説明

手摺部材

【課題】簡単な構造により、夏場の太陽熱による手摺部材の温度上昇を緩和し、良好な使用感を得られる手摺部材を提供すること。
【解決手段】長尺の手摺本体の下面にフィン形状部を備えるようにした。また、手摺本体は、中空のアルミ型材により形成される芯材と、該芯材の少なくとも一部を被覆し樹脂材料により形成される中間層と、該中間層を被覆する金属製の表層部とからなり、前記芯材の下面にフィン形状部が形成されるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に屋外の階段、ベランダ、柵、高欄および東屋等に設置される手摺に用いるための手摺部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手摺の部材としては、樹脂や金属、木材、あるいはそれらの複合材料などが用いられており、用途や設置場所などに応じて様々な工夫、改良がなされてきた。このうち、屋外に設置されるものについては、その耐久性・耐候性が求められることから、金属製の手摺部材が多く使用されている。その中でも特にステンレス製の手摺部材は、外観上光沢感や高級感を有しているため、非常に需要が多い。
【0003】
しかしながら、このような金属製の手摺部材においては、夏場の太陽光を直接受けると手摺部材の表面が熱せられ非常に高温となり、利用者が手で触れられなくなることが多くある。
【0004】
上記のような問題点に対しては、中空の手摺部材の内部に潜熱蓄熱材を挿入したものがある(特許文献1)。特許文献1に記載の手摺によれば、昼間の太陽の日照加熱による熱を蓄熱材に吸収し、手摺の表面温度を低下させる一方、日照加熱が弱くなり外気温度の低下に応じて今度は蓄熱材から放熱され、手摺の表面温度を一定に維持する、とある。確かに、特許文献1に記載の発明によれば、ある程度上記のような効果が生じ、良好な使用感を得られる可能性がある。
【特許文献1】特開2004−285766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1における潜熱蓄熱材は高価であり、手摺全長にわたって当該潜熱蓄熱材を備えるようにすると相当なコスト上昇になり、また手摺部材の作製、あるいは現場での施工において非常に手間がかかることとなる。
【0006】
そこで、上記のような問題点を解決すべく鋭意検討したところ、確かに夏場の太陽光で熱せられた手摺部材は、熱くて触ることもできないほどになることがある。しかし、冬場の温度低下によって手摺の表面温度が低下した場合においては、使用感が悪いということはあっても触れられないというほどのことは稀である。
【0007】
本発明は、上述のような事情を踏まえ、従来技術における問題点を克服するためになされたものであって、簡単な構造により、夏場の太陽熱による手摺部材の温度上昇を緩和し、良好な使用感を得られる手摺部材を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、外観においても光沢感や高級感のある優れた外観を有する手摺部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る手摺部材は、長尺の手摺本体の下面にフィン形状部を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、フィン形状とは、凹部と凸部が交互に複数連続した凹凸形状のことであり、例えば櫛歯のような形状を指す。
【0011】
本発明に係る手摺部材によれば、手摺本体の下面をフィン形状とすることで、外気に接触する表面積を増やしている。そのため手摺部材内部の熱が外気中へ逃げやすいので、手摺部材が極端には熱くならず、利用者が触ることもできないということがなくなる。
【0012】
また、本発明に係る手摺部材においては、前記手摺本体が、中空のアルミ型材により形成される芯材と、該芯材の少なくとも一部を被覆し樹脂材料により形成される中間層と、該中間層を被覆する金属製の表層部とからなり、前記芯材の下面にフィン形状部が形成されているのが好ましい。
【0013】
このようにすれば、加工が比較的容易なアルミ型材を芯材として使用しているため、複雑な断面形状を有する手摺部材の成形が容易になる。しかも、金属製の表層部の材料や色などを変えることで、さまざまな外観を創出することが可能となる。
【0014】
また、前記芯材と表層部との間に樹脂により形成される中間層を備えるのは、腐食性の環境下にイオン化傾向の異なる2種の金属が接して存在する場合、電位に低い方の金属の腐食が進行してしまうからである。すなわち、共に金属製の上記芯材と表層部とが接し、その一方が腐食するという事態を避けるため、両者の間に樹脂で形成される中間層を備えるようにするものである。
【0015】
さらに、前記表層部は、ステンレス箔により形成されるのが好ましい。このようにすれば、より光沢および高級感のある外観を呈するものとなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明に係る手摺部材によれば、非常に簡単な構成によって、日光による手摺部材の温度上昇を抑えることが可能となる。すなわち、手摺本体の下面をフィン形状として外気に接触する表面積を増やしたことで、手摺部材内部の熱が外部へ逃げやすい。それゆえ、夏場の日照を受けても手摺部材が極端には熱くならず、利用者が触ることもできないということがなくなる。
【0017】
また、上記手摺本体を、中空のアルミ型材により形成される芯材と該芯材の少なくとも一部を被覆し樹脂材料により形成される中間層と、該中間層を被覆する金属製の表層部とからなる多層構造にすれば、アルミ型材は比較的加工が容易なため複雑な形状を形成し易く、しかも当該表層部には別の材料を使用するので、様々な外観を演出、創出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る手摺部材の最良の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る手摺部材の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、その断面を示す図である。また、図3は、芯材の断面を示す図である。
【0020】
この実施形態における手摺本体1は、図1および図2に示すように、長尺に形成された芯材2と、芯材2を被覆する中間層3、および中間層3を被覆する表層部4とから構成されている。
【0021】
芯材2は、中空の略円筒形状を有しており、アルミニウムを押出成形して得られる長尺の型材で形成されている。この芯材2の下部には、図1、図2に示すようなフィン形状部21が芯材2の長さ方向全長にわたって形成されている。この実施形態においては、芯材2の長手方向全長にわたって凹部211および凸部212が交互に連続して形成され、断面形状において図2に示されるとおり、櫛歯のような形状となっている。
【0022】
このフィン形状は、この実施形態のような形状に限定されるものではなく、手摺本体1が外気に接触する表面積を増やすものであって、当該手摺本体1の長手方向にわたって形成され、押出成形が可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0023】
また、図3に示すとおり、前記フィン形状部21の左右両側には、係止溝22が形成されている。この係止溝22は、芯材2の長さ方向全長にわたって形成されており、この係止溝22内には、芯材2の外表面を被覆する中間層3の合成樹脂材料の一部が入り込むように構成されている。
【0024】
この係止溝22には、下端部、すなわち係止溝22の入口部よりも内部において溝断面が大きい係止部221が形成され、この係止部221に中間層3の合成樹脂材料が入り込むことによって、中間層3の芯材2からの脱離を防止することができる。
【0025】
中間層3に用いる合成樹脂材料は、押出成形が可能であれば特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ASA樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ポリエステルなどを適宜選択して用いることができる。
【0026】
中間層3の外表面は表層部4で被覆されている。この表層部4は、ステンレス箔で構成されている。本発明に用いるステンレス箔については、厚さは一般的に60〜200μmのものが使用されるが、芯材2の表面形状に沿わせて容易に変形できるようにする為、120μm以下とするのが好ましい。このステンレス箔の光沢度は800番以上の光沢度(JIS Z 8741 Gs45°)のものが一般に使用され、その表面におけるビッカース硬度(Hv)は180〜320のものが好ましい。また、ステンレス箔の表面には、装飾効果を高めるために、ヘヤーライン加工やエッチング加工を施してもよい。
【0027】
以上のような構成を有する手摺本体1は、手摺本体1の外周の形状に沿った内周形状の空洞部を有する金型を備えた押出機を用いて一体的に形成される。すなわち、ステンレス箔を前記金型の内周面に沿うように送り出すと共に、当該金型内の空洞部中央に長尺の芯材2を送り出し、同時に前記ステンレス箔と芯材2との間の空隙に溶融した合成樹脂材料を押出機から押し出すことによって、合成樹脂材料が芯材2に被覆し、かつ表層部4を形成するステンレス箔に被着するようにして中間層3が形成され一体的に手摺本体1が成形される。このとき、合成樹脂材料が所定の圧力をかけて押し出されることで、合成樹脂材料の一部が係止部221まで入り込むと共に、ステンレス箔にしっかりと被着する。
【0028】
このように一体的に形成され押し出された手摺本体1は、冷却され固化させられて、芯材2に中間層3が、また中間層3に表層部4が強固に被着された手摺部材となる。
【0029】
以上のようにして形成された手摺本体1は、例えば図4に開示されているように使用される。手摺本体1は、地上に適宜間隔をおいて立設された複数の支柱51間に差し渡されるとともに、支柱51に取り付けた支持部材52を介して支柱51に固定される。このとき、複数の手摺本体1の端部同士が突き合されて接続されると共に、当該接続箇所は、手摺本体1の外周形状に沿うように曲折したカバー材53により覆われる。
【0030】
このように設置された手摺本体1においては、太陽光などによって手摺本体1が熱せられ、また手摺本体1内の中空部が高温となっても、下面側にフィン形状部3を有しているため、手摺本体および中空部に蓄えられた熱が当該フィン形状部3から外気中へ容易に放散される。したがって、夏場の日照を受けても手摺部材が極端には熱くならず、利用者が触ることもできないということがなくなる。
【0031】
また、フィン形状部3は、手摺本体1の下面に設けられているため、利用者の視線からは目立たないので外観上も美観を損ねることがなく、且つ、利用者が上から手摺本体を把持しても、違和感を感じないで済む。
【0032】
尚、この実施形態においては、手摺本体1は断面の外周形状を略円形状としているが、これに限定されるものではなく、上述のように長手方向に押出成形が可能な形状であれば、どのような形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る手摺部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の手摺部材の断面を示す図である。
【図3】本願発明に係る手摺部材の一実施形態における芯材の断面を示す図である。
【図4】本発明に係る手摺部材の設置状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 手摺本体
2 芯材
21 フィン形状部
211 凹部
212 凸部
22 係止溝
3 中間層
4 表層部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の手摺本体の下面にフィン形状部を備えることを特徴とする手摺部材。
【請求項2】
手摺本体は、中空のアルミ型材により形成される芯材と、該芯材の少なくとも一部を被覆し樹脂材料により形成される中間層と、該中間層を被覆する金属製の表層部とからなり、前記芯材の下面にフィン形状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の手摺部材。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate