説明

成形板の製造方法および製造装置

【課題】成形板の端面を研磨することなく、滑らかな短面を有する成形板を得ることができる成形板の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】溶融状態の異なる種類の樹脂を、合流させてダイ12からシート状に押し出し、シート幅方向に本体用樹脂と廃棄用樹脂とが交互に配列された樹脂シート11を形成する押し出し工程と、樹脂シート11をニップローラ16と冷却ローラ14との間でニップして樹脂シート11を冷却固化した後、冷却ローラ14から剥離する冷却固化工程と、冷却固化した樹脂シート11を幅方向に切断する切断工程20と、切断された樹脂シート11を本体用樹脂と廃棄用樹脂とに剥離する剥離工程22とを備え、本体用樹脂から所望サイズに成形された複数枚の成形板を製造することを特徴とする成形板の製造方法および装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形板の製造方法および製造装置に関し、特に、多面取りする場合に有用で、成形板の端面が滑らかな成形板の製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から押し出し成形法によって、厚さ数mmの押し出し成形板の製造が行われている。一般的には、幅方向に厚みが均一な板を製造することが多いが、下記の特許文献1には、幅方向に厚みの分布があるような押し出し板を製造する方法が記載されている。このような押し出し成形法により成形された押し出し成形板は後工程において耳部(樹脂膜の幅方向端部)が所望の厚みを得られにくいため、裁断され成形板が製造されている。
【0003】
本出願人は、後工程において裁断される耳部のリサイクル性を向上させ、かつ、押し出し成形板の生産性を向上させるため、下記の特許文献2に記載する樹脂膜の形成方法および装置を提案した。この形成方法および装置は、樹脂膜の中央部用樹脂で形成される樹脂膜本体部の幅方向両端部に端部用樹脂を積層させ、樹脂膜本体部の幅方向端部を端部用樹脂で覆い込むようにして樹脂膜を形成している。この形成方法および装置によれば、樹脂膜を構成する中央部用樹脂と端部用樹脂との膜離れを防止しつつ、樹脂同士の境界の乱れを小さくすることができる。また、耳部のリサイクル性を向上させることができる。
【0004】
また、下記の特許文献3には、製品の幅を調節することができる押し出し方法および装置が記載されている。この押し出し方法および装置は、流路に調節可能にデッケルを設け、このデッケルを調節して、製品幅を維持している。
【特許文献1】特開2004−082359号公報
【特許文献2】特開2004−181753号公報
【特許文献3】特開平7−76038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、押し出し成形法によって成形される成形板のうち、導光板のような光学用途に使用される成形板の場合には、光を導入する成形樹脂板の端面の表面粗さが小さく滑らか(平坦)であることが重要になる。
【0006】
しかしながら、特許文献2または3の方法では、押し出し成形法で製造した樹脂シートを切断機で所定サイズにカットした後、カットした端面を滑らかにするために機械的な方法で端面を研磨する必要があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形板の端面を研磨することなく、滑らかな端面を有する成形板を得ることができると共に、成形板の製造コストを低減することができる成形板の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、溶融状態の本体用樹脂と廃棄用樹脂との異なる種類の樹脂を、合流させてダイからシート状に押し出し、該シート幅方向に前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とが交互に配列された樹脂シートを形成する押し出し工程と、前記樹脂シートをニップローラと冷却ローラとの間でニップして前記樹脂シートを冷却固化した後、前記冷却ローラから剥離する冷却固化工程と、前記冷却固化した樹脂シートを幅方向に切断する切断工程と、前記切断された樹脂シートを前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とに剥離する剥離工程と、を備え、前記本体用樹脂から所望サイズに成形された複数枚の成形板を製造することを特徴とする成形板の製造方法を提供する。
【0009】
請求項1によれば、本体用樹脂と廃棄用樹脂とで、異なる樹脂を用いているため、これらの樹脂から成形された樹脂シートを本体用樹脂と廃棄用樹脂とで容易に剥離することができる。したがって、樹脂シートの走行方向の切断工程を省略することができ、幅方向に切断し、樹脂シートを剥離することで、所望の大きさの成形板を得ることができる。また、廃棄用樹脂が剥がされた本体用樹脂は、滑らかな端面が形成される。したがって、導光板のように光学用途に成形板を使用する場合であっても、従来のように端面を研磨する必要がない。さらには、本体用樹脂から剥がした廃棄用樹脂を廃棄する場合も、廃棄用樹脂として安価な樹脂を使用することにより、従来のように高価な本体用樹脂を裁断した裁断片を廃棄する場合に比べ、コスト削減をすることができる。
【0010】
請求項2は請求項1において、前記冷却ローラは、所定形状の凹凸パターンが形成された型ローラであり、前記樹脂シートの冷却固化と一緒に前記樹脂シートに前記凹凸パターンを転写することを特徴とする。
【0011】
本発明の成形板の製造方法は、冷却ローラに凹凸パターンを形成することにより、幅方向に厚みが均一な板のみでなく、幅方向の厚みに分布がある(断面が不均一である)成形板の製造にも効果的に用いることができる。
【0012】
請求項3は、請求項1または2において、前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とは、溶解性パラメータが異なることを特徴とする。
【0013】
請求項3によれば、本体用樹脂と廃棄用樹脂は、溶解性パラメータが異なっているため、溶融状態において混合することがない。したがって、冷却固化した樹脂シートを容易に剥離することができる。また、廃棄用樹脂に本体用樹脂よりも価格の安い樹脂を用いることにより、製造コストを下げることができる。さらに、廃棄用樹脂には、本体用樹脂を混入しないようにすることができるため、廃棄用樹脂のリサイクル性を向上させることができる。
【0014】
請求項4は請求項3において、前記溶解性パラメータの差が0.8以上1.3以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項4によれば、本体用樹脂と廃棄用樹脂との溶解性パラメータの差が0.8以上1.3以下であるため、本体用樹脂と廃棄用樹脂の膜離れを防止することができる。また、樹脂同士が混合することを防ぐことができる、あるいは剥離時に無理な力が掛からず面が荒れないため、剥離工程後の樹脂シートの端面を平坦にすることができる。したがって、樹脂膜の端面の研磨工程を省略することができる。
【0016】
請求項5は請求項1から4いずれかにおいて、前記廃棄用樹脂は、前記本体用樹脂の幅方向の両端部を含む少なくとも三箇所以上に積層することを特徴とする。
【0017】
請求項5によれば、廃棄用樹脂は、本体用樹脂の幅方向の両端部を含む少なくとも三箇所以上に積層されている。押し出し成形においては、樹脂シートの幅方向の端部の厚みが薄くなる傾向にあるため、樹脂シートの端部を切断し、所望のサイズとして用いる。本発明においては、端部は廃棄用樹脂により成形されているため、廃棄用樹脂を剥離することで、容易に所望のサイズで成形板を製造することができる。また、幅方向に対して、本体用樹脂と廃棄用樹脂とを交互に配列し形成することで、廃棄用樹脂が配列された位置で、容易に本体用樹脂膜を切断し、端面のきれいな成形板を製造することができるため、多面取りを容易に行うことができる。
【0018】
請求項6は、請求項1から5いずれかにおいて、前記成形板は液晶表示装置の導光板であることを特徴とする。
【0019】
本発明の製造方法により製造された成形板は、研磨することなく切断した端面が滑らかであり、液晶表示装置の導光板として好適に用いることができる。
【0020】
本発明の請求項7は、前記目的を達成するために、溶融状態の本体用樹脂と廃棄用樹脂との異なる種類の樹脂を合流させる合流部を備え、合流した樹脂をダイ吐出口からシート状に押し出す押し出しダイと、前記樹脂シートをニップローラと冷却ローラとの間でニップして前記樹脂シートを冷却固化した後、前記冷却ローラから剥離する冷却固化手段と、前記冷却固化した樹脂シートを該幅方向に切断する切断手段と、前記切断された樹脂シートを前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とに剥離する剥離手段と、を備えたことを特徴とする成形板の製造装置を提供する。
【0021】
本発明の請求項8は請求項7において、前記冷却ローラは、所定形状の凹凸パターンが形成された型ローラであることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項9は請求項7または8において、前記本体用樹脂と前記溶解用樹脂とは、溶解性パラメータが異なることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項10は請求項9において、前記溶解性パラメータの差が0.8以上1.3以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項11は請求項7から10いずれかにおいて、前記合流部は、前記本体用樹脂が流れる流路の幅方向の両端部を含む少なくとも三箇所以上に備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項12は請求項7から11いずれかにおいて、前記成形板は液晶表示装置の導光板であることを特徴とする。
【0026】
請求項7から12は、請求項1から6に記載の成形板の製造方法を成形板の製造装置として展開したものであり、請求項7から12によれば、成形板の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、成形板の幅方向に製品として使用しない不要で安価な樹脂を積層することにより、成形板を成形後、不要な樹脂を剥離するだけで、容易に所望の大きさの成形板を製造することができる。したがって、走行方向に対する切断工程を省略することができる。また、成形板の走行方向の切断面を滑らかにすることができるので、研磨工程も省略することができる。また、廃棄用樹脂を複数設置することにより、成形板を多面取りする場合において、効果的に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面に従って、本発明に係る成形板の製造方法および製造装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0029】
≪成形板の製造装置≫
図1は、本発明における成形板の製造装置10の全体構成図である。
【0030】
図1に示すように、押し出しダイ12の下方には、冷却ローラ14とニップローラ16とが平行に隣接配置されている。また、冷却ローラ14を挟んでニップローラ16の反対側には、剥離ローラ18が冷却ローラ14に平行して隣接配置される。押し出しダイ12から押し出された溶融状態の樹脂シート11は、冷却ローラ14とニップローラ16との間、冷却ローラ14と剥離ローラ18との間を通って冷却ローラ14の周面に接触しながら走行し、剥離ローラ18の位置で、冷却ローラ14から離れる。これにより、冷却固化され自己支持性を有する樹脂シート11が製造される。その後、切断手段20(レーザーなど)により、樹脂シート11を幅方向に切断した後、剥離手段22により、切断された樹脂シート11の上下方向から力を加える。これにより、走行方向に樹脂シートを剥離し、成形板29を製造する。
【0031】
図2は、押し出しダイ12の概略図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図であり、樹脂シートの幅方向に、廃棄用樹脂、本体用樹脂、廃棄用樹脂、本体用樹脂、廃棄用樹脂の順に配列した一例で説明する。図2に示すように、本発明における押し出しダイは、本体用樹脂のダイブロックの内部に廃棄用樹脂のダイブロックが内蔵された構造に構成される。
【0032】
押し出しダイ12内には、樹脂シート11を形成する本体用樹脂Aが流れる本体用樹脂流路32と、樹脂シート11の幅方向の両端部および中央部を形成する廃棄用樹脂Bが流れる廃棄用樹脂流路34と、本体用樹脂流路32と廃棄用樹脂流路34が合流する合流部36とが備えられている。また、合流部36では、本体用樹脂流路32と廃棄用樹脂流路34が等しい太さで合流している。これにより、形成される樹脂シート11の本体用樹脂と廃棄用樹脂が同じ厚みで形成することができる。したがって、本体用樹脂と、廃棄用樹脂の端面を厚み方向に垂直に接合することができるため、剥離工程後の本体用樹脂の端面を滑らかにすることができ、その後の研磨工程を省略することができる。
【0033】
本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bの合流は、図2に示すように、各樹脂を本体用樹脂流路32と廃棄用樹脂流路34に供給し、各樹脂を同じ方向に走行させながら合流部36で合流させる。これにより、本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bが合流する際に、樹脂の界面がいずれかに移動することなく、走行方向と平行に界面を形成することができる。
【0034】
図3に、押し出しダイ12の側断面図を示す。図3(a)は、図2(b)中のa−a’断面図(本体用樹脂流路)、図3(b)はb−b’断面図(廃棄用樹脂流路)である。本体用樹脂流路32は、図3(a)に示すように、主としてマニホールド28とスリット30とで、構成され、押し出しダイ12内に供給された本体用樹脂Aはマニホールド28で押し出しダイ12の幅方向(樹脂膜11の幅方向)に拡流された後、スリット30を通って外部に押し出される。
【0035】
図3(b)に示すように廃棄用樹脂流路34においても同様に、マニホールド42内で廃棄用樹脂Bが蓄えられスリット44を通って外部に押し出される。合流部36は、本体用樹脂流路32と廃棄用樹脂流路34のスリット30、44同士で形成される。また、本体用樹脂Aの中央に形成される廃棄用樹脂Bの流路である廃棄用樹脂流路34についても同様にマニホールドとスリットから形成される。中央部に形成される廃棄用樹脂流路34のマニホールドについては、本体用樹脂流路32内に形成される。この場合、廃棄用樹脂Bの供給口は、図2に示すように押し出しダイ12の正面から供給することができる。
【0036】
なお、図2においては、廃棄用樹脂流路34を樹脂膜11の端部と中央部に形成したが、本発明においては、これに限定されず、製造する樹脂膜の大きさなどにより、廃棄用樹脂流路34の位置、個数を適宜選択することが可能である。また、廃棄用樹脂流路34は、樹脂膜の両端部に設けることが好ましい。成形された樹脂膜の端部は、所望の厚みより薄くなることが多いため、端部を切断して成形板が製造される。したがって、樹脂膜の端部を廃棄用樹脂Bとすることにより、不要な部分を容易に切断し、本体用樹脂から製造された樹脂シートを成形板として用いることが可能となる。
【0037】
樹脂膜成形手段15は、回転する一対の冷却ローラ14及びニップローラ16を備える。このローラ間に、押し出しダイ12からシート状に吐出された溶融状態の樹脂シート11が供給され、冷却ローラ14上で冷却固化され、剥離ローラ18の位置で剥離される。この冷却ローラ14は、所定形状の凹凸パターンが形成された型ローラであり、樹脂シートの冷却固化と一緒に樹脂シートに凹凸パターンを転写することが可能である。また、幅方向に厚みが均一な成形板を製造する場合は、凹凸パターンの形成されていない型ローラを用いることも可能である。
【0038】
切断手段20は、剥離ローラ18により、冷却ローラ14から剥離した冷却固化した樹脂シート11を幅方向に切断する手段である。切断手段20としては、COレーザー、YAGレーザー等のオンラインカッティングにより切断することが好ましい。オンラインカッティングにより切断することで、短時間で、容易に切断することが可能である。また、切断面も滑らかにすることができる。
【0039】
剥離手段22は、幅方向に切断された樹脂シート11を、本体用樹脂と廃棄用樹脂とに、剥離する手段である。この剥離手段22により剥離された本体用樹脂が、成形板29となる。本体用樹脂と廃棄用樹脂は、溶解性パラメータが異なるため、力を加えることで、容易に剥離することが可能である。したがって、本体用樹脂を重力下向きに力を加え、廃棄用樹脂に反対方向の力である重力上向きの力を加えることにより、容易に剥離することが可能である。
【0040】
≪成形板の製造方法≫
次に、上記の如く形成された成形板の製造装置10を用いて本発明の製造方法を説明する。
【0041】
まず、本発明の成形板の製造方法および製造装置に用いられる樹脂について説明する。本発明の製造方法は、本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bを用いて行い、本体用樹脂Aは、押し出し成形板の原料となる樹脂であり、廃棄用樹脂Bは、押し出し成形板の製造を補助する樹脂であり製造後に廃棄される樹脂である。本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bは、溶解性パラメータ(以下、「SP値」ともいう。)が異なっていることが好ましく、より好ましくは溶解性パラメータの差が0.8以上1.3以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以上1.2以下である、溶解性パラメータを上記範囲内とすることにより、溶融状態において混合することがなく、また、冷却固化工程、切断工程において、本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bの膜離れを防止することができる。また、樹脂同士が混合することがない、あるいは剥離時に無理な力が掛からず面を荒らすことがないため、本体用樹脂と廃棄用樹脂の端面の平坦性を維持することができる。したがって、研磨することなく、入射面として用いることができるため、研磨工程を省略することができる。また、膜離れを防止することにより、剥離工程において、外力を押し出し成形板に加えるまで、樹脂膜本体部と樹脂膜廃棄部との接着性を維持することができる。
【0042】
このような樹脂として、本体用樹脂Aとして、ポリメチレンメタクリレート樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、シクロオレフィン樹脂などを用いることができるが、透明性があり導光板等に用いることができる樹脂であれば特に限定されるものではない。また、廃棄用樹脂Bとして、ポリエチレン樹脂、ポリプレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などを用いることができる。この中でも、本体用樹脂Aとして、ポリメチレンメタクリレート樹脂、ポリカーボネイト樹脂を用いるのが好ましく、廃棄用樹脂Bとして、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いるのが好ましい。また、本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bの組み合わせとして、ポリメチレンメタクリレート樹脂とポリエチレン樹脂を用いるのが最も好ましい。また、樹脂としては、複数の樹脂を用いることも可能であるが、リサイクル性を向上させるためには、廃棄用樹脂Bは、単独の樹脂で行うことが好ましい。また、押出しが可能な樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0043】
押し出し工程は、これらの樹脂を押し出しダイ12から押し出すことにより行う。本体用樹脂Aは、本体用樹脂供給口46から注入され、マニホールド28内で、樹脂シートの幅方向に拡流され、スリット30を通って押し出される。同様に、廃棄用樹脂Bは、廃棄用樹脂供給口48から注入され、マニホールド42内で、樹脂シートの幅方向に拡流され、スリット44を通って押し出される。そして、スリット30、44を通過する際に、本体用樹脂Aと廃棄用樹脂Bが合流部36で合流し、接合され押し出される。この時、樹脂膜の押し出し速度を高速で行うと、膜離れし易くなり、本体用樹脂と廃棄用樹脂が接着しにくくなるため、速度を制御して行うことが好ましい。具体的には、樹脂の種類にもよるが、0.2cm/s以上20cm/s以下で行うことが好ましい。
【0044】
押し出しダイ12から押し出された樹脂シート11は、樹脂膜成形工程により、ニップローラ16と冷却ローラ14との間でニップして、冷却ローラ14により冷却固化され、冷却固化した樹脂シート11が形成される。そして、剥離ローラ18により、冷却ローラ14から剥離され、次工程の切断工程が行われる。
【0045】
切断工程は、樹脂シート11を幅方向に切断する工程である。切断工程は、上述したオンラインカッティングにより切断することが好ましい。オンラインカッティングにより切断することで、切断面を滑らかにすることができ、研磨工程を省略することができる。
【0046】
最後に、剥離手段により、切断された樹脂シートの本体用樹脂と廃棄用樹脂の剥離を行う。これにより、本体用樹脂が、廃棄用樹脂との境界面が滑らかで平坦な成形板29となる。図4に剥離工程の工程図を示す。本体用樹脂シート11Aと廃棄用樹脂シート11Bは、溶解性パラメータの異なる樹脂を用いて製造しているため、外力を加えることで、容易に剥離することが可能である。したがって、図3(a)に示すように、本体用樹脂シート11Aを上側からローラ40で力を加え、廃棄用樹脂シート11Bを下側からローラ40で力を加えることにより、図3(b)に示すように、容易に剥離することが可能である。したがって、本発明においては、流れ方向の切断工程を省略することができるので、生産性を向上させることができる。
【0047】
また、溶解性パラメータが異なるため、樹脂同士が混合することなく、成形板を製造することができるので、剥離後の境界面を滑らかにすることができる。したがって、研磨工程を行うことなく、入射面として用いることができ、液晶表示装置の導光板として、好適に用いることができる。また、研磨工程も省略することができ、生産性を向上させることができる。
【0048】
なお、廃棄用樹脂を幅方向に複数設置することにより、成形板のサイズの調節が可能である。また、切断工程を行うことなく、多数の押し出し成形板を製造することができ、多面取りの場合にも有効である。
【0049】
また、本実施の形態では、樹脂膜11のみで、押し出し成形板を製造する例で説明したが、支持体にラミネートしたフィルム状積層体にも用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例により本発明の実質的な効果を説明する。
【0051】
[比較例1]
逆楔形状の押し出し成形板を幅方向に2面取ることができるニップロールを用いて押し出し成形板の製造を行った。樹脂は、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂に、光散乱体樹脂を混入させた樹脂を用いた。その後、オンラインで幅方向、流れ方向に切断し、所望の大きさの導光板を得た。その後、断面がRa:0.05μmとなるように、機械研磨方式にて、切断面の研磨を行い、押し出し成形板を製造した。
【0052】
<試験例1> 本体溶樹脂:PMMA樹脂
[実施例1〜3、比較例1〜4]
比較例1と同じ押し出し成形板を得るために、同じニップローラを用いて成形を行った。本体用樹脂として、比較例1と同様にPMMA樹脂に光散乱樹脂を混入させた樹脂(SP値:9.2)を用いた。また、幅方向に3箇所(両端、中央)に廃棄用樹脂として表1に示す樹脂を積層した。なお、廃棄用樹脂中には光散乱体を混入させずに使用した。押し出し成形後、オンラインでCOレーザーにて幅方向にカッティングし、廃棄用樹脂を剥離することにより、所望の大きさの導光板を得た。結果を表1に示す。また、使用した樹脂のSP値を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
<試験例2> 本体用樹脂:ポリスチレン樹脂
本体用樹脂のポリスチレン樹脂を用い、廃棄用樹脂として表3に示す樹脂を用いた以外は、試験例1と同様の方法により導光板を製造した。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
<結果>
比較例1は、従来の方法であるが、流れ方向に切断し、切断面の研磨も必要であり、生産性が実施例1と比較して劣る結果となった。また、実施例1の樹脂膜本体部と樹脂膜廃棄部の境界の粗度Raは0.02μmであり、研磨工程をすることなく、比較例1よりも小さい断面粗さを示した。
【0058】
また、溶解パラメータの差が0.8より小さい比較例2〜4および6は、本体用樹脂と廃棄用樹脂が剥離せず密着していた。また、樹脂パラメータの差が1.3より大きい比較例5、7では、樹脂が冷却後すぐに剥がれてしまし、操作性が困難であった。
【0059】
以上より、溶解性パラメータの差は0.8以上1.3以下とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】成形板の製造装置の全体構成図である。
【図2】押し出しダイの概略図である。
【図3】押し出しダイの側断面図である。
【図4】剥離工程を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0061】
10…成形板の製造装置、11…樹脂シート、11A…本体用樹脂シート、11B…廃棄用樹脂シート、12…押し出しダイ、14…冷却ローラ、15…樹脂膜成形手段、16…ニップローラ、18…剥離ローラ、20…切断手段、22…剥離手段、28、42…マニホールド、30、44…スリット、32…本体用樹脂流路、34…廃棄用樹脂流路、36…合流部、40…ローラ、46・・・本体用樹脂供給口、48廃棄用樹脂供給口、A…本体用樹脂、B…廃棄用樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の本体用樹脂と廃棄用樹脂との異なる種類の樹脂を、合流させてダイからシート状に押し出し、該シート幅方向に前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とが交互に配列された樹脂シートを形成する押し出し工程と、
前記樹脂シートをニップローラと冷却ローラとの間でニップして前記樹脂シートを冷却固化した後、前記冷却ローラから剥離する冷却固化工程と、
前記冷却固化した樹脂シートを幅方向に切断する切断工程と、
前記切断された樹脂シートを前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とに剥離する剥離工程と、を備え、前記本体用樹脂から所望サイズに成形された複数枚の成形板を製造することを特徴とする成形板の製造方法。
【請求項2】
前記冷却ローラは、所定形状の凹凸パターンが形成された型ローラであり、前記樹脂シートの冷却固化と一緒に前記樹脂シートに前記凹凸パターンを転写することを特徴とする請求項1に記載の成形板の製造方法。
【請求項3】
前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とは、溶解性パラメータが異なることを特徴とする請求項1または2に記載の成形板の製造方法
【請求項4】
前記溶解性パラメータの差が0.8以上1.3以下であることを特徴とする請求項3に記載の成形板の製造方法。
【請求項5】
前記廃棄用樹脂は、前記本体用樹脂の幅方向の両端部を含む少なくとも三箇所以上に配置することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の成形板の製造方法。
【請求項6】
前記成形板は液晶表示装置の導光板であることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の成形板の製造方法。
【請求項7】
溶融状態の本体用樹脂と廃棄用樹脂との異なる種類の樹脂を合流させる合流部を備え、合流した樹脂をダイ吐出口からシート状に押し出す押し出しダイと、
前記樹脂シートをニップローラと冷却ローラとの間でニップして前記樹脂シートを冷却固化した後、前記冷却ローラから剥離する冷却固化手段と、
前記冷却固化した樹脂シートを該幅方向に切断する切断手段と、
前記切断された樹脂シートを前記本体用樹脂と前記廃棄用樹脂とに剥離する剥離手段と、を備えたことを特徴とする成形板の製造装置。
【請求項8】
前記冷却ローラは、所定形状の凹凸パターンが形成された型ローラであることを特徴とする請求項7に記載の成形板の製造装置。
【請求項9】
前記本体用樹脂と前記溶解用樹脂とは、溶解性パラメータが異なることを特徴とする請求項7または8に記載の成形板の製造装置。
【請求項10】
前記溶解性パラメータの差が0.8以上1.3以下であることを特徴とする請求項9に記載の成形板の製造装置。
【請求項11】
前記合流部は、前記本体用樹脂が流れる流路の幅方向の両端部を含む少なくとも三箇所以上に備えることを特徴とする請求項7から10いずれかに記載の成形板の製造装置。
【請求項12】
前記成形板は液晶表示装置の導光板であることを特徴とする請求項7から11いずれかに記載の成形板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−72915(P2009−72915A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241178(P2007−241178)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】