説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】成膜した基板の膜厚寸法のばらつきを防止することができる成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】基板14を成膜するための成膜源と、基板14の中心を中心軸として回転させる基板回転手段20と、基板14の回転座標を検出する回転座標検出手段22と、基板14の成膜領域から外側にある位置を回転軸として回転することにより、成膜源と基板14との間を開放又は遮断するシャッタ30と、シャッタ30を回転軸の軸回りに回転させるシャッタ駆動手段28と、シャッタ30が成膜源と基板との間を開放開始するときの基板14の回転座標を記憶する記憶手段38Aと、記憶手段38Aに記憶された基板14の回転座標と同じ回転座標のときにシャッタ30が成膜源と基板14との間を遮断開始するようにシャッタ駆動手段28を制御する制御手段38と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からのスパッタリング成膜方法として、基板の被成膜面に対してターゲットを傾斜して配置し、該基板を面内で回転させながら成膜するステップと、成膜開始から所定のタイミングで成膜を終了するステップと、を備え、前記成膜を終了するステップは、基板が360°×n+180°+α(nは0を含む自然数、−10°<α<10°)回転したタイミングで成膜を終了することを特徴とするスパッタリング成膜方法がある。
【0003】
また、従来のパッタリング装置として、基板の被成膜面に対してターゲットを傾斜して配置し、該基板を面内で回転させながら成膜するスパッタリング装置であって、前記基板を回転させる回転駆動手段と、前記ターゲットと前記基板の間に配置されたシャッタと、前記シャッタを開閉駆動する開閉駆動手段と、前記回転駆動手段の回転角度を検出する回転角度検出手段と、前記回転角度検出手段により、成膜開始したときから360°×n+180°+α(nは0を含む自然数、−10°<α<10°)の回転を検出した時に、前記シャッタ駆動手段を駆動させ、前記シャッタを閉じる制御手段と、を有するスパッタリング装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−294416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術によれば、成膜時間は、基板が1回転する時間ごとのとびとびの値しかとれなくなり、膜厚精度が低下するため、目標膜厚を得ることが困難となる問題がある。
【0006】
また、従来技術のシャッタ機構は、従来より知られた任意の機構を用いることができるものであり(上記特許文献1の段落(0025)参照)、シャッタ機構自体には何ら工夫されていない。このため、シャッタ機構のシャッタ開閉に要する時間の間に回転していく基板の各部での露出時間が一定に保たれる保証がない。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、成膜した基板の膜厚寸法のばらつきを防止することができる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板を成膜するための成膜源と、基板の中心を中心軸として回転させる基板回転手段と、基板の回転座標を検出する回転座標検出手段と、基板の成膜領域から外側にある位置を回転軸として回転することにより、成膜源と基板との間を開放又は遮断するシャッタと、前記シャッタを前記回転軸の軸回りに回転させるシャッタ駆動手段と、前記シャッタが成膜源と基板との間を開放開始するときの基板の回転座標を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された基板の回転座標と同じ回転座標のときに前記シャッタが成膜源と基板との間を遮断開始するように前記シャッタ駆動手段を制御する制御手段と、を有する成膜装置である。
【0009】
本発明によれば、基板表面のどの部分をとっても同じ露出時間となるような制御が可能になる。この結果、成膜された基板の膜の膜厚を一定にすることができ、膜厚ムラが発生することを防止できる。
【0010】
この場合、前記制御手段は、前記基板の回転速度、前記シャッタの回転速度及び回転方向のそれぞれが、前記シャッタが前記基板を開放開始するときと遮断開始するときで同一となるように、前記基板回転手段及び前記シャッタ駆動手段を制御することが好ましい。
【0011】
これによれば、シャッタと基板との回転速度の相違によって基板表面上の露出時間にずれが発生することを阻止することができる。
【0012】
この場合、前記シャッタは、回転時に前記成膜源と前記基板との間を横切る上流側端部と下流側端部とを有し、前記シャッタが前記基板を前記成膜源から開放するときの前記下流側端部の形状と、前記シャッタが前記基板を前記成膜源から遮断するときの前記上流側端部の形状が、前記シャッタの回転軸回りに回転させることで一致するものであることが好ましい。
【0013】
これによれば、シャッタが基板を成膜源から開放したときの下流側端部の位置が、シャッタが基板を成膜源から遮断しているときの上流側端部の位置に重なる。このように、シャッタの基板に対する位置を調整することにより、基板の成膜中においては、シャッタが基板の一部を遮断して成膜を妨げることがない。この結果、シャッタの形状によって基板表面上の露出時間にずれが発生することを阻止することができる。
【0014】
この場合、前記シャッタの回転座標を検出するシャッタ回転座標検出手段を有し、前記開閉動作を行う前の前記シャッタの待機位置では、閉動作開始前の待機位置における前記上流側端部から前記基板までの距離と、開動作開始前の待機位置における前記下流側端部から前記基板までの距離と、が同じ距離になるように設定されており、前記制御手段は、前記シャッタの回転速度と回転座標とを制御することが好ましい。
【0015】
これによれば、前記開閉動作を行う前の前記シャッタの待機位置では、閉動作開始前の待機位置における前記上流側端部から前記基板までの距離と、開動作開始前の待機位置における前記下流側端部から前記基板までの距離と、が同じ距離になるように設定されており、前記制御手段は、前記シャッタの回転速度と回転座標とを制御する。これにより、シャッタの回転速度と回転位置によって基板表面上の露出時間にずれが発生することを阻止することができる。
【0016】
本発明は、成膜される前記基板の膜の膜厚を測定するための膜厚測定手段を有することが好ましい。
【0017】
これによれば、成膜される基板の膜の膜厚を測定するための膜厚測定手段を有しているため、基板表面上の膜の膜厚を正確に測定することができる。これにより、適正な膜厚を制御することが可能になり、成膜精度を高めることができる。
【0018】
本発明は、基板の中心を中心軸として基板回転手段により回転させる工程と、基板の回転座標を回転座標検出手段により検出する工程と、基板の成膜領域から外側にある位置を回転軸として回転することにより、成膜源と基板との間をシャッタにより開放又は遮断する工程と、前記シャッタをシャッタ駆動手段により前記回転軸の軸回りに回転させる工程と、前記シャッタが成膜源と基板との間を開放開始するときの基板の回転座標を記憶手段に記憶する工程と、前記記憶手段に記憶された基板の回転座標と同じ回転座標のときに前記シャッタが成膜源と基板との間を遮断開始するように前記シャッタ駆動手段を制御手段により制御する工程と、を有する成膜方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、成膜した基板の膜厚寸法のばらつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る成膜装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る成膜装置のシャッタ部材と基板との位置関係を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る成膜装置のシャッタ部材の変形例と基板との位置関係を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る成膜装置のシャッタ部材の開閉動作の説明図である。
【図5】第1実施形態に係る成膜装置のシャッタ部材の開動作の工程図である。
【図6】第1実施形態に係る成膜装置のシャッタ部材の閉動作の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態に係る成膜装置及び成膜方法について、図面を参照して説明する。本発明の「成膜装置」及び「成膜方法」は、蒸着装置、スパッタリング装置、蒸着方法及びスパッタリング方法を含む概念である。また、「基板」としては、半導体基板などが挙げられる。
【0022】
図1に示すように、成膜装置10は、中空状の箱体12を備えている。箱体12の上部には、基板14を水平に保持した状態で回転軸16の軸回りに回転させる基板保持部材18が設けられている。基板保持部材18は、基板回転駆動機構20により回転軸16の軸回りに回転可能に設けられている。なお、回転軸16の軸心は、第1軸X1と重なっている。また、基板回転駆動機構20には、回転軸16の回転座標を検出するための基板回転座標検出部22が設けられている。基板回転座標検出部22は、基板保持部材18に保持されて回転する基板14の回転座標を検出する。
【0023】
なお、本明細書では、「回転座標」とは、所定の部材の現在の位置を意味し、「回転角」とは、所定の部材が実際に回転した量を意味する。
【0024】
箱体12の底部には、ハースライナー24が設けられている。ハースライナー24は、ハースライナー24の中心と基板保持部材18で保持された基板14の中心とを結んだ第1軸X1上に位置するように位置決めされている。ハースライナー24には、成膜物質Gが収容されている。ハースライナー24の近傍には、電子ビームBを発射する電子ビーム発射装置26が設けられている。基板14の成膜時には、電子ビーム発射装置26から発射された電子ビームBがハースライナー24に収容された成膜物質Gに照射されて成膜物質Gが蒸発する。
【0025】
箱体12の上部であって第1軸X1から所定の距離だけ離れた位置に、シャッタ回転駆動機構28が設けられている。シャッタ回転駆動機構28は、シャッタ部材30を回転軸31の軸回りに回転させるためのものである。シャッタ回転駆動機構28は、第2軸X2上に設けられている。また、回転軸31の軸心は、第2軸X2と重なっている。なお、第1軸X1と第2軸X2とは、所定の距離だけ離間している。さらに、また、シャッタ回転駆動機構28には、回転軸31の回転座標を検出するためのシャッタ回転座標検出部34が設けられている。シャッタ回転座標検出部34により、シャッタ部材30の回転座標が検出される。
【0026】
図2及び図3に示すように、シャッタ部材30は、2枚の羽根部32を備えている。なお、羽根部32は、2枚に限定されるものではなく、1枚式のもの、3枚以上のものでもよい。1枚の羽根部32の上面面積は、基板14の成膜領域よりも広くなるように設定されている。各羽根部32は、回転時にハースライナー24と基板14との間を横切る上流側端部32Aと下流側端部32Bとを有している。図2に示すシャッタ部材30の羽根部32の回転方向に対する上流側端部32A及び下流側端部32Bは、直線状に形成されており、両者の開き角度が略90度となるように設定されている。なお、図2のシャッタ部材30の羽根部32の上流側端部32Aの領域はAで示され、下流側端部32Bの領域はBで示されている。
【0027】
シャッタ部材30は、回転時にハースライナー24と基板14との間を横切る上流側端部32Aと下流側端部32Bとを有し、シャッタ部材30が基板14をハースライナー24から開放するときの下流側端部34Bの形状と、シャッタ部材30が基板14をハースライナー24から遮断するときの上流側端部32Aの形状が、シャッタ部材30の回転軸31の軸回りに回転させることで一致する。
【0028】
また、図3に示す回転方向に対する上流側端部32A及び下流側端部32Bは、曲線状となるように設定されている。図3のシャッタ部材30の羽根部32の上流側端部32Aの領域はAで示され、下流側端部32Bの領域はBで示されている。
【0029】
シャッタ部材30の各羽根部32がハースライナー24と基板保持部材18とを結ぶ第1軸X1上に位置したり、あるいは退避したりすることにより、ハースライナー24と基板保持部材18との間を開閉可能にする。すなわち、シャッタ部材30の各羽根部32がハースライナー24と基板保持部材18とを結ぶ第1軸X1上に位置している場合には、ハースライナー24と基板保持部材18との間を閉じた状態になり、蒸発した成膜物質Gが基板14に付着しない。一方、シャッタ部材30の各羽根部32がハースライナー24と基板保持部材18とを結ぶ第1軸X1上から退避している場合には、ハースライナー24と基板保持部材18との間を開放した状態になり、蒸発した成膜物質Gが基板14に付着可能になる。
【0030】
図2及び図3では、シャッタ部材30の羽根部32が第1軸X1上に位置してハースライナー24と基板14との間を閉じている状態を示している。その状態から回転して基板14を開放したときの下流側端部32Bの位置が、ハースライナー24と基板14との間を閉じていたときの上流側端部32Aの位置に重なるように設定されている。
【0031】
シャッタ部材30が開閉動作を行う前の各羽根部32の待機位置は、上流側端部32Aから基板14までの距離と、下流側端部32Bから基板14までの距離と、が同じ距離になるように設定されている。ここで、「シャッタ部材30が開閉動作を行う前の各羽根部32の待機位置」とは、例えば、図2及び図3に示されるように、一方の羽根部32が第1軸X1上に位置して基板14を閉じている位置をいい、これがシャッタ部材30の開閉動作前の位置になる。
【0032】
図1に示すように、箱体12の上部であって第1軸X1から所定の距離だけ離れた位置に、基板14に成膜された膜厚を測定するための膜厚検出部35が設けられている。膜厚検出部35は、水晶振動子36を備えており、水晶振動子36に付着した成膜物質Gを計測することにより、基板14の膜厚を推定する。具体的には、膜厚検出部35は、水晶振動子36に付着した成膜物質Gの重さによって、発振周波数が低くなることを利用し、逆に発振周波数を正確に測定することによって、成膜物質Gの重さ、すなわち膜厚を計算する。なお、膜厚検出部35による膜厚の検出結果は、信号として制御部38に出力される。
【0033】
成膜装置10は、制御部38を備えている。制御部38は、基板回転駆動機構20、シャッタ回転駆動機構28及び電子ビーム発射装置26の駆動を制御する。制御部38は、内蔵された記憶部(記憶手段)38Aに記憶されたプログラムと、基板回転座標検出部22から出力される基板14の回転座標に関する検出信号及びシャッタ回転座標検出部34から出力されるシャッタ部材30の回転座標に関する検出信号と、に基づいて、基板回転駆動機構20及びシャッタ回転駆動機構28の駆動を制御する。また、制御部38は、内蔵された記憶部38Aに記憶されたプログラムに基づいて、電子ビーム発射装置26の駆動を制御する。
【0034】
次に、本実施形態の成膜装置10の作用及び成膜方法について説明する。
【0035】
図1に示すように、ハースライナー24の鉛直上方に位置した基板保持部材18によって基板14が水平に保持される。
【0036】
基板保持部材18が基板回転駆動機構20によって回転され、基板回転座標検出部22によって基板14の回転座標を検出しながら、基板14が所定の設定速度で回転する。なお、制御部38は、基板回転駆動機構20の駆動を制御し、基板回転座標検出部22から入力される基板14の回転座標に関する信号を得て、場合によっては基板回転駆動機構20の回転速度を調整する。
【0037】
基板14に対する成膜が開始する。成膜は、ハースライナー24に収容された成膜物質Gに電子ビームBが照射されることによって蒸発し、これが基板14の表面に付着することにより行われる。電子ビームBは、制御部38によって発射タイミング及びビーム強度が制御された電子ビーム発射装置26から発射される。成膜中においては、基板14は、回転軸16の軸回りに所定の回転速度で回転を継続する。
【0038】
制御部38によりシャッタ回転駆動機構28が駆動され、シャッタ部材30が所定の回転角で回転する。なお、シャッタ部材30の回転方向は、一方向のみに設定されている。ここで、シャッタ回転座標検出部34によってシャッタ部材30の回転座標が信号として制御部38に出力されるため、シャッタ部材30の回転座標と基板14の回転座標との関係を制御部38で把握することができる。
【0039】
ここで、図4を用いてシャッタ部材30の開閉動作について説明する。図4は成膜装置10における基板14とシャッタ部材30を鉛直方向から見た図である。
【0040】
図4(A)に示すように、基板14の成膜開始直前においてシャッタ部材30の羽根部32が第1軸X1上に位置して基板14をハースライナー24から遮断している状態になっている。基板14の成膜開始時には、シャッタ部材30が図4(A)に示す状態から基板14の回転と同期するようにして回転し、図4(B)に示す第1軸X1から退避した位置に移動する。図4(B)に示すように、基板14の成膜中では、基板14とハースライナー24との間が開放される。図4(B)に示す基板14の成膜中では、基板14が回転し続け、シャッタ部材30の回転が停止した状態になる。図4(B)に示す状態で、基板14の表面に蒸発した成膜物質Gが付着して成膜されていく。
【0041】
なお、基板14とシャッタ部材30とが同じ角速度で回転させる構成に限られるものではなく、例えば、基板14が5回転する間にシャッタ部材30が1/4だけ回転してもよい。要するに、開放開始時と遮断開始時のシャッタ部材30の回転速度がそれぞれ同じであり、開放開始時と遮断開始時の基板14の回転速度がそれぞれ同じとなるように制御すればよい。
【0042】
基板14の成膜が終了するときには、シャッタ部材30が基板14の回転速度と同期して回転し、羽根部32が基板14を閉じようとする。なお、図4(C)は、シャッタ部材30が閉動作を行う直前の図である。
【0043】
次に、シャッタ部材30の開動作について詳細に説明する。なお、シャッタ部材30の開動作は、基板14を成膜するときに行うシャッタ部材30の動作である。
【0044】
図5は、開動作するときのシャッタ部材30と基板14を鉛直方向から見た図である。基板14は所定の回転速度で回転している。図5(A)に示すように、シャッタ部材30が開動作する直前は、羽根部32が基板14をハースライナー24から遮断した状態になっている。このとき、シャッタ部材30の回転座標と基板14の回転座標が記憶部38Aに記憶される。図5(B)に示すように、シャッタ部材30が所定の回転速度で回転し開動作を行う。これにより基板14の一部が露出した状態になり、羽根部32の回転角に伴い、基板14の露出する面積が徐々に大きくなるように変化していく。そして、図5(C)に示すように、羽根部32が基板14をハースライナー24から完全に開放し、基板14の表面の領域が全て露出する。
【0045】
次に、シャッタ部材30の閉動作について詳細に説明する。なお、シャッタ部材30の閉動作は、基板14の成膜が終了したときに行うシャッタ部材30の動作である。
【0046】
図6は、閉動作するときのシャッタ部材30と基板14を鉛直方向から見た図である。基板14は所定の回転速度で回転しており、開動作するときの基板14の回転速度と同一である。図6(A)に示すように、シャッタ部材30が閉動作する直前は、基板14がハースライナー24に対して完全に露出した状態になっている。このとき基板14の回転座標は、図5(A)にて記憶部38Aにて記憶された回転座標と同じである。また、シャッタ部材30についていえば、開動作する直前の下流側端部Bの位置と、閉動作する直前の上流側端部Aの位置が一致するようになっている。図6(B)に示すように、シャッタ部材30が閉動作を行うと、シャッタ部材30が所定の回転速度で回転する。このときのシャッタ部材30の回転速度、回転方向は、図5(B)にて開動作を行うときの所定の回転速度、回転方向と同一である。シャッタ部材30の回転により、基板14の一部が隠れた状態になり、羽根部32の回転角に伴い、基板14の露出する面積が徐々に小さくなるように変化していく。そして、図6(C)に示すように、羽根部32が基板14をハースライナー24から完全に遮断し、基板14の表面の領域が羽根部32に隠れる。
【0047】
なお、図5(A)及び図6(A)に示すように、シャッタ部材30の開動作のスタート時の基板14の回転座標と、シャッタ部材30の閉動作のスタート時の基板14の回転座標と、が同じ位置となるように設定されている。具体的には、シャッタ部材30の開動作のスタート時の基板14のオリフラ14Aの位置と、シャッタ部材30の閉動作のスタート時の基板14のオリフラ14Aの位置と、が同じ位置となる。
【0048】
次に、シャッタ部材30が開いて基板14がハースライナー24に対して露出してからシャッタ部材30が閉じて基板14がハースライナー24から遮断するまでの制御部38による制御内容について説明する。
【0049】
制御部38は、成膜された基板14の膜厚が所定の目標膜厚となるように基板14、シャッタ部材30及び電子ビーム発射装置26の駆動を制御する。具体的には、制御部38は、シャッタ部材30の羽根部32が基板14を開放して成膜を開始したときの基板14の回転座標を記憶する。なお、基板14の回転座標は、制御部38に内蔵された記憶部38Aにより記憶される。
【0050】
制御部38は、膜厚検出部35からの膜厚に関する信号に基づいて基板14の目標膜厚に至る時間を算出する。そして、制御部38は、基板14の目標膜厚に至る時間に、基板14が成膜を開始した回転座標にくるように、回転動作中の基板14の回転速度を制御する。基板14は、制御部38により回転速度を制御された状態で、成膜される。
【0051】
そして、制御部38は、基板14の目標膜厚に至る時間に、成膜を開始したときの基板14の回転速度と同じ回転速度で基板14を回転させ、かつ成膜を開始したときの基板14の回転速度と同じ回転速度でシャッタを回転させ、両者が同期するように制御する。これにより、基板14とシャッタ部材30とが同期した状態でシャッタ部材30の羽根部32が基板14をハースライナー24から遮断して、成膜が終了する。
【0052】
本実施形態によれば、図2及び図3に示すように、シャッタ部材30の羽根部32が第1軸X1上に位置してハースライナー24と基板14との間を閉じている状態から回転して基板14を開放したときの下流側端部32Bの位置が、シャッタ部材30の羽根部32が第1軸X1上に位置してハースライナー24と基板14との間を閉じていたときの上流側端部32Aの位置に重なるように設定されている。また、シャッタ部材30が開閉動作を行う前の各羽根部32の待機位置は、上流側端部32Aから基板14までの距離と、下流側端部32Bから基板14までの距離と、が同じ距離になるように設定されている。さらに、シャッタ部材30の開動作時と閉動作時おいて、基板14とシャッタ部材30とがそれぞれ同一方向に同じ回転速度にて同期して回転する。これらにより、基板14の表面上の各領域において、ハースライナー24に対する露出時間を同じに制御することができる。この結果、成膜された基板14の膜の膜厚を一定にすることができ、膜厚ムラが発生することを防止できる。
【0053】
特に、制御部38は、シャッタ部材30が基板14を開放するときの基板14の回転座標とシャッタ部材30が基板14をハースライナー24から遮断するときの基板14の回転座標とを合わせ、かつシャッタ部材30の回転速度と基板14の回転速度とを開動作時と閉動作時とで同期させてシャッタ部材30及び基板14を同じ回転速度で回転させるため、シャッタ部材30と基板14との回転速度の相違によって基板表面上の露出時間にずれが発生することを阻止することができる。
【0054】
また、シャッタ部材30が基板14をハースライナー24から遮断している状態から回転して基板14を開放したときの下流側端部32Bの位置が、シャッタ部材30が基板14をハースライナー24から遮断しているときの上流側端部32Aの位置に重なるように、制御部38がシャッタ部材30の基板14に対する位置を調整することにより、基板14の成膜中においては、シャッタ部材30が基板14の一部を遮断して成膜を妨げることがない。この結果、シャッタ部材30の形状によって基板表面上の露出時間にずれが発生することを阻止することができる。
【0055】
また、開閉動作を行う前のシャッタ部材30の待機位置は、上流側端部32Aから基板までの距離と、下流側端部32Bから基板14までの距離と、が同じ距離になるように設定されているため、シャッタ部材30の回転速度と回転座標によって基板表面上の露出時間にずれが発生することを阻止することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 成膜装置
14 基板
20 基板回転駆動機構(基板回転手段)
22 基板回転座標検出部(基板回転座標検出手段)
24 ハースライナー(成膜源)
28 シャッタ回転駆動機構(シャッタ駆動手段)
30 シャッタ部材(シャッタ)
32A 上流側端部
32B 下流側端部
34 シャッタ回転座標検出部(シャッタ回転座標検出手段)
35 膜厚検出部(膜厚測定手段)
38 制御部(制御手段)
38A 記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を成膜するための成膜源と、
基板の中心を中心軸として回転させる基板回転手段と、
基板の回転座標を検出する回転座標検出手段と、
基板の成膜領域から外側にある位置を回転軸として回転することにより、成膜源と基板との間を開放又は遮断するシャッタと、
前記シャッタを前記回転軸の軸回りに回転させるシャッタ駆動手段と、
前記シャッタが成膜源と基板との間を開放開始するときの基板の回転座標を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された基板の回転座標と同じ回転座標のときに前記シャッタが成膜源と基板との間を遮断開始するように前記シャッタ駆動手段を制御する制御手段と、
を有する成膜装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記基板の回転速度、前記シャッタの回転速度及び回転方向のそれぞれが、前記シャッタが前記基板を開放開始するときと遮断開始するときで同一となるように、前記基板回転手段及び前記シャッタ駆動手段を制御する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記シャッタは、回転時に前記成膜源と前記基板との間を横切る上流側端部と下流側端部とを有し、前記シャッタが前記基板を前記成膜源から開放するときの前記下流側端部の形状と、前記シャッタが前記基板を前記成膜源から遮断するときの前記上流側端部の形状が、前記シャッタの回転軸回りに回転させることで一致する請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記シャッタの回転座標を検出するシャッタ回転座標検出手段を有し、
前記開閉動作を行う前の前記シャッタの待機位置では、閉動作開始前の待機位置における前記上流側端部から前記基板までの距離と、開動作開始前の待機位置における前記下流側端部から前記基板までの距離と、が同じ距離になるように設定されており、
前記制御手段は、前記シャッタの回転速度と回転座標とを制御する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
成膜される前記基板の膜の膜厚を測定するための膜厚測定手段を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
基板の中心を中心軸として基板回転手段により回転させる工程と、
基板の回転座標を回転座標検出手段により検出する工程と、
基板の成膜領域から外側にある位置を回転軸として回転することにより、成膜源と基板との間をシャッタにより開放又は遮断する工程と、
前記シャッタをシャッタ駆動手段により前記回転軸の軸回りに回転させる工程と、
前記シャッタが成膜源と基板との間を開放開始するときの基板の回転座標を記憶手段に記憶する工程と、
前記記憶手段に記憶された基板の回転座標と同じ回転座標のときに前記シャッタが成膜源と基板との間を遮断開始するように前記シャッタ駆動手段を制御手段により制御する工程と、
を有する成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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