの組成比(脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー/脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー)は、質量比で30/70〜99/1であることが好ましい。オリゴマーとモノマーとの組成比が上記範囲にあると、粘着性に優れる成形体を容易に製造することができる。上記組成比として、より好ましくは、50/50〜95/5であり、更に好ましくは、60/40〜90/10である。
【0038】
<成形体用樹脂組成物>
本発明の成形体は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として含有する成形体用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう。)により形成されることが好ましい。脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー及び脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー及びこれらの好適な態様や質量比等は、上述したものと同様である。このような、上記脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと上記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として含有する成形体用樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
より好ましくは、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー、脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー及び重合開始剤を含む成形体用樹脂組成物により構成されることである。
上記樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー、脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー及び重合開始剤以外のその他の成分を含んでいてもよく、それらの成分は1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
上記樹脂組成物は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー及び脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーを重合必須成分とするものであるが、他の重合成分あるいはポリマー成分を更に含むことができる。
本発明の成形体が粘着性、軟質性及び光透過性などの特徴に優れるものとするためには、上記樹脂組成物に含有される重合必須成分の割合が、重合必須成分、他の重合成分及びポリマー成分の総量100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
また、上記他の重合成分としては、重量平均分子量が1000未満の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーや、脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー以外のビ二ル系モノマーが例示される。
脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー以外のビ二ル系モノマーとしては、たとえば、芳香族環状構造を有する(メタ)アクリレート系モノマーも使用できるが、その含有量は、後述するように重合必須成分総量100質量%に対して、芳香環の質量割合が20質量%以下となる範囲で含むことが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下であり、更により好ましくは、1質量%以下であり、最も好ましくは、0質量%、すなわち、芳香族環状構造を有する脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーを含まないことである。
上記ポリマー成分としては、脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの重合体、ポリイソプレンやポリブタジエン等のゴム成分、シリコンゴム等が例示される。
【0040】
また、上記樹脂組成物は、成形体の耐光性や耐熱性を害しない範囲で、芳香族環状構造を有するオリゴマーやモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、上記重合必須成分(脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー及び脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー)と上記他の重合成分との総量100質量%に対して芳香環の質量割合が20質量%以下となる範囲で含むことが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下であり、更により好ましくは、1質量%以下であり、最も好ましくは、0質量%、すなわち、芳香族環状構造を有するオリゴマー及びモノマーを含まないことである。
【0041】
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、酸無水物、アミン類、フェノール樹脂類等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0042】
上記重合開始剤の含有量としては、重合系、用いる重合開始剤やオリゴマー、モノマーの種類等によって適宜選択すればよい。
例えば、ラジカル重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合開始剤の含有量は、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー及び脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーの総量100重量部に対し、0.01〜10重量部とすることが好適である。より好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.2〜2重量部である。
【0043】
上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生して上記重合を開始させることができる化合物であれば特に限定されず、例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’アゾビス−2−メチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤類;過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ラウロイル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーイソノナノエート、t−アミルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系開始剤類;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系開始剤類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系開始剤類;ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等のチタノセン系開始剤類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系開始剤類等が挙げられる。
【0044】
上記樹脂組成物は、上述した必須成分の他に、組成物の粘度調整等を目的として、必要に応じて溶媒を含むことができる。溶媒としては、特に制限されず、従来公知の有機溶媒であれば使用することができるが、上述した脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー及び脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーを溶解するものが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、(ジ)エチレングリコールメチルエーテル、(ジ)エチレングリコールエチルエーテル、(ジ)エチレングリコールアセテート、(ジ)エチレングリコールジアセテート、(ジ)エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール及びその誘導体(エーテル、エステル)類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が好ましい。
【0045】
溶媒は、樹脂組成物を重合して成形体とする際に成形体中の気泡の原因となって光伝送性や透過性の低下を招くおそれがある。また、多量に用いると、組成物の粘性が低くなりすぎて成形体の膜厚や形状の制御性が低下する原因ともなる。したがって、溶媒を用いる場合、上記樹脂組成物の総量100質量%に対して30質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更により好ましくは5質量%以下、一層好ましくは1質量%以下である。特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、すなわち、溶媒を使用しないことである。
【0046】
上記樹脂組成物は、上述した成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、無機微粒子、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤や有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)、光増感剤等を含有していてもよい。
【0047】
上記樹脂組成物の硬化方法としては、通常の手法を採用でき、例えば、加熱や、活性エネルギー線の照射等により行うことができる。
例えば加熱により硬化させる場合、その硬化温度及び硬化時間は重合開始剤等に応じて適宜設定すればよく、例えば、25〜250℃が好ましく、より好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜180℃、特に好ましくは100〜180℃、最も好ましくは110〜150℃である。また、硬化時間は、例えば、上記ラジカル重合開始剤を重合開始剤として用いる場合、すなわちラジカル重合反応で硬化させる場合は、硬化時間を短時間としても充分に硬化反応を行うことができるため、硬化時間は20分以内であることが好ましく、より好ましくは15分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
【0048】
上記加熱硬化ではまた、空気中及び/又は窒素等の不活性ガス雰囲気の減圧下、加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。また、硬化温度を段階的に変化させてもよい。例えば、生産性向上等の観点から、樹脂組成物を型内で所定の温度・時間で保持した後、型から取り出して空気中及び/又は窒素等の不活性ガス雰囲気内に静置して熱処理することも可能である。また、活性エネルギー線照射による硬化を組み合わせてもよい。
【0049】
また活性エネルギー線照射により硬化させる場合、活性エネルギー線としては、ラジカル、カチオン等の活性種を生成させることができるものであればよく、例えば、紫外線、可視光線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線、マイクロ波、高周波、赤外線、レーザー光線等が好適であり、活性種を発生させる化合物の吸収波長を考慮して適宜選択すればよい。中でも、容易に取り扱うことができる点から、波長180〜500nmの紫外線又は可視光線が好ましく、特に、254nm、308nm、313nm、365nmの波長の光が硬化に有効である。
なお、上記活性エネルギー線照射による硬化は、空気中及び/又は不活性ガス中、減圧下、加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。
【0050】
上記波長180〜500nmの紫外線又は可視光線の光発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、エキシマーランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、エキシマーレーザー、太陽光等が好適である。また、これらの光源とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等を用いて熱エネルギーを加えてもよい。
【0051】
また電子線を用いて硬化させる場合には、加速電圧の下限を10kV以上、好ましくは20kV以上、より好ましくは30kV以上に設定し、上限を500kV以下、好ましくは300kV以下、より好ましくは200kV以下に設定した電子線を用いることが挙げられる。なお、電子線の照射量は、下限を2kGy以上、好ましくは3kGy以上、より好ましくは5kGy以上に設定し、上限を500kGy以下、好ましくは300kGy以下、より好ましくは200kGy以下に設定することが挙げられる。更に、上記電子線とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等を用いて熱エネルギーを同時に付与してもよい。
【0052】
上記活性エネルギー線照射の照射時間、すなわち活性エネルギー線による硬化での硬化時間は、活性エネルギー線の種類や照射量等によって適宜設定すればよい。例えば、波長180〜500nmの紫外線又は可視光線の照射時間は、0.1マイクロ秒〜30分が好ましく、より好ましくは0.1ミリ秒〜1分である。
【0053】
<成形体>
本発明の成形体の製造方法としては、上記樹脂組成物を基材上に塗布し、重合(硬化)反応させた後、硬化物を該基材から剥離する方法や、上記樹脂組成物を金型に注型して硬化させた後、硬化物を離型する方法(金型成形法)等が挙げられる。中でも、成形体を好ましい形状であるシート状に容易に成形できる点で、塗布による成形方法を採用することが好ましい。具体的には、上記樹脂組成物をPET等の高分子フィルムに塗布して重合させる方法が好適である。
【0054】
上記成形体は、耐光性や耐熱性を害しない範囲で、芳香族環状構造を有するオリゴマーやモノマーに由来する構造を含んでいてもよいが、その含有量は、成形体の総量100質量%に対する芳香環の質量割合で20質量%以下となる範囲が好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下であり、更により好ましくは、1質量%以下であり、最も好ましくは、0質量%、すなわち、芳香族環状構造を有するオリゴマー及びモノマーに由来する芳香族環状構造を含まないことである。
【0055】
上記成形体の形状は、シート状であることが好ましい。具体的には、成形体の厚みが100μm以上、2000μm以下であることが好ましい。成形体の厚みの下限として、より好ましくは200μmであり、更に好ましくは300μmであり、最も好ましくは400μmである。また、成形体の厚みの上限として、より好ましくは1500μmであり、更に好ましくは1000μmである。上記成形体がこのような厚みを有するものであると、光学機器等の内部に存在する空隙に隙間なく介在させることができる。
【0056】
上記成形体は、弾性体であることが好ましい。具体的には、上記成形体の20℃における貯蔵弾性率が、0.1〜30MPaであることが好ましい。より好ましくは、0.5〜20MPaであり、更に好ましくは、1〜10MPaである。
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(RSA−III、ティー・エイ・インスツルメント社製)により測定することができる。通常、−20℃〜100℃の温度範囲で測定を行う。本発明では、20℃における貯蔵弾性率を採用している。
上記成形体の硬さは、ショア硬度によっても評価することができる。この場合、ショアA硬度が70以下であることが好ましい。より好ましくは、60以下であり、更に好ましくは、50以下である。上記成形体のショアA硬度はまた、10以上であることが好ましい。より好ましくは、15以上である。ショアA硬度が上記範囲にある場合、上記成形体は衝撃吸収性に優れたものとなり、特に光伝送用途において優れた耐久性を発揮するものとなる。なおショアA硬度は、23℃恒温に保たれた空気雰囲気下で測定した値である。
ショアA硬度は、JISK 6253に基づき、A型デュロメーター(ゴム硬度計、アスカー社製)を用いて、15秒後の硬度を測定することにより確認できる。サンプル形状は幅100mm×奥行20mm×厚6mmとする。
【0057】
また上記成形体は、粘着性を有するものであることが好ましい。具体的には、粘着性をショア硬度によって評価する場合、上記成形体の23℃におけるショアA硬度が70以下であることが好ましい。より好ましくは、60以下であり、更に好ましくは、50以下である。上記成形体のショアA硬度はまた、5以上であることが好ましい。より好ましくは、10以上である。ショアA硬度が上記範囲にある場合、上記成形体は適度な粘着性を有するものであるため、被着面に凹凸があっても、空隙を生じることなく成形体を被着体と密着させることができる。
また、上記成形体は、粘着力が5g/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは10g/25mm以上であり、さらに好ましくは20g/25mm以上である。上記成形体の粘着力はまた、500g/25mm以下であることが好ましい。より好ましくは400g/25mm以下であり、さらに好ましくは300g/25mm以下である。粘着力は、23℃恒温に保たれた空気雰囲気下で、成形体シートに25mm幅のPETフィルム(厚さ25μm)を貼り付けて2Kgローラーで1往復圧着させ、圧着後1分以内に、300mm/minの剥離速度で180°方向へ剥離した際の粘着力として測定することができる。
【0058】
また上記成形体は、可視光透過率が80%以上であることが好ましい。具体的には、400nmにおける平行線透過率が80%以上であることが好ましい。これにより、特に光伝送体用途において要求される高い光透過性及び透明性を実現することができる。400nmにおける平行線透過率としてより好ましくは、85%以上であり、更に好ましくは、90%以上である。
透過率は、UV−VIS分光光度計(Agilent 8453、アジレント・テクノロジー社製)により、厚み1mmのサンプルを用いて測定することができる。
【0059】
また上記成形体は、屈折率が1.40〜1.60であることが好ましい。屈折率がこのような範囲にあると、上記成形体は、表示装置の保護部に使用されるアクリル樹脂(板)やガラス、光源ランプに使用されるガラス、導光板に使用されるアクリル樹脂(板)やポリカーボネート樹脂(板)等と同程度の屈折率を有することとなるため、高い光伝送効率を実現することができる。上記成形体の屈折率としてより好ましくは、1.45〜1.55であり、更に好ましくは、1.47〜1.53である。
屈折率は、屈折率計(アタゴ社製、DR−M2)を用いて測定することができる。
【0060】
また上記成形体は、耐熱性を有するものであることが好ましい。具体的には、耐熱試験後、すなわち、85℃加熱炉(雰囲気:空気)中で1000時間保持した後の成形体の400nmにおける平行線透過率が75%以上であることが好ましい。より好ましくは、80%以上であり、更に好ましくは、85%以上である。
【0061】
また上記成形体は、耐光性を有するものであることが好ましい。具体的には、耐光性試験後、すなわち、成形体をメタリングウエザーメーター(スガ試験機社製、M6T、100mW/cm)に設置し、100時間促進耐光性試験を行った後の、成形体の400nmにおける平行線透過率が75%以上であることが好ましい。より好ましくは、80%以上であり、更に好ましくは、85%以上である。
【0062】
上記成形体がシートである場合、該成形体が均質組成からなる単層構造のシートである形態以外に、成形体シートが、本発明の成形体シートからなる層を必須とする積層シートである形態も本発明の成形体に含まれる。
上記積層シートの構成としては、本発明の成形体の組成の範囲内で2種の異なる組成の層からなる積層構造を有するシート(積層シート:形態(i))である場合、あるいは本発明の成形体からなる層と本発明の成形体とは異なる層との積層構造を有するシート(積層シート:形態(ii))である場合が好ましい形態として例示される。
積層シートにおいては、少なくとも1つの層がショアA硬度70以下の軟質層であることが好ましい。
形態(i)は、本発明の成形体が2層以上積層したものであるが、その組合せは特に限定されない。
例えば、光伝送媒体用の接合材料として上記成形体(積層シート)を用いる場合、接合対象となる2つの被接合材料の材質や屈折率は通常異なる場合が多い。例えば、ガラスと樹脂との組合せ、アクリル樹脂とシリコーン樹脂との組合せ、ポリカーボネート樹脂とシリコーン樹脂との組合せ等である。従って、積層シートを2層又は3層以上の構成とし、各層を形成する成形体の屈折率を2つの被接続材料の屈折率の範囲で段階的に異なるものとしたり、被接続材料の材質に合わせて、最表層にあたる2層を極性(親水・疎水性)や粘着力の異なるものとしたりすることは好ましい形態である。積層シートをこのような形態とすることにより、光の伝送効率の高い接続を達成できる。これらの各層における特性は、層を形成するための組成物の組成を調整することにより制御できる。具体的には、重合必須成分である脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとの配合比率や脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量を異なるものとする等により、また必要に応じて前述した芳香環を有するモノマー、オリゴマー成分を成形体の特性を損なわない範囲で配合することにより、制御することができる。
【0063】
また本発明の成形体は、通常、シートを製造した後、使用途に供する場合、所望の形状に裁断加工する必要がある。特に、光伝送媒体用の接合材料に用いる場合は、高い加工精度が要求される。また、所望の形状に裁断加工された成形体を被接続材料の所望の位置に高い精度で貼り付ける、高い配置精度が要求される。成形体をこれら裁断加工精度、配置精度に優れたものとするためには、成形体を形成するための重合必須成分である脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーとして重量平均分子量の低いものを用いることが好ましい。具体的には、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーとして重量平均分子量が5000未満のものを用いることが好ましい。更に、重量平均分子量が4000未満のものを用いることが好ましい。また、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの合計量100質量%中、重量平均分子量が5000未満の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの割合が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。また、重合必須成分100質量%に対して、重量平均分子量が5000未満の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの割合が50質量%以上であることが好ましい。
しかしながら、上述したように組成を異なるものとすることにより成形体の屈折率、粘着力、表面極性等の各種特性も異なるものとなるため、裁断加工精度、配置精度に優れながら、光伝送媒体用の接続材料としての各種特性に優れた成形体(シート)とするためには、積層シートとすることが好ましい。すなわち、少なくとも1層を、裁断加工精度、配置精度に優れる上述の層とし、1種又は2種以上の他の層を所望の特性となる組成からなる層とする構成の積層シートとすることが好ましい。さらに、裁断加工精度、配置精度に優れる上述の層(層(A)ともいう。)と、粘着力に優れる層(層(B)ともいう。)とを必須とする積層シートとすることが好ましい。
この場合、層(A)は、層を形成するための脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーとして重量平均分子量が5000未満のものを用いてなる層であり、好適な態様は上述したとおりである。
一方、層(B)は、層を形成するための脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーとして重量平均分子量が5000以上のものを用いてなる層であることが好ましい。該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーとしてより好ましくは、重量平均分子量が6000以上のものであり、さらに好ましくは重量平均分子量が8000以上のものである。また、脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの合計量100質量%中、重量平均分子量が5000以上の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの割合が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。また、重合必須成分100質量%に対して、重量平均分子量が5000以上の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの割合が50%以上であることが好ましい。
【0064】
上述の形態(i)の積層シートは、本発明の組成の異なる2種の成形体をそれぞれ準備しこれらを押出成形等により張り合わせて積層したものや、本発明の成形体であるシート(1)の表面に、本発明の成形体用組成物であるが上記シート(1)を形成するための樹脂組成物とは異なる樹脂組成物を塗布、硬化又は注型重合等することにより、2層以上からなる積層構造としたものが例示される。したがって、形態(i)の積層シートは、本発明の成形体用樹脂組成物より形成することができる。
積層シートの厚みは、本発明の成形体をシート状とする場合の好ましい厚みとして述べたのと同様の範囲であることが好ましい。また、積層シートを構成する各層の厚みは、通常、100〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0065】
上記形態(ii)の場合、本発明の成形体とは異なる組成の層(異質層ともいう。)は、組成、物性等において特に制限されないが、形態(i)の場合と同様、本発明の成形体からなる層と比較して、屈折率、極性、粘着力等の異なるものとすることが好ましく、特に、裁断加工精度、配置精度に優れる層とすることが好ましい。裁断加工精度、配置精度に優れる層としては、たとえば、従来公知の熱可塑性樹脂フィルム、(メタ)アクリル重合体膜などが好ましい。
該熱可塑性樹脂フィルムの中でも、PET、PENなどのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリイミド樹脂;PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂)、ETFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂)などのフッ素樹脂が好ましく、特に、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂が成形体層との密着性に優れる理由から好ましい。また、コロナ処理やプラズマ処理などの親水化処理を施したものも成形体からなる層との密着性に優れる点で好ましい。熱可塑性樹脂フィルムを異質層とする積層シートは、たとえば、熱可塑性樹脂フィルムに本発明の成形体用樹脂組成物を塗布、重合することにより製造することができる。
また、上記(メタ)アクリル重合体膜としては、前述の脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーおよび重量平均分子量が1000未満の脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合成分を含む重合性組成物を(共)重合してなる(共)重合体膜が好ましい。更に、裁断加工特性に優れる成形体とするためには、上記モノマーまたはオリゴマーとして多官能重合成分を用いることが好ましく、重合成分総量100質量%に対して、多官能重合成分の割合が5質量%以上であることが好ましい。また成形体層に該(メタ)アクリル重合体膜を形成する際の重合収縮が抑えられ、成形体層との界面における密着力の優れたものが得られやすい点から、重合成分100質量%に対して上記オリゴマーを50質量%以上とすることが好ましい。(メタ)アクリル重合体膜を異質層とする積層シートは、たとえば、本発明の成形体シートに上記重合性組成物を塗布、重合する方法、(メタ)アクリル重合体膜に本発明の成形体用樹脂組成物を塗布、重合する方法などにより製造することができる。
上記形態(ii)の場合においては、本発明の成形体からなる層の厚みは、本発明の成形体をシート状とする場合の好ましい厚みとして述べたのと同様の範囲内とすることが好ましく、上記異質層の厚みは100〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0066】
上記成形体がシートである場合、該成形体は上述した単層構造または積層構造の状態で、例えば光伝送媒体を構成する接合層として使用されるが、少なくとも一方の面が粘着性の弾性体であるため、接合に供する形態として、成形体の片面もしくは両面が、高分子フィルムで保護された形態であると、取扱い性に優れるため好ましい。
保護フィルムとしては、成形体表面の粘着力の大きさに応じて、適宜選択される。通常、粘着力5g/25mm以上の粘着力の高い表面(高粘着性表面ともいう。)に対しては、離型処理された高分子フィルム、あるいは、特に離型処理や粘着処理を施していない高分子フィルム(未処理フィルムともいう。)が好ましく使用される。
離型処理された高分子フィルムの好適な具体例としては、例えば、パナピールTPシリーズ(パナック社製)、ユニピールTRシリーズ(ユニチカ社製)等の離型処理PETフィルムが挙げられる。
また、未処理フィルムの好適な具体例としては、ルミラーT60、ルミラーS10(東レ社製)、テイジンテトロンG2、O3(帝人デュポンフィルム社製)等のPET、PENなどのポリエステル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリカーボネート;PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂)、ETFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂)等のフッ素樹脂等の高分子フィルムがあげられる。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、PETフィルムが最も好ましい。
高分子フィルムの厚みとしては特に限定されないが、後術する裁断加工、特にハーフカット状態で加工する場合に制御し易い点から、50μm以上が好ましい。より好ましくは75μm以上であり、更に好ましくは100μm以上である。一方、上限として、取扱い性に優れる点から1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0067】
一方、粘着力5g/25mm未満の粘着力の低い表面(低粘着性表面ともいう)に対して使用する保護フィルムとしては、当該低粘着性表面と接する側の、基材フィルムの表面に粘着層を有する高分子フィルム(粘着処理フィルムともいう)が好ましい。
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル等が好ましく、中でもポリエステルが好ましく、特にPETが好ましい。
粘着層としては自己粘着層(エラストマー層)、アクリル粘着層が好ましく、アクリル粘着層がより好ましい。
自己粘着層を有する高分子フィルムとしては、例えば、ゲルポリシリーズ(パナック社製)、CPETTシリーズ(王子タック社製)等の自己粘着PETフィルムが好ましく例示される。アクリル粘着層を有する高分子フィルムとしては、例えば、再剥離フィルムNTシリーズ、GNシリーズ、GSシリーズ(パナック社製)、耐熱再剥離フィルムCTシリーズ、HTシリーズ、STシリーズ(パナック社製)等のPETフィルムが好ましく例示される。
粘着処理フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、裁断加工をし易い点から、50μm以上が好ましい。より好ましくは75μm以上である。一方、上限として、取扱い性に優れる点から1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。
【0068】
成形体シートが、上述の積層成形体である場合、上記高粘着性表面側には、保護フィルムとして、上述の離型処理フィルム又は未処理フィルムを積層し、上記低粘着性表面側には、粘着処理フィルムを配してなる形態が好ましい。このような形態である場合、低粘着性表面側の粘着処理フィルムにおける粘着力は、積層成形体における高粘着性層が有する粘着力よりも低いことが好ましい。このようにすることで、保護フィルムを剥離する際、積層成形体における層間剥離や層間破壊を抑止することができる。
【0069】
保護フィルムを配した成形体シートの製造方法は、特に制限されないが、例えば、第1の保護フィルムの表面に、本発明の成形体用樹脂組成物を塗布し硬化させた後に、第1の保護フィルムの非接触面側に第2の保護フィルムをラミネート処理により被着させる方法や、本発明の成形体用樹脂組成物から注型重合等により成形体シートを形成した後、両面を保護フィルムで挟んだ状態でラミネート処理することによって被着させる方法等が例示される。上述の硬化は熱硬化、光硬化のいずれも好ましいが、膜厚制御性に優れる点から光硬化が好ましい。光硬化としては紫外線硬化が好ましい。
また、成形体シートが積層成形体の場合も同様にして保護フィルムで表面が保護されたシートを作製することができるが、粘着力が異なる層からなる積層成形体の製造も含めた特に好ましい製法としては、以下の方法が採用される。
工程1)第1の保護フィルムの表面(離型処理フィルムの場合は離型処理された表面)に、粘着力の高い、好適には高粘着性層を形成するための成形体用樹脂組成物を塗布し硬化させることにより、第1の保護フィルム表面に高粘着性層からなる軟質弾性体層を形成する。
工程2)軟質弾性体層の表面に、該層よりも粘着力の低い層、好適には、低粘着性層を形成する組成物を塗布し硬化させることにより、第1の保護フィルム表面に積層成形体層を形成する。
工程3)積層成形体層の表面(より低粘着性の表面)に、第2の保護フィルムを積層した状態でラミネート処理する。
上記工程1)〜3)により、第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムで保護された積層成形体を製造することができる。
上述の工程1)における第1の保護フィルムとしては、離型処理又は未処理フィルムが好ましく、上述の工程3)における第2の保護フィルムとしては、粘着処理フィルムが好ましい。また、工程1)及び2)における硬化は熱硬化、光硬化のいずれも好ましいが、膜厚制御性に優れる点から光硬化が好ましく、光硬化としては紫外線硬化が好ましい。
成形体シートが上述した裁断加工性、配置特性に優れる層を有する積層シートである場合も、片面または両面を保護フィルムを配する構成とすることによって、裁断加工性、配置特性にさらに優れたものとなるので好ましい。用いる保護フィルムの種類は、上述したように各層の粘着力の大きさに応じて選択することが好ましい。
なお、成形体が単層構造である場合及び積層構造である場合のいずれにおいても、成形体の両面が保護フィルムにより保護された形態を説明したが、本発明はこれらの形態に限定されない。例えば、成形体の一方の面のみに保護フィルムを配する形態も本発明の好ましい実施形態の1つである。成形体の片面のみに保護フィルムを配する形態において、成形体が上述した積層成形体である場合には、粘着性の高い層のみに保護フィルムを配してなる形態が好ましい。
【0070】
更に、本発明の成形体は、使用途に必要な幅や長さ、形状に裁断加工されてなることが好ましい。裁断加工方法としては、レーザーカット、トムソン打ち抜き、スリット、シャーリング等の方法が好ましく例示される。
成形体あるいは保護フィルムを配した成形体が、保護フィルムごと、必要な大きさ、形状に裁断加工された形態でもよいが、以下のような形態であることが好ましい。すなわち、必要な大きさ、形状に裁断加工された成形体の少なくとも一方の表面に、該成形体より大きな保護フィルム(成形体の表面を完全に覆うことができ、かつ、余剰部分が存在する保護フィルム)を配した形態であることが好ましい。このような形態においては、保護フィルムは成型体の表面を保護するだけでなく、成形体を支持する支持体としての機能をも有する。成形体がこのような形態で供給され、例えば接合材料として使用される場合には、高い位置精度で且つ効率的に被着媒体を接合することができる。
更に、支持体としての保護フィルムは、ハーフカットされた状態であることが好ましい。ハーフカットされた状態とは、成形体より大きな保護フィルムが、成形体の大きさ、形状に合わせて厚み方向に一部の長さだけカッティングされた状態をいう。このような状態の保護フィルムにおいては、成形体の表面を覆った際の余剰部分が完全にはカットされていないため、支持体としての機能が保持されている。このような形態とすることで、使用時に保護フィルムを成形体から容易に剥離することができる。
より好ましい形態は、成形体の両面に保護フィルムを配し、一方の保護フィルム及び成形体は所望の大きさ、形状に裁断されており、他方の保護フィルムは裁断されていないか、あるいはハーフカットされた状態、すなわち支持体としての機能を有する状態である形態である。特に好ましくは、上記他方の保護フィルムがハーフカットされた状態である形態である。
また、成形体の両面に保護フィルムが配されてなる場合であって、一方の保護フィルムが離型処理フィルム又は未処理フィルムであり、他方の保護フィルムが粘着処理フィルムである場合、粘着処理フィルムは成形体と同様の形状、大きさに裁断され、離型処理フィルム又は未処理フィルムは支持体としての機能を有した形態であることが好ましい。このような形態は、成形体が積層成形体である場合に採用することが好ましい。また、裁断加工する場合には、粘着処理フィルム側よりカッティングを行うことが好ましい。このように裁断加工することによって、ハーフカットされた保護フィルム(離型処理フィルム又は未処理フィルム)上に、成形体が保護フィルム(粘着処理フィルム)とともに所望の大きさ、形状にカッティングされた構成の積層体が、複数個、支持、固定されたシートが得られる。
【0071】
<成形体の用途>
本発明の成形体は、高い光透過性及び透明性を有するものであるため、光学用途に好適に適用できる。また、上記成形体は、適度な弾性及び粘着性を有し、被着体との密着性に優れるとともに、耐久性に優れたものでもあるため、例えば、表示装置等の光学機器内に存在する空隙に介在させる部材として使用することもできる。特に、液晶ディスプレイ等のバックライトの光源と導光板との間や、表示パネルと保護パネルとの間等に存在する空隙に介在させる光伝送体(光伝送粘着性シート)に適用することが好ましい。このような光伝送体には、被着体との間に空隙を生じることなく被着面に密着でき、透明性に優れ、かつ、使用環境下で劣化しにくいことが要求される。本発明の成形体は、粘着性、透明性及び耐久性に優れるため、上記のような光伝送体として高い性能を発揮することができる。このように、上記成形体が光伝送体用成形体であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【発明の効果】
【0072】
本発明の成形体は、上述のような構成であるので、適度な弾性及び粘着性を有するとともに、透明性や耐久性に優れ、光伝送性の低下を充分に抑制することが可能である。そして、このような成形体は、表示装置等の光学機器内に存在する空隙等に介在させる光伝送粘着性シート等の部材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0074】
<脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー(以下、A成分ともいう。)の合成>
合成例1
温度計、冷却器、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応器に、2−エチルヘキシルアクリレート208.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.4部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.21部、溶剤として酢酸エチル280.6部を仕込んだ後、反応器を窒素ガスで置換した。次に、上記の混合物を撹拌しながら内温を85℃に昇温した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(商品名「ABN−E」;日本ヒドラジン工業社製)0.175部、溶剤として酢酸エチル3.15部を添加して反応を開始した。重合開始から10分後に、2−エチルヘキシルアクリレート486.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.49部の混合物を滴下ロートから60分かけて滴下した。また、重合開始剤としてABN−E0.175部、溶剤として酢酸エチル14部を別の滴下ロートより同様に滴下した。滴下終了後に酢酸エチル119部で滴下ロートを洗浄しながら反応器に添加した。その後、還流温度にて5時間反応させた後、酢酸エチル105部で希釈を行い、不揮発分濃度54%のアクリル系重合体の溶液を得た。
温度計、冷却器、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応器に、上記アクリル系重合体溶液を固形分換算で100部、重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名「アンテージW−400」;川口化学工業社製)0.06部、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズAOI」;昭和電工社製)0.36部を加え、窒素/空気=2/1の混合ガスをバブリングさせながら撹拌を行い、内温を70℃に昇温した。その後、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ0.04部を添加し、70℃で3時間反応させた後、FT−IR分析によりイソシアネート基に由来する2273cm−1ピークの消失を確認した。80℃に昇温し、10Torrで3時間撹拌しながら脱溶媒し、オリゴマー(a)を得た。
【0075】
合成例2
温度計、冷却器、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応器に、エチルカルビトールアクリレート57部、アクリル酸3部、溶剤としてトルエン420部を仕込んだ後、反応器を窒素ガスで置換した。次に、上記の混合物を撹拌しながら内温を85℃に昇温した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(商品名「ABN−E」;日本ヒドラジン工業社製)2.4部、溶剤としてトルエン24部を添加して反応を開始した。重合開始から10分後に、エチルカルビトールアクリレート513部、アクリル酸27部、重合開始剤としてABN−E3.6部、溶剤としてトルエン48部の混合物を滴下ロートから90分かけて滴下した。また、連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸3部、溶剤としてトルエン60部を別の滴下ロートより同様に滴下した。滴下終了後にトルエン48部で滴下ロートを洗浄しながら反応器に添加した。85℃で90分保持後、100℃に昇温して90分間反応させた後、冷却して、不揮発分濃度51%のアクリル系重合体の溶液を得た。
温度計、冷却器、ガス導入管及び撹拌機を備えた反応器に、上記アクリル系重合体溶液を固形分換算で335部、重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名「アンテージW−400」;川口化学工業社製)1.66部を加え、窒素/空気=2/1の混合ガスをバブリングさせ撹拌を行いながらグリシジルメタクリレート11.2部、触媒としてオクテン酸亜鉛0.33部を添加し、100℃で3時間反応させた後、110℃に昇温してさらに6時間反応させ、GC分析によりグリシジルメタクリレートの消失を確認した。100℃に昇温し、10Torrで3時間撹拌しながら脱溶媒し、オリゴマー(b)を得た。
【0076】
<光伝送粘着性シート用樹脂組成物の調製>
調製例1
CN9893(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、サートマー社製)80部、SR502(エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、サートマー社製)20部、IRGACURE184(チバ・ジャパン社製)1部をそれぞれ量り取って混合し、樹脂組成物(1)を得た。
【0077】
調製例2〜36
表1及び2に示すA成分と、表1及び2に示す脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー(以下、B成分ともいう。)とを表1及び2に示す割合で用いた以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物(2)〜(36)を得た。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
表1及び2中の各化合物は、以下のとおりである。
CN9893:サートマー社製、ポリエステル系ウレタンアクリレート
CN991:サートマー社製、ポリエステル系ウレタンアクリレート
UV−3000B:日本合成化学社製、ポリエステル系ウレタンアクリレート
CN9002:サートマー社製、ポリエーテル系ウレタンアクリレート
CN9178:サートマー社製、ポリエーテル系ウレタンアクリレート
CN966J75:サートマー社製、ポリエステル系ウレタンアクリレート75%/イソボルニルアクリレート25%
CN966H90:サートマー社製、ポリエステル系ウレタンアクリレート90%/エトキシエトキシエチルアクリレート10%
CN2271E:サートマー社製、ポリエステルアクリレート
CN2273:サートマー社製、ポリエステルアクリレート
UC−102:クラレ社製、メタクリロイル基変性ポリイソプレン
CN9782:サートマー社製、ポリエステル系ウレタンアクリレート(芳香族系)
CN2254:サートマー社製、ポリエステルアクリレート(芳香族系)
CN2270:サートマー社製、ポリエステルアクリレート
【0081】
BA:ブチルアクリレート
IB−XA:共栄社化学社製、イソボルニルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシルエチルアクリレート
HPA:ヒドロキシルプロピルアクリレート
SR285:サートマー社製、テトラヒドロフルフリルアクリレート
SR256:サートマー社製、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(別名エチルカルビトールアクリレート)
SR495B:サートマー社製、カプロラクトンアクリレート
NP−A:共栄社化学社製、ネオペンチルグリコールジアクリレート
SR502:サートマー社製、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド9モル付加物のトリアクリレート
【0082】
<光伝送粘着性シートの作製>
実施例1〜27、比較例1〜7
調製例1〜27及び調製例30〜36で得た樹脂組成物(1)〜(27)及び樹脂組成物(30)〜(36)を1mmスペーサーを入れた2枚のガラス板間に注型し、UV照射(高圧水銀ランプ、ウシオ電機社製、照射量500mJ/cm)して厚み1mmのシート(1)〜(27)及びシート(比較1)〜(比較7)を夫々得た。
【0083】
実施例28
調製例28で得た樹脂組成物(28)を0.5mmスペーサーを入れた2枚のガラス板間に注型し、UV照射(高圧水銀ランプ、ウシオ電機社製、照射量500mJ/cm)して軟層シートを得た。更にその上に調製例29で得た樹脂組成物(29)を0.5mmスペーサーを入れて注型し、同条件で硬化させて、厚み0.5mmの層(a)と厚み0.5mmの層(b)とからなる2層構造のシート(28)を得た。
【0084】
実施例29(保護フィルムを配した形態)
調製例22で調製した樹脂組成物(22)を、PETフィルム(ルミラーT60、厚み100μm、東レ株式会社製)に塗布し、UV照射(高圧水銀ランプ、ウシオ電機社製、照射量500mJ/cm)して厚み600μmの本発明の成形体からなる層(a)を得た。更にその上に調製例29で得た樹脂組成物(29)を同条件で塗布、硬化させることにより、PETフィルム上に、厚み200μmの層(b)が層(a)表面に形成された2層構造の成形体層が形成されたシート(29)を得た。
【0085】
実施例30(保護フィルムを配した形態)
調製例27で調製した樹脂組成物(27)を、PETフィルム(ルミラーT60、厚み100μm、東レ株式会社製)に塗布し、UV照射(高圧水銀ランプ、ウシオ電機社製、照射量500mJ/cm)して厚み300μmの本発明の成形体からなる層(a)を得た。更にその上に調製例1で得た樹脂組成物(1)を同条件で塗布、硬化させることにより、PETフィルム上に、厚み600μmの層(b)が層(a)表面に形成された2層構造の成形体層が形成されたシート(30)を得た。
【0086】
なお、シート(29)及び(30)は、PETフィルムの剥離性に問題ないものであった。すなわち、目視による判断であるが、成形体層からPETフィルムを剥離しても、剥離したPETフィルムへの成形体層の添着は認められず、成形体層の層(b)と層(a)間の剥離も認められなかった。
【0087】
上記実施例1〜30及び比較例1〜7で得たシート(1)〜(30)及びシート(比較1)〜(比較7)のショアA硬度、貯蔵弾性率、屈折率、透明性、耐熱性、耐光性、耐湿性、密着性、表面平滑性、取り扱い性(脆さ)及び粘着力を以下に示す方法にて測定し、結果を表3〜5に示した。
なお、貯蔵弾性率、透明性、耐熱性、耐光性、耐湿性及び粘着力評価では、試料として1mmスペーサーを入れた2枚のガラス板間に注型して得られた厚さ1mmのシート(評価用シート)を使用した。実施例28〜30で得られた多層構造を有するシートにおいては多層構造を構成する各層について上述の厚さ1mmのシートを作成したものを上記評価用シートとした。
【0088】
<ショアA硬度>
JISK 6253に基づき、A型デュロメーター(ゴム硬度計、アスカー社製)を用いて、15秒後の硬度を測定した。サンプル形状は幅100mm×奥行20mm×厚6mmとした。測定は、23℃恒温に保たれた空気雰囲気下で行った。
【0089】
<貯蔵弾性率>
動的粘弾性測定装置(RSA−III、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、20℃における値を測定した。
【0090】
<屈折率>
屈折率計(アタゴ社製、DR−M2)を用いて測定した。
【0091】
<透明性>
UV−VIS分光光度計(Agilent 8453、アジレント・テクノロジー社製)を用いて、400nmにおける平行線透過率を測定することにより評価した。400nmにおける平行線透過率が80%以上であるものを○と評価した。
【0092】
<耐熱性>
85℃加熱炉(雰囲気:空気)中で1000時間保持する耐熱試験を行い、試験後のシートの400nmにおける平行線透過率を測定し、以下の基準で評価した。
○:平行線透過率が80%以上
△:75%以上80%未満
×:75%未満
【0093】
<耐光性>
評価用シートをメタリングウエザーメーター(スガ試験機社製、M6T、100mW/cm)に設置し、100時間促進耐光性試験を行った後の、シートの400nmにおける平行線透過率を測定し、以下の基準で評価した。
○:平行線透過率が80%以上
△:75%以上80%未満
×:75%未満
【0094】
<耐湿性>
評価用シートを85℃、85%RHの条件下で100時間保持し、目視にて以下の基準で評価した。
○:透明
△:ヘイズが発生
【0095】
<密着性>
10cm×10cm(厚さ1mm)のシートを平滑なPMMA板に貼り付け、直径2mm以上の気泡の数を数え、以下の基準で評価した。
◎:5個未満
○:5個以上10未満
△:10個以上
【0096】
<表面平滑性>
1mm厚に塗工して硬化して得られた硬化膜の表面の状態を目視で評価した。
○:ムラがない平滑なもの
△:一部にムラが発生するもの
×:全体にムラが発生するもの
【0097】
<取り扱い性(脆さ)>
引っ張り試験機(インストロン社製)を用いて、シート幅25mmの試験片を、つかみ間隔100mm、引張速さ300mm/minで引っ張り、切断までの伸び率を測定し、以下の基準で評価した。
○:伸び率が30%以上
△:伸び率が10%以上、30%未満
×:伸び率が10%未満
【0098】
<粘着力>
評価用シートに25mm幅のPETフィルム(厚さ25μm)を貼り付け、2Kgローラーで1往復圧着させた。圧着後1分以内に、300mm/minの剥離速度で180°方向へ剥離した際の粘着力を測定した。これらの測定は、23℃恒温に保たれた空気雰囲気下で行った。
【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
表3〜5に示す結果から、A成分(脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマー)として主鎖が脂肪族炭化水素骨格のみからなるものを用いると(比較例1、2)、成形体(シート)の透明性が充分でないか、又は、耐熱性や耐光性が充分高くならないことが分かる。また、A又はB成分として芳香族化合物を用いると(比較例3〜5)、成形体の耐光性が充分高くならないことが分かる。また、A成分として重量平均分子量が小さい(1000未満の)ものを用いると(比較例6)、成形体が脆く取り扱い性に劣るものとなり、更に密着性や表面平滑性も充分高くならないことが分かる。また、成形体がA成分を含まないものであると(比較例7)、充分な取り扱い性、表面平滑性、密着性が得られないことが分かる。
【0103】
実施例31(保護フィルムを配し、裁断加工した形態)
調製例28で調製した樹脂組成物(28)を、第1の保護フィルムとしてのPETフィルム(ルミラーT60、厚み100μm、東レ株式会社製)に塗布し、UV照射(高圧水銀ランプ、ウシオ電機社製、照射量500mJ/cm)して厚み400μmの本発明の成形体からなる層(a)を得た。更にその上に調製例29で得た樹脂組成物(29)を同条件で塗布、硬化させて厚み400μmの層(b)が層(a)表面に形成された2層構造の成形体層を得た。次に層(b)の表面に、第2の保護フィルムとしてのアクリル粘着処理PETフィルム(再剥離フィルムGN75、厚み75μm、パナック社製)のアクリル粘着層側を積層した状態でラミネート処理を行うことによって、第2の保護フィルム/層(b)/層(a)/第1の保護フィルムの順に積層されてなるシート(31)を得た。層(a)の粘着力は40g/25mmであり、層(b)の粘着力は5g/25mm未満であった。
続いて、シート(31)を以下のように裁断加工した。
すなわち、シート(31)に対し、トムソン打ち抜き法(直線刃が平行に5.0mm間隔で10本並んだ打ち抜き刃による打ち抜き法)により、幅5.0mmのテープ状となるように、第2の保護フィルム側より、裁断加工を行った。
得られた裁断加工シートについて、長尺方向に垂直な断面をマイクロメーターにより確認した結果、第2の保護フィルム、成形体層(層(b)/層(a))は、全て4.95〜5.05mmの幅にカッティングされており、第1の保護フィルムは軟質層接触側の厚み20μmまでカッティングされたものであった。すなわち、裁断加工シートは、幅5.00mmのテープ状にカッティングされた成形体層(保護フィルム付き)が長尺方向に多数配列した状態で、ハーフカットされた保護フィルム(支持体)上に支持、固定されたものであることが確認された。
【0104】
<テープ粘着試験>
実施例17及び28〜30でそれぞれ得られたシートを幅5.0mm、長さ100mmのテープ状に裁断したテープをそれぞれ5本用意した。また、実施例31で得られた裁断加工シートを保護フィルムを配した状態で、成形体層の長さが100mmのテープ状となるようにカッティングした。
上記のようにして準備した各実施例のテープを、100mm角のガラス板に10mmおきに(テープとテープの間の非接着部分の巾が5mmとなるように)、且つ、各テープが直線となるようにテープを順次粘着させ5本のテープが並んだガラス板を得た。実施例28〜30のテープは、層(a)側を粘着面としてガラス板に粘着させた。実施例29及び30のテープは、PETフィルムを剥離してから、粘着させた。また実施例31のテープは、裁断加工シートにおける、第1の保護フィルムから、第2の保護フィルムを配した積層成形体を剥離して積層成形体(層(a))側を粘着面としてガラス板に粘着させた。
得られたガラス板上のテープの配列状態を目視で観察したところ、以下の結果が得られた。
(実施例17のテープの配列状態)
5本中、5本とも長さ方向で僅かに曲がっている部分があり、任意の2本のテープ間の幅が均等とはいえない。
(実施例28〜30のテープの配列状態)
5本中、3本は、テープが曲がることなく直線性に優れる状態で粘着されている。他の2本は、一部、非直線部分が認められた。
(実施例31のテープの配列状態)
5本とも、テープが曲がることなく、直線性に優れる状態で粘着されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として形成される成形体であって、
該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、主鎖に脂肪族炭化水素基を有し、かつ、主鎖及び/又は側鎖に非炭化水素基を有するものであり、
該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上、500000以下である
ことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーは、1分子内に、(メタ)アクリロイル基とその他の極性基とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記その他の極性基は、酸素原子を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
前記成形体は、光伝送体用成形体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーと脂肪族(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として含有する成形体用樹脂組成物であって、
該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーは、主鎖に脂肪族炭化水素基を有し、かつ、主鎖及び/又は側鎖に非炭化水素基を有するものであり、
該脂肪族(メタ)アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上、500000以下である
ことを特徴とする成形体用樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−72328(P2012−72328A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219907(P2010−219907)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】