説明

成形印刷物の製造方法

【課題】効率よく所望の形態を有する成形印刷物を製造する。
【解決手段】第1形態情報を含む図面を作成する図面作成工程と、作成された前記図面に基づいて、ワークに画像を形成する画像形成工程と、画像が形成された前記ワークを成形して成形印刷物を形成する成形工程と、形成された前記成形印刷物の第2形態情報を取得する形態情報取得工程と、前記第1形態情報と前記第2形態情報とを比較する比較工程と、比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1形態情報を補正する図面補正工程と、を含み、画像形成工程では、補正された前記図面に基づいて、前記ワークに画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム等の基材に所定の画像を描画し、描画された基材を金型等で形成することにより、成形印刷物を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−173987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、画像が形成されたフィルムを成形する場合、フィルムが成形型に倣って伸ばされる。この際、フィルムとともに画像も伸ばされる。このため、成形された成形印刷物において所望の色合いや形状等が得られない場合がある。このような場合には、フィルムに画像を描画する描画条件を修正(補正)等する必要がある。しかしながら、特に色合いを目視による情報に基づいて、描画条件の修正(補正)等を行うと、主観的に得られた情報に基づくため、所望する色合い等を得るまでに時間がかかってしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる成形印刷物の製造方法は、第1形態情報を含む図面を作成する図面作成工程と、作成された前記図面に基づいて、ワークに画像を形成する画像形成工程と、画像が形成された前記ワークを成形して成形印刷物を形成する成形工程と、形成された前記成形印刷物の第2形態情報を取得する形態情報取得工程と、前記第1形態情報と前記第2形態情報とを比較する比較工程と、比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1形態情報を補正する図面補正工程と、を含み、前記画像形成工程では、補正された前記図面に基づいて、前記ワークに画像を形成することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、形成された成形印刷物の形態情報が取得される。この形態情報は、例えば、数値データとすることができる。そして、基の第1形態情報と第2形態情報とを比較することにより、客観的に差異を把握することができる。これにより、容易に図面を補正し、効率よく所望の形態を有する成形印刷物を製造することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる成形印刷物の製造方法では、前記第1形態情報は、数値化された第1色情報を含み、前記形態情報取得工程では、前記成形印刷物の数値化された第2色情報を取得し、前記比較工程では、前記第1色情報と前記第2色情報とを比較し、前記図面補正工程では、比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1色情報を補正することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、形成された成形印刷物の色情報が取得される。この色情報は、例えば、数値データとすることができる。そして、基の第1色情報と第2色情報とを比較することにより、客観的に差異を把握することができる。これにより、容易に図面を補正し、効率よく所望の形態を有する成形印刷物を製造することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる成形印刷物の製造方法では、前記第1形態情報は、数値化された第1形状情報を含み、前記形態情報取得工程では、前記成形印刷物の数値化された第2形状情報を取得し、前記比較工程では、前記第1形状情報と前記第2形状情報とを比較し、前記図面補正工程では、比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1形状情報を補正することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、形成された成形印刷物の形状情報が取得される。この形状情報は、例えば、数値データとすることができる。そして、基の第1形状情報と第2形状情報とを比較することにより、客観的に差異を把握することができる。これにより、容易に図面を補正し、効率よく所望の形態を有する成形印刷物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】成形印刷物の製造方法を示すフローチャート。
【図2】成形印刷物の形態を示す3次元データ。
【図3】成形印刷物の形態を示す2次元データ。
【図4】印刷部材の構成を示す平面図。
【図5】成形印刷物の外観を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1及び第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0014】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1は、成形印刷物の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態の成形印刷物の製造方法は、第1形態情報を含む図面を作成する図面作成工程と、作成された前記図面に基づいて、ワークに画像を形成する画像形成工程と、画像が形成されたワークを成形して成形印刷物を形成する成形工程と、形成された成形印刷物の第2形態情報を取得する形態情報取得工程と、第1形態情報と第2形態情報とを比較する比較工程と、比較した結果に基づいて、図面に含まれる第1形態情報を補正する図面補正工程と、を含み、画像形成工程では、補正された図面に基づいて、ワークに画像を形成するものである。
【0015】
詳細には、第1形態情報は、数値化された第1色情報を含み、形態情報取得工程では、成形印刷物の数値化された第2色情報を取得し、比較工程では、第1色情報と第2色情報とを比較し、図面補正工程では、比較した結果に基づいて、図面に含まれる第1色情報を補正する。
【0016】
図面作成工程S10では、成形印刷物の基となる図面を作成する。当該図面の作成には、例えば、CADシステム等を用いる。本実施形態では、図2に示すように、成形印刷物に対応する3次元データ10を作成する。これにより、成形印刷物の3次元における形態を把握することができる。次いで、作成された3次元データ10に基づいて、図3に示すように、平面図で表された2次元データ20を作成する。これにより、成形印刷物の2次元における形態を把握することができる。
【0017】
ここで、3次元データ10及び2次元データ20には、成形印刷物の形態を表す第1形態情報としての第1色情報が含まれる。当該第1色情報は、例えば、色彩等のデータである。そして、第1色情報の設定には、例えば、表色系が用いられる。表色系は、物体の色を数値や記号で表現された体系である。表色系としては、例えば、L**b表色系、L**h表色系、ハンターLab表色系、マンセル表色系、XYZ表色系等を用いることができる。このように表色系を用いることにより、色彩等が数値化されたデータとして容易に取り扱うことができる。
【0018】
次いで、画像形成工程S20では、作成された2次元データ20に基づいて、ワークに画像を形成する。ワークは、例えば、フィルム部材やシート部材等である。そして、例えば、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いて、フィルム部材に向けて液滴を吐出し、フィルム部材上に機能液を塗布する。なお、機能液が紫外線硬化型インクの場合には、塗布された紫外線硬化型インクに紫外線光を照射してインクを硬化させる。こうして、図4に示すように、フィルム部材P上に画像30が描画された印刷部材40が形成される。
【0019】
次いで、成形工程S30では、印刷部材40を成形して成形印刷物を形成する。例えば、真空成形型や圧空成形型を用いて、印刷部材40を3次元に成形する。具体的には、真空成形の場合は、加熱により軟化したフィルム部材を真空成形型上に載置し、真空成形型に設けられた吸引孔から空気を吸引する。これにより、真空成形型の表面形状に倣った形状が現れ、図5に示すように、成形印刷物50が形成される。圧空成形の場合は、加熱により軟化したフィルム部材を圧空成形型上に載置し、成形型装置に設けられた圧空孔から圧空空気を注入する。これにより、成形型の表面形状に倣った形状が現れ、図5に示すように、成形印刷物50が形成される。なお、成形工程S30は、フィルムインサート成形等であってもよい。
【0020】
次いで、形態情報取得工程S40では、形成された成形印刷物50の第2形態情報を取得する。ここで、第2形態情報としては、例えば、色彩等を表す第2色情報が含まれる。
【0021】
ここで、第2色情報は、例えば、色彩計や分光測色計等を用いることにより取得することができる。色彩計は、色を数値で測定する計測器である。これにより、色を数値化されたデータで表すことができる。なお、第1色情報の設定で用いたものと同じ表色系を用いることが好ましい。両者との比較が容易となるからである。
【0022】
次いで、比較/判断工程S50では、まず、第1形態情報と第2形態情報とを比較する。本実施形態では、第1形態情報としての第1色情報と第2形態情報としての第2色情報とを比較する。第1および第2色情報は、ともに数値化されたデータなので、比較演算した結果、数値化された色差データとして出力される。
【0023】
そして、第1形態情報と第2形態情報との比較結果から、3次元データ10や2次元データ20に対する補正の要否を判断する。例えば、出力された比較データが、当初設定された許容値の範囲内か範囲外に基づいて判断する。そして、例えば、比較データとしての色差データが、予め設定された許容値から外れた場合には、図面補正工程S60に移行する。なお、比較/判断工程S50において、比較した結果が、許容値の範囲内にある場合には、終了(エンド)する。
【0024】
図面補正工程S60では、比較した結果に基づいて、図面作成工程S10において作成された3次元データ10や2次元データ20に含まれる第1色情報を補正する。この場合、第1色情報に色差データ分を加減することにより補正を行う。例えば、第2色情報が第1色情報に対して明るい方向であれば、暗い方向にデータをシフトさせる、このように、補正は数値データ(色差データ)に基づいて行われる。
【0025】
次いで、画像形成工程S20に移行し、補正された2次元データ20’に基づいて、フィルム部材P上に画像30’を形成する。
【0026】
以上、第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0027】
表色系によって取得された成形前の第1色情報と、同じ表色系によって取得された成形後の第2色情報と、が比較される。比較される第1および第2色情報は、数値化されたデータであるから、容易に色差を比較演算することができる。これにより、容易に3次元データ10や2次元データ20に含まれる第1色情報に関して補正でき、効率よく所望の色彩を有する成形印刷物50を製造することができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態にかかる成形印刷物の製造方法では、第1形態情報としての第1色情報、また、第2形態情報としての第2色情報として説明したが、これに限定されない。第2実施形態にかかる成形印刷物の製造方法では、第1形態情報は、数値化された第1形状情報を含み、形態情報取得工程では、成形印刷物の数値化された第2形状情報を取得し、比較工程では、第1形状情報と第2形状情報とを比較し、図面補正工程では、比較した結果に基づいて、図面に含まれる第1形状情報を補正する。以下、図1〜図5を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
図1の図面作成工程S10では、成形印刷物の基となる図面を作成する。当該図面の作成には、例えば、CADシステム等を用いる。本実施形態では、図2に示すように、成形印刷物に対応する3次元データ10を作成する。これにより、成形印刷物の3次元における形態を把握することができる。次いで、作成された3次元データ10に基づいて、図3に示すように、平面図で表された2次元データ20を作成する。これにより、成形印刷物の2次元における形態を把握することができる。
【0030】
ここで、3次元データ10及び2次元データ20には、成形印刷物の形態を表す第1形態情報としての第1形状情報が含まれる。当該第1形状情報は、例えば、座標等のデータである。そして、第1形状情報の設定には、例えば、直交座標系、極座標系、円筒座標系等を用いることができる。このように座標系を用いることにより、形状等が数値化されたデータとして容易に取り扱うことができる。
【0031】
次いで、画像形成工程S20では、作成された2次元データ20に基づいて、ワークに画像を形成する。ワークは、例えば、フィルム部材やシート部材等である。そして、例えば、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いて、フィルム部材に向けて液滴を吐出し、フィルム部材上に機能液を塗布する。なお、機能液が紫外線硬化型インクの場合には、塗布された紫外線硬化型インクに紫外線光を照射してインクを硬化させる。こうして、図4に示すように、フィルム部材P上に画像30が描画された印刷部材40が形成される。
【0032】
次いで、成形工程S30では、印刷部材40を成形して成形印刷物を形成する。例えば、真空成形型や圧空成形型を用いて、印刷部材40を3次元に成形する。具体的には、真空成形の場合は、加熱により軟化したフィルム部材を真空成形型上に載置し、真空成形型に設けられた吸引孔から空気を吸引する。これにより、真空成形型の表面形状に倣った形状が現れる。そして、図5に示すように、成形印刷物50が形成される。なお、不要となったフィルム部材P’部分はトリミングされる。圧空成形の場合は、加熱により軟化したフィルム部材を圧空成形型上に載置し、成形型装置に設けられた圧空孔から圧空空気を注入する。これにより、成形型の表面形状に倣った形状が現れ、図5に示すように、成形印刷物50が形成される。なお、成形工程S30は、フィルムインサート成形等であってもよい。
【0033】
次いで、形態情報取得工程S40では、形成された成形印刷物50の第2形態情報を取得する。ここで、第2形態情報としては、例えば、形状等を表す第2形状情報が含まれる。
【0034】
ここで、第2形状情報は、例えば、3Dスキャナー等の3次元形状測定器を用いることにより取得することができる。3次元形状測定器は、3次元な形状を数値で測定する計測器である。これにより、形状を3次元座標として数値化されたデータで表すことができる。なお、第1形状情報の設定で用いたものと同じ座標系を用いることが好ましい。両者との比較が容易となるからである。
【0035】
次いで、比較/判断工程S50では、まず、第1形態情報と第2形態情報とを比較する。本実施形態では、第1形状情報と第2形状情報とを比較する。第1および第2形状情報は、ともに数値化されたデータなので、比較演算した結果、数値化された座標データとして出力される。
【0036】
そして、第1形態情報と第2形態情報との比較結果から、3次元データ10や2次元データ20に対する補正の要否を判断する。例えば、出力された比較データが、当初設定された許容値の範囲内か範囲外に基づいて判断する。そして、例えば、比較データとしての座標データが、予め設定された許容値から外れた場合には、図面補正工程S60に移行する。なお、比較/判断工程S50において、比較した結果が、許容値の範囲内にある場合には、終了(エンド)する。
【0037】
図面補正工程S60では、比較した結果に基づいて、図面作成工程S10において作成された3次元データ10や2次元データ20に含まれる第1形状情報を補正する。この場合、第1形状情報に座標差データ分を加減することにより補正を行う。例えば、第2形状情報が第1形状情報に対して大きい方向であれば、第1形状情報を小さい方向にデータをシフトさせる、このように、補正は数値データに基づいて行われる。
【0038】
次いで、画像形成工程S20に移行し、補正された2次元データ20’に基づいて、フィルム部材P上に画像30’を形成する。
【0039】
以上、第2実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0040】
座標系によって取得された成形前の第1形状情報と、同じ座標系によって取得された成形後の第2形状情報と、が比較される。比較される第1および第2形状情報は、数値化されたデータであるから、容易に座標差を比較演算することができる。これにより、容易に3次元データ10や2次元データ20に含まれる第1形状情報に関して補正でき、効率よく所望の形状を有する成形印刷物50を製造することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0042】
(変形例1)第1実施形態の図面補正工程S60では、1つの表色系を用いて補正したが、これに限定されない。例えば、複数の表色系を利用して得られた結果から3次元データ10や2次元データ20の補正を行ってもよい。このようにすれば、さらに、正確に補正を行うことができる。
【0043】
(変形例2)第1及び第2実施形態において説明した色情報および形状情報とを組み合わせて、3次元データ10や2次元データ20の補正を行ってもよい。このようにすれば、さらに、確実に所望の成形印刷物を製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
10(10’)…3次元データ、20(20’)…2次元データ、30(30’)…画像、40…印刷部材、50…成形印刷物、P…ワークとしてのフィルム部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1形態情報を含む図面を作成する図面作成工程と、
作成された前記図面に基づいて、ワークに画像を形成する画像形成工程と、
画像が形成された前記ワークを成形して成形印刷物を形成する成形工程と、
形成された前記成形印刷物の第2形態情報を取得する形態情報取得工程と、
前記第1形態情報と前記第2形態情報とを比較する比較工程と、
比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1形態情報を補正する図面補正工程と、を含み、
前記画像形成工程では、
補正された前記図面に基づいて、前記ワークに画像を形成することを特徴とする成形印刷物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形印刷物の製造方法において、
前記第1形態情報は、数値化された第1色情報を含み、
前記形態情報取得工程では、
前記成形印刷物の数値化された第2色情報を取得し、
前記比較工程では、
前記第1色情報と前記第2色情報とを比較し、
前記図面補正工程では、
比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1色情報を補正することを特徴とする成形印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成形印刷物の製造方法において、
前記第1形態情報は、数値化された第1形状情報を含み、
前記形態情報取得工程では、
前記成形印刷物の数値化された第2形状情報を取得し、
前記比較工程では、
前記第1形状情報と前記第2形状情報とを比較し、
前記図面補正工程では、
比較した結果に基づいて、前記図面に含まれる前記第1形状情報を補正することを特徴とする成形印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218286(P2012−218286A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86067(P2011−86067)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】