説明

成形品の製造方法、及び熱交換用膜エレメント

【課題】フィルムの大きさを問わず、該フィルムを単独で枠体に貼設(一体成形)できる技術を確立する。
【解決手段】樹脂製枠体にフィルムを貼設した成形品は、1)フィルムを溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の補強層で補強し、2)射出成形金型に前記補強されたフィルムを挿入し、3)前記金型に樹脂を供給して枠体を射出成形しつつ前記補強されたフィルムに貼り付け、4)得られた射出成形体を溶剤で処理して前記補強層を除去する方法によって製造する。前記フィルムは、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが好ましく、透湿性樹脂が前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムと複合化されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製枠体にフィルムを貼設する方法に関するものであり、好ましくは樹脂製枠体に透湿性フィルムを貼設して熱交換用膜エレメントを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
室内を冷暖房したり、換気したりする際に、室内に供給する新鮮な空気(給気)と室内から排出する空気(排気)との間で、熱交換膜を介して、温度(顕熱)や湿度(潜熱)の交換(全熱交換)が行われている。
【0003】
全熱交換には、例えば、熱交換膜と、この膜を支持するための樹脂製枠体とからなる熱交換用膜エレメントが使用されている(特許文献1など)。図1(a)、図1(b)は、特許文献1において従来技術として紹介されている膜エレメントと、この膜エレメントを使用した全熱交換器の概略斜視図であり、図2(a)、図2(b)、図2(c)は、特許文献1の発明例として紹介されている膜エレメントと、この膜エレメントを使用した全熱交換器の概略斜視図である。
【0004】
図1の例では、熱交換用膜エレメント41は、熱交換膜11と、樹脂製枠体21とから構成されており、これらは別々に製造されている。樹脂製枠体21には、互いに平行する複数の棒状スペーサー(リブ)31が形成されており、枠体21のうち棒状スペーサーと平行する部分(平行部)25も棒状スペーサー31と同様(又はそれ以上)の厚さに形成されている。この平行部25(及び棒状スペーサー31)の向きを替えつつ、樹脂製枠体21と熱交換膜11とを交互に積み重ねていくと、全熱交換器51を形成できる。この全熱交換器51では、前記平行部25によって給気流路と排気流路が区切られており、熱交換膜11を介して給気と排気との間で全熱交換ができるようになっている。
【0005】
また図2の例では、第1及び第2からなる一対の熱交換用膜エレメント42a、42bを使用しており、これらを交互に積層することで、全熱交換器52を形成している。第1の熱交換用膜エレメント42aは、より詳細には、熱交換膜11と、これと一体的に成形された樹脂製枠体22aとから構成されている。また熱交換膜11の両面には、互いに平行する棒状スペーサー(リブ)32a、33aが形成されており、片面側のスペーサー32aと、反対面側のスペーサー33aとは直交している。さらに枠体22aのうち片面側の棒状スペーサー32aと平行する部分(平行部A)26aは、この平行する棒状スペーサー32aと同様(又はそれ以上)の厚さに形成されている。また反対面側の棒状スペーサー33aと平行する部分(平行部B)27aも、この平行する棒状スペーサー33aと同様(又はそれ以上)の厚さに形成されている。
【0006】
第2の熱交換用膜エレメント42bも、前記第1の熱交換用膜エレメント42aと同様の構造になっている。また第2の熱交換用膜エレメント42bのスペーサーには、位置決め用の第2の係合部32bが形成されており、この第2係合部32bは、同じく第1の熱交換用膜エレメント42aに形成された第1の係合部32aと係り合うことで、両エレメント42a、42bの位置ずれを防止できるようになっている。そして全熱交換器52を形成する際には、これら第1及び第2の熱交換用膜エレメント42a、42bを、互いに対向するスペーサー(リブ)32a、32b、33a、33bの方向を揃えつつ、交互に積層する。
【0007】
この図2の熱交換器52でも、平行部26a、26b、27a、27bによって給気流路と排気流路が区切られており、熱交換膜11を介して給気と排気との間で全熱交換ができるようになっている。
【0008】
ところで、通常のプラスチックフィルムや金属箔は、温度(顕熱)を交換できても、湿度(潜熱)の交換はできないため、全熱交換膜として使用することはできない。そこで全熱交換膜として特許文献1には紙が使用されており、また特許文献2でも紙基材を開示する。紙基材は、潜熱交換率が高いというメリットを有するが、結露耐久性が低く、結露が凍結すると全熱交換膜(紙)が破れる場合がある。
【0009】
また全熱交換膜として、例えば、特許文献3に示されるように、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムなどの多孔質樹脂フィルムも使用されている。多孔質樹脂フィルムは、結露耐久性に優れている。
【特許文献1】特開2007−285691号公報
【特許文献2】特開2007−119969号公報
【特許文献3】特開平7−133994号公報
【特許文献4】特開平4−45812号公報
【特許文献5】特開2003−97831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献3の例では、多孔質樹脂フィルムをそのまま使用する例が開示されているが、特許文献1に示されるような枠体に多孔質樹脂フィルムを貼設し、膜エレメントとして使用すれば、熱交換器の組み立てを容易にできると期待される。しかし、多孔質樹脂フィルムに枠体を取り付けるのは容易ではない。
【0011】
熱交換膜とは技術分野や枠体形状を異にするが、多孔質樹脂フィルムを枠体に貼設する方法として、特許文献4には、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の周側に溶融プラスチックを浸透凝結させる射出成形法が開示されている。しかし特許文献4で製造されるのは、直径約1cm以下程度の大きさでよい膜面積が極めて小さい通気フィルターの製造方法であり、この方法を膜面積の大きな熱交換膜に適用することはできない。多孔質樹脂フィルムは、枠体の射出成型時の熱で収縮する場合がある。また射出成形の樹脂圧で多孔質樹脂フィルムも押し流されてしまい、膜形状が崩れたり、膜が破れたりする。そのため、膜面積の大きな多孔質樹脂フィルムを使用する場合には、不織布によって予め補強しておくことが必須であった。例えば、特許文献5は中空型の気液分離エレメントに関するものであって、平膜型の熱交換膜用エレメントとは枠体形状は異なるが、膜面積は平膜型の熱交換膜と同様に大きい為、多孔質樹脂フィルムに不織布を積層した後で、インサート成形している。
【0012】
以上の通り、面積の大きな多孔質樹脂フィルムを枠体に取り付ける場合、多孔質樹脂フィルムを不織布等で補強しなければならなかった。しかし、補強層を積層すると、多孔質樹脂フィルムの潜熱交換率が低下する。
【0013】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、フィルムの大きさを問わず、該フィルムを単独で枠体に貼設(一体成形)できる技術を確立することにある。
本発明の好ましい目的は、結露耐久性と潜熱交換特性(透湿特性)に優れた熱交換用膜エレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の補強層を予めフィルムに積層してフィルムを補強しておき、フィルムに枠体を射出成形した後で、補強層を溶剤で除去すれば、フィルム面積を問わず、該フィルムを単独で枠体に貼設(一体成形)できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る樹脂製枠体にフィルムを貼設した成形品の製造方法は、1)フィルムを溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の補強層で補強し、2)射出成形金型に前記補強されたフィルム(即ちフィルムと補強層との積層体)を挿入し、3)前記金型に樹脂を供給して枠体を射出成形しつつ前記積層体に貼り付け、4)得られた射出成形体を溶剤で処理して補強層を除去することを特徴とする。好ましいフィルムは、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムであり、より好ましくは透湿性樹脂が前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムと複合化されている。前記透湿性樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコールの架橋体、フッ素系イオン交換樹脂などである。前記溶剤が水の場合、前記補強層は例えば、水溶性繊維で形成されたものである。
本発明には、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが単独で樹脂製枠体に一体成形によって貼設されている熱交換用膜エレメントも含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルムを単独で枠体に貼設(一体成形)できる。このようにして製造できる成形品を熱交換膜用エレメントに使用すれば、結露耐久性と潜熱交換特性(透湿特性)を両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、適宜、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
図3(a)は本発明で使用する一対の射出成型用金型を側方から見た概略断面図であり、図3(b)は片方の金型の正面図である。なお図3(a)の断面図は図3(b)のI−I’線での切断面に相当する。図4は、図3の金型を用いたインサート成形手順を示す断面図であり、図5(a)は図4の方法で得られた成形品の正面側を示す概略斜視図、図5(b)は前記成形品の背面側を示す概略斜視図である。
【0017】
図4の製造例では、フィルム12を溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の補強層15と積層接着した補強フィルム(積層フィルム)16を、一対の射出成型用金型61、71の間に挿入し(図4(a))、適当な手段(ピン、真空引きなど)で金型に固定した後、片方の金型61から枠体23形成用の樹脂を射出しつつ補強フィルム16に貼り付け(図4(b))、脱型した後(図4(c))、溶剤で処理して補強層15を除去している(図4(d))。補強層15を使用することによって、射出成型時のフィルム12の型崩れや、収縮、破れを防止できる。そしてこの補強層15を成形後に溶剤で除去しているため、枠体23にフィルム12を単独で貼設(一体成形)した成形品43を製造できる(図5(a)、(b))。
【0018】
なお図示例では、片方の金型61に樹脂供給口64が形成されているが、両方の金型61、71から樹脂を供給してもよい。また金型61、71では、枠体部形成用キャビティ64、74よりも内側の金型面63、73が彫り込まれており、このキャビティ64、74と彫り込み部(凹部)63、73の間が、峰状に突出することでフィルムの押さえ部62、72となっている。彫り込み部(凹部)63、73を形成しておくことで、フィルム12が金型に接触するのを防止でき、フィルム12の熱損傷を防止できる。ただし、彫り込み部(凹部)63、73は必須ではなく、彫り込み部(凹部)63、73の高さをフィルム押さえ部62、72と同じ高さにして、面状にフィルムを押さえてもよい。
【0019】
前記フィルム12は、成形品43の用途(例えば、フィルター(ベントフィルターを含む)、気液分離膜、除湿膜、加湿膜、パーベーパレーション膜、熱交換膜、イオン交換膜など)に応じて適切なものが使用できるが、好ましくは多孔質樹脂(特に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)を基材とするフィルムである。多孔質樹脂、特に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、極めて柔らかくかつ伸びやすく、熱により収縮しやすいので、そのままでインサート成形することは非常に難しいが、本発明によれば、この様なフィルムでも単独で一体成形によって枠体に貼設できる。
【0020】
成形品43をフィルター(ベントフィルターを含む)用エレメントとして使用する場合、多孔質樹脂をそのまま前記フィルム12として使用すればよい。また成形品43をフィルター以外の用途(特に気液分離膜)に使用する場合には、多孔質樹脂をそのままフィルム12として使用してもよいが、例えば、透湿性樹脂を前記多孔質樹脂フィルムと組み合わせた複合化フィルムとして使用する。複合化フィルムとしては、透湿性樹脂を前記多孔質樹脂フィルムに積層するのが好ましく、より好ましくは前記積層と共に又は前記積層に代えて透湿性樹脂を多孔質フィルム内の多孔質空間に充填する。
【0021】
なお多孔質樹脂フィルム(特に、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)の平均孔径や空孔率は、成形品の用途に応じて適宜設定されるが、例えば、平均孔径は、例えば、0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μm程度であり、空孔率は、例えば、30〜97%程度、好ましくは50〜95%程度、さらに好ましくは70〜90%程度である。
【0022】
平均孔径は、細孔分布(孔径に対する容積分布)から求めた値である。すなわち多孔質樹脂フィルムの全ての細孔を円筒形と仮定して細孔分布を測定し、細孔容積の中間値に対応する細孔径を平均孔径として求めた。なお、本発明では、コールターエレクトロニクス社のコールターポロメーターを使用して平均孔径を求めた。
【0023】
また多孔質樹脂フィルムの空孔率は、多孔質樹脂フィルムの質量Wと、空孔を含む見かけの体積Vとを測定することによって求まる嵩密度D(D=W/V:単位はg/cm3)と、全く空孔が形成されていないときの密度Dstandard(ポリテトラフルオロエチレンの場合は2.2g/cm3)を用い、下記式に基づいて算出できる。なお、体積Vを算出する際の厚みは、ダイヤルシックネスゲージで測定した(テクロック社製「SM−1201」を用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)平均厚さによる。
空孔率(%)=[1−(D/Dstandard)]×100
【0024】
多孔質樹脂フィルムと複合化する透湿性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコールの架橋体(例えば、グルタルアルデヒドとHClとの混合液による架橋体、ホルムアルデヒドによる架橋体、ブロックドイソシアネートによる架橋体など)、ビニルアルコール共重合体(エチレン−ビニルアルコール共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニルアルコール共重合体)、フッ素系イオン交換樹脂(デュポン社製「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子株式会社製「フレミオン(登録商標)」など)、ジビニルベンゼンスルホン酸共重合体、ジビニルベンゼンカルボン酸共重合体などのイオン交換樹脂などの繰り返し単位にプロトン性親水性基を有する樹脂(プロトン性親水性樹脂);ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピリジン、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ピロリドンなどの繰り返し単位に非プロトン性親水性基を有する樹脂(非プロトン性親水性樹脂)などが挙げられる。これら透湿性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。好ましい透湿性樹脂は、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコールの架橋体、フッ素系イオン交換樹脂などである。
【0025】
なお本明細書において用語「フィルム」12は、補強層15以外の層として定義され、例えば、単層のフィルム(特に多孔質樹脂フィルム)、フィルム(特に多孔質樹脂フィルム)を複数枚積層したもの、これら単層又は積層フィルム(特に単層又は積層多孔質樹脂フィルム)にさらに透湿性樹脂を積層したものなども本発明の「フィルム」12に含まれる。好ましいフィルム12は、透湿性樹脂が充填されていてもよい単層フィルム、単層フィルムに透湿性樹脂を積層したものである。
【0026】
フィルム12の厚さは、例えば、0.5μm〜100μm程度、好ましくは5μm〜50μm程度、さらに好ましくは7μm〜30μm程度である。またフィルム12の面積は、例えば、4cm2〜10000cm2程度、好ましくは10cm2〜5000cm2程度、さらに好ましくは100cm2〜3000cm2程度である。
【0027】
図示例では、補強層15をフィルム12に積層接着したが、補強層15でフィルム12を補強できる限り種々の方法で積層でき、例えば、熱融着によって補強層15をフィルム12に積層してもよい。
フィルム12と補強層15を積層接着したり、積層融着したりする方法は特に限定されないが、例えば、フィルム12と補強層15とを積層した後、熱ロールに通して、熱融着してもよい。
【0028】
補強層15としては、溶剤可溶性又は溶媒崩壊性であって、前記フィルム12を補強(積層補強)可能である限り特に限定されないが、例えば、溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の材料(樹脂、繊維など)で形成された成形体(例えば、シート(発泡シートを含む)の他、編物、織布、不織布、ネットなどの繊維成形体など)、溶剤耐久性のある繊維を溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の材料で接着した不織布などが挙げられる。なお溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の繊維を溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の接着剤で接着した不織布も、当然、補強層15に含まれる。
【0029】
溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の材料や溶剤耐久性繊維は、溶剤(例えば、水、有機溶剤、酸、アルカリなど)の種類に応じて種々使用できる。例えば、溶剤として水を使用する場合、溶剤可溶性又は溶剤崩壊性のシート成形体としては、例えば、ポリビニルアルコールシート、デンプンシート(オブラートなど)などが挙げられる。溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の繊維成形体としては、ポリビニルアルコール系繊維(例えば、アイセロ化学(株)製「ソルブロン(商品名)」、クラレ(株)「クラロンK−II」など)の成形体;水中で微細分散するパルプ繊維から形成された紙(例えば、日本製紙パピリア(株)製「水溶紙(商品名)」)などを例示できる。
【0030】
また溶剤として水を使用する場合、溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の接着材料としては、ポリビニルアルコール、でんぷん糊などが例示できる。溶剤耐久性繊維は、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維などである。
他の溶剤を使用する場合にも、溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の材料や溶剤耐久性繊維は、公知の材料から適宜選択できる。
【0031】
枠体23の形状も、成形品43の用途に応じて適宜設計できる。例えば成形品43を熱交換用膜成形体として使用する場合、図1や図2に示すように、複数のスペーサーがフィルム12の片側又は両側に形成された枠体を形成してもよく、該枠体のうちスペーサーと平行する部分は、通常、スペーサーと略同じ(又はそれ以上の)厚さになっている。なおフィルム12の両側にスペーサーを形成する場合、樹脂は、フィルム12の両側の金型から射出される。
【0032】
成形品43は、フィルム12の材質や枠体23の形状を適宜変更することによって、フィルター(ベントフィルターを含む)、気液分離膜、除湿膜、加湿膜、ベーパレーション膜、熱交換膜、イオン交換膜などの種々の用途に使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0034】
実施例1
平均孔径0.2μm、空孔率80%、厚さ20μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに透湿性ウレタン樹脂を塗布量8g/m2でコーティングした透湿性フィルムにウレタン系接着剤をドット状に転写し、ポリビニルアルコール製不織布((株)シンワ製、商品名「9040−E」)を積層して接着した。
【0035】
日精樹脂工業(株)製の縦型射出成形機(型式:TH100R12VSE)に、前記熱ラミネートフィルムをセットし、インサート成形することによってABS樹脂製枠体を形成した。なお成形条件は、予備乾燥:3時間、90℃、シリンダー設定温度:240℃、スクリュー回転数:90回転/分、背圧:20MPa、金型温度:60℃とした。射出成形体を温度25℃の水に5分間浸積した後、流水で洗い流すことによって、樹脂製枠体に透湿性フィルムが単独で貼り付けられた成形品を得た。
【0036】
比較例1
実施例1と同様にして、インサート成形した。透湿性フィルムに積層されたポリビニルアルコール製不織布は、流水で除去することなくそのままにした。
実施例1及び比較例1で得られた成形品の透湿性を、JIS L1099A−1法に準拠して測定した(条件:25℃、75%RH)。3回測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
比較例1の成形品に比べると、実施例1の成形品の透湿性は高く、ポリビニルアルコール製不織布を熱ラミネートする前の透湿性フィルムの透湿性に匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明で製造できる枠体形状の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は本発明で製造できる枠体形状の他の例を示す概略斜視図である。
【図3】図3は本発明で使用する金型の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は本発明の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図5】図5は本発明で製造できる成形品の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
12 フィルム
15 補強層
16 補強されたフィルム
23 樹脂製枠体
61、71 射出成形金型
43 成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製枠体にフィルムを貼設した成形品の製造方法であって、
フィルムを溶剤可溶性又は溶剤崩壊性の補強層で補強し、
射出成形金型に前記補強されたフィルムを挿入し、
前記金型に樹脂を供給して枠体を射出成形しつつ前記補強されたフィルムに貼り付け、
得られた射出成形体を溶剤で処理して前記補強層を除去することを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
前記フィルムが延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムである請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
透湿性樹脂が前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムと複合化されている請求項2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記透湿性樹脂がウレタン樹脂、ポリビニルアルコールの架橋体、及びフッ素系イオン交換樹脂から選択される少なくとも一種である請求項3に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記溶剤が水であり、前記補強層が水溶性繊維で形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが単独で樹脂製枠体に一体成形によって貼設されている熱交換用膜エレメント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−111051(P2010−111051A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286477(P2008−286477)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】