説明

手持ち式器具

【課題】ヘッド部が身体に適用されあるいは適用されそうになったときのみに振動発生装置が駆動されることにより、振動する器具を手で握る際に使用者により感知される不快感を大きく低減させることができる。
【解決手段】電気式の手持ち式器具は、把持部と、使用者の身体に接触して移動されるヘッド部とを備えている。このような手持ち式器具としては、例えば、ブラシヘッドを有する歯ブラシ、あるいは、とりわけ刃ユニット(2)から形成されたヘッド部を有する安全かみそりが挙げられる。電気により動作可能な、例えば電気モータ(24)および偏心重錘(26)からなる振動発生装置と、振動発生装置の動作を制御する制御装置(16)とが更に設けられている。制御装置は、当該制御装置に物体が接近したことまたは接触したことを検知することができるものであり、ヘッド部(2)に配置されたセンサ部、具体的には例えば刃ユニット(2)の刃(4)から形成された電極を有している。このことにより、振動発生装置は、手持ち式器具の使用者によって刃ユニット(または他のヘッド部)が、処理されるべき身体領域に接近または接触するよう移動させられたことに反応して駆動するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式器具に関し、とりわけ、使用者が手でこの器具を握るために用いられる把持部と、使用者の身体に対して処理を行うためにこの身体と接触するまたは少なくとも接近するようなヘッド部と、電気装置、とりわけ器具の使用により駆動されるような振動発生器と、を有する種類の手持ち式器具に関する。
【0002】
前述の種類の器具は、安全かみそりおよび歯ブラシを含む。この器具の他の種のものとしては、マッサージ器が含まれる。振動機構を含む歯ブラシは、英国特許第2250428号公開公報および米国特許第4744124号に記載されており、このような文献には、ブラシヘッドを歯に押し当てるとスイッチが入るような音声発生器を含む歯ブラシが記載されている。英国特許第2258922号公開公報には、静電容量式センサが把持部に設けられており歯ブラシが手で握られたときにモータのスイッチが入るような電気歯ブラシ等の個人用ケア器具が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明に係る基本的な原理は、冒頭に述べたような種類の手持ち式器具に適用可能なものであるが、本発明は、とりわけ安全かみそりに関する以下の記載のものとなっている。安全かみそりは一般的に、把持部と、この把持部に設けられ、鋭い切断エッジが設けられた少なくとも1つの刃を有する刃ユニットとを備えている。毛剃りを行うにあたり、刃ユニットが肌に当接し、1枚または複数の刃が肌上を動き、鋭い切断エッジが処理を行って肌から伸びている毛を切断する。切断エッジが鈍化して快適な毛剃りを行うことがもはやできなくなったときにかみそり全体が廃棄されるよう、刃ユニットが把持部に取り付けられるような構成とすることもできる。代わりに、刃ユニットを把持部に取り外し可能に取り付け、刃の鋭さが許容できないレベルまで低下したときに刃ユニットが新しい刃ユニットに取り替えられるようにすることもできる。交換可能な刃ユニットとしては、たいていの場合、毛剃りカートリッジが参照される。現在販売されている安全かみそりの大部分は、完全に手動で操作および使用が行われている。とはいえ、安全かみそりに電気装置を組み込んでもよく、かみそりを振動させるよう操作可能な電気駆動の振動機構を内蔵することが知られている。このような振動はかみそり性能に有益な効果があることに留意されたい。単純かつ使い勝手の良い振動機構は、出力用軸に対して偏って設けられた錘を有する電気モータから構成されている。振動機構や、モータに電力を供給する電池は、都合の良いことに、かみそり把持部に内蔵されている。このようなかみそりの従来例としては、欧州特許第0885698号公開公報、米国特許第3611568号、米国特許第5299354号、米国特許第5214851号、米国特許第5046249号および米国特許6481104号に記載されたものが挙げられる。しかしながら、かみそりの振動は毛剃りを実際に行っている間におけるかみそりの性能を向上させるが、不利益がないとはいえない。多くのかみそりの使用者は、手で握られる振動中のかみそりの感触を嫌う。このため、米国特許第5214851号、米国特許第5046249号および米国特許第6481104号に記載されているように、振動が刃ユニットに集中してこの振動が概して使用者の手によって握られる把持部の一部に伝達されないような、かみそり把持部の設計が試みられている。
【0004】
本発明は、振動するかみそりから不快感を受けるのは、毛剃りが行われるべき顔または他の身体領域から刃ユニットが離間した状態でかみそりが把持されたときが大部分であり、これに対して、刃ユニットが身体に接触しているときには、例えば毛剃りストロークを行っているときには、使用者は振動するかみそりの感触により満足するという認識に基づいている。
【0005】
欧州特許第0906814号公開公報には、圧電装置がかみそりヘッドに設けられた安全かみそりが記載されている。この圧電装置は、かみそりヘッドに作用する力によって決まる信号を生成するために用いられる。出力信号に基づいて生成される電圧は、とりわけ、モータを駆動して振動等の動作を生じさせることが示されているが、この振動の目的は述べられておらず、非常に大きな力が適用されたことまたは刃を交換すべきであることを単に使用者に示すのみである。ともかく、例えば顔における異なる領域に対して毛剃りを行うとき、あるいは個人差により、毛剃りを行う間に力の適用が変化するので、力の適用に基づくスイッチ動作には、厳しい制限がある。
【0006】
電力を節約するとともに、乾式毛剃り器内の電気モータの操作を制御するスイッチのオン−オフの必要をなくす目的で、米国特許第4380121号および米国特許第4531287号が提案されている。それぞれ、毛剃り器を把持する人間の肌と接触するよう、あるいは接近するよう配置された切断薄片に基づいてモータを駆動している。これらの乾式毛剃り器には振動発生器が設けられておらず、従来技術の振動安全かみそりに関する不快感に係る問題に対して何の解決法も示唆されていない。また、赤外線センサまたは近接センサを有し、ファンおよび熱源への電力の供給を制御するようなヘアドライヤーが独国特許第1967734号公開公報に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、手持ち式器具であって、把持部と、当該手持ち式器具の使用者の身体に対して処理を行うために用いられるヘッド部と、電気により動作可能な振動発生装置と、振動発生装置の動作を制御する制御装置と、を備え、スイッチ装置は、当該スイッチ装置に物体が接近したことまたは接触したことを検知することができるものであり、ヘッド部に配置されたセンサ部を有し、身体に対して処理を行うために手持ち式器具の使用者によってヘッド部が身体に接近または接触するよう移動させられたことに反応して振動発生装置が駆動するようになっている手持ち式器具が提供される。
【0008】
本発明によれば、手持ち式器具の異なる構成を具現することができる。例えば、手持ち式器具は歯ブラシであり、この場合、センサ部はブラシヘッドに配置され、当該センサ部は制御装置を介してブラシレベルの振動機構を制御する。制御装置は、例えば歯磨き粉や他の物質をブラシヘッドに搬送するためのポンプモータやバルブアクチュエータ、あるいはブラシヘッドの振動機構等の、1または複数の更なる装置を制御するようになっていてもよい。
【0009】
本発明は、とりわけ刃ユニットから構成されたヘッド部を有する安全かみそりに適用することができる。近接検知制御装置を備えた湿式かみそりの場合、この制御装置は、刃ユニットが身体から約10mm以下、例えば5mmまたはそれ以下の位置にあるときに駆動される。光、赤外線または高周波により駆動される近接スイッチを用いてもよい。安全かみそりの一の好ましい実施の形態において、接触検知制御装置が用いられ、刃ユニットが肌と接触したときにすぐに駆動が行われる。本発明により、従来技術に係る上述の振動安全かみそりの問題点が、刃ユニットが肌に接触しているときまたは肌に接触しようとするときのみに駆動される振動発生装置によって解決される。しかしながら、制御装置にとって、オン−オフスイッチとして機能することは本質的事項ではなく、代わりに、毛剃りが行われるべき肌に刃ユニットが位置するときに振動数を変化させるよう構成されていてもよい。刃ユニットが肌から離間して保持されたときに、例えば使用者が最初にかみそりを把持したときに、振動数が低いことにより、かみそりが使用のための準備に入ったことについて感覚的な指示を与えるようになっていることが好ましい。実際の毛剃りを行う間の振動数は重要ではなく、亜音速周波数と同様に超音波周波数を本発明の範囲内とすることができる。振動機構は、一または複数の選択された刃ユニット構造、例えば、刃の前にあり肌に接触する保護部材、あるいは1または複数の刃を振動するために適用することができる。振動は方向性のあるものとすることができる。例えば、振動は、スライス切断動作を促進するよう刃の縦方向に方向づけられ、あるいは刃の幅方向に方向づけられる。他の例としては、毛剃りが行われるべき肌表面に対して概して垂直方向に振動する部材を用いることもできる。振動機構は振動を発生させる圧電装置を内蔵している。代わりに、偏心重錘を回転駆動させるモータが制御装置により制御されるようになっていてもよい。刃ユニットに設けられたセンサ部は電極であることが好ましく、刃ユニットのうち少なくとも1つの刃から都合良く構成されたものとすることができる。しかしながら、より好ましくは、分離された電極が代わりに用いられる。刃ユニットは、少なくとも一部が導電性プラスチックから構成され、電極および/または電極に対する電気的な接続を形成するようなプラスチックフレームを有していてもよい。電極に対する電気的な接続は、刃ユニットフレームに対して導電性材料を被覆または積層することにより、あるいは刃ユニットに1または複数の当該目的のための細長い一片を取り付けることにより得ることもできる。
【0010】
好ましい実施の形態においては、第2の電極が更に設けられており、制御装置は両電極間の電気的パラメータ、例えば電気抵抗や静電容量の変化を検知するようになっている。とりわけ、第2の電極は、手持ち式器具の使用の際に、使用者の身体に接近または当接するよう形成されており、使用者の手と接触することによりかみそりを把持する把持部の一部として、または本発明による他の器具として都合良く設けられている。
【0011】
制御装置は、一対の電気信号を発生させるよう形成された信号発生器と、これらの一対の電気信号を比較するとともに一対の電気信号間の関係の予め設定された変化を示す出力を行う比較器と、この比較器の出力に応答して電気装置を駆動する出力手段と、を備えている。両方の電極が接近したときに、または器具の使用者の身体に接触したときに、予め設定された変化が発生する。
【0012】
特定の実施の形態において、信号発生器は発振器であり、一対の電気信号は一対の振動信号である。そして、第1および第2のコンデンサが設けられており、各コンデンサは各々の振動信号により充電されるよう形成され、各電極は、両電極が身体に接近または接触した状態となるよう使用者によって手持ち式器具が移動させられた際に、第1のコンデンサが第2のコンデンサよりも遅く充電されるよう設けられている。例えば、第1のコンデンサと並列に、更なるコンデンサが設けられている。
【0013】
本発明による手持ち式器具は、制御手段および振動発生装置に電力を供給するための電源、とりわけ電池を更に備えたことが好ましい。また、電源から制御装置および振動発生装置への電力の供給の入切を行うためのスイッチ装置が設けられていることが好ましい。スイッチ装置は手持ち式器具の外面に設けられ、このスイッチ装置は使用者により手動で操作することができるようになっていてもよい。代わりに、このスイッチ装置は、対応する格納トレイと相互作用を行うよう設けられ、手持ち式器具が格納トレイに格納されたときに電源からの電力の供給が遮断され、手持ち式器具が格納トレイから取り外されたときに電力の供給が行われるようになっていてもよい。格納トレイは、米国特許第5782346号に記載されたものと概して同じ構成となっている。
【0014】
上述の振動発生装置に加えて、本発明を具現する安全かみそりには他の構成の電気装置が設けられている。このような電気装置の例を示す。
(i)毛剃りを行う間に肌に接触する刃ユニットの1または複数の刃、あるいは他の構成部材を加熱する加熱装置、例えばペルチェ素子、電気抵抗またはオーム加熱装置。
(ii)毛剃り促進剤を肌に搬送し、モータ駆動ポンプの作動、または電気制御アクチュエータを有するバルブの作動により駆動される供給装置。毛剃りのストロークを行う間に安全かみそりの刃ユニットで搬送される毛剃り促進剤は、参照することにより内容が本願に組み込まれるような、本件出願人による国際公開第00/47374号の特許明細書に記載された性質および特徴を有している。
(iii)刃による切断の準備が行われた肌および/または毛を用意する調整装置、具体的には、肌に横たわる毛を切断のために立たせるのを促進するための、刃ユニットの保護部材の領域に取り付けられこの刃ユニットの軸を中心して回転するローラー。
【0015】
電気装置のこのような全ての構成は、本発明による刃ユニットに配置されたセンサ部を有する制御装置により制御される。また、センサ部および制御装置について、刃ユニットが肌に対して適用される回数の指令ならびに刃ユニットの交換が行われるときの信号を発するカウンターを動作させるようにすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の明確な理解を促進するために、安全かみそりの現在の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して以下に記載する。
【0017】
図示のように、安全かみそりは、把持部1と、この把持部1の上端に着脱自在に取り付けられた刃ユニットまたはカートリッジ2とを備えている。刃ユニットは、概して長方形のフレーム3と、複数、例えば3、4または5枚の刃4とを有している。各刃4は、実質的に平行となっている鋭い切断エッジを有しており、フレーム内に設けられており、刃ユニット2の両端においてフレーム3の周囲に配置される一対の金属クリップ5により保持されている。刃の前側部分に肌を接触させるための、細長い一片のエラストマー材料を含む保護部材がフレーム上に設けられている。一方、毛剃りのストローク動作を行う際に刃の後側部分に肌を接触させるための、潤滑性の細長い一片を含むキャップ部材がフレーム上に設けられている。フレームは、枠部材8に回転自在に取り付けられており、この枠部材8は、中央部分10から延びフレーム2の両端に嵌めこまれる一対のアーム9を有し、このことにより刃ユニット2は把持部1に対して刃エッジの延びる方向と実質的に平行な軸を中心として回転することができるようになっている。上述のかみそりは公知の構成であり、更なる詳細については既にある特許公報、一例としてはWO97/37819号により参照することができる。
【0018】
かみそり把持部は、手で握ることができるよう形成された主要部分12と、この主要部分から上方に延びる首部分14とを有し、首部分14の自由端に刃ユニット2が取り付けられるようになっている。把持部1の主要部分またはグリップ部分12は、導電性の例えば金属ケーシング13を有している。この金属ケーシング13は、後に詳述するように、使用者の手との電気的な接触を検知するための電極として機能する。把持部の電池区画の内部には、交換式のまたは再充電可能な電池15が収納されている。把持部の内部には、電子制御装置16も収納されている。電池15はパワースイッチを介して制御装置16に電気的に接続されている。このパワースイッチは、かみそりの不使用時において、電池エネルギーを節約するために制御装置への電力供給を遮断するよう操作することができるようになっている。パワースイッチは、手動で操作するために把持部の表面に設けられていてもよいが、好ましい構成においては、パワースイッチは、かみそりがかみそりホルダーから取り外されることにより、ならびにかみそりホルダーに戻されることにより作動されるよう形成されている。このカミソリホルダーは、かみそりの不使用時にこのかみそりが格納されるよう構成されている。図3乃至図5に示すトレイ18を有するかみそりホルダーの公知の構成において、トレイ18はその上面にサドル部19を有しており、このサドル部19はかみそり把持部1の首部分14を受け入れて軽く保持するのに適合するようになっている。かみそり把持部1に、格納トレイ18と一体的に形成された機械的スイッチを設けることもでき、かみそりが格納トレイ18から離間するよう動かされたときにこのスイッチは自動的に作動して電池15からスイッチ装置16に電力が供給され、トレイ上にかみそりが再び置かれたときに電力の供給を遮断するよう駆動されるようになっている。好ましい実施の形態において、把持部1の内部に配置されたリードスイッチ20から形成されるパワースイッチにより実質的に同じ結果が得られる。この場合、格納トレイ18に永久磁石21が設けられている。かみそりがトレイ18の近くに位置したときには、図3に示すように、リードスイッチ20は磁石21の接近により開状態が維持され、電池15から電力が供給されることはない。しかし、かみそりがトレイから離れた場合には、リードスイッチ20は閉状態となり、制御装置16への電力の供給が行われる。
【0019】
詳細については後述するが、制御装置16は、電気モータ24(図2、3)の駆動を制御するようになっている。この電気モータ24は、ハウジング1内に収納されており、偏心重錘26が取り付けられた出力用軸を有している。それ自体が公知である方法において、電気モータの通電により、偏心重錘26が高速で回転し、このことにより、かみそり、とりわけ刃ユニット2が振動し、かみそりの毛剃り性能を向上させる。適合する振動数は約120Hzである。
【0020】
本発明によれば、制御装置16は、当該制御装置16に物体が接触したことを検知するよう構成されており、かみそりの刃ユニットがこのかみそりの使用者、すなわちかみそり把持部1を握った人間の身体に接触した時のみにおいてモータ24が駆動するようになっている。刃ユニット2は電極を内蔵しており、この電極は、刃ユニットの刃4のうちの少なくとも一つ、好ましくは全ての刃4から都合良く構成されている。制御装置16およびこの電極4の間の電気的な接触は、接続部30を有する把持部1の首部分14により行われる。接続部30は、枠部材8の中央部分10を通過して突出し、刃ユニットの後部に接続された接続片32に向かって延びるよう形成されている。接続片32は、刃保持用金属クリップ5に向かって延びてこの刃保持用金属クリップ5と電気的に接続する側方翼33を有している。これらの金属クリップは、結局のところ、刃4と接続している。当然のことながら、刃4を電極として使用し、刃ユニット2が毛剃りのストロークを行う際に肌に接触するような位置で、分離された導電性部材を刃ユニットに設けるような方法は、本質的事項ではない。接続部30は、接続片32と常時電気的に接続しており、刃ユニットが肌に用いられてこの肌上を移動する間と同様に把持部1上の刃ユニット2が回転している間においても、刃ユニットの電極との間の電気的導通が遮断されることはない。接続部30は、予め設定された安静位置から離間して行われる刃ユニットの回転移動に抵抗するような、バネ付きプランジャ(plunger)から都合よく構成されている。図示のように、接続部30はワイヤ導体35により制御装置16に電気的に接続されている。このワイヤ導体35は、把持部1の首部分14を貫通して導かれている。
【0021】
当然のことながら、刃ユニットの電極および制御装置の電気的な接続を確保する他の実施可能な態様もある。例えば、刃ユニットのフレーム3が導電性プラスチック等の導電性の材料から形成されていてもよい。また、フレーム3の後部に、導電性の部材が積層され、被覆されまたは印刷されていてもよい。この導電性の部材には粘着性のある金属薄片が設けられており、または金属部材が内蔵されている。このことにより接続部30およびクリップ5間の電気的な接続を行うことができ、あるいは電極自体または電極と接続する他の構成要素との電気的な接続を行うことができる。代わりに、フレームが射出成形された金属部分を含んでいてもよく、電極および接続部30間の導電性のある経路を形成することができ、あるいは毛細血管の溝内にある水が電気的通電を確保するのに十分なものとなる。
【0022】
図7は、制御装置16の機能を説明するための回路図である。図示のように、制御装置16は、発振器61と、比較器62と、モータ駆動回路63と、第1および第2のコンデンサ64、65とを備えている。制御装置16は、上述した刃4および把持部1の外部ケーシング13からそれぞれ構成される2つの検出電極に追加的に接続されている。モータ駆動回路63はモータ24に駆動電流を供給するよう当該モータ24に接続されている。上述のように、制御装置16を駆動するのに必要とされる電力は電池15からパワースイッチを介して供給される。電力の接続については明瞭化のために図7から省略するが、制御装置16の操作に関する以下の記載を、電池からの電力の適用により駆動が行われた際の状態に適用することができることが理解できよう。
【0023】
発振器61は、2つの振動信号を出力ライン611、612に各々供給するよう構成されている。出力ライン611、612は、第1および第2のコンデンサ64、65を各々介して、回路のアース線として機能するライン66に接続されている。ライン611、612は比較器62への一対の入力信号を送るようになっている。本質的に、比較器62は2つの入力信号間の関係の変化を検出する。センサ電極は、両方のまたは1つのみの電極が使用者の身体と接触するかどうかによって、比較器への2つの入力信号間の関係を変化させるよう接続されている。このような変化を検出することにより、両方の電極が使用者の身体に接触したときに、比較器はモータ駆動回路63をオンに切り替える。
【0024】
より詳細に説明すると、図7に示すように、ライン612が追加的に検出電極のうちの一つと接続している。両方の電極間に有効的な電気的接続がない場合は、発振器61からライン611および612に出力される信号は、比較器62への入力において第1の予め定められた関係を有する。両方の検出電極が使用者の身体に接触した場合は、追加の電気的接続がライン612とアース線66との間に形成される。これは、例えばコンデンサ65に追加される静電容量および/または電気抵抗であってもよい。いずれにしても、追加の接続は、比較器62に入力されるライン612の信号の性質を変化させるのに有効である。このようにして、2つの入力信号間の関係が変化し、比較器62は、モータ駆動回路63およびモータ24を駆動させることによって応答を行う。
【0025】
上述のように、制御装置16は、両方の検出電極が使用者の身体に接触することを検出するようになっている。装置の操作状況または比較器による検出によって、制御装置16が他の状態に応答するようになっていてもよい。とりわけ、使用者が毛剃り装置を握っており、電極のうちの一つに接触している場合は、他の電極を使用者の身体に接近させるが接触させないようにするだけで十分である。身体に対する他の電極の接近は、この場合はライン612,66間に追加の静電容量を発現させるのに十分であり、ライン612の信号に係る上述の変化を生じさせることができる。比較器または他の回路の接近に係る検出感度は、この効果が発生するような身体からの接近距離を測定することにより決まる。この検出感度は、例えば約10mmとされる。
【0026】
さらに、装置を起動するのに十分な変化を生じさせる回路の電気的性質を発現させるよう、他の要素が形成されてもよい場合がある。例えば、ある状態において、使用者が装置を握って電極のうちの一つと接触し、装置のヘッド部を流水で洗い流して他の電極が水と接触するようにしたときに、電極間の電気的状態を十分に変化させ、装置を起動するようになっていてもよい。ある状況において、このような操作は有利となる。
【0027】
本発明の範囲内における様々な実施の形態において、図7の構成について様々な変化を行うことが可能である。上述のように、本発明は、モータ24以外の、またはモータ24の代わりに、ある装置を駆動させるよう構成される。この場合、モータ駆動回路は、他の装置に必要な電流を供給するのに適した回路と置き換えられる、またはこのような回路が追加されるようになる。
【0028】
更に、制御手段16は、電源に接続されたパワースイッチ20により当該制御手段に電力が加えられたときはいつでも、何らかの出力信号を発するよう構成されていてもよい。制御手段16は、第2の出力をモータ駆動回路63へ行うようになっていてもよい。この場合、上述のような検出による大きなレベルの振動の代わりに、制御手段に電力が加えられたときに低レベルの振動をすぐに発生させるようモータが駆動するようになる。手持ち式器具の一部分として、パワースイッチが「オン」となっている間はずっと点灯するような点灯装置を設けてもよい。電池の電力が低くなったときに点滅するよう、この点灯装置あるいは更なる点灯装置が設けられていてもよい。
【0029】
図8は、図7の制御装置16の回路の実施例を示す。この実施例は、単に図面により示されたものであり、制御装置16の機能に関して多くの他の実施方法を用いることも可能である。図8に示すように、IC1:A、IC1:B、IC1:Cは統合された回路装置であり、他の構成要素は、接頭語R、C、DおよびQ、ならびに典型的な数値で各々図示される抵抗器、コンデンサ、ダイオードおよびトランジスタである。
【0030】
図8において、RL1は以前に記載したパワースイッチであり、具体的にはリードスイッチである。このリードスイッチは、装置の不使用時に当該装置が収納されるよう構成されたトレイ内に配置された磁石により操作される。装置がトレイから取り外されたときに、スイッチRL1は図示のような位置にあり、端子T1,1およびT1,2に接続される電池15からの電力が、+3Vの経路71を介して回路に送られる。端子T2,1は、2つの電極のうちの一つを形成するような装置の把持部1の外部ケーシング13に接続され、また、回路の「アース」に接続されている。
【0031】
IC1:Aは、発振器61の心臓部を形成し、関連する抵抗器R1、R2、コンデンサC3、C4およびトランジスタQ1から構成され、ライン611、612に振動出力信号を発するようになっている。これらのものにより、抵抗器およびコンデンサのネットワークR4、RV1、C6、R3、C5を介して、IC1:Bの心臓部において比較器62に入力信号が送られる。
【0032】
振動信号の各サイクル内において、ライン611の信号が高となった場合には、コンデンサC5は抵抗器R3を介して充電を開始する。このことにより、立ち上がり信号がIC1:Bのクロック入力に適用される。この入力信号がある程度のレベルまで達すると、IC1:Bのクロック入力が低から高に変化する。各振動サイクルの間にIC1:Bへの「高」クロック入力が到達するよう、振動の周波数およびコンデンサC5の充電率がセットされる。十分公知のように、クロック信号が高となった場合は常時、IC1:Bへの「D」入力の値が、Q出力および反対側のQ ̄(Qに上線がついた文字)出力により測定される。
【0033】
また、振動信号の各サイクル内において、ライン612の信号が高となった場合には、コンデンサC6は抵抗器R4および可変抵抗器RV1を介して充電を開始する。コンデンサC6はコンデンサC5と同じ容量を有しており、端子T3,3に何も接続しておらずR4およびRV1の組合せがR3と同等のものとなるようRV1がセットされている場合は、2つのコンデンサの充電率が同じとなる。このため、RV1は、回路を改善するために用いることができる。すなわち、このような状態において、C6が少なくともC5と同じ速度で充電を行いIC1:Bへのクロック入力が高となったときにライン612からの「D」入力も高くなるよう、回路を改善することができる。このような状態において、Q ̄(Qに上線がついた文字)出力は通常は低となり、モータ駆動回路63は駆動されない。
【0034】
端子T3,3は、手持ち式器具のヘッド部にある電極に接続されている。このことにより、端子T2,1に接続された把持部を握っている使用者の身体に接触するようまたは接近するよう電極が動かされたときに、使用者の身体がいかなる電気抵抗または静電容量を有している場合であっても、コンデンサC7を介してアースへの追加の経路が形成される。このことにより、IC1:Bのクロック入力が高であり、「D」入力が低のままであり、Qが高であるときに、コンデンサC6の充電率を遅くするという効果がある。
【0035】
モータ24は端子T3,1およびT3,2に接続されており、標準モータ駆動回路IC2により駆動される。この回路は、IC1:BのQ ̄(Qに上線がついた文字)の値が高となることにより駆動することができ、装置のヘッド部が使用者の肌上に置かれたときにモータ24が駆動する。
【0036】
上述のように、かみそりの刃ユニットが肌との接触から離脱したときにモータ24がすぐに止まるよう、制御装置は制御を行う。このことは本質的事項ではなく、制御装置は、刃ユニットと使用者の肌との間の接触が遮断された後、モータに電力を供給するのを停止する前に、最大で数秒間の、例えば0.1〜0.5秒間の短い遅延(ディレイ)を与えるよう形成されていてもよい。このことにより、立て続けに行われる毛剃りのストロークの合間に、かみそりの振動を維持することができるという利益が得られる。
【0037】
好ましい実施の形態に関する上述の記載は、非制限的な例に過ぎず、添付の特許請求の範囲の請求項により定義される本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて様々な変更を行うことができることが理解されよう。一つの可能な変更の例としては、把持部における導電性のケーシング13は、絶縁材の薄い被覆層に取り付けられていてもよく、このことにより使用者の手と把持部の電極との間において高い静電容量および高い電気抵抗を得ることができる。さらに、必要であれば、手動で操作可能なスイッチ機構をかみそりの把持部上に設け、このスイッチ機構をスイッチ20に直列で電気的に接続させることができる。かみそりを使用しない場合に当該かみそりを保持するための格納トレイ18の使用を好まない使用者による使用に役立つ。例えば除去すべき毛が処理しにくい領域にあるときに、かみそりの使用者に非振動モードを選択させるようにするために、このようなスイッチ、あるいはオンおよび/またはオフの切り替えを一定の遅延の後に行う電子トグルスイッチのような別のスイッチを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】後方から見た刃ユニットおよび把持部の上部分を示すかみそりの部分等角図である。
【図2】かみそりの背面図である。
【図3】かみそりの不使用時に当該かみそりが格納されるトレイから構成されるかみそりホルダーを示す側面図であって、かみそりが格納トレイからわずかな距離だけ離間して示されるような側面図である。
【図4】図3に対応する側面図であるが、かみそりが格納トレイから大きく離間している状態を示す側面図である。
【図5】図3のかみそりおよび格納トレイの等角図である。
【図6】かみそりの分解背面図である。
【図7】かみそりに設けられた電気スイッチ装置のブロック図である。
【図8】スイッチ回路の特定の実施の形態の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式器具であって、
把持部(1)と、
当該手持ち式器具の使用者の身体に対して処理を行うために用いられるヘッド部(2)と、
電気により動作可能な振動発生装置(24、26)と、
前記振動発生装置の動作を制御する制御装置(16)と、
を備え、
前記制御装置(16)は、当該制御装置に物体が接近したことまたは接触したことを検知することができるものであり、ヘッド部(2)に配置されたセンサ部を有し、身体に対して処理を行うために手持ち式器具の使用者によってヘッド部(2)が身体に接近または接触するよう移動させられたことに反応して振動発生装置が駆動するようになっていることを特徴とする手持ち式器具。
【請求項2】
手持ち式器具は歯ブラシであり、センサ部は歯ブラシのヘッド部に配置されていることを特徴とする請求項1記載の手持ち式器具。
【請求項3】
歯ブラシにはヘッド部が移動自在に取り付けられており、この歯ブラシには当該ヘッド部を駆動させるための振動発生装置が連結されていることを特徴とする請求項2記載の手持ち式器具。
【請求項4】
手持ち式器具は刃ユニット(2)から形成されたヘッド部を有する安全かみそりであり、振動発生装置は少なくとも刃ユニット(2)からなる構成要素を振動させるよう動作可能となっていることを特徴とする請求項1記載の手持ち式器具。
【請求項5】
ヘッド部で液状物質を投与する搬送システムと、
制御装置の制御により動作可能であり液状物質を投与させるようにする電気装置と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1、2または4のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項6】
振動発生装置は、制御装置(16)により制御される電気モータ(24)を有することを特徴とする請求項4記載の手持ち式器具。
【請求項7】
振動発生装置は、前記電気モータ(24)により回転させられるよう形成された回転自在の偏心重錘(26)を更に有することを特徴とする請求項6記載の手持ち式器具。
【請求項8】
制御装置(10)は、刃ユニットが使用者の身体から離間するよう移動したことに反応して振動発生装置を停止させる際に、最大で数秒間の、好ましくは0.1〜0.5秒の遅延を当該振動発生装置に与えるよう形成されていることを特徴とする請求項4、6または7のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項9】
センサ部は電極を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項10】
センサ部は刃ユニット(2)の刃(4)から構成される電極を有することを特徴とする請求項4、6乃至8のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項11】
第2の電極を更に有し、制御装置(16)は両電極間の電気的パラメータの変化を検知するようになっていることを特徴とする請求項9または10記載の手持ち式器具。
【請求項12】
第2の電極は、手持ち式器具の使用の際に、使用者の身体に接近または当接するよう形成されていることを特徴とする請求項11記載の手持ち式器具。
【請求項13】
第2の電極は、把持部(1)の一部分(13)として設けられていることを特徴とする請求項12記載の手持ち式器具。
【請求項14】
前記電気的パラメータは電気抵抗のことであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項15】
前記電気的パラメータは静電容量のことであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項16】
前記制御装置は、一対の電気信号を発生させるよう形成された信号発生器(61)と、前記一対の電気信号を比較するとともに当該一対の電気信号間の関係の予め定められた変化を示す出力を行う比較器(62)とを有し、この制御装置において前記振動駆動装置を駆動するための出力が生成されるようになっており、
前記各電極は、当該両電極が身体に接近または接触した状態となるよう使用者によって手持ち式器具が移動させられた際に、前記の予め定められた変化が発生するよう形成されていることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項17】
前記信号発生器は発振器(61)であり、前記一対の電気信号は一対の振動信号であることを特徴とする請求項16記載の手持ち式器具。
【請求項18】
前記制御装置は、第1および第2のコンデンサ(64、65)を有し、各コンデンサはそれぞれ前記一対の振動信号により充電されるよう形成され、
前記各電極は、両電極が身体に接近または接触した状態となるよう使用者によって手持ち式器具が移動させられた際に、第1のコンデンサが第2のコンデンサよりも遅く充電されるよう設けられていることを特徴とする請求項17記載の手持ち式器具。
【請求項19】
前記第1および第2の電極は、両電極が身体に接近または接触した状態となるよう使用者によって手持ち式器具が移動させられた際に、前記第1のコンデンサに対して更なるコンデンサを並列に接続させるよう設けられていることを特徴とする請求項18記載の手持ち式器具。
【請求項20】
前記制御装置および前記振動発生装置に電力を供給するための電源(15)を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の手持ち式器具。
【請求項21】
前記電源(15)から制御装置(16)および振動発生装置への電力の供給の入切を行うためのスイッチ装置(20)を更に備えたことを特徴とする請求項20記載の手持ち式器具。
【請求項22】
前記スイッチ装置は手持ち式器具の外面に設けられ、このスイッチ装置は使用者により手動で操作することができるようになっていることを特徴とする請求項21記載の手持ち式器具。
【請求項23】
前記スイッチ装置(20)は、対応する格納トレイ(18)と相互作用を行うよう設けられ、手持ち式器具が格納トレイに格納されたときに前記電源(15)からの電力の供給が遮断され、手持ち式器具が格納トレイから取り外されたときに電力の供給が行われるようになっていることを特徴とする請求項21記載の手持ち式器具。
【請求項24】
前記スイッチ装置は、前記格納トレイ(18)に設けられた磁石(21)と相互作用を行うよう形成されたリードスイッチ(20)であることを特徴とする請求項23記載の手持ち式器具。
【請求項25】
把持部に取り付けられた刃ユニットと、
電気装置と、
前記電気装置の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、当該制御装置に物体が接近したことまたは接触したことを検知することができるものであり、刃ユニットに配置されたセンサ部を有し、
手持ち式器具の使用者によって刃ユニットが使用者の身体に接近または接触するよう移動させられたことに反応して電気装置が駆動し、
電気装置は、毛剃りが行われるべき肌に適用される、毛剃りを促進させる物質を刃ユニットに搬送するために駆動自在となっている供給装置、および/または、刃ユニットに組み込まれ、毛剃りが行われるべき肌および/または切断されるべき毛に対して動作を行うよう駆動自在となっている調整装置を有することを特徴とする安全かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−520212(P2006−520212A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502305(P2006−502305)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000680
【国際公開番号】WO2004/073941
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】