説明

投票システム等に関する装置及び方法

本体と、筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、前記センサにより収集されるデータを格納するメモリと、データへの未許可のアクセスを制限するメモリロックとを有することを特徴とするデジタルペン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には投票装置、方法及び手順の技術分野全般に関し、より詳細にはデジタル紙及びペン技術の上記技術範囲への適用及び用紙による申請/記入を必要とする投票と類似の分野に関するが、これらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
民主主義の成功と公平性を実現するためには、大規模かつその経過を説明できる投票プロセスを用意し、それを実行する必要がある。歴史的に、そしてほとんどの場合現在においても、このような投票(または「投票用紙」)は、適切なマークが記入された投票用紙が秘密裡に投票箱に投じられ、総得票数を数えることで勝者の特定を可能にするという、単純な紙ベースの開票システムにより実施されてきた。通常、選挙の規模に応じて多くの投票所が設けられ、投票者は投票用紙を受け取り、上述のように投票をする。さらに近年になって、郵送投票または代理投票により、この民主的な投票プロセスに貢献することができるようになった。
【0003】
しかしながら、このようにシステムそのものが単純であることから、主に手作業によって多くの候補や政党への票を集計するために必要とされる時間、作業及び組織等の面でいくつかの問題点が生じている。
【0004】
こうした問題点を軽減するために、電子投票及び開票の手順(総称して「電子投票(e-voting)」として知られる)に関して、さまざまな提案がなされてきた。標準の投票用紙を自動的に数える方法、または、投票プロセスをコンピュータ化するための電子的な投票取得装置の採用等により進展がみられている。
【0005】
また最近になって、デジタル紙及び関連のペンに関する比較的新しい技術に基づいた電子投票の技術分野での開発が行われている。
【0006】
デジタル紙またはペン技術の概要は、Iconizer AB社による国際特許出願番号WO00/73983で確認することができる。この文献から、この技術は、表面全体に延在する位置符号化パターンに基づいており、符号化パターンのサブエリアからスキャナが通過する表面の領域を識別するために、適切に構成されたスキャナまたは光学読取装置を用いていることがわかる。これにより、スキャナの移動の電子的な表示を取得可能にし、スキャナが組み込まれたデジタルペンによって表面に印されたいかなる言葉、画像または文字をも電子的に表示させる。
【0007】
この技術は、Anoto AB社(www.anoto.comを参照)に先導され、例えば、LMエリクソン・テレホン社の国際特許出願WO01/61449に例示されるように、多くの分野でのアプリケーションの開発につながった。
【0008】
そのアプリケーションで説明されているように、特別にフォーマットされたこのタイプのデジタル紙には、好適な実施例として複雑なアルゴリズムに基づく非常に小さなドットからなるパターンが用いられ、アメリカ合衆国全体の面積の約半分に匹敵する73,000,000,000,000枚のA4ページに相当する大きさのパターンを判定することができるほどに、全体のパターン内の正確な位置を決定することが可能になる。
【0009】
電子投票システムの主要要件としては、例えば、自動装置及びシステムの障害や不正操作の疑いのある場合に、手で(手作業で)開票を実行する機能を備えることである。WO03/042931(DRSデータ・リサーチ・サービス社)は、広義には、このようなデジタル紙またはペン技術を票記録及び票計算の分野へ適用することを開示している。本発明は、様々な態様において、WO'931に開示される装置及び方法に起こり得る問題点に対処し、デジタルペン及びデジタル紙の分野における新規かつ有用な装置及び方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、様々な態様において、デジタルペン及びデジタル紙の分野における新規かつ有用な装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によると、本体と、筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、前記センサにより収集されるデータを格納するメモリと、データへの未許可のアクセスを制限するメモリロックとを有することを特徴とするデジタルペンを提供する。
【0012】
好ましい実施の態様において、前記ペンは、メモリロックへのアクセスが物理的に制限される第1の動作モードを有してもよい。
【0013】
前記メモリロックと好適に係合可能な鍵により、前記アクセスが起動ロックによって制限されていてもよい。さらに好ましくは、前記メモリロックが機械的な鍵と係合可能であってもよい。
【0014】
前記第1の動作モードで、前記メモリロック及び鍵の係合が物理的に、好ましくは、着脱可能なバリアによって制限されてもよい。
【0015】
前記バリアを、前記起動ロックを操作することにより取り除いてもよい、また前記バリアは、前記ペンが使用された場所から前記ペンを許可なく取り外すのを制限または防御するために、安全つなぎ綱と物理的に結合していてもよい。
【0016】
前記つなぎ綱が電気径路を備えることにより、運転電流または充電電流を前記ペンに供給してもよい。
【0017】
前記ペンは、非記入用端部を有してもよく、前記バリアは、前記ペンの非記入用端部と係合可能なキャップを備えてもよい。
【0018】
好ましくは、前記メモリは前記ペン本体の一部に配置され、脆弱区域によって前記本体の残りの部分から分離される。好ましくは、前記メモリが前記ペンの前記記入用端部から間隔を置いて設置されてもよい。
【0019】
前記メモリチャンバが、前記ペンの前記第1の動作モードで、前記キャップによって少なくとも部分的に覆われてもよい。
【0020】
好ましくは、前記脆弱区域は、前記第1の動作モードで、前記キャップの前記開口部の近傍に配置される折れやすいラインまたは領域を備えてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様によると、本体と、前記本体内に配置されたメモリチャンバとを有するデジタルペンであって、前記チャンバに未許可のアクセスをしようとすると、前記チャンバが前記本体から取り外されるように、前記メモリチャンバは脆弱区域により前記本体の残りの部分から分離することを特徴とするデジタルペンを提供する。
【0022】
前記ペンが前記脆弱区域で破損しても、前記チャンバを前記つなぎ綱から切り離すことができないようにするために、使用中のペンをアンカーにつなぎ綱で安全につなぎ、前記ペンが使用された場所から前記ペンを許可なく取り外すのを制限し、または妨げるように、前記つなぎ綱は前記ペンに取り付けられている、または一体化していてもよい。
【0023】
本発明の第2の態様に係るデジタルペンは、第1の態様に係る特徴のいずれか1つを追加的に備えてもよい。
【0024】
本発明の第3の態様によると、投票及び/または投票の記録の際に、本発明の上記2つの態様のいずれかに記載のデジタルペンを提供する。
【0025】
本発明の第4の態様によると、第1の態様または第2の態様に記載の複数のデジタルペンを備える電子投票記録システムを提供する。
【0026】
本発明の第5の態様によると、投票選択を示すために物理的にマークを記入するための領域を備える投票プロセスに使用される投票用紙であって、前記投票用紙がデジタル紙を用いて作成されることにより、適切に構成されたデジタルペンが前記投票の電子的表現を取得し、前記投票用紙が前記ペンにより読込可能な識別子を有することにより、前記投票と前記投票が行われた前記投票用紙とが関連付けられることを特徴とする投票用紙を提供する。
【0027】
このような投票用紙を一組にして提供し、各投票用紙が個別の識別子を有することにより、複数の投票と前記投票が行われた複数の前記投票用紙とを関連付けてもよい。
【0028】
本発明の6の態様によると、同一または実質的に同一のデジタル紙パターンを有している一組のデジタル紙であって、前記一組のデジタル紙は、前記一組の異なるデジタル紙に形成されている異なる色調、異なる色彩または異なる色相のパターンにより、互いに識別可能であることを特徴とする一組のデジタル紙を提供する。
【0029】
本発明の第7の態様によると、任意のデジタル紙パターンの複数の色の中の1またはそれ以上からデータを記録するためにだけ操作可能となるように、感色センサを有することを特徴とするデジタルペンを提供する。
【0030】
任意のパターンの異なる色を感受するために前記ペンが切替えられるように、前記センサが調節可能であってもよい。
【0031】
好ましくは、前記ペンが交換可能なカラーフィルタを有することにより、所望の色感度が得られてもよい。
【0032】
本発明の8の態様によると、色を感じるデジタルペンと複数のデジタル紙との組合せであって、前記デジタル紙は、同一または実質的に同一のデジタル紙パターンを有するが、前記パターンのうちの少なくとも一部は、その他のパターンとは異なる色調、色彩または色相により形成されている組合せを提供する。
【0033】
本発明の9の態様によると、投票選択を示すためのマークを記入する領域を有する投票用紙を用いて投票された票を記録する方法であって、前記マークが記入される際に前記投票を電子的に表現できるように、デジタルペンの前記投票用紙に対する位置を電子的に検出するステップと、前記投票と前記投票が行われた前記投票用紙とを関連付けるために、前記投票用紙の識別子を電子的に検出するステップとからなる投票を記録する方法を提供する。
【0034】
前記方法が、各投票用紙が個別の識別子を有する複数の投票用紙を使用することにより、複数の投票と前記複数の投票が行われた前記複数の投票用紙とを関連付けてもよい。
【0035】
前記一または複数の投票用紙はデジタル紙を用いて作成され、前記一または複数の投票を表示し、且つ投票が行われた前記一または複数の投票用紙の同一性を提供するために前記デジタル紙パターンを用いてもよい。
【0036】
本発明の10の態様によると、筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、センサにより収集されるデータを格納するメモリとの組合せであって、前記メモリは前記ペンから離れた場所の筐体内に配置され、安全つなぎ綱により前記本体と接続されている組合せを提供する。
【0037】
前記つなぎ綱がデータ経路を備えることにより、前記センサから収集されるデータが前記メモリに送られてもよい。
【0038】
前記つなぎ綱が電気径路を備えることにより、運転電流または充電電流が前記筐体から前記ペンに供給されてもよい。
【0039】
前記つなぎ綱が前記筐体に着脱自在に接続していてもよい。
【0040】
前記つなぎ綱が起動ロックによって前記筐体に接続していてもよい。
【0041】
前記筐体が不正操作防止、強化または補強されたボックスとしてもよい。
【0042】
前記起動ロックが前記ペンを始動及び停止するように作動してもよい。
【0043】
前記メモリに未許可のアクセスを試みると、前記ペン及び/または前記つなぎ綱が前記筐体から分離するように、前記筐体が脆弱区域を有してもよい。
【0044】
前記筐体は複数のメモリを含み、複数の異なるペンからのデータが共通の場所に格納されるよう、各メモリが異なるデジタルペンと関連付けられてもよい。
【0045】
本発明の11の態様によると、本体と、筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、センサにより収集されるデータを処理するローカル処理装置または遠隔処理装置と、フィードバック装置とを有することにより、前記データ処理に応じて、視覚的、触覚的または音波的情報を使用者に与えることを特徴とするデジタルペンを提供する。
【0046】
前記処理装置は、前記ペン本体に取り付けられている、または一体化していてもよい。
【0047】
前記処理装置は、前記本体とデータ通信しているが、物理的には間隔を置いて配置してもよい。
【0048】
前記使用者に与えられる前記フィードバックにより状況を確認できるように、前記処理装置は前記筆記面に関する情報とともに前記データ処理を行うよう作動してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
上記の冒頭の段落で述べたように、本発明の基礎をなす提案とは、投票プロセスの間、デジタル紙及びデジタルペンを用いて、票の電子的収集を容易にすることにより、古くから知られている投票及び類似の用紙記入のプロセスにコンピュータ技術を導入することである。直ちに理解されるように、このような技術を組み込むことで、ペンと用紙を使用して投票するという長期間確立され支持されているやり方を維持することができる。しかし、このようなデジタル形式での投票が可能になると、コンピュータソフトウェア、ハードウェア及びファームウェアにより以下のような運用が可能になり利点も生じる。
・開票及び選挙の投票数の確認。
・適切なソフトウェアを適用した投票規則による、有効、無効または不確定への票の分類。
・複雑な比例代表選挙制の管理を容易にする。
・合同選挙の管理を容易にする(例えば、ある投票日に行われる地方選挙または欧州選挙とともに行われる総選挙または国政選挙)。
・コンピュータ画面上に投票用紙画像を表示し、選挙管理官が不確定な投票用紙や投票者の意図について判断を下すことができるようにする。
・選挙結果の保存と迅速な報告。
【0050】
全体として、この提案の基礎をなす全体としての目的は、選挙開票時間、管理及びこれに係る選挙費用を削減することである。英国内だけで実施される典型的な国内総選挙では、明らかになっている分で50,000,000ポンド以上が費やされているが、発展途上の民主主義国家にとって、これが大した金額ではないなどとは決して言えない。また、後述するように、本発明に係るさまざまな態様によって、一般投票を多種多様な場所で実施することができるので、今日利用可能な比較的限定された投票所の選択において、柔軟性と有利な条件が追加される。さらに、本発明に係る一態様において、投票プロセスを投票者の観点から簡単なものにしている。
【0051】
これらの提案の基礎を成す技術は、「デジタル紙」及び「デジタルペン」という言葉で簡単に説明することができる。この分野の中心的存在は、スウェーデンの会社Anoto AB社(www.anoto.comを参照)であり、Anoto社のデジタルパターンは、要約すると、0.3mm間隔で配置された格子の目盛りに、ほぼ格子状に印刷された非常に小さいドットの配列から構成されている。このパターンは、各ドットに対して複雑なアルゴリズムによって定義される量だけ、真の格子のレイアウトからオフセットされている。任意のパターンを有する用紙全体に亘ってドットの配列は異なり、ページが異なると異なるアルゴリズムによって定義される。便宜上、特定のページのアルゴリズムは、「ページアドレス」として知られている点に留意する必要がある。
【0052】
デジタル紙技術の用紙記入への幾つかの応用が知られており、それらは人間が読み取り可能なテキストと四角の枠との組合せを備え、従来のチェックリストまたは申込用紙を構成する。本発明はこれを発展させ、上述の用紙記入に関する技術を、新規な分野つまり投票用紙の技術にまで拡張する。したがって、本発明に係るデジタル投票用紙上には、通常、「用紙」が設定され、そこには投票者が政党または候補の選択のために書き込む四角の枠または領域とともに候補者リストが設けられる。これらは、いかなる様式の用紙が使用される場合も、デジタル紙パターンと同時にまたは引き続いて、「無地の」パターンのデジタル紙に印刷される。
【0053】
基礎的なAnoto社の技術を補完する態様は、本質的に二重の機能性を有するデジタルペンである。一方において、ペンは従来、紙または他の基体上に物理的な(インクの)マークを記入するために使用可能なものだが、ペンは、従来からマークを記入する場合のように、ペンが通過するデジタル紙パターンを認識するに適切なスキャナまたは光学式文字読取装置及びソフトウェアを備えることができる。したがって、一般に、ロジテック社やノキア社等の企業から購入可能な周知の(先行技術の)デジタルペンは、通常のインクカートリッジと、ペンの先端に向かって下方に向いているカメラまたは他の光学撮像部と、ペンの回路に操作指示を出す適切なファームウェアを含む固体メモリチップと、バッテリと、上記の撮像部を介して集積されるデータを格納するメモリと、出力装置または機能とを備えることにより、集積されたデータを、例えば操作または表示用の別々のデータ処理装置へ転送することができる。
【0054】
WO'931に開示された提案の上に展開することによって、本出願人はデジタル紙及びペン技術を用いた、新規性かつ進歩性を有する開発及び改良に数多く想到した。これらを以下に要約する。
・ 選挙や他の用紙記入のプロセスに関連する、技術、セキュリティ、法律上の要件を満たすように創造的に採用した改良デジタルペン。
・個別の独自性を有する改良されたデジタル投票用紙であって、それぞれのデジタル投票用紙が異なり、バーコードや数字等を重ね印字することで投票用紙を識別する必要がないことを意味する。
・利用可能なパターンの規模と実用性を向上させるために色付けされたデジタル紙パターン。要するに、同じパターンを異なるシートに印刷するが、異なるインクの色調、色彩または色相及び色に特有のカメラを用いることにより、任意のデジタルパターンを、複数回、容易かつ安全に使用することができる。同様に、異なる色のパターンを任意の用紙に使用し、適切に構成されたそれぞれ異なるペンによって選択的に読み込み可能となるように構成してもよい。
・ 一枚のデジタル投票用紙を複数の選挙施設で使用することにより、異なる投
票に別々の用紙を用いる必要がない。
・ 投票率を上昇させ、選挙費用を削減するという目標の下に、投票プロセスの
高度化の段階を増すことも考えられる。例えば、実施の第1段階は、既存の且つウェブに非接続の、完全に地方の投票所で実施される投票プロセスへのデジタル紙投票の導入である。実質的な追加費用を必要としないだけでなく、投票者登録及び投票所管理のプロセスを変更する必要はないだろう。次に、デジタル接続が政府や地方自治体により導入され、投票所はウェブを使用できるようになり、さらに高度化された「ローミング投票」等が可能になり、これにより、登録された投票者は政府が認める公の利用可能場所であればどこであろうとも、自身の地域の投票所から離れた所で投票することができるようになる。
【0055】
デジタル紙投票プロセスの概要
実施方法または実施可能な高度化のレベルがいかなるものであっても、本発明に係るデジタル投票用紙による投票のプロセスには、投票者がデジタルペンを用いて記入を完了し、その結果として、投票用紙に「標準的な」マークが記入されるデジタル投票用紙が含まれる。このデジタル投票用紙は、その後、通常の方法で投票箱に入れられ、次に、開票のため本部へと搬送される。しかしながら、この段階でプロセスは標準の手順から外れる。すなわち、開票管理官は、投票用紙を手作業で数えるかわりに、ペンのメモリまたはペンと関連、接続または連絡するメモリに格納される票の電子的表現をダウンロードする。
【0056】
しかしながら、このシステムは柔軟性を有しており、「通常の」投票、すなわち例えば郵送投票や代理投票などのデジタル紙による投票ではない場合にも、その票は(手作業または適切なスキャナを使っておそらく電子的に)数えられ、全体の開票結果に寄与することは直ちに理解されるだろう。換言すれば、好ましい一実施形態においては、選挙プロセス全体がデジタル紙へのマークの記入及び開票の技術を用いて実施されるが決して必須ではない。この柔軟性は、新しい選挙システムを一挙に導入するのに(おそらく政府レベルで)抵抗感がある場合に魅力的である可能性がある。
【0057】
本明細書に記載の新規性かつ進歩性を有する態様を実施するために、出願人は、好ましい一実施形態において、投票、記録及び開票のプロセスで少なくとも2種類の異なるデジタルペンを使用することを提案する。第一に、「投票ペン」は、投票者が投票用紙記ブースで使用して、その投票を記録するためのものである。第二に、「投票管理官ペン」は、さまざまな投票所のプロセスを運営するために用いるものであり、二つのペンはおそらくサイズ、色または形状を変えることにより、容易に識別可能と思われる。しかしながら、後述するように、これらの2種類の「主要な」型のペンは、それ自体異なる形状及び構造を有するため、各々異なる「バージョン」であることが想定される。
【0058】
一つの型の「投票ペン」の概略図を図1に参照番号10にて示す。このペンは、記入用端部12、非記入用端部13、及び非記入用端部13側に配置されるメモリチャンバ14を形成する本体11を有する。ペンのメモリカード15は、光センサ/ピックアップ16から収集されるデータを格納し、キャップ17によりメモリチャンバ14内で保護され、起動ロック18により、ペンの所定位置に固定される。該起動ロックは、図2に示す鍵19に例示する型の投票鍵等の鍵により操作可能である。図1から分かるように、キャップ17は、安全な(実質的には取り外し不可能な)方法で、ペンを投票用紙記入ブースに取り付けるための安全つなぎ綱(または「つなぎ紐」)20(ラニヤード“lanyard”として知られる)と一体化されている。参照番号21で示すように、細い充電ケーブルが、バッテリ22に充電電流を供給するためにつなぎ綱の被覆を貫通している。しかしながら、バッテリが故障または失われた場合には、ケーブル21からも、同時にまたはそれに替わって、ペンに「運転」電流が供給可能であることが判る。
【0059】
ペン10の他の構成要素、すなわち、電子制御装置23、ステータスライト24及び従来のボールペン用インクカートリッジ25は、デジタルペンの設計分野では通常標準部材である。したがって、ここではそれらの特定の態様を詳述する必要はない。
【0060】
しかしながら、標準ではないペンの構成要素はメモリロック26であり、これはペンの通常使用の間はキャップ17により見えない状態になっている。
【0061】
メモリロック26は、第2の(かつ異なる)鍵を用いて操作可能なように構成される。この鍵は「開票鍵」として知られ、おそらく一般的な型の鍵であり参照番号19で示す。
【0062】
起動ロック18は、簡単に上述したように、投票管理官に支給される「投票鍵」を用いて操作可能であり、この機能は(後にデータをダウンロードすることができるように)ペンを綱キャップ17から解錠することと、投票に使用するためにペンを起動することもある。他方、開票鍵の主な機能は、開票管理官がメモリカード15からデータをダウンロードできるようにすることであり、該データはペンを用いて投じられた票を代表するものである。
【0063】
明らかに、ペンの物理的な安全性は、選挙プロセスにおいて重要なことである。投票ペンを盗んだり破損したりして選挙結果を改ざんしようとする企てが考えられるからである。これを防止するため、安全つなぎ綱20は、ペンを投票用紙記入ブースに結びつけるという第1段の防御機構を提供する。また、投票用紙記入ブースを強化する必要がある。出願人は、長い金属棒または丸太を幾つかの投票用紙記入ブースに通すのが適していると提案したい。これは、その棒または丸太(つまり記入ブース)をその投票所から取り外すことを不可能または非現実的にするためである。
【0064】
第2段の防御機構として、キャップ17は、好ましくは強化プラスチック材料で作られる。ペンをつなぎ綱から分離することが企てられた場合に、メモリカードを保護するよう設計されている。相当な力が与えられると、ほとんどの型のペンは最終的には破損するということを念頭に、本出願人は、ペンの記入用端部と非記入用端部との間に脆弱区域27を配置するという、第3段の防御機構に想到した。脆弱区域27(好ましい一実施形態では、折れやすい線または厚み減少部)の効果は、強い力が加えられた場合に、綱キャップ17の直下で、メモリチャンバ14内に配置されているメモリカード15を伴って折れることだが、メモリカードがつなぎ綱(従って投票用紙記入ブース)から分離することはない。メモリカード15に既に格納されているデータを使用できるようにするために、出願人は、スタンドアロン式のメモリカードからデータを読むための簡単な(かつ一般的に従来からある)メモリカード読取装置を選挙管理官に提供することができるだろうと考える。
【0065】
上述したように、起動ロック18は、投票鍵19を用いて操作可能であり、投票終了時に解錠してペンをつなぎ綱から分離することができ、したがって、ペンは次の投票データのダウンロードのために開票作業所へ運ぶことができる。
【0066】
メモリロック及び起動ロックの両方に関連して、物理的な(鍵の操作による)施錠のみが好ましいということには注目すべきであるが、出願人は、ソフトウェア、生体認証または個人識別番号によるアクセス制御または他の形式での「施錠」も同等に利用可能であると考える。そのためには、生物測定センサ(指紋認識装置等)を使用して、投票スタッフ、選挙管理官などが全体の投票プロセスで使用するさまざまなペンの使用を有効あるいは無効にすることができると考える。このようなアクセス制御装置自体は公知である(しかし、デジタルペンと関連しては公知ではない)ため、本明細書において詳述することは必要でも、また適切でもない。
【0067】
これまで概説したように、投票用紙が投票者に渡される際に投票用紙番号を取り込むために、「投票ペン」のほかに、第2の型のペンである「投票所職員」ペンを、投票所管理官または投票所職員が使用することが考えられる。このプロセスについて以下で更に詳しく説明するが、このペンは、そのデザインは概ね投票ペンに類似のものだが、投票用紙番号の取り込みには、投票におけるセキュリティ上の問題は存在しないので、つなぎ綱及び綱キャップを有していない。
【0068】
上述のセキュリティ上の問題点を認識し、出願人はまた、メモリ機能がないか、または限られた容量のメモリ装置を備える、別の態様のペン(例えば、投票ペンと投票所職員ペン)を考える。この一実施形態では、ペンのセンサによって収集されたデータが、ペンから離れた所にあるメモリまたはデータストアに転送され、その後(例えば)開票装置及び開票プロセスによりアクセスされ使用される。ペンが収集した票を格納する(または他のデータを格納する)メモリをこのように分離させることにより、不正操作または窃盗が投票結果やデータの損失につながらないという有効なセキュリティレベルが提供されることが判る。追加のセキュリティ対策として、遠隔データストアを、ウェブへの接続不可能なまたは(例えば)投票所を超えるいかなるネットワークへも非接続の「スタンドアロン」式とすることができる。
【0069】
無線送信の健全性に関する幾つかの問題点に留意し、出願人はペンと遠隔のデータ格納部とを接続するために、データケーブル、導線または他のその種の物理的な導管を用いることを提案する。導管には上述のつなぎ綱の適切な部分を用いると便利である。しかしながら、無線伝送プロトコルもまた使用可能であり、赤外線、ラジオ周波数または「ブルートゥース」システムが技術的に最も発展性がある。
【0070】
このように、ペン10の別の実施形態において、メモリチャンバ14及び関連のメモリカード15は、これらの部品をペン10自体から遠隔な場所にある物理的に安全な「メモリボックス」内に設けることにより省略してもよい。この構成では、光センサ/ピックアップ16から遠隔メモリボックスへデータを転送するために、つなぎ綱は細い充電ケーブル21とデータケーブルとを通すことになる。また、バッテリ22も、電力が遠隔からケーブル21を経由して十分に供給されている状態では省略してもよい。これにより、ペンの構造とデザインが簡略化され、メモリ(例えば、チップまたはカード)がペン本体から離れた場所に配置されるので、データの安全性がさらに向上する。メモリを遠隔地の強化ボックス内に収容することもできる。これにより、複数のペンからのデータを単一のボックスに格納することが考えられる。このように、ペンのつなぎ綱をボックスに取り付け/取り外しするロックを用いて、「共通の」遠隔ボックスに、おそらく複数のメモリカードまたはチップを収納することができる。この効果は、起動ロック18がペン本体から取り外されて、遠隔の場所すなわち、ボックス上またはボックス近傍へ移動可能なことであり、この場合、複数のメモリが共通の一つの場所に格納される。これにより、システム全体にかかる費用が削減され、柔軟性が向上する。このように、この別の実施形態においては、起動ロックを用いて、おそらく2段階の手順[例えば、キーを途中まで回転させてつなぎ綱を遠隔メモリボックスに固定し、キーを最後まで回転させてペンを起動すること]により、つなぎ綱をメモリボックスに固定し、及び/または、ペンを起動/停止する。もちろん、おそらく保守、修理、またはクリーニングのために、つなぎ綱に取り付け/取り外しできるように、ペン本体自身にロックを備えてもよい。
【0071】
「遠隔メモリ」の実施形態において、ペンを無理やり取り外そうとすると、ペンだけが分離するか、もしくはペンとつなぎ綱(メモリではなく)が分離するかのいずれかになるように、遠隔メモリカード/チップの近傍または隣接した場所に脆弱区域を備えてもよい。
【0072】
そのような型のペンの概略図を図7に示す。図においては、図1と同じ箇所には同じ参照番号を付している。したがって、ペンは、記入用端部12、非記入用端部13及び光センサ/ピックアップ16を形成する本体11を備える。ペンはキャップ17を備え、ペン本体に固定される。図7からわかるように、キャップ17は安全つなぎ綱(またはラニヤード)20と一体化されており、該安全つなぎ綱(または「つなぎ紐」)はペンを遠隔メモリ筐体に安全な(実質的に取り外し不可能な)方法で連結している。参照番号21で示すように、電気ケーブルがペンに「運転」電流を供給するためにつなぎ綱の被覆内を貫通している。これにより、内部バッテリは不要になり、重量及び費用が削減される。図7に示す実施形態が図1に示す実施形態と異なっている点は、メモリチャンバまたはカードがペンの一部として設けられておらず、代わりに(ペンによって収集されるデータを保存するために)メモリ60が遠隔メモリ筐体61に収納されている点である。図示するように、筐体61は、複数のペンによって収集されるデータを格納するためのメモリを収納することができ、メモリ62は図示する別のペンと連結している。もちろん、2本より多いペンを共用のメモリ筐体に連結させることができる。
【0073】
ペンの起動は起動ロック63を用いて実行することができ、該起動ロックは、物理的な(キーで作動する)ロック、または、ソフトウェアの実行による(すなわち電子的)ロックの形態をとることができる。上述したように、ペンのつなぎ綱を筐体に取り付け/取り外しするために、起動ロックを用いることもできるが、ペンのつなぎ綱を他の手段によっても筐体に固定/分離することができる。
【0074】
このようなメモリ機能を具備しないというペンの別の形態では、ペンのセンサによって収集されるデータは、つなぎ綱を介して遠隔メモリ筐体に転送され、後で開票装置及び開票プロセスによりアクセスされ使用される。言うまでもなく、ペンのメモリをこのように「分離」させることにより、ペンに対する不正操作や窃盗行為により、票またはデータの損失を招くことが不可能になるという点でさらにセキュリティレベルが高められている。
【0075】
ペン10はさらに、例えば色つきの表示光、読取可能テキストを生成する発光ダイオード(LED)、振動発生装置、または音声合成応答により、使用者にフィードバックを提供するための要素を備えることができる。これらは、使用者が1つの行為を完了したということを簡単に知らせることができる。例えば、投票が正しく行われた場合、ペンが振動したり光を放ったようにすることができる。しかしながら、出願人はさらに高度なフィードバックを容易に提供することができると考える。本明細書の別の箇所で説明するが、例えば知的文字認識(Intelligent Character Recognition:ICR)を用いて、ペンがその使用者に特定の候補に投票したことを示し、その投票の確認を求めることができる。このようにして、本システムでは使用者にフィードバックをすることができ、そのフィードバックを用いて、更なる情報をシステムに提供することができる。このフィードバックは、理想的にはペン自体を介して使用者に伝達されるが、遠隔ネットワークへの接続を経由して、または、上述の遠隔メモリボックスに含まれる内部回路及び命令によって、発生させることができる。これがいかなる方法で実施されたとしても、使用者へ還送される情報は、記入された様式や投票用紙等の性質に応じて(かつ、その性質に関する認識とともに)生成されるという点で、このフィードバックは状況により関連付けられている(すなわち、ある状況の中で提供される)ということが理解されるだろう。これにより、「用紙固有の」フィードバックの提供が可能になり、例えば、ペンについて不慣れな使用者や無知な使用者の助けになりうる。これを模式的に図8に示す。図示するように、状況に関連づけられたフィードバックは、ステータスライト24を介して、例えば、投じられた票または用紙に記入されたマークに関する情報として使用者に還送され、該情報は(この例では)ペンから遠隔の場所にある処理装置70によって処理されたものである。処理装置70は、もちろんペン本体に備えることができる。投票用紙または記入用紙そのものに関する情報が演算処理装置に与えられ、これによって、用紙上に記入されるマークを状況に関連付けることができる。当然のことながら、投票用紙または様式に関する情報は、その場所において、またはおそらくネットワーク接続を介して遠隔から、保存及びアクセスが可能である。
【0076】
典型的な投票日の運用とプロセス
投票所がオープンする前に、投票管理官または投票所職員は、上述の投票鍵と起動ロックとを用いてペンをつなぎ綱に取り付ける(またはつなぎ綱を遠隔メモリボックスに取り付ける)というプロセスを実施しながら、投票所で使用予定のすべてのペンを検査する。選挙役員の管理の下、種々のペンが中央から配布され、それらとともに使用されるメモリカード(ローカルまたは遠隔配置)は、投票所に到着する前にデータが削除される。さらに追加の検査として、投票管理官または投票所職員が、ペン検査リストを用いて、投票所において使用される複数の特定のペンを記録することが考えられる。
【0077】
そのために、ペン各々には個別のシリアルID番号がつけられる。一本の特定のペンが正常に動作していると仮定すると、投票鍵及び起動ロックを用いて電源を入れ、つなぎ綱キャップに接続すると、緑のステータスライト24(図1を参照)が点灯する。その時点で、投票所職員は、バッテリが充電されていること、ペンがつなぎ綱キャップにしっかりと取り付けられて細い充電を受けていること、及びペンが投票を受け付ける状態になっていることを認識する。ペンを起動後の、ペンに関する第1の作業は、投票管理官または投票所職員が、図3の例に示すように、投票所ペン登録表(Ballots Station Pen Register)に、投票所で使用されるペンのシリアル番号を記録することである。この登録表は、不特定のデジタル紙に印刷され、ペンがどの投票所にあり、どの管理者が据え付けて電源を入れたかを、ペンに記録する機能を有する。このように入力されたデータは、ペンにより記録され、ペンのメモリ(またはカードがペン内に配置されていない場合は遠隔メモリ)に格納され、その後の開票時に適切なデジタル紙集計ソフトウェアにダウンロードされる。投票所で使用されるすべてのペンへの記入の合計は、投票率を算出するに十分なデータを提供することが理解されるだろう。
【0078】
選挙の不正操作または不正行為の可能性を制限するために、ペンの投票データを受信する開票時のデジタル投票ソフトウェアは、適法なデジタル投票用紙だけを受け付けるように構成される。このことを念頭において、万一、投票者が別のデジタル紙(例えば、文房具店において購入される単純なデジタルノートにあるもの)を、いたずらに投票所に持ち込み、投票ペンのうちの1本を用いて記入する場合は、紙自体はおそらく受け付けられる(すなわち、投票箱に投入され)が、この「不正な」投票用紙のページアドレスはデジタル紙計数ソフトウェアによって認識されないため、破棄され、該デジタル紙は電子投票を混乱させることはない。
【0079】
デジタル紙プロセスの適用範囲及び柔軟性を高めるために、出願人は更なる改良を提案する。すなわち、投票用紙に使用されるデジタル紙パターンは、他の非投票用のデジタル紙製品に利用可能なものとは、異なる色調、色彩または色相で印刷する。別の色を読み込むことができるようにするためには、当然のことながら、デジタルペンは、異なる光の波長を受光可能なように適切に構成されたカメラ/ピックアップを備えている必要がある。加えて、ペンのスキャナが一種類だけの色調、色彩または色相を受光するようにフィルタ処理される場合、投票用紙または実際にはいかなるデジタル記入用紙も、複数の色パターンで印刷することができる。このようにして、特定のフィルタ処理がなされたペン、例えば赤いパターンだけを読み込むペンを用いて、正しい色パターンで印刷されている記入用紙上の定義領域から情報を集めることができる。
【0080】
このようにして、この特定の分野、すなわちデジタル紙投票に関する分野において、色パターンを使用すると、ある特定の選挙で投票ペンに用いられるフィルタ固有の色で印刷された専用デジタル投票用紙を用いることにより、他のデジタル紙からはいかなるデータも収集しないことを保証することができる。次の選挙が行われる際には異なる色を使うことができるので、「古い」投票用紙を不正目的で使用できない。
【0081】
色のついたデジタル紙パターンを使用することは、Anoto社のような製紙業者により供給されるその他の点で特有な紙パターンの使用量を増すのにも効果的であるのは明らかだろう。選挙毎に最大で100,000,000枚の用紙が使用されるので、任意のパターンは、異なる色調、色彩または色相で印刷することにより、他の選挙または選挙区用に再使用することができる。
【0082】
投票プロセス
本発明のさまざまな態様によれば、本投票プロセスの第1の段階は投票者登録である。投票者が投票所に到着すると、通常の方法で身元の確認が行われ、次に氏名登録用紙から氏名が線引きにより抹消される。投票所職員デジタルペンがこのために使用可能であり、おそらく各投票者の詳細に隣接して「デジタル紙」コードがあり、それによって各投票者の電子記録を得ることができる。通常通り、投票管理官または投票所職員は、投票用紙に公印を用いて印をつける。
【0083】
投票所職員デジタルペンは、例えば色によって投票ペンとは識別可能であり、投票用紙記入ブースに持っていくために投票者に手渡す前に、デジタル投票用紙の任意の部分を機械に通す(すなわち「読み込む」)ために用いられる。この第2のペンの機能は、各投票所ごとに、その特定の投票所で使われるすべての投票用紙の番号とページアドレスとを把握することである。この番号またはページアドレスを把握することにより、投票率の計算に使用可能な、配布された個々の投票用紙の総数に加えて、使用された投票用紙に関する識別情報を計数ソフトウェアに提供する。各デジタル投票用紙は、光学的に読込可能なマークの個別のの識別パターンを備えるので、投票用紙個々の識別子の把握が可能となることが理解されるだろう。
【0084】
英国式選挙システムが適用される選挙には、投票時に必要となる投票者のセキュリティ要件が多数ある。すなわち、投票所で投票者に手渡す直前に、本物であることを明確にするために投票用紙に公印を付ける必要がある。
【0085】
加えて、投票用紙には順に番号が付される。投票用紙及び切り取られた控えの両方に表示されるシリアル番号である。既存の投票手順においては、投票所職員は控えに投票者の登録番号を記入し、これにより、必要に応じて(かつ、裁判所からの命令によってのみ)、(不正行為の疑いがある場合は)投票番号を介して、ある特定の票を、その控えにまで追跡することができ、そのようにして、投票者登録番号を介して関連する投票者の氏名にさかのぼることができる。本願明細書に記載の新規性かつ進歩性を有する投票プロセスにおいてデジタル紙及びデジタルペンを使用することは、投票用紙に同様にして順に番号が付すことを考えると、必ずしもこの要件を損なわない。このように番号を付された投票用紙の例を図4に示す。
【0086】
しかしながら、投票用紙に対して、本出願人が提案する特有のページアドレスの態様は、規制上の変化がそのようにすることを認める場合に、投票用紙に番号を付すという要件に対し、新規性かつ進歩性を有する解決手段を提供する。上述のように、(Anoto社のパターンによって例示される)ページ上のデジタル紙パターンは一つののアルゴリズムから導かれ、そのアルゴリズムは、そのパターンの中に映される一つの番号によってデジタル紙上に表現される。例えば、Anoto社は、アルゴリズムとそのパターンがページごとに異なるバージョンを提供しているので、ある特定の投票用紙のパターンにより、開票システム用のその特定の用紙を識別することができる。
【0087】
したがって、各投票用紙に固有のパターンを採用する際に、ページアドレスを、固有の識別子、投票用紙番号として使用することが可能になる。この識別子は、番号のみとして表示することができるが、控え用紙上のみにバーコード及び番号として印刷することが好ましい。デジタル投票ペンは、投票プロセスの間に、このパターンを読み込む際に固有の投票用紙番号をも取り込む。
【0088】
記入を完了した投票用紙は、その投票者へ遡ることが可能でなければならないという法律上の要件が(少なくとも英国において)あるため、本発明では、非投票用デジタルペンを用いて疑わしい投票用紙にマークを付けることにより、特定の投票用紙とその元の控えとを合わせることを可能にしている。必要であれば、これはインクを用いずに行うことができる。すなわちデジタルペーパーペンを単にデジタル紙パターンの読取装置として使用する。このように読み取ることで、デジタルペンは、中央データベースにページアドレスを問い合わせ、参照されている実際のページアドレスを表示する。希望であれば、このプロセスは、ウェブへの接続を必要とせずに、オフラインで実行することができる。このため、いずれの方法でも、この段階から問題の控え用紙をつきとめるのは容易であり(ページ索引が記載されているので)、また、控え用紙に記載された投票者登録番号を用いて実際の投票者を特定できることが理解されるだろう。
【0089】
デジタル紙/ペン技術において具現化される基本的な紙からペンへのデータ取込プロセスは周知であるが、出願人は投票用紙に記入されるさまざまなマークを読み取り、許容可能、許容不可または不確実な投票を検査、区別するために、知的文字認識(Intelligent Character Recognition:ICR)の追加使用が可能であると考える。ICRを使用した幾つかの投票「規則」を設定が可能であり、それにより、投票ペンを介して収集された画像と認定された複数の語彙との比較が可能になることが容易に理解できる。認定された語彙とは、26文字のアルファベット、10整数、語彙、及びおそらく名前、シンボルまたはそのような記号からなるリストである。
【0090】
投票の場において、出願人のシステムは、選挙用の投票用紙上に許された特定の選挙用記号に対して、定義した語彙を用いる。また、使用される前記リストには、選挙管理官によって配布用に作成された指導規則に従って、投票のために定められた記号が含まれ、該規則には、開票所に居る投票スタッフがどのようにして無効と思われる投票用紙を、(選挙管理官による判定を求めるために)取り除くかについての説明がある。
【0091】
したがって、投票語彙は2段階での使用が考えられる。
【0092】
ICRを用いた自動判定
投票用紙を無効とする既存の規則は、以下のとおりである。
a)投票用紙に公印がない。
b)複数の政党または候補に投票している。
c)投票者を特定できる(投票用紙の印刷番号を除く)何かが投票用紙に記入されている、またはマークが記入されている。
d)マークが記入されていない、または不明確であるため無効(すなわち、有権者がどの政党または候補に投票する意図なのか明らかでない)。
【0093】
ICR及び/或いは適切な投票語彙を使用して、上記のb)及びc)に分類されるデジタル投票用紙を無効として区別することが可能である。上記の無効区分d)に対しては、前記投票語彙により、無記入の票すべてを選択し無効にする(すなわち、計数から除外する)ことができる。
【0094】
無効と考えられる票の画面上での判定
不確定票の場合(例えば、正しい場所にマークが1つ付けられてはいるが、投票語彙により認められるタイプのものではない)、こうした票は選挙管理官による判定のために別にして保管する。このような不確定票の例を図5に示す。この例では、有効領域(4つの枠が右側の列を成している)にマークが記入されていないが、候補者「ALPHA(アルファ)」の隣に何らかのマークが記入されている。画面上の票を見ることによって、選挙管理官及びスタッフが判定し、この票の有効性を決定することができる。使用する投票用紙は、その投票用紙に固有のページアドレスを認識することにより特定可能であり、記入されたマークは、通常の従来の方法で、投票ペンにより記録されている。それで、投票のマークが投票用紙の画像上に重ねて合成画像を作り、投票箱から問題の投票用紙を取り出すことなく、投票の有効性について判定することができる。
【0095】
さらに、当然のことながら、本明細書に記載の自動票記録/計数プロセスは、他の投票システムにも適応可能な、価値ある機会を提供する。例えば、比例代表制(PR)では、移譲票プロセスにより、第1番目、第2番目、第3番目(等々)の選択を計数するが、自動計数に好適な数学的概念が採用されている。このようにして、PR集計ルーチンとともに適切な語彙を用いて(番号/数字を検索するICR)、必要な計算を実行することができる。例えば、PRが三つの選択の規則を有する場合、集計ルーチンは(ICR語彙を介して)第1の選択すべてを識別し、加算し、同様に第2の選択のすべてを識別し、等々と実行する。
【0096】
投票ロジック:有効領域プロセスの要約
有効領域は、図4及び図5に例示されるサンプル票の右側の領域である。
投票ロジックは2段階プロセスとして作動する。
【0097】
第1の段階:1つの有効領域内だけに書き込みがあるか?「はい」であれば、その票は第2の段階に進む。しかしながら、複数の枠にマークが記入されている場合、または、さらなるマークが投票用紙の別の所に記入されている場合には、票は疑わしいと考えられ、別に保管される(下記のファイル2を参照)。この段階ではマークの種類を区別せず、単にマークがあり、かつ、有効な場所にあることを認識する。
【0098】
第2の段階:第1のロジック段階を終了すると、続いて正しい位置に記入されたマークは、その選挙において使用される投票語彙に対して比較され、様々なマークのいずれも投票用に定義された正しい票として受け入れ可能かどうかテストされる。
【0099】
有効領域ロジックは、適用される投票規則に応じて変更することができる。票は、投票ロジックに従い、以下の2種類のファイルのうちの一つに処理される。
【0100】
第1のファイル:無効票−定義された投票規則に明らかに違反する。例えば、複数の候補者に投票している、マークが記入されていない、あるいは手書きが付け加えられている。
【0101】
第2のファイル:疑わしい投票用紙−第1の段階を通過しなかったが、有効性を確認するために判定が必要である、あるいは識別可能な場合は、図5に示す場合のように、選挙管理官がどの候補者に投票しているのかを判断する。
【0102】
この投票規則は票をどのように選別するかに重み付けするために用いることができる。例えば、主要な規則に従わない票はすべて選挙管理官の判定を得るために送別して、第2のファイルに入れることができる。他方、一つのみのマークを持ち、そのマークが正しい場所に記入されているが、投票語彙に存在しない票をすべて有効票として受け付け、第1のファイルにも第2のファイルにも除外しないこともできる。
【0103】
より広い選挙プロセス
選挙にデジタル紙を使用する別の方法
上述の記載は、中核を成す投票プロセスに関する。すなわち、投票用紙のマークを取り込み、ICRソフトウェアを用いて意味を抽出し、投票規則に従って結果を選別し、有効票の場合はそれを数え、疑わしい票の場合は判定用に画像を提供するために、いかにデジタル紙を用いるかに関する。中核機能には、選択的に様々な追加の機能を加えることができる。以下に、追加可能な変形例について説明する。
【0104】
ローミング投票
英国においては、オンライン合同選挙人登録(CORE:Co-ordinated On-line Register Of Electors)(www.odpm.gov.ukを参照) が完全に導入されると、これの拡大が可能になる。このデータベースは、政府レベルで(英国では憲法問題省を経由して)管理され、適格な有権者全員を示すオンラインデータベースとなる。しかしながら、本明細書において「CORE」の参照は純粋に例示であること、及び中央有権者データベースが構築された場合に、通常、そのプロセスは適用可能であることが理解されるだろう。
【0105】
ローミング投票の登録
本提案は、すでに投票者が利用できる既存の投票方法:
・地域の投票所での投票
・ 郵便投票
への追加である。
【0106】
ローミング投票者は、移動投票所が備える標準定型用紙のデジタル投票用紙にて投票する。図6は、その投票用紙の一例を示す。この投票用紙は、パターンと、候補名の記載のない空白の投票書式とを有する。標準定型用紙には、最大の選挙区に必要とされるのと同じ数のICR有効領域を有する四角枠を備える。
【0107】
選挙前に適時に登録することで、投票者はローミング投票をする資格を得る、すなわち代理投票または郵送投票を希望する場合は、その選択を登録する。詳細はCOREに、あるいは等価の有権者データベースに記録される。本提案は、ローミング投票を以下のような様々な場所で可能にするためのものである。
・郵便局
・銀行
・駅のコンコース
・ワゴン車やトラックに設置された移動投票所
・大使館
・ 軍事基地及び駐屯地
【0108】
ローミング票の投票
移動投票所に入ると、投票者は、投票管理官または投票所職員に対し、データベースにアクセスするためにCOREプロセスが規定する何らかの身分証明を提示する。投票者のID が確認されると、そしてこの投票者がこの方法で投票することを前もって登録していることをCOREが示すと、投票者には、標準定型用紙のデジタル投票用紙にこの投票者の選挙区に合わせて候補者の氏名を重ね刷りして作成し、デジタル投票用紙が与えられる。
【0109】
標準定型用紙のデジタル投票用紙からの投票番号の取り込み
バーコードリーダまたはデジタルペンを使用して、投票所職員が投票用紙のバーコードまたはパターンをスキャンし、COREの投票者の名前にこの番号を記録する。その投票用紙と関連の選挙区とを関連付けるために、この番号はデジタル投票用紙ソフトウェアにも渡される。
【0110】
投票
デジタル投票ペンを使用して投票をした後、投票者は投票用紙を投票箱に入れる。投票箱には、ローミング投票箱とわかるように貼紙がされ、異なる色がつけられている(または、その他の方法で作られている)。投票終了後、ローミング投票箱を地域の中央管理所へ持っていき、いかなる選挙区においても手作業で数える場合には必要になるという事態に備えて、ローミング投票箱をそこに保持しておく。あるいは、ローミング投票箱を直ちに開票し、投票用紙を選挙区ごとに分類することもできる。これは、投票管理官及び選挙管理官が決定する可変事項である。
【0111】
不正行為の試み
地域での投票または郵便投票を登録し、実際に投票した後にローミング投票をも同様に試みた場合、本システムはこのような不正行為に対して堅牢に構成されている。これは、この投票者の氏名がローミング投票の権利を有する者としてCOREに認識されないからである。このような投票者は、移動投票所では受け付けられないだろう。
【0112】
他方、投票者がローミング投票者として登録して、そのオプションを使用して後に自宅で、地域の投票所で、投票を試みたとしても、本システムはこのような不正行為に対しても堅牢に構成されている。これは、地域の投票所では、投票所職員に渡される印刷された登録表に、該当の投票者がローミング投票者として登録したことを示す文字が投票者の氏名に付けられているからである。このプロセスは、代理投票者または郵便投票者を示すためにすでに用いられているシステムの拡張版である。この投票者は受け付けられず、ローミング投票ブースに導かれる。地域の投票所がインターネットに接続され、COREへのアクセスを有する場合は、(選挙計画の初期の段階で決定することにより)ローミング投票者が地域の投票所で投票する資格を得ることが可能である。本プロセスは該当する投票者の氏名を登録名簿から削除し、"更に"移動投票所で再び投票ができないようCORE上に合図の印を付けるためのものである。
【0113】
従来の非ローミング投票所での投票プロセスの終了
投票が終了する際に、投票管理官または投票所職員は通常の選挙プロセス毎に、投票終了の公式書類を次のように準備する;
・投票用紙報告書、目の不自由な投票者の介添人による宣誓書、目の不自由な投票者のリスト等に記入
・ さらに、投票管理官のデジタルペン及びデジタル投票ペンのために、または、ペン本体と遠隔の所にある場合は、ペンのメモリのために、セキュリティボックスが提供される。
【0114】
開票
開票所に到着後すぐに、投票箱が開けられるというわけではない。その代わり、投票箱は安全に保管され、選挙管理官の監視の下にペンからダウンロードを行う(すなわち、メモリカードからデータを抽出する)。
【0115】
投票ペンからのデータのダウンロード
これは、複数の投票ペンを複数のブロックからなる架台に設置することにより実行される。架台は一度に多数のペンを、何個ずつでもよいが、多分10個ずつの単位で受けることができる。この架台ブロックを、集計結果を出すためのデジタル紙投票ソフトウェアを稼働させているコンピュータネットワークに接続する。ペンからダウンロードするために、開票職員はペンの端部に計数鍵を挿入する。その鍵穴はペンが投票所で作動中の時は、つなぎ綱キャップで覆われていた。
【0116】
計数鍵24は、ペンを起動しダウンロードを実行する。ダウンロードが終了すると、異なる色の光がペンを照らし、ダウンロードが完了したことを示す。
【0117】
ダウンロードにより、2セットのデータが生み出される。すなわち、一つは投票ロジック集計ソフトウェアにより処理される票、他は投票所ペン登録表へのそのペンの入力事項である。
【0118】
遠隔メモリを使用する場合、ダウンロードのプロセスは類似しているが、メモリカード読取装置で十分であると考えられるので、おそらくペン架台を使用する必要はない。
【0119】
検証
これは、集計管理官が実際に投票された総投票数を決定するために使用し、また投票率を決定するためにも使用されるプロセスである。すべての投票用紙を数える必要があるが、分類する必要はない。この総投票数は、投票所で投票所職員によって発行された投票用紙の枚数と比較される。投票者は投票用紙を投票箱に入れないで持ち去ることが時々あるため、発行された投票用紙の枚数を数えるだけでは十分とはいえない。どの投票所でも、この計算はデジタル紙投票で自動的に行われる。この計算を行うために、ソフトウエアは投票デジタルペン及び投票所職員のデジタルペンを用いて、内部あるいは遠隔のメモリから収集したデータを利用する。
a)発行された投票用紙の総数:このデータは、上述のように、投票所職員のペンに記録されて発行される投票用紙の合計記録に由来する。
b)投票総数:このデータは、投票ペンの「メモリ」から得られる。開票所では、異なる投票所から運ばれた多くのペン/メモリが一度にダウンロードされるので、一つの投票所からの票を一つにまとめられることが重要である−検証段階。
このことは、投票の開始時にペンを設定する際に、各ペンが投票所登録表(図3を参照)に記入されているので可能となる。ペンからの入力記録は、そのペンからの投票データとそのペンが使われた投票所とを結びつける。
c)投票率:選挙ごとに異なる方法で算出される。しかしながら、すべてのシステムは上記のa)とb)との組合せを、登録されている有権者の総数(システムが稼働中の場合はCOREから)と組み合わせて使用する。
【0120】
合同選挙区
例えば、総選挙と地方議会選挙のように、2つの選挙が同時に行われることは多い。従来、投票者は異なる投票用紙を使用して、それぞれ異なる投票箱に投票するか、または、多くの場合は1つの箱に一緒に投票していた。後者の場合、2種類の投票用紙は、開票時に分類し区別しなければならない。更に複雑なことに、最初の開票時に、混合し投票用紙を分類し、第1の選挙の票計数をその場で行っている間に、第2の選挙の投票用紙を投票箱に戻し別の選挙の票計数の場に運ぶ、ということがよく行われる。デジタル紙による投票は、計数鍵を回す際に票はダウンロードされるが、メモリから削除しないように、ペンに使用するソフトウェアを設定することでこの要件に適応している。
【0121】
集計ソフトウェアは、ある選挙のデータと別の選挙のデータとの違いを識別する。この識別は、ある候補者への票と別の候補者への票を区分するために既に用いられているロジックの拡張だからである。
【0122】
ペン/ペンのメモリが最初にダウンロードされると、それらは第2の選挙のための開票所に運ばれ、2度目のダウンロードが行われる。ここでのロジックは逆で、集計ソフトウェアは第1の選挙の票を無視する。
【0123】
手作業による開票
すべての集計及び判定プロセスに対して、どれほど単純または複雑であろうとも、昔の方法のように手作業によって元の投票用紙を数えるという万一の場合の代替策がある。この選択肢が実行される時または実行されるか否かは、原則として選挙の前に同意しておくべき手順の問題であり、必要な場合に必要に応じて、同意された規則を用いて実行される。しかしながら、技術レベル上若しくは選挙結果の接近に起因するいずれかの問題が発生しない場合には、出願人は本提案を用いることにより、1時間以内に選挙結果を出すことが可能であると考える。時間に対する制約は、使用するダウンロード用架台の数と、接近した選挙で計数され、判定を下す必要のある不確実票の数のみに関係を生じる。
【0124】
実際に、殆んど選挙では投票用紙を手作業で数える必要はないだろう。
【0125】
当業者には理解できることであるが、本発明は主に投票システムに関連して述べられてきたが、用紙記入が必要な他の状況においても同等に適用可能である。例えば、銀行、住宅金融組合及び郵便局における金融取引、警察手帳への記入、パスポート申請書または運転免許証等の他の書類の申請書への記入、学校、政府及び商業ビルにおいて、さらには抽選券等への記入が挙げられる。使用者によってペンに対する使用能力と経験のレベルがかなり異なるので、上述の使用者へのフィードバック機能は特に後者のような分野において、特に重要であると考えられる。
【0126】
本明細書及び請求の範囲において、「備える(comprises)、備えている(comprising)及び有する(having)」の用語及びその変化形は、特定の特徴、ステップ、または整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは構成要素の存在を除外するようには解釈されない。
【0127】
これまでの記載、または以下の請求の範囲、若しくは添付の図面に開示され、それらの特定の形式でまたは開示の機能を実行するための手段として表現した特徴、または開示した結果を達成するための方法またはプロセスは、適切に、個別に、その特徴の任意の組合せとして、本発明を広い態様で実現するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
詳細かつ厳密に非限定的な本発明の具体例を、例示としてのみ、添付図面を参照して説明する。
【図1】デジタルペンの切断図を模式的に示す。
【図2】図1のペンに使用する鍵の見本を示す。
【図3】記載の投票システムを実施する際に用いる投票所ペン登録表の例を示す。
【図4】デジタル投票用紙の見本を示す。
【図5】不確実票を図示する。
【図6】本明細書に記載の「ローミング」投票者が使用できる標準定型の投票用紙を示す。
【図7】遠隔メモリを有するデジタルペンの別の形式の模式的な切断図を示す。
【図8】フィードバック部を有するデジタルペンのさらに別の形態の模式的な切断図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、前記センサにより収集されるデータを格納するメモリと、データへの未許可のアクセスを制限するメモリロックとを有することを特徴とするデジタルペン。
【請求項2】
前記ペンは、メモリロックへのアクセスが物理的に制限される第1の動作モードを有することを特徴とする請求項1に記載のデジタルペン。
【請求項3】
前記アクセスが起動ロックによって制限されることを特徴とする請求項2に記載のデジタルペン。
【請求項4】
前記メモリロックが物理的な鍵と係合可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデジタルペン。
【請求項5】
前記メモリロックが機械的な鍵と係合可能であることを特徴とする請求項4に記載のデジタルペン。
【請求項6】
前記第1の動作モードで、前記メモリロックと鍵の係合が物理的に制限されることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のデジタルペン。
【請求項7】
前記係合が着脱可能なバリアによって制限されることを特徴とする請求項6に記載のデジタルペン。
【請求項8】
前記バリアを、前記起動ロックを操作することにより取り除くことができることを特徴とする請求項7に記載のデジタルペン。
【請求項9】
前記バリアは、前記ペンが使用される場所から前記ペンを許可なく取り外すのを制限または防御するために、安全つなぎ綱と物理的に結合していることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のデジタルペン。
【請求項10】
前記つなぎ綱が電気径路を備えることにより運転電流または充電電流が前記ペンに供給されることを特徴とする請求項9に記載のデジタルペン。
【請求項11】
前記バリアは、前記ペンの非記入用端部と係合可能なキャップを備えることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のデジタルペン。
【請求項12】
前記メモリは前記ペン本体の一部に配置され、脆弱区域によって前記本体の残りの部分から分離されることを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載のデジタルペン。
【請求項13】
前記メモリが前記ペンの前記記入用端部から間隔を置いて設置されるメモリチャンバに配置されることを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載のデジタルペン。
【請求項14】
前記メモリチャンバが、前記ペンの前記第1の動作モードにおいて、前記キャップによって少なくとも部分的に覆われていることを特徴とする請求項13に記載のデジタルペン。
【請求項15】
前記脆弱区域は、前記第1の動作モードにおいて、前記キャップの開口部の近傍に配置される折れやすい線または領域を備えることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のデジタルペン。
【請求項16】
本体と、前記本体内に配置されたメモリチャンバとを有するデジタルペンであって、前記チャンバに未許可のアクセスをしようとすると、前記チャンバが前記本体の残りの部分から取り外されるように、前記メモリチャンバは脆弱区域により前記本体の残りの部分から分離することを特徴とするデジタルペン。
【請求項17】
前記ペンが前記脆弱区域で破損しても、前記チャンバが前記つなぎ綱から切り離されないようにするために、使用中のペンをアンカーにつなぎ綱で安全につなぎ、前記ペンが使用される場所から前記ペンを許可なく取り外すのを制限し、または妨げるように、前記つなぎ綱が前記ペンに取り付けられているか、または一体化していることを特徴とする請求項16に記載のデジタルペン。
【請求項18】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の追加機能を有する請求項16または請求項17に記載のデジタルペン。
【請求項19】
票の投票及び/または記録に用いられる請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のデジタルペンの使用。
【請求項20】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の複数のデジタルペンを備える電子投票記録システム。
【請求項21】
投票選択を示すために物理的にマークを記入するための領域を備える投票プロセスに使用される投票用紙であって、前記投票用紙がデジタル紙を用いて作成されることにより、適切に構成されたデジタルペンが前記投票の電子的表現を取得し、前記投票用紙が前記ペンにより読込可能な識別子を有することにより、前記投票と前記投票が行われた前記投票用紙とが関連付けられることを特徴とする投票用紙。
【請求項22】
各投票用紙が固有の識別子を有することにより、複数の投票と前記投票が行われた複数の前記投票用紙とを関連付けることを特徴とする請求項21に記載の一組の投票用紙。
【請求項23】
同一または実質的に同一のデジタル紙パターンを有している一組のデジタル紙であって、前記一組のデジタル紙は、前記一組の異なるデジタル紙に形成されている異なる色調、異なる色彩または異なる色相のパターンにより、互いに識別可能であることを特徴とする一組のデジタル紙。
【請求項24】
任意のデジタル紙パターンの複数の色の中の1またはそれ以上からのデータを記録するためだけに操作可能となるように、色感度センサを有することを特徴とするデジタルペン。
【請求項25】
任意のパターンの異なる色調を感受するために前記ペンを切替えられるように、前記センサが調節可能であることを特徴とする請求項24に記載のデジタルペン。
【請求項26】
前記ペンが交換可能なカラーフィルタを有することにより、所望の色感度が得られることを特徴とする請求項24または請求項25に記載のデジタルペン。
【請求項27】
色に敏感なデジタルペンと複数のデジタル紙との組合せであって、前記デジタル紙は、同一または実質的に同一のデジタル紙パターンを有するが、前記パターンのうちの少なくとも一部は、その他のパターンとは異なる色調、色彩または色相により形成されている組合せ。
【請求項28】
投票選択を示すためのマークを記入する領域を有する投票用紙を用いて投票された票を記録する方法であって、前記マークが記入される際に前記投票を電子的に表現できるように、デジタルペンの前記投票用紙に対する位置を電子的に検出するステップと、前記投票と前記投票が行われた前記投票用紙とを関連付けるために、前記投票用紙の識別子を電子的に検出するステップとからなる投票を記録する方法。
【請求項29】
各投票用紙が固有の識別子を有する複数の投票用紙を使用することにより、複数の投票と前記複数の投票が行われた前記複数の投票用紙とを関連付けることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記一または複数の投票用紙はデジタル紙を用いて作成され、前記一または複数の投票を表示し、且つ投票が行われた前記一または複数の投票用紙の同一性を提供するために前記デジタル紙パターンを用いることを特徴とする請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示すデジタルペン。
【請求項32】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示す一組の投票用紙。
【請求項33】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示すデジタルペンの使用。
【請求項34】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示す投票用紙。
【請求項35】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示す一組のデジタル紙。
【請求項36】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示す色に敏感なデジタルペンと複数のデジタル紙との組合せ。
【請求項37】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示す投票を記録する方法。
【請求項38】
本体と筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、前記センサにより収集されるデータを格納するメモリとの組合せであって、前記メモリは前記ペンから離れた場所の筐体内に配置され、安全つなぎ綱により前記本体と接続されている組合せ。
【請求項39】
前記つなぎ綱がデータ経路を備えることにより、前記センサによって収集されるデータが前記メモリに送られることを特徴とする請求項38に記載の組合せ。
【請求項40】
前記つなぎ綱が電気径路を備えることにより、運転電流または充電電流が前記筐体から前記ペンに供給されることを特徴とする請求項38または請求項39に記載の組合せ。
【請求項41】
前記つなぎ綱が前記筐体に着脱自在に接続していることを特徴とする請求項38、請求項39または請求項40に記載の組合せ。
【請求項42】
前記つなぎ綱が起動ロックによって前記筐体に接続していることを特徴とする請求項41に記載の組合せ。
【請求項43】
前記筐体が不正操作防止、強化または補強されたボックスであることを特徴とする請求項38から請求項42のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項44】
前記起動ロックが前記ペンを始動及び停止するように作動可能であることを特徴とする請求項43の組合せ。
【請求項45】
前記メモリに未許可のアクセスを試みると、前記ペン及び/または前記つなぎ綱が前記筐体から分離するように、前記筐体が脆弱区域を有することを特徴とする請求項38から請求項44のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項46】
前記筐体は複数のメモリを含み、複数の異なるペンからのデータが共通の場所に格納されるよう、各メモリが異なるデジタルペンと関連付けられていることを特徴とする請求項38から請求項45のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項47】
実質的に前述の、及び/または、添付の図面に示すデジタルペンと遠隔メモリとの組合せ。
【請求項48】
本体と、筆記面のペンの位置の電子的表現を提供するセンサと、前記センサにより収集されるデータを処理するローカル処理装置または遠隔処理装置と、フィードバック装置とを有することにより、前記データ処理に応じて、視覚的、触覚的または音波的情報を使用者に与えることを特徴とするデジタルペン。
【請求項49】
前記処理装置は、前記ペン本体に取り付けられている、または一体化していることを特徴とする請求項48に記載のデジタルペン。
【請求項50】
前記処理装置は、前記本体とデータ通信しているが、物理的には間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項48に記載のデジタルペン。
【請求項51】
前記使用者に与えられる前記フィードバックの状況を確認できるように、前記処理装置は前記筆記面に関する情報とともに前記データを処理するよう作動する請求項48、請求項49または請求項50に記載のデジタルペン。
【請求項52】
本明細書及び/または添付の図面に示す新規な特徴または特徴の新規な組合せ。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−500210(P2009−500210A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520946(P2008−520946)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002566
【国際公開番号】WO2007/007088
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508010190)ロングハンド データ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】