説明

打ち抜き型および打ち抜きプレス装置

【課題】
合成樹脂フィルムをプレス装置により打ち抜く一連の工程において、フィルムの帯電による処理効率の低下、放電による製品の損傷を防止ないし回避する。
【解決手段】
ループ刃132と、ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材1331,1332とを備えた打ち抜き型であって、当該跳上げ部材が弾性材からなり、跳上げ部材の表面に、金属フィルム1354,1362(または金属パネル)が貼着され、金属フィルム(または金属パネル)が接地されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムをプレス装置により打ち抜く一連の工程において、フィルムの帯電による操作性の悪化、放電によるフィルムの損傷を防止ないし回避できる打ち抜き型および打ち抜きプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15に例示するように、打ち抜きプレス機9は、上定盤91と、下定盤92と、抜き型93(この例では上定盤91に取り付けられている)と、保護シート94(この例では下定盤92に取り付けられている)とを備えている。
上定盤91が上下動することにより、フィルムFを所望の形状に(この例では、四角に)打ち抜くことができる。
【0003】
図16(A),(B)に示す抜き型93Aは、合板931Aにトムソン刃932Aを埋め込んで構成されており、合板931Aの上面には打ち抜き対象(フィルム等)を跳ね上げるための合成ゴムシート(跳上げ部材933)が設けられている。
【0004】
図17(A),(B)に示す抜き型93Bは、金属基板931Bの上面に、削り出し刃932Bを形成したもので、金属基板931Bの上面には、図16(A),(B)について説明したと同様、打ち抜き対象(フィルム等)を跳ね上げるための合成ゴムシート(跳上げ部材933)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−233995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図18に、枚葉ごとにフィルムFを打ち抜くための、打ち抜きプレス機9を用いたシステムを示す。このシステムでは、積み重ねた原材(積み重ねた多数のフィルム)からフィルムFをめくり取るときに剥離帯電が生じる。
【0007】
また、図19に、保護シート94を無端ベルト状にして巡回させ、ロール・ツー・ロール(R1:原半ロール、R2:巻取りロール)方式でフィルムFを打ち抜く、打ち抜きプレス機9を用いた他のシステムを示す。このシステムでは、フィルムを原反ロールR1から送り出すときに剥離帯電が生じる。
【0008】
さらに上記の剥離帯電のみならず、打ち抜き処理の過程で、フィルムFが帯電してしまうこともある。打ち抜きに際しては、図20に示すように、フィルムFのセット(図20(A))、フィルムFの打ち抜き(図20(B))、打ち抜いたフィルムF′の跳上げ(図20(C))といった工程が順次行われる。このとき、フィルムF,F′は、跳上げ部材933や保護シート94と接触して引き離される際に、フィルムF′に静電気が発生するために帯電してしまう。
また、跳上げ部材933が圧縮・伸張される際に、跳上げ部材933に静電気が生じ、この静電気がフィルムF′に転写されてしまうこともある。
【0009】
図18および図19に示すように、打ち抜いたフィルムF′が跳上げ部材934に静電吸着してしまう。また、図示はしないが、帯電したフィルムF′は、積み重ねるときに、捩れや皺等が生じる。
以上述べたように、フィルムF,F′が帯電することにより、処理効率が悪くなったり、放電による製品(フィルムF′)の損傷が生じたりする。
【0010】
なお、打ち抜き型の分野で、静電気を除去する技術として、特許文献1に記載の技術も知られている。この技術では、保護シート(あて板)を粗面状にして静電気の発生を緩和しているが、多くの場合には効果を奏しないのが実情である。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解決するために提案されたものであって、合成樹脂フィルムを打ち抜きプレス装置により打ち抜く一連の工程において、合成樹脂フィルムの帯電による処理効率の低下、放電による製品の損傷を防止ないし回避できる打ち抜き型および打ち抜きプレス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の除電機能付き打ち抜き型は、(1)から(6)を要旨とする。
(1)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が弾性材からなり、
前記跳上げ部材の表面に、金属フィルムまたは金属パネルが貼着され、前記金属フィルムまたは前記金属パネルが接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0013】
(2)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が弾性材からなり、
前記跳上げ部材の表面に、金属フィルムまたは金属パネルが貼着され、前記金属フィルムまたは前記金属パネルが、放電回路(たとえば、抵抗または抵抗とキャパシタとの並列回路、ダイオードまたはダイオードとキャパシタとの並列回路)を介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0014】
(3)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が導電性または低抵抗性の弾性材からなり、
前記弾性材の少なくとも裏面が接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0015】
(4)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルと前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルは前記コイルスプリングを介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0016】
(5)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルと前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルは、放電回路(たとえば、抵抗または抵抗とキャパシタとの並列回路、ダイオードまたはダイオードとキャパシタとの並列回路)を介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0017】
(6)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルの表面と前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルの表面は前記コイルスプリングを介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0018】
(7)
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルの表面と前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルの表面は、放電回路(たとえば、抵抗または抵抗とキャパシタとの並列回路、ダイオードまたはダイオードとキャパシタとの並列回路)を介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【0019】
本発明の除電機能付き打ち抜き型は、(8)および(9)を要旨とする。
(8)
ループ刃を備え、打ち抜き型を上定盤または下定盤の一方に取り付け、他方に打ち抜き時に打ち抜き対象を前記ループ刃に押圧するための、ループ刃保護シートを取り付けてなる打ち抜きプレス装置において、
前記ループ刃保護シートとして、導電性または低抵抗性の素材を使用することを特徴とする打ち抜きプレス装置。
【0020】
(9)
前記打ち抜き型として、(1)から(9)の何れかに記載の打ち抜き型を使用することを特徴とする打ち抜きプレス装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、打ち抜き対象に生じる静電気を確実に除去することができる。
打ち抜きの一連の処理において、打ち抜き対象への静電気の転写を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の除電機能付き打ち抜き型の第1実施形態を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図2】(A)は図1(A)における製品除電システムを示す図、(B)は図1(A)における抜きカス除電システムを示す図である。
【図3】図1の第1実施形態の変更例(抵抗を介して接地した例)を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図4】図3(A)における製品除電システムを示す図である。
【図5】本発明の除電機能付き打ち抜き型の第2実施形態を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図6】(A)は図5(A)における製品除電システムを示す図、(B)は図5(A)における抜きカス除電システムを示す図である。
【図7】図5の除電機能付き打ち抜き型の変更例(抵抗を介して接地した例)を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図8】図7(A)における製品除電システムを示す図である。
【図9】本発明の除電機能付き打ち抜き型の第3実施形態を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図10】(A)は図9(A)における製品除電システムを示す図、(B)は図9(A)における抜きカス除電システムを示す図である。
【図11】図9の除電機能付き打ち抜き型の変更例(抵抗を介して接地した例)を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図12】図11(A)における製品除電システムを示す図である。
【図13】本発明の除電機能付き打ち抜き型の第4実施形態を示す説明図であり、(A)は打ち抜き型を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、(B)は打ち抜き型の平面説明図である。
【図14】(A)は図13(A)における製品除電システムを示す図、(B)は図13(A)における抜きカス除電システムを示す図である。
【図15】従来の打ち抜きプレス機の基本構成を示す図である。
【図16】合板にトムソン刃を埋め込んで構成した従来の抜き型を示す図である。
【図17】刃を削り出しにより形成した従来の抜き型を示す図である。
【図18】枚葉ごとにフィルムFを打ち抜くための従来の打ち抜きプレス機を示す図である。
【図19】保護シートを無端ベルト状にして巡回させ、ロール・ツー・ロール方式でフィルムを打ち抜く従来の打ち抜きプレス機を示す図である。
【図20】打ち抜きの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《第1実施形態》
図1(A)は打ち抜き型13を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、図1(B)は打ち抜き型13の平面説明図である。
これらの図において、除電機能付き打ち抜き型13は、合板131と、ループ刃132と、跳上げ部材1331,1332と、フレーム134,134とを備えている。
【0024】
合板131にはスリット(図示されていない)が形成されており、このスリットに帯状のループ刃132が装着されている。図1では、帯状の刃によりループが構成されているが、ループの適宜の箇所に、帯状刃と連結される削り出し刃が設けられていてもよい。
【0025】
跳上げ部材1331は、ループ刃132の内側に設けられ、跳上げ部材1332は、ループ刃132の外側に設けられている。
本実施形態では、跳上げ部材1331,1332は弾性発泡材からなり、跳上げ部材1331の表面に、金属フィルム1354が貼着され、跳上げ部材1332の表面に、金属フィルム1362が貼着されている。
これらの金属フィルム1354,1362は接地されている。
【0026】
図2(A)は、図1(A)における製品除電システム135を示す図である。
図2(A)において、製品除電システム135は、跳上げ部材1331に貼着された金属フィルム1354と、金属フィルム1354の製品跳ね上げ部材1331側に設けられたパッド(金属パネル)1353と、合板131の厚み部分に形成された空洞1351内に引き回された導電線1352と、合板131の裏面に取り付けられた導電線1355(導電線1352と接続されている)とからなる。導電線1355は図1(A)に示すようにフレーム134に接続されている。
【0027】
図2(B)は、図1(A)における抜きカス除電システム136を示す図である。
図2(B)において、抜きカス除電システム136は、跳上げ部材1332に貼着された金属フィルム1362と、この金属フィルム1362から引き出され導電線1361とからなり、導電線1361はフレーム134に接続されている。
【0028】
フレーム134は、ガイド73および上定盤71を介して接地されているので、フィルムF(あるいは、打ち抜いたフィルムF′)に帯電している電荷(静電気)を瞬時にゼロとすることができる。
【0029】
図3(A),(B)は、金属フィルム1354が、放電回路(本実施形態では、抵抗1356)を介して接地されている例を示している。また、図4は、図3(A)における製品除電システム135を示している。図3(A),(B)において用いられている符号が示す構成要素は、図1(A),(B)において用いられている符号が示す構成要素と同じである。
【0030】
図3では、金属フィルム1354に充電されている電荷(静電気)は、抵抗1356と所定キャパシタCとの並列回路を、所定の時定数に従って放電する。ここで、所定キャパシタCは、金属フィルム1354から上定盤71側を見たときの静電容量と、金属フィルム1354から下定盤72側を見たときの静電容量の並列接続である。
【0031】
金属フィルム1354に充電されている電荷(静電気)の放電速度は、抵抗1356を用いることで調整できるので、金属フィルム1354に帯電している電荷(静電気)が急激に放電することで、フィルムFが損傷することはない。また、金属フィルム1354の帯電電荷が放電されずに、従来技術で述べたような不都合(図18,図19参照)が生じることもない。
【0032】
《第2実施形態》
図5(A)は打ち抜き型23を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、図5(B)は打ち抜き型23の平面説明図である。
これらの図において、除電機能付き打ち抜き型23は、金属基板231と、ループ刃232と、跳上げ部材2331,2332とを備えている。
【0033】
ループ刃232は、金属基板231の原材を削り出すことにより形成されている。
跳上げ部材2331は、ループ刃232の内側に設けられ、跳上げ部材2332は、ループ刃232の外側に設けられている。
【0034】
本実施形態では、跳上げ部材2331,2332は弾性発泡材からなり、跳上げ部材2331の表面に、金属フィルム2354が貼着され、跳上げ部材2332の表面に、金属フィルム2362が貼着されている。
これらの金属フィルム2354,2362は接地されている。
【0035】
図6(A)は、図5(A)における製品除電システム235を示す図である。
図6(A)において、製品除電システム235は、跳上げ部材2331に貼着された金属フィルム2354と、金属フィルム2354の製品跳ね上げ部材1331側に設けられたパッド(金属パネル)2353と、金属基板231の厚み部分に形成された空洞2351内に引き回された導電線2352とからなる。
【0036】
図6(B)は、図5(A)における抜きカス除電システム236を示す図である。
図6(B)において、抜きカス除電システム236は、跳上げ部材2332に貼着された金属フィルム2362と、この金属フィルム2362から引き出され導電線2361とからなり、導電線2361は金属基板231の表面に接続されている。
【0037】
金属基板231は、ガイド73および上定盤71を介して接地されているので、フィルムF(あるいは、打ち抜いたフィルムF′)に帯電している電荷(静電気)を瞬時にゼロとすることができる。
【0038】
図7(A),(B)は、金属フィルム2354が、放電回路(本実施形態では、抵抗2356)を介して接地されている例を示している。また、図8は、図7(A)における製品除電システム235を示している。図7(A),(B)において用いられている符号が示す構成要素は、図5(A),(B)において用いられている符号が示す構成要素と同じである。
【0039】
図7(A),(B)では、金属フィルム2354に充電されている電荷(静電気)は、抵抗2356と所定キャパシタCとの並列回路を、所定の時定数に従って放電する。ここで、所定キャパシタCは、金属フィルム2354から上定盤71側を見たときの静電容量と、金属フィルム2354から下定盤72側を見たときの静電容量の並列接続である。
【0040】
金属フィルム2354に充電されている電荷(静電気)の放電速度は、抵抗2356を用いることで調整できるので、金属フィルム2354に帯電している電荷(静電気)が急激に放電することで、打ち抜き対象(フィルムF)が損傷することはない。また、金属フィルム2354に帯電している電荷(静電気)が放電されずに、従来技術で述べたような不都合(図18,図19参照)が生じることもない。
【0041】
《第3実施形態》
図9(A)は打ち抜き型33を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、図9(B)は打ち抜き型33の平面説明図である。
これらの図において、除電機能付き打ち抜き型33は、金属基板331と、ループ刃332と、跳上げ部材3331,3332とを備えている。
【0042】
ループ刃332は、金属基板331の原材を削り出すことにより形成されている。
跳上げ部材3331は、ループ刃232の内側に設けられ、跳上げ部材2332は、ループ刃232の外側に設けられている。
【0043】
本実施形態では、跳上げ部材3331,3332はコイルバネからなり、跳上げ部材3331の先端に、金属プレート3354が貼着され、跳上げ部材3332の表面に、金属プレート3362が貼着されている。
これらの金属フィルム2354,2362は接地されている。
【0044】
図10(A)は、図9(A)における製品除電システム335を示す図である。
図10(A)において、製品除電システム335は、跳上げ部材3331の先端に取り付けられた金属プレート3354と、金属プレート3354の金属基板331側に設けられたパッド(金属パネル)3353と、金属基板331の厚み部分に形成された空洞3351内に引き回された導電線3361とからなる。
【0045】
図10(B)は、図9(A)における抜きカス除電システム336を示す図である。
図10(B)において、抜きカス除電システム336は、跳上げ部材3332の先端に取り付けられた金属プレート3362と、金属基板331の厚み部分に形成された空洞3352内に引き回された導電線3361とからなる。導電線3361は、空洞3352内において金属基板231に接続されている。
【0046】
金属基板231は、ガイド73および上定盤71を介して接地されているので、フィルムF(あるいは、打ち抜いたフィルムF′)に帯電している電荷(静電気)を瞬時にゼロとすることができる。
【0047】
図11(A),(B)は、金属プレート3354が、放電回路(本実施形態では、抵抗3356)を介して接地されている例を示している。また、図12は、図11(A)における製品除電システム335を示している。図11(A),(B)において用いられている符号が示す構成要素は、図9(A),(B)において用いられている符号が示す構成要素と同じである。
【0048】
図11(A),(B)では、金属プレート3354に充電されている電荷(静電気)は、抵抗3356と所定キャパシタCとの並列回路を、所定の時定数に従って放電する。ここで、所定キャパシタCは、金属プレート3354から上定盤71側を見たときの静電容量と、金属プレート3354から下定盤72側を見たときの静電容量の並列接続である。
【0049】
金属プレート3354に充電されている電荷(静電気)の放電速度は、抵抗3356を用いることで調整できるので、金属プレート3354に帯電している電荷(静電気)が急激に放電することで、打ち抜き対象(フィルムF)が損傷することはない。また、金属プレート3354に帯電している電荷(静電気)が放電されずに、従来技術で述べたような不都合(図18,図19参照)が生じることもない。
【0050】
《第4実施形態》
図13(A)は打ち抜き型43を抜き型プレス機に取り付けた状態を示す側面断面図であり、図13(B)は打ち抜き型43の平面説明図である。
これらの図において、除電機能付き打ち抜き型43は、合板431と、ループ刃432と、跳上げ部材4331,4332と、フレーム434,434とを備えている。
【0051】
合板431にはスリット(図示されていない)が形成されており、このスリットに帯状のループ刃432が装着されている。図14では、帯状の刃によりループが構成されているが、ループの適宜の箇所に、帯状刃と連結される削り出し刃が設けられていてもよい。
【0052】
跳上げ部材4331は、ループ刃432の内側に設けられ、跳上げ部材4332は、ループ刃432の外側に設けられている。
本実施形態では、跳上げ部材4331,4332は、低抵抗性の弾性発泡材からなり、跳上げ部材4331の裏面に、金属フィルム4354が貼着され、跳上げ部材4332の裏面に、金属フィルム4362が貼着されている。
これらの金属フィルム4354,4362は接地されている。
【0053】
図14(A)は、図13(A)における製品除電システム435を示す図である。
図14(A)において、製品除電システム435は、跳上げ部材4331に貼着された金属フィルム4354と、合板431の厚み部分に形成された空洞4351内に引き回された導電線4352と、合板431の裏面に取り付けられた導電線4355(導電線1352と接続されている)とからなる。導電線4355は図13(A)に示すようにフレーム434に接続されている。
【0054】
図14(B)は、図13(A)における抜きカス除電システム436を示す図である。
図14(B)において、抜きカス除電システム436は、跳上げ部材4332に貼着された金属フィルム4362と、この金属フィルム4362から引き出され導電線4361とからなり、導電線4361はフレーム434に接続されている。
【0055】
フレーム434は、ガイド73および上定盤71を介して接地されているので、フィルムF(あるいは、打ち抜いたフィルムF′)に帯電している電荷(静電気)を瞬時にゼロとすることができる。
【0056】
第1実施形態から第4実施形態では、下定盤72の表面に、打ち抜き時に打ち抜き対象を前記ループ刃に押圧するための、ループ刃保護シート61が取り付けてある。このループ刃保護シート61として、金属ウィスカーや、金属粉、あるいは炭素粉を練り込ませて導電性または低抵抗性のプラスチック素材を使用することができる。
【0057】
本発明では、電圧計によりフィルムFに帯電している電荷(静電気)を検出することもできる。すなわち、跳ね出し部材に貼着されている金属フィルム(図1(A),(B)および図3(A),(B)の符号1354、図5(A),(B)および図7(A),(B)の符号2354)や金属プレート(図9(A),(B)および図11(A),(B)の符号3354)と、グランドとの間の電位を測定することで、フィルムFに帯電している電気量(電荷量)を推定することができる。
【0058】
また、図3,図4、図7,図8および図11,図12の実施形態では抵抗を固定抵抗で示してあるが、固定抵抗に代えて、可変抵抗を採用することができる。この可変抵抗は、適宜調整ができる箇所に取り付けられる。
【0059】
さらに、(図1(A),(B)および図3(A),(B)の符号1354、図5(A),(B)および図7(A),(B)の符号2354)や金属プレート(図9(A),(B)および図11(A),(B)の符号3354)を複数の領域に分離してそれぞれの領域で独立した除電を行うこともできる。
【符号の説明】
【0060】
13,23,33,43 抜き型
61 ループ刃保護シート
71 上定盤
72 下定盤
73 ガイド
131,431 合板
132,232,332,432 ループ刃
134,434 フレーム
135,235,335,435 製品除電システム
136,236,336,436 抜きカス除電システム
231,331 金属基板
1331,1332,2331,2332,3331,3332,4331,4332 跳ね上げ部材
1351,2351,3351,3352,4351 空洞
1352,1355,1361,2352,2361,3361,4352,4355,4361 導電線
1353,2353,3353 パッド
1354,1362,2354,2362,4354,4362 金属フィルム
1356,2356,3356 抵抗
3354,3362 金属プレート
F,F′ フィルム
R1 原反ロール
R2 巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が弾性材からなり、
前記跳上げ部材の表面に、金属フィルムまたは金属パネルが貼着され、前記金属フィルムまたは前記金属パネルが接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項2】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が弾性材からなり、
前記跳上げ部材の表面に、金属フィルムまたは金属パネルが貼着され、前記金属フィルムまたは前記金属パネルが、放電回路を介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項3】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側に設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が導電性または低抵抗性の弾性材からなり、
前記弾性材の少なくとも裏面が接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項4】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルと前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルは前記コイルスプリングを介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項5】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルと前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルは、放電回路を介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項6】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルの表面と前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルの表面は前記コイルスプリングを介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項7】
ループ刃と、
前記ループ刃の内側および/または外側にそれぞれ設けられた跳上げ部材と、
を備えた打ち抜き型であって、
前記跳上げ部材が、多数のコイルスプリングおよびこれらのコイルスプリングにより支持されたパネルからなり、
前記跳上げ部材の前記パネルの表面と前記コイルスプリングとが金属であり、
前記パネルの表面は、放電回路を介して接地されている、
ことを特徴とする除電機能付き打ち抜き型。
【請求項8】
ループ刃を備え、打ち抜き型を上定盤または下定盤の一方に取り付け、他方に打ち抜き時に打ち抜き対象を前記ループ刃に押圧するための、ループ刃保護シートを取り付けてなる打ち抜きプレス装置において、
前記ループ刃保護シートとして、導電性または低抵抗性の素材を使用することを特徴とする打ち抜きプレス装置。
【請求項9】
前記打ち抜き型として、請求項1から7の何れかに記載の打ち抜き型を使用することを特徴とする打ち抜きプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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