説明

投受光系及びそれを用いた光学的生体情報測定装置

【課題】軽量・コンパクトでありながら輝度重心の安定した照明が可能な投受光系と、その投受光系を備えることにより再現性の高い測定が可能な光学的生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】投受光系10は、キセノン管1側からの光LWを入射口2pから出射口2qへと導光して生体9側へ出射する投光ファイバー束2と、生体9側から戻ってきた光LA,LBを入射口3pA,3pBから出射口3qA,3qBへと導光して2波長受光素子5A,5B側へ出射する受光ファイバー束3と、を備える。キセノン管1の輝度ムラが最も大きい方向に対応する方向を主方向Mとし、その主方向Mに対して対応する直交方向を副方向Sとするとき、投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBとが副方向Sに隣り合って位置し、投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qが副方向Sよりも主方向Mに長い面形状を有し、投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで副方向Sに同じ素線配列を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投受光系及びそれを用いた光学的生体情報測定装置に関するものであり、例えば、血液中のビリルビン濃度を皮膚の表面から測定する経皮的ビリルビン濃度測定装置(いわゆる黄疸計)等の光学的生体情報測定装置と、それに用いる投受光系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、黄疸、特に新生児の重症黄疸は死に至る可能性が高く、また、仮に死を免れても脳性麻痺等の後遺症を残す核黄疸へと進行する恐れがあるため、その早期発見が極めて重要な課題となっている。黄疸の強さの正確な判定は、新生児から採血した血清中のビリルビン濃度の測定によるべきであるが、全ての新生児について採血を行うことは困難であり、また、不必要である場合が多い。
【0003】
黄疸計は、新生児の皮下組織に存在するビリルビンの黄色味の度合を、青色(中心波長450nm)と緑色(中心波長550nm)の2波長域の光学濃度差としてとらえる。プローブの先端を新生児の前額部あるいは胸部に押し当て、照明用ファイバーを通して光源からの光を照射し、皮膚及び皮下組織を経由した後方散乱光のうち上記2波長をセンサで受光する。緑色光量に対する青色光量の比から黄色の度合いが測定され、その測定値から黄疸の度合いが判断される。
【0004】
経皮的ビリルビン濃度測定の値は、投受光系の実効光路長に依存する。したがって、機器ごとに実効光路長が異なると、同じ新生児を測定した場合でも機器によって異なる結果を示すため、入射口の輝度ムラを抑える等、輝度重心を一定に保つ手段が必要となる。
【0005】
特許文献1や特許文献2では、リング状に配置したファイバー束の素線配列について、入射口(光源側)と出射口(生体照明側)とをランダムに対応させることで出射口の輝度ムラを抑える構成が開示されている。また、特許文献3では、ファイバーの端面を荒らして拡散性を持たせることで輝度ムラを抑える方法も開示されている。さらに、特許文献4では、出射口に拡散板を入れることで均一照明する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−127034号公報
【特許文献2】特開2000−279398号公報
【特許文献3】特開2005−323844号公報
【特許文献4】登録実用新案第3118554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハンディタイプの黄疸計では、製品の小型軽量化が必要である。しかし、特許文献1や特許文献2で提案されているように、ファイバー束の素線配列を入射口と出射口でランダムに対応させるためには、素線をランダムに編み込むために必要な寸法以上に、ファイバーの長さを設定しなければならない。また、特許文献4で提案されているように、照明ムラを拡散板で抑える方法も、拡散板を配置するためのスペースを確保する必要があるため、小型軽量化との両立が困難である。さらに、特許文献3で提案されているようにファイバーの端面を荒らしたり、あるいは特許文献4で提案されているように拡散板を配置したりする等、出射口の輝度を均一化する方法を採用すると、測定に必要な光量を確保することが困難になる。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、軽量・コンパクトでありながら輝度重心の安定した照明が可能な投受光系と、その投受光系を備えることにより再現性の高い測定が可能な光学的生体情報測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明の投受光系は、光源側からの光を入射口から出射口へと導光して生体側へ出射する投光ファイバー束と、生体側から戻ってきた光を入射口から出射口へと導光して光検出側へ出射する受光ファイバー束と、を備えた光学的生体情報測定用の投受光系であって、光源の輝度ムラが最も大きい方向に対応する方向を主方向とし、その主方向に対して対応する直交方向を副方向とするとき、前記投光ファイバー束の出射口と前記受光ファイバー束の入射口とが副方向に隣り合って位置し、前記投光ファイバー束の入射口及び出射口が副方向よりも主方向に長い面形状を有し、前記投光ファイバー束が入射口と出射口とで副方向に同じ素線配列を有することを特徴とする。
【0010】
第1の発明によると、投光ファイバー束が入射口と出射口とで副方向に同じ素線配列を有するため、副方向の輝度ムラは主方向よりも小さくなり、輝度重心が安定化される。さらに、投光ファイバー束の出射口に対して受光ファイバー束の入射口が副方向に隣り合って位置するため、輝度重心と受光ファイバー束の入射口との距離が一定になり、照明光の輝度ムラは実効光路長に影響せず、その結果、実効光路長は一定に保たれる。
【0011】
第2の発明の投受光系は、上記第1の発明において、前記投光ファイバー束が入射口と出射口とで主方向に同じ素線配列を有することを特徴とする。
【0012】
第2の発明によると、入射口から出射口まで投光ファイバー束の主方向の素線配列を同じにできるため、構成が簡単になる。
【0013】
第3の発明の投受光系は、上記第1の発明において、前記投光ファイバー束が入射口と出射口とで主方向に異なった素線配列を有することを特徴とする。
【0014】
第3の発明によると、投光ファイバー束の主方向の素線配列が任意であり、入射口から出射口までランダムに変化してもよいため、構成が容易になる。
【0015】
第4の発明の投受光系は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記投光ファイバー束の出射口と前記受光ファイバー束の入射口とが同心円状に位置することを特徴とする。
【0016】
第4の発明によると、照明用の投光光路と検出用の受光光路とを軸対称に構成することができるため、コンパクトな構成で輝度重心を安定化させることができる。
【0017】
第5の発明の投受光系は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記投光ファイバー束の出射口と前記受光ファイバー束の入射口とが平行に位置することを特徴とする。
【0018】
第5の発明によると、照明用の投光光路と検出用の受光光路とを面対称に構成することができるため、簡単な構成で輝度重心を安定化させることができる。
【0019】
第6の発明の投受光系は、上記第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記投光ファイバー束の入射口及び出射口のうち一方が他方よりも副方向に短いことを特徴とする。
【0020】
第6の発明によると、光源の輝度ムラが副方向に大きい場合でも、投光ファイバー束の入射口が副方向に短くなるのに対応して輝度重心が安定化される。
【0021】
第7の発明の投受光系は、上記第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記投光ファイバー束が複数本の単芯ファイバーから成り、前記投光ファイバー束の入射口及び出射口で、前記単芯ファイバーが副方向に1本ずつ位置するように主方向に一列に配置されていることを特徴とする。
【0022】
第7の発明によると、副方向の輝度ムラは主方向よりもはるかに小さくなるので、輝度重心の変化はほとんど生じない。
【0023】
第8の発明の光学的生体情報測定装置は、上記第1〜第7のいずれか1つの発明に係る投受光系を備えたことを特徴とする。
【0024】
第9の発明の光学的生体情報測定装置は、上記第8の発明において、主方向に長い線状光源を有することを特徴とする。
【0025】
第10の発明の光学的生体情報測定装置は、上記第8の発明において、主方向に配列された複数個の光源を有することを特徴とする。
【0026】
第8〜第10のいずれか1つの発明によると、輝度重心の安定した照明により、再現性の高い測定結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、投光ファイバー束の出射口と受光ファイバー束の入射口とが副方向に隣り合って位置し、投光ファイバー束の入射口及び出射口が副方向よりも主方向に長い面形状を有し、投光ファイバー束が入射口と出射口とで副方向に同じ素線配列を有する構成になっているため、軽量・コンパクトでありながら輝度重心の安定した照明が可能な投受光系を実現することができる。そして、その投受光系を備えることにより再現性の高い測定が可能な光学的生体情報測定装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施の形態を模式的に示す斜視図。
【図2】第1の実施の形態の投光ファイバー束の出射口等を模式的に示す図。
【図3】第2の実施の形態の投光ファイバー束の出射口等を模式的に示す図。
【図4】第3の実施の形態の投光ファイバー束の出射口等を模式的に示す図。
【図5】第4の実施の形態の投光ファイバー束の出射口等を模式的に示す図。
【図6】輝度重心の変化に伴う実効光路長の変化を説明するための光学断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る投受光系及び光学的生体情報測定装置の実施の形態等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0030】
《第1の実施の形態(図1,図2,図6)》
図1に、投受光系等の第1の実施の形態の概略構成を模式的に示す。光学的生体情報測定装置である黄疸計20は、図1に示すように、光源であるキセノン管1と、投受光系10と、拡散板4A,4Bと、2波長受光素子5A,5Bと、を備えており、投受光系10は、投光ファイバー束2と、受光ファイバー束3A,3Bと、を備えている。投光ファイバー束2は、キセノン管1側からの照明光(白色光)LWを入射口2pから出射口2qへと導光して生体(測定対象)9側へ出射する投光系を構成しており、受光ファイバー束3A,3Bは、生体9側から戻ってきた検出光LA,LBを入射口3pA,3pBから出射口3qA,3qBへとそれぞれ導光して光検出側(拡散板4A,4Bの側)へ出射する2光路タイプの受光系を構成している。
【0031】
投光ファイバー束2と受光ファイバー束3A,3Bは、いずれも複数の光ファイバーから成る導光部材であり、そのファイバー束端面で光の入射・出射を行う構成になっている。また、投光ファイバー束2と受光ファイバー束3A,3Bとの間は遮光されているので、生体9を介さずにファイバー束間で光が進行することはない。なお、受光ファイバー束3A,拡散板4A及び2波長受光素子5A、又は受光ファイバー束3B,拡散板4B及び2波長受光素子5Bを必要に応じて省略して、1光路タイプの受光系を構成してもよい。
【0032】
キセノン管1は直線状に長い線状光源であるため、投光ファイバー束2の入射口2pも、それと対応して配置されるように直線状に長い長方形の面形状を有している。投光ファイバー束2の出射口2qはリング状になっており、出射口2qのリング内側には受光ファイバー束3Aの入射口3pA(円形状)が位置し、出射口2qのリング外側には受光ファイバー束3Bの入射口3pB(リング状)が位置している。つまり、投光ファイバー束2の出射口2qと、受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBと、は同心円状に位置している。なお、キセノン管1の代わりに、複数個の光源(例えば、LED:light emitting diode)を一方向に並べて配列してもよく、その場合でも上記と同様に投受光系10を適用することができる。
【0033】
投光ファイバー束2の出射口2qと、受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBと、が位置する部分は、黄疸計20のプローブの先端部分である。そのプローブ先端を生体(例えば、新生児の前額部又は胸部)9に押し当てて、キセノン管1を発光させると、キセノン管1から出射した照明光LWが、入射口2pから投光ファイバー束2内に入射し、入射口2pから出射口2qへと導光されて、出射口2qから生体9に向けてリング状に照射される。
【0034】
図6に示すように、生体9に対して表皮9aから入射した照明光LWは、真皮9bを通過した後、皮下組織9cで散乱される。そして、後方散乱した照明光LWが生体9外へ出射して、検出光LA,LBとなる。生体9を経由した検出光LA,LBは、図1に示すように、受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBから円形状の出射口3qA,3qBへとそれぞれ導光されて、出射口3qA,3qBから出射する。そして、拡散板4A,4Bで拡散されることにより輝度ムラが解消された後、2波長受光素子5A,5Bでそれぞれ受光される。
【0035】
2波長受光素子5A,5Bは、受光面に緑色フィルターと青色フィルターを有しており、青色(中心波長450nm)の透過光量と緑色(中心波長550nm)の透過光量を検出する。緑色を基準とした青色の光量(緑色光量に対する青色光量の比)から黄色の度合いが測定され、例えば、黄色の度合いが大きいと緑色を基準とした青色の光量が低くなるので、黄疸の度合いが強いと判断される。つまり、生体9の皮下組織9cに存在するビリルビンの黄色味の度合が、青色と緑色の2波長域の光学濃度差としてとらえられる。なお、この実施の形態のように2光路タイプの受光系の場合、表皮9aの厚みや色が異なっていても、2つの光路で得られた測定値の差をとることによって、より正確な黄疸強度の測定が可能となる。
【0036】
経皮的ビリルビン濃度の測定値は、投受光系10の実効光路長(投受光系10の出射から入射までの平均的な光路長)に依存する。実効光路長は照明光LWの輝度重心と検出光LA,LBの受光位置との関係で決まるので、輝度重心が変化すると実効光路長も変化する。つまり、図6に示すように、輝度重心の差Δに対応した実効光路長の差が生じることになる。また、照明光LWの輝度重心は、光源の輝度ムラの変化(発光分布の経時的変化)に伴って変化する。これにより、受光側の入射口3pA,3pBからの見込み角の範囲に入射する後方散乱光の実効光路長が変化するため、測定の再現性が悪くなる。例えば同じ生体9を測定した場合でも、測定のたびに実効光路長が変化すると測定のたびに測定値が変化してしまい、機器ごとに実効光路長が異なると機器によって測定値に差が生じてしまう。したがって、実効光路長を一定に保つために輝度重心を一定に保つことが必要となる。
【0037】
例えば、投光側の出射口2qにおいて、その径方向に輝度ムラがあると、その輝度重心が径方向に変化して、照明光LWの輝度重心と受光側の入射口3pA,3pBとの距離が変化するため、実効光路長も変化する。出射口2qの円周方向に輝度ムラがあっても、径方向の輝度重心の位置が一定であれば、輝度重心と入射口3pA,3pBとの距離が一定になるので、実効光路長も一定になる。つまり、実効光路長に影響を与えるのは、投光側の出射口2qの径方向の輝度ムラである。そこで、この投受光系10では、照明光LWの輝度重心を安定化させるために、図2に示すように、投光ファイバー束2の素線配列に特徴のある構成を採用している。
【0038】
図2(A)は投光ファイバー束2の入射口2pを示しており、図2(B)は投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBを示している。投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qにおいて、ハッチングが付された部分は暗い部分を表しており、ハッチングが付されていない部分は明るい部分を表している。つまり、投光ファイバー束2の素線配列は入射口2pと出射口2qとで同じになっている。
【0039】
図2に示すように、キセノン管1(図1)の輝度ムラが最も大きい方向に対応する方向を主方向Mとし、その主方向Mに対して対応する直交方向を副方向Sとする。キセノン管1のように直線状の線状光源の場合、管の長方向に輝度ムラが最も大きくなるため、その長方向が輝度ムラの最も大きい方向であり、管の短方向に輝度ムラが最も小さくなるため、その短方向が輝度ムラの最も小さい方向である。複数個の光源(LED等)を並べた場合も同様であり、配列の長方向が輝度ムラの最も大きい方向であり、配列の短方向が輝度ムラの最も小さい方向である。
【0040】
投光ファイバー束2の入射口2pは、キセノン管1と対向するように配置されているため、投光ファイバー束2の入射口2p側において、主方向Mは長方形の長辺方向(長方向)に相当し、副方向Sは短辺方向(短方向)に相当する。また、投光側の出射口2qと受光側の入射口3pA,3pBは同心円状に配置されているため、投光ファイバー束2の出射口2q側において、主方向Mは円周方向に相当し、副方向Sは径方向に相当する。
【0041】
第1の実施の形態における投受光系10は、図2に示すように、投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBとが副方向Sに隣り合って位置し、投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qが副方向Sよりも主方向Mに長い面形状を有し、投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで副方向Sに同じ素線配列を有する構成になっている。
【0042】
投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで副方向Sに同じ素線配列を有するため、副方向Sの輝度ムラは主方向Mよりも小さくなり、輝度重心が安定化される。さらに、投光ファイバー束2の出射口2qに対して受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBが副方向Sに隣り合って位置するため、輝度重心と入射口3pA,3pBとの距離が一定になり、照明光LWの輝度ムラは実効光路長に影響せず、その結果、実効光路長は一定に保たれる。したがって、第1の実施の形態の投受光系10によれば、軽量・コンパクトでありながら輝度重心の安定した照明が可能であり、その投受光系10を備えた黄疸計20により再現性の高い測定が可能である。
【0043】
投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで主方向Mに同じ素線配列を有しているため、図2(B)に示すように出射口2qにおいても主方向Mには輝度ムラがある。しかし、主方向Mに輝度ムラがあっても、副方向Sの輝度重心の位置が一定であれば輝度重心と受光側の入射口3pA,3pBとの距離は一定になるので、照明光LWの輝度ムラは実効光路長に影響せず、実効光路長は一定に保たれる。また、投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで主方向Mに同じ素線配列を有するため、入射口2pから出射口2qまで投光ファイバー束2の主方向Mの素線配列を複雑な配列にする必要はなく、簡単な構造にすることができる。つまり、投光ファイバー束2の素線配列をランダムに対応させるための距離を確保する必要がなく、かつ、拡散板が不要である(部品点数の削減)ため、コンパクトな投受光系10を実現することができる。
【0044】
投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBとが同心円状に位置するため、照明用の投光光路と検出用の受光光路とを軸対称に構成することができる。これにより、コンパクトな構成で輝度重心を安定化させることができる。また、投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qのうち一方を他方よりも副方向に短くしてもよい。投光ファイバー束2の入射口2pが出射口2qよりも副方向Sに短い構成にすれば、キセノン管1の輝度ムラが副方向に大きい場合でも、効果的に輝度重心を安定化させることができる。逆に、投光ファイバー束2の出射口2qが入射口2pよりも副方向Sに短い構成にすれば、キセノン管1からの光量を確保しながら輝度重心を安定化させることができる。
【0045】
《第2の実施の形態(図3)》
図3に、第2の実施の形態の投光側の出射口2q等を模式的に示す。図3(A)は投光ファイバー束2の入射口2pを示しており、図3(B)は投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBを示している。投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qにおいて、ハッチングが付された部分はそれぞれ異なった暗さの部分を表しており、ハッチングが付されていない部分は明るい部分を表している。つまり、投光ファイバー束2の素線配列は入射口2pと出射口2qとで主方向Mに異なっている。
【0046】
第2の実施の形態は前記第1の実施の形態(図1,図2)の変形例であり、投光ファイバー束2の素線配列が入射口2pと出射口2qとで異なっていること以外は、第1の実施の形態と同様の光学構成になっている。投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで主方向Mに異なった素線配列(任意のランダムな対応関係)を有しているが、図3(B)に示すように出射口2qにおいても主方向Mには輝度ムラがある。しかし、前記第1の実施の形態と同様、主方向Mに輝度ムラがあっても、副方向Sの輝度重心の位置が一定であれば輝度重心と受光側の入射口3pA,3pBとの距離は一定になるので、照明光LWの輝度ムラは実効光路長に影響せず、実効光路長は一定に保たれる。また、投光ファイバー束2の主方向Mの素線配列が任意であり、入射口2pから出射口2qまでランダムに変化してもよいため、構成が容易になる。
【0047】
《第3の実施の形態(図4)》
図4に、第3の実施の形態の投光側の出射口2q等を模式的に示す。図2(A),(B)と同様、図4(A)は投光ファイバー束2の入射口2pを示しており、図4(B)は投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBを示している。
【0048】
第3の実施の形態は前記第1の実施の形態(図1,図2)の変形例であり、投光ファイバー束2の出射口2qと受光ファイバー束3A,3Bの入射口3pA,3pBとが平行に位置すること以外は、第1の実施の形態と同様の光学構成になっている。前記第1の実施の形態では投光側の出射口2qと受光側の入射口3pA,3pBとが同心円状に位置しているが、第3の実施の形態のように投光側の出射口2qと受光側の入射口3pA,3pBとが平行に位置している場合でも、同様の作用により輝度重心を安定化させることができる。また、照明用の投光光路と検出用の受光光路とを面対称に構成することができるため、簡単な構成で輝度重心を安定化させることができる。
【0049】
前記第2の実施の形態と同様に、投光ファイバー束2が入射口2pと出射口2qとで主方向Mに異なった素線配列(任意のランダムな対応関係)を有するようにしてもよい。また、投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qのうち一方を他方よりも副方向に短くしてもよい。投光ファイバー束2の入射口2pが出射口2qよりも副方向Sに短い構成にすれば、キセノン管1の輝度ムラが副方向に大きい場合でも、効果的に輝度重心を安定化させることができる。逆に、投光ファイバー束2の出射口2qが入射口2pよりも副方向Sに短い構成にすれば、キセノン管1からの光量を確保しながら輝度重心を安定化させることができる。
【0050】
《第4の実施の形態(図5)》
図5に、第4の実施の形態の投光側の出射口2q等を模式的に示す。第4の実施の形態は前記第1の実施の形態(図1,図2)の変形例であり、投光ファイバー束2が複数本の単芯ファイバーから成り、投光ファイバー束2の入射口2p及び出射口2qで、単芯ファイバーが副方向Sに1本ずつ位置するように主方向Mに一列に配置されていること以外は、第1の実施の形態と同様の光学構成になっている。この構成によると、キセノン管1に輝度ムラがあっても、照明光LWは単芯ファイバー内でミキシングされて、出射口2qでは均一な輝度になる。これにより、副方向Sの輝度勾配が主方向Mよりもはるかに小さくなるので、輝度重心の変化はほとんど生じない。
【符号の説明】
【0051】
1 キセノン管(光源)
2 投光ファイバー束
2p 投光側の入射口
2q 投光側の出射口
3A,3B 受光ファイバー束
3pA,3pB 受光側の入射口
3qA,3qB 受光側の出射口
4A,4B 拡散板
5A,5B 2波長受光素子
9 測定対象(生体)
9a 表皮
9b 真皮
9c 皮下組織
10 投受光系
20 黄疸計(光学的生体情報測定装置)
LW 照明光
LA,LB 検出光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源側からの光を入射口から出射口へと導光して生体側へ出射する投光ファイバー束と、生体側から戻ってきた光を入射口から出射口へと導光して光検出側へ出射する受光ファイバー束と、を備えた光学的生体情報測定用の投受光系であって、
光源の輝度ムラが最も大きい方向に対応する方向を主方向とし、その主方向に対して対応する直交方向を副方向とするとき、前記投光ファイバー束の出射口と前記受光ファイバー束の入射口とが副方向に隣り合って位置し、前記投光ファイバー束の入射口及び出射口が副方向よりも主方向に長い面形状を有し、前記投光ファイバー束が入射口と出射口とで副方向に同じ素線配列を有することを特徴とする投受光系。
【請求項2】
前記投光ファイバー束が入射口と出射口とで主方向に同じ素線配列を有することを特徴とする請求項1記載の投受光系。
【請求項3】
前記投光ファイバー束が入射口と出射口とで主方向に異なった素線配列を有することを特徴とする請求項1記載の投受光系。
【請求項4】
前記投光ファイバー束の出射口と前記受光ファイバー束の入射口とが同心円状に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の投受光系。
【請求項5】
前記投光ファイバー束の出射口と前記受光ファイバー束の入射口とが平行に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の投受光系。
【請求項6】
前記投光ファイバー束の入射口及び出射口のうち一方が他方よりも副方向に短いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の投受光系。
【請求項7】
前記投光ファイバー束が複数本の単芯ファイバーから成り、前記投光ファイバー束の入射口及び出射口で、前記単芯ファイバーが副方向に1本ずつ位置するように主方向に一列に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の投受光系。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の投受光系を備えたことを特徴とする光学的生体情報測定装置。
【請求項9】
主方向に長い線状光源を有することを特徴とする請求項8記載の光学的生体情報測定装置。
【請求項10】
主方向に配列された複数個の光源を有することを特徴とする請求項8記載の光学的生体情報測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−163953(P2011−163953A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27392(P2010−27392)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】