説明

手動式の解除及び再作動機構を有するばね作動式駐車ブレーキ

手動式の解除及び再作動機構を有するばね作動式駐車ブレーキである。シリンダの後壁に対して固定されたギヤボックスが手動式クランクを有している。シリンダ及びギヤボックスを通って延びるプッシュロッドが、ブレーキ力を供給するように連結されている。プッシュロッド上のらせん状ねじ山を包囲するねじ付きのコレットが、可撓性をもち放射状に拡がることが可能な歯部を有している。ギヤボックスが手動でクランキング操作されたとき、プッシュロッドは回転し、コレットの内側のねじ山とプッシュロッド上のねじ山との相互作用によって、プッシュロッドが軸方向に移動してブレーキを解除又は再作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、空気圧を用いて解除される輸送車両用のばね作動式駐車ブレーキ(spring-applied parking brake)に関する。本発明はさらに、例えば、空気圧が利用できない時の、手動式のブレーキの解除及び再作動機構を有する。
【背景技術】
【0002】
輸送車両用常用ブレーキは、通常、先頭車両又はエンジンによって加圧空気が供給される空気圧式のシリンダによって作動する。車両が先頭車両から切り離されたときに、駐車ブレーキは暴走動作を防ぐことが望ましい。通常、駐車ブレーキはばね作動式である。ばね駆動式のピストンに連結されたプッシュロッドが、常用制動を生じるリンク機構(linkage)と連結している。車両が先頭車両又は空気圧源に再度接続された時点で、ばね作動式ブレーキは空気圧によって解除されることが可能である。従来技術のばね作動式ブレーキには、ピストンをプッシュロッドから切り離し、それによって車両の移動を可能にするための、手動式の解除機構が設けられているものがある。このばね作動式ブレーキは、空気圧が再び利用可能となるまで再び作動することができない。「Parking Brake Manual Release Mechanism(駐車ブレーキ手動式解除機構)」と題する米国特許第5,848,550号明細書を参照されたい。この明細書で開示されているブレーキは、ピストンとプッシュロッドとの間に、常用ブレーキの状態において緩み調節を行うためのコレット(collet)接続部を有している。他の従来技術では、駐車ブレーキ力の作動及び解除は、空気圧又は機械式回転動作(winding action)のいずれかを用いて行われる。この場合、ばね駆動式のピストンとプッシュロッドとの連結は、プッシュロッドに螺合するナットによって制御され、ナットの回転は、空気圧式制御のクラッチによって固定される。駐車ブレーキの作動中、ナットは、歯付きのクラッチと共に回転ができないようにされ、クラッチは、空気圧が再度加えられてブレーキユニットをリセット(reset)すると、解除される。
【発明の概要】
【0003】
簡潔に述べると、本発明の一実施形態によれば、手動式の解除及び再作動機構を有するばね作動式駐車ブレーキが提供される。ばね作動式駐車ブレーキは、シリンダ壁、前壁及び後壁を有する空気圧式のシリンダと、シリンダ壁に対して封止されたピストンと、ピストン及び後壁の間に延び、ピストンを前壁に付勢するための駐車ブレーキばねと、駐車ブレーキばねに抗してピストンを後壁に移動させるように圧力をかけるための空気圧入口とを備える。ギヤボックスが後壁に対して固定されている。ギヤボックスは、手動式クランクを有する。プッシュロッドが、シリンダ、前壁、後壁、ピストン及びギヤボックスを通って延びている。プッシュロッドは、前壁から外側に延びた位置にあるときにブレーキ力を供給するために、一方の端部で連結可能である。プッシュロッドは、ギヤボックスを通って延びる他方の端部に固定されたキーを有する。プッシュロッドは、ピストンを通って延びる中央部分の上にらせん状ねじ山を有する。らせん状ねじ山を包囲するねじ付きのコレットが、可撓性をもち放射状に拡がることが可能な歯部(tine)を有する。コレットは、ピストンによって捕捉されピストンに対して回転しないように固定される。それ故、ギヤボックスが手動でクランキング操作(cranking)されたとき、プッシュロッドは回転し、コレットの内側のねじ山によって、プッシュロッドが、ギヤボックスのクランキング操作の方向に応じて、ピストンに対して軸方向に移動させられる。シリンダを駐車ブレーキばねに抗して移動させるようにシリンダに空気圧がかけられたとき、コレットの歯部は、プッシュロッドがピストンに対してリセット位置に移動することができるように、拡がり解放することが可能である。
【0004】
好ましくは、ばね作動式駐車ブレーキは、プッシュロッドの半径方向外側に且つプッシュロッドと同軸に配置され、一方の軸方向端部でピストンに固定された管をさらに備える。管の他方の軸方向端部には、環状のコレット止め具が固定されている。コレットは、プッシュロッドと管との間で半径方向に配置される。駐車ブレーキばねがピストンを前端壁に運ぶとき、コレット止め具はコレットに圧力をかける。そのとき、コレットは、プッシュロッドを把持してピストンと共にプッシュロッドを運ぶ。コレット及びコレット止め具は相補的な円錐面を有し、これらの相補的な円錐面によって、コレット止め具は、駐車ブレーキばねがピストンを移動させるときに、コレットをプッシュロッドの上に絞りつける。ピンが、歯部を通って半径方向に延び且つ管に固定され、ピンは、歯部が拡がることを可能にし、コレットと管(及びピストン)との間で相対的に回転することを防ぐ。
【0005】
さらなる特徴及び他の目的及び利点は、図面を参照する以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明によるばね作動式駐車ブレーキの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで図面を参照すると、本発明の一実施形態によるばね作動式駐車ブレーキが概略的に示されている。駐車ブレーキはシリンダ10を備え、シリンダ10は、一方の端部に固定された環状の前壁12と他方の端部に固定された環状の後壁14とを有している。ピストン16は、シリンダの中に配置されており、シリンダの内側の壁に対して、例えば環状の溝内に捕捉されているOリングによって、封止されている。同心のばね18、20が、後壁とピストンとの間に配置されて、ピストンを前壁に向かって付勢している。開口部22が、前壁とピストンとの間の空間の中に、その空間を加圧空気と連通状態にするために、設けられている。ギヤボックス24が後壁に固定されている。ギヤボックスによって、以下に説明するプッシュロッドに垂直な回転動作(winding action)が利用できる。ギヤボックスは、ギヤボックスの比に基づいて回転速度及びトルクを高くする又は低くすることを可能にする。
【0008】
プッシュロッド26は、シリンダ、前壁、後壁、ギヤボックス及びピストンの中に、軸方向に配置されている。前壁の方向へピストンを軸方向に動作させることによって、常用ブレーキ機構(図示せず)とのリンク機構を介してブレーキ力が付与される。プッシュロッドは、図に示すようにユニットの底部から外に延びている。
【0009】
ピストンから延びているのは同軸管28であり、同軸管28は、ピストンと反対側の端部に固定された環状のコレット止め具30を有している。プッシュロッド26は、ギヤボックスを貫通する端部に固定されたキー又はラックを有している。プッシュロッドは、直径が大きいねじ付き中央部分32を有し、中央部分32は、その外径にらせん状のねじ山34を有している。
【0010】
コレット36が、同軸管28とプッシュロッドのねじ付き中央部分32との間に配置されている。コレットは、可撓性をもつの複数の歯部を有し、歯部は、プッシュロッドのねじ山34の上を乗り越えるために拡がることができる。
【0011】
コレット止め具は内側の円錐面を有し、コレットの複数の歯部は全体で外側の円錐面を有している。これらの円錐面は相補的である。ピン38が、歯部を通って摺動可能に且つ半径方向に延び、そして管28に固定されており、それにより、コレットと管(及びピストン)とが相対的に回転しないようにする。コレット止め具は、駐車ブレーキばねがピストンを前端壁に運ぶ時、コレットに圧力をかける。その時、コレットは、プッシュロッドを把持し、それにより、ピストンと共にプッシュロッドを運ぶ。コレット止め具は、駐車ブレーキばねがピストンを移動させる時に、相補的な円錐面によって、コレットをプッシュロッドの上に絞りつける。コレット止め具とコレットとの間の平坦な接触面によって、コレット止め具によるコレットへの絞りつけ量は制限され、それにより、コレットがプッシュロッド内に挟み込まれるのが防がれる。
【0012】
プッシュロッド26が前壁12を貫通する場所に、封止材40が設けられている。また、プッシュロッドがピストン16を貫通する場所にも、封止材42が設けられている。
【0013】
図面では、ばねがピストンを前壁に移動させ、プッシュロッドが手動で引き出されてブレーキを解除している時のばね作動式駐車ブレーキが示されている。プッシュロッドにおける直径が拡大したねじ付き部分は、後壁まで完全に移動してしまっていることに留意されたい。加圧空気がピストンに加えられると、加圧空気は、ピストンを後壁に向かって運び、この時、コレット歯部が拡がり、拡大した直径の部分がピストンに接触するまで、ピストンがプッシュロッド上を摺動する。空気圧が除去されると、ばねがピストンを前壁に戻す。ばねがピストンを移動させ始めるとすぐに、コレットはプッシュロッドを再セットし(reset)且つ把持し、それにより、プッシュロッドは、ブレーキをセットするピストンと共に前方へ運ばれる。ばねの動作によってブレーキがセットされ、空気圧がもはや利用できなくなった時点で、ブレーキは、空気圧で解除することができなくなり、手動で解除しなければならなくなる。駐車ブレーキが手動でのクランキング操作によって解除されるとき、ピストンは前壁に移動し、プッシュロッドは、プッシュロッドの拡大した直径の部分上のねじ山とコレットの内側のねじ山との相互作用によって、後壁/後端部に向かって後退する。この時、コレットは、コレット止め具内に引き込まれており、コレットのねじ山はプッシュロッドのねじ山と係合したまま維持される。ブレーキを手動で再作動させることが望まれる場合、クランキング操作を逆にすることができる。コレットは、ばねによってピストンに加えられる圧力のため、プッシュロッドと係合したままになる。
【0014】
このように、特許法が要求する詳細及び特殊性と共に本発明を定義したが、特許証で保護されることが望まれる事項を特許請求の範囲に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式の解除及び再作動機構を有するばね作動式駐車ブレーキであって、
シリンダ壁、前壁及び後壁を有する空気圧式のシリンダと、
前記シリンダ壁に対して封止されたピストンと、
前記ピストン及び前記後壁の間に延び、前記ピストンを前記前壁に付勢するための1つ又は複数の駐車ブレーキばねと、
前記ばねに抗して前記ピストンを前記後壁に移動させるように圧力をかけるための空気圧入口と、
前記後壁に対して固定され且つ手動式クランクを有するギヤボックスと、
前記シリンダ、前記前壁、前記後壁、前記ピストン及び前記ギヤボックスを通って延び、前記前壁から外側に延びた位置にあるときにブレーキ力を供給するように連結されるプッシュロッドであって、前記ギヤボックスを通って延びる端部にキー又はラックを有すると共に、前記ピストンを通る部分の上にらせん状ねじ山を有するプッシュロッドと、
前記らせん状ねじ山を包囲し且つ可撓性をもち放射状に拡がることが可能な歯部を有するねじ付きのコレットであって、前記ピストンによって捕捉され前記ピストンに対して回転しないように固定される、コレットとを備え、
それにより、前記ギヤボックスが手動でクランキング操作されたとき、前記プッシュロッドは回転し、前記コレットの内側のねじ山によって、前記プッシュロッドが、前記ギヤボックスの前記クランキング操作の方向に応じて前記ピストンに対して軸方向に移動させられ、前記シリンダを前記駐車ブレーキばねに抗して移動させるように前記シリンダに空気圧がかけられたとき、前記コレットの歯部は、前記プッシュロッドが前記ピストンに対してリセット位置に移動することができるように、拡がり解放することが可能である、ばね作動式駐車ブレーキ。
【請求項2】
前記プッシュロッドの半径方向外側に且つ前記プッシュロッドと同軸に配置され、一方の軸方向端部で前記ピストンに固定された管と、前記管の他方の軸方向端部に固定されたコレット止め具とをさらに備え、前記コレットは、前記プッシュロッド及び前記管の間で半径方向に配置され、それにより、前記駐車ブレーキばねが前記ピストンを前記前端壁に運ぶとき、前記コレット止め具が前記コレットに圧力をかけ、そのとき、前記コレットは、前記プッシュロッドを把持して前記ピストンと共に前記プッシュロッドを運ぶ請求項1に記載のばね作動式駐車ブレーキ。
【請求項3】
前記コレット及び前記コレット止め具が相補的な円錐面を有し、前記相補的な円錐面によって、前記コレット止め具は、前記駐車ブレーキばねが前記ピストンを移動させるときに、前記コレットを前記プッシュロッドの上に絞りつける請求項2に記載のばね作動式駐車ブレーキ。
【請求項4】
前記歯部を通って半径方向に延び且つ前記管に固定されるピンをさらに備え、前記ピンは、前記歯部が拡がることを可能にし、前記コレットと前記管及び前記ピストンとの間で相対的に回転することを防ぐ請求項2に記載のばね作動式駐車ブレーキ。
【請求項5】
前記プッシュロッドが、前記プッシュロッドの表面と前記ピストン及び前記前壁との間に摺動する封止材を有する請求項1に記載のばね作動式駐車ブレーキ。

【図1】
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【公表番号】特表2011−523920(P2011−523920A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513550(P2011−513550)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045395
【国際公開番号】WO2009/151960
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(506190681)ワブテク・ホールディング・コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】WABTEC HOLDING CORP.
【住所又は居所原語表記】1001 Air Brake Avenue, Wilmerding, PA 15148, U.S.A.
【Fターム(参考)】