説明

成膜装置

【課題】基板を搬送しながら成膜を行う成膜装置において、設備を大型化することなくサイクル数増やして成膜を行うことができる成膜装置を提供する。
【解決手段】基板104を搬送しながら気相状態にある原料を用いて基板104に薄膜を形成する成膜装置であって、基板104を基板搬送機構107により、成膜用ドラム102の周速より遅い速度で成膜用ドラム102の外0周面に沿い連続的または断続的に搬送する。この状態で、前記成膜用ドラム102の外周面に設けられた成膜源201A,201B,202A,202Bから原料を気相状態で基板104に向け放出し、基板104の成膜用ドラム102と対向する面に成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相を用いて基板に薄膜を形成する成膜装置に関する。より詳しくは、基板を搬送しながら成膜を行う量産対応可能な成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気相を用いて薄膜を形成する方法は、大別して化学的気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)と物理的気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)がある。
【0003】
PVDとして代表的なものには真空蒸着法やスパッタ法などがあり、特にスパッタ法では一般に装置コストは高いが膜質と膜厚の均一性に優れた高品質の薄膜の作製が行えるため、表示デバイスなどに広く応用されている。
【0004】
CVDは真空チャンバー内に原料ガスを導入し、熱エネルギーによって基板上で1種類あるいは2種類以上のガスを分解または反応させて固体薄膜を成長させるものである。
また、CVDの反応を促進させるため、または/及び、反応温度を下げるため、プラズマや触媒(Catalyst)反応を併用するものもあり、それぞれPECVD(Plasma Enhanced CVD)、Cat−CVDなどと呼ばれている。
CVDでは成膜欠陥が少ないことが特徴であり、ゲート絶縁膜の成膜など半導体デバイス製造工程に主に適用される。近年は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)も注目されている。
【0005】
ALDは、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法で、CVDの範疇に分類される。ALDが一般的なCVDと区別されるのは、いわゆるCVDが単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基板上で反応させて薄膜を成長させるのに対して、ALDでは前駆体(またはプリカーサーともいう)と呼ばれる活性に富んだガスと反応性ガス(これもまたALDでは前駆体と呼ばれる)を交互に用い、基板表面における吸着と続く化学反応によって原子レベルで1層ずつ薄膜を成長させていく特殊な成膜方法にある。
【0006】
具体的には、表面吸着において表面がある種のガスで覆われるとそれ以上そのガスの吸着が生じないself-limiting効果を利用し、前駆体が1層吸着したところで未反応の前駆体を排気する。続いて反応性ガスを導入して先の前駆体を酸化または還元して所望の組成を有する薄膜を1層得たのち反応性ガスを排気する。これを1サイクルとし、このサイクルを繰り返して薄膜を成長させていくものである。従ってALDでは薄膜は2次元的に成長する。またALDでは従来の蒸着やスパッタなどとの比較ではもちろん、一般的なCVDなどと比較しても成膜欠陥が少ないことが特徴であり、様々な分野に応用が期待されている。
【0007】
また第二の前駆体を分解し、基板に吸着している第一の前駆体と反応させる工程において、反応を活性化させるためにプラズマを用いる方法があり、これはプラズマ活性化ALD(PEALD:plasma enhanced ALD)または単にプラズマALDと呼ばれる。
【0008】
ALD技術そのものは、1974年にフィンランドのDr. Tuomo Suntolaによって提唱された。高品質高密度な膜が得られるためゲート絶縁膜など半導体産業で応用が進められており、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)にも記載がある。また他の成膜法と比較して斜影効果が無いなどの特徴があるため、ガスが入り込める隙間があれば成膜が可能であり、高アスペクト比を有するラインやホールの被覆のほか、3次元構造物の被覆用途でMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)関連にも応用が期待されている。
【0009】
しかし、ALD技術は欠点もある。その1つとして特殊な材料を使用する点やそのコスト等が挙げられるが、最大の欠点は成膜速度が遅いことである。蒸着やスパッタなどの成膜法と比較して5〜10倍ほど遅い。
【0010】
以上述べてきたような成膜法を用いて薄膜を形成する対象は、ウェハーやフォトマスクなどの小さな板状の基板、ガラス板などの大面積でフレキシブル性が無い基板、フィルムなどの大面積でフレキシブル性がある基板など様々に存在する。これに対応して、これらの基板に薄膜を形成するための量産設備では、コスト、取り扱いの容易さ、成膜品質などによって様々な基板の取り扱い法が提案され、実用化されている。
例えば、ウェハーでは基板一枚を成膜装置に供給して成膜した後、次の基板に入れ換えて再び成膜を行う枚葉式や、複数の基板をまとめてセットし全てのウェハーに同一の成膜を行うバッチ式などがある。
【0011】
またガラス基板などに成膜を行う例では、成膜の源となる部分に対して基板を逐次搬送しながら同時に成膜を行うインライン式や、主にフレシキブル基板に適用されているように、ロールから基板を巻き出し、搬送しながら成膜を行い、別のロールに基板を巻き取る、いわゆるロールツーロールによるwebコーティングがある。また、フレシキブル基板だけでなく、成膜対象となる基板を連続搬送できるようなフレキシブルなシートまたは一部がフレシキブルとなるようなトレイに載せて連続成膜するwebコーティングも後者に含まれる。
これらいずれの成膜法、基板取り扱い法も、コスト、品質、取り扱いの容易さなどから判断して最適な組み合わせが採用される。
【0012】
一方、光学膜など用途によっては異なる種類の薄膜を多層成膜する必要がある。またALD法では、膜厚によっては100〜200サイクルの前駆体曝露を実施して成膜が行われる。このような場合、フレシキブル基板を用いたwebコーティングでは一層に対して一成膜源が必要となる(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2006/093168号公報
【特許文献2】特表2007−522344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、基板を搬送しながら前述の多層膜または多サイクルの成膜を行う際に、従来の方法では層数またはサイクル数が増えるに従って設備が大型化し、生産コスト及び設備占有面積が増大するという問題があった。
【0015】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、設備を大型化することなくサイクル数を増やして成膜を行うことができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、成膜装置であって、成膜用のチャンバーと、前記チャンバー内に回転可能に設けられ、独立して回転駆動される成膜用ドラムと、基板を前記成膜用ドラムの周速より遅い速度で前記成膜用ドラムの外周面と間隔をおきかつ前記外周面に沿い連続的または断続的に搬送する基板搬送手段と、前記成膜用ドラムの外周面に設けられ原料を気相状態で前記基板に向け放出して当該基板の前記成膜用ドラムと対向する面に成膜する成膜源とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の成膜装置において、前記基板はフレキシブル基板であることを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の成膜装置において、前記成膜源は、前記成膜用ドラムの外周面に該成膜用ドラムの円周方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1乃至3に何れか1項記載の成膜装置において、前記成膜用ドラムは、前記成膜源から前記基板に向け放出される気相状態の原料を均一な濃度に保持する凹部を有することを特徴とする。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1乃至4に何れか1項記載の成膜装置において、前記成膜源による前記基板への成膜は化学的気相成長法により行われることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1乃至4に何れか1項記載の成膜装置において、前記成膜源による前記基板への成膜は原子層堆積法により行われることを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1乃至6に何れか1項記載の成膜装置において、前記成膜用ドラムは、前記成膜源から前記基板に向け放出される気相状態の原料をプラズマ化するプラズマ生成手段を備えることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1乃至7に何れか1項記載の成膜装置において、前記成膜用ドラムは、前記基板を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明は、請求項8記載の成膜装置において、前記加熱手段はフラッシュランプであることを特徴とする。
【0024】
請求項10の発明は、請求項3乃至9に何れか1項記載の成膜装置において、前記成膜用ドラムは、前記各成膜源から前記基板に向け放出される気相状態の原料の間を隔離するパージガス放出手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、成膜用ドラムが一回転するごとに少なくとも一層の成膜が可能になるため、基板の搬送速度よりも速い速度で成膜用ドラムを回転させることで、ロールツーロールによる成膜であっても、多層膜の形成を効率的に行うことができる。また、成膜源が原子層堆積法(ALD法)にあってはサイクル数を増やすことができる。さらに、これらは多層化や多サイクル化に伴う設備の大型化や占有面積の増大を抑制することが可能になる。
【0026】
また本発明によれば、成膜用ドラムに設けられた凹部が、気相状態の原料ガス(または前駆体)の空間分布を均一化し、成膜時の膜厚の均一性を向上できる。
【0027】
また本発明によれば、成膜用ドラムに加熱手段または/及びプラズマ生成手段が設けられているため、効率的に成膜が可能になり、かつ成膜時間が短縮できるとともに、膜の品質も高めることができる。
【0028】
また本発明によれば、フレキシブル基板を用いることで成膜用ドラムとの隙間を最小限にすることができ、基板の搬送をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のALD法による成膜装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のALD法による成膜装置の一例を概略的に示す縦断側面図である。
【図3】本発明の成膜装置に含まれる成膜用ドラムの他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施の形態)
以下、本発明かかる成膜装置の実施の形態について、図1及び図2を参照しながら具体的に説明する。
この実施の形態では、ALD法(原子層堆積法)による成膜装置について説明する。ただし、本発明の成膜装置はALD法に限らず、CVD法やスパッタリング法、あるいはその他の方法による成膜装置においても同様に適用できる。また、本実施の形態では、基板にフレキシブル基板としてフィルムを代表に用いているが、ガラスやウェハーなどフレキシブルでないものであっても、成膜用ドラムの外周面に沿って搬送できる形態であれば、本発明が適用できる。例えば、小さな基板を搬送用シートに固定して搬送する場合などがこれにあたる。ただし、フレキシブル基板を使用する場合が最も効果的に本発明を実施できる。
【0031】
ALD法による成膜装置100は、図1及び図2に示すように、成膜用のチャンバー101と、成膜用ドラム102と、基板搬送機構(特許得請求の範囲に記載した基板搬送手段に相当する)107と、例えば4個の成膜源201A、201B、202A、202Bと、例えば4個のパージガス放出部(特許得請求の範囲に記載したパージガス放出手段に相当する)203とを備える。
【0032】
チャンバー101は、所定の幅を有するフィルム状のフレキシブル基板(以下、単に基板という)104に、気相となる原料ガスを使用して成膜するために、基板104、基板搬送機構107、成膜用ドラム102等を収容するもので、一般的に真空状態に保持されている。そのためにチャンバー101内は、チャンバー101に設けられた排気口1012を通して、真空バルブ、水冷トラップ及び排気用真空ポンプ等からなる、図示省略した周知の真空排気機構に排気され、ALD法に適合した真空度に制御されるようになっている。また、真空排気機構による排気に伴い、チャンバー101内には、不活性ガスが導入されるとともに、各成膜源から漏れる原料ガスも真空排気機構よって排気される構成になっている。
【0033】
成膜用ドラム102は、基板104に成膜を行うもので、チャンバー101内に回転可能に配設され、さらに、図示省略した駆動装置により独立して回転駆動される構成になっている。
成膜用ドラム102は、その1回転で基板104に薄膜を複数層形成するのに必要な4個の成膜源201A、201B、202A、202Bと、4個のパージガス放出部203を設け得る直径及び周長と基板104の幅に対応した長さを有する円筒部1021と、この円筒部1021の両端に設けられ、円筒部1021の直径より大きい径のリング状の基板ガイド部1022とを有する。この両基板ガイド部1022は、その外周面に基板104の幅方向の両端を接触させることにより、基板104を成膜用ドラム102の外周面に沿って搬送可能に案内するとともに、基板104と円筒部1021との間に隙間(クリアランス)を形成する。この隙間はできるだけ狭い方、すなわち基板104が成膜用ドラム102にできるだけ近い方が好ましい。
【0034】
円筒部1021の外周面には、4個の成膜源201A、201B、202A、202Bと4個のパージガス放出部203のそれぞれに対応する数(例えば8個)の凹部103が円筒部1021の円周方向に一定の間隔をおいて設けられ、各凹部103は隔壁1031により区画されている。また、これら凹部103は、円筒部1021の中心軸線方向に延在する長さと円筒部1021の円周方向に延びる幅を有している。
このような凹部103の主な目的は、成膜源201A、201B、202A、202Bから基板104に向け放出される気相状態の原料ガスを均一な濃度に保持するためのものである。
【0035】
4個の成膜源201A、201B、202A、202Bのうち、成膜源201Aと201Bは、気相状態の原料ガスである第1の前躯体を放出し、成膜源202Aと202Bは、気相状態の原料ガスである第2の前躯体を放出するものである。
前駆体の種類は問わない。成膜種、成膜温度によって適宜選択される。前駆体は装置使用時に気相となっていればよいので、前駆体の保管状態は気相の他、液相、あるいは固相であってもよい。例えば前駆体が液相の場合は加熱やバブリングなどの方法によって導入される。
【0036】
このような成膜源201A、201B、202A、202Bと4個のパージガス放出部203は、図2に示すように、円筒部1021の円周方向に、成膜源201A−パージガス放出部203−成膜源202A−パージガス放出部203−成膜源201B−パージガス放出部203−前躯体202B−パージガス放出部203の配列で、各凹部103内の底部に設けられている。
また、円筒部1021の中心部内には、成膜源201A及び201BのそれぞれにALD用の第1の前躯体となる原料ガスを別々に供給する原料ガス供給機構204A,204Bと、成膜源202A及び202BのそれぞれにALD用の第2の前躯体となる原料ガスを別々に供給する原料ガス供給機構205A,205Bと、各パージガス放出部203のそれぞれにパージガスを別々に供給するパージガス供給機構206が配設されている。
これら原料ガス供給機構204A,204B,205A,205B及びパージガス供給機構206は、成膜用ドラム102の回転及び原料ガスの供給、パージガスの供給に支障を来たさない状態で成膜用ドラム102に組み込まれている。
【0037】
なお、パージガス放出部203は、成膜源201A、201Bから基板104に向け放出される第1の前躯体及び成膜源202A、202Bから基板104に向け放出される第2の前躯体との間を隔離するためのものである。このパージガスには、アルゴンなどの希ガスの他、成膜種に影響しない範囲においてあらゆる種類のガスが使用できる。
【0038】
基板搬送機構107は、基板104を成膜用ドラム102の周速より遅い速度で成膜用ドラム102の外周面と間隔をおき、かつ成膜用ドラム102の外周面に沿い連続的または断続的に搬送するものであり、図2に示すように、ロール状に巻回されたフィルム状の基板104を巻き出す巻出し機構1071と、成膜用ドラム102の部分で成膜された後のフィルム状基板104を巻き取る巻取り機構1072とを備える。
巻取り機構1072は、トルク量と巻取り搬送速度を独立に制御できる周知のサーボモータ等を備える。また、巻出し機構1071は、一定の張力をかけつつ、基板104の繰り出しを可能にする周知のブレーキ機構等を含んで構成される。
さらに、基板搬送機構107は、成膜用ドラム102の巻出し機構1071側で、成膜用ドラム102の回転軸線と平行に、かつ成膜用ドラム102の両基板ガイド部1022間に差し渡し状態に配置され、基板104の成膜用ドラム102への導入位置を設定するガイドロール105と、成膜用ドラム102の巻取り機構1072側で、成膜用ドラム102の回転軸線と平行に、かつ成膜用ドラム102の両基板ガイド部1022間に差し渡し状態に配置され、基板104の成膜用ドラム102からの引き出し位置を設定するガイドロール106を備える。この両ガイドロール105と106により、基板104を成膜用ドラム102の両基板ガイド部1022の外周面にのみ接触させ、かつ300度の角度範囲に亘り巻き掛けられた状態に保持する。
【0039】
次に、本実施の形態に示すALD成膜装置により基板104に成膜する場合について説明する。
成膜源201A,201B,202A,202B及びパージガス放出部203と、これらの原料ガス供給機構204A,204B,205A,205B及びパージガス供給機構206を作動させ、成膜源201Aと201Bから原料ガスである第1の前躯体を放出し、成膜源202Aと202Bから原料ガスである第2の前躯体を放出する。さらに、パージガス放出部203からパージガスを放出する。この状態で、成膜用ドラム102を回転駆動するとともに、基板搬送機構107を起動して、基板104を成膜用ドラム102の周速より遅い速度で成膜用ドラム102の外周面に沿い連続的または断続的に搬送させる。
【0040】
ここで、基板104の表面における第1及び第2の前躯体との表面反応を必要とするALD処理では、第1及び第2の前躯体と称される活性に富んだガスと反応性ガスを交互に用い、基板表面における吸着と化学反応によって原子レベルで1層ずつ薄膜を成長させていく。そして、基板の表面吸着において、その表面がある種のガスで覆われるとそれ以上そのガスの吸着が生じないセルフ・リミッティング効果を利用して、前駆体が1層吸着したところで未反応の前駆体を排気する。続いて反応性ガスを導入して先の前駆体を酸化または還元して所望の組成を有する薄膜を1層得たのち反応性ガスを排気する。これを1サイクルとし、このサイクルを繰り返して薄膜を成長させていく。
【0041】
さらに、本実施の形態に示すALD成膜装置では、基板104を成膜用ドラム102の周速より遅い速度で搬送することにより、例えば、成膜源201A、201B、202A、202Bと4個のパージガス放出部203を、図2の矢印に示す方向に回転する成膜用ドラム102の円周方向に、成膜源201A−パージガス放出部203−成膜源202A−パージガス放出部203−成膜源201B−パージガス放出部203−前躯体202B−パージガス放出部203の順で配列した状態で、基板104を成膜用ドラム102の周速より遅い速度で搬送する。これにより、成膜用ドラム102が上述の配列順に従って、第1の前駆体、第2のパージガス、第2の前駆体、第2のパージガスの4系統のガス放出機構を2組有する成膜用ドラム102を、例えば100回転させたとすると、この間に、基板104が成膜用ドラム102の周囲を一回通過する(すなわち成膜用ドラム102の円周分の距離を進む)ケースでは、基板104が成膜用ドラム102の周囲を通過する間に基板104には200層分の成膜が行なわれることになる。
【0042】
このような本実施の形態に示すALD成膜装置によれば、基板104を成膜用ドラム102の周速より遅い速度で搬送しながら基板104上に気相を介して薄膜を作製する工程において、多層膜を形成する際、あるいはALD法による成膜において比較的厚い膜を得る際に、設備を大規模化することなくサイクル数増やして成膜を行うことができ、量産化が可能で、生産コストも低減することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図3により、本発明にかかる成膜装置の他の例について説明する。
図3において、図1と同一の部分または相当する部分には図1と同一の符号を付してその構成説明を省略し、図1と異なる部分を重点に述べる。
図1と異なる点は、図3からも明らかなように、成膜用ドラム102を構成する円筒部1021において、互いに隣接する凹部103に位置する隔壁1032の外周面箇所に、基板104を加熱する、フラッシュランプ等からなる加熱手段210を埋設したこと、及び一部または全部の成膜源から基板104に向け放出される原料ガスをプラズマ化するプラズマ生成手段211を凹部103内に位置して円筒部1021に設けたところにある。
【0044】
このような第2の実施の形態によれば、上記第2実施の形態に示す場合と同様な効果が得られるほか、加熱手段210または/及びプラズマ生成手段211が設けられているため、効率的に成膜が可能になり、かつ成膜時間が短縮できるとともに、膜の品質も高めることができる。
また、加熱手段210を備えることにより、前駆体が吸着した基板を加熱することによって反応を促進し薄膜の成長を促すことができる。そして、熱源としてフラッシュランプを用いると、温度制御が比較的容易であり、また輻射熱を利用することができるため効率的である。さらに、熱を伝えたくない部分に対しては水冷機構を設けて温度を制御することもきる。
【0045】
また、プラズマを発生または照射させる機構を備えることにより、前駆体の反応を促進し薄膜の成長を促すことができる。この場合、プラズマの発生方法には規定は無い。高周波(RF)放電やDC放電の他、誘導結合によるプラズマ生成(ICP)など、公知の技術が使用できる。
【0046】
なお、本発明の成膜装置は、ALD法に限らず、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法、バイアス高密度プラズマCVD法または熱酸化法を利用して成膜することも可能である。
また、本発明かかる成膜装置の成膜用ドラム102に設けられる成膜源の数は、実施の形態に示すように複数に限らず、1個であってもよい。
また、CVD法による成膜装置の場合は、上記第1の実施の形態に示したパージガス放出部を成膜源に置き換えることが可能である。
また、上記第1の実施の形態では、基板104の成膜面に傷が入るのを避けるために、基板104の幅方向の両端を成膜用ドラム102の両端に設けられた両基板ガイド部1022に接触させる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、基板104の幅方向の寸法が大きくなった場合は、基板104の幅方向の中央の一部が接触するガイド部を円筒部1021に設ける。これにより、基板104が撓むのを防止し、基板104の成膜面に傷が入るのを防止できる。
【符号の説明】
【0047】
100 成膜装置
101 チャンバー
102 成膜用ドラム
103 凹部
104 基板
105,106 ガイドロール
107 基板搬送機構
201A,201B,202A,202B 成膜源
203 パージガス放出手段
210 加熱手段
211 プラズマ生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜用のチャンバーと、
前記チャンバー内に回転可能に設けられ、独立して回転駆動される成膜用ドラムと、
基板を前記成膜用ドラムの周速より遅い速度で前記成膜用ドラムの外周面と間隔をおきかつ前記外周面に沿い連続的または断続的に搬送する基板搬送手段と、
前記成膜用ドラムの外周面に設けられ原料を気相状態で前記基板に向け放出して当該基板の前記成膜用ドラムと対向する面に成膜する成膜源と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記基板はフレキシブル基板であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記成膜源は、前記成膜用ドラムの外周面に該成膜用ドラムの円周方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜用ドラムは、前記成膜源から前記基板に向け放出される気相状態の原料を均一な濃度に保持する凹部を有することを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
前記成膜源による前記基板への成膜は化学的気相成長法により行われることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の成膜装置。
【請求項6】
前記成膜源による前記基板への成膜は原子層堆積法により行われることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の成膜装置。
【請求項7】
前記成膜用ドラムは、前記成膜源から前記基板に向け放出される気相状態の原料をプラズマ化するプラズマ生成手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の成膜装置。
【請求項8】
前記成膜用ドラムは、前記基板を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の成膜装置。
【請求項9】
前記加熱手段はフラッシュランプであることを特徴とする請求項8記載の成膜装置。
【請求項10】
前記成膜用ドラムは、前記各成膜源から前記基板に向け放出される気相状態の原料の間を隔離するパージガス放出手段を備えることを特徴とする請求項3乃至9に何れか1項記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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