説明

投光装置

【課題】
車輌速度監視に使用する投光装置は、車輌との距離、速度および車輌の大きさなどにかかわらず、被投光体に所要の照度を確保することが求められるが、車輌が高速で移動するなど、被投光体との距離や大きさの特定が難しい場合は、近距離用、遠距離用などの複数個の投光装置を組み合わせた装置が使用されており、操作性、経済性などから難点があった。
【解決手段】
放物面状の反射鏡または回転楕円面状の反射鏡と、光軸が同じで焦点距離、形状寸法および結像位置の異なる複数の集光レンズからなる複合型集光レンズとを組み合わせることで、被投光体の距離、大きさ、速度などに依存せず、広い画角と所要の照度を確保できる投光装置を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離から遠距離にわたり様々な大きさで存在する被投光体を充分な照度で照射するための投光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路肩に停めた監視車輌内や路肩等に固定設置され、道路上を走行する車輌(自動車)の走行速度を監視し、速度違反車両をその運転者や車輌ナンバーと共に撮像して記録する速度監視記録装置では、夕刻や夜間は勿論のこと、曇天時など充分な明るさが期待できない条件下でも鮮明な画像を取得できるよう、連続投光装置やフラッシュ投光装置(ストロボ)を備えているものが多い。
【0003】
一般にこの種の投光装置は、例えば図1に示すように、回転楕円体の一部で形成された反射鏡101の第一焦点f1の近傍に、支持棒102で支持された光源103を配置し、この光源103からの光が反射鏡101によって収束する第二焦点f2の近傍に焦点f3を有する集光レンズ104を配置した構成になっている。光源103から発し、反射鏡101で収束された光は、点線で示されるように集光レンズ104で集光され、集光レンズ104の後方位置106に結像する。また、光源103から発し、直接、集光レンズ104に到達した光は、細線で示されるように、集光レンズで集光され、集光レンズ104の後方位置105に結像する。
図2は、回転放物面体の一部で形成された反射鏡201の焦点f1の近傍に、支持棒202で支持された光源203を配置し、反射鏡の中心軸に、その光軸を一致させた集光レンズ204を配置した構成になっている。光源203から発し、反射鏡201で収束された光(点線)は、集光レンズ204で集光され、集光レンズ204の後方位置206に結像する。また、光源203から発し、直接、集光レンズ204に到達した光(細線)は、集光レンズで集光され、集光レンズ204の後方位置207に結像する。
このように、反射鏡をそなえたこの種の投光装置で形成される光の結像は、反射鏡により収束された光と直接集光レンズに入射した光の集合となるが、反射鏡により収束された光により形成される光による照度が支配的なので、以降の記述や図面においては、反射鏡により収束された光による結像を主眼とし、直接集光レンズに到達する光による結像は補足的なレベルにとどめる。なお、ここで、集光レンズの前方とは集光レンズからみて光源側で、集光レンズの後方とは集光レンズからみて光源の反対側を指すものとする。
【0004】
この種の投光装置で、投光装置から特定の距離に存在する被投光体を重点的に照射したい場合は、光源、反射鏡、集光レンズの相互の位置関係を光軸状で調整することにより可能となる。
図3は、光源303を位置調整棒302で支持している以外は、図1と同じ構成の投光装置である。回転楕円体の一部で形成された反射鏡の第一焦点f1の近傍に光源303の位置を位置調整棒302の伸縮により光軸上で調整すると、集光レンズ後方の結像位置を調整することが可能である。反射鏡301で収束され、集光レンズ304で集光された光の結像位置306に着目すると、位置調整棒302を伸ばす(点線矢印の方向)ことにより、光の結像位置306が集光レンズに近づき(点線矢印)、逆に、位置調整棒を縮める(実線矢印)ことにより、光の結像位置306が集光レンズから遠ざかる(実線矢印)。また、直接、集光レンズに到達し、集光レンズにより集光された光の結像305に着目すると、位置調整棒302を伸ばす(点線矢印)ことにより、光の結像位置305は集光レンズから遠ざかり、逆に、位置調整棒を縮める(実線矢印)ことにより、光の結像位置305は集光レンズの方向に近づく。
位置調整棒302の伸縮により光源303の位置が回転楕円体の第一焦点付近から外れると、反射鏡により回転楕円体の第二の焦点付近に収束していた光が次第に第二の焦点付近から外れ、集光レンズ304への光の入射の仕方が多様となるため、集光レンズの後方に形成される光の結像位置は、図2のイメージよりも実際には複雑な様相を呈するが、ここでは、位置調整棒により集光レンズの後方の結像位置を調整できる原理を示すのが目的であるので、あえて、複雑な光の経路を図示することは避けている。
【0005】
この種の投光装置を用いて、より鮮明な画像を得るためには、光源の光度を強化して被投光体の照度を増加させればよい。
図4aは、光源403を球形状とした以外は、図1と同じ構成の投光装置である。回転楕円体の一部で形成された反射鏡の第一の焦点付近に配置された球形状の光源403から、反射鏡401で収束され、集光レンズで集光された光(点線)の結像位置406と、直接集光レンズ404に入射して集光された光(細線)の結像位置404を示した。光源が大きくなるに伴い結像も広がりをもつ。なお、実際には、球形状の光源の場合、点光源の場合に比べて図4bに示すように、反射鏡で反射されて集光レンズに入射する光は多様な経路をとりうるため、集光レンズで集光される光の結像は複雑になる。
【0006】
被投光体が高速で広範囲を移動するなど、被投光体との距離や大きさの特定が難しい場合には、光ビームの大きさを広くした近距離用の投光装置と、光ビームの大きさを狭くした遠距離用の投光装置などを複数個準備し、被投光体との距離を公知の距離測定装置等で測定して最適な投光器を選択する方法も提案されている。
また、投光装置と被投光体との距離が著しく短い場合は、集光レンズの前面に拡散フィルタを装着する方法などもある。
【0007】
道路上を走行する車輌は、大きさや速度が様々であるが、速度監視記録装置は、限られた時間内に速度違反車両か否かを判定し、速度違反車両と判定した場合には、車両の大きさや距離の如何に拘わらず鮮明な画像を確実に記録できなければならない。このため、被写体の位置に拘わらず、充分な照度を確保できる投光器が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−289009 プロジェクタ型ランプ
【特許文献2】特許第3634763号 プロジェクタ型ランプ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の方法は、投光装置を大型化したり複数部分に分割したりするため、設置場所の制約や取扱上の難点があるとともに経済面からも課題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
二つの焦点を有する回転楕円系の反射鏡と、該反射鏡の第一焦点付近に配置された光源と、該光源からの光が収束する第二焦点付近に焦点を有するように配置された集光レンズとを備えた投光装置において、前記集光レンズが、光軸中心が一致し、焦点距離、外形寸法および結像位置が異なる複数の集光レンズの一部または全部で組合せられていることを特徴とする。
【0011】
回転放物面系の反射鏡と、該反射鏡の焦点付近に配置された光源と、反射鏡の中心軸上に配置された集光レンズとを備えた投光装置において、前記集光レンズが、光軸中心が一致し、焦点距離、外形寸法および結像位置が異なる複数の集光レンズの一部または全部で組合せられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
投光装置からの被投光体の距離や被投光体の大きさ、投光装置に対する被投光体の移動速度にかかわらず、投光装置から被投光体に充分な照度を得る投光が可能となる。
【実施例1】
【0013】
図5は、光軸中心504が一致し、焦点距離、外形寸法および結像位置が異なるn個のレンズの全部または一部で構成した複合型集光レンズの正面図510と側面図520を示している。本例では、最も内側のレンズL1、501、内側から2番目のレンズL2、502、以下、順次外側に、・・・、レンズLn、503を配置した構成とし、それぞれの焦点をf1、f2、・・・、fnとしている。
【0014】
図6は、回転楕円体の一部で形成された反射鏡601と、回転楕円体の第一の焦点付近に支持棒602で配置された光源603と、回転楕円体の第二の焦点付近に焦点を有する複合型集光レンズ611を組み合わせた投光装置である。
反射鏡601で収束され、複合型集光レンズ604で集光された光は、複合型集光レンズの後方に結像する。複合型集光レンズを構成する最も内側のレンズ(L1)605に入射した光は、後方位置608に、内側から二番目のレンズ(L2)に入射した光は後方位置609に、以下同様に、n番目のレンズ(Ln)に入射した光は後方位置610に結像する。
【0015】
図6に示したように、回転楕円体の一部で形成された反射鏡601と、回転楕円体の第一の焦点付近に支持棒602で配置された光源603と、回転楕円体の第二の焦点付近に焦点を有し、光軸中心605が一致し、焦点距離、外形寸法および結像位置が異なるn個のレンズの一部または全部で構成した複合型集光レンズ604を使用することにより、ひとつの光源からの光を、複合型集光レンズに近い位置から離れた位置に複数の光の結像として形成することが出来る。複数の光の結像の位置、結像の大きさ、結像の光量は、光源の光度、大きさによるほか、複合型集光レンズを構成する個々のレンズの形状、寸法、焦点距離等により決定することができる。
【0016】
図7は、回転放物面体の一部で形成された反射鏡701の焦点の近傍に、支持棒702で支持された光源703を配置し、この光源703からの光が反射鏡701により収束される位置に、図6と同様な複合型集光レンズを配置した投光装置を示している。反射鏡を回転楕円体型から回転放物面体型に置き換えた他は、実施例1と同様な原理により複合型集光レンズに近い位置から離れた位置に複数の光の結像を形成することが出来ることを示している。
複合型集光レンズを構成する個々のレンズによる結像の仕組みについては実施例1の図6における回転楕円体の一部で形成された反射鏡によるものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】楕円反射鏡+単一集光レンズの投光装置
【図2】回転放物面反射鏡+単一集光レンズの投光装置
【図3】楕円反射鏡+単一集光レンズ(位置調整棒付き)の投光装置
【図4】楕円反射鏡+単一集光レンズの投光装置
【図5】複合型集光レンズ
【図6】楕円反射鏡+複合集光レンズの投光装置
【図7】回転放物面反射鏡+複合集光レンズの投光装置
【符号の説明】
【0018】
101・・・回転楕円系反射鏡、102・・・光源支持棒、103・・・光源、104・・・集光レンズ、105・・・結像位置、106・・・結像位置、f1・・・回転楕円体反射鏡の第一の焦点、f2・・・回転楕円体反射鏡の第二の焦点、f3・・・集光レンズの第一の焦点、f4・・・集光レンズの第二の焦点、201・・・回転楕円系反射鏡、202・・・光源位置調位置、203・・・光源、204・・・集光レンズ、205・・・光軸、206・・・結像位置、207・・・結像位置、f1・・・回転楕円体反射鏡の第一の焦点、f2・・・回転楕円体反射鏡の第二の焦点、f3・・・集光レンズの第一の焦点、f4・・・集光レンズの第二の焦点、301・・・回転楕円系反射鏡、302・・・光源支持棒、303・・・光源、304・・・集光レンズ、305・・・結像位置、306・・・結像位置、f1・・・回転楕円体反射鏡の第一の焦点、f2・・・回転楕円体反射鏡の第二の焦点、f3・・・集光レンズの第一の焦点、f4・・・集光レンズの第二の焦点、401・・・回転楕円系反射鏡、402・・・光源支持棒、403・・・光源、404・・・集光レンズ、405・・・結像位置、406・・・結像位置、407・・・光軸、411・・・回転楕円系反射鏡、412・・・光源支持棒、413・・・光源、414・・・集光レンズ、417・・・光軸、501・・・レンズ1、502・・・レンズ2、503・・・レンズn、504・・・光軸、510・・・正面図、511・・・側面図、f1・・・レンズ1の焦点、f2・・・レンズ2の焦点、fn・・・レンズnの焦点、601・・・回転楕円系反射鏡、602・・・光源支持棒、603・・・光源、604・・・光軸、605・・・レンズ1、606・・・レンズ2、607・・・レンズn、608・・・結像位置、609・・・結像位置、610・・結像位置、611・・・複合型集光レンズ、701・・・回転楕円系反射鏡、702・・・光源支持棒、703・・・光源、704・・・複合型集光レンズ、705・・・光軸の中心、706・・・結像位置、707・・・結像位置、708・・・結像位置、709・・・第一のレンズ、710・・・第二のレンズ、711・・・第nのレンズ、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの焦点を有する回転楕円系の反射鏡と、該反射鏡の第一焦点付近に配置された光源と、該光源からの光が収束する第二焦点付近に焦点を有するように配置された集光レンズとを備えた投光装置において、
前記集光レンズが、光軸中心が一致し、焦点距離、外形寸法および結像位置が異なる複数の集光レンズの一部または全部で組合せられていることを特徴とする、連続投光装置またはフラッシュ投光装置。
【請求項2】
回転放物面系の反射鏡と、該反射鏡の焦点付近に配置された光源と、反射鏡の中心軸上に配置された集光レンズとを備えた投光装置において、
前記集光レンズが、光軸中心が一致し、焦点距離、外形寸法および結像位置が異なる複数の集光レンズの一部または全部で組合せられていることを特徴とする、連続投光装置またはフラッシュ投光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−193846(P2009−193846A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34428(P2008−34428)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】