説明

成形型装置

【課題】上型の型抜き方向を容易に変更することができる成形型装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の成形型装置10は、基台11と、基台11上に設けられた下型14と、下型14に対して移動可能な上型15と、上型15の移動を行う型抜き機構部13とを備えている。型抜き機構部13は、基台11上に設けられた第一支持壁16と、第一支持壁16に着脱可能に設けられ、直線状に延びている型抜き用長孔26aが形成された第二支持壁17と、伸縮可能なロッド18bを有する駆動シリンダ18と、型抜き用長孔26aに沿って移動可能に設けられ、ロッド18bの先端部および上型15に連結され、ロッド18bの伸縮移動により上型15とともに移動する移動部19と、型抜き用長孔26aの延びている方向と型抜き方向とが一致して配置された第二支持壁17を第一支持壁16に固定する第二支持壁用孔部27および固定ピン28とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂製の成形品などの成形に用いられる金型を有する成形型装置としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。特許文献1に開示されている成形型装置は、基台上に設けられた下型と、この下型に対して移動可能に設けられた上型とを備えている。そして、特許文献1には、型締め位置にある上型を型抜き方向および型開き方向に移動させることにより、金型から成形品を容易に取外すことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−57769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品の形状を変更したい場合、金型を交換するだけではなく、上型の型抜き方向を変えるために、上型の移動を行う成形型装置全体を交換しなければならないことがある。
そこで、上型の型抜き方向を容易に変更することができる成形型装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の成形型装置は、基台と、前記基台上に設けられた下型と、前記下型に対して移動可能な上型と、前記上型の移動を行う型抜き機構部と、を備えている。そして、前記型抜き機構部は、前記基台上に設けられた第一支持壁と、前記第一支持壁に着脱可能に設けられ、直線状に延びている型抜き用長孔が形成された第二支持壁と、伸縮可能なロッドを有する駆動シリンダと、前記型抜き用長孔に沿って移動可能に設けられ、前記ロッドの先端部および前記上型に連結され、前記ロッドの伸縮移動により前記上型とともに移動する移動部と、前記型抜き用長孔の延びている方向と前記上型の型抜き方向とが一致して配置された前記第二支持壁を前記第一支持壁に固定する固定手段と、を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の成形型装置によれば、固定手段によって第二支持壁が第一支持壁に固定されている位置を変えて、型抜き用長孔の延びている方向を上型の型抜き方向と一致させることにより、上型の型抜き方向を容易に変更することができる。これにより、成形品の形状の変更などによって上型の型抜き方向が変わっても、成形型装置全体を交換する必要はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の成形型装置の型抜き方向が型締め位置から前方上方に向かう場合の型締め状態を示す斜視図
【図2】型抜き方向が型締め位置から前方上方に向かう場合の型開き状態を示す斜視図
【図3】型抜き方向が型締め位置から前方上方に向かう場合の型締め状態を部分的に拡大して示す正面図
【図4】型抜き方向が型締め位置から前方上方に向かう場合の型締め状態を示す右側面図
【図5】型抜き方向が型締め位置から前方上方に向かう場合の型開き状態をを示す右側面図
【図6】型抜き方向が型締め位置から上方に向かう場合の型締め状態を示す斜視図
【図7】型抜き方向が型締め位置から上方に向かう場合の型開き状態を示す斜視図
【図8】型抜き方向が型締め位置から上方に向かう場合の型締め状態を部分的に拡大して示す正面図
【図9】型抜き方向が型締め位置から上方に向かう場合の型締め状態を示す右側面図
【図10】型抜き方向が型締め位置から上方に向かう場合の型開き状態を示す右側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、成形型装置の一実施形態について図面を参照して説明する。また、金型が開いたときに、金型から成形品を取り出すことができる側、例えば図1で左下方向を成形型装置の前側として説明する。
【0009】
図1〜図10に示す成形型装置10は、板状の基台11と、金型12と、一対の型抜き機構部13、13とを備えている。金型12は、下型14と上型15とを備えている。この実施形態では、上型15が型締め位置から型開き位置まで移動する構成である。型締め位置は、図1、図3、図4、図6、図8、図9に示すように、下型14と上型15とが合わさっている位置である。上型15が型締め位置にある型締め状態の場合、金型12が全閉した状態となり、成形品の成形が可能となる。型開き位置は、図2、図5、図7、図10に示すように、上型15が下型14に対して最も離れている位置である。上型15が型開き位置にある型開き状態の場合、金型12が全開した状態となり、金型12から図示しない成形品を容易に取り出すことが可能となる。
【0010】
金型12は、図1、図2、図6、図7に示すように、基台11上の左右方向の中央に設けられている。金型12の下型14は、基台11上に固定して設けられている。下型14上には、当該下型14に対して上型15が型抜き機構部13によって型締め位置と型開き位置との間で移動可能に設けられている。下型14および上型15は、たとえば共に長方体に形成されている。下型14内および上型15内には、成形品を成形するための図示しない空間(キャビティ)が形成されている。
【0011】
型抜き機構部13は、基台11上で且つ金型12の左右両側にそれぞれ設けられている。この実施形態では、成形型装置10は左右対称の構造である。そのため、成形型装置10を正面から見て右部に位置する型抜き機構部13のみを説明し、成形型装置10の左部に位置する型抜き機構部13の説明を省略する。
型抜き機構部13は、上述したように、上型15を型締め位置から型開き位置までの間の移動を行うものである。この型抜き機構部13は、第一支持壁16と、第二支持壁17と、駆動シリンダ18と、移動部19と、第一固定手段とを備えている。
【0012】
第一支持壁16は、板状であり、基台11上であって当該下型14の右側面に対して平行に立てられ、リブ22によって倒れないように支持・補強されている。第一支持壁16には、第一支持壁16の厚さ方向を切り欠いた切欠き部23が形成されている。切欠き部23は、上部切欠き部23a、中央切欠き部23bおよび下部切欠き部23cから形成されている。上部切欠き部23aは、第一支持壁16の上端部から中央やや上方にかけて幅が狭くなっている形状である。中央切欠き部23bは、上部切欠き部23aの下端部から第一支持壁16の中央やや下方まで上下方向にまっすぐ延びている形状である。下部切欠き部23cは、中央切欠き部23bの下端部から第一支持壁16の下端部に向かって幅が広くなっている形状である。
【0013】
第一支持壁16の切欠き部23の周囲には、複数の第一支持壁用孔部24が形成されている。第一支持壁用孔部24は、第一支持壁16の厚さ方向を貫通する円形の孔である。複数の第一支持壁用孔部24は、第一支持壁16の中央を中心として円弧状に並んで配置されている。第一支持壁用孔部24は、具体的には、図4および図9に示すように、18個箇所形成され、第一支持壁16の中央、例えば中央切欠き部23bの中心を仮想の円の中心とし、仮想の同心円を3つ描き、その各円上において30°の間隔で並んで配置されている。
【0014】
この実施形態では、第一支持壁用孔部24は、第一支持壁16の仮想の各円上であって仮想の円の中心の前方に3箇所配置され、その上方および下方の周方向にそれぞれ30°離れた位置に3箇所ずつ、すなわち中心角60°の円弧状の範囲で30°の間隔で並んで配置されている。さらに、第一支持壁用孔部24は、第一支持壁16の仮想の各円上であって仮想の円の中心の後方に3箇所配置され、その上方および下方の周方向にそれぞれ30°離れた位置に3箇所ずつ、すなわち中心角60°の円弧状の範囲で30°の間隔で並んで配置されている。
【0015】
仮想の3つの同心円の直径は、等間隔となる大きさである。
第二支持壁17は、第一支持壁16の面のうち金型12側の面に配置されている。第二支持壁17は、ほぼ四角形の板状であり、一の辺、この実施形態では前方側の辺が前方に突出する円弧状になっている。以下、この前方側の円弧状の辺を、円弧辺17aと称する。また、第二支持壁17には、レール孔26および複数の第二支持壁用孔部27が形成されている。
【0016】
レール孔26は、第二支持壁17の厚さ方向を貫通する長孔であり、型抜き用長孔26aと、円弧状長孔26bと、型開き用長孔26cとから構成されている。例えば、第二支持壁17の円弧辺17aが前方側に位置する場合、図4および図5に示すように、型抜き用長孔26aは、第二支持壁17の下端部中央付近から上下方向の中央で且つ前後方向において中央よりもやや前方まで直線状に延びている形状である。また、円弧状長孔26bは、型抜き用長孔26aの上端部から円弧状に上方側に延びている形状である。円弧状長孔26bの中心角は、約90°である。そして、型開き用長孔26cは、円弧状長孔26bの上端部から後方上方、すなわち円弧状長孔26bの上端部から第二支持壁17の後端側上部まで直線状に延びている形状である。
【0017】
複数の第二支持壁用孔部27は、第二支持壁17のレール孔26の周囲に円弧状に並んで形成されている。第二支持壁用孔部27は、第二支持壁17の厚さ方向を貫通する円形の孔であり、第一支持壁16に形成された第一支持壁用孔部24と同形状である。複数の第二支持壁用孔部27は、第一支持壁用孔部24よりも多く配置されている。具体的には、複数の第二支持壁用孔部27は、第二支持壁17の中央、この実施形態では型抜き用長孔26aの上端部付近を仮想の円の中心とし、仮想の同心円を3つ描き、その各円上において10°の間隔で並んで配置されている。第二支持壁17の3つの仮想の円の大きさは、第一支持壁16の3つの仮想の円の大きさとそれぞれ同じである。また、第二支持壁17の3つの仮想の同心円の中心は、第一支持壁16の3つの仮想の同心円の中心と同じ軸上にある。そして、第二支持壁用孔部27は、第二支持壁17の各円上であって仮想の円の中心の前方に3箇所配置され、その上下方の周方向にそれぞれ10°の間隔で並んで配置されている。
【0018】
この実施形態では、第二支持壁17のうちレール孔26の前方に、複数の第二支持壁用孔部27が中心角110°の円弧状の範囲で10°の間隔で配置され、第二支持壁17のうちレール孔26の後方に、複数の第二支持壁用孔部27が中心角110°の円弧状の範囲で10°の間隔で配置されている。さらに、第二支持壁用孔部27のうちレール孔26の前方に位置する第二支持壁用孔部27と、第二支持壁用孔部27のうちレール孔26の後方に位置する第二支持壁用孔部27とは、第二支持壁17の前後方向のほぼ中心において前後対称に配置されている。
【0019】
第二支持壁17は、複数の第二支持壁用孔部27および第一係合部から構成される第一固定手段によって第一支持壁16に着脱可能に設けられている。第一係合部は、複数の第二支持壁用孔部27に対して選択的に係合するものであり、具体的には、第一支持壁用孔部24および固定ピン28から構成されている。
【0020】
固定ピン28は、第一支持壁用孔部24および第二支持壁用孔部27に挿入可能なボルト、円柱状のピンなどである。すなわち、固定ピン28は、第一支持壁用孔部24の厚さ方向を貫通し、且つ複数の第二支持壁用孔部27のうちから選択された第二支持壁用孔部27に挿入されるものである。
【0021】
例えば、図1〜図5に示すように、レール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向が型締め位置から前方上方に向かう型抜き方向(図1、図2、図4、図5中、矢印A方向で示す)になるようにして第二支持壁17を第一支持壁16に合わせ、そのときに第一支持壁用孔部24に一致する複数の第二支持壁用孔部27および当該第一支持壁用孔部24に、固定ピン28を挿入する。これにより、第二支持壁17は第一支持壁16に固定され、型抜き用長孔26aの延びている方向は型締め位置から前方上方に向かう方向(矢印A方向)となる。
【0022】
この実施形態では、第一支持壁用孔部24は18箇所形成されているため、固定ピン28も18本用いられる。そして、この18本の固定ピン28は、複数の第二支持壁用孔部27のうちから選択された18箇所の第二支持壁用孔部27に挿入される。なお、固定ピン28の本数は適宜変更することができる。
【0023】
また、図6〜図10に示すように、レール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向が図1〜図5と異なる型抜き方向、例えば基台11の上面の平面方向に対して垂直の上方の型抜き方向、すなわち型締め位置から上方に向かう方向(図6、図7、図9、図10中、矢印B方向で示す)になるようにして第二支持壁17を第一支持壁16に合わせ、そのときに第一支持壁用孔部24に一致する複数の第二支持壁用孔部27および当該第一支持壁用孔部24に、固定ピン28を挿入する。これにより、第二支持壁17は第一支持壁16に固定され、型抜き用長孔26aの延びている方向は基台11の上面の平面方向に対して垂直の上方(矢印B方向)になる。
【0024】
基台11上の第一支持壁16の右方には、図1〜図10に示すように、駆動シリンダ18を介してシリンダ取付けブラケット32が設けられている。
駆動シリンダ18は、ケース部18aおよびロッド18bを有している。ケース部18aは、縦長の箱状であり、上端が開放している。ロッド18bは、縮んでいる状態のときにケース部18aに収容され、必要に応じて、例えば電圧が印加されたことによりケース部18aから突出する(伸びる)構成である。これにより、ロッド18bは、伸縮可能に設けられた構成となる。この実施形態では、ロッド18bがほぼ上下方向に伸縮する構成である。また、ロッド18bが縮んでケース部18aに収容されている場合、ロッド18bの先端部は、図4および図9に示すように、上型15の上端面の高さおよびレール孔26の型抜き用長孔26aの上端部の高さとほぼ一致している。
【0025】
駆動シリンダ18のケース部18aの長手方向の途中部位には、第一軸部33が回転可能に設けられている。第一軸部33は、第一支持壁16およびシリンダ取付けブラケット32に連結している。シリンダ取付けブラケット32は、基台11上に設けられている。これにより、ロッド18bが伸縮移動する場合に、駆動シリンダ18は第一軸部33を中心にして基台11の前後方向に適宜回転(揺動)する構成となる。
【0026】
ロッド18bの上側の先端部には、第二軸部34が回転可能に設けられている。第二軸部34は、一端側が第一支持壁16側に延び、他端側が自由状態となっている。第二軸部34の一端側の端部にはフランジ部材35が設けられている。フランジ部材35は、筒部35aとフランジ部35bとから構成されている。第二軸部34の大半部分はフランジ部材35の筒部35a内に収容され、第二軸部34が筒部35aの内周面を摺動する構成である。フランジ部35bは、筒部35aの端部のうち金型12側の端部に設けられている。
【0027】
移動部19は、レール孔26に沿って移動するものであり、移動部用本体部37と、第一ローラ38(例えば図3および図7参照)と、第二ローラ39(例えば図3および図7参照)と、ブラケット40と、上述の第二軸部34およびフランジ部材35とを備えている。
移動部用本体部37は、略矩形の板状であり、第一支持壁16とほぼ同じ板厚であり、第一支持壁16の切欠き部23内および当該第一支持壁16の上方に移動可能に設けられている。この移動部用本体部37は、上端部にフランジ部材35のフランジ部35bが固定されている。これにより、駆動シリンダ18のロッド18bが伸縮移動することにより、移動部用本体部37は駆動シリンダ18のロッド18bの伸縮移動に合わせて移動する。
【0028】
第一ローラ38および第二ローラ39は、移動部用本体部37の面のうち金型12側の面に設けられている。第一ローラ38および第二ローラ39は、ともに同形状の円柱であり、レール孔26を貫通して設けられ、このレール孔26に沿って回転して移動するものである。第一ローラ38および第二ローラ39の直径は、レール孔26の幅寸法よりもクリアランス分小さい。第一ローラ38は、上型15が型締め位置にある場合、第二ローラ39よりも型開き位置に近い方に配置されている。
【0029】
ブラケット40は、図2、図3、図7、図8に示すように、上型15の右側面に取り付けられている。ブラケット40の右側面には、第一ローラ38および第二ローラ39の一端部(金型12側の端部)が設けられている。このブラケット40は、土台部41および突出部42を備えている。土台部41は、ほぼD字状で板状をなしている。この実施形態では、図4および図9に示すように、上型15が型締め位置にある場合、土台部41のうち円弧状側(円弧部40aと称する)が下方に位置し、土台部41のうち円弧部40aとは反対側に位置する直線側(直線部40bと称する)が円弧部40aの上方に位置している。
突出部42は、土台部41上(図3および図8で土台部41の右側面)に設けられ、矩形板状をなし、図4および図9に示すように、土台部41が対称になるように土台部41の中央に設けられている。
【0030】
土台部41には、複数の土台部用孔部43が形成されている。土台部用孔部43は、土台部41を貫通する円形の孔である。複数の土台部用孔部43は、2つの仮想の円の一部(円弧)に沿って2列に配置されている。この実施形態では、複数の土台部用孔部43は、この2つの仮想の円上において10°の間隔で並んで配置されている。この2つの仮想の円は、同心円である。
【0031】
また、上型15の右側面にも、複数の上型用孔部44が形成されている。上型用孔部44は、ブラケット40の土台部用孔部43と同形状の孔である。上型15に形成された複数の上型用孔部44は、具体的には、上型15の上端部の前後方向の中央を仮想の円の中心とし、仮想の同心円を2つ描き、その各円において10°の間隔で並んで配置されている。上型15の2つの仮想の円の大きさは、ブラケット40の2つの仮想の円(円弧)の大きさとそれぞれ同じである。また、上型15の2つの仮想の円の中心は、ブラケット40の2つの仮想の円の中心と同じ軸上にある。
ブラケット40の突出部42の幅方向の中央には、第一ローラ38の端部および第二ローラ39が配置されている。この場合、第二ローラ39は、第一ローラ38よりも下方、すなわちブラケット40の土台部41の円弧部40a側に位置している。
【0032】
上型15は、複数の上型用孔部44と、第二係合部とからなる第二固定手段によってブラケット40に着脱可能に設けられている。第二係合部は、複数の上型用孔部44に対して選択的に係合するものであり、具体的には、土台部用孔部43および固定ピン45から構成されている。
【0033】
固定ピン45は、土台部用孔部43および上型用孔部44に挿入可能なボルト、円柱状のピンなどである。すなわち、固定ピン45は、土台部用孔部43を貫通し、且つ複数の上型用孔部44のうちから選択された上型用孔部44に挿入されるものである。例えば、図4および図9に示すように、ブラケット40の直線部40bと型抜き方向とが垂直になるようにしてブラケット40を上型15に合わせ、そのときに土台部用孔部43に一致する複数の上型用孔部44および当該土台部用孔部43に、固定ピン45を挿入することにより、ブラケット40は上型15に固定される。これにより、ブラケット40の直線部40bの延びている方向と型抜き方向とが垂直の関係になる。
【0034】
次に、上記構成の作用について説明する。なお、成形型装置10は、左右対称の構造であるため、成形型装置10の右部を説明し、左部については説明を省略する。また、基台11上には、予め第一支持壁16、リブ22、シリンダ取付けブラケット32が固定され、シリンダ取付けブラケット32に駆動シリンダ18が取付けられ、駆動シリンダ18のロッド18bの先端部に、第二軸部34およびフランジ部材35が取付けられているものとする。
【0035】
まず、基台11に金型12の上型15を取付ける手順について説明する。
最初に、上型15の型抜き方向が型締め位置から前方上方に向かう方向(矢印A方向)である場合について、図1〜図5を参照して説明する。
上型15の型抜き方向(矢印A方向)に対してブラケット40の直線部40bが直交するように、上型15の右側面にブラケット40を合わせる。このとき、ブラケット40の土台部用孔部43に一致する複数の上型用孔部44および当該土台部用孔部43に、固定ピン45を挿入する。これにより、ブラケット40は上型15に固定される。
【0036】
次に、ブラケット40に第一ローラ38の一端部および第二ローラ39の一端部を取付ける。そして、第二支持壁17のレール孔26内に第一ローラ38および第二ローラ39を配置する。次に、第一ローラ38および第二ローラ39の他端側に移動部用本体部37を取付ける。これにより、第二支持壁17は、移動部用本体部37とブラケット40とによって挟まれた状態となる。
【0037】
次に、上型15を下型14上の型締め位置に置く。そして、第二支持壁17のレール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向が上型15の型抜き方向(矢印A方向)と一致するように、第二支持壁17を適宜回転させる(傾ける)。
【0038】
次に、レール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向と上型15の型抜き方向とが一致した状態のときに、第一支持壁用孔部24に一致する複数の第二支持壁用孔部27および当該第一支持壁用孔部24に、固定ピン28を挿入する。これにより、第二支持壁17は第一支持壁16に固定される。さらに、レール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向は、上型15の型抜き方向(矢印A方向)となり、また、型開き用長孔26cの延びている方向は、円弧状長孔26bの後端部から後方上方に向かう方向となる。
【0039】
次に、フランジ部材35のフランジ部35bと移動部用本体部37とを固定する。これにより、上型15は型締め位置に設けられ、移動可能な状態となる。
上記構成によれば、駆動シリンダ18のロッド18bが伸縮移動すると、移動部19の第二軸部34は適宜回転しながらフランジ部材35を介して移動部用本体部37を移動させる。これにより、移動部用本体部37に設けられた第一ローラ38および第二ローラ39、すなわち移動部19がレール孔26に沿って移動する。この移動部19のレール孔26に沿う移動により、移動部19に連結されている上型15も移動部19とともに移動する。
【0040】
具体的には、駆動シリンダ18のロッド18bが伸びるとともに、移動部19は型抜き用長孔26aの下端部から型抜き用長孔26aに沿って前方上方、すなわち上型15の型抜き方向(矢印A方向)に向かって移動する。この移動部19の移動により、上型15は型締め位置から上型15の型抜き方向の前方上方(矢印A方向)に向かって移動する。また、駆動シリンダ18のロッド18bがさらに伸びるとともに、移動部19は型抜き用長孔26aの上端部から円弧状長孔26bおよび型開き用長孔26cを移動して型開き用長孔26cの後端部まで移動する。この移動部19の移動により、上型15は型抜き方向(矢印A方向)の位置から型開き方向(後方上方に向かう方向)に移動して最終的に型開き位置に達する。
【0041】
上型15が型開き位置に達することにより、金型12は全開した状態となり、金型12からの成形品の取り出し、金型12内のメンテナンスなどが可能となる。
金型12から成形品が取り出された後、駆動シリンダ18のロッド18bを伸びた状態から縮めると、移動部19は型開き用長孔26cの後端部から円弧状長孔26bを介して型抜き用長孔26aの上端部まで移動する。この移動部19の移動により、上型15は型開き位置から型開き方向の前方下方に移動して上型15の型抜き方向上まで移動する。さらに、駆動シリンダ18のロッド18bを縮めると、移動部19は型抜き用長孔26aの上端部から型抜き用長孔26aに沿って後方下方(矢印A方向とは反対の方向)に移動して型抜き用長孔26aの下端部まで移動する。この移動部19の移動により、上型15は型抜き方向の前方上方の位置から後方下方(矢印A方向とは反対の方向)に向かって移動して最終的に型締め位置に達する。
このように、上型15が型締め位置に達することにより、金型12は全閉した状態となり、成形品の成形が可能となる。
【0042】
次に、金型12などの変更により型抜き方向が異なるようになった場合、例えば上型15の型抜き方向が基台11の上面の平面方向に対して垂直の上方(矢印B方向)になった場合について、図6〜図10を参照して説明する。
まず、上述で用いた金型12の上型15を型抜き用機構部13から取外す。具体的には、上型15を型締め位置に置き、フランジ部材35を移動部用本体部37から取外し、第一ローラ38および第二ローラ39をブラケット40から取外す。次に、固定ピン28を第一支持壁用孔部24および第二支持壁用孔部27から取外し、第二支持壁17を第一支持壁16から取外す。そして、上型15に取付けられているブラケット40を取外すことにより、上型15を交換することができる。また、基台11に固定されている下型14を交換することにより金型12全体の交換が可能となる。
【0043】
金型12を交換した後、上型15の右側面に、上型15の型抜き方向(矢印B方向)に対してブラケット40の直線部40bが直交するようにして当該ブラケット40を合わせる。このとき、ブラケット40の土台部用孔部43に一致する複数の上型用孔部44および当該土台部用孔部43に、固定ピン45を挿入する。これにより、ブラケット40は上型15に固定される。
【0044】
次に、ブラケット40に第一ローラ38の一端部および第二ローラ39の一端部を取付ける。そして、第二支持壁17のレール孔26内に第一ローラ38および第二ローラ39を配置する。次に、第一ローラ38および第二ローラ39の他端側に移動部用本体部37を取付ける。これにより、第二支持壁17は、移動部用本体部37とブラケット40とによって挟まれた状態となる。
【0045】
次に、上型15を下型14上の型締め位置に置く。そして、第二支持壁17のレール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向が上型15の型抜き方向(矢印B方向)と一致するように、この場合、型抜き用長孔26aが基台11の上面の平面方向に対して垂直になるように第二支持壁17を回転させる(傾ける)。次に、レール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向と上型15の型抜き方向(矢印B方向)とが一致した状態のときに、第一支持壁用孔部24に一致する複数の第二支持壁用孔部27および第一支持壁用孔部24に、固定ピン28を挿入する。これにより、第二支持壁17は第一支持壁16に固定される。さらに、レール孔26の型抜き用長孔26aの延びている方向は、基台11の上面の平面方向に対して垂直の上方(矢印B方向)となり、また、型開き用長孔26cの方向は、円弧状長孔26bの後ろ端部から後方やや上方に向かう方向(後方やや上方に向かう方向)となる。
【0046】
次に、上述と同様に、フランジ部材35のフランジ部35bと移動部用本体部37とを固定する。これにより、上型15は型締め位置に設けられ、移動可能な状態となる。
上記構成によれば、駆動シリンダ18のロッド18bが伸びるとともに、移動部19は型抜き用長孔26aに沿って、すなわち基台11の上面の平面方向に対して垂直の上方(矢印B方向)に移動する。この移動部19の移動により、上型15は型抜き方向である型締め位置から上方(矢印B方向)に向かって移動する。また、駆動シリンダ18のロッド18bがさらに伸びるとともに、移動部19は型抜き用長孔26aの上端部から円弧状長孔26bおよび型開き用長孔26cを移動して型開き用長孔26cの後端部まで移動する。この移動部19の移動により、上型15は型抜き方向上の位置から型開き方向(後方やや上方に向かう方向)上の位置に移動して最終的に型開き位置に達する。
上型15が型開き位置に達することにより、金型12は全開した状態となる。
【0047】
金型12から成形品が取り出された後、駆動シリンダ18のロッド18bを伸びた状態から縮めると、移動部19は型開き用長孔26cの後端部から円弧状長孔26bを介して型抜き用長孔26aの上端部まで移動する。この移動部19の移動により、上型15は型開き位置から型開き方向の前方下方の位置に移動して、上型15の型抜き方向上に位置する。さらに、駆動シリンダ18のロッド18bを縮めると、移動部19は型抜き用長孔26aの上端部から型抜き用長孔26aに沿って下端部まで(矢印B方向とは反対の方向に)移動する。この移動部19の移動により、上型15は型抜き方向の上方の位置から下方(矢印B方向とは反対の方向)に向かって移動して最終的に型締め位置に達する。
【0048】
このように、上型15が型締め位置に達することにより、金型12は全閉した状態となり、成形品の成形が可能となる。
【0049】
上記構成によれば次の作用効果を奏する。
この成形型装置10は、第一支持壁16に着脱可能に設けられた第二支持壁17と、第二支持壁17を第一支持壁16に固定する第一固定手段を有している。そして、第一支持壁16に対する第二支持壁17の取付ける位置を変更することにより、型抜き用長孔26aの延びている方向を容易に変更することができる。すなわち、第一固定手段によって第二支持壁17が第一支持壁16に固定されている位置を変えて、型抜き用長孔26aの延びている方向を上型15の型抜き方向と一致させることにより、上型15の型抜き方向を例えば矢印A方向または矢印B方向に容易に変えることができる。これにより、金型12の交換などによって成形品の型抜き方向が変わっても、成形型装置10全体を交換する必要はなくなる。
【0050】
第一固定手段を、第二支持壁17に形成された複数の第二支持壁用孔部27および係合部たる固定ピン28から構成したため、固定ピン28を第二支持壁用孔部27および第一支持壁用孔部24に挿入することにより、第二支持壁17を第一支持壁16に容易に固定することができる。
第二固定手段を、上型15に形成された複数の上型用孔部44および係合部たる固定ピン45から構成したため、固定ピン45を土台部用孔部43および上型用孔部44に挿入するだけで、ブラケット40を上型15に固定することができる。
【0051】
第二支持壁用孔部27は、円弧状に並んで配置されているため、第一支持壁16に対する第二支持壁17の取り付ける角度の選択の幅を広げることができる。すなわち、上型15の型抜き方向(角度)が大きく異なる場合にも、第一支持壁16に対する第二支持壁17の取付ける位置を変えることにより、成形型装置10全体を交換しなくてすむ。
第二支持壁17の一の辺を円弧状に形成、すなわち円弧辺17aを設けたので、第二支持壁17は回転しやすく(傾けやすく)、型抜き用長孔26aの延びている方向を容易に変更して第二支持壁17を第一支持壁16に取付けることができる。
【0052】
第二支持壁17を第一支持壁16に取付ける位置(型抜き用長孔26aの方向)を変更させることにより、上型15の型抜き方向を、上述した2方向(矢印A方向、矢印B方向)以外、例えば型締め位置から後方上方に向かう方向にすることができる。また、この実施形態では、第二支持壁用孔部27が10°の間隔で形成されているため、第二支持壁17の取付ける位置は、第一支持壁16に対して第二支持壁17を最小単位10°回転して(傾けて)取付けることができる。また、第一支持壁16の第一支持壁用孔部24の配置の円弧状の範囲は60°であり、第二支持壁17の第二支持壁用孔部27の配置の円弧状の範囲は110°であるため、第二支持壁17は、最大50°回転して(傾けて)第一支持壁16に取付けることができる。
【0053】
第二支持壁17は第一支持壁16に対して着脱可能であるため、第二支持壁17に形成したレール孔26の形状と上型15の型抜き方向とが合わない場合、レール孔26の形状を適宜変更した新たな第二支持壁17を用いることにより対応でき、成形型装置10全体の交換をしなくてすむ。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本願発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
第一固定手段は、第二支持壁用孔部27および係合部(固定ピン28)から構成されるとして説明したが、第二支持壁用孔部27を用いずに第一支持壁16に固定ピン28を固定した構成としてもよい。
【0055】
第二固定手段は、土台部用孔部43および係合部(固定ピン45)から構成されるとして説明したが、土台部用孔部43を用いずに土台部41に固定ピン45を固定した構成としてもよい。
レール孔26の形状は、型抜き方向、型開き方向に合わせて適宜変更することができる。その他、上記した構成部品などの数、大きさ等について、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0056】
図面中、10は成形型装置、11は基台、13は型抜き機構部、14は下型、15は上型、16は第一支持壁、17は第二支持壁、18は駆動シリンダ、19は移動部、24は第一支持壁用孔部(固定手段)、26aは型抜き用長孔、27は第二支持壁用孔部(固定手段)、28は固定ピン(固定手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台上に設けられた下型と、
前記下型に対して移動可能な上型と、
前記上型の移動を行う型抜き機構部と、を備え、
前記型抜き機構部は、
前記基台上に設けられた第一支持壁と、
前記第一支持壁に着脱可能に設けられ、直線状に延びている型抜き用長孔が形成された第二支持壁と、
伸縮可能なロッドを有する駆動シリンダと、
前記型抜き用長孔に沿って移動可能に設けられ、前記ロッドの先端部および前記上型に連結され、前記ロッドの伸縮移動により前記上型とともに移動する移動部と、
前記型抜き用長孔の延びている方向と前記上型の型抜き方向とが一致して配置された前記第二支持壁を前記第一支持壁に固定する固定手段と、を有していることを特徴とする成形型装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記第二支持壁に形成された複数の第二支持壁用孔部と、当該複数の第二支持壁用孔部に対して選択的に係合する係合部であることを特徴とする請求項1記載の成形型装置。
【請求項3】
前記複数の第二支持壁用孔部は、円弧状に並んで形成されていることを特徴とする請求項2記載の成形型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−30546(P2012−30546A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173584(P2010−173584)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(392019879)株式会社イケックス工業 (1)
【Fターム(参考)】