説明

成形品の製造方法

【課題】ポリシロキサン構造を有する樹脂組成物からなる成形材料を密閉条件下で注型・成形した場合でも、油性インク等に由来する汚れに対して、優れた防汚性及び汚染除去性を備え、高意匠性を両立でき、かつかかる効果を長期間にわたって維持できる成形品の製造方法の提供。
【解決手段】シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防汚性及び汚染除去性、並びに高意匠性を両立した成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽や壁材、床材等の建築部材には、高級感ある意匠性を有することが求められており、近年は、木目や石目、布目、砂目をはじめとする、表面に凹凸を有する抽象模様を備えた部材や、表面に微小な凹凸を付与する艶消し処理の施された部材や、鏡面性を付与し得るような平滑性に優れた表面を備えた部材が製品化されている。
【0003】
前記建築部材等の表面に、前記凹凸や優れた平滑性を付与する方法としては、一般に、成形型を用いたプレス成形法が適用される。具体的には、成形型の一方の表面に、成形材料を塗布または載置し、次いで、凹凸形状や平滑な面を有する他方の成形型を積層し、一定時間、圧締することにより、前記成形材料を硬化させる方法である。この際、凹凸模様や平滑形状の付される成形品表面は、前記成形型が密着した状態であるため、空気から遮断された密閉状態となっているのが一般的である。
【0004】
一方で、前記したような成形品には、近年、前記した高意匠性とともに、優れた防汚性及び汚染除去性が求められている。ここで前記防汚性及び汚染除去性とは、例えば成形品表面に油性インク等の汚れが付着しにくく、また、仮に付着した場合であっても、布等で軽く擦ることで容易に除去可能な特性を示す。このような特性は、例えば、壁材や床材等に特に求められている。
【0005】
前記優れた防汚性等を有する硬化物を形成可能なものとしては、例えば、光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂、光硬化性ポリシロキサン系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、光硬化性シリコンブロック(メタ)アクリレート系樹脂及び光重合開始剤を含有してなる光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
また、シリコンの側鎖にエーテル結合を介して反応性二重結合を有する重合体の存在下に、特定の親水性ビニルモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとカルボキシル基含有ビニルモノマーとを共重合して得られるグラフト共重合体を含有してなる防汚被覆用組成物が、再塗装性や貯蔵安定性をはじめ、防汚性に優れることが知られている(特許文献2参照)。
【0007】
また、ポリシロキサン骨格と有機イソシアヌレートからなる多官能のウレタンアクリレート樹脂と不飽和単量体とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、表面硬度が高く、耐擦傷性に優れた被膜を形成できることが知られている(特許文献3参照)。
【0008】
しかし、前記特許文献1〜3に開示されている樹脂組成物を、前記したようなプレス成形法等で成形した場合、表面に所望の凹凸からなる模様を備えた成形品を得ることができるものの、その表面は空気と遮断された密閉条件下で腑形されたため、該表面の防汚性及び汚染除去性は、実用上十分なものではなかった。また、前記防汚性等は、その特性上、できるだけ長期間持続可能であることが求められるものの、前記組成物では、実用上十分な長期間に渡って維持できない場合があった。
【0009】
以上のように、密閉条件下で成形した場合であっても、高意匠性と優れた防汚性及び汚染除去性とを両立した表面を備えた成形品を製造することは、これまで非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−192751号公報
【特許文献2】特開平7−278467号公報
【特許文献3】特開平6−1819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ポリシロキサン構造を有する樹脂組成物からなる成形材料を密閉条件下で注型・成形した場合でも、例えば、油性インク等に由来する汚れに対して、優れた防汚性及び汚染除去性を備え、高意匠性を両立でき、かつ、かかる効果を長期間に渡って維持できる成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、成形型によって凹凸模様等の付された成形品表面が優れた防汚性等を有さないのは、防汚性等の向上に寄与し得る成形材料中のポリシロキサン構造が、成形品表面に局在化しないことが原因であると考えた。
【0013】
そこで、本発明者等は、前記ポリシロキサン構造を成形品の表面に局在化させる方法を検討し、例えば、成形温度や圧力等を調整する等の様々な検討を行った。前記検討のなかで、成形品表面に接触する成形型の表面に、シリコン系離型剤を塗布して成形する方法を検討した結果、密閉条件下で成形した場合であっても、優れた防汚性等を有する成形品を製造できることを見いだした。
【0014】
即ち、本発明は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法に関するものである。
【0015】
また、本発明は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、未硬化または半硬化の前記層表面に基材(C)を載置し、次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法に関するものである。
【0016】
また、本発明は、基材(C)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、未硬化または半硬化の前記層表面に、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)を載置し、次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法に関するものである。
【0017】
また、本発明は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化または半硬化させてゲルコート層を形成し、次いで、前記ゲルコート層の表面に、樹脂組成物を硬化させてなるバック層を形成することを特徴とする成形品の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の成形品の製造方法によれば、優れた防汚性及び汚染除去性を備えた成形品を密閉成形法によって製造できる。製造された成形品は、防汚性及び汚染除去性並びに高意匠性の両立が求められる、例えば、建築物の屋根、外壁、防水層等の屋外用途;家具、キッチンカウンター、キッチンシンク、洗面ボウル、洗面カウンター、洗面キャビネットの収納扉、浴槽、浴室の壁や床、トイレの便器等の住設用途;車両部材等に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
はじめに、本発明の第一の成形品の製造方法について説明する。
本発明は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法に関するものである。
【0020】
本発明は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)と、成形材料としての前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)とを組み合わせて使用することが重要である。ここで、前記型(II)とラジカル重合性樹脂組成物(B)のいずれかを欠いた場合、防汚性及び汚染除去性(以下、防汚性等と略記することがある)に優れた凹凸模様を有する表面を備えた成形品を得ることは困難である。例えば、前記シリコン系離型剤(I)の代わりにフッ素系離型剤を用いた場合には、防汚性等に優れた高意匠性の成形品を得ることは困難である。
【0021】
このように、離型剤としてのシリコン系離型剤(I)と、成形材料としての前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)とを組み合わせて使用することによって、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を密閉条件下で成形した場合であっても、ポリシロキサン(a)に由来するポリシロキサン構造が成形品表面に局在化し、優れた防汚性等を備えた成形品を得ることができる。
【0022】
第一の成形品の製造方法は、具体的には、型の内表面がシリコン系離型剤(I)を用いて離型処理された型(II)を得る工程(i)、該離型処理された型(II)の表面に、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成する工程(ii)、及び前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を成形して硬化させる工程(iii)を有する。
【0023】
前記工程(i)は、例えば、前記成形型の内表面にシリコン系離型剤(I)を塗布し、前記成形型の内表面に、前記シリコン系離型剤(I)またはその硬化物からなる薄膜層を形成する方法により行うことができる。
【0024】
前記塗布方法としては、例えば、グラビアコート法やリバースコート法等のロールコート法;マイヤーバー等のバーコート法;スプレーコート法;エアーナイフコート法;刷毛塗り法;布での塗り付け法;浸漬法等の公知の方法が挙げられる。
【0025】
前記塗布後のシリコン系離型剤(I)の硬化は、加熱処理、紫外線照射、電子線照射等、使用するシリコン系離型剤(I)の種類に対応した方法で行うことができる。
【0026】
前記工程(i)で形成した前記薄膜層は、前記成形型の内表面において、概ね0.02〜10μmの厚みであることが好ましい。
【0027】
前記離型処理が施された型(II)としては、成形型を構成する材料と前記シリコン系離型剤(I)とを予め混練し、成形、硬化して得られた型を使用することもできる。しかし、かかる型であっても、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)中のポリシロキサン構造の、成形品表面への局在化を促す観点から、さらに型の内表面に、前記シリコン系離型剤(I)を用いて薄膜層を形成することが好ましい。
【0028】
前記工程(i)で使用するシリコン系離型剤(I)としては、白金触媒により付加重合することで被膜を形成できるもの、有機錫触媒により縮重合することで被膜を形成できるもの、空気中の水分(湿気)と反応することにより被膜を形成できる湿気硬化型のもの、光重合開始剤によりラジカル重合もしくはカチオン重合することで被膜を形成できるUV架橋型又は電子線架橋型のものを使用することができる。前記シリコン系離型剤(I)としては、市販の各種シリコン系離型剤を使用することができる。
【0029】
前記シリコン系離型剤は、通常、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル等の溶剤(水性タイプにおいては水)で適宜希釈して使用する。
【0030】
前記型(II)の製造に使用する成形型は、通常、当該分野で使用する型であれば、いずれのものも使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂やエポキシ樹脂等からなるFRP等の公知のプラスチック;木材;金属;ガラス等からなるものを使用することができる。前記型(II)は、フィルム状またはシート状のものであっても良い。
【0031】
前記離型処理が施された型(II)としては、成形品の表面に所望の意匠性を付与する観点から、凹凸模様や平面形状を有する型を使用することが好ましい。かかる凹凸模様としては、例えば、木目、石目、布目、砂目等の天然の凹凸形状を模写したもの、文字記号、万線、各種の抽象模様等が挙げられる。また、平面形状としては、ほとんど凹凸のない光沢鏡面処理に使用されるような平滑形状が挙げられる。
【0032】
次に、前記離型処理が施された型(II)の表面に、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成する工程(ii)について説明する。
【0033】
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)は、例えば、グラビアコート法やリバースコート法等のロールコート法;マイヤーバー等のバーコート法;スプレーコート法;エアーナイフコート法;フローコーター法;注型法;インジェクション法等で塗布することができる。これにより、前記型(II)の内表面に、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる未硬化または半硬化状の層を形成することができる。
【0034】
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層の厚みは、製造する成形品に応じて適宜調整することができる。
【0035】
次に、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を成形して硬化させる工程(iii)について説明する。
【0036】
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を成形し、その表面に型(II)に起因した模様を付与する方法としては、例えば、注型成形法、フィルム成形法、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、RTM(レジントランスファーモールディング)成形法、連続成形法、プレス成形法等が挙げられる。
【0037】
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)の硬化は、活性エネルギー線を照射する方法で進行させることができ、該組成物(B)中に過酸化物や還元剤等を併用する場合には、加熱処理又は常温下で放置することで、進行させることができる。例えば、成形型が透明プラスチックからなるフィルム状またはシート状である場合には、該成形型の表面に紫外線等を照射する方法等により硬化を進行させることができる。
【0038】
以上のような本発明の第一の成形品の製造方法は、例えば、化粧フィルムや化粧板等の製造に好適である。
【0039】
次に、本発明の第二の成形品の製造方法について説明する。
本発明の第二の成形品の製造方法は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、未硬化または半硬化の前記層表面に基材(C)を載置し、次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法である。
【0040】
第二の成形品の製造方法は、具体的には、型の内表面にシリコン系離型剤(I)を用いて離型処理された型(II)を得る工程(iv)、該離型処理された型(II)の表面に、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成する工程(v)、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる未硬化または半硬化の層表面に基材(C)を載置する工程(vi)、及び前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を成形して硬化させる工程(vii)を有する。
【0041】
第二の成形品の製造方法における前記工程(iv)及び(v)は、前記第一の成形品の製法方法で説明した前記工程(i)及び(ii)と同様の方法により行うことができる。
【0042】
前記工程(vi)は、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる成形品と一体化する基材(C)を、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる未硬化または半硬化の層表面に、載置し積層する工程である。
【0043】
前記基材(C)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂やエポキシ樹脂からなるFRP等の公知のプラスチック;木材;金属;コンクリート;アスファルト;ガラス;紙等を使用することができる。
【0044】
前記基材(C)は、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層の表面が未硬化または半硬化であるうちに、該表面へ直接載置することが好ましい。これにより、接着剤等を別途使用することなく、ラジカル重合性樹脂組成物(B)の硬化物と基材(C)とが一体化した成形品を得ることができる。また、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)をほぼ完全に硬化させて得られた成形品と前記基材(C)とを、接着剤等を別途使用して貼り合わせても良い。
【0045】
前記工程(vii)は、前記第一の成形品の製造方法で説明した前記工程(iii)と同様の方法により行うことができる。
【0046】
以上のような本発明の第二の成形品の製造方法は、例えば、化粧板、扉、キッチンパネル、床材等の製造に好適である。
【0047】
次に、本発明の第三の成形品の製造方法について説明する。
本発明の第三の成形品の製造方法は、基材(C)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、未硬化または半硬化の前記層表面に、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)を載置し、次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法である。
【0048】
第三の成形品の製造方法は、まず、前記基材(C)の表面に、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成し、次いで、未硬化または半硬化の層の表面に型(II)を載置すること以外は、前記本発明の第二の成形品の製造方法と同様の方法で行うことができる。
【0049】
以上のような本発明の第三の成形品の製造方法は、例えば、化粧板、扉、キッチンパネル、床材等の製造に好適である。
【0050】
次に、本発明の第四の成形品の製造方法について説明する。
本発明の第四の成形品の製造方法は、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化または半硬化させてゲルコート層を形成し、次いで、前記ゲルコート層の表面に、樹脂組成物を硬化させてなるバック層を形成することを特徴とする成形品の製造方法である。
【0051】
第四の成形品の製造方法は、前記型(II)の表面に前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)からなるゲルコート層を形成する工程(viii)、及び該ゲルコート層の表面に、樹脂組成物を硬化させてなるバック層を形成する工程(ix)を有する。
【0052】
前記工程(viii)は、前記第一の成形品の製造方法の場合と同様の方法により行うことができる。即ち、前記型(II)の表面に前記ラジカル重合性樹脂組成物からなる層(B)を形成し、これを成形して硬化させる方法を採用することができる。そして、前記型(II)及びその離型処理方法等も、前記第一の成形品の製造方法の場合と同様で良い。
【0053】
前記工程(ix)は、前記工程(viii)で得られたゲルコート層の表面に、樹脂組成物からなる層を形成し、該層を硬化させることで、成形品のバック層を形成する工程である。
【0054】
前記樹脂組成物からなる層は、前記型(II)の表面に形成されたゲルコート層上に、例えば、レジントランスファーモールディング成形法(RTM成形法)、SMC成形法、BMC成形法、ハンドレイアップ成形法、注型成形法等により、樹脂組成物を積層することによって形成することができる。
【0055】
前記バック層の形成に使用可能な樹脂組成物としては、例えば、従来より人造大理石形成用樹脂組成物や繊維強化樹脂組成物として使用されているものが挙げられる。
【0056】
前記人造大理石形成用樹脂組成物としては、例えば、充填材や柄材等を含む不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0057】
前記繊維強化樹脂組成物としては、例えば、ガラス繊維やポリエステル繊維等を含む不飽和ポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0058】
以上の製造方法によって、人造大理石または繊維強化樹脂成形品の表面に、優れた防汚性等並びに高意匠性を備えたゲルコート層を有する成形品を得ることが可能となる。
【0059】
以上のような本発明の第四の成形品の製造方法は、例えば、浴槽、ユニットバス、洗面台、台所用品、波板、ボート、タンク、パネル、車両部材、ハウジング材、自動車部材等の製造に好適である。
【0060】
次に、本発明の成形品の製造方法で使用するラジカル重合性樹脂組成物(B)について説明する。
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)は、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)、及び必要に応じてその他の添加剤を含有するものである。
【0061】
前記化合物(A)は、硬化に寄与する重合性不飽和二重結合と、優れた防汚性等の付与に寄与するポリシロキサン(a)由来の構造とを必須とするものである。ここで、前記化合物(A)の代わりに、前記ポリシロキサン(a)由来の構造を有さない化合物を使用したラジカル重合性樹脂組成物では、前記型(II)を使用して成形品を製造しても、良好な防汚性等を備えた成形品を得ることは困難である。また、前記化合物(A)の代わりに、重合性不飽和二重結合を有さない化合物を使用したラジカル重合性樹脂組成物であれば、前記型(II)を使用することによって、高意匠性と良好な防汚性等を備えた成形品が得られるものの、その効果は短期間で著しく低下するという問題点がある。
【0062】
本発明のように、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を使用することによって、優れた防汚性等を長期間持続可能な成形品を製造することが可能となる。
【0063】
ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)としては、具体的には、ポリシロキサン構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)、ポリシロキサン構造を有するエステル(メタ)アクリレート(A2)、ポリシロキサン構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(A3)等を使用することができる。本発明ではこれらを単独で使用または2種以上を併用することができるが、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)の硬化性及び成形品の防汚性等に特に優れることから、なかでもポリシロキサン構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)を使用することが好ましい。
【0064】
前記化合物(A)として使用可能な前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)としては、活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)と、活性水素原子含有基及び少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)とが、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合したものが好ましい。
【0065】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)としては、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するものを使用することが必要であるが、高硬度な成形品表面層を形成するうえで、2個以上有するものを使用することが好ましく、2〜5個有するものを使用することがより好ましい。
【0066】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、例えば、活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)と、イソシアネート基含有化合物(b)とを反応させて、前記ポリシロキサン(a)由来の構造とイソシアネート基とを有する化合物(c)を得て、該化合物(c)と前記重合性単量体(d)とを反応させることによって製造することができる。
前記活性水素原子含有基としては、水酸基が好ましい。
【0067】
前記活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)としては、例えば、主鎖としてのポリシロキサン鎖の末端に、ヒドロキシアルキル基、アミノ基等の、活性水素原子含有基が結合したブロックタイプのもので、活性水素原子の数が好ましくは1〜2個のもの、ポリシロキサン鎖の側鎖に、前記活性水素原子含有基が結合したグラフトタイプのもので、活性水素原子の数が1個以上のものが挙げられる。
【0068】
前記ポリシロキサン(a)としては、特に優れた防汚性等を付与するとともに、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を特に安定的に製造できるという理由から、アルキル基及びフェニル基からなる群より選ばれる2個以上が結合したケイ素原子から構成されたものが好ましい。ここで、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。また、アルキル基は、炭素原子数が1〜8であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。
【0069】
前記ポリシロキサン(a)としては、水酸基当量が300〜10000であるものを使用することが好ましく、700〜5000であるものを使用することがより好ましい。この範囲内の水酸基当量を有するポリシロキサン(a)を使用することによって、成形材料としての相溶性と防汚性等に特に優れた硬化物が形成可能なラジカル重合性組成物を得ることができる。
【0070】
前記ポリシロキサン(a)の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のX−22−160AS、KF−6001、KF−6002等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
前記ポリシロキサン(a)としては、得られる成形品の透明性を維持でき、かつ防汚性等に特に優れるという理由から、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)を使用することが好ましい。
【0072】
前記ポリシロキサン(a1)としては、主鎖としてのポリシロキサン鎖に、ポリアルキレンオキサイド鎖がペンダント状に側鎖としてグラフトしたものを使用することが好ましく、前記ポリアルキレンオキサイド鎖は、アルキレンオキサイドの開環反応物からなるものが好ましい。
【0073】
前記ポリシロキサン(a1)を使用して得られたウレタン(メタ)アクリレート(A1−1)を使用すれば、油や埃等に対する防汚性等に優れた高硬度な成形品を製造することができる。
【0074】
前記ポリアルキレンオキサイド鎖としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドが好ましく、ポリエチレンオキサイドがより好ましい。前記ポリアルキレンオキサイドとしては、アルキレンオキサイドの2〜15モル付加物が好ましい。
【0075】
また、前記ポリシロキサン(a1)は、前記ポリアルキレンオキサイド鎖とともに活性水素原子含有基を有する。かかる活性水素原子含有基は水酸基であることが好ましい。
【0076】
前記ポリシロキサン(a1)の具体例としては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0077】
【化1】

【0078】
上記一般式(1)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して炭素原子数が2〜4のアルキレン基を示し、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基またはフェニル基を示す。一般式(1)中、a及びbは、それぞれ独立して1〜8の整数、m及びnはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。
【0079】
前記ポリシロキサン(a1)の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のFZ−2191やSH−3771、信越化学工業株式会社製のKF353A等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
前記ポリシロキサン(a1)としては、水酸基当量が300〜8000であるものを使用することが好ましく、700〜3000であるものを使用することがより好ましい。この範囲内の水酸基当量を有するポリシロキサン(a1)を使用することによって、汚染除去性に特に優れた成形品を製造することができる。
【0081】
前記ポリシロキサン(a1)としては、前記ポリアルキレンオキサイド鎖部とポリシロキサン鎖部との質量割合が1/0.05〜1/110であるものを使用することが好ましく、1/2〜1/50であるものを使用することがより好ましく、1/2〜1/5であるものを使用することが特に好ましい。前記範囲の質量割合を有する前記ポリシロキサン(a1)を使用することによって、防汚性等に特に優れた成形品を製造することができる。
【0082】
前記ポリシロキサン(a1)は、前記ポリアルキレンオキサイド鎖部とポリシロキサン鎖部に加えて、その他の分子鎖を有していても良く、例えば、前記ポリアルキレンオキサイド鎖部と前記ポリシロキサン鎖部とが、その他の分子鎖や化学結合を介して結合されたものであっても良い。
【0083】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の製造に使用する、イソシアネート基含有化合物(b)は、分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、その異性体又はこれら異性体の混合物、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略す)、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のジイソシアネートや、前記ジイソシアネートとトリメチロールプロパン等の3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクト体、ジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造体、ジイソシアネートと水との反応によるビュレット体、またはポリメリックMDI等を使用することができる。
【0084】
前記イソシアネート基含有化合物(b)としては、ラジカル重合性樹脂組成物(B)の硬化物の変色を防止する観点から、イソシアネート基を2個以上有する脂肪族または脂環式系のイソシアネート基含有化合物を使用することが好ましい。
【0085】
前記重合性単量体(d)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、またはこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ブチレンオキサイド付加物、テトラヒドロフラン付加物、εカプロラクタン付加物もしくはεカプロラクタム付加物、あるいはトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を単独で使用又は2種以上を併用することができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを使用することが、成形材料のラジカル硬化反応の反応性に優れ、成形品表面の硬度を向上させるので好ましい。
【0086】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を製造する際には、ラジカル重合性樹脂組成物(B)の空気による硬化阻害を防ぐ目的で、前記重合性単量体(d)の他に、水酸基含有アリルエーテル化合物を使用しても良い。
【0087】
前記水酸基含有アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物等を使用することができ、なかでも1個の水酸基を有するアリルエーテル化合物を使用することが好ましい。
【0088】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、例えば、次の2段階の反応工程により製造することができる。
【0089】
第1段目の反応工程は、前記ポリシロキサン(a)とイソシアネート基含有化合物(b)とを反応させることによって、前記ポリシロキサン(a)由来の構造とイソシアネート基とを有する化合物(c)を得る工程である。この時、前記イソシアネート基含有化合物(b)が有するイソシアネート基(−NCO)と、前記ポリシロキサン(a)が有する水酸基等の活性水素原子含有基との当量比(NCO/活性水素原子含有基)を、1.5〜2.5とすることが好ましい。
【0090】
第1段目の反応工程は、室温〜100℃程度の温度範囲で行うことが好ましい。また、第1段目の反応工程は、無溶媒下で行うこともできるが、必要に応じて、後述する架橋成分としての重合性不飽和単量体を溶媒として使用することもできる。
【0091】
また、第1段目の反応工程では、必要に応じて触媒を使用しても良い。
【0092】
前記触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン化合物;オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、シブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物;塩化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫;等の酸やアルカリ等、公知の触媒を用いることができる。これらの触媒の添加量は、全仕込み量に対して10〜10000ppmであることが好ましい。
【0093】
第2段目の反応工程は、第1段目の反応工程で得られた前記化合物(c)が有するイソシアネート基と、前記重合性単量体(d)が有する水酸基とを反応させる工程である。
【0094】
前記重合性単量体(d)は、これが有する水酸基が、前記化合物(c)のイソシアネート基1当量に対して、1〜2当量の範囲となるように使用することが好ましい。
【0095】
第2段目の反応工程は、室温〜90℃程度の温度範囲で行うことが好ましい。また、第2段目の反応工程は、無溶媒下で行うこともできるが、必要に応じて、後述する架橋成分としての重合性不飽和単量体を溶媒として使用することもできる。
【0096】
第2段目の反応工程では、必要に応じて、第1段目の反応工程で使用できるものとして例示した触媒と同様のものを使用しても良い。
【0097】
また、前記重合性単量体(d)が有する重合性不飽和二重結合のラジカル重合を抑制するために、必要に応じてラジカル重合禁止剤を使用することができる。
【0098】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジ−tert−ブチルハイドロキノン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を使用することができる。前記ラジカル重合禁止剤の添加量は、全仕込み量に対して10〜10000ppm程度であることが好ましい。
【0099】
前記化合物(A)として使用可能な、ポリシロキサン構造を有するエステル(メタ)アクリレート(A2)としては、例えば、前記活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)と不飽和一塩基酸との反応物;カルボキシル基を有するポリシロキサンと、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合及び活性水素原子含有基を有する単量体との反応物を挙げることができる。具体的には、市販品であれば、信越化学工業株式会社製のX−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475等を使用することができる。
【0100】
前記活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)としては、市販品であれば、信越化学工業株式会社製のX−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003等を挙げることができる。また、前記活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)としては、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)を使用することもできる。
【0101】
前記カルボキシル基を有するポリシロキサンとしては、市販品であれば、信越化学工業株式会社製X−22−162C、X−22−3710等を挙げることができる。
【0102】
前記不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、またはモノ(2−エチルヘキシル)マレート等を挙げることができ、これらを単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0103】
前記活性水素原子含有基を有するポリシロキサン(a)と不飽和一塩基酸との反応や、前記カルボキシル基を有するポリシロキサンと、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合及び活性水素原子含有基を有する単量体との反応は、例えば、エステル化触媒や、必要に応じてラジカル重合禁止剤等の存在下で行うことができる。
【0104】
前記エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリンまたはジアザビシクロオクタン等の3級アミン類や、ジエチルアミン塩酸塩を使用することができる。前記エステル化触媒の使用量は、全仕込み量に対して100〜300000ppm程度であることが好ましい。
【0105】
前記化合物(A)として使用可能な、ポリシロキサン構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(A3)としては、例えば、エポキシ基を有するポリシロキサンと、(メタ)アクリ酸又はその誘導体とを、エステル化触媒と必要に応じてラジカル重合禁止剤の存在下で反応させて得られたものや、前記カルボキシル基を有するポリシロキサンと、(メタ)アクリル基及びエポキシ基を有する化合物とを、エステル化触媒と必要に応じてラジカル重合禁止剤の存在下で反応させて得られたもの等を挙げることができる。
【0106】
前記エポキシ基を有するポリシロキサンとしては、例えば、信越化学工業株式会社製のKF−105、X−22−163A、X−22−163B、X−22−169AS、X−22−169B等を使用することができる。
また、前記カルボキシル基を有するポリシロキサンとしては、前記したものと同様のものを使用することができる。
また、前記(メタ)アクリル基及びエポキシ基を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート等を使用することができる。
【0107】
前記エポキシ(メタ)アクリレート(A3)の製造は、好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜120℃の温度範囲において、エステル化触媒を用いて行うことが好ましい。
【0108】
得られたエポキシ(メタ)アクリレート(A3)としては、200〜2500のエポキシ等量を有するものが好ましい。
【0109】
また、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)は、前記必須成分の他に、必要に応じて、前記ポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、その他一般に知られている不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂類、アルキッド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエーテル類、セルロース類およびその誘導体、油脂類、その他の慣用の天然および合成高分子化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していていても良い。
例えば、前記化合物(A)として、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を使用する場合には、前記ポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(D)や不飽和ポリエステル樹脂(E)を併用することが好ましく、特に前記ポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(D)を組み合わせて使用することが好ましい。
【0110】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)と、前記ポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(D)とは、質量割合[(A1)/(D)]が、2/98〜25/75の範囲で組み合わせ使用することが好ましく、質量割合が5/95〜15/85であることがより好ましい。
前記質量割合で使用する場合には、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1)として、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)を使用して得られる前記ウレタン(メタ)アクリレート(A1−1)を使用することが、油や埃等に対する防汚性等に優れた高硬度な成形品を得るうえで特に好ましい。
【0111】
また、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)には、必要に応じて架橋成分である重合性不飽和単量体を使用することができる。
【0112】
前記重合性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリールフタレート、トリアリールシアヌレート、あるいは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタアクリーレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等の、樹脂と架橋可能な不飽和モノマーや、これら不飽和モノマーを単量体とする不飽和オリゴマー等が挙げられる。
【0113】
さらに、硬化物表面の硬度、防汚性及び防汚除去持続性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐煽動性、耐薬品性等の向上を目的として、多官能不飽和モノマー、好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用することが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタルトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性(n=3)トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド(n=3)・ε−カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ−及びヘキサ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の重合性単量体を併用することができる。
【0114】
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)は、活性エネルギー線による硬化、過酸化物の使用による加熱硬化、過酸化物と還元剤の使用による常温硬化のいずれの硬化方法によっても硬化することが可能であるが、より高硬度な成形表面が形成できることから、加熱硬化または活性エネルギー線による硬化が最も好ましい。活性エネルギー線による硬化の場合、型(II)は、透明性を有するフィルム状のもの、またはガラス製のもの等であることが好ましい。
【0115】
活性エネルギー線によって硬化させる際には、硬化剤として光重合開始剤を使用することが好ましい。
【0116】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;メチルオルソベンゾイルベンゾエート;tert−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9−フェニルアクリジン等を単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0117】
活性エネルギー線によって硬化させる場合には、必要に応じて前記光重合開始剤とともに、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等、公知の光増感剤を使用しても良い。
【0118】
過酸化物を使用して加熱硬化させる際には、硬化剤として、例えば、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の過酸化物を使用することができる。
【0119】
前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を常温硬化させる際には、上記過酸化物と、硬化促進剤としてナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルトなどの有機金属塩や、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、パラトルイジンなどの芳香族アミン化合物を組み合わせ使用することができる。
【0120】
前記硬化剤は、ラジカル重合性樹脂組成物(B)100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜5質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0121】
ラジカル重合性樹脂組成物(B)には、必要に応じて重合禁止剤を使用しても良い。前記重合禁止剤としては、例えば、トリハイドロキノン、ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、ラジカル重合性組成物中10〜1000ppmであることが好ましい。
【0122】
さらに、ラジカル重合性樹脂組成物(B)には、例えば、充填剤、繊維強化材、タレ止めとしてのチキソ付与材、紫外線吸収剤、顔料、増粘剤、減粘剤、低収縮化剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、消泡剤、離型剤等が配合されていても良い。
【0123】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0124】
繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、カーボン繊維、金属繊維等が挙げられる。また、繊維の形態としては、繊維による補強効果が得られるものであれば特に限定するものではないが、例えば、クロス、ロービングクロス、ロービングをカットしたストランド、チョップドストランドマット、ロービングクロスとチョップドストランドを縫い合わせたペアマット等が挙げられる。
【0125】
チキソ付与材としては、例えば、アマイド系化合物、ヒュームドシリカで代表されるシラノール基を有する酸化ケイ素(SiO)粉末、スメクタイト、硫酸カルシウムウィスカー、無機ベントナイト化合物等を挙げることができ、なかでもアマイド系化合物が好ましい。
【0126】
ラジカル重合性樹脂組成物(B)が、前記化合物(A)以外の成分を含有する場合、該組成物(B)中の前記化合物(A)の含有量は、0.02〜25質量%であることが好ましく、0.2〜20質量%であることがより好ましい。このような範囲とすることで、本発明の効果がより十分に得られる。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0128】
(合成例1)
<ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−1)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(E−1)との混合物(Z)の調製>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(FZ−2191 東レ・ダウコーニング株式会社製、水酸基当量1222)を37質量部(0.03mol)仕込み、ノルボルネンジイソシアネートを206質量部(1mol)加え、発熱を抑制しながら80℃で2時間反応させた。
【0129】
NCO当量が、前記ポリシロキサンが有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ123となったのを確認した後、50℃に冷却し、ペンタエリスリトールトリアクリレートを375質量部(1.26mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを122質量部(1.05mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下90℃で7時間反応させた。
【0130】
NCO%が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.1質量部を加えることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−1)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(E−1)との質量割合[(A−1)/(E−1)]が7.5/92.5である混合物(Z)を得た。
【0131】
(合成例2)
<ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さない不飽和ポリエステル(E−2)の調製>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、プロピレングリコール456質量部(6mol)、エチレングリコール310質量部(5mol)、フマル酸812質量部(7mol)、無水フタル酸444質量部(3mol)を仕込み、窒素気流下、加熱を開始した。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、酸価が30KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、トルハイドロキノン0.06質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有さない不飽和ポリエステル(E−2)を得た。
【0132】
(実施例1)
表1に示す組成割合にしたがって成形品を製造した。すなわち、合成例1で調製した混合物(Z)40質量部及びペンタエリスリトールトリアクリレート60質量部に対して、イルガキュアー184(チバ・ジャパン株式会社製)を、前記混合物(Z)及びペンタエリスリトールトリアクリレートの合計量に対して5質量%となるように溶解させ、ラジカル重合性樹脂組成物(B)を調製した。そして、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を、化粧紙が貼付された合板からなる基材の化粧紙側表面に、20g/尺となるように塗布した。該塗布面に、後述するシリコン離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる型を載置し、該型の上からゴムローラで均一に延展し、UVランプ120Wメタルハライド(UV照射量1000mJ/cm)を用いて、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させた後、前記型を除去することによって成形品を得た。
【0133】
(実施例2)
表1に示す組成割合にしたがって成形品を製造した。すなわち、合成例1で調製した混合物(Z)12質量部、合成例2で得た不飽和ポリエステル(E−2)42質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部、スチレン28質量部、6質量%ナフテン酸コバルト(Co−NAPHTHENATE6%、DIC株式会社製)0.5質量部、及びメチルエチルケトンパーオキサイド(パーメックN、日本油脂株式会社製)1質量部を混合して、ラジカル重合性樹脂組成物(B)を調製した。そして、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を、化粧紙が貼付された合板からなる基材の化粧紙側表面に、20g/尺となるように塗布した。該塗布面に、後述するシリコン離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる型を載置し、25℃で90分間硬化反応させることによって、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させた後、前記型を除去することによって成形品を得た。
【0134】
(実施例3)
表1に示す組成割合にしたがって成形品を製造した。すなわち、合成例1で調製した混合物(Z)40質量部及びペンタエリスリトールトリアクリレート60質量部に対して、イルガキュアー184(チバ・ジャパン株式会社製)を、前記混合物(Z)及びペンタエリスリトールトリアクリレートの合計量に対して5質量%となるように溶解させ、ラジカル重合性樹脂組成物(B)を調製した。そして、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を、化粧紙が貼付された合板からなる基材の化粧紙側表面に、20g/尺となるよう塗布した。該塗布面に、後述するシリコン板からなる型を載置し、該型の上からゴムローラで均一に延展し、UVランプ120Wメタルハライド(UV照射量1000mJ/cm)を用いて、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させた後、前記型を除去することによって成形品を得た。
【0135】
(実施例4)
表1に示す組成割合にしたがって成形品を製造した。すなわち、合成例1で調製した混合物(Z)40質量部及びペンタエリスリトールトリアクリレート60質量部に対して、イルガキュアー184(チバ・ジャパン株式会社製)を、前記混合物(Z)及びペンタエリスリトールトリアクリレートの合計量に対して5質量%となるように溶解させ、ラジカル重合性樹脂組成物(B)を調製した。そして、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を、化粧紙が貼付された合板からなる基材の化粧紙側表面に、20g/尺となるよう塗布した。該塗布面に、後述するシリコン離型処理が施された、エンボス模様を備えたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる型を載置し、該型の上からゴムローラで均一に延展し、UVランプ120Wメタルハライド(UV照射量1000mJ/cm)を用いて、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化した後、前記型を除去することによって、表面にエンボス模様が付された成形品を得た。
【0136】
(実施例5)
表1に示す組成割合にしたがって成形品を製造した。すなわち、合成例1で調製した混合物(Z)12質量部、合成例2で得た不飽和ポリエステル(E−2)42質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部、スチレン28質量部、6質量%ナフテン酸コバルト(Co−NAPHTHENATE6%、DIC株式会社製)0.4質量部、及びメチルエチルケトンパーオキサイド(パーメックN、日本油脂株式会社製)1質量部を混合して、ラジカル重合性樹脂組成物(B)を調製した。そして、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を、後述するシリコン離型処理が施されたガラス板からなる型の表面に塗布(200g/m)し、25℃の環境下で30分間放置することで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を半硬化させ、ゲルコート層を形成した。
【0137】
次いで、前記ゲルコート層の表面に、不飽和ポリエステル樹脂コンパウンド〔(サンドーマTP−254、ディーエイチ・マテリアル株式会社製)/(CWL−326S、住友化学株式会社製)/(パーカドックス16、化薬アクゾ株式会社製)=100/200/1〕(質量比)を注型(1800g/尺)し、80℃で60分間硬化させた後、前記型を除去することによって成形品を得た。
【0138】
(実施例6)
表1に示す組成割合にしたがって成形品を製造した。すなわち、合成例1で調製した混合物(Z)24質量部、合成例2で得た不飽和ポリエステル(E−2)24質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート36質量部及びスチレン16質量部の混合物に、CWL−326S(住友化学株式会社製)100質量部、パーカドックス16(化薬アクゾ株式会社製)1質量部のコンパウンドを注型(1800g/尺)し、80℃で60分間硬化させた後、前記型を除去することによって成形品を得た。
【0139】
(実施例7)
表2に示す組成割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で成形品を製造した。
なお、表1及び2中、「X−22−164A」は、信越化学工業株式会社製のポリシロキサン構造を有するエステル(メタ)アクリレート(A2)である。
【0140】
(比較例1〜4)
表2に示す組成割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で成形品を製造した。
なお、表1及び2中、「FZ−2191」は、東レ・ダウコーニング株式会社製のポリシロキサン(a1)であり、二重結合を有さないポリシロキサン化合物に該当する。
【0141】
[防汚性及び汚染除去性の評価]
製造した成形品の表面(脱型面)に油性マジック(ぺんてる株式会社製のペン、油性、中字黒色)を用いて字を書き、これを乾いた布で拭き取った後の被膜表面外観を観察した。油性マジックのインクが被膜表面に全く残っていなかったものを「○」、一部インクが残っていたものの実用上使用可能なものを「△」、被膜に半分以上のインク残りがみられたものを「×」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0142】
[防汚性及び汚染除去性の持続性の評価]
製造した成形品の表面(脱型面)に上記油性マジックを用いて字を書き、これを乾いた布で拭き取るという作業を、被膜表面の同一箇所で繰り返し行い、油性マジックの字を乾いた布で拭いた後、文字が消えなくなるまでの回数を調べ、防汚性及び汚染除去性がどの程度持続するかを調べた。前記回数が10回以上であるものを「○」、5回以上10回未満であるものを「△」、5回未満であるものを「×」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0143】
[型の作製]
(シリコン処理PETフィルムの作製)
合成例1で調製した混合物(Z)60質量部、メチルエチルケトン40質量部、及びイルガキュアー184(チバ・ジャパン株式会社製)5質量部を含有する樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム表面にバーコート法にて塗布し、乾燥機(50℃、1分間)を用いて乾燥した後、該塗布面に紫外線を照射(UV照射量1000mJ/cm)することによって、シリコン被膜を有するPETフィルム(シリコン処理PETフィルム)を作製した。このPETフィルムを成形用の型に使用した。
【0144】
(シリコン処理ガラス板の作製)
シリコン系離型剤(ケムリース社製、AF−7)をガラス板に布を用いて塗布し、乾燥機(120℃、5分間)を用いて焼付けすることによって、シリコン被膜を有するガラス板(シリコン処理ガラス板)を得た。このガラス板を成形用の型に使用した。
【0145】
(シリコン板)
株式会社十川ゴム製のシリコンシートを使用した。
【0146】
(シリコン未処理PETフィルム)
シリコン未処理PETフィルムとして、前記シリコン処理PETフィルムを作製する際に使用した、シリコン処理前のPETフィルムを使用した。
【0147】
(フッ素処理PETフィルムの作製)
フッ素系離型剤(ダイキン工業社製、ダイフリーGA−6010)をポリエチレンテレフタレートフィルム表面にスプレー塗布し、乾燥機(80℃、3分間)を用いて乾燥させることによって、フッ素被膜を有するPETフィルム(フッ素処理PETフィルム)を作製した。このPETフィルムを成形用の型に使用した。
【0148】
[意匠性]
成形品の表面に付与された意匠のうち、「鏡面」は平滑な表面が付与されたことを示し、「エンボス」は、微細な凹凸形状からなるエンボス模様が付与されたことを示す。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、未硬化または半硬化の前記層表面に基材(C)を載置し、次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項3】
基材(C)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、未硬化または半硬化の前記層表面に、シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)を載置し、次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化させることを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項4】
シリコン系離型剤(I)によって離型処理が施された型(II)の表面に、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有する化合物(A)を含有するラジカル重合性樹脂組成物(B)からなる層を形成した後、該ラジカル重合性樹脂組成物(B)を硬化または半硬化させてゲルコート層を形成し、次いで、前記ゲルコート層の表面に、樹脂組成物を硬化させてなるバック層を形成することを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項5】
前記化合物(A)が、ポリシロキサン(a)由来の構造と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜4の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記化合物(A)が、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)と、水酸基及び少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)とが、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合した、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)である請求項1〜4の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
ラジカル重合性樹脂組成物(B)が、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)と、水酸基及び少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)とが、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合した、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)、及び前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(D)を含有するものである請求項1〜4の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a1)が、主鎖としてのポリシロキサン鎖に、側鎖としてポリアルキレンオキサイド鎖がグラフトしたものであり、前記ポリアルキレンオキサイド鎖が、アルキレンオキサイドの2〜15モル付加物である請求項6又は7に記載の成形品の製造方法。

【公開番号】特開2011−21058(P2011−21058A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164828(P2009−164828)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(505273017)ディーエイチ・マテリアル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】