説明

抄紙方法

【課題】 紙及び板紙の製紙工程において、地合いを損なうことなく、歩留の向上、濾水性、搾水性の改善及び生産性の向上を図る抄紙方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 抄紙工程において、抄紙前の製紙原料中に一段目としてカチオン性あるいは両性アクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤を添加、一つ以上のせん断工程を経た後、二段目として前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体を添加することにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙及び板紙の製紙工程において、地合い性を損なうことなく、歩留の向上、濾水性、搾水性の改善、紙質の向上を達成できる抄紙方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗工原紙、PPC用紙、上質紙、板紙及び新聞用紙等の抄紙工程において、微細繊維、填料等の歩留率向上を図るために、種々の歩留剤システムが用いられている。例えば、せん断ステップの前に高分子量水溶性カチオン性ポリマーを加え、当該せん断ステップの後にベントナイトを加える添加処方(特許文献1)や、同様にせん断ステップの前には水溶性カチオン性ポリマーを加え、二段目として、アニオン性高分子マイクロパーティクルを添加する処方が用いられている(特許文献2)。しかし、これら歩留システムでは、更なる歩留効果を得るために、添加率を増加させた場合に地合い性を低下させたり、水分を過多に取り込むためワイヤーパートでの濾水性の低下、ドライヤーパートでの搾水性、乾燥効率の低下を招いたりすることになる。そのため、従来の歩留システムでは地合い性を維持し、歩留の向上、濾水性・搾水性の向上を図ることができない状態であった。また、一液目としてカチオン系凝結剤を添加、二液目としてアニオン性ポリマーを添加し、地合いを調整する処方(特許文献3)もあるが、この場合、地合いは維持されるものの増添による大幅な歩留、濾水性の改善は見込めない。アニオントラッシュを封鎖する目的で一段目としてカチオン性凝結剤、二段目にカチオン性ポリマー、三段目にアニオン性有機高分子微粒子を添加する処方(特許文献4)もあるが、三液を使用することになり、管理が煩雑であり、コスト面で不経済である。
【特許文献1】特開平5−239800号公報
【特許文献2】特開平11−286890号公報
【特許文献3】特開2005−120494号公報
【特許文献4】特開2005−54311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、紙及び板紙の製紙工程において、地合い性を損なうことなく、歩留の向上、濾水性、搾水性の改善及び生産性の向上を図る抄紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、抄紙工程において、抄紙前の製紙原料中に一段目としてカチオン性あるいは両性アクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤を添加、二段目として前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体を添加することを特徴とする抄紙方法に関する。前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体は、ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で、分散重合により得られたカチオン性あるいは両性水溶性重合体であることが好ましい。また前記ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で、分散重合により得られたカチオン性或いは両性水溶性重合体を添加すると、地合い性を損なうことなく歩留を向上、濾水性、搾水性の改善を図ることが可能であることを発見し本発明に達した。
【発明の効果】
【0005】
本発明は抄紙工程において、抄紙前の製紙原料に一段目として、カチオン性あるいは両性のアクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤を添加、二段目として前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体を紙料中に添加する。前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体は、特にポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で、分散重合により得られたカチオン性あるいは両性水溶性重合体であることが好ましい。
【0006】
本発明で使用する歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体は、特にポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で、分散重合により得られたカチオン性あるいは両性水溶性重合体が好ましく、この水溶性重合体を歩留向上剤添加の後添加することにより地合い性を損なうことなく歩留向上、濾水性・搾水性効果が得られ、添加コストの削減、生産性向上、更には紙質の向上が達成できる。
【0007】
本発明のカチオン性あるいは両性アクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤は、特に形態は規定せず、水溶液重合型、乳化重合型、分散重合型何れでも可能であるが、重量平均分子量は700万以上、特に1000万以上が好ましい。
【0008】
ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で、分散重合により得られたカチオン性あるいは両性水溶性重合体は、重量平均分子量が200万〜1000万の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは500万〜1000万であることが好ましい。1000万を超えると地合い性が低下し好ましくない。
【0009】
上記、カチオン性あるいは両性水溶性重合体は、凝結作用が主体であるが、高分子量を有する高分子も多く存在することから、二段目として添加しても地合い性を崩すことなく歩留向上効果に寄与していると考えられる。又、高カチオン当量値(meq/g)を有することから濾水・搾水性に優れると考えられる。
【0010】
上記理由により、この二液処方を用いた場合、地合い性を維持しながら歩留、濾水・搾水性を上げることができる。一段目の高分子量のポリマーにより形成されたフロック間を、凝結を主体とした作用によりパルプ繊維分、填料の分布状態を適正にコントロールするため、地合い性を維持していると考えられる。 特に地合い性を維持し、歩留を上げることが必要な上質紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙等で優れた効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のカチオン性あるいは両性のアクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤は水溶性ポリマーであり、下記一般式(1)及び/または(2)で表されるカチオン性モノマーを5〜50モル%含有する重合体であるものとする。
【化1】

一般式(1)
1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基或いはアルコキシル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い、Aは酸素又はNH、Bは炭素数2〜4のアルコキシル基又はアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす。





【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【0012】
前記カチオン性水溶性共重合体は、以下に例示するカチオン性モノマーと非イオン性モノマーとの共重合体である。すなわちカチオン性モノマーは、カチオン性ビニル単量体である(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸や有機酸の塩、あるいは塩化メチルや塩化ベンジルによる四級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合体である。例えば単量体として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられる。またジメチルジアリルアンモニウム塩化物のようなジアリルアンモニウム塩類も使用することができる。
【0013】
また両性水溶性共重合体は、アニオン性ビニル単量体と前記カチオン性単量体の共重合により合成することができる。アニオン性ビニル単量体は、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸あるいはイタコン酸などであり、これらを一種以上用いて共重合する。
【0014】
非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドアクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジンなどがあげられる。これらの中でアクリルアミドが最も好ましい。
【0015】
これらカチオン性水溶性共重合体のカチオン性単量体と非イオン性単量体とのモル%は、カチオン性単量体5〜50モル%、非イオン性単量体50〜95モル%であり、好ましくはカチオン性単量体10〜40モル%、非イオン性単量体60〜90モル%である。
【0016】
また両性水溶性共重合体のカチオン性単量体とアニオン性単量体とのモル%は、カチオン性単量体5〜50モル%、アニオン性単量体5〜50モル%であり、好ましくはカチオン性単量体10〜40モル%、アニオン性単量体5〜50モル%である。
【0017】
カチオン性或あるいは両性のアクリルアミド共重合体からなる歩留向上剤の代表的な形態として、塩水中分散液からなる分散重合型が挙げられる。塩水中分散液からなるカチオン性あるいは両性水溶性ポリマーは、以下の操作によって製造することができる。すなわち塩水溶液中に分散した高分子微粒子分散液からなる水溶性重合体は、特開昭62−15251号公報などによって製造することができる。この方法は、カチオン性単量体あるいはカチオン性単量体と非イオン性単量体を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性高分子からなる分散剤共存下で、攪拌しながら製造された粒径100μm以下の高分子微粒子の分散液からなるものである。イオン性高分子からなる分散剤は、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物の単独重合体や非イオン性単量体との共重合体を使用する。塩水溶液を構成する無機塩類は、多価アニオン塩類が、より好ましく、硫酸塩又は燐酸塩が適当であり、具体的には、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム等を例示することができ、これらの塩を濃度15%以上の水溶液として用いることが好ましい。
【0018】
本発明のカチオン性あるいは両性のアクリルアミド共重合体からなる歩留向上剤は、重量平均分子量が700万以上、特に1000万以上が好ましい。重量平均分子量が700万より小さいと歩留率が低下する傾向にあり、大きく歩留率を向上させるには1000万以上、更に好ましくは1500万以上であり、重量平均分子量の範囲としては、700万から3000万であることが好ましい。
【0019】
背景技術においても説明したように、単に高分子量ポリマーの添加量を増加させると過大なフロックを形成し、紙品質、特に地合い性を悪化させる。また過大なフロックは水を過多に取り込むためワイヤーパートでの濾水性の低下、ドライヤーパートでの搾水性、乾燥効率の低下を招くことになる。二段目としてアニオン性無機物や微粒子型ポリマーを使用する処方や一段目としてカチオン性凝結剤、二段目としてアニオン性ポリマーを添加する処方もあるが、地合い性は比較的、維持されるものの添加率増加による大幅な歩留向上、濾水・搾水性の向上は望めない。 従って本発明においては、一段目として高分子量のポリマーを用い、二段目として歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体、特に重量平均分子量200万〜1000万を有するポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で分散重合により得られた水溶性重合体を用いると顕著な効果を発現する。
【0020】
本発明で使用するカチオン性あるいは両性水溶性アクリルアミド共重合体からなる歩留向上剤の添加率は全紙料分散液に対して0.001〜0.1重量%であり、0.005〜0.1重量%が好ましい。0.001重量%以下では効果が発揮されないことがあり、0.1重量%以上では効果の改善が観られなく、不経済である。また歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体、特にポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で分散重合により得られた水溶性重合体の添加率は全紙料分散液に対して0.001〜0.5重量%であり、0.005〜0.1重量%が好ましい。
【0021】
一段目として、カチオン性あるいは両性水溶性アクリルアミド共重合体からなる歩留向上剤を添加すると、高分子量を有することによる凝集・架橋吸着作用によりパルプ繊維分や填料と強固なフロックを形成する。
【0022】
一段目のカチオン性あるいは両性水溶性アクリルアミド共重合体からなる歩留向上剤の添加後、少なくとも一つ以上のせん断工程を経て前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体、特にポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で分散重合により得られた水溶性重合体分散液を添加することにより、更に歩留の向上、濾水性・搾水性効果並びに地合いの改善が得られる。二液目にも高分子量のアクリルアミド共重合体を添加すると歩留の向上は得られるが、搾水性の低下、特に地合い性が大幅に低下する。
【0023】
カチオン性あるいは両性水溶性アクリルアミド共重合体からなる歩留向上剤の製紙工程中における添加場所は、ファンポンプの前、スクリーンの入口などが想定される。一方前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体、特にポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で分散重合により得られた水溶性重合体分散液の製紙工程中における添加場所は、スクリーンの入口あるいは出口などが想定される。
【0024】
対象紙料としては特に限定はなく、あらゆる紙料に対して適用できるが、特に地合い性を損なうことなく歩留の向上が求められる上質紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙等においてその効果がより発揮される。
【0025】
以下に実施例をあげて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0026】
(合成例1)一段目に添加するアクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤(C−1)の合成例を示す。攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水117.7g、硫酸アンモニウム84.1g、カチオン性単量体として80重量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQ)17.7g及び80重量%アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物(以下DMABC)6.2g、50重量%アクリルアミド(以下AAM)51.9g、分散剤としてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物単独重合体(20重量%液、粘度6450mPa・s)22.5gをそれぞれ仕込んだ。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素の除去を行った。この間、恒温水槽により35±2℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、開始剤として2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の1重量%水溶液0.45g(対単量体100ppm)を添加し重合を開始させた。内部温度を35±2℃に保ち重合開始後6時間たったところで上記開始剤を0.45g追加し、さらに10時間反応させ終了した。この得られた分散液を試作1とする。このDMQ/DMABC/AAMのモル比は16/4/80であり、分散液粘度は540mPa・s、重量平均分子量1500万であった。
【0027】
(合成例2)二段目として添加する水溶性重合体(C
−2)の合成例を示す。 攪拌機および温度制御装置を備えた反応器
に50重量%ポリエチレンイミン水溶液(重量平均分子量;50,0
00)50部をイオン交換水21.5部に溶解し、75重量%硫酸2
8.5部を冷却攪拌下添加し、pHを4.8〜5.5に調整した。攪
拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に前記操作によ
り中和したポリエチレンイミン水溶液78.0gを仕込み、メタクロ
イルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド80%水溶液48.
8g、イオン交換水63.2gを仕込み混合した。窒素で置換しなが
ら10重量%の2,2アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミ
ジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあ
たり重量で500ppm添加し、撹拌下36℃で18時間重合した。
その結果、粒径10〜100μmの微粒子の重合体分散液が得られた。
生成した水溶性重合体分散液の重量平均分子量は500万であった。
(静的光散乱法による分子量測定器、大塚電子製DLS−7000に
より測定)。
【0028】
(合成例3)二段目として添加する水溶性重合体(C
−3)の合成例を示す。アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモ
ニウム四級塩化物の単量体を、20%濃度となる用にイオン交換水に
溶解し、溶液のpHを3.5とする。単量体水溶液を40℃に保持し
30分間窒素ガスを流し溶液中の酸素を除く。単量体当たり2、2’
アゾビスアミジノプロパン2塩酸塩(V50)を0.1重量添加し、
窒素ガスを流しながら40℃で20時間保持し重合する。その後溶を
アセトン中に投入し重合体を析出させ、その後減圧乾燥して対応する
重合体を得た。生成した水溶性重合体の重量平均分子量は400万で
あった。(静的光散乱法による分子量測定器、大塚電子製DLS−70
00により測定)。
【実施例1】
【0029】
ダイナミックジャーテスターによる歩留率の測定試験を行なった。200メッシュワイヤー使用し、原料は固形分濃度0.94質量%で、軽質炭酸カルシウム等Ash分として25.1%対固形分濃度含んだ塗工用紙製紙原料を用いた。製紙原料の物性値は、pH7.7、Whatman No.41濾紙濾過液のカチオン要求量 0.004meq/L。ミューテック社製SZP−06型によるSZPは−7.3mVであった。カチオン要求量はミューテック社製PCD−03型を使用した。一液目としてC−1を対紙料固形分に対して100ppm添加、攪拌回転数1200rpmで20秒間攪拌後、二液目としてC−2を対紙料固形分に対して100ppm添加、10秒間攪拌後、濾液を採取しADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同様な試験を行ない、C−1を100ppm、C−3を100ppm添加した。結果を表1に示す。
【0031】
(比較例1) 実施例1と同様な試験をC−1、C−2、C−3、A−1、A−2を用いて実施した。 A−1は、水膨潤性ポリアクリルアミド粒子のアニオン性高分子マイクロパーティクルである。すなわちアクリルアミド88モル%とアクリル酸12モル%、メチレンビスアクリルアミド対単量体0.5重量%からなる単量体混合物を、ソルビタンオレート系疎水性界面活性剤により油中水型エマルジョンを形成させ、重合して得た水不溶性粒子(水中に分散後の粒径が約700nm)を用いた。A−2は、アニオン性ポリアクリルアミド塩水中分散液(アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム=30モル%/70モル%共重合物、分子量1500万)を用いた。
【0032】
添加順序は、一液目としてC−2、二液目としてC−1の処方、一液目C−3、二液目C−1の処方、一液目、二液目共にC−1の処方、一液目C−1、二液目A−1の処方、一液目C−1、二液目A−2の処方で、添加率対紙料固形分に対して一液目100ppm、二液目100ppm添加した。これらの結果を表1に示す。





【0033】
(表1)

【0034】
本発明の一段目としてC−1、二段目としてC−2或いはC−3を用いた実施例1、2は、比較例1−1、1−2、1−4、1−5に比べて、総歩留率、灰分歩留率が向上していることが確認できる。
【実施例3】
【0035】
実施例1と同紙料を用いて動的濾水性試験機DDA(Dynamic Drainage Analyzer、マツボー社製)による濾水性及びシート含水率の測定試験を行なった。製紙原料を底部に315メッシュワイヤーの付いたDDA攪拌槽に投入。一液目としてC−1を対紙料固形分に対して100ppm添加、攪拌回転数1200rpmで20秒間攪拌後、二液目としてC−2を対紙料固形分に対して100ppm添加、10秒間攪拌後、300mBarの減圧下で、紙料を吸引し、ワイヤー上にシートを形成した時点の濾水時間、形成したシートの含水率を測定し、その結果を表2に示す。
【実施例4】
【0036】
実施例3と同様の操作により、一液目としてC−1、二液目としてC−3を添加し、動的濾水性試験を行った。結果を表2に示す。
【0037】
(比較例2)実施例1と同紙料を用いて同試験条件で動的濾水性試験機DDAによる濾水性及び形成シートの含水率の測定試験を行なった。一液目としてC−2、二液目としてC−1の処方、一液目C−3、二液目C−1の処方、一液目、二液目共にC−1の処方、一液目C−1、二液目A−1の処方、一液目C−1、二液目A−2の処方で、添加率対紙料固形分に対して一液目100ppm、二液目100ppm添加時の、濾水時間、形成したシートの含水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0038】
(表2)

【0039】
本発明の一液目としてC−1、二液目としてC−2あるいはC−3を用いた実施例3、4は、比較例2−1、2−2、2−4、2−5に比べて、濾水時間が短縮しており、濾水性が良いことが確認できる。 又、シート含水率も低く搾水性も改善されている。 比較例2−3の一液目、二液目共にC−1を添加する処方では濾水時間は短縮するものの、水分を過多に取り込んだためシート含水率は実施例3、4より高くなり、乾燥効率の低下を招く結果となった。
【実施例5】
【0040】
上記実施例1と同様の試料を用いて、一液目としてC−1、二液目としてC−2を添加し、坪量が50〜52g/mになるように手抄きシートを作成し、地合い指数をM/K System Inc.社製「3−D Sheet Analyzer」により測定した。この数値は高い程、地合い性は良いということになる。また、シートのISO白色度を測定した。その結果を表3に示す。
【実施例6】
【0041】
実施例5と同様の操作により、一液目としてC−1、二液目としてC−3を添加し、手抄きシートを作成し、地合い指数及びISO白色度を測定した。結果を表3に示す。
【0042】
(比較例3)実施例1と同紙料を用いて同試験条件で、手抄きシートを作成し、地合い指数及びISO白色度を測定した。 一液目としてC−2、二液目としてC−1の処方、一液目C−3、二液目C−1の処方、一液目、二液目共にC−1の処方、一液目C−1、二液目A−1の処方、一液目C−1、二液目A−2の処方で、添加率対紙料固形分に対して一液目100ppm、二液目100ppm添加時の、地合い指数、ISO白色度を測定した。その結果を表3に示す。










【0043】
(表3)

【0044】
実施例5、6では、比較例3−1〜3−5よりも地合い指数が高く、地合いへの影響が低いことが分かる。又、紙中灰分割合、ISO白色度も高くなることが分かった。
【0045】
一方、比較例3−3の一液目、二液目共にC−1を添加する処方では地合い指数、ISO白色度共に数値は大きく低下した。このことは過大なフロックを形成し、尚且つフロックが局所に偏在しているためと考えられる。
【0046】
以上から、本発明の抄造薬品処方により従来の薬品処方に対して、地合い性を損なうことなく、歩留、濾水・搾水性を改善すること、ISO白色度も高くなることが分かった。このことは、抄造工程において生産性を大きく向上し、高品質の紙製品の製造が達成できることを意味する。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙工程において、一段目としてカチオン性あるいは両性のアクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤を添加し、二段目として前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体を添加することを特徴とする抄紙方法。
【請求項2】
前記歩留向上剤より分子量の低い水溶性重合体がカチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性の一種以上のイオン性を有する粒径100μm以下の水溶性重合体微粒子とポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物とが共存する水溶性重合体であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙方法。
【請求項3】
前記カチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択される一種以上のイオン性を有する水溶性重合体が、前記ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物共存下で、下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる単量体5〜100モル%、下記一般式(3)で表わされる単量体0〜50モル%、水溶性非イオン性単量体0〜95モル%からなる単量体(混合物)を攪拌下、分散重合し製造されたものであることを特徴とする請求項2に記載の抄紙方法。
【化1】

一般式(1)
1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基或いはアルコキシル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い、Aは酸素又はNH、Bは炭素数2〜4のアルコキシル基又はアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化3】

一般式(3)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオン。
【請求項4】
前記ポリアルキレンイミン変性物が、下記一般式(4)及び/または(5)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項2あるいは3に記載の抄紙方法。





【化4】


一般式(4)
【化5】

一般式(5)
但し、式(4)、(5)中のpは0〜20の整数であり、R10〜R18は水素、又は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X〜Xは陰イオンである。
【請求項5】
前記ポリアルキレンイミン変性物が、ポリアルキレンイミンと下記一般式(6)及び/または(7)で表されるポリカチオン物質との反応物からなることを特徴とする請求項2あるいは3に記載の抄紙方法。





【化6】

一般式(6)
【化7】

一般式(7)
但し、式(6)、(7)中のPはエポキシ基あるいはハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R23〜R26、R27は水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X〜X10は陰イオンである。
【請求項6】
前記ポリアルキレンイミン変性物が、前記一般式(6)で表されるポリカチオン物質によって架橋されていることを特徴とする請求項2あるいは3に記載の抄紙方法。
【請求項7】
前記ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の抄紙方法。
【請求項8】
前記ポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物が、前記カチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択された一種以上のイオン性を有する水溶性重合体に対し、50〜500重量%共存することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の抄紙方法。
【請求項9】
前記カチオン性あるいは両性、非イオン性及びアニオン性の一種以上のイオン性を有する粒径100μm以下の水溶性重合体微粒子とポリアルキレンイミン及び/又はポリアルキレンイミン変性物とが共存する水溶性重合体の重量平均分子量が200万〜1000万の範囲内であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の抄紙方法。
【請求項10】
前記カチオン性あるいは両性のアクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤の重量平均分子量が700万以上であることを特徴とする請求項1記載の抄紙方法。

【公開番号】特開2009−280925(P2009−280925A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131710(P2008−131710)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】