説明

成形金型およびそれを用いた成形方法

【課題】凹凸金型部材以外の金属構成材に消費される熱ロスの削減を図るとともに、個々の凹凸金型部材に応じた個別的制御を可能とする。
【解決手段】一対の枠構造部材であるフレーム21、22とそのフレームの対向面に外周を固定した金型取付プレート23、24からなり、それぞれに複数の凹金型部材31、閉型時に成形キャビティ1を形成する複数の凸金型部材32を配設した成形金型。前記凹金型部材31と凸金型部材32の背面に所定の間隔を設けて、金型部材31、32の背面形状に倣った対向面形状の凹側ケーシング33、凸側ケーシング34を配設して、前記凹金型部材31と凹側ケーシング33とにより、また、凸金型部材32と凸側ケーシング34とにより、それぞれ囲まれた独立した凹側個別用役チャンバ35、凸側個別用役チャンバ36を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡スチロールなど発泡樹脂成形品を発泡成形するための成形金型およびそれを用いた成形方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡スチロールなど発泡樹脂成形品を発泡成形するための成形金型として、特許文献1、2などに記載のものが知られている。
図3を参照して概説すると、外周をフレーム13、14に固定し、対向配置される一対の金型取付プレート13aに凹金型部材11を、金型取付プレート13aに凸金型部材12を配設し、閉型時に成形キャビティ1を形成するようにするとともに、フレーム13、バックプレート13b、凹金型部材11、金型取付プレート13aによって囲まれる凸側用役チャンバ15と、同じように、フレーム14、バックプレート14b、凸金型部材12、金型取付プレート14aによって囲まれる凹側用役チャンバ16とが形成されている。
【0003】
これら金型を用いた発泡成形方法は、充填ノズル1aを通じて成形キャビティ1内に発泡ビーズを充填し、前記凸側および凹側の用役チャンバ15、16に、通気口17a、18aを通じて加熱蒸気を導入して、凹金型部材11と凸金型部材12を加熱するとともに、ベントホール11a、12aを通じて成形キャビティ1内にも送入して内部の発泡ビーズを発泡、融着させ、成形体を形成させた後、加熱蒸気に代えて個別用役チャンバ15、16に冷却水を導入して、成形キャビティ1内の発泡成形体を冷却し、次いで離型することにより、製品として取り出すことができる。
【0004】
このような金型を用いた発泡成形方法では、加熱蒸気は凹凸金型部材11、12を加熱する以外に、構造材である用役チャンバ15、16を構成するフレーム13、14、バックプレート13b、14b、金型取付プレート13a、14bも加熱するのに消費され、同様に、冷却水はこれらの冷却にも消費されることになる。このような構造材の加熱、冷却は発泡成形体の加熱冷却には関りがないことから、大きなエネルギロスが発生していることとなっている。
【0005】
この事例では、金型部材11、12には、連通孔からなるベントホール11a、12aが多数設けられていて、キャビティ1に充填された発泡ビーズに加熱蒸気などを導入して接触させることができるよう配慮されている。また、この特許文献1には、それらベントホール11a、12aを省略した構造も開示しているが、加熱蒸気や冷却水のエネルギ効率を特に改善するものではなかった。
【0006】
そして、工場で用いられる発泡スチロール魚箱用生産機の場合、1成形サイクルで4〜6個の成形体が得られるよう、1組の金型取付プレート13a、14aには該当数組の凹凸金型部材が配設されているのが通例であり、このような場合には、入力エネルギの数パーセントが発泡ビーズに加熱、冷却に用いられるだけであって、大部分は無駄になっていることが知られている。
【0007】
さらに、このような1成形サイクル、多数個同時成形ができる金型を用いた場合、それぞれの金型部材の間で製品の品質にばらつきが生じるという問題があった。一個の用役チャンバから加熱蒸気や冷却水などの用役の供給が均等に行われにくい、同様に加圧、減圧などが均等に作用しないのがその理由と考えられたが、その品質のばらつきを防止する確実な手段がなかった。
【0008】
このようなエネルギ効率の問題に対応する目的で、特許文献2に開示されている断熱被覆金型が提案されている。すなわち、如上の金型装置において、用役チャンバを形成する金型取付プレート、フレーム、バックプレートなどの内面に中空シリカ粒子を分散させたシリコーン樹脂からなる高耐久性の断熱被覆層を設けて、加熱ロス、冷却ロスを軽減しようとするものである。
【0009】
この場合は、金型部材以外の金属構成材(金型取付プレート、フレーム、バックプレートなど)への伝熱が抑制されるので相応のエネルギ効率向上効果が認められた。しかしながら、用役チャンバの容積自体は従来と変化しないので、相応量の供給が必要であって、その効率向上効果は約20%程度に止まらざるを得なかった。
【0010】
また、この特許文献2の場合は、生産機用金型として1成形サイクルで6個の成形体を得ることができる構造を開示しているが、このような場合には、多数個生産用金型を構成する複数の凹凸金型部材の、加熱、冷却などの成形条件を全体として平均的に制御することはできるが、個々の凹凸金型部材に応じた個別的制御はできないので、前記したような品質のばらつきを抑制できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−79931号公報:図1、図2など
【特許文献2】特開2004−148779号公報:特許請求の範囲、実施例、図1、図4など
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、1対の金型取付プレートに複数の凹凸金型部材を設けれ発泡成形金型において、個々の凹凸金型部材以外の金属構成材(金型取付プレート、フレーム、バックプレートなど)に消費される熱ロスの削減を図るとともに、個々の凹凸金型部材に応じた個別的制御を可能とする成形金型およびそれを用いた成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題は、次の成形金型およびそれを用いた成形方法に係る本発明によって、解決することができる。
先ず、本発明の成形金型は、外周をフレームに固定し、対向配置される一対の金型取付プレートの一方には複数の凹金型部材を配設し、他方には、閉型時に成形キャビティを形成するよう対応する複数の凸金型部材を配設して、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を得るようにした発泡成形用金型であって、前記凹および凸金型部材の背面に間隔を設けてケーシングを配設して、それぞれ独立した個別用役チャンバを形成し、その個別用役チャンバに用役を個別に供給、排出可能としたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の成形金型は、以下の形態に好ましく具体化できる。
1)前記凹金型部材と凸金型部材には、背面から内面に通じる、複数のベントホールが配置されている前記した成形金型。
2)前記凹金型部材と凸金型部材には、背面から内面に通じるベントホールが配置されていない前記した成形金型。
3)この2)に加えて、前記凹金型部材と凸金型部材の少なくとも一方には、前記個別用役チャンバから独立した成形キャビティ用役ノズルが配置されている成形金型。
【0015】
4)前記した成形金型であって、前記凹金型部材と凸金型部材との背面に配設されたケーシングの内面および外面の少なくとも一方の面に断熱層を設けた形態。
5)それら凹金型と凸金型の個別用役チャンバにはそれぞれに個別の用役センサを配置し、それぞれの個別用役チャンバに個別に調整した用役を制御しつつ供給、排出可能とした形態。
6)それら個別用役チャンバの厚さが、少なくとも1mmである形態。
【0016】
さらに、本発明の成形金型を用いた発泡成形方法は、前記した項目のいずれかに記載の成形金型を用いた発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填し、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、成形キャビティ内の発泡ビーズを発泡、融着させた後、前記個別用役チャンバに冷却水を導入して、成形キャビティ内の発泡成形体を冷却し、次いで離型することを特徴としたものである。
【0017】
さらに、ベントホールに代えて前記用役チャンバから独立した成形キャビティ用役ノズルが配置されている前記した成形金型を用いた発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填し、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、各金型部材を加熱することにより、各金型部材の接した発泡ビーズを加熱するとともに、前記通気ノズルから加熱蒸気を成形キャビティ内に導入して、成形キャビティ内の発泡ビーズを内部からも加熱して、発泡成形体の表皮面と内部の融着状態を調節して発泡、融着させた後、前記個別用役チャンバに所定の温度に設定した冷却水を導入して、成形キャビティ内の発泡成形体を冷却し、次いで離型することを特徴としたものである。
【0018】
さらに、本発明の発泡成形方法は、前記凹金型部材と凸金型部材には、背面から内面に通じるベントホールが配置されていない成形金型を用いた発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填し、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、各金型部材を加熱することにより、各金型部材の接した発泡ビーズを加熱して発泡、融着させた後、前記個別用役チャンバに所定の温度に設定した冷却水を導入して、成形キャビティ内の発泡成形体をその冷却水と接触させることなく冷却し、次いで離型する形態に具体化できる。
【0019】
このベントホールが配置されていない成形金型を用いた発泡成形方法は、以下の形態に好ましく具体化される。
1)成形キャビティ内に発泡ビーズを充填するとともに、併行して、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、各金型部材を発泡ビーズの融着温度未満の温度に予備加熱する形態。
2)これらの発泡成形体の冷却に際して、冷却水の温度を発泡成形体の融着が進行しない温度の設定して前記個別用役チャンバに導入する形態。
【0020】
本発明の成形金型およびそれを用いた発泡成形方法によれば、対向配置される一対の金型取付プレートに配設した複数の凹凸金型部材の背面に、所定の間隔をもったケーシングを配設して、それぞれ独立した個別用役チャンバを形成しており、これら個別用役チャンバは、フレームやバックプレートなどの構造部材と熱的に離隔しているので、成形操作に際して加熱、冷却時にそれら部材に熱エネルギが消費されないから熱ロスが削減できる。また、個々の凹凸金型部材に適応した好ましい成形操作を個別的にくわえることができるので、発泡製品の不揃いを解消することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の成形金型およびそれを用いた発泡成形方法は、このように、成形操作に際して加熱、冷却時に成形品自体には関係のないフレームやバックプレートなどの構造部材などの部材を加熱、冷却することがないための熱ロスが削減できるうえ、使用加熱蒸気や冷却水を節減するとともに、成形サイクル時間の短縮も可能となるうえ、装置のコンパクト化も期待できる。
また、金型の配置位置に基づく発泡成形体の品質上の不揃いを解消することができるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した成形金型およびそれを用いた発泡成形方法として、工業的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を説明するための要部断面説明図。
【図2】複数の金型部材の配置例を示す正面図。
【図3】従来の成形金型の1例を示す要部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の成形金型、発泡成形方法の順にその実施形態について、図1、2を参照しながら説明する。
(発泡成形用の成形金型)
本発明の成形金型の基本的構造は、先ず、一対の枠構造部材であるフレーム21、22とそのフレームの対向面に外周を固定した金型取付プレート23、24からなり、フレーム21、22は接離可能に配設されている。そして、対向配置される一対の金型取付プレートの一方(23)には複数の凹金型部材31を配設し、金型取付プレートの他方(24)には、閉型時に成形キャビティ1を形成するよう対応する複数の凸金型部材32を配設して、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を得るよう構成されている(以下、多数個取り構造という)。
【0024】
図1では、1組のフレームに1組の金型部材を配置したものが例示されているが、これは説明を簡便にするために他の金型部材の記載を省略したのであって、本発明では、図2に示すように、凹金型部材を覆う凹側ケーシング3で表示されている金型部材が上下左右に2列、2段で合計4個の金型部材が配設され、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を得る多数個取り構造の装置が本発明の対象となっている。
【0025】
そして、本発明の発泡成形用金型の特徴とするところは、前記凹金型部材31および凸金型部材32の背面に所定の間隔を設けて、金型部材31、32の背面形状に倣った対向面形状の凹側ケーシング33、凸側ケーシング34を配設して、前記凹金型部材31と凹側ケーシング33とにより、また、凸金型部材32と凸側ケーシング34とにより、それぞれ囲まれた独立した凹側個別用役チャンバ35、凸側個別用役チャンバ36を形成している。そして、それぞれの個別用役チャンバ35、36には、個別用役ノズル35a、35b、36a、36bを設けていて成形操作時の用役を個別に供給、排出可能とした点にある。
【0026】
ここで用役とは、原料である発泡ビーズの成形過程で加熱、融着、冷却、脱水などを行うための、加熱蒸気、冷却水の供給の他、減圧ポンプによる減圧操作、加圧空気により加圧操作、ドレン排出などの運転要素を意味し、用役ノズルは、これら運転要素の供給、排出のための接続管を意味するものとする。
【0027】
本発明を従来の成形金型と比較した相違点を要約すると、従来は、凸金型側では、図3のように、金型部材を加熱、冷却するための用役チャンバ15が、凸金型部材11、フレーム13、金型取り付けプレート13a、バックプレート13bで囲まれ構成されているに対して、本発明では、それに相当する用役チャンバ35は、凸金型部材31、凸側ケーシング33で囲まれて構成される。凹金型側の従来の用役チャンバ16と本発明の用役チャンバ36の場合の関係も同様である。
【0028】
かくして、従来の用役チャンバ15、16の場合、接する外周部材の総重量は312kg、その体積は0.468m3に及ぶが、本発明の用役チャンバ35、36の場合は、接する外周部材の総重量は125kg、その体積は0.0205m3を要するに過ぎない(1サイクルの成形個数が4個である平均的構造の多数個取り発泡成形装置の場合)。すなわち、本発明では、用役チャンバに接する外周部材は重量で従来比約40%、その体積で従来比4.5%というように、軽量かつ小容積となるから、成形1サイクル当りの加熱蒸気使用量は従来の6kgが約3kg(50%減)に、また、冷却水使用量は同様に従来の40kgが約20kg(同じく50%減)に削減することができるようになった。
なお、従来の成形金型に見られたバックプレート(図3どの13a、13b)は必ずしも必須の構成部材ではないが、各種部材の取り付けに便宜上、配置していてもよい。
【0029】
以下、各部材にについて、補足する。
(凹凸金型部材)
本発明では、前記凹金型部材31と凸金型部材32に、公知のように背面から内面に通じるベントホールを20〜30mmピッチで複数個配置した形態で利用可能であるが、このような通気孔であるベントホールを配置しない構造の凹凸金型部材として利用できる。この場合には、凹金型部材31と凹側ケーシング33を貫通して成形キャビティ用役ノズル42を個別の用役が直接に成形キャビティ1内に供給可能となるよう開口させて、配置するのが好ましい。この成形キャビティ用役ノズル42は凹凸金型部材の少なくとも一方に設けられればよい。
【0030】
この成形キャビティ用役ノズル42は、1個の成形キャビティに対して複数本、配置され得る(図2では4本の例を示している)が、この場合、少なくとも50mmのピッチを持って配置され、成形キャビティ1内の成形条件に応じて制御された個別の用役が供給可能となるよう、用役チャンバ35、36から独立して構成されている。なお、この凹金型部材31と凸金型部材32それ自体は、成形圧力がかかる閉型時には製品が充填されているので、構造上、耐圧強度はさほど必要ではなく、3〜5mm厚さの薄肉アルミ系合金で十分であって、これは熱容量が小さくなって熱レスポンスが早くなる点からも好ましい。
【0031】
(用役チャンバ)
如上の通り、用役チャンバ35、36は、凸金型部材31、凸側ケーシング33および凹金型部材32、凹側ケーシング34で囲まれて構成されるが、それぞれのケーシング33、34は、成形操作時の加熱蒸気の圧力に耐える機械的強度が必要であり、厚さ8〜20mmのアルミ系合金が用いられる。
【0032】
このように本発明では、個別の用役チャンバ35、36を設けるのが特徴であるが、この用役チャンバ35、36自体は、加熱蒸気や冷却水などの用役が全体に均質に与えられることが重要であり、用役が流通するに十分な最小の厚さを持って構成されるものであり、かつ、用役の供給量を最小にできるよう、その容積は最小であるのが好ましい。
この目的から、それら個別用役チャンバの厚さ(用役が流通する空間の厚さ)は、少なくとも1mmであるのが好ましく。そして、凸側ケーシング33および凹側ケーシング34の形状は、対向する凸金型部材31および凹金型部材32の外形に倣った形状とするのが好ましい。
【0033】
また、この個別用役チャンバ35、36には、個別用役ノズル35a、35b、36a、36bを設けるが、配置本数はこれに限定されるものではなく、これら個別用役ノズルを介して、加熱蒸気を供給、排出あるいは冷却水の供給、排出などを個別に調整した用役を制御しつつ適用できるよう、制御・切換え弁機構(図示せず)を併設しているものである。なお、これらの目的にため、それら個別用役チャンバに直接、あるいはそれぞれの個別用役ノズルに個別の圧力、温度などの用役センサを配置し、個別に好ましく調整した用役の適用が行えるように構成する。
【0034】
また、前記した凸側ケーシング33および凹側ケーシング34には断熱性を付与して、 個別用役チャンバ35、36の熱量の漏洩を防止するのが好ましい。このケーシング33、34の内面および外面の少なくとも一方の面に無機質発泡材からなる断熱層を、例えば、ガラス発泡粒子を耐熱接着剤でコートするなどして、設けるのが好ましく、特に、このケーシング33、34の内面に断熱層を設けるのが好適であるのは言うまでもない。この場合、断熱層の厚さを考慮して、用役が流通するに十分な各用役チャンバの空間厚さを確保すべきである。
【0035】
(フレームと金型取付けプレート)
この実施形態を示す図1では、金型装置の外郭を構成するフレーム21、22に、凹金型部材31と凸金型部材32を取付けるための凹側、凸側の金型取付けプレート23、24を取り付け固定している構造を示しているが、フレーム21、22と金型取付けプレート23、24とを一体に形成した構造としてもよい。
【0036】
(バックプレート)
また、本発明では、図1に示すように、従来のバックプレート(例えば、図3の13b)を用いていないが、充填ノズル41、離型ピン43、成形キャビティ用役ノズル42などは、取付けフランジを用いて凸側ケーシング33に直接に固定されている。かくして、コンパクトな金型構成が可能となるが、図3の従来例のように、バックプレートを利用してもよいのはいうまでもない。
【0037】
(発泡成形方法)
次に、本発明の成形金型を用いた発泡成形方法について説明する。
本発明では、前記した成形金型を用いる発泡成形方法であって、前記凹金型部材31と凸金型部材32がベントホールを備えている場合は、周知の成形方法が採用される。
すなわち、前記凹金型部材31と凸金型部材32を型閉めし成形キャビティ1を形成した後、充填ノズル41を通じて発泡ビーズを成形キャビティ1内に充填する。この場合、個別用役チャンバ35、36を適宜に減圧すれば、ベントホールを通じて成形キャビティ1内も減圧されて、発泡ビーズを成形キャビティ1内に流入し易いように操作することができる。
【0038】
次いで、前記個別用役チャンバ35、36に加熱蒸気を導入し、ベントホールを通じて、成形キャビティ1内の発泡ビーズを加熱して、発泡、融着させてキャビティ形状に規制される成形体を形成する。この場合の加熱工程は従来と同様である。
【0039】
ところで、本発明では、多数個取りのため配置された複数の成形キャビティ1のそれぞれに対して、凹凸各1個の前記個別用役チャンバ35、36が配置されているので、それぞれの成形キャビティ1の条件に適合した前記した加熱蒸気の操作条件や、後記の冷却条件など成形操作を、複数配設したそれぞれの個別用役チャンバ35、36に個別に行うよう制御して適用することができるのである。
【0040】
その後、前記個別用役チャンバ35、36に冷却水を導入して、各金型部材を直接冷却し成形キャビティ1内の発泡成形体を冷却する。必要に応じて、前記個別用役チャンバ35、36内を減圧して冷却するとともに乾燥した後、型を開いて、離型ピン43で成形体を押し出し、離型するのである。
【0041】
この本発明の発泡成形方法によれば、このように、成形体自体の加熱、冷却には関係のないフレームやバックプレートなどの構造部材などの部材を加熱、冷却することがないため、使用加熱蒸気や冷却水を50%程度も節減するとともに、成形サイクル時間も最大60%程度の短縮も可能となることが判った。
また、個々の凹凸金型部材に適応した好ましい成形操作をそれぞれの用役チャンバを通じて個別的に加えることができるので、多数個取りの金型の配置位置に基づく発泡成形体の品質上の不揃いを解消することができるという利点が得られる。
【0042】
さらに、ベントホールを配置していない各凹凸金型部材を用いた発泡成形方法の場合、さらに加えるに前記用役チャンバ35から独立した成形キャビティ用役ノズル42が配置されている成形金型を用いた発泡成形方法の場合には、以下の手順で行われる。
(発泡ビーズ充填)
成形キャビティ1内に充填ノズル41を通じて発泡ビーズを充填する。この場合、成形キャビティ1に対して、型閉め直前まで連通可能であって、型閉め完了時に封止される小空間であるパーティング部51を金型間に設定してある構造の成形金型を好ましく使用できる。
【0043】
すなわち、型閉め直前のパーティング部51が成形キャビティ1に連通している状態で、成形キャビティ1内に充填ノズル41を通じて発泡ビーズを空気伴走させ流入させる、または充填ノズル41側を高圧しにして流入させるに当り、パーティング部51に連結した付属のパーティングノズル51a、bを通じて減圧すれば、成形キャビティ1内も減圧されるのでより均質な充填密度で全体を速やかに充填することができる。
【0044】
本発明では、この発泡ビーズ充填工程において、このような充填操作を行いながら前記個別用役チャンバ35、36に加熱蒸気または温水などを導入して各金型部材31、32を好ましい温度、例えば、発泡、融着温度直前の温度まで予備加熱するように、両工程を併行させて行うことができる。かくして、発泡ビーズ充填工程と加熱工程をオーバラップさせることができるので、成形サイクルの短縮に寄与することも可能となる。
【0045】
(加熱、発泡工程)
前記個別用役チャンバ35、36に加熱蒸気を導入して、各金型部材31、32を加熱してその伝熱によって、各金型部材31、32に接した発泡ビーズを加熱するとともに、前記成形キャビティ用役ノズル42を配置した構造の場合には、その用役ノズル42からも加熱蒸気を成形キャビティ1内に導入して、成形キャビティ内の発泡ビーズを内部からも加熱する。この場合、発泡成形体の表皮面と内部の発泡、融着状態を調節することが可能となり、表皮部分を強固に融着させ、内部を最大限に発泡させるなど部分的に調節しながら発泡成形することができる。
この場合、成形キャビティ用役ノズル42から減圧、脱気したのち、加熱蒸気を導入するようにすると、凝縮ドレンが発生しないので、発泡工程が効率的に進行する。
【0046】
(冷却工程)
発泡工程後、前記個別用役チャンバ35、36に所定の温度に管理した、例えば、発泡ビーズが融着しない範囲で最も高い温度(スチロール樹脂の場合、80℃)などに設定した冷却水を導入、通水し(例えば、凹側用役ノズル35a、35bおよび凸側用役ノズル36a、36bを利用して一方のノズルから導入、他方のノズルから排出する)、必要に応じて、冷却水を循環させ、成形キャビティ1内の発泡成形体を離型可能な温度まで冷却する。
【0047】
この場合、冷却水は所定の温度に管理されているので、離型可能な温度以下でもっとも高い温度まで冷却すればよく、必要以上の過冷却は成形サイクルの短縮化を阻害するので好ましくない。本発明では、従来のような冷却ノズルによる散水方式に較べて、器具の詰まりや、冷却むらにメンテナンスを向ける必要がなくなった。また、成形体に冷却水が直接接触しないので、冷却水が浸透して成形体が含水するという不具合も生じない。
【0048】
また、成形体が冷却水と接触しないので、循環再利用する冷却水に意図しない物質が含まれるようになったとしても、それが冷却工程で成形体に移行するおそれが全くないから、衛生上、好ましい状態で発泡成形体が取り出せるという利点が得られる。
【0049】
(減圧放冷工程)
成形チャンバ用役ノズル42から加熱蒸気を供給する加熱方法を用いた場合、成形チャンバ1内の凝縮ドレンがある程度発生することは避けられないが、この冷却工程で、成形チャンバ用役ノズル42またはパーティング部51を通じて、減圧すれば型内のドレンは容易に気化して除去することができる。
【0050】
(離型工程)
離型可能になったとき、成形体が凹金型部材31側に残るようにして、両金型を離間させ、離型ピン43を突き出して成形体を離型させる。かくして、所定形状に発泡成形した成形体を乾燥状態で得ることができるのである。
この場合、成形チャンバ用役ノズル42から減圧すれば、成形体を用役ノズル42が配置された凹金型部材31側に吸着し、容易に残留させることができる。
【0051】
本発明は詳細に説明した通りに構成されているので、次の各メリットが得られる。
a)凹凸両側のチャンバを最小限の容量に設定するから、装置自体がコンパクト化されるとともに、使用エネルギーを約1/2削減でき、熱効率を大幅に向上できる。
b)成形体の表裏を異なった融着状態にコントロールすることができ、多様な品質ニーズに対応できる。
【0052】
c)発泡成形体が冷却水と接触しないので、衛生上、好ましい状態で発泡成形体が取り出すことができ、食品容器用途に好適である。
d)冷却飽和温度以上または融着温度以下に管理した冷却水を通水するので、成形体に凝縮水が残らない、過冷却の恐れもなく、冷却時間を短縮できるとともに、次のサイクルの充填工程に迅速に進行可能となり、成形サイクルを短縮できる。
e)金型の熱容量が極小となり熱ロスが減るから熱レスポンスが向上し、成形サイクルを短縮して総合的に生産性を約1.6倍に向上することが可能となった。
【符号の説明】
【0053】
1:成形キャビティ
21、22:フレーム、23、24:金型取付プレート
31:凹金型部材、32:凸金型部材、33:凹側ケーシング、34:凸側ケーシング、35:凹側個別用役チャンバ、36:凸側個別用役チャンバ
35a、35b、36a、36b:個別用役のズル
42:成形チャンバ用役ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周をフレームに固定し、対向配置される一対の金型取付プレートの一方には複数の凹金型部材を配設し、他方には、閉型時に成形キャビティを形成するよう対応する複数の凸金型部材を配設して、1サイクルの成形操作で複数個の発泡成形品を得るようにした発泡成形用金型であって、前記凹および凸金型部材の背面に間隔を設けてケーシングを配設して、それぞれ独立した個別用役チャンバを形成し、その個別用役チャンバに用役を個別に供給、排出可能としたことを特徴とする成形金型。
【請求項2】
前記凹金型部材と凸金型部材には、背面から内面に通じる、複数のベントホールが配置されている請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
前記凹金型部材と凸金型部材には、背面から内面に通じるベントホールが配置されていない請求項1に記載の成形金型。
【請求項4】
前記凹金型部材と凸金型部材の少なくとも一方には、前記個別用役チャンバから独立した成形キャビティ用役ノズルが配置されている請求項3に記載の成形金型。
【請求項5】
前記凹金型部材と凸金型部材との背面に配設されたケーシングの内面および外面の少なくとも一方の面に断熱層を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の成形金型。
【請求項6】
前記凹金型と凸金型の個別用役チャンバにはそれぞれに個別の用役センサを配置し、それぞれの個別用役チャンバに個別に調整した用役を制御しつつ供給、排出可能とした請求項1〜5のいずれかに記載の成形金型。
【請求項7】
前記個別用役チャンバの厚さが、少なくとも1mmである請求項1〜6にいずれかに記載の成形金型。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の成形金型を用いた発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填し、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、成形キャビティ内の発泡ビーズを発泡、融着させた後、前記個別用役チャンバに冷却水を導入して、成形キャビティ内の発泡成形体を冷却し、次いで離型することを特徴とした発泡成形方法。
【請求項9】
請求項4に記載の成形金型を用いた発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填し、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、各金型部材を加熱することにより、各金型部材の接した発泡ビーズを加熱するとともに、前記成形キャビティ用役ノズルから加熱蒸気を成形キャビティ内に導入して、成形キャビティ内の発泡ビーズを内部からも加熱して、発泡成形体の表皮面と内部の融着状態を調節して発泡、融着させた後、前記個別用役チャンバに所定の温度に設定した冷却水を導入して、成形キャビティ内の発泡成形体を冷却し、次いで離型することを特徴とした発泡成形方法。
【請求項10】
請求項3に記載の成形金型を用いた発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填し、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、各金型部材を加熱することにより、各金型部材の接した発泡ビーズを加熱して発泡、融着させた後、前記個別用役チャンバに所定の温度に設定した冷却水を導入して、成形キャビティ内の発泡成形体をその冷却水と接触させることなく冷却し、次いで離型することを特徴とした発泡成形方法。
【請求項11】
請求項10に記載の発泡成形方法であって、成形キャビティ内に発泡ビーズを充填するとともに、併行して、前記個別用役チャンバに加熱蒸気を導入して、各金型部材を発泡ビーズの融着温度未満の温度に予備加熱することを特徴とした発泡成形方法。
【請求項12】
請求項10に記載の発泡成形方法であって、発泡成形体の冷却に際して、冷却水の温度を発泡成形体の融着が進行しない温度の設定して前記個別用役チャンバに導入することを特徴とした発泡成形方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−23499(P2010−23499A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137193(P2009−137193)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(391023057)株式会社ダイセン工業 (14)
【Fターム(参考)】