説明

戦闘用装置

【課題】オペレータの人的負担を軽減しながら、オペレータの認識状況や通信環境に左右されずに、瞬時の判断及び行動を実施することを可能とした戦闘用装置を提供する。
【解決手段】自律又は遠隔操縦によって走行及びミッションが実行可能な戦闘用装置であって、車両1と、車両1周辺の環境について車両環境情報を有するデータベースと、遠隔操縦を行う場所に設置された無人機エージェント、を備え、無人機エージェントは、車両環境情報に基づいて走行及びミッションについて制御方法の選択を行う車両制御機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律又は遠隔操縦によって、走行及び目標物に対する偵察や攻撃等を行う戦闘用装置に関する。
【0002】
市街地等での戦闘において、敵からの攻撃に対しての犠牲を抑制するために、特許文献1のような陸上用無人機(以下、UGV)が使用されている。
【0003】
特許文献1は、UGVに偵察カメラ、火器を搭載し、遠隔操縦により、敵を発見した際に射撃する装置についてのものである。さらに、UGVは、現在位置と3次元地図情報を参照し、危険地域や攻撃可能地域等を算出し表示することが可能であり、これによって誤射や敵からの攻撃に対する危険回避や射撃の精度向上を図っている。
【0004】
上記特許文献1によって、装甲車等の車両の上部に、機関銃等の銃からなる銃塔を設けて、射撃手が上半身を車外に露出しながら射撃を行う従前の方法と比較して、人的犠牲の抑止が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2005−308282号公報「火器装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、遠隔操縦によってUGVを操作しているが、瞬時の判断が要求される状況(敵との遭遇等)の場合に、オペレータがUGVから送られてくる情報をモニター経由で確認しているため、UGV側での撮影状況によっては、状況認識が容易ではないため、瞬時の判断が行えないという問題があった。
また、通信環境の優劣によっては、UGVからの情報伝達遅延が発生し、かかる場合においても、瞬時の反射行動や攻撃を行うことが困難である場合が発生することもあった。
一方、UGVを走行させることと、偵察、警戒等のミッションを1人のオペレータが同時に行うことは極めて困難であり、複数人で分担して任務を行っていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、オペレータの人的負担を軽減しながら、オペレータの認識状況や通信環境に左右されずに、瞬時の判断及び行動を実施することを可能とした戦闘用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、自律又は遠隔操縦によって走行及びミッションが実行可能な戦闘用装置であって、
車両と、
前記車両周辺の環境について車両環境情報を有するデータベースと、
前記遠隔操縦を行う場所に設置された無人機エージェントと、を備え、
前記無人機エージェントは、前記車両環境情報に基づいて前記走行及び前記ミッションについて制御方法の選択を行う車両制御機構を有する、ことを特徴とする戦闘用装置が提供される。
さらに、前記無人機エージェントは、前記遠隔操縦を行うオペレータからの前記走行及び前記ミッションについての指示を単一の機構で前記車両に実行させる指示制御機構を有する。
【0009】
本発明によれば、前記制御方法は、自律、半自律、遠隔操縦を含む選択肢のいずれかからなる。
また、前記車両環境情報は、地図情報、敵味方位置情報、気象情報を含む。
【0010】
本発明によれば、前記車両制御機構は、前記車両環境情報に基づいて前記制御方法を選択する上で評価基準となる走行計画及びミッション計画を立案する。
さらに、前記車両制御機構は、前記走行計画に基づいて前記走行についての前記制御方法を選択し、前記ミッション計画に基づいて前記ミッションについての前記制御方法を選択し、前記車両に対して前記制御方法について指示を与える。
【0011】
また、本発明によれば、前記走行計画は、自律走行の難易度、敵遭遇リスク、任務を含む。
さらに、前記ミッション計画は、通信条件、敵味方条件、視認性を含む。
【0012】
本発明の別の実施例によれば、前記ミッションは、複数のミッション手順からなり、
前記制御方法は、前記ミッション手順ごとに選択を行う。
さらに、前記ミッション手順は、発見、認識、捕捉、追跡、照準、攻撃を含む。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によると、遠隔操縦が困難な状況においても走行とミッションのリアルタイム性を確保することが可能になる。
また、複数オペレータの必要性もしくはオペレータの負担を軽減させることができる。
さらに、無人機エージェントを遠隔操縦側に置くことによって、複数のUGVでミッションを行う場合にも、制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車両側の構成図
【図2】本発明の車両側のブロック図
【図3】本発明の遠隔操縦場所側のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の車両の構成図である。
図2は、本発明の車両側のブロック図である。
この図において、1は車両、2は遠隔操縦火器、3は照準用カメラ、4はGPS、5は無線通信用アンテナ、6はレーザセンサ、7は遠隔操縦用カメラ、8は自律走行用カメラ、9はステアリング用アクチュエータ、10はハンドル、11はブレーキ(アクセル)用アクチュエータ、12はブレーキ(アクセル)、13は車両制御用コンピュータ、14は自律走行用コンピュータ、15は遠隔操縦火器用コンピュータ、16はタイヤ、17はジャイロ、18は通信機である。
【0017】
車両1は、自律走行又は遠隔操縦によって走行を行うため、無人であっても走行することが可能である。
【0018】
遠隔操縦火器2は、この例では車両1の上部に備え付けられているが、側面等の他の位置に配置されていても良い。
また、遠隔操縦火器用コンピュータ15によって目標物に対する攻撃の実施について制御される。
【0019】
照準用カメラ3は、遠隔操縦火器2の照準点の画像又は映像を撮影する。
上記撮影によって得られた情報によってオペレータは攻撃を行うか否かの判断及び攻撃を行う。
【0020】
GPS4は、車両1の現在位置を的確にオペレータが認識するためのものである。
【0021】
無線通信用アンテナ5は、遠隔操縦場所と車両1の通信を行うための機器である。
【0022】
レーザセンサ6は、レーザ光を目標物に投光してレーザ光が返ってくるまでの時間を測定することで、目標物までの距離を測定することができる。
また、遠隔操縦火器2を使用する際に、目標物に確実に着弾させるためにレーザ光を目標物に照射してから射撃を行う際にも使用できる。
【0023】
遠隔操縦用カメラ7は、遠隔操縦によって走行を行う場合に、オペレータが確認するための車両1周辺の映像を撮影するためのカメラである。
【0024】
自律走行用カメラ8は、自律走行を行う際に自律走行用コンピュータ14が、障害物等の存在を確認し、走行可能であるか否かを判断するための情報を撮影するためのものである。
【0025】
車両制御用コンピュータ13は、ステアリング用アクチュエータ9及びブレーキ(アクセル)用アクチュエータ11を操作して走行を行うものである。
【0026】
自律走行用コンピュータ14は、自律走行用カメラ8及びレーザセンサ6の制御を行う。
【0027】
遠隔操縦火器用コンピュータ15は、照準用カメラ3で撮影した映像を元に遠隔操縦火器2の制御を行う。
【0028】
通信機18は、車両1と遠隔操縦場所との通信の制御を行っている。
【0029】
図3は、本発明の遠隔操縦場所側のブロック図である。
この図において、31は走行用操作装置、32は走行用表示装置、33は火器用操作装置、34は火器用表示装置、35は走行用HMI装置、36は火器用HMI装置、37はデータベース、38は無人機エージェント、38aは指示制御機構、38bは車両制御機構、39は通信機、40はアンテナである。
【0030】
走行用操作装置31は、車両1の走行を遠隔操縦によって行っている場合にオペレータから走行についての指示を入力する装置である。
【0031】
走行用表示装置32は、遠隔操縦用カメラ7で撮影した映像を通信機39によって受信し、その映像及び走行の状況に関する情報等を表示する出力装置である。
【0032】
火器用操作装置33は、車両1の攻撃を遠隔操縦によって行っている場合にオペレータから攻撃についての指示を入力する装置である。
【0033】
火器用表示装置34は、照準用カメラ3で撮影した映像を通信機39によって受信し、その映像及び攻撃の結果に関する情報等を表示する出力装置である。
【0034】
走行用HMI装置35は、走行用操作装置31からの入力情報及び走行用表示装置32への出力情報について、オペレータと無人機エージェント38間でそれぞれが理解できるように情報の変換等を行う仲介装置である。
【0035】
火器用HMI装置36は、火器用操作装置33からの入力情報及び火器用表示装置34への出力情報について、オペレータと無人機エージェント38間でそれぞれが理解できるように情報の変換等を行う仲介装置である。
【0036】
データベース37は、走行及びミッションを行う地域の最新状況についての車両環境情報を保有する。
車両環境情報は、例えば、地図情報、敵味方位置情報、気象情報からなる。
【0037】
データベース37を使用することによって、UGVを複数台使用する場合にも更新作業が煩雑にならず、また、ミッションを行う地域の状況が変更された場合にもデータベース37のみを更新することで、瞬時にUGVの行動に反映させることができる。
【0038】
無人機エージェント38は、データベース37に格納されている車両1周辺の環境の内容に応じて、走行機能及びミッション機能についてリアルタイム性が必要な処理の自律制御を行う。
【0039】
この構成によって、オペレータは、大まかな指示や重要な判断についてのみ実施すればよいため、オペレータの作業負担又は複数オペレータの必要性を軽減することができる。
【0040】
指示制御機構38aは、オペレータからの遠隔操縦による走行及びミッションについて、単一の機構でUGVに対して指示を行う機構である。
また、オペレータからの指示が競合した場合に、優先順位をつけてUGVに指示することができる。
【0041】
この構成によって、複数の機能(この例では、走行とミッション)を単一の機構で制御することができるため、オペレータの負担を軽減することができる。
【0042】
車両制御機構38bは、データベース37に格納されている車両環境情報を元に、走行計画及びミッション計画を立案し、これに基づいて、走行とミッションについての制御方式を選択し、車両1に対して指示を行う。
制御方式は、例えば、遠隔操縦、半自律、自律等から選択され、車両1に指示が行われる。
なお、制御方式を選択する際に、走行速度等の別の項目についても決定し、車両1に対して指示を行ってもよい。
【0043】
走行計画は、例えば、自律走行の難易度(例えば、道幅、凹凸、左右折の曲率、時間帯、天候によって判断)、敵遭遇リスク(例えば、低、中、高から選択)、当該位置での任務(例えば、移動のみ、偵察・警戒、敵発見・攻撃から選択)等からなる。
【0044】
ミッション計画は、例えば、通信条件(例えば、通信遅延時間で判断)、敵味方条件(例えば、交戦中、敵潜伏確度高、民間人有無等から選択)、視認性(例えば、時間帯、遮蔽物の有無等から判断)等からなる。
【0045】
なお、ミッションは、例えば、発見、認識、捕捉、追跡、照準、攻撃等のミッション手順からなり、車両制御機構38bは、上記ミッション手順ごとに制御方式の選択を行うことも可能である。
【0046】
以下の表1は、データベース37のミッション計画(例えば、通信条件、敵味方条件、視認性)を元に、ミッション手順ごとに制御方法を選択した場合の具体例である。
【0047】
条件1
1−通信条件:低
2−敵味方条件:交戦中
3−視認性:低

条件2
1−通信条件:低
2−敵味方条件:敵潜伏確度高
3−視認性:高

条件3
1−通信条件:高
2−敵味方条件:民間人のいる可能性有
3−視認性:高

【表1】

【0048】
条件1では、通信条件及び視認性が低い状況、かつ、交戦中であるので、即時判断を行う必要性が発生する場合が考えられる。
そのため、上記条件1においては、遠隔操縦によってオペレータが行う手順を最低限(認識、攻撃)のみに設定し、その他の手順(発見、捕捉、追跡、照準)を自律によって行うように設定している。
【0049】
条件2では、視認性が確保されているので、条件1において遠隔操縦を設定した手順に加えて発見補助、照準を遠隔操縦によって行うように設定している。
【0050】
条件3では、民間人のいる可能性があるため、自律による誤射等を避けるために全ての手順を遠隔操縦によって行うように設定している。
【0051】
以下の表2は、データベース37の車両環境情報から立案した走行計画(例えば、自律走行難易度、敵遭遇リスク、任務)及びミッション計画(例えば、通信条件、敵味方条件、視認性)を元に、走行及びミッション手順ごとに制御方法の選択をした場合の具体例である。
【0052】
【表2】

【0053】
事例1は、移動のみの任務であり、遠隔操縦に適していない状況にあるため、自律走行に設定されている。
【0054】
事例2は、移動のみの任務であるが、自律走行難易度が高いため、遠隔操縦に設定されている。
【0055】
事例3は、敵遭遇リスク及び民間人がいる可能性が高いため、リアルタイム性を確保しつつ重要な判断はオペレータが行うように、認識や攻撃等については遠隔操縦で行うように設定されている。
【0056】
事例4は、敵遭遇リスク及び民間人がいる可能性が高いため、走行については完全自律を行い、オペレータは認識、照準、攻撃に専念できるように設定されている。
【0057】
事例5は、自律走行が困難であり、敵遭遇リスク及び民間人のいる可能性の両方が高い状況である。
さらに、通信条件及び視認性が低であるため、遠隔操縦を行うことも困難であるため、かかる場合にはUGVは退却するように設定されている。
【0058】
表1及び表2に示した走行及びミッションの設定値は例示であるため、状況に応じて随時変更ができるものである。
【0059】
この構成によって、車両制御機構38bが走行とミッションを統括的に制御するため、UGVに実効的な動きをさせることができ、また、リアルタイム性が要求される状況にも対応することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0061】
1 車両、2 遠隔操縦火器、3 照準用カメラ、4 GPS、
5 無線通信用アンテナ、6 レーザセンサ、7 遠隔操縦用カメラ、
8 自律走行用カメラ、9 ステアリング用アクチュエータ、
10 ハンドル、11 ブレーキ(アクセル)用アクチュエータ、
12 ブレーキ(アクセル)、13 車両制御用コンピュータ、
14 自律走行用コンピュータ、15 遠隔操縦火器用コンピュータ、
16 タイヤ、17 ジャイロ、18 通信機、31 走行用操作装置、
32 走行用表示装置、33 火器用操作装置、34 火器用表示装置、
35 走行用HMI装置、36 火器用HMI装置、
37 データベース、38 無人機エージェント、
38a 指示制御機構、38b 車両制御機構、39 通信機、
40 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律又は遠隔操縦によって走行及びミッションが実行可能な戦闘用装置であって、
車両と、
前記車両周辺の環境について車両環境情報を有するデータベースと、
前記遠隔操縦を行う場所に設置された無人機エージェントと、を備え、
前記無人機エージェントは、前記車両環境情報に基づいて前記走行及び前記ミッションについて制御方法の選択を行う車両制御機構を有する、ことを特徴とする戦闘用装置。
【請求項2】
前記無人機エージェントは、前記遠隔操縦を行うオペレータからの前記走行及び前記ミッションについての指示を単一の機構で前記車両に実行させる指示制御機構を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の戦闘用装置。
【請求項3】
前記制御方法は、自律、半自律、遠隔操縦を含む選択肢のいずれかからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の戦闘用装置。
【請求項4】
前記車両環境情報は、地図情報、敵味方位置情報、気象情報を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の戦闘用装置。
【請求項5】
前記車両制御機構は、前記車両環境情報に基づいて前記制御方法を選択する上で評価基準となる走行計画及びミッション計画を立案する、ことを特徴とする請求項1に記載の戦闘用装置。
【請求項6】
前記車両制御機構は、前記走行計画に基づいて前記走行についての前記制御方法を選択し、前記ミッション計画に基づいて前記ミッションについての前記制御方法を選択し、前記車両に対して前記制御方法について指示を与える、ことを特徴とする請求項5に記載の戦闘用装置。
【請求項7】
前記走行計画は、自律走行の難易度、敵遭遇リスク、任務を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の戦闘用装置。
【請求項8】
前記ミッション計画は、通信条件、敵味方条件、視認性を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の戦闘用装置。
【請求項9】
前記ミッションは、複数のミッション手順からなり、
前記制御方法は、前記ミッション手順ごとに選択を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の戦闘用装置。
【請求項10】
前記ミッション手順は、発見、認識、捕捉、追跡、照準、攻撃を含む、ことを特徴とする請求項9の戦闘用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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