説明

手摺装置

【課題】 可変速型の移動階段及び移動歩道において一旦把持した手摺を換えることなくステップの移動速度変化に連動して移動することができ、また旋回軌道を有する移動歩道において内周と外周の異なる動きにも対応することができる手摺装置を提供する。
【解決手段】 移動速度が途中で変化する移動階段及び移動歩道における可変速ステップと連動する手摺装置1において、可変速ステップと連動しその上方に位置する手摺部材2は、ステップごと若しくはそれ以上に分割されかつ進行方向に間隔を設けて並設し、並設する複数の該手摺部材の上面を被覆し固定される可撓性を有するカバー部材3を備え、高速移動部分では間隙を設けて並列する手摺部材の隣接間に位置するカバー部材は伸長した状態を維持するとともに、低速移動部分では隣接する手摺部材は間隔を詰め隣接する手摺部材間に位置するカバー部材を手摺部材の上方に撓んで突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道の手摺装置に係り、特に乗降部は遅く中間部が速く移動する可変速型のエスカレータや動く歩道において、ステップと常に連動して同じ移動速度を保持することにより安全に利用することができる手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変速型のエスカレータや動く歩道において、足を載せるステップは分割構成されていて、乗降部と中間部とで移動速度を変化させることができる構造になっているが、手摺は連続した円環構造であることから部分的に移動速度を変化させることはできなかった。とは言っても、ステップと手摺の移動速度が異なると、ステップに載っている人の手摺を把持する手が移動した場合には転倒する恐れがある。そこで、エスカレータ等の乗降部と中間部とで手摺を分割し、乗降部には移動速度の遅い手摺を、中間部には速い手摺を分割配置して、その位置に応じてエスカレータ等に乗る人が異なる移動速度の手摺に手を置き換えることが行われている。
【特許文献1】特開平8−225281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した従来の分割構成されている手摺装置にあっては、手摺の移動速度を段階的に変化させるものであって、ステップが無段階に移動速度を変化させる場合にはうまく対応することができなかった。さらに、異なる移動速度の手摺に手を置き換えることは、利用者にとって不便であるとともに、うまく置き換えられない恐れもあった。
また、従来の動く歩道にあっては、直線状に敷設される場合には問題はないが、旋回状に曲がって敷設される場合には手摺構造に問題があった。すなわち、掌を乗せる手摺の幅径は10cm程度あり、旋回軌道ではこの手摺の幅の内周と外周とでは移動距離・移動速度が異なって、内周が縮んで外周が伸びることとなり、したがって従来の手摺の構造ではこの伸長動作に対応することができなかった。
【0004】
そこで本発明は、可変速型の移動階段及び移動歩道において一旦把持した手摺を換えることなくステップの移動速度変化に連動して移動することができ、また旋回軌道を有する移動歩道において内周と外周の異なる動きにも対応することができる手摺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の目的を達成するため、本発明の手摺装置は、移動速度が途中で変化する移動階段及び移動歩道等における可変速ステップと連動する手摺装置において、前記可変速ステップと連動しその上方に位置する手摺部材は前記ステップごと若しくはそれ以上に分割されかつ進行方向に間隔を設けて並設するとともに、上面には可撓性を有するカバー部材を被覆固定してなり、移動階段及び移動歩道における高速移動部分では間隙を設けて並列する手摺部材の隣接間に位置するカバー部材は伸長した状態を維持するとともに、隣接する手摺部材が間隔を詰める低速移動部分では手摺部材間に位置するカバー部材が下方に垂れ下がることを防止し前記カバー部材を手摺部材上方に突出させることを特徴とするものである。
【0006】
また本発明は、旋回軌道を有する移動歩道における手摺部材において、手摺部材は進行方向に間隔を設けて複数に分割され、隣接する手摺部材同士が接する辺に凹凸部を設けて回動しつつ係合する形状とするとともに、並設する複数の手摺部材の上面を被覆し固定される可撓性を有するカバー部材を備えることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明は、手摺部材は、隣接する手摺部材同士が接する辺に凹凸部を設けて互いに係合する形状とすることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、隣接する手摺部材間には、手摺部材の間隙が減少する際に該間隙に位置するカバー部材を下方に垂れ下がることなく上方に向かって突出させるためのストッパー部材を介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手摺装置によれば、移動速度が途中で変化する移動階段及び移動歩道等における可変速ステップと連動する手摺装置において、前記可変速ステップと連動しその上方に位置する手摺部材は前記ステップごと若しくはそれ以上に分割されかつ進行方向に間隔を設けて並設するとともに、上面には可撓性を有するカバー部材を被覆固定してなり、移動階段及び移動歩道における高速移動部分では間隙を設けて並列する手摺部材の隣接間に位置するカバー部材は伸長した状態を維持するとともに、隣接する手摺部材が間隔を詰める低速移動部分では手摺部材間に位置するカバー部材が下方に垂れ下がることを防止し前記カバー部材を手摺部材上方に突出させることで、複数に分割された手摺部材は隣接間の間隔を変化させることにより、間隔を拡げたときは移動速度を速く、また間隔を狭くしたときは移動速度を遅くすることができ、可変速ステップの移動速度に連動した移動速度にすることができる。そして、手摺部材の上面をカバー部材が被覆することで、乗る人の手が確実に手摺装置を把持することができ、分割状の手摺部材の間に挟まれる恐れもない。
【0010】
また、旋回軌道を有する移動歩道における手摺部材において、手摺部材は進行方向に間隔を設けて複数に分割され、隣接する手摺部材同士が接する辺に凹凸部を設けて回動しつつ係合する形状とするとともに、並設する複数の手摺部材の上面を被覆し固定される可撓性を有するカバー部材を備えることで、旋回軌道上で内周と外周とで移動距離が異なることによる内周が縮小し外周が伸長する動きにも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図4は、本発明の手摺装置の第1の実施例を示しており、手摺装置1は、利用者が載る可変速ステップ(図示せず)の上方に位置しこの可変速ステップと連動し、ステップごと若しくはそれ以上に分割される手摺部材2を進行方向に間隔を設けて並設するとともに、手摺部材2の上面を被覆して固定される可撓性を有するカバー部材3を備えている。4は、カバー部材3が手摺部材2上面から下方に弛むことを防ぐべく、手摺部材2の間に位置するストッパー部材である。
【0012】
手摺部材2は、可変速ステップごと若しくはそれ以上に分割され、かつ進行方向に間隔を設けて並設されている。そして手摺部材2は、下方に延出する支持体5を可変速ステップの駆動装置に連接することで、ステップと連動して進行方向に移動する構造となっている。図3は、カバー部材3を外して手摺部材2を上から見た状態を示しており、手摺部材2の形状は隣接する手摺部材同士が接する進行方向の辺に凹凸部を設けて互いに係合する波形形状としている。
【0013】
カバー部材3は、図3に示す手摺部材2の上面を被覆しつつ、その手摺部材2上面に接着等により固定されている。そして、移動階段及び移動歩道における乗り口近傍の手摺装置1を示す図1の左側部分の高速移動部分では、手摺部材2間の間隙が拡がってそこに位置するカバー部材3は伸長して張設した状態で手摺部材2上面と一体的な平面を構成するのに対し、図1の右側の低速移動部分では、手摺部材2間の間隙が狭くなってそこに位置するカバー部材3は上方に撓んで膨出状に突出する。手摺部材2間には、ストッパー部材4が位置してカバー部材3が下方に垂れ下がることを防いでいる。これは、カバー部材3が下方に垂れ下がると手摺部材2に挟まれて損傷したり、さらに手摺部材2間の間隙に落ち込むカバー部材3とともに把持する手指が落ち込んで挟まれたりすることを確実に防止するためである。
また図2は、移動階段及び移動歩道における降り口近傍の手摺装置1を示しており、右側部分の高速移動部分では、手摺部材2間の間隙が拡がってそこに位置するカバー部材3は伸長して張設した状態で手摺部材2上面と一体的な平面を構成している。そして図2の右側の低速移動部分では、手摺部材2間の間隙が狭くなって行くに連れてストッパー部材4が上方に持ち上がってカバー部材3を下方に垂れ下がらせずに上方に突出するようにしている。尚、ストッパー部材4は手摺部材2間に固定的に介在配置されてもカバー部材3の下方垂れ下がりを防止することができる。
【0014】
図3に示すように、カバー部材3における固定されずに可撓性を有している手摺部材2隣接相互間部分は凹凸部のある波形形状であることから、図1の右側部分で示すカバー部材3の突出部分3aも、その基端部分は波形形状に倣いつつも弛んだ上方部分は連なる左右方向からの牽引・押動付勢力により進行方向の前後に交互に折れ曲がることとなるものである。これにより、カバー部材3上に乗せている掌にとっては、突出するカバー部材3に持ち上げられることなく、そのまま把持することができるものである。
【0015】
この手摺装置1の動作を説明すると、手摺部材2が図1の左方向へと移動している状態で、利用者が移動階段や移動歩道に始端から乗って掌を手摺に載せると(図1及び図3の右側部分に相当)、そこでは手摺部材2が相互に密接しつつ、カバー部材3がその手摺部材2上面に交互に折れ曲がった状態で進行方向に並んでいる。そして、手摺装置1が進行すると、隣接する手摺部材2の間隙が徐々に拡がり、それに応じてカバー部材3も弛みがなくなってくる。このカバー部材3に接している掌にはカバー部材3の突出が小さくなっていく感触はあっても特段に不都合はない。そして、移動階段や移動歩道の高速移動部分である図1及び図3の左側部分では、手摺部材2の間隙が最大に拡がりカバー部材3も平らに伸びきった状態となっている。さらに手摺装置1が進行して図2の左側部分の移動階段や移動歩道の降り口である後端に至ると、手摺部材2はその間隙を徐々に狭くしつつ、カバー部材3は徐々に弛みを増してくる。このとき、ストッパー部材4が上方に持ち上がってカバー部材3を押し上げることで、カバー部材3は下方に垂れ下がることなく上方へと突出するものである。これにより上述した始端と同様に、手摺部材2が相互に密接し、かつカバー部材3がその手摺部材2上面に交互に折れ曲がった状態で進行方向に並ぶこととなる。このとき、カバー部材3に接している掌には、カバー部材3が徐々に突出する感触が生じるが、突出するカバー部材3は手摺部材2上面に交互に折れ曲がった状態になることから、特段支障はない。尚、前述したようにストッパー部材4は上方に向かって突出することなく固定的な配置されてもカバー部材3の垂れ下がりを防止することができる。
【0016】
図4は、移動階段や移動歩道の乗り口での手摺装置1が動作する構造を示している。手摺装置1は、長円状の無限軌道からなり、乗り口と降り口では手摺部材2が密接した状態で半円状に回動する。この際、手摺部材2の相対向する辺を、下方に向かって徐々に幅径が小さくなるテーパーとすることで、隣接する手摺部材2は隙間なく当接した状態でスムースにスムースことができる。
【0017】
図5は、本発明の手摺装置の第2の実施例を示し、この手摺装置11は、旋回軌道を有する移動歩道に利用される。この実施例にあっては、移動歩道は可変速であっても、またそうでなくてもよく、利用者が載るステップごと若しくはそれ以上に分割される手摺部材12を進行方向に間隔を設けて並設するとともに、手摺部材12の上面を被覆して固定される可撓性を有するカバー部材(図示せず)を備えている。
【0018】
手摺部材12の形状は、隣接同士が接する進行方向の辺に凹凸部を設けて直線状に係合したり、回転係合したりすることができるハイパボリック曲線を有する平歯車形状としている。そして、手摺装置11の旋回部分では、内外周差(内周軌道が外周軌道より短い)が生じることから、手摺部材12の内周部分がその他の部分と比較して遅く、手摺部材12の外周部分がその他の部分と比較して速く移動する。すなわち、手摺装置11の中心軌道から見て、内周側が縮んで、外周側が伸びることになる。本実施例の手摺装置11では、手摺装置11を複数の手摺部材12で分割構成することで、図5に示すごとく、外周側では隣接する手摺部材12の間隙を拡げつつ、内周側ではその間隙を狭くして歯車形状の凹凸部を係合させ、この伸縮に対応させている。手摺部材12の凹凸部をインボリュート曲線やトロコイド曲線を有する平歯車形状とすることで、隣接する手摺部材12の凹凸部を係合させた状態で回動するという複雑な動きにもスムースに対応するものである。
【0019】
図示しないカバー部材は、上述した旋回軌道の外周部分では伸びて張設され、内周部分では弛んで上方に突出するものである。前述した第1の実施例と同様に、隣接する手摺部材12間に、カバー部材が下方に落ち込まないようにするストッパー部材を配置してもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の手摺装置の第1の実施例を示す側断面説明図である。
【図2】本発明の手摺装置の第1の実施例を示す側断面説明図である。
【図3】本発明の手摺装置の第1の実施例を示す平面説明図である。
【図4】本発明の手摺装置の第1の実施例の回動個所を示す側断面説明図である。
【図5】本発明の手摺装置の第2の実施例を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 手摺装置
2 手摺部材
3 カバー部材
4 ストッパー部材
5 支持体
11 手摺装置
12 手摺部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動速度が途中で変化する移動階段及び移動歩道等における可変速ステップと連動する手摺装置において、前記可変速ステップと連動しその上方に位置する手摺部材は前記ステップごと若しくはそれ以上に分割されかつ進行方向に間隔を設けて並設するとともに、上面には可撓性を有するカバー部材を被覆固定してなり、移動階段及び移動歩道における高速移動部分では間隙を設けて並列する手摺部材の隣接間に位置するカバー部材は伸長した状態を維持するとともに、隣接する手摺部材が間隔を詰める低速移動部分では手摺部材間に位置するカバー部材が下方に垂れ下がることを防止し前記カバー部材を手摺部材上方に突出させることを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
旋回軌道を有する移動歩道における手摺部材において、手摺部材は進行方向に間隔を設けて複数に分割され、隣接する手摺部材同士が接する辺に凹凸部を設けて回動しつつ係合する形状とするとともに、並設する複数の手摺部材の上面を被覆し固定される可撓性を有するカバー部材を備えることを特徴とする手摺装置。
【請求項3】
手摺部材は、隣接する手摺部材同士が接する辺に凹凸部を設けて互いに係合する形状とすることを特徴とする請求項1記載の手摺装置。
【請求項4】
隣接する手摺部材間には、手摺部材の間隙が減少する際に該間隙に位置するカバー部材を下方に垂れ下がることなく上方に向かって突出させるためのストッパー部材を介在させたことを特徴とする請求項1記載の手摺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76683(P2006−76683A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260664(P2004−260664)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(596008633)
【Fターム(参考)】