説明

技術的システムの運転方法

技術的システムの運転のための本発明に従う方法においては、時間間隔の間における運転パラメータの検出が行われ、その際この運転パラメータの時間的挙動から人口知能の方法により技術的システムの運転モード及び機能モード又はそのいずれか一方が確定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技術的システム、特に発電設備の運転方法に関する。
【0002】
最近の工業設備は、通例互いにきわめて複雑に相互作用する多数の設備部分を有する。
【0003】
設備を運転し得るためには、通常少なくとも、重要な設備部分において運転パラメータが知覚的に検出され、自動化システム及びプロセス制御システム又はそのいずれか一方に導かれる。これらの運転パラメータとしては、例えば、設備部分を所望のように運転するため操作員によって調整される入力パラメータが関係し得る。例えばガスタービンにおいては、ガスタービンの所望の出力を呼び出すために、燃焼室への燃料及び空気の供給が調整されなければならない。この出力は同様にガスタービンの運転パラメータであり、出力パラメータとして把握され得る。
【0004】
ガスタービンにはさらに発電機及び多数の他の補助駆動部が結び付けられている。その際各設備部分は多数の運転パラメータを有し、それらの運転パラメータは設備の操作員によって調整され、またそのような調整の結果として出力パラメータとして生じる。
【0005】
運転パラメータの検出からだけでは、技術的システムの運転のための逆推論及び措置は限られた程度にしか導き出し得ないことは容易に明らかである。このことは、運転パラメータの目下の値が限界値を超えて例えば設備部分の緊急停止の際に、たかだか部分範囲で可能である。
【0006】
主要な難点は、運転パラメータについての大量のデータ中に、設備の運転に全体として正の影響を与え得るための関係を識別することにある。
【0007】
従来技術における解決の最初の試みは、設備部分間または設備部分内における相互作用を理解するため、運転パラメータのどの変化が他の運転パラメータのどの変化に導くかを見つけ出すため、技術的システムをモデルによってシミュレーションすることにある。
【0008】
しかしながらこのやり方は、非常に費用がかかりまた欠陥が多い。何故なら、複雑な技術システムのモデル化は困難であり、また限られた精度でのみ可能であるからである。
【0009】
それ故本発明は、技術的システムを運転するための方法であって、技術的システムの運転モードが簡単に確定される方法を提示することを課題とするものである。
【0010】
この課題は本発明に従えば、技術的システムの運転方法であって、自由に選択可能な時間間隔の間において、少なくとも1つの設備部分の運転パラメータが検出され、これらの運転パラメータの時間的挙動から、ニューラルネットワーク、ファジィ論理、結合されたニューロ・ファジィ法、遺伝的アルゴリズムの群からの少なくとも1つの方法を含む人工知能の方法を用いて、技術的システムの運転モード及び機能モード又はそのいずれか一方が確定されることによって解決される。
【0011】
その際運転パラメータは、例えば振動解析のような例として状態監視システムから、測定量または導出された量として確定され自由に使用されるような量をも含む。
【0012】
その際本発明は、ある時間間隔の間に検出され保存される運転パラメータの時間的挙動から、技術的システムの目下の運転モードを、運転パラメータ相互の関係の詳細な知識を前もって必要とすることなしに逆推理するという考えから出発する。特にこのメッセージを行い得るために技術的システムのモデルが存在する必要はない。
【0013】
その際運転パラメータの時間的挙動は、例えば、現在の及び後の(又は歴史的な)時点に或る数の運転パラメータがそれぞれ同時に検出され、瞬間記録/指紋(顕著な特徴)ごとにまとめられそして比較され得ることによって検出される。
【0014】
人工知能の既知の方法を使用して、本発明方法において行われるように、少なくとも観察期間中に、その際生じる運転パラメータ及び従ってその時間的挙動が検出される場合には、ある数の運転パラメータの変化の他の運転パラメータの挙動への影響を確認し定量化することが可能である。
【0015】
例えば検出時間間隔中に特定の運転パラメータが変化し(例えば直線的に)、特定の他の運転パラメータがそれにしたがって同様に変化する(例えば2次の)場合には、この関係は人工知能の方法を用いて、前もって例えばモデル式が存在するか確定される必要なく見つけ出され定量化される。
【0016】
人工知能の既知の方法は、運転パラメータの時間的挙動を解析することによって、運転パラメータのデータ量内で運転パラメータ間の関係を学習することができる。その際確認される関係及びその定量化は、運転パラメータの調べるべきデータ量が多ければ多いほど良好である。特定の運転パラメータ間の関係が同定され定量化されると同時に、人工知能の方法はさらに、運転パラメータの既に検出されたデータセットとしてのコピー(複写)がまだ存在しないような運転パラメータ及びその変化についても、それと関係する他の運転パラメータのどの挙動を考慮すべきかを示すことができる。
【0017】
従って本発明に従う方法によって、技術的システムの運転モード及び機能モード又はそのいずれか一方を、特にシステムの技術的機能のモデル化が既知であることを要せずに簡単に確定することができる。その際運転モード及び機能モード又はそのいずれか一方の確定は、運転パラメータの挙動及びその相互の関係の記述された解析によって行われる。時間間隔中に検出された運転パラメータは、設備部分又は設備の瞬間又は現状記録又は特徴付けとも解され得る(設備部分又は設備の「指紋」)。指紋はその際古典的モデルの代わりとなり、本発明に従う方法によれば、運転パラメータの挙動から技術的システムの運転モード及び機能モード又はそのいずれか一方が人工知能の方法を用いて推論される。そのため例えば発電設備においては、各運転モードを識別し同定するのを学習するため、起動及び停止並びに正常運転に対する指紋が記録され得る。
【0018】
本発明の有利な実施形態においては、少なくとも2つの時間的に離れ離れの時間間隔中における運転パラメータが検出され、その際それぞれデータセットとして検出された運転パラメータが互いに比較され、ニューラルネットワーク、ファジィ論理、結合されたニューロ・ファジィ法、遺伝的アルゴリズムの群の少なくとも1つの方法を含む人工知能の方法により、技術的システムの所望の運転モードを達成するため運転パラメータがどのように調整されるべきかの予測が確定される。
【0019】
この実施形態においては少なくとも第2の指紋の比較が行われ、その際例えばその比較において最も強く変化する運転パラメータがねらいを定めて調べられる。この比較はその際、特定の運転パラメータのどの変化が特定の他の運転パラメータにねらいを定めて影響を与えるためには必要であるかを確認するのに役立つ。
【0020】
発電設備は例えば何日間も通常運転を行っていても、突然に出力が低下することがある。技術的システムの経時的事象の比較は、何が変化したかを示し(例えば外気圧に対する運転パラメータが著しい低下を示す)、また出力を少なくとも保持するためにはどのようにそれに反対行動をとるべきかを示す(例えば燃焼空気圧に対する運転パラメータは同様に低下を示す)。予測は、選択された運転パラメータのねらいを定めた調整によって発電設備の所望の運転モードが確定されることによって確定される。予測はその際、好ましくは所望の運転モードを達成するために変化すべき運転パラメータ及びそのデータセットとしての調整値の指示を含む。
【0021】
比較は、その際構造の等しいしかし互いに異なる設備の指紋の比較及び単に類似する設備の指紋の比較をも含み得る。
【0022】
その際予測に加えて、運転パラメータの調整が予測に相応して所望の運転モードに導く蓋然性をあらわす信頼度が確定されるのが特に有利である。例えば100%の信頼度は、予測に従う運転パラメータの調整が技術的システムの所望の運転モードに導くことが最も大きい確かさでもって想定され得ることを意味する。そのような高い信頼度は、技術的システムの目下の所望の運転モード及び場合によって生じ得る境界条件(例えば環境ファクター)が過去既に実現されたないし発生している場合、またその際使用された運転パラメータに対する調整値が指紋として既知である場合に生ずる。
【0023】
この場合には従って最も高い確かさでもって、技術的システムが現在も再び所望の運転モードを達成し得ると考えることができる。
【0024】
例えば60%の信頼度は、技術的システムの目下の所望の運転モードに比較して、この所望の運転モードに正確に相応する経時的運転モードが指紋としては存在しないことを意味する。しかしながら類似の運転モードは存在したものであり、その結果たしかに予測によって示された運転パラメータに対する調整値が所望の運転モードを達成することに最大の確かさをもって由来するものではないが、いずれにせよそのために良好なチャンスが存在する。
【0025】
例えば0%近傍の信頼度は、技術的システムの比較可能な所望の運転モードがこれまで提示されなかったものであり、従って予測において確定された運転パラメータに対する調整値が所望の運転モードを達成することに関して大きな不確実さを負っていることを示す。
【0026】
技術的システムの運転モードは運転パラメータの相関解析を用いて確定されるのが有利であり、その際入力パラメータに相応する運転パラメータの変化が出力パラメータに相応する運転パラメータに及ぼす影響が確定される。
【0027】
この実施形態においては、入力パラメータの変化のそれに関係する出力パラメータへの影響がねらいを定めて見つけ出され定量化される。
【0028】
入力パラメータはその際通常は運転パラメータであり、その値は技術的システムの操作員によって調整されなければならないか、又は境界条件、例えば環境の及ぼす影響によって規定される。
【0029】
出力パラメータは、入力パラメータの調整の結果生じ、従って入力パラメータに関係するような運転パラメータである。その際相関解析がその関係の種類を調べ、この関係を定量化する。
【0030】
理想的には、技術的システムにおいてすべての本質的な設備部分の運転パラメータが検出され、その結果本発明に従う方法を用いて全技術的システムの運転モードが簡単な方法で確定され調整可能である。即ち本発明に従う方法はその際制御方式を形成することができ、この制御方式を用いて1つ又は複数の設備部分並びに全技術的システムが閉じた制御回路によって制御される。本発明に従う方法においては運転パラメータのデータバンクのコピーが発生せしめられる。このコピーは技術的システムの操作員に技術的システムの運転パラメータと運転モードとの間の関係を導き出し、固有の知識を検出されたデータで調整し、ねらいを定めて技術的システムを所望の運転モードに制御することを可能にする。どの認識が1つの運転モードから他の運転モードへ移され得るかを同定するため、より多くの経時的事象が互いに比較されるのが有利である。対応する結果及び予測はデータセットとして保存し必要に応じいつでも呼び出すことが容易に可能である。
【0031】
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。
【0032】
図1には処理システム1が示され、このシステムは本発明に従う方法を実施するための処理ユニット10を含む。処理ユニット10には技術的システムの運転パラメータ5が導かれ、この運転パラメータは入力パラメータ15と出力パラメータ20とを含む。
【0033】
タイマ25は、運転パラメータ5が検出されるべき関連する時間間隔を選択するために用いられる。
【0034】
或る時間間隔の間における運転パラメータ5の時間的挙動は、ニューラルネットワーク30、ニューロ・ファジィ機能ユニット35、1つ又は複数の遺伝的アルゴリズム40、又はそれらの任意の組み合わせによって調べられ、それから入力パラメータ15の少なくとも一部と出力パラメータ20の少なくとも一部との間の関係が見つけ出され定量化される。この関係の知識は最後にデータセット50の準備を可能にし、このデータセットは技術的システムの設備部分の所望の運転モードを達成するため運転パラメータ5の少なくとも一部に対する設定値を含む。このデータセット50は、技術的システムの所望の運転モードを実行するために特定の運転パラメータがどのように調整されるべきかという予測をあらわす。加えて、処理ユニット10により信頼度55が出力され、この信頼度はデータセット50のデータによる運転パラメータの調整が所望の運転モードに導く蓋然性をあらわす。
【0035】
処理ユニット10内において入力パラメータ15と出力パラメータ20との間の相関解析が行われ、その結果技術的システムの運転モード及び機能モードが、入力パラメータ15並びにそれと関係する出力パラメータ20の時間的挙動の知識に基づいて可能であり、また過去においてはまだ対応する入力パラメータ15と出力パラメータ20とを有する運転パラメータ5が検出されなかった技術的システムの所望の運転モードに対するデータセット50が供給され得る。処理ユニット10はその限りで補間能力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を実施するための処理システムの説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 処理システム
5 運転パラメータ
10 処理ユニット
15 入力パラメータ
20 出力パラメータ
25 タイマ
30 ニューラルネットワーク
35 ニューロ・ファジィ機能ユニット
40 遺伝的アルゴリズム
50 データセット
55 信頼度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由に選択可能な時間間隔の間において少なくとも1つの設備部分の運転パラメータが検出され、この運転パラメータの時間的挙動から、ニューロネットワーク、ファジィ論理、結合されたニューロ・ファジィ法、遺伝的アルゴリズムの群の少なくとも1つの方法を含む人工知能の方法により、技術的システムの運転モード及び機能モード又はそのいずれか一方が確定されることを特徴とする技術的システムの運転方法。
【請求項2】
運転パラメータが少なくとも2つの時間的に離れ離れの時間間隔中において検出され、その際それぞれデータセットとして検出された運転パラメータが互いに比較され、ニューロネットワーク、ファジィ論理、結合されたニューロ・ファジィ法、遺伝的アルゴリズムの群の少なくとも1つの方法を含む人工知能の方法により、技術的システムの所望の運転モードを達成するため、運転パラメータの少なくとも一部がどのように調整されるべきかという予測が確定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
予測に加えて、運転パラメータの調整が予測に相応して所望の運転モードに導く蓋然性をあらわす信頼度が確定されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
技術的システムの運転モードが運転パラメータの相関解析を使用して確定され、その際入力パラメータに相応する運転パラメータの変化の出力パラメータに相応する運転パラメータに対する影響が確定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。

【公表番号】特表2007−510187(P2007−510187A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510414(P2005−510414)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003584
【国際公開番号】WO2005/045535
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】