説明

手摺り

【課題】人が手Hで手摺りAを握ったときに人差し指Fの基節(第2関節J2から第3関節J3までの間の部分)で違和感を感じることなくしっかりとを握ることができるようにする。
【解決手段】人が掌を下側にして上側から握ったときに人差し指Fの第2関節J2から第3関節J3までの間の基節が接触する範囲の表面に断面平面状の平面部1を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は階段、廊下、洗面所、トイレ、浴室等、建築物の屋内外で用いられる手摺りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種建築物の屋内外で用いられる手摺りとして、断面形状が円形状のものが一般に広く用いられている。そして、特に握り易さを考慮したものとして、例えば、特許文献1に示されるように、表面に筋状の凹凸を設けた手摺りが提案されている。この提案のものでは、筋状の凹凸を設けることで握り易くなり、滑り難い手摺りが得られる。
【特許文献1】特開平2005−42345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、人間が手摺りを握るとき、その手の構造上、親指と人差し指とで環を作るような形で、親指と人差し指とにカを入れて手摺りを握るようになっている。そのため、断面が円形状の手摺りでは、その曲面に、人差し指の第2関節から第3関節までの問の略真直ぐで曲がらない部分(基節)が当たるため、この人差し指の基節(第2関節から第3関節までの間の部分)で違和感を感じるのは避けられない難がある。
【0004】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、手摺りの断面形状に工夫を加えることで、人が握ったときに人差し指の基節(第2関節から第3関節までの間の部分)で違和感を感じることなく、しっかりと手摺りを握ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明では、手摺りの表面のうち人が握ったときに人差し指の基節に当たる部分を当該人差し指の基節の略真直ぐな形状に対応させて平面形状にするようにした。
【0006】
具体的には、請求項1の発明の手摺りは、人が掌を下側にして上側から握ったときに人差し指の第2関節から第3関節までの間の基節が接触する範囲の表面に、断面平面状の平面部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によると、手摺り表面の、人差し指の第2関節から第3関節までの間の基節が概ね接触する範囲の断面が平面になっているため、従来の手摺りのように、人差し指の第2関節から第3関節までの間の基節が手摺りの曲面に当たって違和感を感じるようなことはなく、しっかりと手摺りを握ることができる。
【0008】
請求項2の発明では、上記平面部の幅方向両側縁部の角部を断面円弧状の面取り形状とする。
【0009】
この発明では、平面部の幅方向両側縁部の角部が面取り形状となっているため、その角部が掌に当たった際でも痛くなることはない。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明の手摺りによると、人が掌を下側にして上側から握ったときに人差し指の第2関節から第3関節までの間の基節が接触する範囲の表面に断面平面状の平面部を設けたことにより、違和感を感じることなくしっかりと手摺りを握ることができる。
【0011】
請求項2の発明によると、平面部の幅方向両側縁部の角部を断面円弧状の面取り形状としたことにより、その両側縁部の角部が掌に当たった際に痛くなることなく手摺りを握ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0013】
(実施形態1)
図1及び図2は本発明の実施形態1に係る手摺りAを示す。この手摺りAは、上下高さ(図1で上下方向の高さ)が例えば35mmである棒状のもので、その材質として集成材、合板、木質繊維板(IB、MDF等)、木削片板(パーティクルボード、ストランドボード、OSB等)、無垢材、その他の木質材料、プラスチック等の合成樹脂、アルミニウム等の金属、或いはこれら材料を任意に組み合わせた複合材等を用いることができる。しかし、手で触れた際に冷たく感じることを防ぐために、少なくとも手摺りAの表面は木質材料や合成樹脂等、金属等に比べ熱伝導率の小さな材料を用いることが好ましい。また、木質材料を用いる場合、その中でも、長尺のものとしたときに反りの生じ難い集成材を用いることが望ましい。
【0014】
さらに、必要に応じて、手摺りAの表面に合成樹脂シート等の化粧材を貼着しておいてもよいし、着色塗装、柄模様印刷、クリア塗装等を施しておいてもよい。また、化粧材の貼着後にその表面に着色塗装やクリア塗装を施しておいてもよい。
【0015】
また、手摺りAの強度を増す目的で、手摺りAの内部に鉄、ステンレス等の金属や、ABS等の高強度の樹脂等からなる芯材を埋め込んでおくこともできる。
【0016】
手摺りAの表面には、滑り止め等の目的で、必要に応じてディンプル加工や溝加工を施しておくことができる。
【0017】
本発明の特徴として、手摺りAの表面には断面平面状の平面部1が形成されている。この平面部1は、直径が例えば35mmである断面円形状の丸棒体A′(図1で波線にて示す)の表面の斜め上部を長さ方向全体に亘って平面状に切り欠いた形状のものであり、図3に示すように、手摺りA表面において、人が手Hでその掌を下側にして手摺りAを上側から握った(掴んだ)ときに、その人差し指Fの第2関節J2から第3関節J3までの間の基節が概ね接触する範囲に設けられている(図3中、J1は人差し指Fの第1関節である)。また、上記平面部1の幅方向両側縁部の角部2,3が断面円弧状の面取り形状とされている。
【0018】
この手摺りAの取付構造は従来と同じであり、階段や廊下は勿論のこと、洗面所、トイレ、浴室等、建築物の屋内外の手摺りAを必要とする場所に取り付けられる。例えば、図3は、手摺りAを壁面Wに手摺り用ブラケット20によって取り付ける取付構造を例示し、この手摺り用ブラケット20は公知のもので、壁面Wに取り付けられる上下方向に延びる板状の基部21と、下側に突出するように湾曲した断面円弧状の手摺り受け部22と、一端(下端)が基部21の側面に、また他端(上端)が手摺り受け部22の下面にそれぞれ固定され、手摺り受け部22を基部21に連結するL字状のアーム部23とを有し、基部21及び手摺り受け部22にはそれぞれ取付部材挿通孔24,24,…が形成されている。そして、基部21の取付部材挿通孔24にねじ等の取付部材26を挿通して壁面Wに締結することで、該基部21を壁面Wに取付固定する一方、手摺り受け部22に手摺りAを平面部1が壁面W側に位置するように下端部にて載置し、その取付部材挿通孔24に下側からねじ等の取付部材26を挿通して手摺りAに螺合することで、該手摺り受け部22を手摺りAに取付固定するようになっている。
【0019】
また、手摺りAの取付高さや角度は、使用状況や使い易さに合わせて適宜調節して取り付けることができる。
【0020】
したがって、この実施形態では、図3に示すように、使用者が壁面Wに取り付けられている手摺りAを上側から握ったとき、その手摺りAの表面において、使用者の手Hの人差し指Fの第2関節J2から第3関節J3までの間の基節が概ね接触する範囲に断面平面状の平面部1が形成されているため、その人差し指Fの第2関節J2から第3関節J3までの間の直線状の基節が平面部1に均等に沿うようになり、断面円形状の従来の手摺りのように、人差し指Fの第2関節J2から第3関節J3までの間の基節が手摺りの曲面に当たって違和感を感じるようなことはなく、その分、しっかりと手摺りAを握ることができる。
【0021】
また、手摺りA表面において、上記平面部1の幅方向両側縁部の角部2,3が断面円弧状の面取り形状となっているので、その角部2,3が掌に当たって痛くなることはない。
【0022】
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2を示し(尚、以下の各実施形態では、図1〜図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する)、手摺りAの断面形状を変えたものである。
【0023】
すなわち、この実施形態では、実施形態1と同様に、手摺りA表面の人差し指Fの第2関節J2から第3関節J3までの問の基節が概ね接触する範囲に平面部1が形成されている。それだけでなく、手摺りA表面の上端にも同様の上側平面部5が上記平面部1と隣接して形成され、さらに親指Tの根元が接触する部分は断面円形状の丸棒体A′に対し外側に膨出していて、その膨出部分にも該膨出部分を断面平面状に切り欠いた同様の手前側平面部6が上側平面部5と隣接して形成されている。そして、これら平面部1,5,6の各々の幅方向両側縁部の角部2,3,7,8は断面円弧状の面取り形状となっている。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0024】
したがって、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。また、親指Tの根元が接触する部分にも手前側平面部6が形成されているので、手摺りAを握った際に親指Tの根元が手前側平面部6に沿って馴染むようになり、より一層違和感なく手摺りAを掴むことができる。
【0025】
(実施形態3)
図5は本発明の実施形態3を示し、手摺りAの断面形状をさらに変えたものである。この実施形態では、手摺りAの表面において、人が手Hで掌を下側にして上側から手摺りAを握ったときに人差し指Fの第1関節J1から第2関節J2までの問の部分が概ね接触する範囲に奥側平面部10が、また親指Tが接触する部分に凹み11がそれぞれ設けられている。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0026】
したがって、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。また、人差し指Fの第1関節J1から第2関節J2までの問の部分が概ね接触する範囲に奥側平面部10が形成されているので、人差し指Fの第1関節J1から第2関節J2までの間の部分も平面部10に均等に沿うようになるとともに、親指Tの根元が接触する部分に凹み11が形成されているので、手摺りAを握った際に親指Tが凹み11にて引っ掛かるようになる。これらにより、より一層しっかりと手摺りAを掴むことができる。
【0027】
(実施形態4)
図6は本発明の実施形態4を示し、手摺りAの断面形状をさらに変えたものである。この実施形態では、人が掌を下側にして上側から手摺りAを握ったときに親指Tが接触する部分の上部に突起部12が設けられており、この突起部12を親指Tの引っ掛かり部分としている。また、実施形態2と同様に上側平面部5が形成されている。その他の構成は実施形態3と同じである。従って、この実施形態でも実施形態3と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、人が握ったときに人差し指の基節で違和感を感じることなくしっかりと手摺りを握ることができるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る手摺りを示す断面図である。
【図2】図2は、実施形態1の手摺りを示す斜視図である。
【図3】図3は、手摺りを壁面に取り付けた状態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態2に係る手摺りを示す図1相当図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態3に係る手摺りを示す図1相当図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態4に係る手摺りを示す図1相当図である。
【符号の説明】
【0030】
A 手摺り
F 人差し指
J2 第2関節
J3 第3関節
1 平面部
2 角部
3 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が掌を下側にして上側から握ったときに人差し指の第2関節から第3関節までの間の基節が接触する範囲の表面に、断面平面状の平面部が設けられていることを特徴とする手摺り。
【請求項2】
請求項1の手摺りにおいて、
平面部の幅方向両側縁部の角部が断面円弧状の面取り形状であることを特徴とする手摺り。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−303600(P2008−303600A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151396(P2007−151396)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】