説明

成形容器

【課題】電子レンジによる加熱調理に使用される成形容器であって、事前に部分的に開封しなくとも、加熱による内圧上昇に伴って、自動的かつ安定して開口が形成され、そこから内圧を逃がすことができ、耐破袋性にも優れた成形容器を提供する。
【解決手段】底面と側面を有し、開口部を覆うようにフランジ6に剥離可能に接着されたシート蓋10で封止された成形容器5。成形容器5のシート蓋10は、基材層とその裏面の熱接着層から構成されており、該シート蓋の平面上の中央部エリアには、内圧上昇により上記基材層を破断するためのカット線21が形成されている。このカット線21は、交差することなく蛇行するとともに、当該カット線の両端を結ぶ直線に沿って重なることなく延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで加熱調理する食品を収容したシート蓋で封止された成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、茶碗蒸しや調理パン等、電子レンジで加熱調理して喫食する食品は、従来から種々提供されている。一般的に、そのような食品は包装材に包まれていて、その一部を開封して電子レンジ内に投入し、加熱調理する。
茶碗蒸しの場合、食品はカップ状容器に収容されていて、その上部開口がフィルム材でシールされている。これを電子レンジに投入する前に、フィルム材の一部に爪楊枝等で孔を空けたり、フィルム材を一部に引き剥がしたりして、部分的に開封する。
【0003】
このようなことを行うのは、加熱調理により容器の内圧が高まるので、その圧力を逃がして、破裂を防止するためである。すなわち、容器の一部が開封した状態で加熱することにより、圧力が外部に逃げて容器の破裂を防止できる。
【0004】
しかしながら、電子レンジに投入する前に、いちいち容器を部分的に開封させるのは手間であり、また、これを忘れて加熱調理した場合には、加熱途中で容器が破裂し、食品が電子レンジの庫内に散乱してしまうなどの問題がある。
【0005】
特許文献1に開示された包装材料においては、「未延伸フィルム」上に「低融点のヒートシール剤」を介して「延伸フィルム」を積層し、この「延伸フィルム」に切断線を設けている。加熱により包装体の内圧が上昇すると、切断線に沿って開口が生じ、ここから圧力が外部へ逃げる。
【0006】
特許文献2および3には、積層構造を有する蓋材にハーフカット切目を入れて、容器の内圧が高まったときに、ハーフカット部が破断して内圧を逃がす構成が開示されている。
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO01/081201号パンフレット
【特許文献2】特開平11−147559号公報
【特許文献3】特開2001−31148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子レンジによる加熱調理に使用される成形容器であって、シート蓋を事前に部分的に開封しなくとも、加熱による内圧上昇に伴って、自動的かつ安定して開口が形成され、そこから内圧を逃がすことができ、蒸通性に優れた成形容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の成形容器は、底面と側面を有し、開口部を覆うようフランジ部に剥離可能に接着されたシート蓋で封止されるものである。成形容器のシート蓋は、基材層とその裏面の熱接着層から構成されており、該シート蓋の平面上の中央部エリアには、内圧上昇により上記基材層を破断するためのカット線が形成されている。このカット線は、交差することなく蛇行するとともに、当該カット線の両端を結ぶ直線に沿って重なることなく延在している。
基材層と熱接着層との間において、「蛇行カット線の少なくとも一端を覆う第1領域」と「上記フランジ部の少なくとも一部分に面する第2領域」とに高温軟化樹脂層を配置してもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の成形容器においては、電子レンジ加熱により内容物が加熱されると水蒸気が発生してシート蓋が膨らみ、蛇行カット線の箇所において、熱接着層が伸びて裂け、蒸通する。カット線が蛇行しているので、容器が不用意に落下した場合における、耐破袋性が高まる。
蛇行カット線の両端の少なくとも一端を高温軟化樹脂層を覆うように構成すれば、さらに耐破袋性を高めることができる。
【0011】
基材層と熱接着層との間であって、摘み部が設けられている箇所を除いた上記フランジ部の少なくとも1箇所に上記高温軟化樹脂層を配置した場合には、次のようなメリットが得られる。
すなわち、電子レンジによる加熱を続けていくと、蛇行カット線の箇所からは蒸気が排出しきれなくなる場合があるが、その場合には、高温軟化樹脂を配置したフランジ部で高温軟化樹脂層が軟化するので基材層と熱接着層が剥離し、熱接着層が伸びて裂け、この部分からも蒸通が行われる。
すなわち、内圧の上昇に伴い蒸通が生じる箇所を複数設けることで、全体的な蒸通安定性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る成形容器のシート蓋10の構造を模式的に説明する分離斜視図である。
【0013】
≪シート蓋10の全体構成≫
シート蓋10は、基材層20の裏面側に熱接着層40を有してなり、両者の間には高温軟化樹脂層30a、30bを配置している。基材層20の中央部には、蛇行する波線状のカット線21を形成している。カット線の詳細な形状については後述する。
カット線21の形成位置は任意であるが、内圧上昇時に応力が良好に作用するように、カット線21はシート蓋10の中央付近に設けるのが好ましい。
【0014】
シート蓋10は、図1に示したように、カップ状容器5のフランジ部6に熱接着されてこれを封止する。図2は、シート蓋10を上方から見た透視図であって、ハッチングを付した円環状領域は、カップ状容器5のフランジ部6を示している。
なお、参照符号11は、消費者が最終的にシート蓋10を容器5から引き剥がす際に摘む摘み部を示している。
【0015】
図2に示したように、高温軟化樹脂層は、「シート蓋10の中央付近に配置されたリング状の部分30a」と「カップ状容器5のフランジ部6に沿う領域に配置された円弧状の部分30b」との2箇所に配置されている。
【0016】
≪リング状部分30a≫
リング状部分30aは、カット線21の両端部21a、21bを覆うように形成されている。本発明においては、高温軟化樹脂層30aは、カット線21の少なくとも一端部21a又は21bを覆う領域(第1領域)に存在すればよい。
例えば、「一端21aのみを覆う円形領域」だけを設けてもよく、あるいは、「一端21aのみを覆う円形領域」と「他端21bのみを覆う円形領域」に、分離した別々の高温軟化樹脂層を配置してもよい。高温軟化樹脂層30aは、リング状である必要はないが、リング状に配置した場合には、どの方向にカットを入れてもカット線端部を保護できる点が優れている。
【0017】
≪円弧状部分30b≫
円弧状部分30bは、容器5のフランジ部6の一部領域(第2領域)に面して配置されている。
360°の全周範囲とはせずに、部分的に高温軟化樹脂層が存在しない領域を設ける。つまり、摘み部11に隣接する領域には、高温軟化樹脂層が存在しないようにする。その理由は、高温軟化樹脂層が蒸通した場合に吹き出す蒸気が、摘み部11を持つ指先に当たることを防ぐためである。
【0018】
シート蓋10の中心に対する円弧状部分30bの延在角度は、特に限定されないが、60°〜330°の範囲内とすることが好ましい。
延在角度が小さすぎると、蒸通が不十分となる。また、大きすぎると、指先を保護するために設ける上記の「高温軟化樹脂層が存在しない領域」を十分にとることができない。
また、高温軟化樹脂はフランジの1箇所に設けても良いし、複数箇所に設けても良い。
【0019】
なお、高温軟化樹脂層30a、30bは上記第1領域と第2領域をカバーして存在する限り、1つの連なった層であってもよい。
【0020】
≪高温軟化樹脂層30aの存在意義≫
高温軟化樹脂層30aがカット線21の少なくとも一端を覆っているので、これにより、落下時の耐破袋性を高めることができる。
すなわち、落下時の衝撃によりカット線21が破れる場合は、その両端部から破断が進行する。したがって、その部分が高温軟化樹脂層30aで覆われて補強されることで、耐破袋性が高まる。
【0021】
≪高温軟化樹脂層30bの存在意義≫
電子レンジ等で加熱調理する場合に、容器内温度の上昇とともに高温軟化樹脂層が軟化する。この影響を受けて、フランジ部付近で熱接着層40が伸びて裂け、この部分からも蒸通が行われる。
すなわち、カット線21における蒸通との相乗効果により(すなわち、内圧の上昇に伴い蒸通が生じる箇所を複数設けることで)、全体的な蒸通安定性が高まる。
【0022】
本発明において使用する「高温軟化樹脂層」は、60〜90℃の融点を有するものであり、これにより、電子レンジで加熱調理した際に、熱接着層40の部分的な破壊が起こり易くなる。
例えば、ポリアミド、硝化綿、ポリエチレンワックスを含有する樹脂を、「高温軟化樹脂層」として使用することができる。
なお、高温軟化樹脂層30a、30bを設けない場合であっても、後述するように、カット線が蛇行していることによって、少なくとも耐破袋性の向上という効果は得られる。
【0023】
≪基材層20および熱接着層40≫
基材層20は、一般のカップラーメン等に使用されているシート蓋の天面を構成するもの等、適宜の材料を使用する。熱接着層40についても、シート蓋をカップ状本体のフランジ部に接着固定するために一般的に知られたものを使用する。
【0024】
≪カット線の形状≫
カット線21は、基材層20の全厚を貫通して連続的形成したスリット状のものの他、部分的に切り込んだハーフカットや、ミシン目等、電子レンジ加熱時にこれに沿って基材層20が破断するものであればよい。また、カット線21の形成方法については、カッターあるいはレーザを利用する等、適宜の方法を採用することができる。
【0025】
図1、2に示した例においては、カット線21は、直線状の線分要素が複数屈曲して連結され、全体として蛇行する形態とされている。本発明においては、カット線は、一定周期をもって蛇行し、後述するような「交差しない」および「両端を結ぶ直線に沿って重ならない」という条件を満たす限り、他の形態であってもよい。また、例えばカップ径が90mmの場合は図3に示したように、周期をλ、振幅をAとするとき、λ/2=3〜5mm、2A=3〜5mmの関係が好ましい。周期や振幅が5mmより大きいと電子レンジ機種によっては電子レンジ加熱時に蒸気が抜けにくくなる場合があり、また3mmより小さいと落下衝撃に弱くなる場合がある。
【0026】
≪交差しないこと≫
交差するものとしては、例えば“+”形状を例示できるが、90°に交わるものだけを意味するのではない。本発明において、カット線は、交差しないものとする。これは、落下強度が弱くなるのを防ぐためである。
【0027】
≪両端を結ぶ直線に沿って重ならない≫
「両端を結ぶ直線に沿って重なる」とは、例えば、図6に示したような場合がこれに該当する。すなわち、カット線50の両端を結ぶ直線A上のある区間aに、カット線50の複数(ここでは3つ)の要素50a、50b、50cが存在している。したがって、「両端を結ぶ直線に沿って重ならない」とは、このようなものを排除する意味である。
後述する図3(a)〜(d)のいずれのカット線においても、両端を結ぶ直線上の任意の区間において、線要素が重複して存在することはない。このような重複が存在すると、熱接着層の伸びが阻害され、電子レンジ加熱時にうまく蒸通しなくなるので、本発明ではこれを排除している。
【0028】
図3(a)では、湾曲カーブを連ねて蛇行形状としたカット線を示している。図3(b)(c)では図1、2および図3(a)に示したものに対して追加的に、折返部29をカット線21、22の両端に形成している。折返部29が存在することで、蒸通安定性をさらに高めることができる。すなわち、折返部29が存在しない場合には、カット線21、22の端部をきっかけとした蓋材の裂けが比較的生じ易いので、折返部29を設けてこれを防止している。
【0029】
図3(d)に、他の形態を例示した。図3(d)のカット線23は、矩形形状を連ねて蛇行形状としている。また、カット線23の両端には折返線29を設けているが、省略することも可能である。
【0030】
カット線の幅は、特に限定されないが、例えばフランジ径90mmの場合、10〜30mm程度とすることが好ましい。なお、本明細書において、「カット線の幅」とは、図3(a)に示したように、カット線の両端間の距離を意味する。
カット線が短かすぎると蒸通が不十分となる場合があり、長すぎると強度(落下時の破袋性)が不十分となる場合があり、いずれも好ましくない。
【0031】
≪蛇行したカット線による耐破断性の向上≫
本発明においては、カット線が蛇行しているので、カップ状容器が不用意に落下した場合における、耐破袋性が高まる。これについて、図4を参照して説明する。
【0032】
カップ状容器が床に落下した場合、床からの衝撃により、シート蓋には、矢印a方向の圧縮力と、矢印b方向の引張力が作用する。
図4(a)、(b)では、直線状のカット線26が形成されている。カップ状容器が図4(a)の姿勢で落下した場合、圧縮力がカット線26を閉じる方向に作用するので問題ないが、図4(b)の姿勢で落下した場合には、引張力がカット線26を開ける方向に作用するため、衝撃により、カット線26が開封してしまう。
すなわち、カット線が直線状である場合、カップ状容器が落下する姿勢によっては、破袋の問題が生じる。
図4(b)の場合は、「カット線26」が「引張力方向」に引っ張られるため破袋が生じる。この姿勢では、カット線26のベクトル成分は、完全に「引張力方向」に直交している。
一方、図4(a)では、「カット線26の延在方向」と「引張力方向」が一直線状となっているので、破袋は生じない。この姿勢では、カット線26のベクトル成分は、完全に「引張力方向」と一直線状である。
【0033】
要するに、カット線26のベクトル成分を考えて、当該ベクトル成分が「引張力方向」に交差する度合いが大きい程、破袋が生じやすくなる。
【0034】
図4(c)は、本発明による蛇行したカット線21が形成された例を示している。カット線が蛇行しているため、カップ状容器がどのような姿勢で落下した場合でも、カット線21のベクトル成分は、少なくとも部分的には「引張力方向」に対して交差することとなるので、引張力が分散されることになる。
したがって、カップ状容器がどのような姿勢で落下した場合であっても、破袋を抑止する効果が認められる。
【0035】
このように、カット線が蛇行することに起因して、破袋を抑止する効果が得られるので、図1、2に示した具体例から高温軟化樹脂層30a、30bを省略することも可能である。
ただ、高温軟化樹脂層30aを設けることで、耐破袋性をさらに高めることができ、高温軟化樹脂層30bを設けることで、蒸通安定性が高まるというメリットが追加される。
【実施例】
【0036】
本発明の有効性を検証するために、以下に説明するように、「実施例1〜7」および「比較例1〜3」を作製して、比較評価を行った。各シート蓋を図5に示したが、図5においては、摘み部11(図2参照)の図示は省略している。
【0037】
≪実施例1:図5(a)≫
2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、厚さ12μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、厚さ15μmのONY(延伸ナイロン)フィルム、厚さ50μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製、GHC)を、ドライラミネーションにより順次積層した。
以上のようにして作成した積層包装材を略円形に打ち抜いてシート状蓋を構成し、カップ状容器の上部開口をこれで封止した。カップ状容器内には、コーンポタージュ150gを充填した。この後、蓋材の天面に炭酸ガスレーザを照射して、蓋材天面のほぼ中央に、ハーフカットによるカット線を入れた。
カット線は、図3(a)に示した「湾曲カーブが蛇行した形態」のもので、そのサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=5mm
(3)λ/2=5mm

≪実施例2:図5(b)≫
カット線の形状を図3(d)のようにした以外は実施例1と同じ構成。
カット線は、「矩形形状を連ねた蛇行形状」のもので、そのサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=5mm
(3)λ/2=5mm

≪実施例3:図5(c)≫
厚さ15μmのONY(延伸ナイロン)フィルムの片面に、グラビア印刷法により、図5(c)に示したのと同じパターン(カット部の一端を覆う直径20mmの円状)で、高温軟化樹脂層を約1.0g/mの塗工量で印刷した(灰色で示した円形領域)。
その後、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、厚さ12μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムをONYフィルムの未印刷面側に、50μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製、GHC)をONYフィルムの印刷面側に、ドライラミネーションにより積層した。
以上のようにして作成した積層包装材を略円形に打ち抜いてシート状蓋を構成し、カップ状容器の上部開口をこれで封止した。カップ状容器内には、コーンポタージュ150gを充填した。この後、蓋材の天面に炭酸ガスレーザを照射して、蓋材天面のほぼ中央に、ハーフカットによるカット線を入れた。
カット線は、図3(a)に示した「湾曲カーブが蛇行した形態」のもので、そのサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=5mm
(3)λ/2=5mm

≪実施例4:図5(d)≫
高温軟化樹脂層の印刷パターンを図5(d)(中央部:直径15mmと40mmの間のリング状)、カット線形状を図3(d)のようにした以外は実施例3と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=5mm
(3)λ/2=5mm
(4)両端の折返部:3mm

≪実施例5:図5(e)≫
カット線のサイズを下記のようにした以外は実施例4と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=3mm
(3)λ/2=5mm
(4)両端の折返部:3mm

≪実施例6:図5(f)≫
高温軟化樹脂層の印刷パターンを図5(f)(中央部:直径15mmと40mmの間のリング状、フランジ部:幅10mm 90°の円弧状)、カット線形状を図3(c)のようにした以外は実施例3と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=4mm
(3)λ/2=5mm
(4)両端の折返部:直径2mm、270°

≪実施例7:図5(g)≫
高温軟化樹脂層の印刷パターンを図5(g)(中央部:直径15mmと40mmの間のリング状、フランジ部:幅10mm 90°円弧状を2箇所)、カット線形状を図3(d)のようにした以外は実施例3と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)幅:20mm
(2)2A=4mm
(3)λ/2=5mm
(4)両端の折返部:3mm
【0038】
また、カップ状容器は、ポリプロピレン製で、寸法は下記の通りであった。
(1)フランジ部の内径:90mm
(2)フランジ部の外径:104mm
(3)容器の高さ :75mm
(4)容器底部の外径 :55mm
【0039】
≪比較例1:図5(h)≫
カット線形状を直線にした以外は実施例1と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)幅:40mm

≪比較例2:図5(i)≫
高温軟化樹脂層の印刷パターン(カット部の一端を覆う直径20mmの円状)とカット線形状を図5(i)のようにした以外は実施例3と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)直径20mm、隙間巾5mmの渦巻状

≪比較例3:図5(j)≫
高温軟化樹脂層の印刷パターン(中央部:直径15mmと40mmの間のリング状)とカット線形状を図5(j)のようにした以外は実施例3と同じ構成。
カット線のサイズは、下の通りであった。
(1)直径12mm、角度330°の円弧
【0040】
以上に説明した「実施例1〜7」および「比較例1〜3」について、次に説明する≪レンジ加熱評価の試験≫および≪落下耐性評価の試験≫を行い、その結果を表1に纏めた。
【0041】
【表1】

【0042】
表中の≪レンジ適性≫中の各項目の意味は、次の通りである。

蒸通
◎…ほとんど全て蒸通した。
○…蒸通しないものもあった。
×…蒸通しないものがたくさんあった。

裂け
○…ほとんど全て裂けなかった。
△…裂けたものもあった。
×…裂けたものがたくさんあった。


○…音なし。
△…音が発生する場合があった。
×…大きな破裂音が発生する場合があった。

フランジ蒸通位置
○…フランジから蒸通する時に決まった場所から蒸通した。
×…フランジから蒸通する時、ランダムな場所から蒸通した。
【0043】
表中の≪落下適性≫の意味は、次の通りである。

◎…破袋なし
○…10個中1〜2個破袋
△…10個中3〜5個破袋
×…10個中6個以上破袋
【0044】
≪レンジ加熱評価の試験≫
上記「実施例1〜7」および「比較例1〜3」を、市販の家庭用電子レンジ(500〜600W)、業務用電子レンジ(1500〜1900W)の合計8機種で、それぞれ10個ずつ評価して、蒸通状態を比較した。
【0045】
実施例1〜7および比較例1ではほとんどの機種で蒸通したが、比較例2,3ではほとんど蒸通しなかった。
カット線端部に折返部を設けた実施例2,4〜7では裂けが防止でき、更にフランジ部に高温軟化樹脂を設けた実施例6,7ではフランジ部蒸通位置が固定されて、更に機能性が上がった。
【0046】
≪落下耐性評価の試験≫
上記「実施例1〜7」および「比較例1〜3」について、フランジ部を下にし、床面とカット線が垂直になるように、50cmの高さ位置から2回側面落下させて、落下時における破袋の有無を確認した。
【0047】
実施例1〜7および比較例2,3では半数以上が破袋せず良好な結果がえられたが、比較例1では破袋数が多かった。
【0048】
レンジ加熱評価および落下耐性評価の両方を満足できるのは、実施例1〜7だけあるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形容器のシート蓋を説明する分離斜視図。
【図2】図1のシート蓋を上方から見た透視図。
【図3】カット線のパターンを例示説明する図。
【図4】落下時の耐破袋性について説明する図。
【図5】カット線と高温軟化樹脂印刷のパターン例を示す図。
【図6】カット線の形状について説明する図。
【符号の説明】
【0050】
5 カップ状容器
6 フランジ部
10 シート蓋
11 摘み部
20 基材層
21、22、23 カット線
29 折返部
30a、30b 高温軟化樹脂層
40 熱接着層
50 カット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面を有し、開口部を覆うようフランジ部に剥離可能に接着されたシート蓋で封止されてなる成形容器であって、
該シート蓋が基材層とその裏面の熱接着層から構成されており、該シート蓋の平面上の中央部エリアには、内圧上昇により上記基材層を破断するためのカット線が形成されており、
当該カット線は、交差することなく蛇行するとともに、当該カット線の両端を結ぶ直線に沿って重なることなく延在している、成形容器。
【請求項2】
上記カット線の両端部に折り返しを設けてなる、請求項1記載の成形容器。
【請求項3】
上記折り返し部を含めたカット線の少なくとも一端部を覆う位置に高温軟化樹脂層が、基材層と熱接着層の間に配置されてなる、請求項1または2記載の成形容器。
【請求項4】
上記折り返し部を含めたカット線の両端を覆う位置に高温軟化樹脂層が、基材層と熱接着層の間にドーナッツ状に配置されてなる、請求項1または2記載の成形容器。
【請求項5】
摘み部が設けられている箇所を除いた上記フランジ部の少なくとも1ヶ所に高温軟化樹脂層が、基材層と熱接着層の間に配置されてなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形容器。
【請求項6】
成形容器がカップ状容器であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−120224(P2009−120224A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295461(P2007−295461)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】