説明

成形可能なインプラント材料及びその使用

【課題】創腔の、特に骨欠損の充填のために使用されることができる成形可能なインプラント材料。
【解決手段】例えばポリエステル、ポリアミド、腐食性鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金、多糖類、多糖誘導体、タンパク質、タンパク質誘導体からか又はこれらの材料の組合せからなる、生分解可能な又は生体適合性のモノフィルの又はポリフィルの糸が、前記糸に沿ってその都度3〜30mmの間隔で、前記糸に沿ってその都度共通の開始点を有するその都度1つの環形のループ及び/又は複数の環形のループが形成されているように形成されており、その場合に前記糸に沿って少なくとも3つの連続したループが存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創腔の、特に骨欠損の一時的な充填のために定められている成形可能なインプラント材料及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨欠損は外科学において骨嚢胞の治療後、腫瘍の除去後及び骨感染の外科治療後にしばしば生じる。生じた空洞は理想的な場合に、自然な状態を再び生じさせるために、新たに形成された骨で骨化される(durchbaut)べきである。しかしながら骨組織は、より大きな、いわゆる臨界サイズ−欠損の場合に、骨空洞を骨化しない。骨欠損の処置の1つの可能性は自家骨材料での増強である。自家骨材料の量はもちろん各々の患者で制限されており、かつリスクを背負った付加的な第二の手術を必要とする。自家骨材料に対して代替的に、合成的に入手可能な骨代用材料も自家骨材料の代わりに使用されることができる。重要なグループはとりわけグラニュールの形で又はいわゆるビーズの形で使用されるセラミック骨代用材料である。典型的なセラミック骨代用材料は、DE 196 14 421、DE 100 63 119、W09107357及びW02004112855に記載されている。しかしながらグラニュールの場合に問題となるのは、前記グラニュールがせいぜい骨欠損中の切痕(Verzahnung)により相互に固定されていることである。それによりグラニュールは骨欠損中に移行し、かつ骨欠損中に不均一に分配されうる。故に骨再生は阻害されうる。コラーゲン不織布又はゼラチン不織布によるセラミック骨代用材料の固定も特に有望ではない、それというのもこれらは数日後に溶解するからである。
【特許文献1】DE 196 14 421
【特許文献2】DE 100 63 119
【特許文献3】W09107357
【特許文献4】W02004112855
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基礎となるのは、創腔の、特に骨欠損の充填のために使用されることができるインプラント材料を提供するという課題である。このインプラント材料は、骨腔中への導入後にその構造に基づいて前記腔の空間を、崩壊することなく充填する性質を持つべきである。前記インプラント材料は、セラミック骨代用原料の空間的固定に適しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、生分解可能な又は生体適合性のモノフィルの又はポリフィルの糸が、前記糸に沿ってその都度2〜30mmの間隔で、前記糸に沿ってその都度共通の開始点を有するその都度1つの環形のループ(Schlinge)及び/又は複数の環形のループが形成されているようにして形成されており、その場合に前記糸に沿って少なくとも3つの連続したループが存在していることにより特徴付けられている成形可能なインプラント材料の開発により解決された。ループは、糸のほぼ環形又は楕円形の構成であると理解される。
【0005】
前記インプラントは好ましくはポリエステル、ポリアミド、腐食性鉄合金、外科用鋼、マグネシウム、マグネシウム合金、多糖類、多糖誘導体、タンパク質、タンパク質誘導体からか、又はこれらの材料の組合せからなっている。腐食性鉄合金、マグネシウム又はマグネシウム合金を使用する場合にはインプラント材料は塑性変形可能である。本発明によるインプラント材料は、意外にもポリエステル及びポリアミドを使用する場合に弾性変形可能である。
【0006】
本発明の対象は、ループ構造及び/又は結び目を有する、メリヤス、編物、フェルト及び不織布の形の平面非繊維形成体(nicht textile Flaechengebilde)である。
【0007】
前記ループが糸に沿って移動されることができることは有利である。
【0008】
前記ループが場合により結びつけられていることは好都合である。
【0009】
本発明の範囲内で、前記インプラント材料の表面上に1つ又はそれ以上の薬剤学的作用物質が施与されていることも有利である。これらの作用物質は、ワックス様の作用物質、例えばパルミチン酸ゲンタマイシン又はステアリン酸ゲンタマイシンの形で存在していてよく、これらは高分子皮膜形成剤を使用せずに付着する。皮膜形成しない非粘着性作用物質が低分子量の良好に付着する作用物質又は助剤中へ埋め込まれていることも本発明の範囲内である。低分子量の助剤として、特に飽和の脂肪及び脂肪酸が考慮に値する。その場合に助剤としてのトリパルミチン及びトリステアリンの使用が特に好ましい。作用物質として、抗生物質、消炎剤、ホルモン及びビスホスホネートが考慮に値する。
【0010】
前記ループが、糸軸の周囲に放射状に配置されているリング形物体を包囲することは好都合である。これらの物体は、1つもしくはそれ以上の穴を有する球又は円柱の形で存在していてよい。
【0011】
前記ループが球形又は円柱形の物体中へ埋め込まれていることも好都合である。その場合に環形のループは開いた環の形で存在していてよい。開いた環は、文字Uの形に類似した形であると理解される。球形又は円柱形の物体はプレスによりループ上へ施与されることができるので、前記物体はループを完全に又は部分的に包囲する。その場合に、前記ループが糸の軸に沿って前記物体が外れるのを有効に防止することは意外である。
【0012】
リング形又は球形又は円柱形の物体が、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、レナナイト(Rhenanit)、リン酸−ナトリウム−カリウム−カルシウム、硫酸カルシウム−二水和物、炭酸カルシウム、二酸化ジルコニウム又はこれらの物質の組合せからか又はこれらの物質の組合せ及びポリエステル、ポリアミド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、タンパク質及び飽和脂肪の群からの有機物質から構成されていることは好都合である。
【0013】
さらに、リング形又は球形又は円柱形の物体が、抗感染剤、消炎剤、細胞増殖抑止剤、ビスホスホネート及び増殖因子の群からの少なくとも1つの薬剤学的作用物質を含有することは好都合である。
【0014】
リング形又は球形又は円柱形の物体は、好ましくはアミノグリコシド−抗生物質、リンコサミド(Lincosamid)−抗生物質、フルオロキノロン抗生物質、ストレプトグラミン−抗生物質、マクロライド−抗生物質、ケトライド−抗生物質、ステロイド−抗生物質、オキサゾリジノン−抗生物質及びニトロイミダゾールの群からの抗感染剤を含有する。
【0015】
リング形又は球形又は円柱形の物体が水性環境中で薬剤学的作用物質を放出することは好都合である。
【0016】
少なくとも3つ又はそれ以上のリング形又は球形又は円柱形の物体が存在していることは好都合である。糸軸に沿って30、40又は60の物体が取り付けられているインプラント材料が特に好ましい。
【0017】
成形可能なインプラント材料の使用は、本発明によれば、前記の成形可能なインプラント材料が医用製品として又は医薬として提供されることによって行われる。
【0018】
本発明は次の例1〜5により説明されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
例1
一列に配置されている10本のピン(直径6mm、ピンの間隔10mm)を有する金属プレートを支持体としてインプラント材料の製造に使用する。PCL−糸(ポリ−カプロラクトン−コ−L−ラクチド−糸、USP 2-0)を前記プレート上へ載せ、ピンの周りにその都度一回巻き付ける。ついで上に固定されたPCL−糸を有する前記プレートを乾燥戸棚中で70℃に加熱し、引き続いて室温に冷却する。その後、PCL−糸をピンから取り除く。PCL−糸は、その都度10mmの間隔で5〜6mmの直径を有するループを有する。冷却後に室温でループは固定されている(略示図、図1)。
【0020】
例2
ピンがその都度10本のピンの向かい合っている2つの列に配置されており、かつ列の間隔が12mmである20本のピン(直径6mm、ピンの間隔10mm)を有する金属プレートを、支持体としてインプラント材料の製造に使用する。PCL−糸(ポリ−カプロラクトン−コ−L−ラクチド−糸、USP 2-0)を前記プレート上へ載せ、ピンの周りにその都度一回巻き付け、その際に糸軸は双方のピン列の間にある。ついで上に固定されたPCL−糸を有する前記プレートを乾燥戸棚中で70℃に加熱し、引き続いて室温に冷却し、PCL−糸をピンから取り除く。前記PCL−糸はその都度10mmの間隔で、糸軸に沿ってその都度共通する点から出発し、向かい合っている2つのループを有する。前記ループは5〜6mmの直径を有する。冷却後に室温でループは固定されている(略示図、図2)。
【0021】
例3
例1によるループを有するPCL−糸(USP 2-0)は、各ループ中にリング形物体を有する。前記リング形物体は220mgの質量、6mmの外径及び5.8mmの高さを有する。前記物体は、炭酸カルシウム17.31質量%、硫酸カルシウム−二水和物69.23質量%、トリパルミチン11.80質量%及び硫酸ゲンタマイシンAK 600 1.66質量%(ゲンタマイシン塩基1.0質量%)からなる複合材料である(略示図、図3)。
【0022】
例4
例2によるループを有するPCL−糸(USP 2-0)は、各ループ中にリング形物体を有する。前記リング形物体は、220mgの質量、6mmの外径及び5.8mmの高さを有する。前記物体は炭酸カルシウム17.40質量%、硫酸カルシウム−二水和物69.61質量%、トリパルミチン11.88質量%及び塩酸クリンダマイシンAK 896 1.11質量%(クリンダマイシン塩基1.0質量%)からなる複合材料である。
【0023】
例5
例1によるループを有するPCL−糸(USP 2-0)上へ、改変された錠剤プレス機を用いて各ループ上へ粉末から出発してほぼ球形の物体を室温でプレスする。プレス力は約5tである。前記粉末は炭酸カルシウム17.31質量%、硫酸カルシウム−二水和物69.23質量%、トリパルミチン11.80質量%及び硫酸ゲンタマイシンAK 600 1.66質量%(ゲンタマイシン塩基1.0質量%)からなっている。前記の球形物体の質量は250mgである(略示図、図4)。
【0024】
例6
PCL−糸(USP 2-0)上へ、改変された錠剤プレス機を用いて各ループ上へ粉末から出発してほぼ球形の物体を室温でプレスする。プレス力は約5tである。前記糸は、前記糸がプレスすべき粉末中へ、中央ではなく充填高さの60〜70%へ入るように前記マトリックス中へ導入される。前記粉末は、炭酸カルシウム17.31質量%、硫酸カルシウム−二水和物69.23質量%、トリパルミチン11.80質量%及び硫酸ゲンタマイシン1.66質量%(ゲンタマイシン塩基1.0質量%)からなっている。プレスの際に、前記PCL−糸のループはそれぞれ個々の成形体中で形成される。前記の球形物体の質量は250mgである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】等間隔の(gleich beanstandeten)7つのループを有する本発明による1つのループ配置を示す略示図。
【図2】等間隔の7つのループを有する本発明による選択的なループ配置を示す略示図。
【図3】ループにより包囲され、かつ糸軸の周囲に放射状に配置されている、付加的なリング形物体(ハッチング)を有する図1及び2のループ配置を示す略示図。
【図4】ループが本質的に球形又は円柱形の物体(ハッチング)中へ埋め込まれている配置を示す略示図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その都度3〜30mmの間隔で、前記糸に沿ってその都度共通の開始点を有するその都度1つの環形のループ及び/又は複数の環形のループを有する、生分解可能な又は生体適合性のモノフィルの又はポリフィルの糸の形の成形可能なインプラント材料であって、
前記糸に沿って少なくとも3つの連続したループが存在していることを特徴とする、成形可能なインプラント材料。
【請求項2】
ポリエステル、ポリアミド、腐食性鉄合金、外科用鋼、マグネシウム、マグネシウム合金、多糖類、多糖誘導体、タンパク質、タンパク質誘導体からか又はこれらの材料の組合せからなる、請求項1記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項3】
前記ループが結びつけられている、請求項1又は2記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項4】
表面上へ少なくとも1つの薬剤学的作用物質が施与されている、請求項1又は2記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項5】
前記ループにより包囲され、かつ糸軸の周囲に放射状に配置されているリング形物体を付加的に有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項6】
前記ループが本質的に球形又は円柱形の物体中へ埋め込まれている、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項7】
前記のリング形又は球形又は円柱形の物体が、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、レナナイト(Rhenanit)、リン酸−ナトリウム−カリウム−カルシウム、硫酸カルシウム−二水和物、炭酸カルシウム、二酸化ジルコニウム又はこれらの物質の組合せからか又はこれらの物質の組合せ及びポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、タンパク質、飽和脂肪の群からなる有機物質から構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項8】
リング形又は球形又は円柱形の物体が、抗感染剤、消炎剤、細胞増殖抑止剤、ビスホスホネート及び増殖因子の群からの少なくとも1つの薬剤学的作用物質を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項9】
リング形又は球形又は円柱形の物体が、好ましくはアミノグリコシド−抗生物質、リンコサミド−抗生物質、フルオロキノロン抗生物質、ストレプトグラミン−抗生物質、マクロライド−抗生物質、ケトライド−抗生物質、ステロイド−抗生物質、オキサゾリジノン−抗生物質及びニトロイミダゾールの群からの抗感染剤を含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項10】
リング形又は球形又は円柱形の物体が水性環境中で薬剤学的作用物質を放出する、請求項1から9までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項11】
少なくとも3つ又はそれ以上のリング形又は球形又は円柱形の物体が存在している、請求項1から10までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料。
【請求項12】
医用製品又は医薬を製造するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の成形可能なインプラント材料の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−637(P2007−637A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173046(P2006−173046)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【Fターム(参考)】