説明

投影画像生成装置、方法、及びプログラム

【課題】2以上の領域を含む投影画像を生成する際に、それら領域を観察に適した状態で含む投影画像を生成する。
【解決手段】表示対象領域設定手段12は、三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定する。表示変換条件設定手段13は、表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する。ボクセル投影手段14は、三次元画像データのうちの表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成する。画像変換手段15は、投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、各ボクセルが属する領域に対して設定された表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、投影画像を表示用画像に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影画像生成装置、方法、及びプログラムに関し、更に詳しくは、三次元画像データに対して投影処理を行って表示用の投影画像を生成する投影画像生成装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元画像データに対して投影処理を行って投影画像を生成する手法の1つとして、最大値投影法(MIP:maximum intensity projection)が知られている。最大値投影法では、投影面から伸ばした直線上に存在するボクセルの最大値を投影画像の画素値とする。投影面上に投影された投影画像の画素値は三次元画像データのボクセル値であるため、これを所定の表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換した上で画像表示を行う。表示変換には、例えばウィンドウ変換が用いることができる。ウィンドウ変換のパラメータには、ウィンドウセンター及びウィンドウ幅が含まれる。
【0003】
最大値投影法は、造影剤を用いたCT(Computed Tomography)撮影やMRI(magnetic resonance imaging)での血管観察のように、対象が高信号を有する場合に用いられることが多い。ただし、最大値投影法で得られる表示用画像では、投影面から見た奥行き方向の情報が失われるため、例えば画像に造影血管と骨とが含まれる場合など、対象物以外に高信号を有するものがあると観察が困難になる。例えば観察対象である血管部分の信号値(ボクセル値)よりも骨の部分の信号値が高いと、骨の部分が多く投影面に投影され、その結果、血管部分が骨に隠れる形となって、血管部分の観察が困難になる
【0004】
上記のような問題を回避するために、最大値投影法では表示対象を限定した上で投影画像を生成することが多い。例えば三次元データに対して何らかの領域や対象を抽出し、その抽出結果を、属性値として抽出された領域に対応するボクセルに与える。例えば1つのボクセルに対して1byteの情報空間を割り当て、各ビットをそれぞれ異なる属性に対応させることで、各ボクセルに8つの属性を与えることができる。投影画像の生成に際して、表示対象とすべき属性、或いは表示対象から除外すべき属性を指定することで、特定の属性の領域のみ、或いは特定の属性の領域を除外して画像表示を行うことができる。
【0005】
例えば高信号の骨の部分を投影面に対する投影の対象から除外することで、観察対象である血管部分を投影面に投影することができ、血管の様子を良好に観察できる。また表示に際しては、観察対象だけでなく、その周辺構造も表示されるようにすることが好ましい。周辺構造を表示することで、観察対象の位置が把握しやすくなる。
【0006】
ここで、観察構造と周辺構造とにおけるボクセル値が同じ値であるか、或いはボクセル値が近い値の場合、観察構造と周辺構造との区別が付きにくくなり、観察構造の観察が困難になる。この問題に対し、特許文献1では、周辺構造に該当するボクセルの信号値(ボクセル値)を、所定の変換処理により得られた信号値に付け替え、信号値が付け替えられた三次元画像データに対して投影処理を行うことが記載されている。例えば観察構造として冠動脈血管を考え、周辺構造として心臓を考えたとき、心臓部分に対応するボクセルの信号値を、冠動脈血管に対応するボクセルの信号値よりも相対的に小さい値の信号値に付け替える。このように信号値の付け替えを行った画像に対して最大値投影法により投影画像を生成することで、冠動脈血管部分の詳細な観察が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−206965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、周辺構造のボクセル値が観察構造のボクセル値よりも大きな値であるときでも、ボクセル値の付け替えを行うことで、投影面に観察構造のボクセルを投影することができる。しかし、特許文献1においては、観察構造と周辺構造とを、同一の表示変換条件で表示用の画像に変換している。例えば、観察構造の信号値が比較的広い範囲の間に緩やかに変化するのに対し、周辺構造の信号値は比較的狭い範囲で急峻に変化することがある。このような場合に、投影面に投影されたボクセル値を同一の変換条件で表示用画像の画素値に変換すると、全体として適切な画像を得ることができない。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、2以上の領域を含む投影画像を生成する際に、それら領域を観察に適した状態で含む投影画像を生成可能な投影画像生成装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体を撮影した複数の領域を含む三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定する表示対象領域設定手段と、前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する表示変換条件設定手段と、前記三次元画像データのうちの前記表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成するボクセル投影手段と、前記投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、該ボクセルが属する領域に対して設定された前記表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、前記投影画像を表示用画像に変換する画像変換手段とを備えることを特徴とする投影画像生成装置を提供する。
【0011】
本発明の投影画像生成装置は、前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のうちの少なくとも1つの領域に該当するボクセルのボクセル値を、当該領域に対して設定された所定の信号変換条件に従って変換するボクセル値変換手段を更に備え、前記ボクセル投影手段が、ボクセル値が変換された三次元画像データに対して投影処理を行う構成を採用することができる。
【0012】
前記表示変換条件は、前記ボクセル値と表示用画像における画素値との対応関係を定義するものとすることができる。
【0013】
前記画像変換手段が、ウィンドウ変換により前記ボクセル値を前記表示画像用画像における画素値に変換し、前記表示変換条件設定手段が、前記ウィンドウ変換のパラメータを表示変換条件として設定する構成としてもよい。
【0014】
上記に代えて、前記画像変換手段が、カラーマップに従って前記ボクセル値を前記表示画像用画像における画素値に変換し、前記表示変換条件設定手段が、前記カラーマップを変換条件として設定する構成としてもよい。
【0015】
前記ボクセル投影手段は、最大値投影法又は最小値投影法により前記ボクセルに対して投影処理を行うことができる。
【0016】
表示対象領域設定手段が、前記三次元画像データに基づいて、該三次元画像データの中から前記表示対象として設定すべき領域を抽出することとしてもよい。
【0017】
前記ボクセル投影手段が、前記投影処理の際に前記投影画像における各画素が表示対象の領域のうちの何れの領域のボクセルを投影したものであるかを示す投影元領域情報を生成し、前記画像変換手段が、前記投影元領域情報を参照して、前記投影画像に投影されたボクセルが所属する領域を判別する構成としてもよい。
【0018】
本発明は、また、被検体を撮影した複数の領域を含む三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定するステップと、前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定するステップと、前記三次元画像データのうちの前記表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成するステップと、前記投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、該ボクセルが属する領域に対して設定された前記表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、前記投影画像を表示用画像に変換するステップとを有することを特徴とする投影画像生成方法を提供する。
【0019】
更に本発明は、コンピュータに、被検体を撮影した複数の領域を含む三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定する手順と、前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する手順と、前記三次元画像データのうちの前記表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成する手順と、前記投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、該ボクセルが属する領域に対して設定された前記表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、前記投影画像を表示用画像に変換する手順とを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の投影画像生成装置、方法、及びプログラムでは、表示対象とする少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する。投影処理を行って投影画像(投影面)にボクセルを投影し、投影画像における各ボクセル値を、各ボクセルが属する領域に対して設定された表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換する。例えば投影画像に投影されたボクセル値が同じ値であったとしても、投影元のボクセルが異なる領域に属する場合には、それぞれの領域に対して設定された表示変換条件で表示用画像への変換が行われるため、2以上の領域を投影画像に投影する際に、それら領域を観察に適した状態で含む表示用画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の投影画像生成装置を示すブロック図。
【図2】動作手順を示すフローチャート。
【図3】周辺構造の領域設定を示す図。
【図4】観察構造の領域設定を示す図。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ表示変換条件を示す図。
【図6】表示用の画像に変換した投影画像を示す図。
【図7】同一の表示条件で表示用画像に変換した例を示す図。
【図8】別の同一の表示条件で表示用画像に変換した例を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態の投影画像生成装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の投影画像生成装置を示す。投影画像生成装置10は、画像入力手段11、表示対象領域設定手段12、表示変換条件設定手段13、ボクセル投影手段14、及び画像変換手段15を有する。投影画像生成装置10内の各部の機能は、コンピュータが所定のプログラムに従って処理を実行することで実現可能である。
【0023】
画像入力手段11は、処理対象の三次元画像データ(以下、単に三次元データとも呼ぶ)を入力し、三次元データ記憶部21に格納する。画像入力手段11は、例えば被検体をマルチスライスCT装置で撮影したCTデータを三次元データとして入力する。三次元データの入力元の装置は特に限定されず、マルチスライスCT装置以外であってもよい。
【0024】
画像入力手段11は、三次元データに加えて、三次元データのボクセルを複数の領域に分割した結果を示す領域情報を入力し、領域情報記憶部22に記憶する。領域情報を外部から入力するのに代えて、投影画像生成装置10内に領域分割手段を設け、その領域分割手段を用いて三次元データを複数の領域に分割し、領域分割結果を領域情報記憶部22に記憶してもよい。
【0025】
表示対象領域設定手段12は、三次元データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定する。例えば三次元データが属性1から属性8までの8つの属性を用いて領域分割されているとき、表示対象領域設定手段12は、それら属性の任意の組み合わせを用いて表示対象の領域を設定してもよい。表示対象領域設定手段12は、例えば三次元データ中の心臓部分を周辺構造の領域として設定し、冠動脈部分を観察構造の領域として設定する。
【0026】
ボクセル投影手段14は、三次元データのうちの表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成する。ボクセル投影手段14は、例えば最大値投影法又は最小値投影法により投影画像を生成する。ボクセル投影手段14は、例えば任意の視点位置から投影面を介して三次元データにレイを飛ばし、レイが通過するボクセルのうち、最大値又は最小値を有するボクセルの値を投影面上に投影することで投影画像を生成する。
【0027】
表示変換条件設定手段13は、表示対象として設定された領域のそれぞれに対して、表示変換条件を設定する。ここで表示変換条件とは、投影画像におけるボクセル値と、その投影画像を表示用の画像に変換した際の画素値との対応関係を定義するものである。表示変換条件設定手段13は、例えば各領域に、領域ごとに異なる表示変換条件を設定する。
【0028】
画像変換手段15は、ボクセル投影手段14が投影処理を行うことで生成した投影画像を、表示用画像に変換する。画像変換手段15は、投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、そのボクセルが属する領域に対して設定された表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、投影画像を表示用画像に変換する。なお、本明細書において、“投影画像”という用語は、三次元データのボクセルを投影面に投影した画像を指すだけでなく、その画像を表示用の画像に変換したものを指す場合があるものとする。
【0029】
図2は、動作手順を示す。画像入力手段11は、例えばCT装置やMR装置で撮影された三次元データを入力する(ステップS1)。画像入力手段11は、CT装置やMR装置などから三次元データを直接受け取ってもよく、或いは記憶済みの三次元データを図示しない記憶装置から読み出してもよい。画像入力手段11は、入力した三次元データを三次元データ記憶部21に格納する。また画像入力手段11は、領域分割結果を示す領域情報を入力し、領域情報記憶部22に格納する。
【0030】
表示対象領域設定手段12は、三次元データ中の少なくとも2つの領域を表示対象領域として設定する(ステップS2)。表示対象領域設定手段12は、例えば三次元データ中の第1の領域と第2の領域とを、表示対象の領域として設定する。表示変換条件設定手段13は、表示対象領域として設定された領域のそれぞれに対し、画像変換手段15が投影画像から表示用画像に変換する際に用いる表示変換条件を設定する(ステップS3)。表示変換条件設定手段13は、例えば第1の領域に対して第1の表示変換条件を設定し、第2の領域に対して第2の表示変換条件を設定する。
【0031】
表示変換条件設定手段13は、例えば画像変換手段15がウィンドウ変換により投影画像に投影されたボクセル値を表示用画像の画素値に変換するときは、ウィンドウ変換のパラメータを表示変換条件として設定する。あるいは表示変換条件設定手段13は、画像変換手段15が投影画像のボクセル値と表示用画像における表示色との対応関係を定義するカラーマップも従って画像の変換を行う場合は、カラーマップを表示条件として設定してもよい。表示変換条件設定手段13は、画像変換手段15が投影画像の画素を投影元のボクセルがどの領域に所属するかに従って単一の色に変換する場合には、各領域がどの色に対応するかを表示条件として設定することもできる。
【0032】
ボクセル投影手段14は、例えば最大値投影法により、三次元データのボクセルを投影画像(投影面)に投影する(ステップS4)。このとき、ボクセル投影手段14は、投影画像に投影されたボクセルが、表示対象領域のうちのどの領域に属しているかを示す投影元領域情報を生成する。画像変換手段15は、投影画像の各画素の画素値、すなわち投影画像に投影された各ボクセルのボクセル値を、ボクセルが属する領域に対して設定された表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換する(ステップS5)。
【0033】
画像変換手段15は、ステップS5では、投影元領域情報を参照して、投影画像の画素ごとに、各画素に投影されたボクセルが、どの領域に属しているかを調べる。画像変換手段15は、例えば投影画像のある画素が三次元データの第1の領域に属するボクセルが投影された画素であるときは、第1の表示変換条件に従って投影画像の画素値を表示用画像の画素値に変換する。また、投影画像の別の画素が三次元データの第2の領域に属するボクセルが投影された画素である場合は、第2の表示変換条件に従って投影画像の画素値を表示用画像の画素値に変換する。画像変換手段15は、生成した表示用画像を表示モニタなどに出力し表示する(ステップS6)。
【0034】
以下、冠動脈部分と心臓部分とを、投影画像を用いて観察する場合を例に挙げて説明する。冠動脈部分は主に観察したい観察構造であり、心臓部分は周辺構造である。図3は、周辺構造の領域設定を示す。表示対象領域設定手段12は、三次元データを構成するボクセルのうち、心臓部分に該当するボクセルを表示対象の第1の領域として設定する。図4は、観察構造の領域設定を示す。表示対象領域設定手段12は、三次元データを構成するボクセルのうち、冠動脈部分に該当するボクセルを表示対象の第2の領域として設定する。
【0035】
図5(a)及び(b)は、それぞれ表示変換条件を示す。図5(a)及び(b)において、横軸はボクセル値に対応し、縦軸は画素の階調値又は表示色に対応している。図5(a)は、心臓部分に該当する第1の領域に対して設定される表示変換条件を示す。表示変換条件設定手段13は、第1の領域に対して、例えばウィンドウ変換のパラメータであるウィンドウ中心400、ウィンドウ幅1000を第1の表示変換条件として設定する。図5(b)は、冠動脈部分に該当する第2の領域に対して設定される表示変換条件を示している。表示変換条件設定手段13は、第2の領域に対して、例えばウィンドウ変換のパラメータであるウィンドウ中心300、ウィンドウ幅500を第2の表示変換条件として設定する。
【0036】
図6は、表示用の画像に変換された投影画像を示す。ボクセル値が投影された投影画像において、心臓部分に該当する第1の領域に属するボクセルが投影された画素については、投影されたボクセル値を第1の表示条件に従って表示用画像の画素値に変換する。また、冠動脈部分に該当する第2の領域に属するボクセルが投影された画素については、投影されたボクセル値を第2の表示条件に従って表示用画像の画素値に変換する。この変換により、図6に示す表示用画像が得られる。心臓部分については、三次元データにおいて心臓部分を構成するボクセルのボクセル値の分布に応じた表示変換条件を設定し、冠動脈部分については、三次元データにおいて冠動脈部分を構成するボクセルのボクセル値の分布に応じた表示変換条件を設定しておくことで、投影画像で画像化される心臓部分と冠動脈部分とを、双方に適した表示変換条件で表示用画像に変換することができる。
【0037】
比較例として、投影画像の全画素を、同一の表示変換条件で変換した場合を考える。図7は、投影画像を第1の表示変換条件(図5(a))を用いて表示用画像に変換した例を示す。図7においては、本来であれば第2の表示変換条件(図5(b))で変換することが好ましい冠動脈部分を、第1の表示変換条件で表示用画像に変換しているため、観察構造である冠動脈部分と周辺構造である心臓部分との区別が付きにくくなっている。
【0038】
また図8は、投影画像を第2の表示変換条件(図5(b))を用いて表示用画像に変換した例を示す。図8においては、本来であれば第1の表示変換条件(図5(a))で変換することが好ましい心臓部分を、第2の表示変換条件で表示用画像に変換しているため、観察構造である冠動脈部分と周辺構造である心臓部分との区別が付きにくくなっている。このように、図7及び図8の何れにおいても、観察構造である冠動脈部分と周辺構造である心臓部分とが、図6の場合に比して区別しづらくなっている。
【0039】
本実施形態では、表示対象とする少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する。投影処理を行って投影画像にボクセルを投影し、投影画像における各ボクセル値を、各ボクセルが属する領域に対して設定された表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換する。例えば投影画像に投影されたボクセル値が同じ値であったとしても、投影元のボクセルが異なる領域に属する場合には、それぞれの領域に対して設定された表示変換条件で表示用画像への変換が行われるため、変換後の表示用画像における画素値を、相互に異なる値にすることができる。本実施形態では、それぞれの領域に適した表示変換条件を設定しておくことで、投影画像で画像化される複数の領域を、各領域に適した表示変換条件で表示用画像に変換することができる。すなわち、2以上の領域を投影画像に投影する際に、それら領域を観察に適した状態で含む表示用画像を生成することができる。
【0040】
次いで本発明の第2実施形態を説明する。図9は、本発明の第2実施形態の投影画像生成装置を示す。本実施形態の投影画像生成装置10aは、図1に示す第1実施形態の投影画像生成装置10の構成に加えて、ボクセル値変換手段16を有する。ボクセル値変換手段16は、ボクセル投影手段14が投影処理を行う際に、表示対象として設定された少なくとも2つの領域のうちの少なくとも1つの領域に該当するボクセルのボクセル値を、その領域に対して設定された所定の信号変換条件に従って変換する。
【0041】
ボクセル値変換手段16は、例えばボクセル投影手段14が投影処理において視線上の最大値を求める際に、視線上に存在するボクセルのボクセル値を、領域ごとに設定された信号変換条件に従って変換する。ボクセル投影手段14は、視線上のボクセルにおける変換されたボクセル値の中から最大値を探し、最大値を有するボクセルを投影画像に投影する。これに代えてボクセル値変換手段16が、ボクセル投影手段14が投影処理を行う前にボクセル値の変換を行い、ボクセル投影手段14が変換されたボクセル値に対して投影処理を行ってもよい。
【0042】
三次元データにおいて、例えば観察構造の信号値(ボクセル値)が周辺構造の信号値よりも低いときに、最大値投影法で投影画像を生成すると、観察構造部分が投影画像に投影されなくなる。このような場合、ボクセル値変換手段16が、観察構造の信号値が、周辺構造の信号値に比べて相対的に高い信号値を取るようにボクセル値を変換する。このような信号変換を行うことで、観察構造を投影画像に投影することができる。ボクセル値の変換には、ウィンドウ変換を用いることができる。
【0043】
ボクセル値変換手段16は、例えば周辺構造を構成するボクセルに対して、ボクセル値が低信号側にシフトするようにボクセル値の変換を行う。ボクセル値変換手段16は、例えば周辺構造を構成するボクセルのボクセル値を、変換前のボクセル値に対して所定の量だけ低信号側に平行移動する。あるいはボクセル値変換手段16は、周辺構造を構成するボクセルのボクセル値に対して1より小さい所定の係数を乗じることで、周辺構造のボクセル値を変換前に比して低信号側にシフトさせてもよい。
【0044】
上記に代えて、ボクセル値変換手段16は、観察構造を構成するボクセルに対して、ボクセル値が高信号側にシフトするようにボクセル値の変換を行ってもよい。ボクセル値変換手段16は、観察構造を構成する周辺構造を構成するボクセルとの双方に対してボクセル値の変換を行ってもよい。ボクセル値変換手段16は、例えば観察構造を構成するボクセルのボクセル値を高信号側にシフトさせると共に、周辺構造を構成するボクセルのボクセル値を低信号側にシフトさせてもよい。
【0045】
本実施形態では、ボクセル値変換手段16が表示対象領域のうちの少なくとも1つの領域に対してボクセル値の変換を行、ボクセル投影手段14が、ボクセル値の変換がおこなわれた三次元データに対して投影処理を行う。このような構成を採用することで、観察構造のボクセルのボクセル値と、周辺構造のボクセルのボクセル値との相対的な信号の大小関係を適切な関係に変換した上で、投影処理を行うことができる。その結果、例えば周辺構造が観察構造よりも高信号であったとできでも、最大値投影法により、周辺構造のボクセルと観察構造のボクセルとを投影画像に投影することができる。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0046】
なお、上記実施形態では、領域の分割と表示対象領域の設定とを別個に行う例を説明したが、これには限定されない。例えば表示対象領域設定手段が、三次元データに基づいて、三次元データの中から表示対象として設定すべき領域を抽出し、抽出した領域を表示対象の領域として設定してもよい。具体的には、表示対象領域設定手段が、三次元データから心臓部分と冠動脈部分とを抽出し、抽出した心臓部分と冠動脈部分とを表示対象領域として設定してもよい。
【0047】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の投影画像生成装置、方法、及びプログラムは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10:投影画像生成装置
11:画像入力手段
12:表示対象領域設定手段
13:表示変換条件設定手段
14:ボクセル投影手段
15:画像変換手段
16:ボクセル値変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮影した複数の領域を含む三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定する表示対象領域設定手段と、
前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する表示変換条件設定手段と、
前記三次元画像データのうちの前記表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成するボクセル投影手段と、
前記投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、該ボクセルが属する領域に対して設定された前記表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、前記投影画像を表示用画像に変換する画像変換手段とを備えることを特徴とする投影画像生成装置。
【請求項2】
前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のうちの少なくとも1つの領域に該当するボクセルのボクセル値を、当該領域に対して設定された所定の信号変換条件に従って変換するボクセル値変換手段を更に備え、
前記ボクセル投影手段が、ボクセル値が変換された三次元画像データに対して投影処理を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の投影画像生成装置。
【請求項3】
前記表示変換条件が、前記ボクセル値と表示用画像における画素値との対応関係を定義するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の投影画像生成装置。
【請求項4】
前記画像変換手段が、ウィンドウ変換により前記ボクセル値を前記表示画像用画像における画素値に変換するものであり、前記表示変換条件設定手段が、前記ウィンドウ変換のパラメータを表示変換条件として設定するものであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の投影画像生成装置。
【請求項5】
前記画像変換手段が、カラーマップに従って前記ボクセル値を前記表示画像用画像における画素値に変換するものであり、前記表示変換条件設定手段が、前記カラーマップを変換条件として設定するものであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の投影画像生成装置。
【請求項6】
前記ボクセル投影手段が、最大値投影法又は最小値投影法により前記ボクセルに対して投影処理を行うものであることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の投影画像生成装置。
【請求項7】
表示対象領域設定手段が、前記三次元画像データに基づいて、該三次元画像データの中から前記表示対象として設定すべき領域を抽出するものであることを特徴とする請求項1から6何れかに記載の投影画像生成装置。
【請求項8】
前記ボクセル投影手段が、前記投影処理の際に前記投影画像における各画素が表示対象の領域のうちの何れの領域のボクセルを投影したものであるかを示す投影元領域情報を生成し、前記画像変換手段が、前記投影元領域情報を参照して、前記投影画像に投影されたボクセルが所属する領域を判別するものであることを特徴とする請求項1から7何れかに記載の投影画像生成装置。
【請求項9】
被検体を撮影した複数の領域を含む三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定するステップと、
前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定するステップと、
前記三次元画像データのうちの前記表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成するステップと、
前記投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、該ボクセルが属する領域に対して設定された前記表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、前記投影画像を表示用画像に変換するステップとを有することを特徴とする投影画像生成方法。
【請求項10】
コンピュータに、
被検体を撮影した複数の領域を含む三次元画像データのうちで、少なくとも2つの領域を表示対象として設定する手順と、
前記表示対象として設定された少なくとも2つの領域のそれぞれに対して表示変換条件を設定する手順と、
前記三次元画像データのうちの前記表示対象として設定された領域に該当するボクセルに対して投影処理を行って投影画像を生成する手順と、
前記投影画像に投影されたボクセルのボクセル値を、該ボクセルが属する領域に対して設定された前記表示変換条件に従って表示用画像の画素値に変換することにより、前記投影画像を表示用画像に変換する手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図9】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−50586(P2012−50586A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194711(P2010−194711)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】