説明

把持装置およびその制御方法

【課題】形状が異なる複数種類のワークを安定的な把持を実現しつつ、従来に比して当接部材の寿命を延ばすことができる把持装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】ワーク50を把持するための把持部2と、把持動作を制御するための制御装置7と、把持部2のワーク50と当接する部位に付設され、ワーク50の形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材6と、を備え、把持部2の把持動作によって、当接部材6をワーク50に押圧して該ワーク50の外形形状に倣わせるとともに、該当接部材6の形状を保持して、ワーク50を把持する把持装置1であって、制御装置7は、所定の把持回数ごとに、ワーク50を把持した際の当接部材6のワーク50に対する当接位置を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状が異なる複数種類のワークを安定的に把持することができる把持装置およびその制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク等を把持する把持装置において、外形形状が異なる複数種類のワークを取り扱う場合には、把持装置のワーク等と直接接触する部位である当接部材を、各ワークの形状に対応したものに交換する手間が生じていた。
そこで、当接部材を交換しなくても外形形状が異なる複数種類のワークを安定的に把持することができる把持装置の技術が種々検討されており、例えば、以下に示す特許文献1および特許文献2にその技術が開示され公知となっている。
【0003】
特許文献1および特許文献2に開示されている従来技術では、当接部材を可撓性および伸縮性を有する袋状部材に多数の粒状物(粒状物群)を充填して構成し、真空ポンプ等を用いて、袋状部材内を減圧したり、あるいは、減圧解除したりすることにより、当接部材を様々なワークの外形形状に対応できる構成とした把持装置が開示されている。
このような従来の把持装置では、把持動作によって当接部材をワーク等に当接させて、該当接部材をワーク等の形状に倣わせておき、その後、当接部材内を減圧することによって、袋状部材内の粒状物同士を緊密に係留させて、当接部材の形状がワーク形状に倣った状態を保持するようにしている。
またこのような把持装置では、当接部材内の減圧状態を解除することによって、当接部材を柔軟な定常状態に復元させるようにしている。
そして、このような従来の把持装置を用いれば、当接部材の形状を様々なワーク等の外形形状に対応させることができるため、外形形状が異なる複数種類のワークを取り扱う場合において、当接部材を交換しなくても各ワークを安定的に把持することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−528408号公報
【特許文献2】特開平9−123082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の把持装置では、繰返しワークを把持する場合において、当接部材におけるワークとの当接位置が常に同じであると、粒状物群を充填している袋状部材の特定の部位がダメージを受け、当該部位において袋状部材が破損しやすくなるという問題があった。またこのため、従来の把持装置では、当接部材の寿命が短くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、形状が異なる複数種類のワークを安定的な把持を実現しつつ、従来に比して当接部材の寿命を延ばすことができる把持装置およびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ワークを把持するための把持部と、把持動作を制御するための制御装置と、前記把持部の前記ワークと当接する部位に付設され、前記ワークの形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材と、を備え、前記把持部の把持動作によって、前記当接部材を前記ワークに押圧して該ワークの外形形状に倣わせるとともに、該当接部材の形状を保持して、前記ワークを把持する把持装置であって、前記制御装置は、所定の把持回数ごとに、前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置を変更するものである。
【0009】
請求項2においては、前記制御装置による前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置の変更は、前記当接部材を把持方向に垂直な平面内でずらした位置に変更することで行われるものである。
【0010】
請求項3においては、前記当接部材は、袋状部材に粒状物群を充填して構成されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記当接部材は、該袋状部材の内部を減圧して、前記袋状部材の内容積に対する前記粒状物群の体積比率を増大させることによって、前記粒状物群の各粒子を係留させて、前記当接部材の形状を保持するものである。
【0012】
請求項5においては、ワークを把持するための把持部と、把持動作を制御するための制御装置と、前記把持部の前記ワークと当接する部位に付設され、前記ワークの形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材と、を備え、前記把持部の把持動作によって、前記当接部材を前記ワークに押圧して該ワークの外形形状に倣わせるとともに、該当接部材の形状を保持して、前記ワークを把持する把持装置の制御方法であって、前記制御装置によって、所定の把持回数ごとに、前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置を変更するものである。
【0013】
請求項6においては、前記制御装置による前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置の変更は、前記当接部材を把持方向に垂直な平面内でずらした位置に変更することで行われるものである。
【0014】
請求項7においては、前記当接部材は、袋状部材に粒状物群を充填して構成されるものである。
【0015】
請求項8においては、前記当接部材は、該袋状部材の内部を減圧して、前記袋状部材の内容積に対する前記粒状物群の体積比率を増大させることによって、前記粒状物群の各粒子を係留させて、前記当接部材の形状を保持するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、従来の装置構成を変更することなく、簡易に当接部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、当接部材の寿命を延ばすことができる。
【0018】
請求項2においては、従来の装置構成を変更することなく、簡易に当接部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、当接部材の寿命を延ばすことができる。
【0019】
請求項3においては、袋状部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、袋状部材の寿命を延ばすことができる。
【0020】
請求項4においては、袋状部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、袋状部材の寿命を延ばすことができる。
【0021】
請求項5においては、従来の装置構成を変更することなく、簡易に当接部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、当接部材の寿命を延ばすことができる。
【0022】
請求項6においては、従来の装置構成を変更することなく、簡易に当接部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、当接部材の寿命を延ばすことができる。
【0023】
請求項7においては、袋状部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、袋状部材の寿命を延ばすことができる。
【0024】
請求項8においては、袋状部材の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、袋状部材の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る把持装置を備えた移載装置の全体構成を示す図、(a)ブロック図、(b)正面(XZ平面)模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る把持装置を示す模式図、(a)正面(XZ平面)図、(b)図2(a)におけるA−A断面図、(c)図2(a)におけるB−B断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る把持装置によるワークの把持状態を示す図、(a)正面(XZ平面)模式図、(b)平面(XY平面)模式図。
【図4】本発明の一実施形態に係る把持装置の制御方法を示すフロー図。
【図5】本発明の一実施形態に係る把持装置における把持位置の変更状況を示す斜視模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る把持装置を備えた移載装置について、図1〜図3を用いて説明をする。
尚、本実施形態で示す把持装置に対しては、図1(b)および図2(a)(b)(c)等に示すようなXYZ座標系を、説明の便宜上規定している。
図1(a)に示す如く、本発明の一実施形態に係る把持装置を備えた移載装置15はワークを移載するために用いられる装置であり、把持装置1とロボットアーム16を備えている。
【0027】
本実施形態に示す移載装置15は、図1(b)に示すように、把持装置1でワーク50を把持するとともに、ロボットアーム16でワーク50を所定位置から所定位置に移載する用途に用いられる装置である。
【0028】
図1(a)(b)に示す如く、把持装置1は、ワーク50を把持するための装置であり、把持部2、制御装置7、真空排気設備8等を備えており、ロボットアーム16の手先部16aに配設されている。
【0029】
把持部2は、把持装置1においてワーク50を挟圧して把持するための部位であり、駆動部3、複数の爪部4・5、複数の当接部材6・6・・・等を備えている。
【0030】
図2(a)(b)(c)に示す如く、駆動部3は、二系統のスライダ部3a・3bを備えており、各スライダ部3a・3bをX軸方向に対して、それぞれ独立して往復変位させることができる装置である。駆動部3としては、例えば、ボールネジ・ナットおよびモータ等からなる往復動機構を備える電動アクチュエータ等を採用することができる。
【0031】
各爪部4・5は、ワークを挟持するために備えられる一対の部位である。即ち、各爪部4・5は、図1(b)に示すように該各爪部4・5の中間位置に配置されるワーク50を、各爪部4・5によって挟圧して保持するための部位である。
尚、各爪部4・5の形状は、把持対象となるワーク50の形状および大きさや、各スライダ部3a・3bのストローク量等を考慮して設定する。
【0032】
図2(a)(b)に示す如く、爪部4は、支持部4aと、該支持部4aから突設する二つの挟圧部4b・4bを備えている。挟圧部4b・4bは、互いに所定の間隔を隔てて配置されている。
爪部4は、支持部4aがスライダ部3aに対して固定されている。そして、制御装置7により、駆動部3を作動させてスライダ部3aをスライドさせて、各挟圧部4b・4bをX軸方向に沿って往復動させる構成としている(図1(b)参照)。
【0033】
また、図2(a)(c)に示す如く、爪部5は、支持部5aと、該支持部5aから突設する一つの挟圧部5bを備えている。
爪部5は、支持部5aがスライダ部3bに対して固定されている。そして、制御装置7により、駆動部3を作動させてスライダ部3bをスライドさせて、挟圧部5bをX軸方向に沿って往復動させる構成としている(図1(b)参照)。
【0034】
当接部材6は、把持装置1においてワーク50と直接当接する部位であり、その形状を柔軟に変形できる態様(この態様になることを軟化と称する)と、その形状を堅固に保持する態様(この態様になることを硬化と称する)の、相反する二つの態様を一つの部材で実現することができるものである。
当接部材6は、弾性を有する袋状部材6aと、該袋状部材6aに充填される粒状物群6bを備える構成であり、定常時においては、柔軟に変形できる態様を呈している。
【0035】
図2(a)(b)(c)に示す如く、当接部材6は、各爪部4・5において、各挟圧部4b・4b・5bが対向する側の面に付設されている。また、当接部材6は、図1(a)に示す如く、真空排気設備8と接続されている。
真空排気設備8は、把持装置1において当接部材6を硬化および軟化させるための手段を構成するものであり、真空ポンプ8a、真空配管8b・8b、電磁弁8c等を備えている。そして、各当接部材6・6の袋状部材6aに、各真空配管8b・8bが接続されている。
尚、本実施形態では、真空排気設備8に真空ポンプ8aが備えられる場合を例示しているが、真空ポンプ8a以外の排気手段(例えば、エジェクター等)を備える構成とすることも可能である。
また、本発明に係る把持装置において、当接部材の硬化および軟化を実現させるための手段は、必ずしも真空排気設備である必要はなく、当接部材の硬化および軟化を実現することができる種々の態様のものを採用し得る。
例えば、真空ポンプ8aの代わりに、真空配管8bに袋状部材6a内から空気を排出する方向にのみ空気を流通させるための逆止弁を備える構成として、把持動作によって、袋状部材6aの内部から空気を追い出して、当接部材6を硬化させることも可能である。
【0036】
当接部材6は、真空ポンプ8aを作動させて袋状部材6aの内部を減圧すると、該袋状部材6a内に充填されている粒状物群6bを構成する各粒子がより緊密に係留して粒状物群6bが硬化するため、このとき、その形状を堅固に保持する態様を呈する。
【0037】
このような当接部材6を、各爪部4・5の挟持圧によって、図3(a)(b)に示すように柔軟な状態でワーク50に押圧すると、該当接部材6をワーク50表面の凹凸部に入り込ませることができるため、当接部材6をワーク50の外形形状に倣わせることができる。
【0038】
また、当接部材6は、ワークの外形形状に倣わせた状態で真空排気設備8を作動させることによって、ワークの外形形状に対応した形状で硬化させることができるため、ワークの外形形状に対応した堅固な態様の当接部材6を形成できる。
【0039】
尚、本実施形態では、袋状部材6aの内部を減圧することによって、当接部材6を硬化させる構成の把持装置1を例示しているが、本発明に係る把持装置の構成をこれに限定するものではなく、把持装置における当接部材を硬化させるための構成としては、例えば、袋状部材に充填する粒状物群として磁性粉体を採用し、電磁力の作用によって当接部材を硬化させる構成であってもよく、種々の構成を採用し得る。
【0040】
そして、図3(a)(b)に示す如く、本実施形態に係る把持部2では、各挟圧部4b・4b・5bに付設した各当接部材6・6・6によって、ワーク50を三点で堅固に把持することができ、部品点数の少ない簡易な構成で、ワーク50の振り回し動作等にも耐え得る安定した把持状態を実現することができる。
尚、本実施形態では、把持部2によって、ワーク50を三点支持する態様を例示しているが、本発明に係る把持装置における、ワークの支持点数をこれに限定するものではなく、例えば、二点支持する態様であってもよく、あるいは、四点以上で支持する態様であってもよい。
【0041】
図1(b)に示す如く、移載装置15を用いた移載作業において、ワーク50は、例えば位置決めピン等からなる位置決め部16b・16bにより位置決めされた状態で、ワーク配置部16cの所定位置に配置されている。
【0042】
また、図1(a)に示す如く、把持装置1の制御装置7は、ロボットアーム16と接続されており、ロボットアーム16の手先部16aの配置・角度等の情報が、制御装置7にフィードバックされる構成としている。
【0043】
図1(a)(b)および図3(a)に示す如く、ロボットアーム16により、手先部16aの配置および角度等を調整して、ワーク50の把持に適した所定の位置に把持部2を配置する。このときの把持部2の配置は、ワーク50の把持に適した位置が各当接部材6・6・・・と対面する位置に配置されるように設定される。
そして、制御装置7には、ロボットアーム16から、ワーク50の把持に適した所定の位置に把持部2が配置された旨の信号が入力される。
【0044】
次に、図3(a)(b)に示す如く、制御装置7によって、各スライダ部3a・3bのストロークを調整することにより、各爪部4・5の離間距離が、ワーク50の幅以下となるように調整する。そして、ワーク50を、各爪部4・5によって、所定の挟持圧により挟持する。
またこのとき当接部材6は、ワーク50に対して押圧され、ワーク50の外形形状に倣って変形する。
【0045】
次に、図1(a)および図3(a)(b)に示す如く、各爪部4・5によって、所定の挟持圧でワーク50を挟持している状態で、制御装置7から真空ポンプ8aに指令信号を与えて、当接部材6の袋状部材6a内を真空引きする。
するとこのとき当接部材6は、粒状物群6bがワーク50の外形形状に倣った状態で硬化する。
これにより、当接部材6をワーク50の把持に適した所定の部位に食い込ませて硬化させることができるため、形状の異なる複数種類のワーク50・50・・・を取り扱う場合であっても、把持部2を交換することなく、各種類のワーク50・50・・・を確実に把持することができる。
【0046】
尚、本実施形態では、各当接部材6・6・6をワーク50の外形形状に沿わせる手段が、制御装置7によって、各スライダ部3a・3bのストロークを調整して行う構成である場合(即ち、当接部材6・6・6の位置制御を行う場合)を例示しているが、本発明に係る把持装置の構成をこれに限定するものではなく、例えば、スライダ部3a・3bを変位させたときのサーボ電流(即ち、換言すればトルク値)を検出し、トルク値が規定値に達したときに安定的な把持状態に至ったことを感知する(即ち、各スライダ部3a・3bのトルク制御を行う)構成とすることも可能である。また、本発明に係る把持装置では、当接部材をワークの外形形状により確実に沿わせる手段が、位置制御とトルク制御を併用する構成であってもよい。
【0047】
次に、本発明の一実施形態に係る把持装置の制御方法について、図4および図5を用いて説明をする。
本発明の一実施形態に係る把持装置1では、各当接部材6・6・・・を、ワーク50の外形形状に倣わせた状態で硬化させることができるため、各当接部材6・6・6におけるワーク50との当接位置が一定でなくても、安定的な把持状態を保持することができるという特徴を有している。
そこで把持装置1では、この特徴を活かして、各当接部材6・6・・・におけるワーク50との当接位置を積極的に変更しつつ、ワーク50を把持するようにしており、以下に示すような所定の把持位置を変更するためのプログラムが、予め制御装置7に組み込まれている。
【0048】
図4に示す如く、把持装置1による把持動作が開始されるときには、まず制御装置7には、ワーク50の把持に適した把持位置の初期値に係る情報(即ち、把持部2を配置すべきX・Y・Z座標)が予め設定されている(STEP−1)。
また、続いて制御装置7には、移載装置15によるワーク50の移載個数aの初期値(a=0)が設定され(STEP−2)、さらに、把持装置1によるワーク50の把持回数bの初期値(b=0)が設定される(STEP−3)。
【0049】
次に、制御装置7からの指令信号に基づいて、ロボットアーム16によって、各当接部材6・6・6を、ワーク50の設定された把持位置に対面させるように、把持部2を配置する(STEP−4)。
【0050】
そして、制御装置7からの指令信号に基づいて、駆動部3を所定のストローク量で作動させて、把持部2によって、ワーク50を把持する(STEP−5)。
このとき、制御装置7により、把持回数bの値に「1」を加算して、現状において把持部2に付設されている把持部材6・6・6によって把持したワーク50の個数をカウントする(STEP−6)。
【0051】
また次に、制御装置7からの指令信号に基づいて、ロボットアーム16によって、ワーク50を所定位置に移載する(STEP−7)。
このとき、制御装置7により、移載個数aの値に「1」を加算して、把持装置1によって移載したワーク50の個数をカウントする(STEP−8)。
【0052】
ここで、移載個数aをカウントする目的は、生産ラインの稼動中における当接部材6の破損を防止することによって、不要な生産ラインの停止を避けるためであり、当接部材6(より詳しくは、袋状部材6a)に対して移載個数aに基づいた寿命を予め設定しておいて、移載個数aのカウント数に応じて、当接部材6が破損する前に計画的に当接部材6の交換をするようにしている。また、その他の袋状部材6aに対する寿命の設定方法としては、真空引きをしたときの袋状部材6a内の到達真空度を検出して、到達真空度が低下したときに寿命と判断して当接部材6を交換するような構成とすることも可能である。
【0053】
次に、制御装置7により、移載個数aに基づく判定を行う(STEP−9)。
移載個数aが、予め設定した設定値未満である場合には、そのまま移載動作を継続すべく、次の(STEP−10)に移行する。
一方、移載個数aが、予め設定した設定値以上である場合には、ここで移載動作を終了する。
【0054】
尚、本実施形態に示す把持装置1の制御方法における制御アルゴリズムは、移載個数aに基づく判定を行うアルゴリズムを備えているが、本発明に係る把持装置の制御方法における制御アルゴリズムでは、移載個数aに基づく判定を行わない構成であってもよい。
【0055】
次に、移載個数aが、予め設定した設定値未満であった場合には、制御装置7により、把持回数bに基づく判定を行う(STEP−10)。
把持回数bが、予め設定した設定値未満である場合には、現状の把持位置の設定をそのまま採用して、再び(STEP−4)に戻る。
一方、把持回数bが、予め設定した設定値以上である場合には、制御装置7により、把持位置の設定を変更する(STEP−11)とともに、再び(STEP−3)に戻る。
【0056】
本実施形態において、把持位置の設定変更(STEP−11)は、制御装置7からの指令信号に基づいて、ロボットアーム16によって、図5に示すように、把持部2の配置(Y方向およびZ方向の座標)の設定を変更することによって行われる。これは、例えば、把持部2の配置設定をY方向(左右方向)およびZ方向(上下方向)に十数mmずらすことによって行われる。これにより、ワーク50に対する当接部材6・6・6の当接位置が設定した把持回数ごとに変更される。
また、このときの把持位置の変更量や変更方向は、把持部2によってワーク50を安定的に把持することが可能な範囲を越えないよう考慮しつつ、適宜設定することができる。
【0057】
例えば、把持装置1によってワーク50を把持する度に(即ち、毎回)、所定の把持位置の設定を変更したり、あるいは、3回把持したら把持位置の設定を変更したりする等の変更態様を採用することができ、所定の把持位置の変更頻度は、把持装置1の使用状況等に応じて適宜設定することができる。
これにより、当接部材6・6・6の同じ位置に摩耗や切創等のダメージが蓄積されることが防止できるため、当接部材6・6・6の寿命を延ばすことができる。
【0058】
即ち、本発明の一実施形態に係る把持装置1およびその制御方法においては、制御装置7によるワーク50を把持した際の各当接部材6・6・6のワーク50に対する当接位置の変更は、各当接部材6・6・6を把持方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面)内でずらした位置に変更することで行われるものである。
このような構成により、従来の装置構成を変更することなく、簡易に当接部材6・6・6の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、当接部材6・6・6の寿命を延ばすことができる。
【0059】
尚、本実施形態では、ロボットアーム16によって、把持部2の配置を変更することによって、把持位置を変更する構成としているが、本発明に係る把持装置の構成をこれに限定するものではなく、例えば、爪部に対して当接部材が相対変位可能な機構を備える構成として、当接部材を所定の把持回数ごとに変位させることによって、所定の把持回数ごとに把持位置を変更する構成等も採用し得る。
また、本実施形態では、把持部2の配置を変更することによって、ワーク50の把持される位置を変更し、それによって当接部材6におけるワーク50との当接位置を変更する構成としているが、把持部2の配置は同じであっても、例えば、爪部4と爪部5の配置を入れ替えることで当接部6のワーク50に対する当接位置を変更してもよい。
【0060】
またさらに、所定の把持位置の変更(STEP−11)においては、把持部2の配置をY方向およびZ方向に変更するのに応じて、制御装置7からの指令信号に基づいて、スライダ部3a・3bのX方向の変位(ストローク量)を変更するのが好適である。
これにより、各当接部材6・6・6をワーク50の外形形状により確実に沿わせることができるため、把持部2による把持力を確実に確保することができる。
【0061】
即ち、本発明の一実施形態に係る把持装置1は、ワーク50を把持するための把持部2と、把持動作を制御するための制御装置7と、把持部2のワーク50と当接する部位に付設され、ワーク50の形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材6と、を備え、把持部2の把持動作によって、当接部材6をワーク50に押圧して該ワーク50の外形形状に倣わせるとともに、該当接部材6の形状を保持して、ワーク50を把持する把持装置1であって、制御装置7は、所定の把持回数ごとに、ワーク50を把持した際の当接部材6のワーク50に対する当接位置を変更するものである。
【0062】
また、本発明の一実施形態に係る把持装置の制御方法は、ワーク50を把持するための把持部2と、把持動作を制御するための制御装置7と、把持部2のワーク50と当接する部位に付設され、ワーク50の形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材6と、を備え、把持部2の把持動作によって、当接部材6をワーク50に押圧して該ワーク50の外形形状に倣わせるとともに、該当接部材6の形状を保持して、ワーク50を把持する把持装置1の制御方法であって、制御装置7によって、所定の把持回数ごとに、ワーク50を把持した際の当接部材6のワーク50に対する当接位置を変更するものである。
このような構成により、従来の装置構成を変更することなく、簡易に当接部材6・6・6の摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、当接部材6・6・6の寿命を延ばすことができる。
【0063】
また、本発明の一実施形態に係る把持装置1およびその制御方法において、当接部材6は、袋状部材6aに粒状物群6bを充填して構成されるものである。
さらに、本発明の一実施形態に係る把持装置1およびその制御方法において、当接部材6は、該袋状部材6の内部を減圧して、袋状部材6aの内容積に対する粒状物群6bの体積比率を増大させることによって、粒状物群6bの各粒子を係留させて、当接部材6の形状を保持するものである。
このような構成により、袋状部材6aの摩耗や切創等による局所的な損傷を防止できる。またこれにより、袋状部材6aの寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 把持装置
2 把持部
3 駆動部
4 爪部
5 爪部
6 当接部材
7 制御装置
50 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するための把持部と、
把持動作を制御するための制御装置と、
前記把持部の前記ワークと当接する部位に付設され、前記ワークの形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材と、
を備え、
前記把持部の把持動作によって、前記当接部材を前記ワークに押圧して該ワークの外形形状に倣わせるとともに、該当接部材の形状を保持して、前記ワークを把持する把持装置であって、
前記制御装置は、
所定の把持回数ごとに、前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置を変更する、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記制御装置による前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置の変更は、
前記当接部材を把持方向に垂直な平面内でずらした位置に変更することで行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記当接部材は、
袋状部材に粒状物群を充填して構成される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記当接部材は、
該袋状部材の内部を減圧して、前記袋状部材の内容積に対する前記粒状物群の体積比率を増大させることによって、前記粒状物群の各粒子を係留させて、前記当接部材の形状を保持する、
ことを特徴とする請求項3に記載の把持装置。
【請求項5】
ワークを把持するための把持部と、
把持動作を制御するための制御装置と、
前記把持部の前記ワークと当接する部位に付設され、前記ワークの形状に倣って変形し、その変形を保持し得る当接部材と、
を備え、
前記把持部の把持動作によって、前記当接部材を前記ワークに押圧して該ワークの外形形状に倣わせるとともに、該当接部材の形状を保持して、前記ワークを把持する把持装置の制御方法であって、
前記制御装置によって、
所定の把持回数ごとに、前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置を変更する、
ことを特徴とする把持装置の制御方法。
【請求項6】
前記制御装置による前記ワークを把持した際の前記当接部材の前記ワークに対する当接位置の変更は、
前記当接部材を把持方向に垂直な平面内でずらした位置に変更することで行われる、
ことを特徴とする請求項5に記載の把持装置の制御方法。
【請求項7】
前記当接部材は、
袋状部材に粒状物群を充填して構成される、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の把持装置の制御方法。
【請求項8】
前記当接部材は、
該袋状部材の内部を減圧して、前記袋状部材の内容積に対する前記粒状物群の体積比率を増大させることによって、前記粒状物群の各粒子を係留させて、前記当接部材の形状を保持する、
ことを特徴とする請求項7に記載の把持装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate