説明

手動弁操作模擬装置

【課題】手動弁に簡単な部材を備えることで、手動弁の部品を破損することなく、手動弁の開閉作業の訓練を効率的に行う。
【解決手段】弁蓋2及び弁箱3と、弁蓋2に設けたヨーク4と、ヨーク4の先端部に嵌め込んだハンドルブッシュ5により支持し、弁蓋2及び弁箱3に挿通した弁棒6と、弁棒6の一端部に設けた弁体7と、弁棒6の他端に設けたハンドホイール8とを備えた手動弁1において、ハンドルブッシュ5に、ハンドホイール8を操作したときの操作トルクを調整する第一、第二トルク制限用ばね21,22を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの配管等に配設する手動弁の操作訓練に使用する手動弁操作模擬装置に係り、特に部品を破損することなく、手動弁の締め付け作業の訓練に使用することができる手動弁操作模擬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所、プラントの配管等には流路開閉弁が設けられている。流路開閉弁には電動式の電動弁と手動式の手動弁がある。この手動弁1は、図5の分解斜視図に示すように、弁蓋2及び弁箱3と、この弁蓋2に設けたヨーク4と、このヨーク4の先端部に嵌め込んだハンドルブッシュ5により支持し、この弁蓋2及び弁箱3に挿通した弁棒6と、この弁棒6の一端部に設けた弁体7と、この弁棒6の他端に設けたハンドホイール8とを備えたものである。
【0003】
弁箱3と弁蓋2とは、ボルト及び締結ナットにより締結している。弁箱3には、流路9が形成されている。流路9の一方側は流入ポートとして構成し、流路9の他端側は流出ポートとして構成している。流路9の中間部には弁座10を設け、この弁座10に弁体7が当接し、離反するようになっている。流入ポートから流入した流体は、弁座10と弁体7との隙間を通り、流出ポートから流出する。
【0004】
弁体7は、弁棒6のスライドによって弁座10に対して当接し、離反する。弁棒6は、ハンドホイール8を回転することにより、このハンドホイール8とフェザーキー11で同時に回転するハンドルブッシュ5の回転動作によりスライドする。弁棒6は、図示するようにハンドルブッシュ5に螺合支持され、ハンドホイール8の回転と共に回転し、上下にスライドする。なお、弁棒6は、パッキンを介して弁蓋2に支持されており、弁蓋2と弁棒6とのシーリングがなされている。
【0005】
このような構造になる手動弁1を「開」から「閉」にする場合は、ハンドホイール8を時計回りに操作する。図6の拡大断面図に示すように、ハンドホイール8に固定されたハンドルブッシュ5が回転する。このハンドルブッシュ5内には雌ねじが切られており、内部に挿入された弁棒6には雄ねじが切られている。このハンドルブッシュ5は、ヨーク4に上下方向を固定されているので、ハンドルブッシュ5が回転することにより、弁棒6は下降動作する。なお、このとき弁棒6は回転しないで動作する。
最後に、弁体7が弁箱3の弁座10に当接し、密着すると、ハンドホイール8の操作トルクが増大するために、操作員は全閉と判断して操作を終了させる。
【0006】
このような手動弁1を「開」から「閉」にする作業は、実務経験者であれば、そのハンドホイール8の操作トルクの感覚を把握して容易に締め付け作業を完了することができる。しかし、実務経験の少ない作業者では、操作トルクの感覚を正確に判断できず、安定した状態で締め付け作業を完了させることができなかった。
【0007】
一方、実務経験の少ない作業者が訓練するための作業訓練に関する装置が種々の提案されている。例えば、特許文献1の特開平11−24551号公報「ねじ締結作業の訓練方法及びねじ締結作業の訓練装置」に示すように、ワークに部品を取り付けるためのボルトを螺入し得るダミーのねじ孔を有する訓練装置をワークを搬送するコンベアに取り付け、コンベアで訓練装置を移動させながらボルトをダミーのねじ孔に螺入する訓練を行うねじ締結作業の訓練方法が提案されている。また、多数の貫通孔が形成された外板と、この外板(の裏面に着脱自在に重ね合わされて貫通孔に対応する位置にそれぞれねじ孔が形成された内板とを備えたねじ締結作業の訓練装置が提案されている。
【特許文献1】特開平11−24551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の「訓練装置」は、ボルトやタッピングスクリューの締結作業の訓練を行うためのねじ締結作業の訓練装置に関するものであり、手動弁1に関する訓練装置は提案されていなかった。そこで、手動弁1の操作訓練をする際に、実務経験の少ない作業者は、その作業訓練に際して弁体7やハンドルブッシュ5内の刻設部分や弁棒6の刻設部分を折損することがあった。このように操作訓練の際に、人数分又は訓練回数分の弁体7、ハンドルブッシュ5又は弁棒6を破損することは無駄な出費になるという問題を有していた。
【0009】
また、手動弁1の開閉作業に際して、弁体7が弁座10に密着すると、ハンドホイール8の操作トルクが増大するため操作員は全閉全開と判断することができる。しかし、この判断を弁棒6の下端部分で、その操作トルクを検出できなかった。即ち、この弁棒6は弁体7の開閉時に回転しないので、弁体7が弁座10に密着したときの摩擦係数の変化で判断することができなかった。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、手動弁に簡単な部材を備えることで、手動弁の部品を破損することなく、手動弁の開閉作業の訓練を効率的に行うことができる手動弁操作模擬装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、弁蓋(2)及び弁箱(3)と、該弁蓋(2)に設けたヨーク(4)と、該ヨーク(4)の先端部に嵌め込んだハンドルブッシュ(5)により支持し、該弁蓋(2)及び弁箱(3)に挿通した弁棒(6)と、該弁棒(6)の一端部に設けた弁体(7)と、該弁棒(6)の他端に設けたハンドホイール(8)とを備えた手動弁(1)において、前記ハンドルブッシュ(5)に、前記ハンドホイール(8)を操作したときの操作トルクを調整するトルク制限用ばね(21,22)を取り付けた、ことを特徴とする手動弁操作模擬装置が提供される。
【0012】
例えば、前記手動弁(1)において、前記ヨーク(4)と前記ハンドホイール(8)との間に、前記ハンドホイール(8)を回転操作したときに最初に圧縮されることにより操作トルクを調整する第一トルク制限用ばね(21)を取り付け、前記ヨーク(4)と前記ハンドルブッシュ(5)との間に、前記ハンドホイール(8)を操作したときに、第一トルク制限用ばね(21)に次いで圧縮されることにより操作トルクを調整する第二トルク制限用ばね(22)を取り付けた、ものがある。
前記第一トルク制限用ばね(21)は、前記ハンドルブッシュ(5)の周囲に巻き付けるように装着したコイルばねである。
前記第二トルク制限用ばね(22)は、前記ハンドルブッシュ(5)の周囲に巻き付けるように装着したコイルばねである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の発明では、ハンドホイール(8)を時計回りに操作するとハンドルブッシュ(5)が回転し、弁棒(6)に刻設した螺合部により下側に移動し、トルク制限用ばね(21,22)を押し付ける。このトルク制限用ばね(21,22)を押し付ける力が、弁棒(6)を下げる力より上回ると、ハンドルブッシュ(5)の下降が止まり、弁棒(6)が下がり始める。
弁体(7)が弁箱(3)の弁座(10)に密着すると、弁棒(6)を下げるのに必要な力が増加し、トルク制限用ばね(21,22)を押し付ける力が上回ると、ハンドルブッシュ(5)が回転し、トルク制限用ばね(21,22)を押し付ける。このときのトルク制限用ばね(21,22)の押し付け量を確認することにより、弁体(7)の締め付けトルクを確認することができる。
【0014】
更に、トルク制限用ばね(21,22)の長さにより弁体(7)の操作トルクが確認することにより、折損防止と締め付け力を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の手動弁操作模擬装置は、弁蓋及び弁箱と、この弁蓋に設けたヨークと、このヨークの先端部に嵌め込んだハンドルブッシュにより支持し、この弁蓋及び弁箱に挿通した弁棒と、弁棒の一端部に設けた弁体と、弁棒の他端に設けたハンドホイールとを備えた手動弁において、ハンドルブッシュに、ハンドホイールを操作したときの操作トルクを調整するトルク制限用ばねを取り付けたものである。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の手動弁操作模擬装置を示す部分断面図である。
実施例1の手動弁操作模擬装置は、図5に示した手動弁1のハンドルブッシュ5に模擬装置用の部材を備えたものである。この手動弁操作模擬装置は、手動弁1は弁蓋2及び弁箱3と、この弁蓋2に設けたヨーク4と、このヨーク4の先端部に嵌め込んだハンドルブッシュ5により支持し、この弁蓋2及び弁箱3に挿通した弁棒6と、この弁棒6の一端部に設けた弁体7と、弁棒6の他端に設けたハンドホイール8とを備えたものである。このハンドルブッシュ5に、ハンドホイール8を操作したときの操作トルクを調整するトルク制限用ばね21,22を取り付けたものである。
なお、手動弁1の構造は、ハンドルブッシュ5部分で弁棒6を下降、上昇させる構造の流路開閉弁であれば、図1及び図5に示したような構造に限定されない。
【0017】
本発明の手動弁操作模擬装置は、ヨーク4とハンドホイール8との間に、ハンドホイール8を回転操作したときに最初に圧縮されることにより操作トルクを調整する第一トルク制限用ばね21を取り付けた。この第一トルク制限用ばね21は、ハンドルブッシュ5の周囲に巻き付けるように装着したコイルばねである。
【0018】
更に、ヨーク4とハンドルブッシュ5との間に、ハンドホイール8を操作したときに第一トルク制限用ばね21に次いで圧縮されることにより操作トルクを調整する第二トルク制限用ばね22を取り付けた。第二トルク制限用ばね22も、ハンドルブッシュ5の周囲に巻き付けるように装着したコイルばねである。これらのトルク制限用ばね21,22の長さにより弁体7の操作トルクが確認し、折損防止と締め付け力を管理することができる。
【0019】
本発明のトルク制限用ばね21,22は、既存の手動弁1のヨーク4とハンドホイール8との間、又はヨーク4とハンドルブッシュ5との間に取り付けるだけで、その手動弁1を手動弁操作模擬装置に代えることができる。なお、これらのトルク制限用ばね21,22は、コイルばねに代えてその他の弾性部材にすることも可能である。例えば、油圧計(図示していない)を取り付けることも可能である。
【0020】
図2から図4は手動弁操作模擬装置の動作状態を示すものである。
図2はハンドホイールを回転させ、弁棒が下降する動作状態を示す部分断面図である。
本発明の手動弁操作模擬装置は、図2に示すように、ハンドホイール8を時計回りに操作するとハンドルブッシュ5が回転し、弁棒6に刻設した螺合部により下方へ移動し、ハンドホイール8が第一トルク制限用ばね21をヨーク4側に押し付ける。この第一トルク制限用ばね21は圧縮され、この第一トルク制限用ばね21を押し付け力が、弁棒6を下げる力よりを上回ると、ハンドルブッシュ5の下降が止まり、弁棒6が下降し始める。
【0021】
図3は弁体が弁座に着座したときの動作状態を示す部分断面図である。
下降し始めた弁棒6の下端の弁体7が、弁箱3の弁座10に密着する。この弁棒6を下げるために必要な力が増加し、第一、第二トルク制限用ばね21,22の押し付け力を上回ると、ハンドルブッシュ5が回転し、トルク制限用ばね21,22を押し付ける。
【0022】
図4は弁棒にかかる押圧力を調整するときの動作状態を示す部分断面図である。
更に、ハンドホイール8を回転すると、第一トルク制限用ばね21が圧縮され、そのばねの圧縮量により弁棒6にかかる力を調整することができる。このように、第一、第二トルク制限用ばね21,22の押し付け量を確認することにより、弁体7の締め付けトルクを確認することができる。
【0023】
この第一、二トルク制限用ばね21,22によりハンドルブッシュ5に常に押し付け力をかけるため、流体の乱流等による振動によるハンドホイール8の誤動作を防止することができる。
【0024】
また、手動弁1の周囲の温度変化及び流体の温度変化による弁棒6とヨーク4の膨張差を第一、第二トルク制限用ばね21,22が吸収するために、弁棒6の折損等を防止することができる。
【0025】
なお、本発明は、手動弁に簡単な部材を備えることで、弁体7、ハンドルブッシュ5又は弁棒6を破損することなく、手動弁1の開閉作業の訓練を効率的に行うことができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の手動弁操作模擬装置は、発電所、プラントの配管等には流路開閉弁用の手動弁などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1の手動弁操作模擬装置を示す部分断面図である。
【図2】ハンドホイールを回転し始めて弁棒が下降する動作状態を示す部分断面図である。
【図3】弁体が弁座に着座したときの動作状態を示す部分断面図である。
【図4】弁棒にかかる押圧力を調整するときの動作状態を示す部分断面図である。
【図5】手動弁の分解斜視図である。
【図6】従来の手動弁の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 手動弁
2 弁蓋
3 弁箱
4 ヨーク
5 ハンドルブッシュ
6 弁棒
7 弁体
8 ハンドホイール
21 第一トルク制限用ばね
22 第二トルク制限用ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁蓋(2)及び弁箱(3)と、該弁蓋(2)に設けたヨーク(4)と、該ヨーク(4)の先端部に嵌め込んだハンドルブッシュ(5)により支持し、該弁蓋(2)及び弁箱(3)に挿通した弁棒(6)と、該弁棒(6)の一端部に設けた弁体(7)と、該弁棒(6)の他端に設けたハンドホイール(8)とを備えた手動弁(1)において、
前記ハンドルブッシュ(5)に、前記ハンドホイール(8)を操作したときの操作トルクを調整するトルク制限用ばね(21,22)を取り付けた、ことを特徴とする手動弁操作模擬装置。
【請求項2】
弁蓋(2)及び弁箱(3)と、該弁蓋(2)に設けたヨーク(4)と、該ヨーク(4)の先端部に嵌め込んだハンドルブッシュ(5)により支持し、該弁蓋(2)及び弁箱(3)に挿通した弁棒(6)と、該弁棒(6)の一端部に設けた弁体(7)と、該弁棒(6)の他端に設けたハンドホイール(8)とを備えた手動弁(1)において、
前記ヨーク(4)と前記ハンドホイール(8)との間に、前記ハンドホイール(8)を回転操作したときに最初に圧縮されることにより操作トルクを調整する第一トルク制限用ばね(21)を取り付け、
前記ヨーク(4)と前記ハンドルブッシュ(5)との間に、前記ハンドホイール(8)を操作したときに、第一トルク制限用ばね(21)に次いで圧縮されることにより操作トルクを調整する第二トルク制限用ばね(22)を取り付けた、ことを特徴とする手動弁操作模擬装置。
【請求項3】
前記第一トルク制限用ばね(21)は、前記ハンドルブッシュ(5)の周囲に巻き付けるように装着したコイルばねである、ことを特徴とする請求項2の手動弁操作模擬装置。
【請求項4】
前記第二トルク制限用ばね(22)は、前記ハンドルブッシュ(5)の周囲に巻き付けるように装着したコイルばねである、ことを特徴とする請求項2の手動弁操作模擬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−255660(P2007−255660A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83508(P2006−83508)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】