説明

所定の粒径分布を有するスチリペントール粒子の調製方法

【課題】所定の粒径分布を有するスチリペントール粒子を良好な収率で調製可能であり、産業上のスケールで実施できる方法の提供。芳香族溶媒からのスチリペントールの再結晶化を実施することにより、後の粉砕及び/またはスクリーニング工程の必要なく、所定の粒径分布を得ることが可能であることが示された。更にこの方法は、高純度の製品を得ることが可能である。
【解決手段】本発明は、
i)芳香族溶媒中にスチリペントールを溶解する工程;
ii)前記溶媒からスチリペントールを結晶化する工程;
iii)得られたスチリペントール粒子を回収する工程
を含む、スチリペントール粒子の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の粒径分布を有するスチリペントール粒子の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−ジメチル−1−[(3,4−メチレンジオキシ)−フェニル]−1−ペンテン−3−オールとも称されるスチリペントール(STP)は、下式の化合物である:
【化1】

【0003】
スチリペントールは、中枢神経系に作用するα−エチレンアルコールのファミリーに属する。それは中枢神経系の疾患を治療することが可能であり、例えば幼児における重篤なミオクローヌス発作に罹患している患者における抗発作効果のための医薬(Diacomit(登録商標)と称される)として特に使用されている。
【0004】
Diacomit(登録商標)は、250または500mgのスチリペントールを含むゼラチンカプセルの形態、または250または500mgの粉体における嚥下可能な懸濁物のための顆粒の形態で提供されている。これらの製剤に含まれるスチリペントールの粒径分布は、粒子の50%(数量単位)の直径(以下ではd50と表記)が100μm以下、特に50から80μmの範囲であり、粒子の90%(数量単位)の直径(以下ではd90と表記)が300μm以下、特に250μm以下であるものである。
【0005】
これらの粒子は、所定の粒径分布を生成するために、従来の粉砕及びスクリーニング方法に従って得ることができる。しかしながら、その比較的低い融点(m.p.=75℃)により、スチリペントールは加工の過程で溶融する傾向を有し、それが互いにくっつく粒子を生じて製品の大きなロスを導くため、粉砕は問題を露呈している。
【0006】
仏国特許第7343939号明細書は、エタノールにおけるスチリペントールの結晶化を記載している。しかしながら、得られる製品の粒径分布については記載されていない。更に、スチリペントールは環境温度でエタノールに非常に溶解性であるため、この結晶化方法を産業上のスケールに移すことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第7343939号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、所定の粒径分布を有するスチリペントール粒子を良好な収率で調製可能であり、産業上のスケールで実施できる方法が見出された。より正確に言うと、芳香族溶媒からのスチリペントールの再結晶化を実施することにより、後の粉砕及び/またはスクリーニング工程の必要なく、所定の粒径分布を得ることが可能であることが示された。更にこの方法は、高純度の製品を得ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、第一の特徴点によれば、本発明は、
i)芳香族溶媒中にスチリペントールを溶解する工程;
ii)前記溶媒からスチリペントールを結晶化する工程;
iii)得られたスチリペントール粒子を回収する工程
を含む、スチリペントール粒子の調製方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
有利には、得られたスチリペントール粒子は、所定の粒径分布、特に
−d50が100μm以下であり、特に50から85μmの範囲であり、且つ
−d90が300μm以下であり、特に250μm以下である
という粒径分布を有する。
【0011】
この粒径分布は、ウエット条件で測定される。例として、それはHydro 2000 SM測定セルを備えたMalvern Mastersizer 2000 SM装置によって、界面活性剤の存在下で30mlの水中に懸濁した100mgのスチリペントールサンプルで測定できる。
【0012】
好ましくは芳香族溶媒は、メタ−、パラ−、オルトキシレン、ジクロロベンゼン、及びトルエン、またはそれらの混合物から選択され、トルエンが非常に特に好ましい。
【0013】
工程i)におけるスチリペントールの濃度は結晶化における決定的な要素ではないが、考慮される溶媒中の飽和濃度に近いスチリペントール濃度の存在下で実行することが好ましい。
【0014】
好ましくは工程i)では、芳香族溶媒中のスチリペントールの濃度は1から2kg/l(即ち4から9mol/lの濃度)の範囲、好ましくは約1kg/lである。
【0015】
典型的には工程i)は、好ましくは無水条件下で、特に不活性条件下で、70から100℃で温度で完全に溶解するまでスチリペントールを加熱することによって実施される。
【0016】
微量のいずれかの着色を除くために、セライト(または"Clarcel")または活性炭と同じタイプの製品を混合物に添加しても良い。
【0017】
好ましい変形例によれば、スチリペントールが溶解した後で工程ii)の前に、溶液中に存在するいずれかの微量の水を、前記混合物を還流下で加熱しながら共沸混合物蒸留によって除去する。わずかに酸性の水の存在下では、スチリペントールは、特にスチリペントールとそれ自体との縮合反応から生ずる非所望の製品を導くであろう。
【0018】
工程ii)におけるスチリペントールの結晶化方法は、当業者に既知の方法、特に溶液の冷却、溶媒部分の蒸発、抗溶媒の添加、またはスチリペントール結晶での溶液のシーディングに従って加速できる。前記混合物は通常、均一な懸濁物と、各結晶の周り母液の迅速な置換とを得るために、結晶化の工程を通じて攪拌条件下に維持される。
【0019】
好ましい実施態様によれば、スチリペントールの結晶化は、一般的に0℃から−10℃の温度に、典型的に−0.4から−1.5℃/分の冷却速度で冷却することによって実施される。
【0020】
前記混合物は通常、およそ1から3時間の期間以上でこの温度で維持される。
【0021】
好ましくは、スチリペントールの結晶化は、攪拌条件下で実施される。攪拌速度は、反応器のサイズと形状に従って、及び攪拌装置のタイプに従って変化してよい。しかしながら、攪拌装置のタイプは、得られるスチリペントールの粒径分布に何の影響も有さないことは注意すべきである。一般的にこの操作は、75から125rpmの速度で実施される。
【0022】
最後に、スチリペントールの結晶は、濾過または濃縮のような従来法によって、工程iii)で単離できる粒子を形成する。
【0023】
特に好ましい変形例によれば、本発明に係る方法は、好ましくは第一の再結晶化と同じ芳香族溶媒において、第二の再結晶化をも含む。より正確に言うと、前記方法は、工程iii)に引き続き、工程iii)で回収されたスチリペントール粒子から開始して工程i)からiii)を繰り返す工程iv)をも含む。
【0024】
この二重再結晶化は有利には、前記方法の再生産性と製品の純度を改良し、均一な無色のパウダーを得ることを可能にする。更に、好ましい実施態様によれば、再結晶化をトルエンで実施する場合、残余のトルエンの量は500ppm未満であり、つまり890ppmのICH Q3Cスタンダード(International Conference of Harmonization)より著しく低い。
【0025】
好ましくは、特に第二の再結晶化の後に回収されたスチリペントールは、芳香族溶媒で洗浄され、次いで微量の残余の溶媒を除去するのに十分な高温で真空下で乾かされる。
【実施例】
【0026】
実施例1:(±)−(E)−4,4−ジメチル−1−[3,4−メチレンジオキシ)フェニル]−1−ペンテン−3−オールまたはスチリペントールの調製
仏国特許第7206676号明細書に従って調製した(メチレンジオキシ−3,4−フェニル)−1−ジメチル−4,4−ペンテン−1−オン−3(コードナンバーD305)からスチリペントールを調製する。
【0027】
ケトンD305の重量当たり4体積のメタノールを反応器に導入する。次いで、ホウ化水素カリウム(ケトンのkg当たり0.12kg)、水(ケトンのkg当たり0.845リットル)、及び2Nの水酸化ナトリウム(ケトンのkg当たり0.00235リットル)から調製したホウ化水素カリウムの水溶液を添加する。攪拌しながら窒素下で、前記混合物を20℃から25℃の温度で維持する。
【0028】
前記混合物を環境温度で一晩攪拌する。次いで、開始ケトンのkg当たり5リットルの水で反応混合物を希釈する。その後塩化水素酸でpHを8.5から9の値に調節する。次いで形成された製品を遠心分離によって乾かし、しっかりと洗浄する。次いで60℃で換気したオーブンで24時間製品を乾かす。
【0029】
第一の再結晶化:
次いで得られた製品を、乾燥製品のkg当たり1リットルのトルエンの割合で、トルエン中に希釈する。次いで前記混合物を、スチリペントールが完全に溶解するまで80℃から90℃に加熱する。次いで2kgのClarcelと3kgの活性炭を添加する。次いで前記混合物を還流下で110℃に加熱し、製品中のいずれかの微量の残余水を、共沸混合物蒸留によって除去する。前記混合物を濾過し、次いで−5℃の温度で1時間冷却する。次いで混合物を遠心分離によって乾かす。
【0030】
第二の再結晶化:
次いで、この第一の再結晶化の最後で得られたスチリペントールを、第一の精製で使用されたものと同じ量のトルエンに溶解する。次いで還流下で前記混合物を110℃に加熱して濾過し、いずれかの固体の不純物を除去する。その後前記混合物をできるだけ迅速に−5℃に激しく攪拌しながら(100rpm)冷却し、この温度で1時間維持する。次いで生成物を遠心分離によって乾かし、約50リットルのトルエンで洗浄する。
【0031】
製品の乾燥:
次いで前記製品を24時間40℃で真空下で乾かす(一定重量が得られるまで)。バッチを均一化し、乾燥操作の間で形成されるであろういずれかの凝集物の存在を避けるため、1.5mmのメッシュサイズを有するスクリーンに製品を通過させてよい。製品を50℃のオーブンで24時間真空下で再度乾かしてよい。630μmのメッシュサイズを有するスクリーンに製品を通過させて混合する。
平均収率:85%
融点:75℃
平均径(d50):50から85μm
粒子の90%の直径(d90)≦250μm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)芳香族溶媒中にスチリペントールを溶解する工程;
ii)前記溶媒からスチリペントールを結晶化する工程;
iii)得られたスチリペントール粒子を回収する工程
を含む、スチリペントール粒子の調製方法。
【請求項2】
前記芳香族溶媒が、メタ−、パラ−、オルトキシレン、ジクロロベンゼン、及びトルエン、またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族溶媒がトルエンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程i)において、前記芳香族溶媒中のスチリペントールの濃度が1から2kg/lである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族溶媒中への前記スチリペントールの溶解が、70から100℃の温度で混合物を加熱することにより実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スチリペントールの溶解後で工程ii)の前に、溶液中に存在するいずれかの微量の水を、共沸混合物蒸留によって除去する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スチリペントールの結晶化が冷却により実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
冷却速度が−0.4から−1.5℃/分である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スチリペントールの結晶化が攪拌下で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
攪拌速度が75から125rpmである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程iii)で回収されたスチリペントール粒子から開始して工程i)からiii)を繰り返す工程をも含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
回収されたスチリペントール粒子を前記芳香族溶媒で洗浄する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2009−173655(P2009−173655A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12254(P2009−12254)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508155309)
【Fターム(参考)】