説明

手洗い用食器洗浄剤組成物

【課題】洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤を提供する。
【解決手段】(a)特定のスルホコハク酸ジ若しくはモノアルキルエステル又はその塩、(b)炭素数8〜21の炭化水素基と、硫酸エステル塩基又はスルホン酸塩基とを有する陰イオン界面活性剤〔但し(a)を除く〕5〜35質量%、及び(c)スルホベタイン型界面活性剤を含有する手洗い用食器洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗い用食器洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手洗い用食器洗浄剤には、洗浄時に豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性が求められる。この起泡性/泡持続性は洗浄持続性と相関がある非常に重要な物性であり、これまで起泡性/泡持続性に優れる洗浄剤の開発が主に行われてきた。
【0003】
特許文献1には、スルホスクシネートを含有し、起泡性が高く洗浄力に優れた食器洗浄用に好適な洗浄剤の技術が開示されている。また、特許文献2にはジアルキルスルホスクシネート類とアミンオキシド類を含有する食器洗浄剤組成物の技術が開示され、ビルダーとして脂肪酸を含有しえることが詳細な説明に記載されている。特許文献3には、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩と脂肪アルコールのエチレンオキシド縮合物を使用し得る液体洗剤組成物において、起泡抑制剤として脂肪酸を使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−215699号公報
【特許文献2】特表2008−507611号公報
【特許文献3】特開平3−207799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境負荷軽減、水資源有効利用の目的から、手洗い洗浄に用いる水の量を低減することが好ましく、食器洗浄剤で洗浄後のすすぎ水は極力低減することが望まれる。しかしながら、一般に起泡性/泡持続性に優れる洗浄剤は、すすぎを完了するためには多量の水を必要とする。従って、洗浄時には豊かな泡立ちと泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤が強く求められる。この点、特許文献1〜3では、すすぎ時の泡消えに関してはなんら考慮されていない。また、特許文献3に「起泡抑制剤」として挙げられているような消泡剤としての脂肪酸は、洗浄時において低泡性にすることを目的としており、洗浄時には非常に豊かな泡を持続的に形成することと、すすぎ時には瞬時に消泡する技術との関連を示唆するものではない。
【0006】
従って本発明の課題は、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)下記一般式(1)で表されるスルホコハク酸アルキルエステル又はその塩〔以下、(a)成分という〕、(b)炭素数8〜21の炭化水素基と、硫酸エステル塩基又はスルホン酸塩基とを有する陰イオン界面活性剤〔但し(a)を除く〕〔以下、(b)成分という〕5〜35質量%、(c)炭素数10〜18の脂肪酸又はその塩〔以下、(c)成分という〕、(d)ベタイン型界面活性剤〔以下、(d)成分という〕、及び(e)アミンオキシド型界面活性剤及びアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤〔以下、(e)成分という〕1質量%以下を含有する、手洗い用食器洗浄剤組成物に関する。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数5〜18のアルキル基又は水素原子であり、R1、R2の少なくとも一方は炭素数5〜18のアルキル基である。即ち、R1とR2が同時に水素原子である場合を除く。A1、A2はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、x、yは平均付加モル数でありそれぞれ独立に0〜6である。M1は陽イオンである。〕
【0010】
また、本発明は、上記本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物を用いた洗浄液で食器を手洗い洗浄し、その後、水を用いてすすぎを行う、食器の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例で行った泡消え性の評価方法を示す概略図
【図2】実施例の泡消え性の評価で用いた硬水の導入手段(ジョウロ)の穿孔状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、下記一般式(1)で表されるスルホコハク酸アルキルエステル又はその塩である。
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは6〜14、より好ましくは7〜10のアルキル基又は水素原子であり、R1、R2の少なくとも一方は炭素数5〜18のアルキル基である。即ち、R1とR2が同時に水素原子である場合を除く。A1、A2はそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基、x、yは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0〜6、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、より好ましくは0〜1、より好ましくは0である。M1は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0016】
(a)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である場合、一般式(1)中のR1、R2は、同一あるいは異なっていても良く、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、炭素数5〜18、好ましくは6〜14、より好ましくは7〜10のアルキル基であり、好ましくは分岐構造を有するアルキル基である。5以上の炭素数で良好なすすぎ時の泡消え性が得られ、18以下の炭素数で良好な洗浄時の起泡性が得られる。
【0017】
また、(a)成分が、スルホコハク酸モノアルキルエステル又はその塩である場合、一般式(1)中のR1、R2の一方は、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、炭素数5〜18、好ましくは6〜14、より好ましくは7〜10のアルキル基であり、他方は水素原子である。
【0018】
何れの場合も、A1、A2は洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点からそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基である。x、yは平均付加モル数であり、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、それぞれ0〜6であり、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2であり、より好ましくは0〜1であり、更に好ましくは0である。
【0019】
一般式(1)中のR1、R2は、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは6〜14、より好ましくは7〜10のアルキル基であること、すなわち、(a)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩であることが好ましい。
【0020】
一般式(1)中、R1、R2は、それぞれ、好適にはヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、イソペンチル基、イソノニル基、イソデシル基、シクロヘキシル基であり、中でもn−オクチル基、sec−オクチル基、デシル基、イソデシル基、及び2−エチルヘキシル基から選ばれる基であることが好適であり、2−エチルヘキシル基がより好適である。M1は、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリンの酸塩から選ばれる有機陽イオンが挙げられるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、及びマグネシウムイオンから選ばれる陽イオンである。
【0021】
(a)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である場合、R1、R2が同一の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば米国特許明細書第2,028,091号公報に記載の方法を参考して製造することができ、また、R1、R2が異なる非対称の化合物は、例えば特開昭58−24555号公報を参考して製造することができる。市販の化合物を用いる場合には、花王(株)製ペレックスOT−P(R1、R2が共に2−エチルヘキシル基である化合物)、同ペレックスTR(R1、R2が共にトリデシル基である化合物)、BASF社製LutensitA−BO(R1、R2が共に2−エチルヘキシル基である化合物)、三井サイテック株式会社から入手可能であったエアロゾルAY−100(R1、R2が共にアミル基である化合物)、同エアロゾルA−196(R1、R2が共にシクロヘキシル基である化合物)などを用いることができる。
【0022】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、炭素数8〜21の炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基を有する陰イオン界面活性剤〔但し(a)成分を除く〕である。このような陰イオン界面活性剤は非常に起泡性に優れることが知られており、より具体的には、炭素数8〜18、好ましくは炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩、炭素数8〜18、好ましくは炭素数8〜15のアルキル基を有し炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0.1〜6、好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.4〜1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、並びに炭素数8〜15のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤が好適である。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩から選ばれる有機アミン塩が好適である。
【0023】
(b)成分としては、下記一般式(2)の化合物が洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の点から好適である。
3−O−(R4O)n−SO32 (2)
〔式中、R3は、炭素数8〜18、好ましくは8〜15、より好ましくは12のアルキル基であり、R4は、エチレン基及び/又はプロピレン基、好ましくはプロピレン基であり、nは平均付加モル数であり0以上6以下の数、好ましくは0.1以上2以下の数、0.3以上1以下の数である。M2は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0024】
nは、R4がエチレン基の場合には1.5以下、更に1以下の数が好ましく、また、0.3以上、更に0.6以上の数がより好ましい。また、nは、R4がプロピレン基の場合には1.5以下、更に1以下、更に0.8以下の数が好ましく、また、0.1以上、更に0.3以上、更に0.4以上の数が好ましい。また、R4がエチレン基及びプロピレン基の場合には、nはこれらの範囲からそれぞれ選択できる。
【0025】
一般式(2)において、nが0の場合には、R3が分岐構造を有するアルキル基を含む化合物が好ましい。nが0である場合、一般式(2)の化合物は、分岐率〔一般式(2)の化合物の総モル数に対して分岐鎖アルキル基を有する化合物の総モル数の割合〕が好ましくは15〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%、更に好ましくは70〜100モル%の化合物が好適である。
【0026】
一般式(2)中のM2はナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンから選ばれる有機陽イオンであるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンである。
【0027】
一般式(2)の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えばR3−OHで示される脂肪アルコールに目的に応じてエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを所定量付加させた後、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸から選ばれる硫酸化剤で硫酸エステル化し、所定のアルカリ剤で中和して製造される。エチレンオキシド(以下、EOと表記する)及び/又はプロピレンオキシド(以下、POと表記する)の付加反応は触媒が必要でありNaOH、KOHなどの水酸化アルカリを用いることができる。また、特開平8−323200号公報に記載の酸化マグネシウムを主成分とする触媒を用いることができ、前者は付加モル数分布が比較的広いポリオキシエチレンアルキルエーテルを得ることができ、後者は比較的狭い付加モル数分布を有する化合物を得ることができる。また、特開平10−158384号公報に開示されているようにアルカリ触媒と金属酸化物触媒を併用することにより付加モル数分布を制御することも可能である。
【0028】
一般式(2)においてnが0の場合に好適であるR3が分岐構造を有するアルキル基を含む化合物を得る場合には、原料であるR3−OHで示されるアルコールとして、炭素数8〜14の1−アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコール(OH基に対してβ位にメチル基が分岐したアルキル基が15〜70モル%含まれる)、炭素数4〜8のアルデヒドを縮合させた後、還元して得られるゲルベ型アルコール(OH基に対してβ位に炭素数3〜6のアルキル基が分岐した構造のものが100モル%含まれる)、イソブテンの2量体をヒドロホルミル化して得られる3,5,5−トリメチルヘキサノール、イソブテンの3量体をヒドロホルミル化して得られる多分岐トリデカノール(分岐率は100モル%である)、石油、石炭を原料とした合成アルコール(分岐率が約20〜100モル%のアルキル基である)を挙げることができる。
【0029】
本発明では、(b)成分として、一般式(2)で表される化合物であって、R4がプロピレン基であり、nが0.1〜1.5、更に0.3〜1、更に0.4〜0.8の数である化合物が最も好ましい。
【0030】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、炭素数10〜18の脂肪酸又はその塩であり、具体的にはデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸及びこれらの塩を挙げることができる。また、椰子組成脂肪酸などの混合脂肪酸を用いることも可能である。脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの有機アミン塩であるが、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。(c)成分としては、より好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸又はこれらの塩であり、より更に好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸又はこれらの塩である。または、主にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸又はこれらの塩を含む混合脂肪酸であり、より好ましくは主にラウリン酸、ミリスチン酸又はこれらの塩を含む混合脂肪酸であっても良い。従って、起泡力及び泡消え性の観点からは(c)成分がミリスチン酸又はその塩を含むことが好ましく、(c)成分中、ミリスチン酸又はその塩の割合は20質量%以上、更に50質量%以上、更に80質量%以上、より更に95質量%以上が好ましい。
【0031】
<(d)成分>
本発明では、増泡効果のある界面活性剤として、(d)成分のベタイン型界面活性剤を用いる。ベタイン型界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホベタイン型界面活性剤又はカルボベタイン型界面活性剤が好ましく、スルホベタイン型界面活性剤がより好ましい。スルホベタイン型界面活性剤は洗浄時の起泡性/泡持続性を改善するが、すすぎ時の瞬時の泡消え性を損なうことがない。スルホベタイン型界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10〜18のN−アルキル−N,N−ジメチル−N−スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10〜18のN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが好適である。また、カルボベタイン型界面活性剤としてはN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタインを挙げることができる。
【0032】
<(e)成分>
本発明においては洗浄時及びすすぎ時の泡の挙動が非常に重要である。手洗い用食器洗浄剤組成物の一般的な研究においては、洗浄時の起泡性/泡持続性を考慮して増泡効果のある界面活性剤を併用することが行われているが、本発明においてはこのような増泡効果のある界面活性剤はすすぎ時の泡消え性に大きな影響を及ぼすため、使用する場合注意が必要である。本発明では特に(e)成分として、アミンオキシド型界面活性剤及びアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤、中でもアミンオキシド型界面活性剤の取り扱いに注意を要する。
【0033】
アミンオキシド型界面活性剤としてはN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド(アルカノイルとしてはラウロイル又はミリスチロイル)、N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシド(アルキル基としてはラウリル基又はミリスチル基)を挙げることができる。また、アルカノールアミド型界面活性剤としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミンなどのアルカノールアミンとラウリン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸とのアミド化物を挙げることができる。
【0034】
<手洗い用食器洗浄剤組成物>
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、起泡性/泡持続性を有する(b)成分及び(d)成分と、(a)成分及び(c)成分とを組み合わせて用いることにより、比較的洗浄剤の濃度が高い洗浄水においては非常に高い起泡性と泡持続性を示すが、洗浄終了後にすすぎ水を添加することにより、瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎを完了させることができる。この理由は必ずしも定かではないが、水道水中のカルシウムと(c)成分が塩を形成して不溶化すること、及び、希釈によりミセルから放出された脂肪酸が凝集、不溶化することにより、瞬時に泡を消すことができるものと考えられる。脂肪酸は消泡剤として公知であるが、これを用いた本発明の洗浄剤組成物により、洗浄時には豊かな泡立ちが得られ、一方ですすぎ時には速やかに消泡する効果が得られることは、消泡剤としての脂肪酸の効果からは予測できない意外な効果である。
【0035】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、起泡力、泡消え性及び経済性の観点から、(a)成分を好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは1〜10質量%含有する。また、(b)成分を5〜35質量%、好ましくは7〜20質量%、より好ましくは9〜15質量%含有する。なお、本発明において質量%や質量比等を求めるための(b)成分の量は、Na塩としての量である。また、(c)成分を好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.3〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%含有する。また、(d)成分を好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは2〜8質量%含有する。
【0036】
また、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、起泡力及び泡消え性の観点から、(a)成分/(b)成分の質量比が好ましくは0.01〜2、より好ましくは0.1〜1.5、更に好ましくは0.15〜1である。また、起泡力及び泡消え性の観点から、(c)成分/(a)成分の質量比が好ましくは0.01〜2、より好ましくは0.05〜2、更に好ましくは0.1〜1である。
【0037】
また、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、洗浄時の起泡性/泡持続性の改善とすすぎ時の泡消え性の点から、(d)成分/〔(a)成分+(b)成分+(c)成分〕の質量比は好ましくは0.01〜2であり、より好ましくは0.1〜1、更に好ましくは0.15〜0.7である。
【0038】
また、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、すすぎ時の泡消え性の点から、(e)成分/〔(b)成分+(d)成分〕の質量比は好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.08以下であり、更に好ましくは0.06以下であり、最も好ましいのは0である。
【0039】
本発明では組成物中の全界面活性剤の含有量に対する(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の合計質量が50〜100質量%、更に60〜100質量%、更に80〜100質量%、より更に90〜100質量%であることが起泡力及び泡消え性の観点から好ましい。
【0040】
本発明においては泡の挙動が非常に重要であり、組成物に増泡効果を与える(e)成分の使用には注意を要し、組成物中の(e)成分の含有量が1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、即ち、含有しないことである。
【0041】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、油汚れに対する乳化力を高め、洗浄力を増強する目的から、(f)成分として、含マグネシウム無機化合物及び/又はアルキレンジアミン化合物(アルキレン基は炭素数2〜6)、好ましくは含マグネシウム無機化合物を含有することが好ましい。これらの化合物は、本発明に必要な効果、すなわち(a)成分、(b)成分、及び所望により含有される他の陰イオン界面活性剤の少なくとも2分子と比較的弱く相互作用しコンプレックスを形成させ、乳化力などの界面活性能を向上させる化合物として共通の効果/作用機構を有するものである。
【0042】
含マグネシウム無機化合物としては、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩化物、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられるが、塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる化合物がより好ましく、塩化マグネシウムが更により好ましい。また、アルキレンジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、へキシレンジアミン、シクロヘキサンジアミンが好適であるが、シクロヘキサンジアミンがより好ましい。
【0043】
(f)成分の含有量は、組成物中、0.5〜20質量%、更に0.5〜15質量%、より更に0.5〜10質量%が好ましい。なお、これら(f)成分は結晶水を含む場合があるが、ここで示す含有量は、結晶水を除いた質量である。
【0044】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、(f)成分の補助として(f)成分以外の無機化合物を併用してもよい。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、ミョウバン等が挙げられる。
【0045】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、すすぎ時には瞬時にぬるつきがなくなり、少量の水ですすぎを完了できるという観点から、(g)成分として、アルキルグリセリルエーテル(アルキル基の炭素数は6〜18、好ましくは8〜12)を含有することが好ましい。具体的には下記一般式(3)の化合物が好適である。
5−O−(Gly)r−H (3)
〔式中、R5は炭素数6〜18のアルキル基を示し、Glyはグリセリンから2つの水素原子を除いた残基を示し、rは平均付加モル数で1〜4の数を示す。〕
【0046】
一般式(3)において、R5は炭素数6〜18、好ましくは7〜12、より好ましくは8〜10のアルキル基であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖アルキル基を用いることができるが、本発明ではすすぎ時のぬるつき低減の観点から、分岐構造を有する化合物が好適であり、R5の分岐構造を有する具体的なアルキル基として、2−エチルヘキシル基、sec−オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2−エチルヘキシル基又はイソデシル基が更に好ましく、2−エチルヘキシル基がより更に好ましい。一般式(3)において、rは1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、r=1の化合物が更に好ましい。より更に好ましい化合物は、R5が2−エチルヘキシル基で、かつ、r=1の化合物である。
【0047】
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位のヒドロキシ基が結合している−CH2CH(OH)CH2−で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位のヒドロキシ基が結合している−CH(CH2OH)CH2−で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
【0048】
一般式(3)の化合物を得るには、例えば炭素数6〜10のアルコールとしてR5−OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物とを、BF3などの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。
【0049】
例えば、2−エチルヘキサノールを用いた場合、得られる2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物である。(g)成分の含有量は、組成物中、0.5〜20質量%、更に1〜15質量%、より更に1.5〜10質量%が好ましい。
【0050】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、貯蔵安定性や、洗浄時の増泡性、洗浄性能を向上することを目的として、すすぎ性を損ねない範囲内で非イオン界面活性剤〔(g)成分に該当するものを除く〕〔以下(h)成分という〕を使用してもよい。(h)成分としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の非イオン界面活性剤を挙げることができる。中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び/又はアルキルグリコシドが好適である。
【0051】
(h)成分の含有量は、組成物中に好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【0052】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的でハイドロトロープ剤〔以下、(i)成分という〕を含有することが好ましい。ハイドロトロープ剤としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸又はこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、p−トルエンスルホン酸又はその塩がより良好である。(i)成分の含有量は、0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは1.5〜10質量%である。
【0053】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、貯蔵安定性の改善や粘度調節の目的で、溶剤〔以下、(j)成分という〕を含有することができる。溶剤の具体的例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノール、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジブチレンジグリコール、ベンジルアルコールから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。なかでも、ブチルジグリコール、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が好ましく、ブチルジグリコール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が更に好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、オクタノール/水分配係数(LogPow)が3.5以下の溶剤を指すものとする。(j)成分の含有量は、組成物中に好ましくは1.5〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
【0054】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物には、ゲル化防止のための重合体〔以下、(k)成分という〕、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、とりわけポリアルキレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ゲル化防止のための重合体としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200〜3,000のポリプロピレングリコール、及び重量平均分子量が200〜3,000のポリエチレングリコールを挙げることができる。(k)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%である。
【0055】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。用いる水は脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5〜10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0056】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。用いる水は脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5〜10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0057】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは4〜9、より好ましくは5〜8であり、このようなpHへの調整は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。本発明では、組成物に緩衝能を持たせることが起泡性/泡持続性の点から好ましく、上記有機酸、好ましくはクエン酸と、無機アルカリ剤とを併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えない。なお、pH調整のために用いた化合物のうち、水酸化マグネシウム等、(f)成分に該当するものは、(f)成分として取り扱うものとする。
【0058】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは5〜500mPa・s、より好ましくは10〜300mPa・sである。粘度は(i)成分、(j)成分、(k)成分などで調整することができる。
【0059】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、香料、染料、顔料などの成分を含有することができる。
【0060】
<手洗い洗浄方法>
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、食器の手洗い洗浄に用いられる。手洗い洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物を用いて得られたものであり、組成物の原液又は水を含む希釈液が用いられる。具体的な手洗い洗浄方法としては、例えば、水を含んだスポンジなどの可撓性材料に本発明の組成物を付着させ洗浄液を保持させて、手で数回揉みながら泡立てて、食器をこすり洗いする。可撓性材料が保持する洗浄液中の(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の合計濃度は、好ましくは1,000〜30,000ppm、より好ましくは1,000〜20,000ppm、更に好ましくは2,000〜10,000ppmであることが、高い起泡性と泡持続性の点から好ましい。洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では洗浄濃度に希釈された組成物1質量部に対してすすぎ水3.3〜133質量部で十分泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。このすすぎ水の量は、従来の手洗い用洗浄剤組成物を用いた場合の2/3〜1/10程度である。
【0061】
本発明の態様を以下に例示する。
<1> (a)下記一般式(1)で表されるスルホコハク酸アルキルエステル又はその塩、(b)炭素数8〜21の炭化水素基と、硫酸エステル塩基又はスルホン酸塩基とを有する陰イオン界面活性剤〔但し(a)を除く〕5〜35質量%、好ましくは7〜20質量%、より好ましくは9〜15質量%、(c)炭素数10〜18の脂肪酸又はその塩 好ましくは0.1〜20質量%、(d)ベタイン型界面活性剤、及び(e)アミンオキシド型界面活性剤及びアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤、好ましくはアミンオキシド型界面活性剤1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%を含有する、手洗い用食器洗浄剤組成物。
【0062】
【化3】

【0063】
〔式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは6〜14、より好ましくは7〜10のアルキル基、好ましくは分岐構造を有するアルキル基又は水素原子であり、R1、R2の少なくとも一方は炭素数5〜18のアルキル基である。即ち、R1とR2が同時に水素原子である場合を除く。A1、A2はそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基、x、yは平均付加モル数でありそれぞれ独立に0〜6、好ましくは0〜3、より好ましくは0である。M1は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0064】
<2> (e)成分/〔(b)成分+(d)成分〕の質量比が0.1以下である、前記<1>記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【0065】
<3> (d)がスルホベタイン型界面活性剤である、前記<1>又は<2>記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【0066】
<4> 更に、(f)含マグネシウム無機化合物及び/又はアルキレンジアミン(アルキレン基は炭素数2〜6)、好ましくは塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる化合物を含有する、前記<1>〜<3>の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【0067】
<5> (b)が、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩、炭素数8〜18のアルキル基を有し炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0.1〜6、好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.4〜1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、並びに炭素数10〜15のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤である、前記<1>〜<4>の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【0068】
<6> (b)が、下記一般式(2)で表される化合物である、前記<1>〜<5>の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
3−O−(R4O)n−SO32 (2)
〔式中、R3は、炭素数8〜18、好ましくは8〜15、より好ましくは12のアルキル基であり、R4は、エチレン基及び/又はプロピレン基、好ましくはプロピレン基であり、nは平均付加モル数であり0以上6以下の数、好ましくは0.1以上2以下の数、0.3以上1以下の数である。M2は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0069】
<7> 組成物中の全界面活性剤の含有量に対する(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計質量が50〜100質量%、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である前記<1>〜<6>の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【0070】
<8> 前記<1>〜<7>の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物を用いた洗浄液で食器を手洗い洗浄し、その後、水を用いてすすぎを行う、食器の洗浄方法。
【実施例】
【0071】
表1及び下記の配合成分を用いて表1の手洗い用食器洗浄剤組成物を調製し、下記の各評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0072】
<配合成分>
・a−1:スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム〔関東化学(株)〕
・b−1:アルキル鎖が炭素数8、炭素数10、炭素数12のアルコール(炭素数8/炭素数10/炭素数12=5/5/90、質量比)1モルに、POを平均0.6モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整と同時に希釈したもの(10質量%水溶液のpHは11)
・b−2:アルキル鎖が炭素数12のアルコール1モルに、EOを平均1モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整と同時に希釈したもの(10質量%水溶液のpHは11)
・b−3:ラウリル硫酸ナトリウム
・c−1:混合脂肪酸、ルナックL−55、花王(株)製、飽和脂肪酸(全て直鎖)の炭素数組成は、炭素数10/炭素数12/炭素数14/炭素数16/炭素数18=1/57/22/10/3(質量比)であり、残りが不飽和脂肪酸であり、その組成がリノール酸/リノレイン酸=6/1(質量比)である。
【0073】
・d−1:N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン(花王(株)製:アンヒトール20HD)
・d−2:ラウリルN−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン(花王(株)製:アンヒトール20AB)
・e−1:ラウリルジメチルアミンオキサイド(花王(株)製:アンヒトール20N)
・f−1:MgCl2・6H2O(塩化マグネシウム6水塩)、配合には6水塩を用いたが、表1中の数値は、結晶水を除いた配合量で示した。
【0074】
<起泡力(初期泡量)及び泡消え性>
表1の食器洗浄剤組成物を3.5°DH硬水で3.2質量%に希釈し、特開2008−260852号公報の図1記載のポンプフォーマー容器に充填した。ここで、泡吐出機構には、メッシュサイズ200/インチのメッシュが1枚装着されていた。次いで、容器上部のポンプヘッド部を3プッシュ連続して押し切ることにより、3gの泡を500mlのメスシリンダーの中に作製した。なお、押し切るスピードは、1プッシュあたり1秒のスピードで行なった。このとき、メスシリンダーの目盛りからその容量を記録し、初期泡量とした。起泡性はこの初期泡量で評価した。
【0075】
次に、メスシリンダーの上部に設置した硬水の導入手段(手製のジョウロ)を通して3.5°DH硬水を泡に100ml添加し30秒間放置した。この操作を、添加した硬水の合計が300mlになるまで繰り返した。最後の水を添加し、30秒間放置した後の泡量を測定した。尚、泡消え性については、硬水300ml添加において、次式で示す泡量変化率から求め、300ml添加までに70%以上になれば希釈(すすぎ)による速やかな泡消えが達成できるものと判断した。
泡量変化率(%)=[1−(硬水300ml添加後の泡量/初期の泡量)]×100
【0076】
硬水をメスシリンダーに添加するときの様子を図1に示す。図1中、1はメスシリンダー、2は泡、3は硬水の導入手段(手製のジョウロ)、4は該導入手段の開口部であり、図2は硬水の導入手段3の開口部4の穿孔状態を示す概略図である。硬水の導入手段である手製のジョウロの作製方法は、以下の通りである。先ず、250mlのポリプロピレン製広口びん(アズワン製:アイボーイ広口びん)の底部から高さ約3分の1の本体部分迄を切除した。次いで、直径4cmの薄い円状のポリエチレン製板に対して、図2に示すように、9mm間隔で13個の直径2mmの穴を開けたポリエチレン製多孔板を用意した。最後に、切除した広口びん上部のフタ開口部(直径4cm)に対して、上記のポリエチレン製多孔板を開口部4として固定して硬水の導入手段3(手製のジョウロ)を作製した。このようにして作製した硬水の導入手段3(手製のジョウロ)を、図1のように、倒置状態に保ちながら、メスシリンダー1の開口部にはめ込んだ。硬水は広口びんの切除側から投入した。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表されるスルホコハク酸アルキルエステル又はその塩、(b)炭素数8〜21の炭化水素基と、硫酸エステル塩基又はスルホン酸塩基とを有する陰イオン界面活性剤〔但し(a)を除く〕5〜35質量%、(c)炭素数10〜18の脂肪酸又はその塩、(d)ベタイン型界面活性剤、及び(e)アミンオキシド型界面活性剤及びアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤1質量%以下を含有する、手洗い用食器洗浄剤組成物。
【化1】


〔式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数5〜18のアルキル基又は水素原子であり、R1、R2の少なくとも一方は炭素数5〜18のアルキル基である。即ち、R1とR2が同時に水素原子である場合を除く。A1、A2はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、x、yは平均付加モル数でありそれぞれ独立に0〜6である。M1は陽イオンである。〕
【請求項2】
(e)成分/〔(b)成分+(d)成分〕の質量比が0.1以下である、請求項1記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項3】
(d)がスルホベタイン型界面活性剤である、請求項1又は2記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項4】
(e)がアミンオキシド型界面活性剤である、請求項1〜3の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、(f)含マグネシウム無機化合物及び/又はアルキレンジアミン(アルキレン基は炭素数2〜6)を含有する、請求項1〜4の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項6】
(b)が、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩、炭素数8〜18のアルキル基を有し炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0.1〜6であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、並びに炭素数10〜15のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤である、請求項1〜5の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項7】
(b)が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1〜6の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
3−O−(R4O)n−SO32 (2)
〔式中、R3は、炭素数8〜18のアルキル基であり、R4は、エチレン基及び/又はプロピレン基であり、nは平均付加モル数であり0以上6以下の数である。M2は陽イオンである。〕
【請求項8】
組成物中の全界面活性剤の含有量に対する(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計質量が50〜100質量%である請求項1〜7の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物を用いた洗浄液で食器を手洗い洗浄し、その後、水を用いてすすぎを行う、食器の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82844(P2013−82844A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225126(P2011−225126)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】