扉構造
【課題】空間や部屋を仕切る部分に使用される室内扉などのフラッシュ扉において、扉の両側で湿度や温度の相違、直射日光の照射あるいはエアコンの直風などの環境が大きく異なる場合であっても、反りや芯影の発生を防止する。
【解決手段】木質材よりなる四周枠材および桟材から構成される芯材の表裏両面に化粧面材17を貼着してなるフラッシュ構造の扉体であって、該化粧面材は、厚さ2mm以上4mm未満のMDF18の表裏両面に積層シート19が貼着されてなり、該積層シートは厚さ7μm以上のアルミシート20の表裏両面に各々坪量20〜30g/m2の紙層21が積層一体化されてなる。
【解決手段】木質材よりなる四周枠材および桟材から構成される芯材の表裏両面に化粧面材17を貼着してなるフラッシュ構造の扉体であって、該化粧面材は、厚さ2mm以上4mm未満のMDF18の表裏両面に積層シート19が貼着されてなり、該積層シートは厚さ7μm以上のアルミシート20の表裏両面に各々坪量20〜30g/m2の紙層21が積層一体化されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特にフラッシュ扉の扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュ扉の反りを防止するための従来技術として下記特許文献1に記載されるものがある。この従来技術では、フラッシュ扉を構成する芯材の両側に、木質ボード(合板)の両面に非透水性・非透湿性シートを貼着したものを貼り合わせることが提案されている。非透水性・非透湿性シートとしては、合成樹脂製シート、金属箔、樹脂含浸紙、合成樹脂と紙との複合シートなどが用いられる。このような構成のフラッシュ扉とすることにより、扉内の水分移動を極小化して反りを防止できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−272455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では省エネルギー住宅とすることが求められており、これを実現するためには高度の断熱性能および気密度を持つ住宅として冷暖房効率を上げる必要がある。このような省エネルギー住宅では、暖房または冷房を行っている部屋と行っていない部屋との間の温度差および湿度差が大きくなり、また、エアコンの風が直接当たる位置に配置された扉や窓からの直射日光が当たる位置に配置された扉などにあっては扉の表側と裏側とで環境が大きく異なることになり、従来の扉では十分に満足できる反り防止効果が得られなかった。
【0005】
また、一般に建材においては、施工性を高めるために軽量化を図り、また材料を低減させることで環境に配慮した製品開発が検討されており、フラッシュ扉においてもより薄い化粧面材の使用が進められているが、一方で、フラッシュ扉の化粧面材に薄い合板やMDFなどを使用すると、その剛性が低いため湿度や温度の影響を敏感に受けて変形しやすくなる。このため、芯材と接着している部分は化粧面材の変形が生じないのに対し、化粧面材の裏面に芯材が存在しない部分では大きく変形して、その変形の差によって高低差が生じ、化粧面材と芯材の接着部分の表面側に影が観察される現象(「芯影」と呼ばれる)を発生させることがあった。
【0006】
このような現象の発生を防止するため、フラッシュ扉の化粧面材と芯材とで構成される扉体内の芯材で囲まれた空間にハニカム状や曲線状の部材を化粧面材の変形に抵抗するように配置することも提案されているが、部品点数および作業手間が増大するという新たな課題が生じてしまう。また、このような部分的な補強を施しても、化粧面材の芯材に接着されていない面全体の微小な変形によって引き起こされる芯影を完全に防止することは困難であった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、空間や部屋を仕切る部分に使用される室内扉などのフラッシュ扉において、扉の両側で湿度や温度の相違、直射日光の照射あるいはエアコンの直風などの環境が大きく異なる場合であっても、反りや芯影の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、木質材よりなる四周枠材および桟材から構成される芯材の表裏両面に化粧面材を貼着してなるフラッシュ構造の扉体であって、該化粧面材は、厚さ2mm以上4mm未満のMDFの表裏両面に積層シートが貼着されてなり、該積層シートは厚さ7μm以上のアルミシートの表裏両面に各々坪量20〜30g/m2の紙層が積層一体化されてなることを特徴とする扉構造である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有するフラッシュ扉構造によれば、積層シートの含水率変化に伴う収縮膨張によって生じる化粧面材の微細な変形を抑制すると共に、化粧面材の剛性が増大して化粧面材の芯材に接着されていない部分の変形を抑制するので、扉体の表面に芯影が表出することを防止することができる。
【0010】
また、化粧面材の吸湿乾燥による含水率変化を抑制すると共に化粧面材の変形を抑制するので、室内の湿度変化や温度変化により化粧面材の基材であるMDFおよび芯材に変形が生ずることを防止し、扉体の反りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるフラッシュ扉構造を示す一部破断正面図である。
【図2】図1中A−A’切断線による横断面図である。
【図3】このフラッシュ扉構造における化粧面材の積層構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1ないし図3を参照して、本発明の一実施形態によるフラッシュ扉構造について詳述する。
【0013】
このフラッシュ扉10は、左右縦枠材11および上下横枠材12を釘、木ネジ、ステープルなどで固定してなる四周枠材13内に縦桟14および横桟15を配して芯材16を形成し、この芯材16の表裏両面に酢酸ビニル系接着剤などを使用して冷圧プレスで化粧面材17(17a,17b)を貼着することにより形成される。芯材16を構成する左右縦枠材11、上下横枠材12、縦桟14および横桟15はいずれも無垢の木材、合板、木質繊維板、パーティクルボード、LVL(単板積層材)などの木質材からなる。
【0014】
化粧面材17は、MDF18の表裏両面に積層シート19(19a,19b)が貼着されてなる。MDFは日本工業規格JIS A 5905:2003に規定するミディアムデンシティファイバーボードであり、化粧面材17の剛性をより増大させるために、製品として供されるMDFを厚さ方向に2分割して密度の高い部分のみとしたものを化粧面材17の基材としてのMDF18として使用しても良い。
【0015】
MDF18は厚さ2mm以上4mm未満のものを使用する。厚さ2mm未満であるとその両面に積層シート19を貼着しても剛性が不十分なため化粧面材17に芯影が発生しやすい。厚さ4mm以上であるとMDF18の剛性が上がるので芯影は発生しにくくなるが、化粧面材17のわずかな含水率変化による収縮膨張が扉10全体に及ぼす影響が大きくなり、反りが発生しやすくなる。また、扉10の重量が大きくなるので運搬性や施工性が低下するもので好ましくない。
【0016】
MDF18の表裏両面に貼着される積層シート19はアルミシート20の表裏両面に各々紙層21(21a,21b)が貼着されてなる。アルミシート20は厚さ7μm以上のものを用いる。この厚さが7μm未満であると、該アルミシート20を含む積層シート19を厚さ2mm以上4mm未満のMDF18の表裏両面に貼着しても、化粧面材17の微細な変形を拘束する作用が十分に発揮されず、芯影の発生を効果的に防止することができない。また、防湿性能も不十分なものとなって扉10に反りが発生する。
【0017】
アルミシート20の表裏両面に貼着される紙層21としては、印刷および塗装適性に優れた印刷用紙、たとえば一般建材向け印刷用紙として用いられる薄葉紙を使用することができる。また、印刷用紙の原紙を、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体などの合成ゴムラテックス、フェノール樹脂などの合成樹脂液に浸漬し、あるいは原紙にこれら樹脂液を塗布またはスプレーすることによって得られる樹脂含浸紙や、樹脂を予めパルプ溶液中に分散させておき、紙が抄造された時点で紙の中に樹脂を含ませる方法などによって得られた紙(紙間強化紙)などを使用しても良い。
【0018】
積層シート19は基材としてのMDF18を表裏両面から均等に拘束して、化粧面材17の微細な変形を抑制する作用を発揮するものであるが、紙層21が坪量20g/m2より薄くなるとこの拘束力が不十分となって芯影が発生しやすくなる。一方、紙層21が坪量30g/m2より厚くなるとこの拘束力は増大するが、紙層21自体の含水率変化による収縮膨張の動きが化粧面材17および扉10全体に大きく影響を及ぼし、反りが生じやすくなる。
【0019】
アルミシート20の表裏両面に各々紙層21を貼着する際の接着剤としては、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエチレン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを使用するが、中でも、アルミシート20と紙層21とを接着する際の加工に適した粘度を有するウレタン樹脂系接着剤を使用することが好ましい。
【0020】
積層シート19の好適な製造方法はドライラミネート法であり、たとえば、アルミシート20の一面にウレタン樹脂系接着剤を付着させ、加熱したロールで紙層21(21a,21bの一方)を貼着した後、同様に、アルミシート20の他面にウレタン樹脂系接着剤21を付着させ、加熱したロールで紙層21(21a,21bの他方)を貼着して、これらを積層一体化させることにより紙層21a/アルミシート20/紙層21bよりなる積層シート19を得ることができる。積層シート19の他の製造方法としては、紙層とアルミシートとの間にポリエチレン樹脂やEAA(エチレンアクリル酸コポリマー)を溶融押出ししてラミネートする押出しラミネート法がある。
【実施例】
【0021】
3mm厚のMDF18を使用し、坪量23g/m2の化粧紙21aと坪量23g/m2の強化紙21bとの間に7μm厚のアルミシート20が位置するようにウレタン樹脂系接着剤22を介して前述したようなドライラミネート法により積層一体化して一方(表面側)の積層シート19aとし、また、2枚の坪量23g/m2の強化紙21a,21bの間に7μm厚のアルミシート20が位置するようにウレタン樹脂系接着剤22を介して同様のドライラミネート法により積層一体化して他方(裏面側)の積層シート19bとし、これらを酢酸ビニル系接着剤でMDF18の表裏面に接着して化粧面材17a,17b(図3)とした。
【0022】
LVLからなる左右縦枠材11、上下横枠材12、縦桟14および横桟15を用いて芯組みした芯材16の表裏に酢酸ビニル系接着剤を塗布して、化粧面材17aを芯材16の表面側に、化粧面材17bを芯材16の裏面側にそれぞれ載置した後、冷圧プレスにより圧着して、フラッシュ扉10(図1,図2)を得た。このフラッシュ扉10は高さ1992mm×幅698mm×厚さ33mmであった。
【0023】
比較例として、坪量30g/m2の化粧紙と坪量23g/m2の強化紙をポリエチレン樹脂(ラミネート後の厚さ25μm)を介して押出しラミネート法により積層一体化して表面側の積層シートとし、また、坪量30g/m2の強化紙と坪量23g/m2の強化紙をポリエチレン樹脂(ラミネート後の厚さ25μm)を介して押出しラミネート法により積層一体化して裏面側の積層シートとした以外は、上記実施例と同様にして、化粧面材とし、これを上記実施例と同じ芯材15の表裏に圧着してフラッシュ扉を得た。
【0024】
これら実施例および比較例のフラッシュ扉10を試験体として、気温10℃/湿度80%の部屋Aと気温40℃/湿度30%の部屋Bとの間に設けられた仕切り壁に引戸として設置した状態で、該引戸に発生する反り量を測定した。反り量は、凹状に反った側の扉面側で扉の上下に水糸を張り、扉高さの1/2の位置で測定し、この測定を扉の左右端で行って平均値を取った。
【0025】
試験開始から10日後の試験結果は表1に示す通りであり、実施例では4.3mmの反りであったのに対して比較例では15.3mmの反りが発生しており、比較例の1/3以下の反り量に抑えられていることが確認された。また、芯影については、実施例では発生が見られなかったのに対し比較例では芯影が発生しており、本発明の構成が芯影発生防止に効果的であることが確認された。
【0026】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ドア、引戸、可動間仕切などの建具、キッチン扉、クローゼット扉、家具用扉などに利用され、扉の両側で湿度や温度の相違、直射日光の照射あるいはエアコンの直風などの環境が大きく異なる場合であっても、反りや芯影が発生しにくいものとして産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0028】
10 フラッシュ扉
11 左右縦枠材
12 上下横枠材
13 四周枠材
14 縦桟(桟材)
15 横桟(桟材)
16 芯材
17(17a,17b) 化粧面材
18 MDF
19(19a,19b) 積層シート
20 アルミシート
21(21a,21b) 紙層
22 ウレタン樹脂系接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は特にフラッシュ扉の扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュ扉の反りを防止するための従来技術として下記特許文献1に記載されるものがある。この従来技術では、フラッシュ扉を構成する芯材の両側に、木質ボード(合板)の両面に非透水性・非透湿性シートを貼着したものを貼り合わせることが提案されている。非透水性・非透湿性シートとしては、合成樹脂製シート、金属箔、樹脂含浸紙、合成樹脂と紙との複合シートなどが用いられる。このような構成のフラッシュ扉とすることにより、扉内の水分移動を極小化して反りを防止できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−272455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では省エネルギー住宅とすることが求められており、これを実現するためには高度の断熱性能および気密度を持つ住宅として冷暖房効率を上げる必要がある。このような省エネルギー住宅では、暖房または冷房を行っている部屋と行っていない部屋との間の温度差および湿度差が大きくなり、また、エアコンの風が直接当たる位置に配置された扉や窓からの直射日光が当たる位置に配置された扉などにあっては扉の表側と裏側とで環境が大きく異なることになり、従来の扉では十分に満足できる反り防止効果が得られなかった。
【0005】
また、一般に建材においては、施工性を高めるために軽量化を図り、また材料を低減させることで環境に配慮した製品開発が検討されており、フラッシュ扉においてもより薄い化粧面材の使用が進められているが、一方で、フラッシュ扉の化粧面材に薄い合板やMDFなどを使用すると、その剛性が低いため湿度や温度の影響を敏感に受けて変形しやすくなる。このため、芯材と接着している部分は化粧面材の変形が生じないのに対し、化粧面材の裏面に芯材が存在しない部分では大きく変形して、その変形の差によって高低差が生じ、化粧面材と芯材の接着部分の表面側に影が観察される現象(「芯影」と呼ばれる)を発生させることがあった。
【0006】
このような現象の発生を防止するため、フラッシュ扉の化粧面材と芯材とで構成される扉体内の芯材で囲まれた空間にハニカム状や曲線状の部材を化粧面材の変形に抵抗するように配置することも提案されているが、部品点数および作業手間が増大するという新たな課題が生じてしまう。また、このような部分的な補強を施しても、化粧面材の芯材に接着されていない面全体の微小な変形によって引き起こされる芯影を完全に防止することは困難であった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、空間や部屋を仕切る部分に使用される室内扉などのフラッシュ扉において、扉の両側で湿度や温度の相違、直射日光の照射あるいはエアコンの直風などの環境が大きく異なる場合であっても、反りや芯影の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、木質材よりなる四周枠材および桟材から構成される芯材の表裏両面に化粧面材を貼着してなるフラッシュ構造の扉体であって、該化粧面材は、厚さ2mm以上4mm未満のMDFの表裏両面に積層シートが貼着されてなり、該積層シートは厚さ7μm以上のアルミシートの表裏両面に各々坪量20〜30g/m2の紙層が積層一体化されてなることを特徴とする扉構造である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有するフラッシュ扉構造によれば、積層シートの含水率変化に伴う収縮膨張によって生じる化粧面材の微細な変形を抑制すると共に、化粧面材の剛性が増大して化粧面材の芯材に接着されていない部分の変形を抑制するので、扉体の表面に芯影が表出することを防止することができる。
【0010】
また、化粧面材の吸湿乾燥による含水率変化を抑制すると共に化粧面材の変形を抑制するので、室内の湿度変化や温度変化により化粧面材の基材であるMDFおよび芯材に変形が生ずることを防止し、扉体の反りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるフラッシュ扉構造を示す一部破断正面図である。
【図2】図1中A−A’切断線による横断面図である。
【図3】このフラッシュ扉構造における化粧面材の積層構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1ないし図3を参照して、本発明の一実施形態によるフラッシュ扉構造について詳述する。
【0013】
このフラッシュ扉10は、左右縦枠材11および上下横枠材12を釘、木ネジ、ステープルなどで固定してなる四周枠材13内に縦桟14および横桟15を配して芯材16を形成し、この芯材16の表裏両面に酢酸ビニル系接着剤などを使用して冷圧プレスで化粧面材17(17a,17b)を貼着することにより形成される。芯材16を構成する左右縦枠材11、上下横枠材12、縦桟14および横桟15はいずれも無垢の木材、合板、木質繊維板、パーティクルボード、LVL(単板積層材)などの木質材からなる。
【0014】
化粧面材17は、MDF18の表裏両面に積層シート19(19a,19b)が貼着されてなる。MDFは日本工業規格JIS A 5905:2003に規定するミディアムデンシティファイバーボードであり、化粧面材17の剛性をより増大させるために、製品として供されるMDFを厚さ方向に2分割して密度の高い部分のみとしたものを化粧面材17の基材としてのMDF18として使用しても良い。
【0015】
MDF18は厚さ2mm以上4mm未満のものを使用する。厚さ2mm未満であるとその両面に積層シート19を貼着しても剛性が不十分なため化粧面材17に芯影が発生しやすい。厚さ4mm以上であるとMDF18の剛性が上がるので芯影は発生しにくくなるが、化粧面材17のわずかな含水率変化による収縮膨張が扉10全体に及ぼす影響が大きくなり、反りが発生しやすくなる。また、扉10の重量が大きくなるので運搬性や施工性が低下するもので好ましくない。
【0016】
MDF18の表裏両面に貼着される積層シート19はアルミシート20の表裏両面に各々紙層21(21a,21b)が貼着されてなる。アルミシート20は厚さ7μm以上のものを用いる。この厚さが7μm未満であると、該アルミシート20を含む積層シート19を厚さ2mm以上4mm未満のMDF18の表裏両面に貼着しても、化粧面材17の微細な変形を拘束する作用が十分に発揮されず、芯影の発生を効果的に防止することができない。また、防湿性能も不十分なものとなって扉10に反りが発生する。
【0017】
アルミシート20の表裏両面に貼着される紙層21としては、印刷および塗装適性に優れた印刷用紙、たとえば一般建材向け印刷用紙として用いられる薄葉紙を使用することができる。また、印刷用紙の原紙を、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体などの合成ゴムラテックス、フェノール樹脂などの合成樹脂液に浸漬し、あるいは原紙にこれら樹脂液を塗布またはスプレーすることによって得られる樹脂含浸紙や、樹脂を予めパルプ溶液中に分散させておき、紙が抄造された時点で紙の中に樹脂を含ませる方法などによって得られた紙(紙間強化紙)などを使用しても良い。
【0018】
積層シート19は基材としてのMDF18を表裏両面から均等に拘束して、化粧面材17の微細な変形を抑制する作用を発揮するものであるが、紙層21が坪量20g/m2より薄くなるとこの拘束力が不十分となって芯影が発生しやすくなる。一方、紙層21が坪量30g/m2より厚くなるとこの拘束力は増大するが、紙層21自体の含水率変化による収縮膨張の動きが化粧面材17および扉10全体に大きく影響を及ぼし、反りが生じやすくなる。
【0019】
アルミシート20の表裏両面に各々紙層21を貼着する際の接着剤としては、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエチレン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを使用するが、中でも、アルミシート20と紙層21とを接着する際の加工に適した粘度を有するウレタン樹脂系接着剤を使用することが好ましい。
【0020】
積層シート19の好適な製造方法はドライラミネート法であり、たとえば、アルミシート20の一面にウレタン樹脂系接着剤を付着させ、加熱したロールで紙層21(21a,21bの一方)を貼着した後、同様に、アルミシート20の他面にウレタン樹脂系接着剤21を付着させ、加熱したロールで紙層21(21a,21bの他方)を貼着して、これらを積層一体化させることにより紙層21a/アルミシート20/紙層21bよりなる積層シート19を得ることができる。積層シート19の他の製造方法としては、紙層とアルミシートとの間にポリエチレン樹脂やEAA(エチレンアクリル酸コポリマー)を溶融押出ししてラミネートする押出しラミネート法がある。
【実施例】
【0021】
3mm厚のMDF18を使用し、坪量23g/m2の化粧紙21aと坪量23g/m2の強化紙21bとの間に7μm厚のアルミシート20が位置するようにウレタン樹脂系接着剤22を介して前述したようなドライラミネート法により積層一体化して一方(表面側)の積層シート19aとし、また、2枚の坪量23g/m2の強化紙21a,21bの間に7μm厚のアルミシート20が位置するようにウレタン樹脂系接着剤22を介して同様のドライラミネート法により積層一体化して他方(裏面側)の積層シート19bとし、これらを酢酸ビニル系接着剤でMDF18の表裏面に接着して化粧面材17a,17b(図3)とした。
【0022】
LVLからなる左右縦枠材11、上下横枠材12、縦桟14および横桟15を用いて芯組みした芯材16の表裏に酢酸ビニル系接着剤を塗布して、化粧面材17aを芯材16の表面側に、化粧面材17bを芯材16の裏面側にそれぞれ載置した後、冷圧プレスにより圧着して、フラッシュ扉10(図1,図2)を得た。このフラッシュ扉10は高さ1992mm×幅698mm×厚さ33mmであった。
【0023】
比較例として、坪量30g/m2の化粧紙と坪量23g/m2の強化紙をポリエチレン樹脂(ラミネート後の厚さ25μm)を介して押出しラミネート法により積層一体化して表面側の積層シートとし、また、坪量30g/m2の強化紙と坪量23g/m2の強化紙をポリエチレン樹脂(ラミネート後の厚さ25μm)を介して押出しラミネート法により積層一体化して裏面側の積層シートとした以外は、上記実施例と同様にして、化粧面材とし、これを上記実施例と同じ芯材15の表裏に圧着してフラッシュ扉を得た。
【0024】
これら実施例および比較例のフラッシュ扉10を試験体として、気温10℃/湿度80%の部屋Aと気温40℃/湿度30%の部屋Bとの間に設けられた仕切り壁に引戸として設置した状態で、該引戸に発生する反り量を測定した。反り量は、凹状に反った側の扉面側で扉の上下に水糸を張り、扉高さの1/2の位置で測定し、この測定を扉の左右端で行って平均値を取った。
【0025】
試験開始から10日後の試験結果は表1に示す通りであり、実施例では4.3mmの反りであったのに対して比較例では15.3mmの反りが発生しており、比較例の1/3以下の反り量に抑えられていることが確認された。また、芯影については、実施例では発生が見られなかったのに対し比較例では芯影が発生しており、本発明の構成が芯影発生防止に効果的であることが確認された。
【0026】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ドア、引戸、可動間仕切などの建具、キッチン扉、クローゼット扉、家具用扉などに利用され、扉の両側で湿度や温度の相違、直射日光の照射あるいはエアコンの直風などの環境が大きく異なる場合であっても、反りや芯影が発生しにくいものとして産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0028】
10 フラッシュ扉
11 左右縦枠材
12 上下横枠材
13 四周枠材
14 縦桟(桟材)
15 横桟(桟材)
16 芯材
17(17a,17b) 化粧面材
18 MDF
19(19a,19b) 積層シート
20 アルミシート
21(21a,21b) 紙層
22 ウレタン樹脂系接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材よりなる四周枠材および桟材から構成される芯材の表裏両面に化粧面材を貼着してなるフラッシュ構造の扉体であって、該化粧面材は、厚さ2mm以上4mm未満のMDFの表裏両面に積層シートが貼着されてなり、該積層シートは厚さ7μm以上のアルミシートの表裏両面に各々坪量20〜30g/m2の紙層が積層一体化されてなることを特徴とする扉構造。
【請求項1】
木質材よりなる四周枠材および桟材から構成される芯材の表裏両面に化粧面材を貼着してなるフラッシュ構造の扉体であって、該化粧面材は、厚さ2mm以上4mm未満のMDFの表裏両面に積層シートが貼着されてなり、該積層シートは厚さ7μm以上のアルミシートの表裏両面に各々坪量20〜30g/m2の紙層が積層一体化されてなることを特徴とする扉構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−168758(P2010−168758A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10471(P2009−10471)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】
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