説明

成形可能な熱可塑性多層積層体、成形多層積層体、物品及び物品の製造方法

レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる外層(2)、熱可塑性ポリマーからなる中間層(4)、カーボネートポリマー及び1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)からなるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーを含む熱可塑性ポリマーからなる内側結着層(6)を含んでなる成形可能な熱可塑性多層積層体(10)が開示されており、前記中間層(4)は、前記外層(2)と前記内側結着層(6)の間にあって、前記外層(2)及び前記内側結着層(6)の両者と接触している。また、成形多層積層体(10)及びその多層積層体(10)を基材(8)に結合してなる物品も開示されている。その物品の製造方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、殊に発泡基材に良好な接着性を有する成形可能な多層熱可塑性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの自動車部品や車両本体パネルは熱硬化性ポリマー組成物のような熱成形可能な組成物から成形される。しかし、自動車産業では一般に、消費者の目に見える表面が全て「Aクラス」の表面品質をもつことが要求される。少なくとも、かかる表面は滑らかで光沢があり耐候性でなければならない。熱成形可能な組成物から製造される部品は、許容できる品質と外観の表面を得るために広範な表面調製処理や硬化性コーティングの施工が必要とされることが多い。かかる表面を調製するのに要する工程は費用と時間がかかることがあるし、熱硬化材料の機械的特性に影響を及ぼすことがある。
【0003】
熱成形可能な部品の成形したままの表面品質は改良され続けているが、ガラス繊維の露出、ガラス繊維リードスルーなどに起因する欠陥がその表面に生じることが多い。これらの表面欠陥はさらにかかる表面に塗工したコーティングに欠陥を生じさせることがある。熱成形可能な組成物の表面及び熱成形可能な組成物の表面に塗工した硬化コーティングの欠陥は、塗料ポッピング、長期及び短期の波打ち、オレンジピール、光沢の変動などとして現れることがある。
【0004】
許容できる外観と品質の熱成形可能な表面を提供するために幾つかの技術が提案されている。例えば、薄い予備成形塗膜のオーバーモールディングにより所望のAクラス表面を得ることができる。しかし、かかるオーバーモールディングは通常、二次表面調製処理作業を必要としないバージン成形表面を提供することができるような組成物にのみ使用できる。「成形したままの」表面品質は改良されたが、構成部品の成形したままの表面はやはり、殊に縁部で、研磨後にシールし下塗りしてから塗装する必要がある。
【0005】
金型内塗装ではこれらの作業を避けることができるが、その代償としてサイクル時間とコストが大幅に増大する。かかるプロセスでは、部品表面に塗工できる高価な塗料系を用いて、金型を少し開き、その後閉じてコーティングを分配し硬化させる。
【0006】
表面の改良は低収縮添加剤の添加によっても得られている。かかる添加剤は、高い応力により小さな内部空隙を生じさせることによって表面における「リードスルー」を低減させ、より滑らかな表面を提供する。しかし、この空隙が表面で起こると、仕上がり品に欠陥が生じることがある。また、この空隙は応力集中剤としても働き、そのため追加の応力下で早期破壊が生じるか、又は全体の研磨中に表面に現れ、塗装プロセスで隠すことができないピットが残ることがある。
【0007】
熱成形可能な多層積層体は、車両分野で、各種自動車部品に使用したとき下にある表面又は基材の品質を損なうことなく許容できる表面調製処理を提供することが知られている。しかし、先行技術の積層体は層間又は層内分離、例えば積層体に結合した基材からの分離を示すことが知られている。さらに、多層積層体組成物の各種層は互いに及び/又はそれらを付けた表面又は基材に一様に接着しないことがある。このため、仕上がった自動車部品の表面品質が許容できないものとなる可能性がある。
【0008】
多層積層体は伝統的に、共射出成形、オーバーモールディング、マルチショット射出成形、シートモールディング、共押出、基材層の表面上のコーティング層材料のフィルムの置換などを始めとする各種の方法で成形されている。共押出法は殊に望ましい。共押出により成形多層積層体は経済的に有利であり、また一般に多層積層体を構成する各種の層に対する凝集性と接着性が改良されている。しかし、ある種の多層積層体組成物は共押出により成形するのが困難である。このように、基材に対する接着性と表面品質に関する特性の望ましいバランスを有するが共押出することもできる成形可能な多層積層体を提供することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、基材表面により有効に接着し、望ましい「Aクラス」の表面品質を提供する熱成形可能な多層積層体組成物に対するニーズが存続している。さらに、当技術分野では共押出法で製造することができるような熱成形可能な多層積層体組成物に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる外層、熱可塑性ポリマーからなる中間層、及びカーボネートポリマーと1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)であるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとからなる熱可塑性ポリマーからなる内側結着層からなり、中間層が、外層と内側結着層の間にあって、外層と内側結着層の両者と接触している、成形可能な熱可塑性多層積層体に関する。
【0011】
一実施形態では、成形多層積層体が提供される。かかる成形多層積層体は、真空成形のような熱成形方法により、又は圧縮成形のような方法で製造することができる。ある代表的な実施形態では、成形多層積層体は熱成形によって成形される。
【0012】
本発明はまた、上記のような多層積層体からなり、この多層積層体が基材に接着した物品に関する。一実施形態では基材は、熱硬化性材料、熱可塑性材料、発泡ポリウレタン材料などの発泡材料を始めとする各種の適切な材料のいずれでもよい。この物品は自動車用外装パネルを製造するのに有用である。一実施形態では基材に結合した多層積層体は成形多層積層体である。
【0013】
また、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含む1以上の副層からなる外層、熱可塑性ポリマーからなる中間層、及び、カーボネートポリマーと、1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)であるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーからなる熱可塑性ポリマーとからなる内側結着層からなり、中間層が、外層と内側結着層の間にあって、外層と内側結着層の両者と接触している、多層積層体を準備し、この多層積層体を、多層積層体の背後にキャビティーが形成されるように金型内に入れ、多層積層体の背後のキャビティーに基材を射出することからなり、多層積層体の内側結着層が基材に結合して物品を提供する、物品の製造方法も開示されている。別の実施形態では、金型内に入れる多層積層体は成形多層積層体である。ある代表的な実施形態では、金型は、成形多層積層体に実質的に一致する形状又はキャビティーからなる。別の実施形態では、本方法はさらに、物品を冷却し、その物品を金型から取り出すことを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一実施形態では、基材に対する改良された接着性を有する多層積層体について開示する。もう一つ別の実施形態では、殊に成形多層積層体に、又は成形品にAクラス表面も提供する多層積層体について開示する。
【0015】
本明細書で用いる用語「Aクラス表面」とは、当技術分野で公知の一般的な意味をもっており、ヘアライン、ピンホールなどの目に見える欠陥を実質的にもたない表面をいう。一実施形態ではAクラス表面は光沢が20度又は60度で100単位より大きく、ウェーブスキャンが5単位未満(長及び短)であり、DOI(distinctness of image)が95単位より大きい。基材に取り付けたとき、本多層積層体は基材の表面品質を維持し、望ましい表面外観と品質を有する物品が得られる。
【0016】
一実施形態では本多層積層体の外層、中間層及び内側結着層は、個々の層を熱成形可能な多層積層体に共押出することができるような粘度及び分子量を有する熱安定性材料からなる。通例、押出加工に適切な組成物は射出成形装置を介する加工のための組成物より高めの重量平均分子量、高めの溶融強度及び高めの粘度を有する。
【0017】
ここで、図1を参照すると、本発明の多層積層体10の断面図が示されている。多層積層体10は外層2、この外層2と反対側の内側結着層6及びこの外層2と内側結着層6の間に配置された中間層4からなる。
【0018】
ある代表的な実施形態では、外層2はレゾルシノールポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなり、中間層4はカーボネートポリマーからなる熱可塑性ポリマーからなり、結着層6(本明細書では「内側結着層」ともいう)はカーボネートポリマー、1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)であるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーからなる熱可塑性ポリマーからなる。
【0019】
一実施形態では多層積層体10の外層2は、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含む1種以上のポリマーからなる。
【0020】
本明細書で用いる「レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分」とは、1種以上のジフェノール残基を1種以上の芳香族ジフェノール残基及び1種以上の芳香族ジカルボン酸残基と共に含む連鎖部分をいう。以下の式Iに示す好ましいジフェノール残基は、本明細書を通して一般にレゾルシノール又はレゾルシノール部分といわれる1,3−ジヒドロキシベンゼン部分から誘導される。本明細書で用いるレゾルシノール又はレゾルシノール部分とは、特記しない限り、非置換1,3−ジヒドロキシベンゼンと置換1,3−ジヒドロキシベンゼンの両者を含む。
【0021】
【化1】

【0022】
式中、Rは1以上のC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。
【0023】
適切なジカルボン酸残基としては、単環式部分、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、若しくはこれらの混合物、又はジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸のようなナフタレンジカルボン酸及びモルフタレン2,6−ジカルボン酸のようなモルフタレンジカルボン酸を始めとする多環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸残基がある。一実施形態では使用するジカルボン酸残基は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基である。
【0024】
ある代表的な実施形態では、芳香族ジカルボン酸残基は次式IIに示すイソフタル酸及び/又はテレフタル酸の混合物から誘導される。
【0025】
【化2】

【0026】
ある代表的な実施形態では、外層2は次式IIIに示すポリマーからなる。
【0027】
【化3】

【0028】
式中、Rとnは既に定義した通りである。
【0029】
ある代表的な実施形態では、外層2は図IVに示すような無水物結合を実質的に含まないレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を有するポリマーからなる。
【0030】
【化4】

【0031】
ある代表的な実施形態では、外層2は、最初の工程として、水及び水と実質的に非混和性の1種以上の有機溶媒の混合物中で1種以上のレゾルシノール部分と1種以上の触媒を混合することを含む界面法で製造したレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる。適切なレゾルシノール部分は次式Vの単位を含む。
【0032】
【化5】

【0033】
式中、Rは1種以上のC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。存在する場合、アルキル基は好ましくは直鎖又は枝分れアルキル基であり、最も多くの場合両方の酸素原子に対してオルト位に位置するが、その他の環位置も考えられる。適切なC1−12アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ノニル、デシル、及びベンジルを始めとするアリール置換アルキルがあり、メチルが特に好ましい。適切なハロゲン基はブロモ、クロロ、及びフルオロである。nの値は0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1であり得る。好ましいレゾルシノール部分は2−メチルレゾルシノールである。最も好ましいレゾルシノール部分はnがゼロである非置換レゾルシノール部分である。
【0034】
ある代表的な実施形態では、1種以上の触媒を界面重合法で使用する反応混合物と混合する。この触媒は酸塩化物基の合計モル量を基準にして0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜6モル%の合計レベルで存在し得る。適切な触媒は第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ヘキサアルキルグアニジニウム塩、及びこれらの混合物からなる。適切な第三アミンとしては、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及びこれらの混合物がある。その他の考えられる第三アミンとしては、N−エチルピロリジンのようなN−C1〜C6−アルキル−ピロリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、及びN−イソプロピルピペリジンのようなN−C1〜C6−ピペリジン、N−エチルモルホリン及びN−イソプロピルモルホリンのようなN−C1〜C6−モルホリン、N−C1〜C6−ジヒドロインドール、N−C1〜C6−ジヒドロイソインドール、N−C1〜C6−テトラヒドロキノリン、N−C1〜C6−テトラヒドロイソキノリン、N−C1〜C6−ベンゾ−モルホリン、1−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン、キヌクリジン、N−C1〜C6−アルキル−2−アザビシクロ−[2.2.1]−オクタン、N−C1〜C6−アルキル−2−アザビシクロ−[3.3.1]−ノナン、及びN−C1〜C6−アルキル−3−アザビシクロ−[3.3.1]−ノナン、N,N,N’、N’−テトラアルキルアルキレン−ジアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミンがある。特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンである。
【0035】
触媒が1種以上の第三アミン単独で構成される場合、その触媒は酸塩化物基の合計モル量を基準にして0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜6モル%、さらに好ましくは1〜4モル%、最も好ましくは2.5〜4モル%の合計レベルで存在し得る。本発明の一実施形態では、全ての1種以上の第三アミンが、反応の開始時ジカルボン酸二塩化物をレゾルシノール部分に添加する前に存在する。別の実施形態では、いずれかの第三アミンの一部分が反応開始時に存在し、一部分はジカルボン酸二塩化物をレゾルシノール部分に添加した後又は添加中に加える。この後者の実施形態の場合、レゾルシノール部分と共に最初に存在する第三アミンの量はアミン全体を基準にして約0.005〜約10wt%、好ましくは約0.01〜約1wt%、さらに好ましくは約0.02〜約0.3wt%の範囲でよい。
【0036】
適切な第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩及びヘキサアルキルグアニジニウム塩としては、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、臭化オクチルトリエチルアンモニウム、臭化デシルトリエチルアンモニウム、臭化ラウリルトリエチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、塩化N−ラウリルピリジニウム、臭化N−ラウリルピリジニウム、臭化N−ヘプチルピリジニウム、塩化トリカプリリルメチルアンモニウム(ALIQUAT 336ともいう)、塩化メチルトリ−C〜C10−アルキル−アンモニウム(ADOGEN 464ともいう)、米国特許第5821322号に開示されているようなN,N,N’,N’,N’−ペンタアルキル−α,ω−アミンアンモニウム塩、臭化テトラブチルホスホニウム、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム、臭化トリエチルオクタデシルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化トリフェニルメチルホスホニウム、臭化トリオクチルエチルホスホニウム、臭化セチルトリエチルホスホニウム、ハロゲン化ヘキサアルキルグアニジニウム、塩化ヘキサエチルグアニジニウムなど、並びにこれらの混合物のようなハロゲン化物塩がある。
【0037】
水と実質的に非混和性の有機溶媒としては、反応条件下で水に約5wt%未満、好ましくは約2wt%未満しか溶解しないものがある。適切な有機溶媒としては、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、及びこれらの混合物がある。殊に好ましい溶媒はジクロロメタンである。
【0038】
適切なジカルボン酸二塩化物は、単環式部分から誘導される芳香族ジカルボン酸二塩化物、好ましくはイソフタロイルジクロリド、テトラフタロイルジクロリド、若しくはイソフタロイルジクロリドとテトラフタロイルジクロリドの混合物、又はジフェニルジカルボン酸二塩化物、ジフェニルエーテルジカルボン酸二塩化物、及びナフタレンジカルボン酸二塩化物、好ましくはナフタレン−2,6−ジカルボン酸二塩化物を始めとする多環式部分から誘導される芳香族ジカルボン酸二塩化物、又は単環式と多環式の芳香族ジカルボン酸二塩化物の混合物から誘導される芳香族ジカルボン酸二塩化物からなる。好ましくは、ジカルボン酸二塩化物は、通例次式VIに示すようなイソフタロイルジクロリド及び/又はテトラフタロイルジクロリドの混合物からなる。
【0039】
【化6】

【0040】
イソフタロイルジクロリドとテトラフタロイルジクロリドのいずれか又は両方を用いて、外層2に含まれるポリマーを製造することができる。一実施形態ではジカルボン酸二塩化物は、イソフタロイル対テレフタロイルのモル比が約0.25〜4.0:1、別の実施形態では約0.4〜2.5:1、ある代表的な実施形態では約0.67〜1.5:1のイソフタロイルジクロリドとテトラフタロイルジクロリドの混合物からなる。
【0041】
界面反応混合物のpHは、1種以上のジカルボン酸二塩化物を1種以上のレゾルシノール部分に添加する間終始、一実施形態では約3〜約8.5に、別の実施形態では約5〜約8に維持する。pHを維持するのに適切な試薬としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類水酸化物、及びアルカリ土類酸化物がある。好ましい試薬は水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムである。特に好ましい試薬は水酸化ナトリウムである。pHを維持するための試薬は何らかの便利な形態で反応混合物中に含ませればよい。一実施形態では、この試薬を水溶液として1種以上のジカルボン酸二塩化物と同時に反応混合物に添加する。
【0042】
界面反応混合物の温度は、速い反応速度と、実質的に無水物結合をもたないレゾルシノールアリーレート含有ポリマーが得られるようないかなる便利な温度でもよい。便利な温度としては、約−20℃から、反応条件下における水−有機溶媒混合物の沸点までの温度がある。一実施形態では、反応を水−有機溶媒混合物中の有機溶媒の沸点で実施する。ある代表的な実施形態では、反応はジクロロメタンの沸点で実施する。
【0043】
反応混合物に添加する酸塩化物基の合計モル量はフェノール基の合計モル量に対して化学量論的に不足である。この化学量論比は、酸塩化物基の加水分解が最小になるように、またフェノール基及び/又はフェノキシドのような求核性物質が存在して、偶発的な無水物結合が反応条件下で形成されたら全て分解し得るようにするのが望ましい。酸塩化物基の合計モル量には、1種以上のジカルボン酸二塩化物、並びに使用することがあるあらゆるモノカルボン酸塩化物連鎖停止剤及びトリカルボン酸又はテトラカルボン酸三塩化物又は四塩化物枝分れ剤が含まれる。フェノール基の合計モル量には、レゾルシノール部分、並びに使用することがあるあらゆるモノフェノール系連鎖停止剤及びトリ−又はテトラフェノール系枝分れ剤が含まれる。フェノール基の合計対酸塩化物基の合計の化学量論比は好ましくは約1.5〜1.01:1、さらに好ましくは約1.2〜1.02:1である。
【0044】
1種以上のジカルボン酸二塩化物を1種以上のレゾルシノール部分に全て添加した後の無水物結合の存否は、通例、反応体の正確な化学量論比及び触媒の存在量、並びにその他の変量に依存する。例えば、充分なモル過剰の合計フェノール性基が存在する場合、無水物結合が存在しないことが多い。多くの場合、酸塩化物基の合計量より約1%以上、一実施形態では約3%以上モル過剰のフェノール性基の合計量で、反応条件下で無水物結合を排除するのに充分であろう。無水物結合が存在し得る場合、フェノール基、フェノキシド及び/又は水酸化物のような求核性物質が存在してあらゆる無水物結合を分解できるように最終pHを7より大きくするのが望ましいことが多い。従って、一実施形態では外層2の1以上の副層のポリマーを提供するのに使用する界面法は、1種以上のジカルボン酸二塩化物を1種以上のレゾルシノール部分に全て添加した後、さらに、反応混合物のpHを7〜12、一実施形態では8〜12、別の実施形態では8.5〜12に調節する工程を含んでいてもよい。このpHは、何らかの便利な方法により、好ましくは水性水酸化ナトリウムのような水性塩基を使用することによって調節することができる。
【0045】
反応混合物の最終pHが7より大きいことを条件として、外層2に含まれるポリマーを提供するのに使用する界面法は、さらに、偶発的な無水物結合が存在する場合あらゆる偶発的な無水物結合を完全に分解するのに充分な時間反応混合物を撹拌する工程を含んでいてもよい。必要な撹拌時間は、反応器の構造、攪拌機幾何学的形状、撹拌速度、温度、全溶媒容積、有機溶媒容積、無水物の濃度、pH、及びその他の要因に依存する。場合によって、必要な撹拌時間は、あらゆる偶発的な無水物結合が最初に存在していたと仮定すると、pHを7より高く調節した後実質的に瞬間的、例えば数秒以内である。典型的な実験室規模の反応装置の場合、約3分以上、一実施形態では約5分以上の撹拌時間が必要とされることもある。この過程によって、フェノール基、フェノキシド及び/又は水酸化物のような求核性物質が、存在するときのあらゆる無水物結合を完全に分解する時間があるであろう。
【0046】
レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーを製造するのに使用する界面法において、1種以上の連鎖停止剤(以下、本明細書では封鎖剤ともいう)も使用することができる。1種以上の連鎖停止剤を添加する目的は、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーの分子量を制限し、従ってポリマーに制御された分子量と有利な加工性を付与することである。通例、1種以上の連鎖停止剤は、レゾルシノールアリーレートを含有するポリマーがさらに使用するために反応性の末端基を有する必要がないときに添加される。連鎖停止剤が存在しないとき、レゾルシノールアリーレートを含有するポリマーは、レゾルシノール−アリーレートポリエステルセグメント上に反応性の末端基、通例ヒドロキシが存在することを必要とし得るコポリマーの形成といったような後の使用のために、溶液中で使用してもよいし、又は溶液から回収してもよい。連鎖停止剤は1種以上のモノフェノール系化合物、モノカルボン酸塩化物、及び/又はモノクロロホルメートでよい。通例、1種以上の連鎖停止剤は、モノフェノール系化合物の場合レゾルシノール部分を基準にして、またモノカルボン酸塩化物及び/又はモノクロロホルメートの場合酸二塩化物を基準にして0.05〜10モル%の量で存在し得る。
【0047】
適切なモノフェノール系化合物としては、フェノール、C〜C22アルキル置換フェノール、p−クミル−フェノール、p−第三−ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニルのような単環式フェノール、p−メトキシフェノールのようなジフェノールのモノエーテルがある。アルキル置換フェノールとしては、一実施形態では8〜9個の炭素原子を有する枝分れ鎖アルキル置換基をもつものがあり、この場合水素原子の約47〜89%はメチル基の一部である。幾つかの実施形態では、モノフェノール系UV遮断剤を封鎖剤として使用するのが好ましい。かかる化合物としては、4−置換−2−ヒドロキシベンゾフェノン及びそれらの誘導体、アリールサリチレート、ジフェノールのモノエステル、例えばレゾルシノールモノベンゾエート、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾール及びそれらの誘導体、2−(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジン及びそれらの誘導体、並びに類似の化合物がある。一実施形態ではモノフェノール系連鎖停止剤はフェノール、p−クミルフェノール又はレゾルシノールモノベンゾエートの1種以上である。
【0048】
適切なモノカルボン酸塩化物としては、ベンゾイルクロリド、C〜C22アルキル置換ベンゾイルクロリド、トルオイルクロリド、ハロゲン置換ベンゾイルクロリド、ブロモベンゾイルクロリド、シンナモイルクロリド、4−ナジミドベンゾイルクロリド、及びこれらの混合物のような単環式モノカルボン酸塩化物、トリメリト酸無水物塩化物及びナフトイルクロリドのような多環式モノカルボン酸塩化物、並びに単環式と多環式のモノカルボン酸塩化物の混合物がある。炭素原子数22以下の脂肪族モノカルボン酸の塩化物も適している。アクリロイルクロリド及びメタクリロイルクロリドのような脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物も適している。適切なモノクロロホルメートとしては、フェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p−クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメート、及びこれらの混合物のような単環式モノクロロホルメートがある。
【0049】
連鎖停止剤は、レゾルシノール部分と一緒に混合してもよいし、ジカルボン酸二塩化物の溶液中に配合してもよいし、又は予備縮合物の生成後反応混合物に添加してもよい。モノカルボン酸塩化物及び/又はモノクロロホルメートを連鎖停止剤として使用する場合は、ジカルボン酸二塩化物と一緒に導入するのが好ましい。これらの連鎖停止剤はまた、ジカルボン酸の塩化物が既に実質的に又は完全に反応してしまった時に反応混合物に添加することもできる。フェノール化合物を連鎖停止剤として使用する場合、レゾルシノール部分と酸塩化物部分との反応中、さらに好ましくはその反応の開始前に反応混合物に添加することができる。ヒドロキシ末端レゾルシノールアリーレート含有予備縮合物又はオリゴマーを製造する場合、連鎖停止剤はオリゴマーの分子量の制御を補助するために存在しないか又は少量でしか存在しないであろう。
【0050】
別の実施形態では、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーを提供するのに使用する界面法では、三官能性以上の官能性のカルボン酸塩化物及び/又は三官能性以上の官能性フェノールのような1種以上の枝分れ剤を配合することも考えられる。かかる枝分れ剤を配合する場合は、好ましくは、各々ジカルボン酸二塩化物又はレゾルシノール部分を基準にして0.005〜1モル%の量で使用することができる。適切な枝分れ剤としては、例えば、三官能性以上のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物又はピロメリト酸四塩化物、並びに三官能性以上のフェノール、例えばフロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンゾイル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス−[(4,4−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]−ベンゼンがある。フェノール系枝分れ剤は最初にレゾルシノール部分と共に導入してもよいし、酸塩化物枝分れ剤は酸二塩化物と共に導入してもよい。
【0051】
ある代表的な実施形態では、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーは公知の回収法で界面反応混合物から回収する。回収法としては、例えば亜リン酸を用いる混合物の酸性化、混合物の液−液相分離、水及び/又は塩酸やリン酸のような希酸による有機相の洗浄、水処理や例えばメタノール、エタノール及び/又はイソプロパノールによる非溶媒沈殿のような通常の方法による沈殿、得られた沈殿の単離、残留溶媒の乾燥・除去のような工程を挙げることができる。
【0052】
所望により、外層2に使用するレゾルシノールアリーレートポリマーは、さらに還元剤を添加することを含む界面法で製造することができる。適切な還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、又はホウ水素化ナトリウムのようなホウ水素化物がある。存在する場合、還元剤は通例、レゾルシノール部分のモル数を基準にして0.25〜2モル%の量で使用する。
【0053】
一実施形態ではレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーは、ポリエステル鎖の2以上の単量体単位を連結する無水物結合を実質的にもたない。特定の実施形態では、このポリエステルは、次式VIIに示されているようにイソフタル酸とテレフタル酸の混合物から誘導されるジカルボン酸残基を含む。
【0054】
【化7】

【0055】
式中、Rは1種以上のC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3であり、mは約8以上である。一実施形態ではnはゼロであり、mは約10〜約300である。イソフタレート対テレフタレートのモル比は約0.25〜4.0:1、一実施形態では約0.4〜2.5:1、別の実施形態では約0.67〜1.5:1である。実質的に無水物結合をもたないとは、前記ポリエステルが、前記ポリマーを約280〜290℃の温度に5分間加熱した際に30%未満、好ましくは10%未満の分子量の低下を示すことを意味している。
【0056】
一実施形態ではレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーは、ジカルボン酸又はジオールアルキレン連鎖部分(いわゆる「ソフトブロック」セグメント)と組合せてレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むコポリエステルからなり、このコポリエステルはポリエステルセグメント中に無水物結合を実質的にもたない。実質的に無水物結合をもたないとは、コポリエステルが、このコポリエステルを約280〜290℃の温度に5分間加熱した際に10%未満、好ましくは5%未満の分子量低下を示すことを意味している。
【0057】
本明細書で用いる用語ソフトブロックとは、そのポリマーの幾つかのセグメントが非芳香族モノマー単位からなることを示している。かかる非芳香族モノマー単位は一般に脂肪族であり、このソフトブロックを含有するポリマーに可撓性を付与することが公知である。これらのコポリマーとしては、次式I、VIII、及びIXの構造単位を含むものがある。
【0058】
【化8】

【0059】
式中、Rとnは既に定義した通りであり、Zは二価芳香族基であり、RはC3−20直鎖アルキレン、C3−10枝分れアルキレン又はC4−10シクロ−若しくはビシクロアルキレン基であり、RとRは各々独立に次式のものを表す。
【0060】
【化9】

【0061】
式IXはポリエステルのエステル結合の約1〜約45モル%を占める。他の実施形態では、式IXはポリエステルのエステル結合の約5〜約40モル%を占めることができ、約5〜約20モル%が特に好ましい。別の実施形態では、RがC3−14直鎖アルキレン又はC5−6シクロアルキレンを表す組成物が提供され、好ましい組成物はRがC3−10直鎖アルキレン又はC6−シクロアルキレンを表すものである。式VIIIは芳香族ジカルボン酸残基を表す。式VIII中の二価芳香族基Zは1種以上の上記定義の適切なジカルボン酸残基、好ましくは1種以上の1,3−フェニレン、1,4−フェニレン又は2,6−ナフタレンから誘導され得る。さらに好ましい実施形態では、Zは約40モル%以上の1,3−フェニレンからなる。ある代表的な実施形態では、ソフトブロック連鎖部分を含有するコポリエステルで、式I中のnはゼロである。
【0062】
一実施形態では外層2は、約1〜約45モル%のセバケート又はシクロヘキサン1,4−ジカルボキシレート単位を含むレゾルシノールアリーレート連鎖部分を含有するコポリエステルからなる。別の実施形態では、レゾルシノールアリーレート連鎖部分を含有するコポリエステルは、レゾルシノールイソフタレート単位とレゾルシノールセバケート単位を8.5:1.5〜9.5:0.5のモル比で含むものである。ある代表的な実施形態では、コポリエステルは、塩化セバコイルをイソフタロイルジクロリドと組合せて使用して製造される。
【0063】
もう一つ別の実施形態では、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーは、レゾルシノールアリーレート含有ブロックセグメントを有機カーボネートブロックセグメントと組合せて含む熱安定性ブロックコポリエステルカーボネートからなる。かかるコポリマー中でレゾルシノールアリーレート連鎖部分を含むセグメントは実質的に無水物結合をもたない。実質的に無水物結合をもたないとは、コポリエステルカーボネートが、このコポリエステルカーボネートを約280〜290℃の温度に5分間加熱した際に10%未満、好ましくは5%未満の分子量低下を示すことを意味している。
【0064】
ブロックコポリエステルカーボネートとしては、通例次式Xに示すように交互にアリーレートブロックと有機カーボネートブロックを含むものがある。
【0065】
【化10】

【0066】
式中、Rとnは既に定義した通りであり、Rは1種以上の二価有機基である。
【0067】
アリーレートブロックはmで表される重合度(DP)が約4以上、好ましくは約10以上、さらに好ましくは約20以上、最も好ましくは約30〜150である。pで表される有機カーボネートブロックのDPは一般に約10以上、好ましくは約20以上、最も好ましくは約50〜200である。ブロックの分布は、カーボネートブロックに対するアリーレートブロックの任意の所望の重量割合を有するコポリマーが得られるようにすることができる。一般に、アリーレートブロックの含量は約10〜95重量%が好ましく、約50〜95重量%がさらに好ましい。
【0068】
イソフタレートとテレフタレートの混合物が式Xに示されているが、アリーレートブロック中のジカルボン酸残基は、脂肪族二酸二塩化物から誘導されるもの(いわゆる「ソフトブロック」セグメント)を含めて上記定義の任意の適切なジカルボン酸残基又は適切なジカルボン酸残基の混合物から誘導され得る。好ましい実施形態では、nがゼロで、アリーレートブロックがイソフタル酸残基とテレフタル酸残基の混合物から誘導されるジカルボン酸残基からなり、ここでイソフタレート対テレフタレートのモル比は約0.25〜4.0:1、好ましくは約0.4〜2.5:1、さらに好ましくは約0.67〜1.5:1である。
【0069】
有機カーボネートブロックにおいて、各Rは独立に二価有機基である。好ましくは、この基は1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素からなり、ポリマー中のR基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、残りは脂肪族、脂環式又は芳香族基である。適切なR基としては、m−フェニレン、p−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−ビ(3,5−ジメチル)−フェニレン、2,2−ビス(4−フェニレン)プロパン、6,6’−(3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ[1H−インダン])、及び米国特許第4217438号に(一般的又は個々の)名称又は式により開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素に対応するもののような類似の基がある。
【0070】
ある代表的な実施形態では、各Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは次式XIの基である。
【0071】
【化11】

【0072】
式中、各AとAは単環式二価アリール基であり、Yは1又は2個の炭素原子がAとAを隔てている橋架け基である。式XI内の遊離の原子価結合は通常Yに対してAとAのメタ又はパラの位置にある。Rが式XIを有する化合物はビスフェノールであり、簡単にするために本明細書では用語「ビスフェノール」はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素を指していうことがある。ただし、このタイプの非ビスフェノール化合物も適宜使用できる。
【0073】
式XIで、AとAは通例非置換フェニレン又はその置換誘導体を表し、実例の置換基(1以上)はアルキル、アルケニル、及びハロゲン(特に臭素)である。非置換フェニレン基が好ましい。AとAがいずれもp−フェニレンであるのが好ましいが、両方がo−若しくはm−フェニレンであるか、又は一方がo−若しくはm−フェニレンで他方がp−フェニレンであってもよい。
【0074】
橋架け基Yは1又は2個の原子がAとAを隔てているものである。好ましい実施形態は1個の原子がAとAを隔てているものである。このタイプの実例の基は−O−、−S−、−SO−若しくは−SO−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチルメチレン、エチレン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン、及び類似の基である。gem−アルキレン(一般に「アルキリデン」といわれる)基が好ましい。しかし、不飽和基も含まれる。入手容易性と、本発明の目的に特に適していることから好ましいビスフェノールは、Yがイソプロピリデンで、AとAが各々p−フェニレンである2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−AすなわちBPA)である。反応混合物中に存在するレゾルシノール部分のモル過剰に応じて、カーボネートブロック中のRは少なくとも一部がレゾルシノール部分からなり得る。言い換えると、幾つかの実施形態では、式Xのカーボネートブロックは、1種以上の他のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と組合せたレゾルシノール部分からなり得る。
【0075】
レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーは、さらに、ジブロック、トリブロック、及び多ブロックコポリエステルカーボネートを含む。レゾルシノールアリーレート連鎖部分を含むブロックと、有機カーボネート連鎖部分を含むブロックとの化学結合は、(a)例えば通例以下の式XIIに示すような、アリーレート部分の適切なジカルボン酸残基と有機カーボネート部分の−O−R−O−部分とのエステル結合、及び(b)以下の式XIIIに示すような、レゾルシノールアリーレート部分のジフェノール残基と有機カーボネート部分とのカーボネート結合の1以上からなり得る。
【0076】
【化12】

【0077】
式中、Rは既に定義した通りである。
【0078】
【化13】

【0079】
式中、Rとnは既に定義した通りである。
【0080】
タイプ(a)のエステル結合がかなりの割合で存在すると、コポリエステルカーボネートで望ましくない発色が生じ得る。本発明は理論によって制限されることはないが、例えば、式XII中のRがビスフェノールAであり、式XIIの前記部分が後の加工及び/又は露光の間にフリース転位を受けると色が生じ得ると考えられる。一実施形態ではコポリエステルカーボネートは実質的に、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックの間にカーボネート結合を有するジブロックコポリマーからなる。さらに好ましい実施形態では、コポリエステルカーボネートは実質的に、レゾルシノールアリーレートブロックと両方の有機カーボネート末端ブロックの間にカーボネート結合を有するトリブロックカーボネート−エステル−カーボネートコポリマーからなる。
【0081】
熱安定性レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックとの間に1以上のカーボネート結合を有するコポリエステルカーボネートは通例、本発明の方法で製造される1個以上(好ましくは2個)のヒドロキシ末端部位を含有するレゾルシノールアリーレート含有オリゴマーから製造される。このオリゴマーは通例重量平均分子量が約10000〜約40000、さらに好ましくは約15000〜約30000である。熱安定性コポリエステルカーボネートは、第三アミンのような触媒の存在下で前記レゾルシノールアリーレート含有オリゴマーをホスゲン、1種以上の連鎖停止剤、及び1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と反応させることによって製造することができる。
【0082】
ある代表的な実施形態では、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含む1種以上のポリマーはイソテレフタル酸レゾルシノール(ITR)/ビスフェノールAコポリマーからなる。
【0083】
一実施形態では外層2は1以上の副層を含み得、この1以上の副層はレゾルシノールアクリレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる。一実施形態では外層2はレゾルシノールアクリレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる単一の副層のみで構成される。別の実施形態では、外層2は1以上の追加の副層を含んでいてもよく、ある代表的な実施形態では4以下の追加の副層を含むことができる。例えば、一実施形態では副層は外層2を中間層4に接着することができる組成物でよい。適切な接着剤組成物の実例としては、感熱性接着剤、感圧性接着剤(粘着剤)などがある。
【0084】
一つの特定の代表的な実施形態では、外層2の最外層は、レゾルシノールアクリレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーからなる1以上の副層である。本明細書で用いる「最外層」とは、図1に示されているような外面12を形成する副層をいう。
【0085】
外層2は、特に限定されないが、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、補助UV遮断剤、補助UV吸収剤、難燃剤、ドリップ抑制剤、流動助剤、可塑剤、エステル交換抑制剤、帯電防止剤、離型剤、並びに金属フレーク、ガラスフレーク及びビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、染料及び顔料(有機、無機又は有機金属)のような着色剤を始めとする当技術分野で公知の添加剤ような他の成分を含むことができる。
【0086】
一実施形態では外層2の全体の厚さは千分の約3〜約25インチ(以後「ミル」とする)である。別の実施形態では、外層2は約3〜約15ミルの厚さである。ある代表的な実施形態では、外層2の厚さは約5〜約15ミルである。
【0087】
ある代表的な実施形態では、多層積層体10の中間層4は、カーボネートポリマーからなる熱可塑性ポリマーからなり、外層2と結着層6の間に配置されている。一実施形態ではこの中間層4は外層2及び内側結着層6の両者と接触している。ある代表的な実施形態では、中間層4は外層2及び内側結着層6の両者と連続して接触している。
【0088】
中間層4の厚さは所望の用途によって決定し得る。一実施形態では中間層4は約4〜約200ミルの厚さであるが、別の実施形態では中間層4は約5〜50ミルの厚さである。ある代表的な実施形態におて、中間層4は約15〜約30ミルの厚さである。
【0089】
中間層の熱可塑性ポリマーはカーボネートポリマーに加えて他の熱可塑性ポリマーを含んでいてもよい。中間層の熱可塑性ブレンド中に使用するのに適切な他の熱可塑性ポリマーの実例としては、コポリエステルカーボネート、ポリカーボネートとコポリエステルカーボネートのブレンド、又はポリエステル(ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートのようなアクリレート、ポリフタレートカーボネート(PPC)、ポリカーボネートエステル(PCE)、上記のようなレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーなどの他のポリマーとのブレンドがある。PPCとPCEの実例は次式を有するポリカーボネート、ビスフェノールAイソフタレート、及びビスフェノールAテレフタレートの三元コポリマーである。
【0090】
【化14】

【0091】
式中、aは約60〜約80重量%の量で存在する芳香族エステルであり、bは約20〜約40重量%の量で存在するBPAカーボネートである。ここで、量はコポリマーの総重量を基準にする。一実施形態ではカーボネートポリマーを含む中間層の熱可塑性ポリマーはさらに、1種以上のPPC、PCE、PBT、PET又はこれらの混合物を含む。一つの特定の代表的な実施形態では、カーボネートポリマーを含む熱可塑性ポリマーはさらに1種以上のPPC、PCE又はこれらの混合物を含む。
【0092】
かかる他の熱可塑性材料は、中間層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約0〜約50重量%の他の熱可塑性材料の量で存在することができる。
【0093】
ある代表的な実施形態では、中間層4を構成する熱可塑性ブレンドは、PPCと、ビスフェノールA及び塩化カルボニル前駆体から製造されたポリカーボネートホモポリマーとからなる。ある代表的な実施形態では、PPCは、中間層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約5重量%以上のPPCの量で存在する。別の実施形態では、PPCは、中間層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約5〜約40重量%の量で存在し、ある代表的な実施形態では、PPCは、中間層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約20〜約30重量%の量で存在する。
【0094】
一実施形態ではポリカーボネート又はカーボネートポリマーは芳香族ポリカーボネート及びこれらの混合物からなる。一般に、芳香族ポリカーボネートは次式(I)の繰返し構造単位を有する。
【0095】
【化15】

【0096】
式中、Aはポリマー反応に使用したジヒドロキシ化合物の二価芳香族基である。溶融重合で製造したポリカーボネートはフリース生成物を含有することが多い。フリース生成物はフリース反応の生成物である。用語「フリース反応」と「フリース転位」は本明細書中で同義語として使用されており、枝分れ点として測定される側鎖枝分れの量をいう。フリース転位は、溶融法を用いてポリカーボネートを製造する間に起こる望ましくない副反応である。生成したフリース生成物はポリカーボネート鎖の枝分れ部位として働き、そのためポリカーボネートの流動性その他の特性に影響が出る。低レベルのフリース生成物はポリカーボネート中に許容され得るが、高レベルで存在するとポリカーボネートの強靱性や成形性のような性能特性に負の影響が出ることがある。フリース生成物の量は、メタノーリシスの後の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって枝分れ点を測定することによって決定することができる。
【0097】
重縮合反応によるポリカーボネートの製造に利用する反応体は一般にジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルである。使用できるジヒドロキシ化合物のタイプに特に制限はない。例えば、下記一般式(II)で表されるビスフェノール化合物を使用することができる。
【0098】
【化16】

【0099】
式中、RとRは同一でも異なっていてもよく、各々がハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、pとqは各々独立に0〜4の整数である。好ましくは、Xは次式(III)の基の一つを表す。
【0100】
【化17】

【0101】
式中、RとRは各々が独立に水素原子又は一価線状若しくは環式炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。式(II)で表され得るタイプのビスフェノール化合物の例としては、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン系、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノール−A)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなど、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン系、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどなど、及びこれらのビスフェノール化合物を1種以上含む組合せがある。
【0102】
式(II)で表され得る他のビスフェノール化合物としては、Xが−O−、−S−、−SO−又は−SO−であるものがある。かかるビスフェノール化合物の例は、ビス(ヒドロキシアリール)エーテル、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなど、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなど、ビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなど、ビス(ヒドロキシジアリール)スルホン、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなど、並びに以上のビスフェノール化合物を1種以上含む組合せである。
【0103】
カーボネートポリマーの重縮合に利用できるビスフェノール化合物は次式(IV)で表される。
【0104】
【化18】

【0105】
式中、Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基又はハロゲン置換炭化水素基のハロゲン原子であり、nは0〜4の値である。nが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。式(IV)で表され得るビスフェノール化合物の例は、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物(例えば、3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−プロピルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、2,3,4,6−テトラフルオロレゾルシン、2,3,4,6−テトラブロモレゾルシンなど)、カテコール、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン(例えば、3−メチルヒドロキノン、3−エチルヒドロキノン、3−プロピルヒドロキノン、3−ブチルヒドロキノン、3−t−ブチルヒドロキノン、3−フェニルヒドロキノン、3−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなど)など、及びこれらのビスフェノール化合物を1種以上含む組合せである。
【0106】
また、次式(V)で表される3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ[インダン]−6,6’−ジオールのようなビスフェノール化合物も使用できる。
【0107】
【化19】

【0108】
好ましいビスフェノール化合物はビスフェノールAである。また、ポリカーボネートコポリマーは、2以上のビスフェノール化合物を炭酸ジエステルと反応させることによって製造することができる。
【0109】
ポリカーボネートを製造するのに利用できる炭酸ジエステルの例は、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなど、及びこれらの炭酸ジエステルを1種以上含む組合せである。好ましい炭酸ジエステルはジフェニルカーボネートである。
【0110】
炭酸ジエステルはジカルボン酸及び/又はジカルボン酸エステルを含有していることがある。一般に、炭酸ジエステルが約50モル%(モルパーセント)以下、好ましくは約30モル%以下のジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含有するのが望ましい。使用できるジカルボン酸又はジカルボン酸エステルの例は、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、セバシン酸ジフェニル、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、デカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニルなど、並びに以上のものを1種以上含む組合せである。炭酸ジエステルは所望により2種類以上のジカルボン酸及び/又はジカルボン酸エステルを含有していてもよい。
【0111】
適切なジカルボン酸又はエステルの追加の例は脂環式ジカルボン酸又はエステルである。本明細書で用いる用語「脂環式」及び「環式脂肪族基」は同じ意味をもっており、環状ではあるが芳香族ではない一並びの原子を含み1以上の原子価を有する基をいう。この並びは窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素から構成されていてもよい。環式脂肪族基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニルなどがある。
【0112】
脂環式ジカルボン酸又はエステルの非限定例は、シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルシクロプロパンジカルボキシレート、ジフェニル1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジフェニル1,3−シクロブタンジカルボキシレート、ジフェニル1,2−シクロペンタンジカルボキシレート、ジフェニル1,3−シクロペンタンジカルボキシレート、ジフェニル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニル1,3−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、及び2種以上の異なる脂環式ジカルボン酸又はエステルの組合せから選択される酸又はエステルからなる。
【0113】
一般に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物のモル比を約0.95〜約1.20とするのが望ましい。この範囲内で、一般にモル比は約1.01以上であるのが望ましい。また、この範囲内で、モル比は約1.10以下であることが望ましい。
【0114】
所望により、カーボネートポリマー又はポリカーボネートは、3個以上の官能基を有する多官能性化合物を、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルと反応させることによって製造してもよい。適切な多官能性化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基又はカルボキシル基を有するものがある。好ましい多官能性化合物は3個のヒドロキシ基を有するフェノール性化合物である。かかる多官能性化合物の例は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’,2’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、α−メチル−α,α’,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、α,α’,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン−2、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,2−ビス−[4,4−(4,4’−ジヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、トリメリト酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリト酸など、及びこれらの多官能性化合物を1種以上含む組合せである。好ましい多官能性化合物は1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン及びα,α’,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン又はこれらの化合物を1種以上含む組合せである。
【0115】
多官能性化合物は、一般に、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり約0.03モル以下の量で使用し得る。この範囲内で、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり約0.001モル以上の量で多官能性化合物を使用するのが望ましい。また、この範囲内で、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり約0.02モル以下、好ましくは約0.01モル以下の量の多官能性化合物が望ましい。
【0116】
特定の理論に縛られたくはないが、約17000〜約22000の重量平均分子量を有するカーボネートポリマーは射出成形に適しており、一方約20000〜約36000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネート組成物は多層積層体の押出加工に適切であると考えられる。ある代表的な実施形態では、中間層4の熱可塑性ポリマーのカーボネートポリマーは約30000〜約36000の範囲の重量平均分子量を有している。
【0117】
一実施形態では中間層4は、GE Plastics Corporationから市販されているカーボネートポリマー製品であるLEXAN(登録商標)ポリカーボネートからなる。別の実施形態では、中間層4はLEXAN(登録商標)100、ML9103、131又はEXRL00065の1種以上からなる。ある代表的な実施形態では、中間層4はLEXAN(登録商標)EXRL0065ポリカーボネートからなる。
【0118】
再び図1を参照して、内側結着層6が外層2の反対側にあって、中間層4と接触しているのが分かり、かかる接触はある代表的な実施形態では連続的である。内側結着層6により、図6に示されているように多層積層体10と基材8との望ましい接着が得られる。
【0119】
一実施形態では結着層6は、カーボネートポリマーと、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)の1種以上であるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとからなる熱可塑性ブレンドからなる。
【0120】
一実施形態では結着層樹脂のメルトフローボリュームはISO 1133又はASTM D1238に従って260℃/5kgで測定して約2〜約50cm/10minであり、別の代表的な実施形態では、メルトフローボリュームは約3〜約40cm/10minである。別の代表的な実施形態では、結着層樹脂のメルトフローボリュームはISO 1133又はASTM D1238に従って260℃/5kgで測定して約3〜約30cm/10minである。
【0121】
適切なカーボネートポリマー組成物としては、中間層4のカーボネートポリマーに適切なものとして上で論じたものがある。一実施形態では適切なカーボネートポリマー組成物として、約20000〜約36000の重量平均分子量を有するものがあり、一方別の実施形態では、結着層6として使用するのに適切なカーボネートポリマーは約21000〜約31000の重量平均分子量を有する。
【0122】
別の実施形態では、適切なカーボネートポリマー組成物はメルトフロー粘度(300℃/1.2kgで測定)が約3〜約30cm/10minであり、別の実施形態では、カーボネートポリマー組成物はメルトフロー粘度が約3〜約26cm/10minである。
【0123】
結着層6の熱可塑性ブレンドのカーボネートポリマー成分はまた、中間層4のカーボネートポリマーに関して上で論じたようなポリブチレンテレフタレート(PET)、コポリエステルカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを含んでいてもよい。ある代表的な実施形態では、結着層6の熱可塑性ブレンドのカーボネートポリマー成分はポリカーボネートホモポリマーからなる。
【0124】
結着層6の熱可塑性組成物はさらに、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)の1種以上であるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマー又は共重合体を含む。
【0125】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)グラフトコポリマーは、化学結合した2種以上の異なる組成を有するポリマー成分を含有する。グラフトコポリマーを製造するには、好ましくは、まず、ブタジエンその他の共役ジエンのような共役ジエンを、それと共重合可能なスチレンのようなモノマーと共に重合してポリマー幹を得る。ポリマー幹の形成後、そのポリマーの幹の存在下で1種以上、好ましくは2種のグラフト用モノマーを重合してグラフトコポリマーを得る。これらの樹脂は当技術分野で周知の方法で製造される。
【0126】
例えば、ABSは1以上の乳化又は溶液重合法、バルク/塊状、懸濁及び/又は乳化−懸濁法経路で製造することができる。また、ABS材料は製造経済若しくは製品性能のいずれか又は両者の理由から回分式、半回分式及び連続重合のような他のプロセス技術で製造してもよい。
【0127】
ポリマー幹は、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレンのような共役ジエンポリマー、又はブタジエン−スチレン、ブタジエン−アクリロニトリルのようなコポリマーなどである。
【0128】
グラフトコポリマーのポリマー幹を製造する際に通常利用される共役ジエンモノマーは次式(XIII)により記述される。
【0129】
【化20】

【0130】
式中、Xは水素、C〜Cアルキル、塩素、臭素などである。使用できる共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、クロロ及びブロモ置換ブタジエン、例えばジクロロブタジエン、ブロモブタジエン、ジブロモブタジエン、以上の共役ジエンモノマーを1種以上含む混合物などである。好ましい共役ジエンモノマーはブタジエンである。
【0131】
ポリマー幹の存在下で重合することができる1種のモノマー又は一群のモノマーはモノビニル芳香族炭化水素である。利用されるモノビニル芳香族モノマーは次式(XIV)により記述される。
【0132】
【化21】

【0133】
式中、Xは水素、C〜C12アルキル(例えば、シクロアルキル)、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12アリールオキシ、塩素、臭素などである。モノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ−クロロスチレン、以上の化合物を1種以上含む混合物などがある。好ましいモノビニル芳香族モノマーはスチレン及び/又はα−メチルスチレンである。
【0134】
ポリマー幹の存在下で重合することができる第二の群のモノマーは、アクリロニトリル、置換アクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステルのようなアクリルモノマーであり、例えば、アクリロニトリル、及びメタクリル酸メチルのようなC〜Cアルキルアクリレートなどである。
【0135】
アクリロニトリル、置換アクリロニトリル又はアクリル酸エステルは次式(XV)で記述される。
【0136】
【化22】

【0137】
式中、Xは既に定義した通りであり、Yはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニルなどである。かかるモノマーの例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、β−ブロモアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、以上のモノマーを1種以上含む混合物などがある。好ましいモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸メチルがある。
【0138】
グラフトコポリマーの製造の際、ポリマー幹はグラフトコポリマー組成物全体の約5〜約60重量%からなる。ポリマー幹の存在下で重合するモノマー、例えばスチレン及びアクリロニトリルはグラフトポリマー全体の約40〜約95重量%からなる。
【0139】
グラフトポリマー組成物の第二の群のグラフト用モノマー、例えばアクリロニトリル、アクリル酸エチル又はメタクリル酸メチルは、好ましくは、グラフトコポリマー組成物全体の約5%〜約40重量%からなる。モノビニル芳香族炭化水素、例えばスチレンは好ましくは、グラフトコポリマー全体の約10〜約70重量%からなる。
【0140】
グラフトコポリマーを製造する際、通常は、ポリマー幹にグラフトする重合性モノマーのある程度の割合を互いに混合し、遊離のコポリマーとして生成させる。グラフト用モノマーの1種としてスチレンを使用し、第二のグラフト用モノマーとしてアクリロニトリルを使用する場合、組成物のある部分は遊離のスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)として共重合する。グラフトポリマーを製造するのに使用する組成物中のスチレンの代わりにα−メチルスチレン(又はその他のモノマー)を使用する場合、組成物のある割合はα−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマーとなり得る。また、α−メチルスチレン−アクリロニトリルのようなコポリマーを、グラフトポリマーコポリマーブレンドに添加する場合もある。従って、グラフトコポリマーは、場合により、グラフトコポリマーの総重量を基準にして約80%以下の遊離のコポリマーを含むことがある。ある代表的な実施形態では、内側結着層6の熱可塑性ポリマーはABSグラフトコポリマー及びSANコポリマーからなる。
【0141】
場合により、ポリマー幹は、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、以上のものを1種以上含む混合物などの重合生成物のようなアクリレートゴムであってもよい。さらに、アクリレートゴムの幹中に少量のジエンを共重合させてマトリックスポリマーとの改良されたグラフト性を達成することもできる。
【0142】
ガラス転移温度が0℃未満のスチレンブタジエンゴム又はブタジエンゴムのコポリマーが殊に適している。
【0143】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーは当技術分野で公知であり、例えば、General Electric CompanyからBLENDEX(登録商標)グレード131、336、338、360、及び415として入手可能な高ゴムアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を始めとして多くのものが市販されている。
【0144】
約0.1〜約5ミクロンの平均粒度を有するABSポリマー及び樹脂が殊に適切であり、ある代表的な実施形態では約0.1〜約2ミクロンの平均粒度を有するABSを使用する。
【0145】
約40〜約90%の架橋密度を有するABSポリマー及び樹脂が殊に適切であり、ある代表的な実施形態では約45〜約80%の架橋密度を有するABSを使用する。
【0146】
一実施形態では内側結着層6の熱可塑性ブレンドはGE Plasticsから商標名CYCOLOY(登録商標)で市販されている1種以上のABSポリマー又は樹脂からなる。ある代表的な実施形態では、ABSポリマーは1種以上のCYCOLOY(登録商標)C1000HF、C1200、MC8800、MC8002、EXCY0076であり、特に代表的な実施形態ではCYCOLOY(登録商標)グレードC1000HF、EXCY0076及びMC8002を使用し、殊に代表的な実施形態ではEXCY0076を使用する。
【0147】
ASAポリマーは、一般にアクリレート、スチレン、及びアクリロニトリルのターポリマーであり、通例グラフト化架橋アルキルアクリレートゴム相を含有している。殆どのASA生成物は、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーのガラス様連続マトリックス中に分散したグラフト化エラストマー性ターポリマー、アクリレート−スチレン−アクリロニトリルの二相系からなる。このグラフトは通例ポリアルキルアクリレートゴムコアとグラフト化したSANシェルからなり、少量のスチレンとアクリロニトリルがゴム粒子上にグラフト化して二つの相を相溶化している。
【0148】
ASAは通例三段階重合反応で製造される。まず、エラストマー性成分、通例ポリアルキルアクリレートゴム又はポリアルキルアルキルアクリレートゴムを水系乳化又は溶液重合法で製造する。第二の段階では、スチレンとアクリロニトリルを場合により他のモノマーと共に共重合し、エラストマー性相上にグラフト化して所望の相溶性を達成する。この段階は乳化、バルク/塊状又は懸濁及び/又は乳化−懸濁プロセス経路で実施することができる。第三の段階では、スチレンとアクリロニトリル(及び、場合により、他のモノマー)を、第二の(グラフト化)段階と同時に、又は別途独立した操作として共重合して、剛性のマトリックスを形成する。この工程も1以上の乳化、バルク又は懸濁法を含み得る。また、ASA材料は製造経済若しくは製品性能のいずれか又は両者の理由から回分式、半回分式及び連続重合のような他のプロセス技術で製造してもよい。
【0149】
一実施形態では適切なASAポリマーは、ポリ(アルキルアクリレート)ゴム系のASAグラフト相とビニル芳香族/シアン化ビニル/ビニルカルボン酸エステルマトリックス相との組合せから製造される。ある代表的な実施形態では、このASAポリマーは二相系である。この二相系は、アクリレートゴム基材、好ましくはポリ(アクリル酸ブチル)ゴムと、これに結合したスチレン−アクリロニトリル(SAN)の枝(又はグラフト)コポリマーからなる。この相は、SANが化学反応によりゴムに物理的に結合又はグラフト化しているので一般に「ゴムグラフト相」といわれる。
【0150】
一つの殊に代表的な実施形態では、MMASAN、すなわちメタクリル酸メチル及びスチレンアクリロニトリルのターポリマーと、PMMA、すなわちポリメチルメタクリレートの「剛性のマトリックス相」又は連続相を使用する。このゴムグラフト相(又は分散相)は、ポリマー連続相を形成するPMMA/MMASANのマトリックス相全体にわたって分散している。ゴム界面はグラフト相とマトリックス相との境界を形成する表面である。グラフト化SANはこの界面でゴムとマトリックス相PMMA/MMASANとの相溶化剤として働き、これら2つの他の場合には非混和性の相の分離を抑制する。
【0151】
本発明で使用するASA熱可塑性樹脂は、ビニルカルボン酸エステルモノマー、ビニル芳香族モノマー及びシアン化ビニルモノマーのグラフトコポリマーである。すなわち、本明細書で用いるASAには、以下に定義するようなビニルカルボン酸エステルモノマー、ビニル芳香族モノマー及びシアン化ビニルモノマーから誘導されるポリマーの群が包含される。本発明で使用するビニルカルボン酸エステルモノマー(α−、β−不飽和カルボン酸のエステル)は、本明細書中で、次式の構造式で定義される。
【0152】
【化23】

【0153】
式中、Jは水素、炭素原子数1〜8のアルキル基、シクロアルキル、アルコキシ及びヒドロキシアルキルからなる群から選択され、Aは炭素原子数1〜12のアルキル基からなる群から選択される。ビニルカルボン酸エステルモノマーの例としては、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、エタクリル酸メチル、エタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びこれらの混合物がある。ビニル芳香族モノマーは本明細書中で次の構造式によって定義される。
【0154】
【化24】

【0155】
式中、各Xは独立に水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、シクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ及びハロゲンからなる群から選択され、Rは水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、臭素及び塩素からなる群から選択される。ビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、4−メチル−スチレン、ビニルキシレン、トリメチル−スチレン、3,5−ジエチル−スチレン、p−tert−ブチル−スチレン、4−n−プロピル−スチレン、α−メチル−スチレン、α−エチル−スチレン、α−メチル−p−メチル−スチレン、p−ヒドロキシ−スチレン、メトキシ−スチレン、クロロ−スチレン、2−メチル−4−クロロ−スチレン、ブロモ−スチレン、α−クロロ−スチレン、α−ブロモ−スチレン、ジクロロ−スチレン、2,6−ジクロロ−4−メチル−スチレン、ジブロモ−スチレン、テトラクロロ−スチレン及びこれらの混合物がある。シアン化ビニルモノマーは本明細書中で次の構造式によって定義される。
【0156】
【化25】

【0157】
式中、Rは水素、炭素原子数1〜5のアルキル基、臭素及び塩素からなる群から選択される。シアン化ビニルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル及びα−ブロモアクリロニトリルがある。
【0158】
さらに、適切なASAポリマー及びコポリマーの各種特性を変えるために上記リストのものに加えて又はその代わりに各種のモノマーを利用することができる。上で論じた適切なASAは1種以上の共重合可能なモノマーとコンパウンディングすることができる。例えば、ゴム相は、アクリル酸ブチルゴムに加えて又はその代わりに、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン若しくはブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ポリイソプレン、EPM(エチレン/プロピレンゴム)、EPDMゴム(エチレン/プロピレン/非共役ジエンゴム)、並びにC1〜C12アクリレート及びアルキルアクリレート系の他の架橋アクリレート及びアルキルアクリレートゴムを単独又は2種以上の混合物として含んでいてもよい。また、このゴムはブロック又はランダムコポリマーからなっていてもよい。グラフト又はマトリックス樹脂中に使用するアクリレート、スチレン及びアクリロニトリルモノマーに加えて又はその代わりに、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸のようなビニルカルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド及びn−ブチルアクリルアミドのようなアクリルアミド、無水マレイン酸及び無水イタコン酸のようなα,β−不飽和ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド及びハロ置換N−アルキルN−アリールマレイミドのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド、イミド化ポリメタクリル酸メチル(ポリグルタルイミド)、ビニルメチルケトン及びメチルイソプロペニルケトンのような不飽和ケトン、エチレン及びプロピレンのようなα−オレフィン、酢酸ビニル及びステアリン酸ビニルのようなビニルエステル、塩化及び臭化ビニル及びビニリデンのようなビニル及びビニリデンハロゲン化物、ビニルナフタレン及びビニルアントラセンのようなビニル置換縮合芳香環構造、並びにピリジンモノマーを始めとするモノマーも単独で又は2種以上の混合物として使用できる。
【0159】
一実施形態ではゴムは架橋ポリ(アルキルアクリレート)ゴム及びポリ(アルキルアルキルアクリレート)ゴムである。他の実施形態では、ゴムはポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(アクリル酸エチル)及びポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ゴムである。別の実施形態では、ゴムはポリ(アクリル酸ブチル)ゴム、特にポリ(アクリル酸n−ブチル)ゴムである。
【0160】
一実施形態ではゴムのグラフト相の製造の際に使用するモノエチレン性不飽和ビニルカルボン酸エステルモノマーは、(C〜C12)アルキルアクリレート及び(C〜C12)アルキル、(C〜C)アルキルアクリレートモノマー及びこれらの混合物から選択される。別の実施形態では、(C〜C12)アルキルアクリレートモノマー及びこれらの混合物から選択される。
【0161】
本明細書で用いる用語「ポリエチレン性不飽和」とは、1分子当たり2以上のエチレン性不飽和部位を有することを意味する。ポリエチレン性不飽和モノマーは、工程中に形成されるポリ(アルキルアクリレート)ゴム粒子の「架橋」を提供し、また後のグラフト用モノマーとの反応のための「グラフト結合性」部位をポリ(アルキルアクリレート)ゴムに提供するために、適切なアルキルアクリレートゴム中に使用される。一実施形態ではポリエチレン性不飽和架橋モノマーは、使用する重合条件下で、モノエチレン性不飽和アルキルアクリレートモノマーと類似の反応性を有するエチレン性不飽和部位を1分子当たり2以上含有する。別の実施形態では、グラフト結合性モノマーは、使用する乳化その他の重合条件下でアルキルアクリレートモノマーと同様な反応性を有する1以上のエチレン性不飽和部位と、本発明の方法で使用する乳化重合条件下でモノエチレン性不飽和アルキルアクリレートモノマーと実質的に異なる反応性を有する1以上の他のエチレン性不飽和部位とを有しており、グラフト結合性モノマー1分子当たり1以上の不飽和部位がゴムラテックスの合成中に反応し、またグラフト結合性モノマー1分子当たり1以上の他の不飽和部位がゴムラテックスの合成後も未反応で残留し、そのため後の異なる反応条件下での反応に利用できるように残る。
【0162】
さらに別の実施形態では、ポリエチレン性不飽和モノマーには、例えば、ブチレンジアクリレート、ジビニルベンゼン、ブテンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート及びこれらの混合物が含まれる。好ましい実施形態では、トリアリルシアヌレートを架橋用モノマー及びグラフト結合性モノマーの両者として使用する。
【0163】
場合により、本発明で使用するアルキルアクリレートモノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーを、例えばモノマーの合計量の100pbw当たり約25pbw以下のような少量で反応混合物に含ませてもよい。適切な共重合可能なモノマーとしては、例えば、モノエチレン性不飽和カルボン酸、ヒドロキシ(C〜C12)アルキルメタクリレートモノマー、(C〜C12)シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、アクリルアミドモノマー、マレイミドモノマー及びビニルエステルがある。本明細書で用いる用語「(C〜C12またはC4−12)シクロアルキル」とは、基当たり4〜12個の炭素原子を有する環式アルキル置換基を意味しており、用語「アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミドを総称していう。また、例えば、スチレン及び芳香環に結合した1以上のアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ又はハロ置換基を有する置換スチレンのようなビニル芳香族モノマーも適切である。
【0164】
一実施形態ではASAポリマーは約10〜約40%のポリ(アクリル酸ブチル)ゴムを含む。第二の実施形態では約15〜約30%であり、さらに第三の実施形態では約15〜25%のゴムを含む。
【0165】
一実施形態ではゴムグラフト相は20〜約70%のポリ(アクリル酸ブチル)を含む。別の実施形態では、ゴムグラフト相は約45%のポリ(アクリル酸ブチル)ゴムと55%のSANからなり、このグラフト相のSAN部分は65%のスチレン及び35%のアクリロニトリル〜75%のスチレン及び25%のアクリロニトリルからなる。さらに別の実施形態では、SAN部分は約70〜75%のスチレンと約25〜30%のアクリロニトリルからなる。
【0166】
一実施形態ではMMASANは80%のMMA、15%のスチレン及び5%のアクリロニトリルからなり、別の実施形態では約60%のMMA、30%のスチレン及び10%のアクリロニトリルからなる。第三の実施形態では、MMASANは約45%のメタクリル酸メチル、40%のスチレン及び15%のアクリロニトリルからなる。一実施形態ではマトリックス相コポリマー中のPMMA/MMASANの比は約20/80〜約80/20の範囲であり、別の実施形態では25/75〜約75/25、例えば50/50である。
【0167】
ASAポリマーは一実施形態ではグラフト相とマトリックス相の比が15/85〜75/25で、別の実施形態では約45%のグラフト相と55%のマトリックス相からなる。グラフトコポリマー相は当技術分野で周知の各種混合法によりマトリックス相ホモポリマー、コポリマー及び/又はターポリマーと共に凝集、ブレンド及びコロイド化してASAポリマーブレンドを形成することができる。
【0168】
ある代表的な実施形態では、内側結着層6の熱可塑性ブレンドは、カーボネートポリマー、ASAグラフトコポリマー及びSANコポリマーからなる市販の熱可塑性組成物である。適切な市販の熱可塑性組成物はWashington、WVのGeneral Electric Plasticsから入手可能なGELOY?ブランドの熱可塑性組成物である。一実施形態では内側結着層6は1種以上のGELOY?HRA 150、HRA 170、XP7550、及びこれらの混合物である。一つの特定の代表的な実施形態では、結着層6はGELOY?HRA 150からなる。
【0169】
適切なSANは一般に重量平均分子量が約60000〜約200000であり、ある代表的な実施形態では約90000〜約190000である。SANコポリマーの重量を基準にして約15〜40重量%のアクリロニトリル(AN)含量を有するSANコポリマーが特に適切であり、ある代表的な実施形態では約20〜約35重量%を有するSANコポリマーを使用する。
【0170】
一実施形態では結着層6の熱可塑性ポリマーは、結着層の総重量を基準にして約25〜約80重量%のポリカーボネート、約10〜約35重量%のASA又はABS及び約10〜約40重量%のSANからなる。別の実施形態では、結着層6の熱可塑性ポリマーは、結着層の総重量を基準にして約40〜約80重量%のポリカーボネート、約10〜約30重量%のASA又はABS及び約10〜約30重量%のSANからなる。ある代表的な実施形態では、結着層6の熱可塑性ポリマーは、結着層の総重量を基準にして約40〜約75重量%のポリカーボネート、約12〜約30重量%のASA又はABS及び約12〜約30重量%のSANからなる。
【0171】
内側結着層の熱可塑性ポリマーは、場合により、特に限定されないが、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、UV遮断剤、UV吸収剤、難燃剤、ドリップ抑制剤、流動助剤、可塑剤、エステル交換抑制剤、帯電防止剤、離型剤、充填材、並びに金属フレーク、ガラスフレーク及びビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、染料及び顔料(有機、無機又は有機金属)のような着色剤を始めとする当技術分野で公知の添加剤のような他の成分を含んでいてもよい。
【0172】
ある代表的な実施形態では、内側結着層の熱可塑性ポリマーは安定剤又は安定剤系を含む。一つの望ましい実施形態では、安定剤はアルキルチオエステルからなる。一つの特定の代表的な実施形態では、安定剤はペンタエリトリトールテトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)を含有する安定剤からなる。もう一つ別の実施形態では、安定剤はペンタエリトリトールテトラキス(ドデシルチオプロピオネート)を含有する安定剤からなる。適切なアルキルチオエステル系又はこれを含有する安定剤の代表的な市販の例は、シプロ化成株式会社から市販されているSEENOX(商標)安定剤である。
【0173】
一つの特定の代表的な実施形態では、内側結着層6は、ポリカーボネートポリマーからなる熱可塑性ポリマー、ABSグラフトコポリマー、SANコポリマー及びSEENOX安定剤からなる。かかる熱可塑性ポリマーブレンドはGE PlasticsからCYCOLOY(登録商標)EXCY0076として入手可能である。
【0174】
結着層6の正確な厚さは目的とする用途によって決定される。一実施形態では結着層6は通例約3〜約30ミルの厚さであり、別の実施形態では、内側結着層6の厚さは約3〜12ミルの厚さである。ある代表的な実施形態では、結着層6は約3〜約6ミルの厚さであり、別の実施形態では、この厚さは約9〜約12ミルの厚さである。
【0175】
一般に、多層積層体の全体の厚さは約20〜約200ミルである。ある代表的な実施形態では、多層積層体10は約30〜約55ミルの厚さである。
【0176】
多層積層体は、特に限定されないが、共射出成形、共押出積層、共押出ブローフィルム成形、共押出、オーバーモールディング、マルチショット射出成形、シートモールディングなどを始めとする各種の製造方法のいずれかで製造することができる。一実施形態では多層積層体は共押出積層で製造し得る。別の実施形態では、外層2はロール上に既に押出されたフィルムから別途積層することができる。かかる実施形態では、外層2は接着剤又は接着性組成物からなる1以上の副層を含んでいてもよい。
【0177】
一実施形態では多層積層体10は、単一のマニフォルド又は多数のマニフォルド設計とすることができるシート又はフィルムダイオリフィスを通して複数の層を同時に押出す共押出積層法で製造される。溶融状態にあるままの層を一緒に積層した後、加熱してもよい一対のロールのニップに通すことにより共に圧縮する。その後積層体を冷却する。多層積層体10の厚さは目的とする用途によって決定される。
【0178】
別の実施形態では、多層積層体10は、溶融した個々の層2、4、及び6を共に射出し、ダイオリフィスを通して押出すことにより多層シート又はフィルムにし、その後冷却する。
【0179】
さらに別の実施形態では、多層積層体10を形成する方法は、多数の層を押出してチューブ状のパリソンを形成し、次にこれをブロー成形して中空の物品とし、その後これをスリットして平坦な多層積層体10を製造する共押出ブローフィルム法を含む。
【0180】
ある代表的な実施形態では、多層積層体は共押出で製造される。参照数字30で示された押出機構の概略図である図3に示されているように、多層積層体10は、層2、4、及び6をそれぞれホッパー/押出機32/38、34/40、及び36/42から共押出積層することによって形成することができる。押出機30は、それぞれ対応する第1の押出機38、第2の押出機40、及び第3の押出機42に材料を移送するための第1のホッパー32、第2のホッパー34、及び第3のホッパー36を備える。このようにして、各ホッパーと各押出機を調整して、異なる押出温度と粘度の組成物を加工処理することができる。各押出機は溶融している材料をロールスタック44に移送し、別々の組成物を圧縮して多層積層体10にする。この多層積層体10はマスキングロール46によりさらに加工処理してロールにしたり、引張ロール48により引っ張ってシートにしたりすることができる。多層積層体10のシートは剪断ステーション50でより小さい寸法のシートに切断し、シートスタッカー55に入れることができる。
【0181】
押出機構30は異なるプロセス温度を有する層2、4、及び6を多層積層体10に加工処理する。ある代表的な例において、第1の押出機38は約400〜約550°F、好ましくは約400〜約500°F、さらに好ましくは約440〜約480°Fの温度で作動してレゾルシノールアリーレートポリエステル外層2を加工処理する。第2の押出機40は約400〜約550°F、好ましくは約420〜約530°F、さらに好ましくは430〜約530°Fの温度で作動して中間層4のポリカーボネート組成物からなる熱可塑性ポリマーを加工処理する。第3の押出機42は約400〜約530°F、好ましくは約420〜約500°F、さらに好ましくは約440〜約480°Fの温度で作動して内側結着層を加工処理する。
【0182】
これらの層2、4、及び6をそのまま圧縮して多層積層体10として適切な形態にする。
【0183】
ある代表的な実施形態では、熱成形可能な多層積層体10は、図4に示したような目的とする任意の構造を有する成形多層積層体60に製造することができる。成形多層積層体の横断面図は図1の多層積層体10と同じであることが分かる。しかし、成形多層積層体60の形状は基材8又は図4に示したような金型62に対応する構造をとることができる。多層積層体10は、特に限定されないが、熱成形、圧縮成形、真空成形などを始めとする各種の方法のいずれか一つにより成形多層積層体60に成形することができる。
【0184】
ここで図2を参照すると、成形品20の断面図が示されている。成形品20は基材8に接着又は結合した多層積層体10からなる。内側結着層6は基材8に接着されると同時に多層積層体10の中間層4に対する良好な接着を提供している。
【0185】
使用する基材8は、特に限定されないが、熱硬化性材料、熱可塑性材料、発泡材料、強化材料、及びこれらの組合せを始めとする各種の適切な組成物のいずれでもよい。実例としては、ポリウレタンフォーム及び繊維強化ポリウレタンを始めとするポリウレタン組成物、繊維強化ポリプロピレンを始めとするポリプロピレン、ポリカーボネート/PBTブレンドなどがある。強化用繊維としては、炭素繊維、ガラスなどがある。
【0186】
一実施形態では基材8は強化熱可塑性ポリウレタン、発泡熱可塑性ポリウレタン、及びこれらの組合せの1種以上である。ある代表的な実施形態では、基材8はガラス繊維強化ポリウレタン、炭素繊維強化ポリウレタン、発泡熱可塑性ポリウレタン、及びこれらの組合せの1種以上である。
【0187】
内側結着層6と基材8との接合は成形、接着剤、化学的接合、機械的接合など、及びこれらの組合せの結果として得ることができる。ある代表的な実施形態では、内側結着層6と基材8の接合は内側結着層6の上に直接基材8を射出成形することによって得られる。
【0188】
図5及び図6に示されているような成形品を製造する方法も開示されている。本発明の方法は、本発明の多層積層体10を準備し、その多層積層体10を、多層積層体10の結着層6の背後又は裏にキャビティー64が形成されるように金型62内に入れ、基材8を多層積層体10の背後のキャビティー64内に入れることからなっており、ここで多層積層体10の内側結着層6が基材8に接合又は接着されて、成形品20が得られる。
【0189】
図5及び図6に示されているような一実施形態では金型62内に入れる多層積層体10は成形多層積層体60であり得る。一実施形態ではこの成形多層積層体60は金型62と実質的に一致する形状を有し得る。
【0190】
本発明の方法はさらに成形品を冷却すること及び/又は成形品20を金型62から取り出すことを含み得る。一実施形態では、成形品20を冷却し、その後金型から取り出す。
【0191】
基材8をキャビティー64内に入れるには、射出成形、反応射出成形、長繊維強化射出成形などを始めとする各種の方法で実施することができる。一実施形態では、基材8を反応射出成形によってキャビティー64内に射出する。一実施形態では、基材8を液体として射出した後成形して半固体又は固体の基材8を形成する。
【0192】
成形品20は殊に、特に限定されないが、ドアパネル、屋根、フードパネルなどの自動車用外装パネルを始めとする自動車用部品として応用できる。
【実施例】
【0193】
以下の実施例で本発明の実施形態及び製造方法を例示する。
【0194】
実施例1
ASA/SANを含む熱可塑性ブレンドを有する異なる結着層組成の4つの多層積層体を調製した。各積層体は、GE PlasticsからITR−#RL7577として市販されているイソテレフタル酸レゾルシノール/ビスフェノールAコポリマーの外層、LEXAN(登録商標)131(試料1&2)、LEXAN(登録商標)100(試料3)として市販されているビスフェノールAと塩化カルボニルから製造したポリカーボネートホモポリマーの中間層、並びに表1に記載した各種割合のポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)のブレンドからなる内側結着層から製造した。外層の平均厚さは5〜15ミル、中間層の平均厚さは15〜40ミル、内側層の平均厚さは4〜15ミルであった。積層体の合計厚さは30〜55ミルであった。
【0195】
【表1】

【0196】
これらの積層体は3つの異なる共押出ラインで調製した。
【0197】
試料1と2は、幅30″、ライン速度10.75ft/minの単一のマニフォルドダイを有する押出ラインAで製造した。クロムロール(240°F)が外層と、またシリコンゴムロール(130°F)が内側層と接触した。内側層組成物は直径1.25インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。中間層組成物は中間混合セクションを有する二段階バリアスクリューを備えた直径2.5インチの押出機を用いて押出した。外層は直径2インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。
【0198】
試料3は、ライン速度6.2〜8.1ft/minを有する幅54インチの単一のマニフォルドダイを有する押出ラインBで製造した。クロムロール(240°F)が外層と、クロムロール(200°F)が内側層と接触した。内側層組成物は直径2インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。中間層組成物は真空ストリッピングのある二段階バリアスクリューを備えた直径3.5インチの押出機を用いて押出した。外層は直径2.5インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。
【0199】
試料4は、幅14インチ、ライン速度約4〜6ft/minの単一のマニフォルドダイを有する押出ラインCで製造した。クロムロール(240°F)が外層と、シリコンゴムロール(130°F)が内側層と接触した。内側層組成物は直径1インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。中間層組成物は直径1.5インチの押出機を用いて押出した。外層は直径1インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。
【0200】
これらの積層体を、長繊維強化射出成形(LFI)によって熱可塑性ポリウレタンフォーム基材に接着した。
【0201】
接着は引張り強さ機器を用いて測定し目視により決定した。観察された結果を上記表1に示した。上で示されたように、本発明の結着層は一般に結着層と基材との許容可能乃至良好な接着を示す。
【0202】
試料2と3について、90°剥離試験を用いて剥離試験も行った。ポンド/インチ(lbs/in)で表した平均の結果は平均剥離強度(lb/in)が6.5、標準偏差が2.5である。これは本発明の結着層の接着強さと接着能を数値的に立証している。
【0203】
実施例2
実施例1で製造したものと同様であるがASAの代わりにABSを有する多層積層体を製造した。各積層体は、GE PlasticsからITR−#RL7577として市販されているイソテレフタル酸レゾルシノール/ビスフェノールAコポリマーの外層、LEXAN(登録商標)EXRL0065として市販されているビスフェノールAと塩化カルボニルから製造したポリカーボネートホモポリマーの中間層、並びに表2に記載したいろいろな割合のポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)のブレンドからなる内側結着層から製造した。外層の平均厚さは5〜15ミル、中間層の平均厚さは15〜40ミル、内側層の平均厚さは4〜15ミルであった。積層体の合計厚さは30〜55ミルであった。
【0204】
【表2】

【0205】
これらの積層体は、幅14インチ、ライン速度約4〜6ft/minの単一のマニフォルドダイを有する押出ラインCで成形した。クロムロール(240°F)が外層と、クロムロール(130°F)が内側層と接触した。内側層組成物は直径1インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。中間層組成物は直径1.5インチの押出機を用いて押出した。外層は直径1インチの単一段階スクリュー式押出機を用いて押出した。
【0206】
実施例1と同様にして剥離試験を実施し、その結果は上記表2に示した。
【0207】
試料4の積層体を、長繊維強化射出成形(LFI)により熱可塑性ポリウレタンフォーム基材に接着した。結着層とLFI−PUフォームとの接着を実施例1と同様にして測定したところ、結果は約13.0であった。
【0208】
実施例3
約0.3重量%のSEENOX安定剤を内側結着層組成物に添加した以外は実施例2の試料4に従って多層積層体を製造した。剥離強度を実施例1と2と同様にして評価した。内側結着層と中間層の開始剥離強度は約32であり、一方伝播剥離強度は約13〜約14lb/inであった。実施例1と2に従ってLFI−PUフォームに付けた後、内側結着層とフォームの剥離強度を評価した。開始剥離強度は約25lb/inであり、一方伝播剥離強度は約16lb/inであった。
【0209】
これらの多層積層体により、外装自動車用部品に必要な表面品質と外観を有し、同時に基材に対する接着が改良された成形品を製造することが可能になる。最後に、これらの多層積層体は、共押出で製造することができるという点で有利である。
【0210】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、また等価物を本発明の要素に代えて使用することができるということが了解されよう。さらに、個々の状況又は材料を本発明の教示に当て嵌めるために本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正をなすことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。
【0211】
引用した特許、特許出願、その他の文献は全て、援用によりその全体が本明細書の内容の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】図1は、本発明の多層積層体の一実施形態の横断面図である。
【図2】図2は、基材に結合した図1の多層積層体からなる成形品の一実施形態の横断面図である。
【図3】図3は、本発明の多層積層体を成形する共押出機構の一実施形態の概略図である。
【図4】図4は、物品を製造する方法の一実施形態の横断面図である。
【図5】図5は、物品を製造する方法の一実施形態の横断面図である。
【図6】図6は、物品を製造する方法の一実施形態の横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーを含んでなる外層(2)と、
熱可塑性ポリマーを含んでなる中間層(4)と、
カーボネートポリマーと、1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)からなるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとを含んでなる熱可塑性ポリマーを含んでなる内側結着層(6)と
を含んでなり、中間層(4)が、外層(2)と内側結着層(6)の間にあって、外層(2)及び内側結着層(6)の両者と接触している、成形可能な熱可塑性多層積層体(10)。
【請求項2】
スチレンコポリマーがスチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)である、請求項1記載の多層積層体(10)。
【請求項3】
アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーがアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)からなる、請求項1記載の多層積層体(10)。
【請求項4】
内側結着層(6)が、内側結着層(6)の総重量を基準にして、約25〜約80重量%のカーボネートポリマー、約10〜約35重量%のアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマー及び約10〜約40重量%のスチレンコポリマーからなる熱可塑性ポリマーからなる、請求項1記載の成形品。
【請求項5】
内側結着層(6)がさらにアルキルチオエステルからなる安定剤を含む、請求項1記載の多層積層体(10)。
【請求項6】
外層(2)が、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含む1以上の副層からなる最外面を有する、請求項1記載の多層積層体(10)。
【請求項7】
1以上の副層がイソフタル酸レゾルシノール/ビスフェノールAコポリマーからなる、請求項1記載の多層積層体(10)。
【請求項8】
中間層がポリカーボネートからなる、請求項1記載の多層積層体(10)。
【請求項9】
熱成形、圧縮成形の1以上の成形法で成形された請求項1記載の多層積層体を含んでなる成形多層積層体(10)。
【請求項10】
レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーを含んでなる外層(2)と、
熱可塑性ポリマーを含んでなる中間層(4)と、
カーボネートポリマーと、1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)からなるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとを含む熱可塑性ポリマーを含んでなる内側結着層(6)と
を含んでなり、中間層(4)が、外層(2)と内側結着層(6)の間に並置されており、外層(2)及び内側結着層(6)の両者と連続して接触している、成形可能な熱可塑性多層積層体(10)、並びに
内側結着層(6)に結合した基材
を含んでなる物品。
【請求項11】
基材が、熱硬化性材料、熱可塑性材料、発泡材料、プラスチック、強化熱可塑性材料及びこれらの組合せの1種以上である、請求項10記載の成形品。
【請求項12】
レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖部分を含むポリマーを含んでなる外層(2)と、
熱可塑性ポリマーを含んでなる中間層(4)と、
カーボネートポリマーと、1種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)からなるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとを含む熱可塑性ポリマーを含んでなる内側結着層(6)と
を含んでなり、中間層(4)が、外層(2)と内側結着層(6)の間にあり、外層(2)及び内側結着層(6)の両者と接触している、多層積層体(10)を準備し、
多層積層体(10)を、多層積層体(10)の背後にキャビティーが形成されるように金型に入れ、
多層積層体(10)の背後のキャビティーに基材を入れる
ことを含んでなり、多層積層体(10)の内側結着層(6)を基材に結合させて物品を得る、物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−524523(P2007−524523A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500951(P2006−500951)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/000925
【国際公開番号】WO2004/065122
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】