説明

抗アレルギー組成物

【課題】安全・安価かつ簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な抗アレルギー作用を有し、種々のアレルギー性疾患、例えば、花粉症、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等の予防および/または改善に有効な天然素材を提供する。
【解決手段】本発明は、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物を含有することを特徴とするIgE産生抑制組成物、ならびにこれを含有する抗アレルギー組成物および抗アレルギー用飲食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物を含有することを特徴とするIgE産生抑制組成物、ならびにこれを含有する抗アレルギー組成物および抗アレルギー用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国においてアレルギー性疾患は最も発症率の高い疾患の一つである。特に代表的なものとして、花粉症、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、等があり、その他にも、リュウマチ、炎症性腸疾患、薬物アレルギー、食物アレルギー等が挙げられる。これらの中でも花粉症とアトピー性皮膚炎の患者数は急激に増加しており、大きな社会問題になっている。
【0003】
アレルギー反応はI型からIV型の大きく4タイプに分類されているが、多くのアレルギー性疾患は、I型アレルギーを介して起こるとされている。その作用機構は複雑であるが、以下のようなものであると考えられている。血液や組織中のマスト細胞や好塩基球表面にIgE抗体が結合し、さらにこのIgE抗体に特異的なアレルゲンが結合すると、細胞内からヒスタミン等のケミカルメディエーターが大量に産生・遊離され、さらに細胞表面ではロイコトリエン等が産生される。これらの産生された物質が、血管透過性を亢進させて浮腫や鼻汁の過剰分泌を引き起こし、また平滑筋を収縮させて気管支等の収縮を引き起こす。これらの作用がアレルギー症状となって現れる。
【0004】
現在、アレルギー症状を改善する方法としては、マスク、ゴーグル、空気清浄機等で花粉やハウスダスト等のアレルゲンとの接触機会を少なくする方法や、アレルゲンとなる食物を特定してその食物を摂取しないようにする方法等の物理的な方法、遊離したヒスタミンが受容体に結合するのを阻害する抗ヒスタミン剤、炎症反応を抑制するステロイド剤、細胞膜安定化作用を有する脱顆粒抑制剤またはロイコトリエン合成阻害剤等の抗アレルギー剤によってアレルギー反応を抑制する方法等の薬物的な方法がある。しかしながら、アレルゲンとの接触を完璧に防ぐことは極めて困難であり、また、抗アレルギー剤には、多くの場合副作用があり、日常的に長期に適用するには限界がある。
【0005】
一方、これらの薬剤に代えて、抗アレルギー効果を示す食品を摂取することによってアレルギー症状を改善しようとする試みも行われており、例えば、甜茶、シソ、β−グルカン等を添加した食品が知られている。しかしながらこれらの食品は医薬品に比べて副作用は少ないものの、アレルギー改善効果も限定的で十分な効果があるとはいえず、満足できるものはこれまでなかった。
【0006】
したがって、日常的に服用が可能で、しかも効果的に花粉症等のアレルギー症状を緩和できる抗アレルギー食品が望まれている。
【0007】
ところで、クスノキはクスノキ科ニッケイ属の常緑高木としてよく知られ、クスノキ科の植物から機能性成分を得ようとする試みが行われている。例えば、特許文献1には、ニッケイから抽出・精製した成分がマスト細胞の脱顆粒を抑制することが開示されている。しかしながら、マスト細胞は前述のようにIgEを介してアレルギーに関与するだけでなく、自然免疫として、Toll様受容体等を介して微生物や異物を認識して、脱顆粒によりこれを排除する感染防御に重要な働きを有しているため、マスト細胞の脱顆粒を非特異的に抑制すると、自然免疫の働きが損なわれてしまうという問題がある。またニッケイから有効成分を得るために、植物体から無菌的に組織培養を行ってカルスを得、さらに継代培養を行った後抽出精製するか、または植物体に特定の微生物を感染させて培養根を生じさせ、この培養根から抽出精製する必要があり、煩雑な製造工程を行う必要があった。また、幹皮を用いると効果が弱いため、効果の高い抽出物を得るためには根を用いる必要があった。さらに、脱顆粒を抑制する作用を有する薬剤が臨床において用いられているが、予防的にしか効果を示さず、しかも効果を示すまでに4〜6週間もの長期間を要することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−102027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、安全・安価かつ簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な抗アレルギー作用を有し、種々のアレルギー性疾患、例えば、花粉症、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等の予防および/または改善に有効な天然素材に対する要望は依然として高い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジおよびワニナシの処理物、好ましくはこれらを有機溶媒を用いて抽出して得られる組成物が、他の植物に比べて、極めて強力なIgE低下作用を示し、様々なアレルギー性疾患の予防および/または改善に有用であることを見出した。そしてクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジおよびワニナシを用いると、複雑な濃縮や精製工程を行わなくても、簡便に効果の高い抗アレルギー組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物を含有することを特徴とするIgE産生抑制組成物。
(2)クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの有機溶媒抽出物を含有する(1)記載のIgE産生抑制組成物。
(3)有機溶媒抽出物が、アルコール系溶媒および/またはエステル系溶媒を用いて抽出されたものである(2)記載のIgE産生抑制組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のIgE産生抑制組成物を含有する抗アレルギー組成物。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載のIgE産生抑制組成物を含有する抗アレルギー用飲食品、飼料または化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、安全・安価かつ簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な抗アレルギー作用を有し、花粉症、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性疾患の予防および/または改善に有効な抗アレルギー組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明する。
【0014】
本発明においてIgE産生抑制とは、B細胞によるIgE抗体の産生を抑制する作用、ならびにIgE抗体によって引き起こされる様々な有害作用を予防、治療、減少または緩和させる作用をいう。本発明において抗アレルギー作用とは、花粉症、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、リュウマチ、炎症性腸疾患、薬物アレルギー、食物アレルギー等の症状、ならびにIgE抗体によって引き起こされる様々な有害作用を予防、治療、減少または緩和させる作用をいう。さらには、IgE抗体を介した反応を原因として肥満細胞等から遊離される、過剰なケミカルメディエーターによって引き起こされる、平滑筋の収縮、血管透過性の亢進、好中球の遊走、血小板の凝集等の反応、およびこれらによって誘発される様々な症状を予防、治療、減少または緩和させる作用も包含する。
【0015】
本発明は、過剰なIgE抗体によって引き起こされる上記のような病態、症状、状態に効果を示し、過剰なIgE抗体によらない、生体に必要な反応、詳細には、Toll様受容体等を介して起こる自然免疫反応や、IgE抗体を介さないで遊離するケミカルメディエーターによって起こる、生体に必要な防御反応等を抑制しないという点で、ケミカルメディエーター拮抗剤(例えば、抗ヒスタミン剤等)や、脱顆粒抑制剤等に比べて優れている。さらに、脱顆粒抑制剤ではマスト細胞膜上で合成されて放出されるロイコトリエン(LT)やプロスタグランジンD2(PGD2)を抑制できないが、IgE産生抑制組成物はLTやPGD2にも効果がある。PGD2の抑制により、Th2細胞、好酸球、好塩基球の遊走に伴うアレルギー反応に対し特に有効に作用する。また、アレルギー反応の一連の流れの中で、上流の反応であるIgE抗体を介した反応を抑制することができるため、より効果が高くしかも即効性かつ特異的にアレルギー反応を予防、治療することが可能となる点においても、優れている。従って、血液中のIgE量が高い病態(高IgE血症)を合併する疾患、例えば、アレルギー性(アトピー性)疾患、寄生虫感染、高IgE症候群、およびWiskott−Aldrich症候群に対し特に効果が期待できる。
【0016】
本発明に用いられるクスノキは、クスノキ科ニッケイ属の植物であるクスノキ(学名:Cinnamomum camphora、楠、樟、別名クス、ナンジャモンジャ)をさす。本発明に用いられるゲッケイジュは、クスノキ科ゲッケイジュ属の植物であるゲッケイジュ(学名:Laurus nobilis L.、月桂樹)をさす。本発明に用いられるクロモジは、クスノキ科クロモジ属の植物であるクロモジ(学名:Lindera umbellata、黒文字)をさす。本発明に用いられるワニナシは、クスノキ科ワニナシ属の植物であるワニナシ(学名:Persea americana Mill.、鰐梨、アボカド)をさす。
【0017】
本発明のIgE産生抑制組成物および抗アレルギー組成物の有効成分としては、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシをそのままを用いてもよいし、これらの植物の処理物を用いてもよい。処理としては、破砕処理、粉砕処理、加熱処理、乾燥処理、抽出処理、圧力処理、酵素処理、分解処理(例えば、加水分解処理)、ならびにそれらの組み合わせを採用できる。本発明では、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの有機溶媒抽出物を有効成分として用いるのが好ましい。有機溶媒を用いて抽出を行うと、簡便に本発明の効果を高めることができるため、有利である。このように本発明のIgE産生抑制組成物および抗アレルギー組成物は簡便に調製することができるうえ、効果が高いため、経済的にも優れている。
【0018】
以下、本発明に用いられるクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの有機溶媒抽出物の製造方法について詳細に説明する。抽出に用いられる植物の部位としては、例えば、葉、茎、幹、樹皮、実、花、根などを用いることができる。クスノキおよびゲッケイジュでは葉を用いるのが好ましく、クロモジでは樹皮を用いるのが好ましく、ワニナシでは果実を用いるのが好ましい。葉、樹皮および果実は採取しやすく、簡便に量を確保でき、また幹などに比べて柔らかいため加工や抽出を行いやすく、経済的にも好ましい。
【0019】
抽出方法は特に制限されないが、上記クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの各部位をそのまま、あるいは切断または粉砕したもの、乾燥したもの、乾燥後粉砕したもの、圧搾抽出した搾汁等を、抽出溶媒中に浸漬、攪拌または還流等する方法、ならびに超臨界流体抽出法等の公知の方法を挙げることができる。
【0020】
抽出に用いることができる有機溶媒としては、具体的には、アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の低級アルコール、および1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の室温で液体であるアルコール;エステル系溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、セロソルブアセテートおよびメトキシアセテートなどが挙げられる。他の有機溶媒としては、ジエチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン;ヘキサン;ならびにクロロホルム等を挙げることができる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせる場合、複数の溶媒の混合物を用いて抽出操作を行ってもよいし、異なる溶媒で順番に多段階で抽出操作を行ってもよい。上記の有機溶媒の中では、操作性、安全性や環境性の点から、室温で液体であるアルコール、例えば、炭素原子数1〜4の低級アルコール系溶媒を用いるのが好ましく、活性が高い抽出物を得るという観点からはエステル系溶媒を用いるのが好ましい。また、アルコール系溶媒で抽出したものをさらにエステル系溶媒で抽出して得られる抽出物も好ましい。
【0021】
具体的な抽出方法としては、植物を、常圧または加圧下で、室温または加温した溶媒中に加え、浸漬や攪拌、振盪しながら抽出する方法、溶媒中で還流しながら抽出する方法等が挙げられる。その際、抽出温度は5℃から溶媒の沸点以下の温度とするのが適切であり、抽出時間は使用する溶媒の種類や抽出条件によっても異なるが、常温抽出の場合には数時間から数日間、特に3日〜10日程度とするのが適切である。還流操作により抽出を行う場合は、植物の抽出物が変性や熱分解を起こさないように低沸点の溶媒を用いるのが好ましい。また、二酸化炭素等を用いる超臨界流体抽出法により抽出操作を実施することもできる。
【0022】
ついで、抽出液および残渣を含む混合物を、必要に応じて濾過または遠心分離等に供し、残渣である固形成分を除去して抽出液を得る。なお、除去した固形成分を再度、抽出操作に供することもでき、さらにこの操作を何回か繰り返してもよい。
【0023】
このようにして得られた抽出液をそのまま用いてもよく、さらに必要に応じて、濃縮あるいは凍結乾燥やスプレードライ等の方法により、乾燥、粉末化したものとして使用してもよい。
【0024】
本発明のIgE産生抑制組成物および抗アレルギー組成物は、通常の場合、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物の乾燥質量を基準として、成人1日当たり0.001〜10gの範囲で適用される。経口投与の場合、一般的な1日当たりの摂取量は、0.01〜3gであるが、特に抽出物は安全性の高いものであるため、その摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。
【0025】
本発明のIgE産生抑制組成物および抗アレルギー組成物を医薬組成物とする場合の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤、吸入剤、坐剤等の経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等の皮膚外用剤、点滴剤、注射剤等が挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。また、安全性の面からはクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシをそのまま用いるよりも、有機溶媒抽出物の形態で用いるのがよい。
【0026】
このような剤型は、有効成分であるクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物に、慣用される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
【0027】
医薬組成物におけるクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物の含有量は、その剤型により異なるが、乾燥質量を基準として、通常は、0.001〜99質量%、好ましくは0.01〜80質量%の範囲であり、上述した成人1日当たりの摂取量を摂取できるよう、1日当たりの投与量が管理できる形にすることが望ましい。
【0028】
本発明のIgE産生抑制組成物を飲食品に添加する場合、その形態は特に制限されず、健康食品、機能性食品、特定保健用食品等の他、本発明のIgE産生抑制組成物を配合できる全ての飲食品が含まれる。具体的には、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤、経管経腸栄養剤等の流動食等の各種製剤形態とすることができる。製剤形態の飲食品は、医薬組成物と同様に製造することができる。さらに飲食品は、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープまたはソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等として調製してもよい。
【0029】
本発明に係る飲食品としては、家畜、競走馬、鑑賞動物等の飼料、ペットフード等も包含する。飼料は飲食品とほぼ同様の組成・形態で利用できることから、本明細書における飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
【0030】
飲食品にはさらに、食品や飼料の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。また、通常食されている飲食品に本発明のIgE産生抑制組成物を配合することにより、本発明に係る飲食品を製造することもできる。
【0031】
本発明に係る飲食品において、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物の含有量は、飲食品の形態により異なるが、乾燥質量を基準として、通常は、0.001〜50質量%、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。上述した、成人1日当たりの摂取量が飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
【0032】
本発明のIgE産生抑制組成物は安全性が高いため、化粧料に添加することもできる。本発明に係る化粧料は、継続的に適用することができるため、特にアトピー性皮膚炎を予防および/または改善するために有効である。
【0033】
本発明に係る化粧料を調製する場合、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物をそのまま化粧料としてもよく、またはクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの有機溶媒抽出物を汎用の方法で配合し、乳液、化粧液、クリーム、ローション、エッセンス、パックおよびシート、ファンデーション、おしろい、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、洗顔料、皮膚洗浄料、ゲル剤、ジェル剤、美肌剤、ボディシャンプー等の洗浄料、シャンプー、リンス等の毛髪化粧料、頭髪料、ヘアートリートメント、養毛剤、浴用剤、軟膏、医薬部外品、あぶら取り紙等の形態の化粧料を調製してもよい。
【0034】
本発明に係る化粧料は、クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物のほかに、所望する剤型に応じて従来公知の賦形剤や香料を初め、油脂類、界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子、増粘剤、顔料等の粉末成分、紫外線防御剤、保湿剤、酸化防止剤、pH調節剤、洗浄剤、乾燥剤、乳化剤等を適宜配合して、常法に従って製造することができる。
【0035】
本発明に係る化粧料におけるクスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物の含有量は、特に限定されないが、乾燥質量を基準として通常は、0.001〜50質量%、好ましくは0.01〜20質量%の範囲内である。
【0036】
本発明のIgE産生抑制組成物、抗アレルギー組成物、飲食品、飼料および化粧料には、公知の抗ヒスタミン物質、抗アレルギー物質、免疫調節物質を組み合わせることができる。抗ヒスタミン物質としては、茶、シソ、フキ、ポリフェノール類、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸トリプロリジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、ジメンヒドナート等が挙げられる。抗アレルギー物質としては、茶、甜茶、シソ、オリゴ糖、乳酸菌、アンレキサノクス、イブジラスト、クロモグリク酸ナトリウム、タザノラスト、トラニラスト、ペミロラストカリウム、レピリナスト、エバスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸エピナスチン、塩酸オロパタジン、塩酸セチリジン、塩酸フェキソフェナジン、塩酸レボカバスチン、オキサトミド、フマル酸ケトチフェン、フマル酸エメダスチン、ペシル酸ベポタスチン、メキタジン、ロラタジン、塩酸オザグレル、セラトロダスト、ラマトロバン、ザフィルルカスト、プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウム、トシル酸スプラタスト等が挙げられる。免疫調節物質としては、アラビノキシラン、乳酸菌、β−グルカン、ショウガ、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、IFN−γ等が挙げられる。
【0037】
さらに本発明のIgE産生抑制組成物、抗アレルギー組成物、飲食品、飼料および化粧料には、上記以外に、例えば、共役リノール酸、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ−アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドン等を配合してもよい。
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
(実施例1)クスノキのメタノール抽出物の製造
収穫したクスノキの葉(634g)を洗浄後、風乾させた。その後さらに60℃で一晩乾燥させた。これを粉砕後、5倍量のメタノール中に浸漬し、1週間静置して抽出した。その後、不溶物を濾紙(No. 2, Advantec Co. Ltd., Tokyo, Japan)で濾過した後、減圧下で濃縮、乾固してクスノキのメタノール抽出物52.9gを得た(収率:8.84%)。
【0040】
(実施例2)クスノキの酢酸エチル抽出物の製造
実施例1のクスノキのメタノール抽出物0.27gに1mLの蒸留水を加え、さらに酢酸エチル1mLを加えて振盪抽出し、酢酸エチル層を分画した。これを3回繰り返し、酢酸エチル層を合一した。これを遠心濃縮装置で濃縮し、クスノキの酢酸エチル抽出物を46mg得た。
【0041】
(実施例3)ゲッケイジュのメタノール抽出物の製造
収穫したゲッケイジュの葉(15g)を洗浄後、風乾させた。その後さらに60℃で一晩乾燥させた。これを粉砕後、5倍量のメタノール中に浸漬し、1週間静置して抽出した。その後、不溶物を濾紙(No. 2, Advantec Co. Ltd., Tokyo, Japan)で濾過した後、減圧下で濃縮、乾固してゲッケイジュのメタノール抽出物1.89gを得た(収率:12.6%)。
【0042】
(実施例4)クロモジのメタノール抽出物の製造
収穫したクロモジの樹皮(15g)を洗浄後、風乾させた。その後さらに60℃で一晩乾燥させた。これを粉砕後、5倍量のメタノール中に浸漬し、1週間静置して抽出した。その後、不溶物を濾紙(No. 2, Advantec Co. Ltd., Tokyo, Japan)で濾過した後、減圧下で濃縮、乾固してクロモジのメタノール抽出物0.99gを得た(収率:6.6%)。
【0043】
(実施例5)ワニナシのメタノール抽出物の製造
収穫したワニナシの果実(15g)を洗浄後、風乾させた。その後さらに60℃で一晩乾燥させた。これを粉砕後、5倍量のメタノール中に浸漬し、1週間静置して抽出した。その後、不溶物を濾紙(No. 2, Advantec Co. Ltd., Tokyo, Japan)で濾過した後、減圧下で濃縮、乾固してワニナシのメタノール抽出物1.33gを得た(収率:8.9%)。
【0044】
(比較例)
実施例1と同様にして、ザクロ(ザクロ科:比較例1)、ブラックコホシュ(キンポウゲ科:比較例2)およびヤグルマハッカ(シソ科:比較例3)それぞれのメタノール抽出物を得た。
【0045】
(試験例1)IgE分泌抑制作用
U266細胞を、非動化したFBSを10%添加したRPMI1640(SIGMA製)中で培養した。96穴プレートの各ウェルにU266細胞を3.5×10細胞/mLの濃度で分注し、これに実施例1を10、30、120μg/mL、実施例2を2、6、24、120μg/mL、実施例3〜5を120μg/mLとなるようDMSOで希釈して添加した。37℃で4時間培養し、培養上清を分離してIgE測定キット(医学生物学研究所製)を用いて上清中のIgE抗体量を測定した。陽性対象として、アンモニウムピロリジンジチオカルバメート(PDTC;SIGMA製)の終濃度50μmol/Lを用いた。結果は、溶媒であるDMSOのみを添加したウェルのIgE量を100とした相対値で表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
(試験例2)IgE分泌抑制作用
比較例の各サンプルを120μg/mLとなるように用い、試験例1と同様にして試験した。結果を試験例1の実施例の同濃度の結果とともに表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
(実施例6)錠剤の製造
実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物40g、結晶セルロース(旭化成)54gおよびポリビニルピロリドン(BASF)5gを混合し、これにエタノール30mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて打錠用顆粒末とし、打錠機を用いて打錠し、1錠が1gの錠剤100個を製造した。
【0050】
(実施例7)顆粒剤の製造
実施例4と同様にして得られたクロモジのメタノール抽出物100g、乳糖(DMV)100gおよび結晶セルロース(旭化成)40gを混合し、これにエタノール130mLを練合機に添加し、通常の方法により5分間練合した。練合終了後、10メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥した。乾燥後、整粒し、顆粒剤240gを得た。
【0051】
(実施例8)シロップ剤の製造
精製水400gを煮沸し、これをかき混ぜながら、白糖750gおよび実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物10gを加えて溶解し、熱時に布ごしし、これに精製水を加えて全量を1000mLとしてシロップ剤を製造した。
【0052】
(実施例9)流動食の製造
約65℃の純水700gにカゼインナトリウム(DMV)40g、マルトデキストリン(三和デンプン)160gおよび実施例3と同様にして得られたゲッケイジュのメタノール抽出物5gを添加して溶解させ、ついでビタミンミックスおよび微量ミネラルの各成分混合液を添加した。得られた混合液をホモミキサーに投入し、約8,000rpmにて15分間粗乳化した。得られた乳化液を約20℃に冷却し、香料を添加後、最終メスアップを行い、この液をパウチへ本液230g充填後、窒素置換を行いながらパウチを密封し、121℃で15分間殺菌を行って流動食を得た。
【0053】
(実施例10)パンの製造
小麦粉(強力粉)163gとドライイースト2gを混合した。これとは別に、実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物0.4g、砂糖25g、食塩3g、脱脂粉乳6gを温湯70gに溶かし、鶏卵1個を添加してよく混合した。これを上記の小麦粉とドライイーストの混合物に加え、よく手でこねた後、バター約40gを加えてさらによくこね、20個のロールパン生地を作り、次いで、これらのパン生地を発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で約15分焼き、ロールパンを作成した。
【0054】
(実施例11)レトルトご飯の製造
お米2合を用いて一般的な水量に対し、市販の混ぜご飯の素、および実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物0.1gを加えて炊飯し、これを慣用の方法に従ってレトルト用パックに填した後、窒素置換を行いながら密封し、121℃で15分間殺菌を行ってレルトご飯を得た。
【0055】
(実施例12)パスタ用ソースの製造
パスタ用のミートソース一人前(150g)を鍋に入れ、これに実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物0.1gを加えて加温混合した。このソースをパウチへ充填した後、窒素置換を行いながらパウチを密封し、121℃で15分間殺菌を行って、パスタ用ミートソースを得た。
【0056】
(実施例13)野菜ジュースの製造
市販の野菜ジュースに実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物を0.5質量%になるよう添加・混合し、野菜ジュースを調製した。
【0057】
(実施例14)コンソメスープの製造
タマネギ100g、ニンジン100g、長ネギ100g、セロリ50g、およびトマト100gの各スライスを鍋に入れ、ここに牛の挽き肉500g、卵の白味2個分、ビーフブイヨン1kgを加え、火にかけて沸騰したら火を弱め、表面に浮いてきたアクや脂肪分を除去しながら弱火で1時間煮て、実施例1と同様にして得られたクスノキのメタノール抽出物2gを加えてさらに30分間煮て、布でこし、コンソメスープを得た。
(実施例15)軟膏剤の製造
【0058】
【表3】

【0059】
Bを70℃で加熱溶解しながら混合し油相とする。Aを70℃で加熱溶解しながら混合し、これにBの油相を加えて混合乳化し、その後Cを加えながら冷却処理をしてよく混合し、軟膏を得た。
(実施例16)化粧料(乳液)の製造
【0060】
【表4】

【0061】
Aを70℃で加熱溶解しながら混合し油相とする。Bを70℃で加熱溶解しながら混合し、これにAの油相を加えて混合乳化し、50℃まで冷却する。その後Cを加えながらよく混合しさらに冷却して乳液を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの処理物を含有することを特徴とするIgE産生抑制組成物。
【請求項2】
クスノキ、ゲッケイジュ、クロモジまたはワニナシの有機溶媒抽出物を含有する請求項1記載のIgE産生抑制組成物。
【請求項3】
有機溶媒抽出物が、アルコール系溶媒および/またはエステル系溶媒を用いて抽出されたものである請求項2記載のIgE産生抑制組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のIgE産生抑制組成物を含有する抗アレルギー組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のIgE産生抑制組成物を含有する抗アレルギー用飲食品、飼料または化粧料。

【公開番号】特開2010−180141(P2010−180141A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22824(P2009−22824)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】