説明

手摺の支柱設置構造体

【課題】手摺の支柱を設置した部分に浸み込んだ水が外部に排出できるようにする。
【解決手段】設置箇所2には設置孔3および水抜孔4が設けられ、設置孔3が設置箇所2の上面に開口しかつ底部を有する行き止まり形状の凹部を構成し、水抜孔4が設置孔3の底面と設置箇所2の外面とに貫通する貫通孔を構成し、そして、手摺の支柱5における支柱心棒6が設置孔3に上から内部に入れられるとともに充填材7が支柱心棒6と設置孔3との間の隙間に充填され、充填材7が固化することによって、支柱心棒6が支柱設置構造体1に固定されており、経年劣化によって、設置孔3と充填材7との間に隙間8が発生し、水が隙間8に浸み込んだとしても、当該浸み込んだ水は隙間8に残留することなく隙間8から水抜孔4を経由して設置箇所2の外部に排水される。また、設置孔3の底面が水を水抜孔4に誘導する水勾配を構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺の支柱を設置した部分に浸み込んだ水が外部に排出できる手摺の支柱設置構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1で開示された手摺の支柱設置構造体1である。図8において、支柱設置構造体1の設置箇所2には、設置孔3が上面に開口しかつ底部を有する行き止まり形状の凹部として設けられる。そして、手摺の支柱21から突出した支柱心棒22が設置孔3に入れられ、モルタルや接着剤などの充填材23が支柱心棒22と設置孔3との間の隙間に充填されるとともに当該隙間から設置箇所2の上面と支柱台24との間にまで溢れさせられた状態で固化されたことによって、支柱21が支柱設置構造体1に固定される。さらに、足元キャップなる支柱カバー25が支柱21に被せられて溢れた充填材23および支柱台24を覆い隠し、支柱カバー25に設けられたパッキング26が設置箇所2の上面に接触させられ、図外の止ねじが支柱カバー25から支柱21に締結されたことによって、雨水などの水が設置孔3に侵入しにくいようになっている。しかしながら、経年劣化によって、パッキング26と設置箇所2の上面との間、充填材23と設置箇所2の上面との間、充填材23と設置孔3との間などに隙間27;28;29が発生する。これらの隙間が発生すると、水が隙間27から隙間28を経由して隙間29に浸み込むことがある。そして、設置孔3が上面に開口しかつ底部を有する行き止まり形状の凹部として設けられた構造であるので、水が隙間29に浸み込んだ場合、当該浸み込んだ水が隙間29に残留する。この残留した時期が冬季などの場合、残留した水がその場で氷結し、亀裂が設置箇所2や充填材23に入るという欠点がある。
【特許文献1】特開平7−331830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする問題点は、充填材やパッキングなどの経年劣化に伴い、水が設置孔と充填材との間の隙間に浸み込むと、当該浸み込んだ水が隙間に残留するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る手摺の支柱設置構造体は、設置箇所には設置孔が上面に開口しかつ底部を有する行き止まり形状の凹部として設けられ、手摺の支柱における支柱心棒が設置孔に上から内部に入れられるとともに充填材が支柱心棒と設置孔との間の隙間に充填され、支柱心棒が支柱設置構造体に固定される手摺の支柱設置構造体において、設置孔の底部と設置箇所の外面とに貫通する水抜孔が設置箇所に設けられたことを最も主要な特徴とする。設置孔の底面が水を水抜孔に誘導する水勾配を構成してもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る手摺の支柱設置構造体は、充填材の経年劣化に伴い、水が充填材と設置孔との間の隙間に浸み込んだ場合、当該浸み込んだ水は充填材と設置孔との間の隙間に残留することなく水抜孔を経由して設置箇所の外部に排出されるという利点がある。設置孔の底面が水を水抜孔に誘導する水勾配を構成すれば、水が設置孔の底面から水抜孔に適切に導かれるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図3は、発明を実施するための最良の形態である。図1は、手摺の支柱設置構造体1を縦方向に切断した断面を示す。図2は、手摺の支柱設置構造体1を縦方向に分解して示す。図3は、摺の支柱設置構造体1に支柱5を設置する工程を示す。
【0007】
図1を参照し、手摺の支柱設置構造体1について説明する。支柱設置構造体1の設置箇所2には、設置孔3および水抜孔4が設けられる。設置孔3は、設置箇所2の上面に開口しかつ底部を有する行き止まり形状の凹部を構成する。水抜孔4は、設置孔3の底面と設置箇所2の外面とに貫通する貫通孔を構成する。そして、手摺の支柱5における支柱心棒6が設置孔3に上から内部に入れられるとともに充填材7が支柱心棒6と設置孔3との間の隙間に充填され、充填材7が固化することによって、支柱心棒6が支柱設置構造体1に固定される。よって、経年劣化によって、設置孔3と充填材7との間に隙間8が発生し、水が隙間8に浸み込んだとしても、当該浸み込んだ水は隙間8に残留することなく隙間8から水抜孔4を経由して設置箇所2の外部に排水されるという利点がある。そのため、冬季などでも、水が隙間8で氷結することがなく、亀裂が設置箇所2や充填材7に入らないという利点がある。隙間8は、図8の隙間29に相当する。
【0008】
図2を参照し、支柱設置構造体1や支柱5の構造について説明する。支柱設置構造体1は、例えば、プレキャストコンクリート板からなるベランダであって、スラブ9の外縁部に設置箇所2と水抜孔4と排水溝10および水切目地11を備える。例えば、設置箇所2、水抜孔4、スラブ9、排水溝10、水切目地11は、プレキャストコンクリート板の工場生産工程の型にコンクリートを流し込むことによって製作される。設置箇所2の上面12は、スラブ9の上面13および排水溝10の底面14よりも上方に配置され、外側から排水溝10の側に水を誘導する水勾配を構成する。水抜孔4は、設置孔3の底面と設置箇所2の外面の1つとしての下面とに貫通する貫通孔を構成する。水切目地11は、水抜孔4から排出された水を落下しないようにスラブ9の下面に沿って排水溝10と平行する方向(図2の紙面の表から裏の方または裏から表の方)に誘導する。
【0009】
最良の形態では、支柱5と支柱心棒6と支柱カバー15とが互いに別々に構成された形態を例示した。支柱5は、円筒または角筒であって、支柱心棒6に、タッピングねじなどの止ねじ16で固定される。支柱カバー15には、ねじ取付部17が支柱カバー15の側面から内部に貫通する孔の内面に雌ねじの形成された取付孔として設けられる。ねじ取付部17には、止ねじ18が装着される。
【0010】
図3は、支柱設置構造体1に支柱5が設置される工程について説明する。図3のa図に示すように、支柱心棒6の下端部が設置孔3に上から内部に入れられ、充填材7が支柱心棒6の下端部と設置孔3との間の隙間に上から充填される。この場合、充填材7の充填に先駆けて、水抜孔4の下部に図外の詰物が入れられた後、充填材7が充填されれば、空気が水抜孔4に残留し、充填材7が水抜孔4を塞がないという利点がある。そして、充填材7が固化されることによって、支柱心棒6が支柱設置構造体1に固定される。充填材7としては、例えば、モルタル、無収縮モルタル、エポキシ樹脂などの何れか1つまたは複数が使用される。充填材7が固化した後、上記詰物は水抜孔4から除去される。支柱設置構造体1の上面と充填材7の上面とにわたり防水処理を施してもよい。
【0011】
次に、図3のb図に示すように、支柱5の下端部が支柱心棒6の設置箇所2よりも上方に突出した上部に上から被覆するように嵌め込まれる。さらに、図3のc図に示すように、支柱カバー15が支柱5に上から被覆するように嵌め込まれる。そして、止ねじ16が支柱カバー15よりも上方に露出された支柱5の外側から支柱5および支柱心棒6にねじ切りをしながら装着され、支柱5が支柱心棒6に固定される。また、止ねじ18が支柱カバー15の外側から支柱心棒6に向けて締結され、支柱カバー15が支柱5に固定される。これによって、図1のように、支柱5が支柱設置構造体1に設置される。
【産業上の利用可能性】
【0012】
図1において、支柱カバー15は設けなくてもよい。支柱5と支柱心棒6とが互いに結合された単一体として構成されていてもよい。設置箇所2の上面12と支柱カバー15との間に、図8のパッキング26に類似するパッキングを用いてもよい。
【0013】
図4乃至図7は、発明を実施するための異なる第1乃至第4の形態に係る支柱設置構造体1の縦断面を示す。図4における異なる第1の形態は、水抜孔4が設置孔3の底面と設置箇所2の外面の1つとしての外側に位置する縦面とに貫通する貫通孔を構成する。図5における異なる第2の形態は、水抜孔4が設置孔3の底面と設置箇所2の外面の1つとしての排水溝10の側に位置する縦面とに貫通する貫通孔を構成する。図6における異なる第3の形態は、設置孔3の底面が隙間8(図1参照)の水を水抜孔4に誘導する水勾配を構成する。図6に示すように、設置孔3の底面19が水を水抜孔4に誘導する水勾配を構成すれば、水が設置孔3の底面19から水抜孔4に適切に導かれるという利点がある。図6の設置孔3の底面19の水勾配は、図4または図5にも適用できる。図7における異なる第4の形態は、設置孔3がドリルで設置箇所2の上面12の上から設置箇所2の内部に形成された後、水抜孔4がドリルで設置孔3の底面19から設置箇所2の内部を経由して設置箇所2の下面に貫通するように形成された場合である。よって、図7では、設置孔3の底面19が設置孔3の周囲から中央に水を誘導する水勾配を構成し、水抜孔4が設置孔3の底面19の中央から設置箇所2の下面に貫通する。図7では、設置孔3や水抜孔4を形成する場合、支柱設置構造体1の鉄筋を切断しないように設ければ、支柱設置構造体1の強度を確保できる。図7において、水抜孔4は、設置箇所2の下面以外の外側の縦面や排水溝10に貫通させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】支柱設置構造体の縦断面図(最良の形態)。
【図2】支柱設置構造体の分解図(最良の形態)。
【図3】支柱設置構造体に支柱を設置する工程図(最良の形態)。
【図4】支柱設置構造体の設置箇所の縦断面図(異なる第1形態)。
【図5】支柱設置構造体の設置箇所の縦断面図(異なる第2形態)。
【図6】支柱設置構造体の設置箇所の縦断面図(異なる第3形態)。
【図7】支柱設置構造体の設置箇所の縦断面図(異なる第4形態)。
【図8】支柱設置構造体の縦断面図(従来)。
【符号の説明】
【0015】
1は支柱設置構造体、2は設置箇所、3は設置孔、4は水抜孔、5は支柱、6は支柱心棒、7は充填材、8は隙間、9はスラブ、10は排水溝、11は水切目地、12は設置箇所2の上面、13はスラブ9の上面、14は排水溝10の底面、15は支柱カバー、16は止ねじ、17はねじ取付部、18は止ねじ、19は設置孔3の底面、20は欠番、21は支柱、22は支柱心棒、23は充填材、24は支柱台、25は支柱カバー、26はパッキング、27乃至29は隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置箇所には設置孔が上面に開口しかつ底部を有する行き止まり形状の凹部として設けられ、手摺の支柱における支柱心棒が設置孔に上から内部に入れられ、充填材が支柱心棒と設置孔との間の隙間に充填されて固化することによって、充填材で手摺の支柱が支柱設置構造体に固定される手摺の支柱設置構造体において、設置孔の底部と設置箇所の外面とに貫通する水抜孔が設置箇所に設けられたことを特徴とする手摺の支柱設置構造体。
【請求項2】
設置孔の底面が水を水抜孔に誘導する水勾配を構成したことを特徴とする請求項1記載の手摺の支柱設置構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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