説明

成形用加飾シート

【課題】 真空蒸着により金属を蒸着した層を含む加飾シートであっても、効率よく生産できる加飾シートの提供。
【解決手段】 表層、加飾層、基材層をこの順で有する成形用加飾シートにおいて、加飾層がプラスチックフィルムにインジウム、アルミ、銀、錫、ニッケル又はこれらの組合せからなる金属を真空蒸着した層を含むことを特徴とする成形用加飾シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型用加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品の成形にあたって、金属蒸着された加飾シートを金型に挿入し、射出成型と同時に加飾シートの転写を行い、プラスチック成形品に鍍金と同等な金属調の光沢を付与する加飾シートが知られている。例えば、特開2005−262447号公報(特許文献1)には、アクリル系樹脂フィルムに厚さ2μmのバリア層を設け、このバリア層の上に金属蒸着をしたことを特徴とする加飾シートが開示されている。しかし、蒸着前に、このようなバリア層を塗布する工程を付け加えると、バリア層の塗布ムラ、塗布工程における異物混入等で蒸着不具合が発生する危険が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、加飾シートを製造する場合、表層や基材層に使用されるフィルムに対して真空蒸着が行なわれてきた。加飾シートの表層フィルムや基材層フィルムは、破れ防止、しわ防止、深み感、光沢感の発現のために、ある程度、厚くする必要がある。これらのフィルムは破れ防止のため、バッチ式で金属層の真空蒸着が行なわれてきた。バッチ式の真空蒸着においては、フィルムを巻き取ったロールの状態で真空蒸着装置内に入れられ、このロールを巻きだして真空蒸着して、再度フィルムを巻き取って蒸着フィルムが製造される。この際、スペースの関係でロールの巻取り径が一定範囲に限定される。しかし、表層フィルム、基材フィルムは先述の理由から比較的厚く構成されるため、1バッチ当たりの処理長さが短くなり処理効率が悪いという問題を有していた。そこで、本発明は、真空蒸着により金属を蒸着した層を含む加飾シートであっても、効率よく生産できる加飾シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、表層、加飾層、基材層からなる成形用加飾シートにおいて、加飾層がプラスチックフィルムにインジウム、アルミ、銀、錫、ニッケル又はこれらの組合せからなる金属を真空蒸着した層を含むことを特徴とする成形用加飾シートが提供される。
【0006】
本発明において、加飾層のプラスチックフィルムの真空蒸着させる面の平滑度(表面粗さ)は、十点平均高さで1μm以下であってもよい。
【0007】
本発明において、真空蒸着させる面の平滑度(表面粗さ)が十点平均高さで1μm以下である加飾層のプラスチックフィルムはポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム又はアクリルフィルムであってもよい。
【0008】
本発明において、加飾層のプラスチックフィルムは、印刷層を有するフィルムであってもよい。
【0009】
本発明において、加飾層のプラスチックフィルムの厚さは10μm〜60μmであってもよい。
【0010】
本発明において、基材層はポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル−スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂よりなる単層フィルム又は積層フィルムであってもよい。
【0011】
本発明において、基材層の厚さは90μm〜900μmであってもよい。
【0012】
本発明において、基材層がアクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤から選ばれる粘着剤であってもよい。
【0013】
本発明において、表層の120℃における5%モジュラスは、加飾層のプラスチックフィルムの120℃における5%モジュラスより低くてもよい。
【0014】
本発明において、表層はポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系フィルムであってもよい。
【0015】
本発明において、表層のポリメチルメタクリレートの重量平均分子量は10000以上であってもよい。
【0016】
本発明において、表層のアクリル系フィルムの厚さは75μm〜125μmであってもよい。
【0017】
本発明において、表層上に更にハードコート層が設けられていてもよい。
【0018】
本発明において、ハードコート層は紫外線硬化樹脂からなっていてもよい。
【0019】
本発明において、紫外線硬化樹脂はウレタン系オリゴマーであってもよい。
【0020】
本発明において、最上層に更に保護層を有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る加飾シートによれば、真空蒸着により金属を蒸着した層を含む加飾シートであっても、効率よく生産できるという効果を奏する。
【0022】
加飾層のプラスチックフィルムの真空蒸着させる面を十点平均高さで1μm以下とすることにより、プラスチックフィルムの表面に金属を蒸着し易くなるため、より生産効率が高くなるという効果を奏する。加飾層のプラスチックフィルム表面の十点平均高さが1μm以下であるのは、少なくとも片面であればよく、両面であってもよい。加飾層のプラスチックフィルム表面の十点平均高さが1μm以下であれば、金属を蒸着する層は、表層側でも基材層側でもどちらでもよい。
【0023】
加飾層のプラスチックフィルムに印刷層を設けることにより、加飾シートに色彩を加えたり、ヘアライン調を出したりすることが可能となる。また、プラスチックフィルムへの印刷によれば、薄いフィルムを使用することが可能であるのでスペースをとらず、より効率的に印刷できるという効果を奏する。
蒸着と印刷の両方を行う場合、加飾層のプラスチックフィルム表面の十点平均高さが1μm以下である表層側に金属を蒸着した層を設け、反対面(基材層側)に印刷層を設ける。印刷面にコロナ処理することが好ましい。一方、加飾層のプラスチックフィルム表面の十点平均高さが1μm以下である基材層側に金属を蒸着した層を設け、反対面(表層側)に印刷層を設ける。印刷面にコロナ処理することが好ましい。
金属を蒸着した層と印刷層を重ねて形成する場合、印刷層の上に金属を蒸着した層を設ける。金属を蒸着した層は表層側でも基材側でも何れも可能である。一方、金属を蒸着した層の上に印刷層を設けると、金属を蒸着した層の鏡面性が低下したり、白化しやすくなる。
【0024】
加飾層のプラスチックフィルムの厚さを10μm〜60μmとすることにより、より一層生産効率が高くなるという効果を奏する。
【0025】
本発明において、基材層にポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル−スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を選択することにより、破れ防止、しわ防止効果を得ることができる。
【0026】
基材層の厚さを90μm〜900μmとすることにより、より一層破れ防止、しわ防止効果を得ることができる。
【0027】
基材層を粘着剤とすることにより、容易に成形品の表面に加飾シートを貼り付けることが可能となる。
【0028】
表層の120℃における5%モジュラスは、加飾層のプラスチックフィルムの120℃における5%モジュラスより低くすることにより、型内真空成形時に変形しやすく且つフィルム状を維持できるという効果を奏する。
【0029】
表層としてポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリルフィルムを選択することにより、表層の透明性を高めることができるという効果を奏する。また、重量平均分子量を10000以上とすることにより、高い表面硬度を有するアクリルフィルムとすることができる。アクリル系フィルムの厚さを75μm〜125μmとすることにより、深みのある金属光沢性、及び、良好な成形性を得られるという効果を奏する。
【0030】
本発明において、表層上に更にハードコート層が設けられることによって、成形性と耐傷付き性、耐摩耗性の相反する機能を付与するという効果を奏する。熱硬化樹脂を用いる場合には加熱が必要となるが、ハードコート層として紫外線硬化樹脂を使用することにより、瞬時に硬化することができる。また、紫外線硬化樹脂として、ウレタン系オリゴマーを使用することにより、伸張性及び表面の耐傷付性を有するハードコート層とすることができる。
【0031】
最上層に、保護層を設けることにより、成形時の熱ダメージにより、白化や光沢の低下が発生することを抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明では、表層、加飾層、基材層からなる成形用加飾シートにおいて、加飾層がプラスチックフィルムに金属を真空蒸着した層を含むことを特徴とする。本発明にかかる加飾シートは、表層、加飾層、基材層を必須構成とする。更に、ハードコート層、保護層、接着剤層が設けられていてもよい。
【0033】
本発明に係る加飾層は、プラスチックフィルムと金属層を含む。この他、印刷層を含んでいてもよい。従来の構成では、表層や基材層は、その層が果たす役割上、厚く形成しなければならない等、他の要求特性によってその形状・性質を変化させる必要があるが、本発明では、このような加飾層を設けることにより、加飾層のプラスチックフィルムは、単に金属蒸着や印刷に耐えうる形状や性質であれば足りるため、例えば、当該層を薄く形成することが可能であり、後述する真空蒸着の際など、スペースが限られるような製造工程が含まれていても、効率的に製造することが出来る。
金属層を構成する金属は、特に限定されないが、インジウム、アルミ、銀、錫、ニッケルなど公知のものが使用できるが、特にインジウムが好ましい。
【0034】
本発明における加飾層のプラスチックフィルムは、真空蒸着させる面の平滑度(表面粗さ)が十点平均高さで1μm以下であることが好ましい。フィルムの平滑度(表面粗さ)が十点平均高さで1μmより大きい値になると、蒸着面の鏡面性が低下し、ぼやける、シャープさがなくなる、つやが出なくなる、光沢感がなくなる等の現象が生じる。
【0035】
本発明における加飾層のプラスチックフィルムは、特に限定されないが、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム又はアクリルフィルムが好ましい。
【0036】
本発明における加飾層のプラスチックフィルムの厚さは特に限定されないが、10μm〜60μmが好ましい。10μmより薄い場合では蒸着処理時に破れたりしわになったりすることがあり、60μmより厚い場合では蒸着のバッチ当たりの処理長さが短くなり生産性が低下する。このような薄いプラスチックフィルムを使用することにより、真空蒸着においても生産効率が低下しにくくなるという効果を奏する。
【0037】
本発明における加飾層の印刷層は、シルク印刷又はグラビア印刷等により設けられたインキ層である。印刷層を設けることにより、金属層の色彩を変化させたり、ヘアライン調とすることができる。また、印刷層は、プラスチックフィルムの金属層と反対の面に形成されるのが好適である。
【0038】
本発明において、基材層は、加飾層のプラスチックフィルムの蒸着層が形成されていない面に設けられていることが好適である。
【0039】
本発明において、基材層は、フィルムであってもよいし、粘着剤であってもよい。より具体的には、基材層はポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル−スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂よりなる単層フィルム又は積層フィルムであってもよい。基材層は、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤から選ばれる粘着剤であってもよい。基材層の厚さは特に限定されないが、90μm〜900μmが好ましい。90μmより薄い場合では破れやすくなり、900μmより厚い場合では熱成形が困難になる。
【0040】
本発明において、表層は、加飾層のプラスチックフィルムの蒸着層が形成されている面に設けられていることが好適である。
【0041】
本発明において、表層の120℃における5%モジュラスは、特に限定されないが、加飾層のプラスチックフィルムの120℃における5%モジュラスより低いほうが、型内真空成形時に変形しやすく且つフィルム状を維持できるため好ましい。
【0042】
本発明において、表層は特に限定されないが、ポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系フィルムが好ましい。ポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系フィルムとしては、例えば、三菱レイヨン製の商品名アクリプレンや、住友化学製の商品名テクノロイ等があるが特にこれに限定されない。
【0043】
本発明において、ポリメチルメタクリレートの重量平均分子量は特に限定されないが、10000以上が好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、1,000,000以下である。
【0044】
本発明において、表層のアクリル系フィルムの厚さは特に限定されないが、75μm〜125μmが好ましい。
【0045】
本発明において、表層の上に更にハードコート層を設けられていることが好適である。ここで、ハードコート層は特に限定されないが、例えば、ウレタン系オリゴマー、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した共重合系アクリレート等の紫外線硬化樹脂からなることが好適である。紫外線硬化樹脂からなるハードコート層を設けることにより、成形性と耐傷付き性、耐摩耗性の相反する機能を付与する。これらの紫外線硬化樹脂がウレタン系オリゴマーであることが特に好適である。
【0046】
本発明において、ハードコート層上に更に保護層が設けられていることが好適である。また、保護層は最上層に設けられていることが好適である。これにより、成形時の熱ダメージにより、白化や光沢の低下が発生することを抑制することができる。また、最終製品になるまで、保護層の役割も担うことができる。保護層としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の樹脂からなることが好適である。
【0047】
本発明において、それぞれの層を積層するための接着剤層が設けられていてもよい。接着剤層は特に限定されないが、例えば、加飾層として使用するプラスチックフィルムに対して蒸着した後に他の層を積層するため、加飾層と表層の間や、加飾層と基材層の間に形成されていることがある。例えば、接着剤層としては、特に限定されないが、例えば、ドライラミネート接着剤を使用することができる。また、当該接着剤に硬化剤が添加されていてもよい。
【0048】
本発明の加飾フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、加飾層のプラスチックフィルムに金属を真空蒸着する真空蒸着工程と、前記真空蒸着されたプラスチックフィルムと表層を貼り合わせる表層形成工程と、前記真空蒸着されたプラスチックフィルムと基材を貼り合わせる基材形成工程とを有する。更に、表層の上にハードコート層を形成するハードコート層形成工程や、保護層を設ける保護層形成工程を有していてもよい。
【0049】
真空蒸着工程は、加飾層のプラスチックフィルムに対して金属を真空蒸着する。ここで、真空蒸着はバッチ式で行われる。本発明においては、加飾層にプラスチックフィルムを一層設けて、このフィルムに対して真空蒸着を行なうことができるので、ロールの巻き取り径に比して長いフィルムを真空蒸着装置内に入れることができるため、1バッチあたりの処理長さを長くすることができ、処理効率を高めることが可能となる。
【0050】
表層形成工程において、加飾層のプラスチックフィルム表面あるいは真空蒸着した金属面に対して表層を貼り合わせる。尚、形成方法は、公知の技術を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、硬化剤を入れたドライラミネート接着剤を用いてドライラミネートによって設けることが好適である。この場合、加飾層と表層の間に接着剤層が形成される。また、接着剤の塗布方法は、特に限定されないが、グラビア、リバースグラビア、マイクログラビア、メイヤーバー方式が挙げられる。
【0051】
基材層形成工程において、加飾層のプラスチックフィルム表面あるいは真空蒸着した金属面に対して基材層を貼り合わせる。ここで、基材層形成工程は、前記表層工程の前に行われてもよい。尚、形成方法は、公知の技術を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、硬化剤を入れたドライラミネート接着剤を用いてドライラミネートによって設けることが好適である。この場合、加飾層と基材層の間に接着剤層が形成される。また、接着剤の塗布方法は、特に限定されないが、グラビア、リバースグラビア、マイクログラビア、メイヤーバー方式が挙げられる。基材層形成工程において、基材層が粘着剤層のみの場合、セパレーターに粘着剤を塗布し、加飾層のプラスチックフィルムに転写することにより基材層が形成される。あるいは、加飾層のプラスチックフィルムに粘着剤を塗布し、セパレーターを貼り合わせることにより基材層が形成される。基材層形成工程において、基材層がフィルムと粘着剤との組み合わせの場合、加飾層のプラスチックフィルムに対して基材層のフィルムを貼り合わせる。更に、セパレーターに粘着剤を塗布し、基材層のフィルムに転写することにより基材層が形成される。加飾層のプラスチックフィルムはコロナ処理等の前処理があることが好ましい。
【0052】
ハードコート層形成工程や、保護層形成工程は、公知の技術を用いて、ハードコート層や保護層を形成することができる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。諸特性の測定方法は次の通りである。
(1) 表面平滑度(表面粗さ)十点平均高さ(十点表面粗さ)
測定装置:高精度微細形状測定器 SURFCORDER ET4000A
(株)小坂研究所
解析システム:表面微細構造解析システム i−STAR31
(株)小坂研究所
評価方法:評価長さ=2.00mm、速度0.005mm/s、測定倍率50000
(2) 鏡面反射率
測定装置:反射率計 MODEL TR−1100AD
(有)東京電色
評価方法:JIS D5705
測定角度:照射角度45度
測定項目:正反射率(Rp)
尚、表1中の外観における○は、外観良好であり、△は外観にくもりがあることを意味する。
【実施例1】
【0054】
ポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ25μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の表面の十点平均高さが0.337μmの面に、インジウムを真空蒸着した。次に、アクリルフィルムの表面十点平均高さが0.138μmの面に硬化剤を入れたドライラミ接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ6μmとなるように塗布、乾燥後、ドライラミ接着剤面にポリエステルフィルムの真空蒸着した面をドライラミした。さらにポリエステルフィルムの真空蒸着面とは反対側の面に硬化剤を入れた接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ8μmとなるように塗布、ABSフィルムをラミネートして、加飾シートを作成した。
【0055】
参考例1
参考例1は実施例1のポリエステルフィルムを紙やすり#800にて表面を粗面化し、表面の十点平均高さが4.120μmの面にインジウムを真空蒸着した。その他は実施例1と同様にして加飾シートを作成した。
【0056】
参考例1の粗面化方法
◇装置
平面磨耗試験機 RT−200
株式会社大栄科学精器製作所
◇評価方法
曲面摩擦子に紙やすり#800を被せる
試験片上にけい砂7号を置く
荷重:1kg
スライドストローク:30mm
スライド往復速度:30回/分
試験回数:1往復
【0057】
参考例2
実施例1のポリエステルフィルムの代わりに二軸延伸ポリオレフィンフィルム(OP U−1、厚さ50μm、東セロ(株)製)の表面の十点平均高さが1.455μmの面にインジウムを真空蒸着した。その他は実施例1と同様にして加飾シートを作成した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
実施例1は50%以上の正反射率を示し、ぼやけがなく、シャープで、良好な光沢を示した。一方、参考例1と参考例2は正反射率が50%以下で、くもりが発生していた。
【0063】
参考例3〜5
参考例3〜参考例5に、フィルムの厚さを25μm、50μm、125μmと変えた蒸着フィルムをコア外径152.4mmのコアに巻き取った時、巻き取ったロールの巻取径がいくらになるかを表6に示す。この表から、例えば、スペースの関係で巻取り径427mmより多くは巻き取れない真空蒸着装置では一バッチで処理できる量はフィルムが薄いほど多いことがわかる。すなわちプラスチックフィルムは薄い方が、生産性の良いことがわかる。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【実施例2】
【0066】
実施例1の基材層をABSシート(黒)厚さ200μmから、ポリオレフィンシートであるPPシート(黒)厚さ500μmにした以外は、実施例1と同様にして実施例2を作成した。
【0067】
参考例6
実施例2の基材層をポリオレフィンシートであるCP RCX―21、厚さ50μmにした以外は、実施例2と同様にして参考例6を作成した。
【0068】
参考例7
実施例2の基材層をポリオレフィンシートであるPPシート、厚さ2mmにした以外は、実施例2と同様にして参考例7を作成した。
【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
【表9】

【0072】
○成形条件;
(1)成形機:超小型熱板圧空成形機 HPT−400型、(株)脇坂エンジニアリング
・成形条件:温度130℃、加熱時間6秒、真空圧空時間4秒
・形状:エンブレム形状
(2)成形機:射出成形機SG150 住友重機械工業(株)
・金型温度60℃、シリンダー温度240℃
・射出樹脂:ポリプロピレン樹脂
・形状:エンブレム形状
実施例1、2、参考例1、2、6は成形条件(2)により、参考例7は成形条件(1)により成形した。成形性の評価に関しては、成形条件(1)の場合は、○は圧空成形性問題なく良好であり、△は圧空成形機の金型に対して加飾シートの成形性が不十分でエンブレムの形状が甘いことを意味し、成形条件(2)の場合には、○は射出成形性問題なく良好であり、△は加飾シートに破れが生じたことを意味する。
【0073】
【表10】

【0074】
実施例1、実施例2、参考例1、参考例2、参考例6、参考例7の成形性評価結果を表10に示す。表10に示すとおり、実施例1、実施例2、参考例1、参考例2は良好な成形性を示したが、参考例6、参考例7は成形性が劣っていた。
【実施例3】
【0075】
ポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ25μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の表面十点平均高さ0.337μmの面に、インジウムを真空蒸着した。次に、アクリルフィルムの表面十点平均高さが0.138μmの面に硬化剤を入れたドライラミ接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ6μmとなるように塗布、乾燥後、ドライラミ接着剤面にポリエステルフィルムの真空蒸着した面をドライラミした。さらにポリエステルフィルムの真空蒸着面とは反対側の面に硬化剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ8μmとなるように塗布、ASAフィルムをラミネートして、加飾シートを作成した。
この表層及び加飾層の120℃における5%モジュラスはそれぞれ0.55、7.93であった。
【0076】
○5%モジュラス(5%応力)の測定条件
・測定機:引張圧縮試験機 AL−50kNB ミネベア(株)
・試料サイズ:10mm×100mm
・測定条件:引張速度20mm/min、恒温槽内温度120℃
【0077】
参考例8
実施例3の加飾層のプラスチックフィルムにアクリルフィルムを用いたことと、表層にポリエステルフィルムを用いたこと以外は実施例3に準じて参考例8を作成した。この表層及び加飾層の5%モジュラスはそれぞれ12.02、0.55であった。
【0078】
【表11】

【0079】
【表12】

【0080】
○成形条件;
・成形機:小型多機能真空圧空成形機 FKS形、(株)浅野研究所
・成形条件:シート表面温度158℃、真空圧空時間2.3秒
・形状:コンソールボックス形状
○は真空圧空成形性問題なく良好であり、△は真空圧空成形機の金型に対して加飾シートの成形性が不十分で、コンソールボックス形状が甘いことを意味する。
【0081】
【表13】

【0082】
表13に示すとおり、実施例3は成形性良好であったが、参考例8はしわが発生した。
【実施例4】
【0083】
ポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ25μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の表面十点平均高さ0.337μmの面に、インジウムを真空蒸着した。次に、アクリルフィルムの表面十点平均高さが0.138μmの面に主剤と硬化剤からなるドライラミ接着剤を入れたドライラミ接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ6μmとなるように塗布、乾燥後、ドライラミ接着剤面にポリエステルフィルムの真空蒸着した面をドライラミした。さらにポリエステルフィルムの真空蒸着面とは反対側の面に硬化剤を入れた接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ8μmとなるように塗布、ASAフィルムをラミネートした。さらに、アクリルフィルムの上に、ハードコート層としてウレタンオリゴマーA(日本合成化学工業(株)製 商品名:紫光UV3520TL)とウレタンオリゴマーB(根上工業(株)製 商品名:アートレジンUN3320HS)と光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:DAROCUR1173)とトルエンを100:17.5:2.6:115.7重量部で混合したものを、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、80℃の恒温槽で乾燥後、UV照射して硬化させ加飾シートを作成した。
【0084】
○UV硬化条件
・UV照射機:UVランプシステムF600V フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)
・UV照射条件:照射速度8m/minで2パス、UV出力240W/cm、Hバルブ、コールドリフレクター、光源と照射物との距離105mm
【0085】
参考例9
ハードコート層としてアクリル系溶剤型UV硬化ハードコート剤(大日精化工業(株)製 品名:ビームセットEXF01(B))を乾燥後厚さ5μmとなるように塗布、乾燥させた他は実施例4に準じて加飾シートを作成した。
【0086】
【表14】

【0087】
【表15】

【0088】
○成形条件;
・成形機:超小型熱板圧空成形機 HPT−400型、(株)脇坂エンジニアリング
・成形条件:温度150℃、加熱時間6秒、真空圧空時間4秒
・形状:エンブレム形状
○は圧空成形性問題なく外観良好であり、△は圧空成形後、ハードコート剤が割れ、ひびを生じたことを意味する。
【0089】
【表16】

【0090】
耐傷付き性の測定方法
◇装置
平面磨耗試験機 RT−200
株式会社大栄科学精器製作所
◇評価方法
曲面摩擦子に軍手を被せる。試験片上にけい砂7号を置く。
荷重:100g、スライドストローク:30mm、スライド往復速度:30回/分
試験回数:10往復
○は表面に傷が生じず、外観変化なし、×は表面に傷が生じ、外観性状が低下したことを意味する。
【0091】
作成した加飾シートを用いてエンブレム形状に成型したものを上記条件で耐傷付性試験を行なったところ、実施例4、参考例9ともに良好であった。しかし、成形性では実施例4は良好であったが、参考例9は割れが発生した。
【実施例5】
【0092】
ポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ25μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の表面十点平均高さ0.337μmの面に、インジウムを真空蒸着した。次に、アクリルフィルムの表面十点平均高さが0.138μmの面に硬化剤を入れたドライラミ接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ6μmとなるように塗布、乾燥後、ドライラミ接着剤面にポリエステルフィルムの真空蒸着した面をドライラミし、その上に保護層としてポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ50μm、帝人デュポンフィルム(株)製)をラミネートした。さらにポリエステルフィルムの真空蒸着面とは反対側の面に硬化剤を入れた接着剤をメイヤーバー方式で乾燥後の厚さ8μmとなるように塗布、ABSフィルムをラミネートして、加飾シートを作成した。
【0093】
参考例10
保護層を設けなかった他は実施例5に準じて加飾シートを作成した。
【0094】
【表17】

【0095】
【表18】

【0096】
○成形条件;
・成形機:超小型熱板圧空成形機 HPT−400型、(株)脇坂エンジニアリング
・成形条件:温度150℃、加熱時間6秒、真空圧空時間4秒
・形状:エンブレム
○は圧空成形性問題なく、外観変化無し、×は圧空成形後、表面が部分的に白化、白ぼけが生じ、外観性状が低下したことを意味する。
【0097】
【表19】

【0098】
表19に示すとおり、実施例5は成型後の外観良好であったが、参考例10は白ボケ(くもり)が発生した。
【実施例6】
【0099】
ポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ25μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の表面十点平均高さ0.337μmの面に、インジウムを真空蒸着した。次に、表面の十点平均高さが0.138μmであるアクリルフィルムの裏面に主剤と硬化剤からなるドライラミ接着剤をメイヤバー方式で乾燥後の厚さが6μmとなるように塗布、乾燥後、ドライラムミ接着剤面にポリエステルフィルムに真空蒸着した面をドライラミした。さらにポリエステルフィルムの真空蒸着面とは反対側の面に主剤と硬化剤からなるドライラミ接着剤をメイヤバー方式で乾燥後の塗布厚が8μmとなるように塗布、ABSシート(黒)をラミネートした。さらに、セパレーターに粘着剤を乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布、乾燥後、ABSシート(黒)に転写した。
【0100】
【表20】

【実施例7】
【0101】
ポリエステルフィルム(テフレックスFT3厚さ25μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の表面十点平均高さ0.337μmの面に、インジウムを真空蒸着した。次に、表面の十点平均高さが0.138μmであるアクリルフィルムの裏面に主剤と硬化剤からなるドライラミ接着剤をメイヤバー方式で乾燥後の厚さが6μmとなるように塗布、乾燥後、ドライラムミ接着剤面にポリエステルフィルムに真空蒸着した面をドライラミした。さらに、セパレーターに粘着剤を乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布、乾燥後、ポリエステルフィルム(テフレックスFT3)に転写した。
【0102】
【表21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、加飾層、基材層をこの順で有する成形用加飾シートにおいて、加飾層がプラスチックフィルムにインジウム、アルミ、銀、錫、ニッケル又はこれらの組合せからなる金属を真空蒸着した層を含むことを特徴とする成形用加飾シート。
【請求項2】
加飾層のプラスチックフィルムの真空蒸着させる面の平滑度(表面粗さ)が十点平均高さで1μm以下である請求項1に記載の成形用加飾シート。
【請求項3】
加飾層のプラスチックフィルムがポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム又はアクリルフィルムである請求項1又は2に記載の成形用加飾シート。
【請求項4】
加飾層のプラスチックフィルムが印刷層を有するフィルムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項5】
加飾層のプラスチックフィルムの厚さが10μm〜60μmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項6】
基材層がポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル−スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂よりなる単層フィルム又は積層フィルムである請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項7】
基材層の厚さが90μm〜900μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項8】
基材層がアクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤から選ばれる粘着剤である請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項9】
表層の120℃における5%モジュラスが、加飾層のプラスチックフィルムの120℃における5%モジュラスより低いことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項10】
表層がポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系フィルムである請求項1〜9のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項11】
ポリメチルメタクリレートの重量平均分子量が10000以上である請求項10に記載の成形用加飾シート。
【請求項12】
アクリル系フィルムの厚さが75μm〜125μmである請求項10又は11に記載の成形用加飾シート。
【請求項13】
表層上に更にハードコート層が設けられている請求項1〜12のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。
【請求項14】
ハードコート層が紫外線硬化樹脂からなる請求項13に記載の成形用加飾シート。
【請求項15】
紫外線硬化樹脂がウレタン系オリゴマーである、請求項14に記載の成形用加飾シート。
【請求項16】
最上層に更に保護層を有する請求項1〜15のいずれか一項に記載の成形用加飾シート。

【公開番号】特開2011−79178(P2011−79178A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231923(P2009−231923)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】