説明

打ち抜き型

【課題】
ループ状刃を加熱するとともに、打ち抜いた製品や打ち抜きカスの良好な跳ね出しを行うことで製品の打ち抜き面を良好にする。
【解決手段】
ループ状刃の内側に複数の扁平ピン穴が形成された打ち抜き刃鋼板と、各扁平ピン穴にそれぞれ設置された扁平スプリングピン121、および、内側跳ね出し板122からなる跳ね出しユニット12と、打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板13と、熱源鉄板13の打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボード14と、リング状溝に埋設された誘導加熱用コイル15とを備え、誘導加熱用コイル15に通電しつつ打ち抜きを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下定盤間に配置された打ち抜き対象物を打ち抜くために使用されるヒータ付の打ち抜き型、この打ち抜き型を用いた抜き型温度制御システムに関し、ループ状刃を加熱するとともに、打ち抜いた製品や打ち抜きカスの良好な跳ね出しを行うことで製品の打ち抜き面を良好にすることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打ち抜き型を用いて、アクリル等の打ち抜き対象物を打ち抜く場合に、打ち抜いた製品にクラック(びび)が生じることがある。この不都合を解消するために、打ち抜き型をヒータにより加熱し、打ち抜き型自体を、たとえば、70・〜120・程度まで加熱することがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2010−201608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この打ち抜き技術では、打ち抜いた製品や打ち抜きカスを、打ち抜き型から離脱するのに、耐熱ゴムを使用しているが、これらの良好な跳ね出しができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ループ状刃を加熱するとともに、打ち抜いた製品や打ち抜きカスの良好な跳ね出しを行うことで製品の打ち抜き面を良好にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)から(5)を要旨とする。
(1)
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側または外側に複数の扁平ピン穴(または扁平ピン孔)が形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平ピン穴にそれぞれ設置された扁平スプリングピン、および、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板または内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【0007】
(2)
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側および外側に複数の扁平ピン穴(または扁平ピン孔)がそれぞれ形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平ピン穴にそれぞれ設置された扁平スプリングピン、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板、および内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【0008】
(3)
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側または外側に複数の扁平スプリング穴(または扁平スプリング孔)が形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平スプリング穴にそれぞれ設置された扁平スプリング、および、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板または内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板または内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【0009】
(4)
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側および外側に複数の扁平スプリング穴(または扁平スプリング孔)がそれぞれ形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平スプリング穴にそれぞれ設置された扁平スプリング、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板、および内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【0010】
(5)
(1)から(4)の何れかに記載の打ち抜き型を使用した温度制御システムであって、
前記打ち抜き型には前記打ち抜き刃鋼板の温度を検出する温度センサが設けられ、前記温度センサからの信号に基づき、前記誘導加熱用コイルに供給する電力を制御することを特徴とする打ち抜き型の温度制御システム。
【発明の効果】
【0011】
ループ状刃を加熱するとともに、打ち抜き対象物の良好な跳ね出しを行うことで対象物の打ち抜き面を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の説明図であり、(A)は本発明の打ち抜き型を示す平面図、(B)は本発明の打ち抜き型を示す断面図である。
【図2】打ち抜き型が、下定盤に載置され、上定盤と下定盤との間に配置された打ち抜き対象物が打ち抜かれる様子を示す図である。
【図3】扁平スプリングピンの詳細を示す説明図である。
【図4】(A)は無負荷時の内側跳ね出し板の位置を示す図、(B)は負荷が加えられたときの内側跳ね出し板の位置を示す図である。
【図5】本発明の打ち抜き型の温度制御システムの概略を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態の説明図であり、(A)は本発明の打ち抜き型を示す平面図、(B)は本発明の打ち抜き型を示す断面図である。
【図7】図1および図6に示した実施形態において、熱源鉄板の露出部分を断熱ボードで被覆した例を示す図である。
【図8】取り付けビスの位置が規格化されている打ち抜き刃鋼板が交換可能な、他の構成の打ち抜き刃鋼板を使用した打ち抜き型を示す図である。
【図9】扁平スプリングを使用した跳ね出し機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を説明する。
図1(A)は本発明の打ち抜き型1を示す平面図、図1(B)は本発明の打ち抜き型1を示す断面図である。本実施形態では、図2に示すように、打ち抜き型1Aは、下定盤92に載置されており、上定盤91(図では、刃先保護用シートが91が取り付けられている)と下定盤92との間に配置された打ち抜き対象物Oは、上定盤91を下降することで打ち抜かれる。図示しない他の実施形態では、打ち抜き型1Aを、上定盤91に載置して打ち抜きを行うこともできる。
【0014】
図1(A),(B)において打ち抜き型1Aは、打ち抜き刃鋼板11と、跳ね出しユニット12と、熱源鉄板13と、断熱ボード14と、誘導加熱用コイル15とを備えている。
【0015】
打ち抜き刃鋼板11は、ループ状刃111が削り出しにより表面に形成されており、ループ状刃111の内側に複数の扁平ピン穴112が形成されている。
【0016】
跳ね出しユニット12は、扁平ピン穴112にそれぞれ設置された扁平スプリングピン121、および外側輪郭がループ状刃111の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板122からなる。
【0017】
扁平スプリングピン121は、図3に示すように、シリンダ1211と、ピストン1212と、コイルスプリング1213と、押さえ板1214とを備えている。内側跳ね出し板122は、シリンダ1211に固着されており、無負荷時には、図4(A)に示すように、内側跳ね出し板122の表面はループ状刃111の刃先よりも上側に位置している。負荷が加えられたときには、図4(B)に示すように、内側跳ね出し板122の表面はループ状刃111の刃先よりも下側に位置する。
【0018】
熱源鉄板13は、打ち抜き刃鋼板11の裏面側に設けられている。
断熱ボード14は、熱源鉄板13の打ち抜き刃鋼板11に接する側とは反対側の面に設けられ、当該打ち抜き刃鋼板11と接する側にリング状溝が形成されている。
誘導加熱用コイル15は、リング状溝に埋設されている。
誘導加熱用コイルに通電しつつ、上定盤91を下降することで、打ち抜きが行われる。
【0019】
本発明の打ち抜き型の温度制御システムの概略を示す説明図である。図5において、制御装置31は、打ち抜き刃鋼板11に埋設された温度センサ33からの信号を受け取り、フィードバック制御により高周波電源34を駆動している。
【0020】
本発明の他の実施形態を説明する。図6(A)は本発明の打ち抜き型1Bを示す平面図、図6(B)は本発明の打ち抜き型1を示す断面図である。
【0021】
図6(A),(B)において打ち抜き型1Bは、打ち抜き型1Aと同様、打ち抜き刃鋼板11と、跳ね出しユニット12と、熱源鉄板13と、断熱ボード14と、誘導加熱用コイル15とを備えている。
【0022】
打ち抜き刃鋼板11は、ループ状刃111が削り出しにより表面に形成されており、ループ状刃111の内側に複数の扁平ピン穴112が形成され、ループ状刃111の外側に複数の扁平ピン穴113が形成されている。
【0023】
跳ね出しユニット12は、扁平ピン穴112,113にそれぞれ設置された扁平スプリングピン121,123、外側輪郭がループ状刃111の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板122、および内側輪郭がループ状刃111の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板124からなる。
【0024】
熱源鉄板13は、打ち抜き刃鋼板11の裏面側に設けられている。
断熱ボード14は、熱源鉄板13の打ち抜き刃鋼板11に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板13と接する側にリング状溝が形成されている。
誘導加熱用コイル15は、リング状溝に埋設されている。
誘導加熱用コイルに通電しつつ、上定盤91を下降することで、打ち抜きが行われる。
図6の実施形態では、ループ状刃111の外側の打ち抜き品(不要品である抜きカス)を跳ね出すことができる。
【0025】
図1および図6に示した打ち抜き型の実施形態において、熱源鉄板13の露出している部分を断熱体16で被覆することができる。図7(A),(B)は、熱源鉄板13の露出部分を断熱体16で被覆した打ち抜き型1A′,1B′を示す図である。
【0026】
本発明の打ち抜き型では、取り付けビスの位置を合わせておけば、打ち抜き刃鋼板を交換することで、図8に示すような他の構成の打ち抜き刃鋼板を適用することができる。
【0027】
上記の実施形態では、図9に示すように、扁平スプリングピン121,123に代えて、扁平スプリング127を使用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1A,1A′,1B,1B′ 抜き型
11 抜き刃鋼板
12 跳ね出しユニット
13 熱源鉄板
14 断熱ボード
15 誘導加熱用コイル
16 断熱体
91 上定盤
92 下定盤
111 ループ状刃
112,113 扁平ピン穴
121 扁平スプリングピン
122,124 跳ね出し出し板
124 跳ね出し出し板
1211 シリンダ
1212 ピストン
1213 コイルスプリング
1214 押さえ板
O 抜き対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側または外側に複数の扁平ピン穴が形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平ピン穴にそれぞれ設置された扁平スプリングピン、および、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板または内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【請求項2】
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側および外側に複数の扁平ピン穴がそれぞれ形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平ピン穴にそれぞれ設置された扁平スプリングピン、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板、および内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【請求項3】
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側または外側に複数の扁平スプリング穴が形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平スプリング穴にそれぞれ設置された扁平スプリング、および、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板または内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板または内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【請求項4】
削り出しによりループ状刃が表面に形成され、前記ループ状刃の内側および外側に複数の扁平スプリング穴がそれぞれ形成された打ち抜き刃鋼板と、
前記各扁平スプリング穴にそれぞれ設置された扁平スプリング、外側輪郭が前記ループ状刃の内側に沿うように形成された内側跳ね出し板、および内側輪郭が前記ループ状刃の外側に沿うように形成された外側跳ね出し板からなる跳ね出しユニットと、
前記打ち抜き刃鋼板の裏面側に設けられた熱源鉄板と、
前記熱源鉄板の前記打ち抜き刃鋼板に接する側とは反対側の面に設けられ、当該熱源鉄板と接する側にリング状溝が形成された断熱ボードと、
前記リング状溝に埋設された誘導加熱用コイルと、
を備え、前記誘導加熱用コイルに通電しつつ打ち抜きを行うことを特徴とする打ち抜き型。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の打ち抜き型を使用した温度制御システムであって、
前記打ち抜き型には前記打ち抜き刃鋼板の温度を検出する温度センサが設けられ、前記温度センサからの信号に基づき、前記誘導加熱用コイルに供給する電力を制御することを特徴とする打ち抜き型の温度制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−176462(P2012−176462A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41000(P2011−41000)
【出願日】平成23年2月26日(2011.2.26)
【出願人】(598056733)株式会社▲高▼橋型精 (31)
【Fターム(参考)】