説明

打錠機における滑沢剤の外部供給方法及び外部供給機構

【課題】従来の外部滑沢装置は、滑沢剤を所望の部位に対して均一な塗布ができるように図っているが、塗布量を微量とすることについては考慮をしておらず、微量の滑沢剤を精度良く安定に塗布することが困難である。
【解決手段】そこで、本発明では、空気供給部と空気送出部を設けた気密性を有するドラム3に滑沢剤8を入れ、このドラムを回転させながら空気供給部4からドラム内に空気を供給すると共に、ドラム内に飛散した滑沢剤を含む空気を空気送出部5からドラム外に送出することにより、滑沢剤を供給する滑沢剤の外部供給方法と、この方法を実現する滑沢剤の外部供給機構を提案している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の錠剤を成形する打錠機における滑沢剤の外部供給方法及び外部供給機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
打錠機は、臼と、臼に嵌合して上下動可能な上下の杵を用いて、材料の顆粒や粉末を錠剤に加圧成形する機械である。例えば直径8mmの錠剤を成形する場合には、8φの穴を有する臼内の下杵上に所定量の材料を充填した後、上杵を臼の穴に嵌合し、臼の穴内において上下の杵により材料に1t〜2tの圧力を瞬時に加えて錠剤を成形する。この際、材料の一部が杵の部分に付着して成形不良を発生することがあり、これを防ぐためにステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤が使用されている。
【0003】
滑沢剤の使用形態としては、滑沢剤を材料に混入する内部滑沢と、外部滑沢装置を用いて、材料を臼に充填する直前に上杵と下杵に滑沢剤を塗布する外部滑沢があり、後者は前者と比較して様々な利点を有している。
【0004】
このような外部滑沢装置としては、従来から種々のものが提案されている。
例えば特許文献1に記載された装置では、打錠前に、上杵の下端部、下杵の上端部及び臼の穴で囲まれた密閉空間が形成されるように構成し、この密閉空間内に滑沢剤を噴霧することにより、錠剤に混入する滑沢剤の量を削減し、均一な塗布が行えると共に、コンタミ問題や装置の複雑化を招かないように図ったものである。
【0005】
また特許文献2に記載された装置では、臼の上側周縁部から、その上方に位置する上杵の下端部を囲む状態の散布室を設けると共に、この散布室内に滑沢剤を噴霧する滑沢剤噴霧器と、この噴霧器から噴霧される滑沢剤を散布室内で拡散させるための空気脈動波を散布室内に供給する空気脈動波発生手段を備え、これにより、滑沢剤を所望の部位に対して均一な塗布ができるように図ったものである。
【特許文献1】特許第2912614号公報
【特許文献2】特許第2681601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に説明した従来技術では、いずれも滑沢剤を所望の部位に対して均一な塗布ができるように図っているが、塗布量を微量とすることについては考慮をしておらず、微量の滑沢剤を精度良く安定に塗布することが困難である。
本発明では、このような課題を解決し、微量の滑沢剤を精度を維持して塗布可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、まず本発明では、空気供給部と空気送出部を設けた気密性を有するドラムに滑沢材を入れ、このドラムを回転させながら空気供給部からドラム内に空気を供給すると共に、ドラム内に飛散した滑沢剤を含む空気を空気送出部からドラム外に送出することにより、滑沢剤を供給する打錠機における滑沢剤の外部供給方法を提案する。
【0008】
また本発明では、前記方法において、空気供給部からドラム内に供給する空気の供給量を調整することにより、滑沢剤の供給量を調整することを提案する。
【0009】
また本発明では、前記方法において、空気送出部からドラム外に送出した空気に、更に空気を供給することにより、滑沢剤を希釈して供給することを提案する。そして本発明では、この構成において、空気供給部からドラム内に供給する空気の供給量と、空気送出部からドラム外に送出した空気に供給する供給量を調整することにより、滑沢剤の供給量を調整することを提案する。
【0010】
そして本発明では、以上の方法において、ドラムに回転と共に振動を付与することを提案する。
【0011】
次に本発明では、空気供給部と空気送出部を設けると共に、滑沢剤を投入可能に構成した気密性を有するドラムと、このドラムを中心軸の回りに回転させる回転手段を設けた支持装置と、前記空気供給部からドラム内に加圧空気を供給する加圧空気供給系統と、前記空気送出部からドラム内の滑沢剤を含む空気を送出する滑沢剤送出系統とを構成した打錠機における滑沢剤の外部供給機構を提案する。
【0012】
そして本発明では、前記機構において、加圧空気供給系統に流量調整手段を設けることを提案する。
【0013】
また本発明では、前記機構において、滑沢材送出系統に合流させて加圧空気を供給する滑沢剤希釈空気供給系統を構成すること、そしてこの滑沢剤希釈空気供給系統に流量調整手段を設けることを提案する。
【0014】
更に本発明では、前記機構において、滑沢剤送出系統により打錠機に送出した滑沢剤の一部を回収する滑沢剤回収系統を構成すること、そして前記滑沢剤送出系統から前記滑沢剤回収系統に至るバイパス系統を構成することを提案する。
【0015】
また本発明では、前記機構において、空気供給部及び空気送出部は、対向している端板部に、ロータリージョイントにより、ドラムの中心軸上において相対回転可能に設けて、ドラムの回転にかかわらず姿勢を維持可能に構成すること、そして空気供給部は加圧空気の吹出口を下側に向けて維持する構成とし、空気送出部はドラム内空気の吸込口を下側に向けて維持することを提案する。
【0016】
また本発明では、前記機構において、ドラムの空気供給部は、加圧空気の吹出口を下側に向けて維持する第1の空気供給部と、第1の空気供給部から延長させてドラムの内面に近付けた空気供給管に、この内面に向けた加圧空気の吹出口を設けた構成の第2の空気供給部とから構成することを提案する。
【0017】
更に本発明では、前記機構において、ドラム内面には混合促進用羽根を複数突設することを提案する。
【0018】
更に本発明では、前記機構において、支持装置には回転手段に加えて振動付与手段を設けることを提案する。
【0019】
また本発明では、前記機構において、支持装置は、ドラムを傾斜させて支持する構成とすることを提案する。
【0020】
また本発明では、前記機構において、滑沢剤噴霧ノズルは、滑沢剤送出系統から噴霧部に至る空気通路と噴霧部から滑沢剤回収系統に至る空気通路を同軸に配置することを提案する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の滑沢剤の外部供給方法では、ドラム内に入れられた滑沢剤は、ドラムの回転により、上方に持ち上げられては落下する運動を繰り返して飛散し、ドラム内において空気中にミスト状に漂う状態となる。
【0022】
従ってこの状態において、空気供給部からドラム内に空気を供給すると、ドラム内の空気がミスト状の滑沢剤と共に空気送出部を経てドラムの外に送出され、こうして空気中に均一に分散している状態において滑沢剤を供給することができる。
【0023】
ドラムに回転と共に振動を付与することにより、付与された振動のエネルギーにより滑沢剤の飛散する運動が効果的に行われ、空気中に更に均一に分散することになる。
【0024】
このように空気中に均一に分散している状態において滑沢剤を供給するため、滑沢剤の微量塗布が可能となり、また塗布量を広い範囲で多段階的に調整することが可能となる。
【0025】
また、空気送出部からドラム外に送出した空気に、更に空気を供給することにより滑沢剤を希釈することができ、従って滑沢剤の更に微量な供給が可能となる。
【0026】
そして空気供給部からドラム内に供給する空気の供給量や、ドラム外に送出した空気に供給する空気量を調整することにより、滑沢剤の供給量を調整することができる。
【0027】
次に本発明の滑沢剤の外部供給機構では、加圧空気供給系統から空気供給部を経てドラム内に空気を供給すると、ドラム内の空気がミスト状の滑沢剤と共に滑沢剤送出系統を流れて打錠機の滑沢剤噴霧ノズルに至り、噴霧部から上杵と下杵方向に噴出して、滑沢剤が塗布される。
【0028】
更に本発明の滑沢剤の外部供給機構では、加圧空気源から滑沢材送出系統に合流させた滑沢剤希釈空気供給系統を構成して滑沢剤を希釈することができ、滑沢剤の更に微量な供給が可能となる。
【0029】
更に、滑沢剤送出系統を経て打錠機、即ちその滑沢剤噴霧ノズルに至った空気の一部は、ミスト状の滑沢剤と共に滑沢剤回収系統を流れて回収タンク等に回収することができる。
【0030】
このように本発明の滑沢剤の外部供給機構では、ドラム内に投入された滑沢剤をミスト状に漂わせ、このミスト状の滑沢剤を加圧空気により搬送して打錠機の滑沢剤噴霧ノズルにおいて噴霧するので、微量の滑沢剤を安定にコントロールして上杵や下杵等に塗布することができる。
【0031】
また本発明の滑沢剤の外部供給機構では、打錠機の滑沢剤噴霧ノズルに空気により搬送したミスト状の滑沢剤の一部を、滑沢剤回収系統により回収する構成とすることにより、滑沢剤噴霧ノズルにおいて噴霧する滑沢剤の量のコントロールに利用することができると共に、滑沢剤の効率的な使用を図ることができる。
【0032】
本発明の滑沢剤の外部供給機構において、滑沢剤送出系統から滑沢剤回収系統に至るバイパス系統を設ければ、打錠機の成型サイクルによる滑沢剤供給停止時も、連続で滑沢剤を含む空気を送出することができるため、均一化を図ることが出来る。
【0033】
本発明の滑沢剤の外部供給機構において、ドラムは、支持装置とは分離させて構成することにより、取り扱いが容易となり、このドラムは、支持部材により、平行に配置して同方向に回転駆動可能に支持した回転軸に設けたドラム駆動用の支持ローラ上に載置して回転させることができ、そしてこの支持部材を振動装置を介して基台上に支持することにより、回転と同時に振動を付与することができる。
【0034】
本発明の滑沢剤の外部供給機構において、ドラムの空気供給部及び空気送出部は、対向している端板部に、ロータリージョイントにより、ドラムの中心軸上において相対回転可能に設けて、ドラムの回転にかかわらず姿勢を維持可能に構成することにより、空気供給部と空気送出部を常時適切な姿勢に維持することができる。
【0035】
空気供給部は、加圧空気の吹出口を下側に向けて維持することにより、ドラムの下部に溜まっている滑沢剤を吹き上げることができ、従って飛散による空気との混合がより良好に行える。また空気送出部は、ドラム内空気の吸込口を下側に向けて維持することにより、送出する空気中の滑沢剤の分散の均一化を図ることができる。
【0036】
また空気供給部は、加圧空気の吹出口を下側に向けて維持する第1の空気供給部と、第1の空気供給部から延長させてドラムの内面に近付けた空気供給管に、この内面に向けた加圧空気の吹出口を設けた構成の第2の空気供給部とから構成すれば、第2の空気供給部から加圧空気を噴出してドラム内面に付着した滑沢剤を落とすことができ、この内面洗浄動作を、通常運転中に行うことができる。
【0037】
また本発明の滑沢剤の外部供給機構において、ドラム内面に混合促進用羽根を複数突設することにより、滑沢剤の飛散を効果的に行って空気中の滑沢剤の分散の均一化を図ることができる。複数の混合促進用羽根は、定ピッチで位置と角度をずらした配置とすることにより、空気中の滑沢剤の分散の均一化を図ることができる。
【0038】
本発明において、ドラムは、支持装置により傾斜させて支持する構成とすれば、投入した滑沢剤の量が少量であっても、これを傾斜した下部に集めた状態で回転と振動を付与できるので、ミスト状化を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に本発明の最良の形態を添付図面を参照して説明する。
まず、図1は本発明に係る滑沢剤の外部供給機構の全体構成を示す模式的系統図である。また図2は滑沢剤の外部供給機構の本体の構成を示す斜視図、図3は図2の要部拡大図、図4は図2の要部を図3とは異なる方向から見た要部拡大図、図5はドラムの一部断面側面図、図6、図7は図5の夫々A−A線、B−B線断面端面図、図8はドラムの斜視図、図9はドラムに滑沢剤を投入する前の状態を示す斜視図である。
【0040】
図1において、符号1は滑沢剤の外部供給機構の本体を示すもので、また符号2が示す二点鎖線の枠は打錠機を示すものである。
まず滑沢剤の外部供給機構の本体1において、符号3は円筒ドラムであり、このドラム3は気密性を有し、後述するように滑沢剤の投入部を構成すると共に、空気供給部4と空気送出部5を構成している。
【0041】
図2〜図9に示されるようにドラム3は、概ね、円筒部6と端板部7とから構成され、空気送出部5側の端板部7を取り外し可能に構成して、これにより滑沢剤の投入部を構成している。即ち、このドラム3は、図9に示すように空気送出部5側の端板部7の一部を取り外して円筒部6内に所定量の滑沢剤8を投入し、その後、端板部7を蝶ねじ9で締め付ける構成である。尚、ドラム3の更に詳細な構成は後述する。
【0042】
符号10は基台であり、基台10の上側には、振動装置11を設置しており、この振動装置11は上述した振動付与手段に相当する。また符号12は振動装置11の上部部材13によって支持される支持部材であり、この支持部材12により一対の回転軸14を平行に配置してギヤ付きモータ15により同方向に回転駆動可能に支持している。図に示されるように一対の回転軸14は傾斜状態で支持されている。そして一対の回転軸14には、前記ドラム3の端板部7に対応して駆動用の支持ローラ16が設けられている。これらの要素が上述した支持装置に相当する。尚、前記振動装置11は基台側部材17との間に防振ゴム18を介在させている。更に基台の下側には滑沢剤回収タンク19とブロワ20を設置している。
【0043】
次に打錠機2側を説明すると、符号21は臼、22、23は、夫々臼21の穴24に嵌合可能な下杵、上杵であり、そして符号25は、錠剤の材料を臼21に充填する直前の上杵23と下杵22の間に配置して、滑沢剤8を上杵23と下杵22方向に噴霧する滑沢剤噴霧ノズルである。
【0044】
滑沢剤噴霧ノズル25は二重管構成で、内管26によって構成される中心側の第1の空気通路27の周囲に、内管26と外管28間に構成される第2の空気通路29が同軸に配置されており、一端側には第1の空気通路27の空気流の方向を外方向に転換させる連通部30を設け、外管28には、上杵23と下杵22に対応させてノズル孔31を設けている。一方、外管28の他端側には第2の空気通路29と連通する空気導出部32を構成している。
【0045】
以上の構成要素において、この実施の形態では、加圧空気源33から流量調整手段34を経てドラム3の空気供給部4に至る加圧空気供給系統Aと、ドラム3の空気送出部5から滑沢剤噴霧ノズル25に至る滑沢剤送出系統Bと、滑沢剤噴霧ノズル25の空気導出部32から回収タンク19に至り、この回収タンク19を経てブロワ20に至る滑沢剤回収系統Cとを構成している。
【0046】
またこの実施の形態では、図1に示されるように、上述した構成に加えて、滑沢剤送出系統Bから滑沢剤回収系統Cに至るバイパス系統Dを構成すると共に、加圧空気源33から流量調整手段34を経て滑沢材送出系統Bに合流させた滑沢剤希釈空気供給系統Eを構成している。
【0047】
尚、この実施の形態においては、流量調整手段34は、図2に示されるように、前記加圧空気供給系統Aと、滑沢剤希釈空気供給系統Eの夫々の系統の空気流量を表示する流量計35a,35bと夫々の流量調整つまみ36a,36bを設けている。勿論、流量調整手段34は適宜に構成することができる。
【0048】
次にドラム3の実施の形態の更に詳細な構成を説明する。まず、空気供給部4と空気送出部5は夫々ロータリージョイント37により支持されて、ドラム3の中心軸上において相対回転可能であり、こうしてドラム3の回転にかかわらず所定の姿勢が維持可能に構成されている。
【0049】
そして空気供給部4は、加圧空気の吹出口38を下側に向けて維持する第1の空気供給部4aと、第1の空気供給部4aから延長させてドラム3の内面に近付けた空気供給管39に、この内面に向けた加圧空気の吹出口40を設けた構成の、ドラム内面洗浄用の第2の空気供給部4bとから構成し、第1の空気供給部4aの加圧空気の吹出口38を下側に向けて維持している際に、空気供給管39を上側に維持する構成としている。
【0050】
そして第1の空気供給部4aの上流側には、入口ポート41を2つ設けた合流用部材42を設けており、一方側の入口ポート41aに流量調整手段34に連なる空気配管(図示省略)を接続すると共に、他の入口ポート41bには加圧空気源33に連なる空気配管(図示省略)を接続している。
【0051】
一方、空気送出部5は、ドラム内空気の吸込口44を下側に向けて維持することにより、送出する空気中の滑沢剤の分散の均一化を図っている。更に、空気送出部5の下流側には、合流用部材45を設けており、その合流用ポート46に流量調整手段34に連なる空気配管(図示省略)を接続して、滑沢剤希釈空気供給系統Eを構成している。
【0052】
更にドラム3の円筒部6の内面には、混合促進用羽根47を複数突設することにより、滑沢剤の飛散を効果的に行って空気中の滑沢剤の分散の均一化を図っている。複数の混合促進用羽根47は、定ピッチで位置と角度をずらした配置として、空気中の滑沢剤の分散の均一化を図っている。
【0053】
以上の構成において、ドラム3の空気送出部5側の端板部7の一部を取り外して円筒部6内に所定量の滑沢剤8を投入した後、端板部7を蝶ねじ9で締め付け、この状態において、端板部7を、支持装置を構成する一対の回転軸14の支持ローラ16上に載置する。この場合、ドラム3は空気送出部5が傾斜の上側に位置するようにする。
【0054】
この状態において、空気送出部5を支持するロータリージョイント37に設けた合流用部材45に滑沢剤送出系統Bを構成するホースを接続すると共に、空気供給部4を支持するロータリージョイント37に設けた合流用部材42に加圧空気供給系統Aを構成するホース等を接続し、この状態においてギヤ付きモータ15により回転軸14を回転駆動すると共に振動装置11を動作させる。
【0055】
この運転状態においては、ドラム3内に投入された滑沢剤8は、回転軸14によるドラム3の回転により、上方に持ち上げられては落下する運動を繰り返すと同時に、振動装置11により付与された振動のエネルギーにより飛散する運動を繰り返すことにより、ドラム3内において、空気中にミスト状に漂う状態となる。この際、この実施の形態ではドラム3内面に混合促進用羽根47を複数突設しているため、滑沢剤8の飛散を促進することができる。
【0056】
従って、この状態において、適宜の装置により調湿した乾燥空気を、加圧空気供給系統Aから空気供給部4を経てドラム3内に供給すると、ドラム3内の空気はミスト状の滑沢剤8と共に滑沢剤送出系統Bのホースを流れて打錠機2の滑沢剤噴霧ノズル25に至り、第1の空気通路27から連通部30を経てノズル孔31から噴出して、上杵23と下杵24に噴霧することができ、こうしてこれらに滑沢剤8が塗布される。
【0057】
一方、このように滑沢剤送出系統Bを経て滑沢剤噴霧ノズル25に至り、第1の空気通路27から連通部30を経て噴出した空気の一部は、前記ブロワ20に吸引されて、ミスト状の滑沢剤と共に第2の空気通路29を流れ、空気導出部32から、滑沢剤回収系統Cを構成するホースを流れて回収タンク19に至る。そして、この回収タンク19に滑沢剤8が回収され、空気はブロワ20により排気される。
【0058】
このように本発明の滑沢剤の外部供給機構では、ドラム3内に投入された滑沢剤8をミスト状に漂わせ、このミスト状の滑沢剤8を加圧空気により搬送して打錠機2の滑沢剤噴霧ノズル25において噴霧するので、微量の滑沢剤を安定にコントロールして上杵23や下杵24等に塗布することができる。
【0059】
この実施の形態では、上杵23や下杵24等に塗布される滑沢剤8の量を直接的に測定することはできないが、各系統A、B、C、D、Eを流れる空気流量により、滑沢剤噴霧ノズル25から噴霧される空気量を定量的に測定することが可能であり、またドラム3内におけるミスト状の滑沢剤8の濃度は、ドラム3の回転速度や振動装置11による振動条件等に対しての対応関係を、所定時間毎のドラム3内の滑沢剤8の残量、回収タンク19への滑沢剤8の回収量の測定等を含む、予めの実験によって求めることにより間接的に測定することが可能であるため、これらを用いて塗布量を制御することが可能である。
【0060】
また本発明の滑沢剤の外部供給機構では、上述したとおり滑沢剤噴霧ノズルに空気により搬送したミスト状の滑沢剤8の一部を、滑沢剤回収系統Cにより回収タンク19に回収するので、滑沢剤の効率的な使用を図ることができる。
【0061】
また、この実施の形態では、滑沢剤送出系統Bから滑沢剤回収系統Cに至るバイパス系統Dを設けているので、打錠機2の成型サイクルによる滑沢剤供給停止時も、連続で滑沢剤を含む空気を送出することができるため、均一化を図ることが出来る。
【0062】
また、この実施の形態では、必要に応じて滑沢剤希釈空気供給系統Eを動作させることにより、滑沢剤送出系統Bを経て送出される滑沢剤を希釈することができ、滑沢剤の更に微量な供給が可能となる。
【0063】
また、この実施の形態では、ドラム3の空気供給部4及び空気送出部5は、対向している端板部7に、ロータリージョイント37により、ドラム3の中心軸上において相対回転可能に設けて、ドラム3の回転にかかわらず姿勢を維持可能に構成しているので、空気供給部4と空気送出部5を常時適切な姿勢に維持することができる。
【0064】
即ち、空気供給部4は、加圧空気の吹出口38を下側に向けて維持することにより、ドラム3の下部に溜まっている滑沢剤8を吹き上げることができ、従って飛散による空気との混合がより良好に行える。また空気送出部5は、ドラム3内空気の吸込口44を下側に向けて維持することにより、送出する空気中の滑沢剤8の分散の均一化を図ることができる。
【0065】
更に、この実施の形態では、空気供給部4は、加圧空気の吹出口38を下側に向けて維持する第1の空気供給部4aと、第1の空気供給部4aから延長させた空気供給管39をドラム3の円筒部6の上部内面に近付けて維持し、この空気供給管39に加圧空気の吹出口40を内面に向けた構成としたドラム内面洗浄用の第2の空気供給部4bとから構成しているので、第2の空気供給部4bから加圧空気を噴出してドラム3内面に付着した滑沢剤8を落とすことができ、この内面洗浄動作を、通常運転中に行うこともできる。
【0066】
更に、この実施の形態では、ドラム3は、支持装置とは分離させた構成であるので、取り扱いが容易である。
【0067】
また、この実施の形態では、ドラム3は支持装置により傾斜させて支持する構成としているので、投入した滑沢剤8の量が少量であっても、これを傾斜した下部に集めた状態で回転と振動を付与できるので、ミスト状化を効率的に行うことができる。
【実施例1】
【0068】
図10及び図11は本発明の滑沢剤の外部供給機構に関し、下記の条件の下で噴霧試験を行った結果を示すものである。尚、この試験においては、滑沢剤が静電気により凝集するのを防ぐための除電装置を動作させている。

試験条件
滑沢剤:ステアリン酸マグネシウム(粒径10μ)
滑沢剤投入量:170.0g
加圧空気供給系統Aの空気圧力:0.030Mpa
加圧空気流量:2.0L/min
ドラム回転数:6.0rpm
振動周波数:125.5Hz(V),55.4Hz(F)
【0069】
以上の条件において試験を行った結果は、図10、図11に示されるように、次の通りであり、本発明の滑沢剤の外部供給機構を用いることにより、10g/hour程度の微少量の噴霧のコントロールを安定的に行えることが分かる。
平均噴霧量: 8.93 g/hour
最大噴霧量:11.65 g/hour
最小噴霧量: 6.68 g/hour
差: 4.96 g/hour
標準偏差: 1.29
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は以上の通りであるので、次のような利用可能性がある。
1.滑沢剤の微少量の噴霧のコントロールを安定的に行えることから、医薬品等の錠剤に対しての使用量を極めて少なくすることができ、医薬品においては、医薬品製造指示図、記録書での管理対象外とすることができる。
2.滑沢剤により杵、臼間の摺動性を向上させることができるため、滑沢剤を潤滑剤と位置付けて、摺動部位に常時噴霧するという使用態様の可能性を考えることができる。
3.2を行うことにより、杵、臼の消耗を抑制し、部品の寿命の延長が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る滑沢剤の外部供給機構の全体構成を示す模式的系統図である。
【図2】本発明の滑沢剤の外部供給機構の本体の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図2の要部を図3とは異なる方向から見た要部拡大図である。
【図5】ドラムの一部断面側面図である。
【図6】図5のA−A線断面端面図である。
【図7】図5のB−B線断面端面図である。
【図8】本発明におけるドラムの斜視図である。
【図9】図8のドラムにおいて滑沢剤を投入する前の状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の試験結果を示すものである。
【図11】本発明の試験結果を示すものである。
【符号の説明】
【0072】
A 加圧空気供給系統
B 滑沢剤送出系統
C 滑沢剤回収系統
D バイパス系統
E 滑沢剤希釈空気供給系統
1 滑沢剤の外部供給機構の本体
2 打錠機
3 ドラム
4 空気供給部
5 空気送出部
6 円筒部
7 端板部
8 滑沢剤
9 蝶ねじ
10 基台
11 振動装置
12 支持部材
13 上部部材
14 回転軸
15 ギヤ付きモータ
16 ローラ
17 基台側部材
18 防振ゴム
19 滑沢剤回収タンク
20 ブロワ
21 臼
22 下杵
23 上杵
24 穴
25 滑沢剤噴霧ノズル
26 内管
27 第1の空気通路
28 外管
29 第2の空気通路
30 連通部
31 ノズル孔
32 空気導出部
33 加圧空気源
34 流量調整手段
35a,35b 流量計
36a,36b 流量調整つまみ
37 ロータリージョイント
38,40 吹出口
39 空気供給管
41a,41b 入力ポート
42 合流用部材
44 吸込口
45 合流用部材
46 合流用ポート
47 混合促進用羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給部と空気送出部を設けた気密性を有するドラムに滑沢剤を入れ、このドラムを回転させながら空気供給部からドラム内に空気を供給すると共に、ドラム内に飛散した滑沢剤を含む空気を空気送出部からドラム外に送出することにより、滑沢剤を供給することを特徴とする打錠機における滑沢剤の外部供給方法。
【請求項2】
空気供給部からドラム内に供給する空気の供給量を調整することにより、滑沢剤の供給量を調整することを特徴とする請求項1に記載の滑沢剤の外部供給方法。
【請求項3】
空気送出部からドラム外に送出した空気に、更に空気を供給することにより、滑沢剤を希釈して供給することを特徴とする請求項1に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給方法。
【請求項4】
空気供給部からドラム内に供給する空気の供給量と、空気送出部からドラム外に送出した空気に供給する供給量を調整することにより、滑沢剤の供給量を調整することを特徴とする請求項3に記載の滑沢剤の外部供給方法。
【請求項5】
ドラムに回転と共に振動を付与することを特徴とする請求項1〜4までのいずれか1項に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給方法。
【請求項6】
空気供給部と空気送出部を設けると共に、滑沢剤を投入可能に構成した気密性を有するドラムと、このドラムを中心軸の回りに回転させる回転手段を設けた支持装置と、前記空気供給部からドラム内に加圧空気を供給する加圧空気供給系統と、前記空気送出部からドラム内の滑沢剤を含む空気を送出する滑沢剤送出系統とを構成したことを特徴とする打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項7】
加圧空気供給系統に流量調整手段を設けたことを特徴とする請求項6に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項8】
滑沢材送出系統に合流させて加圧空気を供給する滑沢剤希釈空気供給系統を構成したことを特徴とする請求項6に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項9】
滑沢剤希釈空気供給系統に流量調整手段を設けたことを特徴とする請求項8に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項10】
滑沢剤送出系統により打錠機に送出した滑沢剤の一部を回収する滑沢剤回収系統を構成したことを特徴とする請求項6〜9までのいずれか1項に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項11】
滑沢剤送出系統から滑沢剤回収系統に至るバイパス系統を構成したことを特徴とする請求項10に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項12】
空気供給部及び空気送出部は、対向している端板部に、ロータリージョイントにより、ドラムの中心軸上において相対回転可能に設けて、ドラムの回転にかかわらず姿勢を維持可能に構成したことを特徴とする請求項6〜11までのいずれか1項に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項13】
空気供給部は、加圧空気の吹出口を下側に向けて維持する構成としたことを特徴とする請求項12に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項14】
空気供給部は、加圧空気の吹出口を下側に向けて維持する第1の空気供給部と、第1の空気供給部から延長させてドラムの内面に近付けた空気供給管に、この内面に向けた加圧空気の吹出口を設けた構成の第2の空気供給部とから構成したことを特徴とする請求項12に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項15】
空気送出部は、ドラム内空気の吸込口を下側に向けて維持することを特徴とする請求項12に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構
【請求項16】
ドラム内面には混合促進用羽根を複数突設したことを特徴とする請求項6〜15までのいずれか1項に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項17】
支持装置には回転手段に加えて振動付与手段を設けたことを特徴とする請求項6〜16までのいずれか1項に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。
【請求項18】
支持装置は、ドラムを傾斜させて支持する構成としたことを特徴とする請求項6〜17までのいずれか1項に記載の打錠機における滑沢剤の外部供給機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−162(P2009−162A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161471(P2007−161471)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000208145)大洋薬品工業株式会社 (29)
【出願人】(000203461)村田精工株式会社 (6)
【出願人】(507204796)ウィンクレル商会株式会社 (1)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】