説明

手摺壁及び建物

【課題】外部からの視線を遮ることができ、また、四季や地方に応じて角度の異なる日射しに対して最適設計することのできる手摺壁及び建物を提供する。
【解決手段】第一手摺壁Bは、複数の水平材B9,B9,…が所定間隔に上下に並べて設けられ、上側の水平材B9の背面部B92の下端部B92aと、下側の水平材B9の背面部B92の上端部B92bとの間の高さHと、水平材B9の正面部B91と背面部B92との間の厚さTと、厚さT方向に対する冬至の南中時における太陽角度αと、厚さT方向に対する夏至の南中時における太陽角度βとが以下の式(1)を満たす。
T(tanβ−tanα)=H・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水平材が所定間隔に上下に並べて設けられた手摺壁及び手摺壁を備えた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベランダやバルコニー等の手摺用壁として、視線を遮るとともに光を十分に供給することのできるパネル構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このパネル構造体は、正面部、背面部、上面部、下面部及び左右側面部からなる側断面視平行四辺形状の横桟が上下に多数取り付けられてなるものである。
【特許文献1】特開2001−59264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、夏場の日射しは強く、冬場の日射しは弱いため、夏場の日射しを遮り、冬場の日射しは室内に取り込むことが望まれている。また、地方によって夏場の日射しや冬場の日射しの角度が異なるため、上記特許文献1に記載のパネル構造体では四季や地方の日射しに対応することができないという問題があった。さらに、外部からの視線も遮ることが要求されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、外部からの視線を遮ることができ、また、四季や地方に応じて角度の異なる日射しに対して最適設計することのできる手摺壁及び建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、例えば図4〜図7に示すように、複数の水平材B9,B9,…が所定間隔に上下に並べて設けられた手摺壁(例えば、第一手摺壁B)であって、
前記水平材B9,B9,…は、バルコニー5に対して前後に互いに対向して配された正面部B91及び背面部B92と、これら正面部B91及び背面部B92の側方に互いに対向して配された一対の側面部B93,B94と、前記正面部B91及び背面部B92の上下に互いに対向して配された上面部B95及び下面部B96とを備え、
前記上面部B95及び前記下面部B96が前記正面部B91側から前記背面部B92側に向けて下方に傾斜し、
上下に互いに隣接する水平材B9,B9における前記正面部B91,B91同士が同一平面上に配置されるとともに、前記背面部B92,B92同士が同一平面上に配置され、
上側の水平材B9の背面部B92の下端部B92aと、下側の水平材B9の背面部B92の上端部B92bとの間の高さHと、前記水平材B9の前記正面部B91と前記背面部B92との間の厚さTと、前記厚さT方向に対する冬至の南中時における太陽角度αと、前記厚さT方向に対する夏至の南中時における太陽角度βとが以下の式(1)を満たすことを特徴とする。
T(tanβ−tanα)=H・・・(1)
【0005】
請求項1の発明によれば、水平材B9の上面部B95及び下面部B96が正面部B91側から背面部B92側に向けて下方に傾斜しているので、地上から上方を見上げた際に各水平材B9,B9,…の下面部B96によって視線を遮ることができる。また、各水平材B9,B9同士は所定間隔に上下に並べられているため、互いに隣接する水平材B9,B9同士の隙間B9aから採風を確保することができる。
また、互いに隣接する水平材B9,B9の隙間B9aを介して光が射し込むことになるが、上側の水平材B9の背面部B92の下端部B92aと、下側の水平材Bの背面部B92の上端部B92bとの間の高さHと、水平材B92の厚さTと、冬至の南中時における太陽角度αと、夏至の南中時における太陽角度βとが上記式(1)を満たすので、四季や各地方に応じて日射角度の異なる日射しに対応した最適設計とすることができる。すなわち、各地方に応じた夏場の日射しSを遮ることができるとともに、冬場の日射しWを確実に室内へと取り込むことができる。
また、上下に互いに隣接する水平材B9,B9の正面部B91,B91同士が同一平面上に配置され、背面部B92,B92同士は同一平面上に配置されているので、足の掛かりにくい形状とすることができる。また、バルコニー5の外側及び内側から見た際の外観を優れたものとすることができる。
【0006】
請求項2の発明は、例えば図7に示すように、請求項1に記載の手摺壁(第一手摺壁B)において、
前記上面部B95と前記下面部B96とが互いに平行ではないことを特徴とする請求項1に記載の手摺壁。
【0007】
請求項2の発明によれば、上面部B95と下面部B96とが互いに平行ではないので、上面部B95又は下面部B96で反射した光が分散されることによって、夏場の強い日射しを遮ることができる。
【0008】
請求項3の発明は、例えば図11に示すように、請求項2に記載の手摺壁において、
前記上面部F95が曲面であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によれば、上面部F95が曲面であるので、上面部F95で反射した光が分散されることによって、夏場の強い日射しを遮ることができる。
【0010】
請求項4の発明は、例えば図12に示すように、請求項2に記載の手摺壁において、
前記上面部G95が側断面視山形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明によれば、上面部G95が側断面視山形状であるので、上面部G95で反射した光が分散されることによって、夏場の強い日射しを遮ることができる。
【0012】
請求項5の発明は、例えば、図4〜図6に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の手摺壁(第一手摺壁B)において、
複数の水平材B9,B9は、前記水平材B9の左右方向に所定間隔に設けられて上下に延在する複数の支持材B10,B10,…によって支持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明によれば、複数の水平材B9,B9は、水平材B9の左右方向に所定間隔に設けられて上下に延在する複数の支持材B10,B10,…によって支持されているので、水平材B9の取り付けが容易となるとともに水平材B9を確実に支持固定することができる。
【0014】
請求項6の発明は、例えば図1及び図2に示すように建物1において、
請求項1〜5に記載の手摺壁(第一手摺壁B)を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明によれば、手摺壁Bの水平材B9は、上側の水平材B9の背面部B92の下端部B92aと、下側の水平材Bの背面部B92の上端部B92bとの間の高さHと、水平材B92の厚さTと、冬至の南中時における太陽角度αと、夏至の南中時における太陽角度βとが上記式(1)を満たすので、このような手摺壁Bを備えた建物1では、地上から見上げた際に視線を遮ることができ、しかも、各水平材B9,B9間の隙間B9aを介して、四季や各地方に応じた日射しを適宜確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部からの視線を遮ることができ、採風も確保でき、また、四季や地方の日射しに応じて、夏場の強い日射しを遮り、冬場の弱い日射しを取り込むことのできる最適設計とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、建物1の外観斜視図、図2は、建物1の二階を示す平面図である。
図1及び図2に示すように、建物本体2は一階の正面角部に玄関ポーチ4が設けられ、玄関ポーチ4の軒先の上に床部5bが張り出されてバルコニー5が形成されている。バルコニー5は、二階のリビング6の折れ戸5aを介して出入り自在となっている。また、リビング6の正面側には腰窓6aや高窓6bが設けられ、一階と二階とを繋ぐ階段7に対向する外壁面3bに採光用窓7aが設けられている。
【0018】
バルコニー5は、建物本体2の正面側の外壁面3aと離間して形成された第一手摺壁Bと、建物本体2の折れ戸5a側の外壁面3cと離間して形成された第二手摺壁Dとを備えている。図1及び図2中、第一手摺壁Bの左側には第一被覆壁Aが設けられ、右側には支持壁Cが設けられ、第一手摺壁Bは第一被覆壁A及び支持壁Cによって挟まれている。第二手摺壁Dの左側には支持壁Cが設けられ、右側には第二被覆壁Eが設けられ、第二手摺壁Dが支持壁C及び第二被覆壁Eによって挟まれている。
【0019】
第一被覆壁Aは、二階のリビング6の正面側に位置し、腰窓6aを覆うとともに腰窓6aに対応する位置に嵌め殺し窓A8が形成されている。第一被覆壁Aは、図示しないが框材を矩形に組み立てた枠体の両面に面材を貼設し、これら面材の上から胴縁を介してサイディングを取り付けた正面視矩形状の壁パネルから形成されている。第一被覆壁Aは、建物本体2の正面側の外壁面3aから正面側へと突出する突出部A12,A13,A14と、これら突出部A12,A13,A14に対して垂直で建物本体2の外壁面3aに対して平行となるように設けられた被覆部A15とを備え、突出部A12,A13,A14と被覆部A15とが組み立てられて構成されている。
第一被覆壁Aの上端部は建物本体2の高窓6bの下方に位置し、下端部は玄関ポーチ4の上端部に位置している。
【0020】
図3及び図4は、第一手摺壁Bを構築する際の手順を示した斜視図であり、図3は、手摺パネルB1が取り付けられていない状態、図4は、手摺パネルB1が取り付けられた状態を示している。
第一手摺壁Bは、第一被覆壁Aの右側の突出部A14に隣接し、被覆部A15に対して水平となるように配置されている。第一手摺壁Bは、第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に第一被覆壁A及び支持壁Cに対して水平となるように設けられた手摺パネルB1と、第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に設けられて手摺パネルB1を固定支持する上フレームB2、下フレームB3及び複数の支柱部B4,B5,B6とを備えている。
下フレームB3は、バルコニー5の床部5bの正面側の外縁部で第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に水平となるように架け渡された下梁材B8と所定間隔を隔てて、かつ、下梁材B8と平行となるようにその外側に設けられている。下梁材B8の上端面は、床部5bの上面よりも上方に突出している。上フレームB2は、下梁材B8の上方に第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に水平となるように架け渡された上梁材B7と所定間隔を隔てて、かつ、上梁材B7と平行となるようにその外側に設けられている。上フレームB2と下フレームB3との間で、両端部及び中間部には支柱部B4,B5,B6が上下に架け渡されている。上フレームB2、下フレームB3及び支柱部B4,B5,B6は図示しないブラケットによって所定位置に取り付けられている。
【0021】
図5(a)は、手摺パネルB1の正面図、(b)は、手摺パネルB1の背面図、(c)は、手摺パネルB1の平面図、図6(a)は、X−X線における矢視側面図、(b)は、Y−Y線における部分拡大図、図7は、互いに隣接する水平材B9,B9の側面図、図8は、手摺パネルB1と支柱部B6との取り付け手順を示す部分斜視図である。
手摺パネルB1は、正面視矩形状であり、上下に等間隔に並設された複数の水平材B9,B9,…と、各水平材B9,B9,…を固定支持する複数の支持材B10,B10,…とを備えている。そして、各水平材B9,B9,…間に形成された隙間B9a,B9a,…を介して日射しが射し込むとともに採風される。
【0022】
水平材B9は、図5〜図7に示すように、バルコニー5に対して前後に互いに対向して配された正面部B91及び背面部B92と、これら正面部B91及び背面部B92の左右側方に互いに対向して配された一対の側面部B93,B94と、正面部B91及び背面部B92の上下に互いに対向して配された上面部B95及び下面部B96とを備え、内部が中空となっている。そして、上面部B95及び下面部B96が正面部B91側から背面部B92側に向けて下方に傾斜している。
また、上下に互いに隣接する水平材B9,B9における正面部B91,B91同士が同一平面上に配置されるとともに、上下に互いに隣接する水平材B9,B9における背面部B92,B92同士が同一平面上に配置されている。そして、上側の水平材B9の背面部B92の下端部B92aと、下側の水平材B9の背面部B92の上端部B92bとの間の高さHと、水平材B9の正面部B91と背面部B92との間の厚さTと、厚さTに対する冬至の南中時における太陽角度αと、夏至の南中時における太陽角度βとが以下の式(1)を満たしている。なお、図7中、Wは冬至の南中時における日射しを示し、Sは夏至の南中時における日射しを示している。
T(tanβ−tanα)=H・・・(1)
具体的には、東京では冬至の南中時における太陽角度α=31°、夏至の南中時における太陽角度β=77°であることから、tanα=0.60、tanβ=4.33となり、3.73T=Hを満たす必要がある。
【0023】
なお、図7に示す形状の水平材B9は、上記式(1)を満たす一例であって、この水平材B9は上面部B95と下面部B96とが互いに平行ではない。また、厚さTに対する上面部B95の傾斜角度γと、厚さTに対する冬至の南中時における太陽角度αとは、下記式(2)を満たしている。すなわち、上面部B95の傾斜角度が下面部B96の傾斜角度よりも小さくなっているので、冬場の日射しWを確実に取り込むことができるとともに夏場の日射しSを遮ることができる。
γ>α・・・(2)
【0024】
支持材B10は、平面視コ字状に形成されており、互いに対向する左右一対の第一の固定片B101,B102と、第一の固定片B101,B102に対して垂直に設けられて水平材B9の背面部B92に固定される第二の固定片B103とを備えている。そして、水平材B9が上下に等間隔で水平となるように複数並べられ、水平材B9の両端部及び中間部に支持材B10,B10,…がそれぞれ設けられている。各水平材B9,B9,…と支持材B10,B10,…とは、水平材B9の背面部B92に支持材B10の第二の固定片B103が当接されて、第二の固定片B103側から水平材B9側に向けてネジN1がねじ込まれることによって固定されている(図6参照)。なお、水平材B9の背面部B92のうちネジN1がねじ込まれる部分は、水平材B9の内側に凸となっており他の部分よりも若干肉厚に形成されている。
このようにして支持材B10,B10,…によって固定された水平材B9,B9,…は、上下に互いに隣接する水平材B9,B9の正面部B91,B91同士は同一平面上に配され、背面部B92,B92同士も同一平面上に配されている。
【0025】
上述のように構成された手摺パネルB1は、第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に組みつけられた上フレームB2、下フレームB3及び支柱部B4,B5,B6に取り付けられている。支柱部B4,B5,B6の外面には、手摺パネルB1の支持材B10を取り付けるためのブラケットB11が上下に所定間隔で設けられている(図8では図面の関係上一つのみ図示)。ブラケットB11は支持材B10と同様に平面視コ字状をなし、支持材B10に嵌め込まれるように支持材B10よりも若干小さく形成されている。そして、支持材B10をブラケットB11に嵌め込み、支持材B10の第一の固定片B101からネジN2がねじ込まれることにより支持材B10,B10,…が支柱部B4,B5,B6に固定されて、手摺パネルB1が第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に取り付けられている。
このようにして取り付けられた第一手摺壁Bの上端部は第一被覆壁Aの上端部と同程度の高さである。
【0026】
図2及び図3に示すように、支持壁Cは、第一手摺壁Bの右側に隣接するとともに第一手摺壁Bに対して直交して設けられ、第一被覆壁Aと同様に框材、面材、胴縁、サイディングからなる壁パネルから構成されている。この支持壁Cは、バルコニー5及び玄関ポーチ4に近接して下部を地中に埋め込まれた基礎の上に立設されている。支持壁Cの上端部は第一手摺壁Bと同程度の高さである。
【0027】
図9及び図10は、第二手摺壁Dを構築する際の手順を示した斜視図であり、図9は、手摺パネルD1が取り付けられていない状態、図10は、手摺パネルD1が取り付けられた状態を示している。
図9及び図10に示すように、第二手摺壁Dは、支持壁Cの第一手摺壁Bと反対側の端部に隣接して支持壁Cに対して水平となるように配置されている。第二手摺壁Dは、支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に支持壁C及び第二被覆壁Eに対して水平となるように設けられた手摺パネルD1と、支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に設けられて手摺パネルD1を固定支持する上フレームD2、下フレームD3、中間フレームD12,D13及び複数の支柱部D4,D5,D6とを備えている。
中間フレームD12は、バルコニー5の床部5bの側面側の外縁部で支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に水平となるように架け渡された下梁材D8と所定間隔を隔てて、かつ、下梁材D8と平行となるようにその外側に設けられている。下梁材D8の上端面は、床部5bの上面よりも上方に突出している。上フレームD2は、下梁材D8の上方に支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に水平となるように架け渡された上梁材D7と所定間隔を隔てて、かつ、上梁材D7と平行となるようにその外側に設けられている。また、中間フレームD12の下方には、中間フレームD13が同様に支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に水平となるように架け渡されている。さらに、中間フレームD13の下方で玄関ポーチ4の外側には、下フレームD3が支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に水平となるように架け渡されている。上フレームD2と下フレームD3との間で、両端部及び中間部には支柱部D4,D5,D6が上下に架け渡されている。上フレームD2、下フレームD3、中間フレームD12,D13及び支柱部D4,D5,D6は図示しないブラケットによって所定位置に取り付けられている。
【0028】
手摺パネルD1は、正面視矩形状であり、上下に等間隔に並設された複数の水平材D9,D9,…と、各水平材D9,D9,…を固定支持する複数の支持材D10,D10,…とを備えている。これら水平材D9,D9,…及び支持材D10,D10,…は、第一手摺壁Bにおける手摺パネルB1の水平材B9,B9,…及び支持材B10,B10,…と同様のためその説明を省略する。
【0029】
上述のように構成された手摺パネルD1は、支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に組みつけられた上フレームD2、下フレームD3、中間フレームD12,D13及び支柱部D4,D5,D6に取り付けられている。支柱部D4,D5,D6の外面に上下に所定間隔で設けられたブラケットD11,D11,…に、手摺パネルD1の支持材D10,D10,…が嵌めこまれてネジ(図示しない)がねじ込まれることにより支持材D10,D10,…が支柱部D4,D5,D6に固定されて、手摺パネルD1が支持壁Cと第二被覆壁Eとの間に取り付けられている。
このようにして取り付けられた第二手摺壁Dの上端部は支持壁Cの上端部と同程度の高さである。
【0030】
第二被覆壁Eは、第二手摺壁Dの支持壁Cと反対側の端部に隣接するとともに支持壁Cに対して水平となるように設けられ、支持壁Cと同様に框材、面材、胴縁、サイディングからなる壁パネルから形成されている。第二被覆壁Eは、建物本体2の側面側の外壁面3bから側面側へと突出する突出部E2,E3と、これら突出部E2,E3に対して垂直で建物本体2の外壁面3bに対して平行となるように設けられた被覆部E1とを備え、突出部E2,E3と被覆部E1とが組み立てられて構成されている。また、この第二被覆壁Eは、バルコニー5及び玄関ポーチ4に近接して下部を地中に埋め込まれた基礎の上に立設されている。第二被覆壁Eには、建物本体2の採光用窓7aを覆うように位置しており、この採光用窓7aに対応する位置に嵌め殺し窓E4が形成されている。第二被覆壁Eの上端部は第二手摺壁Dと同程度の高さである。
【0031】
次に、上述した建物1の施工手順について説明する。
まず、建物本体2をパネル工法等で組み立てるとともに、框材を矩形状に組み付けてなる枠体の両面に面材を貼設し、それらの面材の上から胴縁を介してサイディングを取り付けて、第一被覆壁Aの壁パネルを形成しておく。また、支持壁C及び第二被覆壁Eについても第一被覆壁Aと同様に壁パネルを形成しておく。このとき第一被覆壁Aの被覆部A15には建物本体2の腰窓6aに対応する位置に嵌め殺し窓A8を設けておき、第二被覆壁Eの被覆部E1には採光用窓7aに対応する位置に嵌め殺し窓E1を設けておく。
【0032】
次いで、第一被覆壁Aの突出部A12,A13,A14を建物本体2の外壁面3aに固定し、被覆部A15を所定の位置に取り付けて第一被覆壁Aを形成する。また、支持壁Cは所定の位置において基礎上に立設させる。さらに、第二被覆壁Eの突出部E2,E3を建物本体の外壁面3bに固定し、被覆部E1を所定の位置において基礎上に立設させて第二被覆壁Eを形成する。
そして、床部5bの正面側及び側面側の外縁部にそれぞれ上梁材B7,D7及び下梁材B8,D8を取り付ける。第一被覆壁Aと支持壁Cとの間に上フレームB2及び下フレームB3を架け渡し、上フレームB2及び下フレームB3の両端部及び中間部に支柱部B4,B5,B6をそれぞれ取り付ける。同様にして、支持壁Cと第二被覆壁Eとの間にも上フレームD2、下フレームD3及び中間フレームD12,D13を架け渡し、上フレームD2、下フレームD3及び中間フレームD12,D13の両端部及び中間部に支柱部D4,D5,D6をそれぞれ取り付ける。その後、手摺パネルB1,D1の支持材B10,B10,…、D10,D10,…を、対応する支柱部B4,B5,B6,D4,D5,D6のブラケットB11,D11に嵌めこんでネジ止めする。
【0033】
以上、本発明の実施の形態によれば、第一手摺壁Bは、上下に並べて設けられた複数の水平材B9,B9,…と、これら水平材B9,B9,…の左右方向に所定間隔に設けられて上下に延在して水平材B9,B9,…を支持する複数の支持材B10,B10,…とを備え、水平材B9の上面部B95及び下面部B96が正面部B91側から背面部B92側に向けて下方に傾斜しているので、地上から上方を見上げた際に各水平材B9,B9,…の下面部B96によって視線を遮ることができる。また、各水平材B9,B9同士は所定間隔に上下に並べられているため、互いに隣接する水平材B9,B9同士の隙間B9aから採風を確保することができる。
また、互いに隣接する水平材B9,B9の隙間B9aを介して光が射し込むことになるが、上側の水平材B9の背面部B92の下端部B92aと、下側の水平材Bの背面部B92の上端部B92bとの間の高さHと、水平材B92の厚さTと、冬至の南中時における太陽角度αと、夏至の南中時における太陽角度βとが上記式(1)を満たすので、四季や各地方に応じて日射角度の異なる日射しに対応した最適設計とすることができる。すなわち、各地方に対応した夏場の日射しSを遮ることができるとともに冬場の日射しWを確実に室内へと取り込むことができる。
さらに、上下に互いに隣接する水平材B9,B9の正面部B91,B91同士が同一平面上に配置され、背面部B92,B92同士は同一平面上に配置されているので、足の掛かりにくい形状とすることができる。また、バルコニー5の外側及び内側から見た際の外観を優れたものとすることができる。
【0034】
また、上下に互いに隣接する水平材B9,B9の正面部B91,B91同士は同一平面上に配置され、平面部B92,B92同士も同一平面上に配置されているので、足の掛かりにくい形状とすることができる。また、バルコニー5の外側及び内側から見た際の外観を優れたものとすることができる。
そして、複数の水平材B9,B9は、複数の支持材B10,B10,…によって支持されているので、水平材B9の取り付けが容易となるとともに水平材B9を確実に支持固定することができる。
【0035】
また、第二手摺壁D1も第一手摺壁B1と同様に複数の水平材D9,D9,…と複数の支持材D10,D10,…とを備えているので、上記と同様の効果を得ることが出来る。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態において、手摺パネルB1,D1は、支持材B10,B10,…を水平材B9,B9,…の両端部及び中間部に設けるとしたが、その個数は適宜変更可能である。また、水平材B9,D9は左右に一列のみ設けるとしたが、第一被覆壁Aと支持壁Cとの間の距離や、支持壁Cと第二被覆壁Eとの間の距離が長い場合には、水平材B9,D9を左右に複数列並べて設けるようにしても構わない。
【0037】
また、上記実施の形態では、水平材B9の上面部B95と下面部B96とは互いに平行ではないとしたが、上記式(1)の関係を満たせば平行であっても良い。さらに、上面部B95及び下面部B96は背面部B92側に向けて傾斜する平面であるとしたが、上記式(1)の関係を満たせば、例えば図11に示す水平材F9のように、上面部F95が上に凸となる曲面形状であるとしても良く、さらに図12に示す水平材G9のように、上面部G95が側断面視山形状となるように折り曲げた形状としても良い。このように上面部F95,G95を曲面形状や山形状とすることによって、上面部F95,G95に照射した光の反射を分散させることができ、夏場の強い日射しSを遮ることができる。なお、図11及び図12中、水平材B9と同様の構成部分については同様の数字に英字F又はGを付している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】建物1の外観斜視図である。
【図2】建物1の二階を示す平面図である。
【図3】第一手摺壁Bを構築する際の手順を示した斜視図であり、手摺パネルB1が取り付けられていない状態を示している。
【図4】第一手摺壁Bを構築する際の手順を示した斜視図であり、手摺パネルB1が取り付けられた状態を示している。
【図5】(a)は、手摺パネルB1の正面図、(b)は、手摺パネルB1の背面図、(c)は、手摺パネルの平面図である。
【図6】(a)は、手摺パネルB1のX−X線における矢視側面図、(b)は、Y−Y線における部分拡大図である。
【図7】互いに隣接する水平材B9,B9の側面図である。
【図8】手摺パネルB1と支柱部B6との取り付け手順を示す部分斜視図である。
【図9】第二手摺壁Dを構築する際の手順を示した斜視図であり、手摺パネルD1が取り付けられていない状態を示している。
【図10】第二手摺壁Dを構築する際の手順を示した斜視図であり、手摺パネルD1が取り付けられた状態を示している。
【図11】水平材B9の変形例で、互いに隣接する水平材F9,F9の側面図である。
【図12】水平材B9の変形例で、互いに隣接する水平材G9,G9の側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 建物
5 バルコニー
B 第一手摺壁
B9,F9,G9 水平材
B10 支持材
B91 正面部
B92 背面部
B93,B94 側面部
B95 上面部
B96 下面部
D 第二手摺壁
D9 水平材
D10 支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水平材が所定間隔に上下に並べて設けられた手摺壁であって、
前記水平材は、前後に互いに対向して配された正面部及び背面部と、これら正面部及び背面部の側方に互いに対向して配された一対の側面部と、前記正面部及び背面部の上下に互いに対向して配された上面部及び下面部とを備え、
前記上面部及び前記下面部が前記正面部側から前記背面部側に向けて下方に傾斜し、
上下に互いに隣接する水平材における前記正面部同士が同一平面上に配置されるとともに、前記背面部同士が同一平面上に配置され、
上側の水平材の背面部の下端部と、下側の水平材の背面部の上端部との間の高さHと、前記水平材の前記正面部と前記背面部との間の厚さTと、前記厚さT方向に対する冬至の南中時における太陽角度αと、前記厚さT方向に対する夏至の南中時における太陽角度βとが以下の式(1)を満たすことを特徴とする手摺壁。
T(tanβ−tanα)=H・・・(1)
【請求項2】
前記上面部と前記下面部とが互いに平行ではないことを特徴とする請求項1に記載の手摺壁。
【請求項3】
前記上面部が曲面であることを特徴とする請求項2に記載の手摺壁。
【請求項4】
前記上面部が側断面視山形状であることを特徴とする請求項2に記載の手摺壁。
【請求項5】
複数の水平材は、前記水平材の左右方向に所定間隔に設けられて上下に延在する複数の支持材によって支持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の手摺壁。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の手摺壁を備えたことを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−150858(P2008−150858A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339902(P2006−339902)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】