説明

抗ウイルス化合物

本発明はノイラミニダーゼ(NA)、ヘマグルチニン(HA)及び構造Mタンパク質を有するウイルスに対して阻害効果を示す新しいクラスの化合物を提供する。これらの化合物は、C型肝炎ウイルス(HVC)の複製因子の阻害剤としても有用である。本発明はまた、本発明の化合物を単独で、又は適切且つ薬学的に許容される担体を混合することで併せて含有する医薬組成物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイラミニダーゼ(neuramininidase)(NA)、ヘマグルチニン(HA)、構造タンパク質M及びヘマグルチニンエステラーゼ融合(HEF)糖タンパク質の阻害剤として有用な新しいクラスの化合物;ウイルス感染の治療、予防又は改善に有用な該化合物を含有する医薬組成物;並びに該化合物及び組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、電子顕微鏡上で観察すると、直径が80nm〜120nmの球状の形態及び/又は線状の形を示すことが見出されている(非特許文献1)。ウイルス膜の最も代表的な特徴は、A型及びB型のウイルスの場合には、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)に対応する放射状の突起が存在することであり(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)、C型インフルエンザウイルスでは、3つの生物活性:受容体への結合(H)、受容体不活性化(E)及び融合(F)に関与するヘマグルチニンエステラーゼ融合(HEF)糖タンパク質という名の糖タンパク質に対応する放射状の突起が存在することである(非特許文献5)。
【0003】
第一世代の抗ウイルス製品(主にアダマンタン誘導体、同様にアマンタジン、リマンタジン(rimandadine)等)は、A型インフルエンザウイルスのMタンパク質イオンチャネルを遮断することにより作用すると考えられている。Mプロトンチャネルを介したHイオンの流入を遮断することにより、脱殻及び細胞質への遊離リボ核タンパク質の放出が阻害される。これはA型株のウイルスにおいてのみ起こり、B型株においては起こらない。
【0004】
その後、抗ウイルス戦略は、A型及びB型のインフルエンザウイルスの表面上にキノコ型の突起として存在するヘマグルチニン(HA)又は酵素ノイラミニダーゼ(NA)のいずれかを阻害する、ザナミビル及びオセルタミビル等の第二世代の抗ウイルス剤の開発に向けられた。これらのタンパク質は標的細胞の膜表面に結合して、シアロ糖タンパク質及び糖脂質のシアル酸部分を開裂することにより感染する。さらに、酵素ノイラミニダーゼはウイルス複製の終了時に受容体からシアル酸を開裂して、ウイルス放出を可能にするために不可欠である。
【0005】
対照的に、C型肝炎ウイルス(HVC)に対抗する現在の戦略は、リバビリン(一リン酸として)を使用して、グアノシン一リン酸の合成を細胞内濃度を低下させることにより阻害することを含む。さらに、リバビリン(三リン酸として)は、ウイルスARNm及びARNポリメラーゼの合成を減少させることにより、酵素ARNm−グアニリルトランスフェラーゼ(guanilyltranspherase)を阻害する。
【0006】
薬剤耐性のインフルエンザ株、並びに特にA型ウイルスの連続した突然変異体及び耐性変異株又はその組み合わせの両方が伝染性であり、且つ完全に病原性であることを報告する国際的な刊行物は増加している。この点において、近年、科学者等はA型トリインフルエンザ(H5N1)ウイルスに世界的流行の発生の深刻な危険性があると説明している。
【0007】
同様に、C型肝炎感染は世界中で非常によく見られ、したがってますます多くの患者に影響を及ぼす深刻な発病状態を示している。
【0008】
上記を鑑みて、好ましくはウイルス複製に対して多重の複合した作用機序を呈する、改善された抗ウイルス化合物を開発する緊急の必要性がある。
【0009】
Itzstein, M. von et al.の非特許文献6は、インフルエンザウイルス複製のシアリダーゼ系阻害剤の合理的設計を開示している。Colman, P.M. et al.の特許文献1(出願日:1992年4月30日)、Itzstein, L. M. von et al.の特許文献2(出願日:1993年4月28日)、及びItzstein, L. M. von et al.の特許文献3(出願日:1991年10月31日)は、ノイラミニダーゼを結合する化合物を開示しており、該化合物はin vivoで抗ウイルス活性を示すと主張している。Bischofberger N. W. et al.の特許文献4(出願日:1996年2月26日)は、ノイラミニダーゼ阻害剤として新規の化合物を開示している。
【0010】
Babu Y.S., Chad P., Bantia S. et al.の非特許文献7、特許文献5(出願日:1999年7月8日)は、ノイラミニダーゼ阻害剤として有用な新規の置換化合物及び誘導体を開示している。
【0011】
さらに、非特許文献8に記載されるように、慢性HVC感染を治療するために、ヒト被験者においてリバビリン又はビラミジン等のプリンヌクレオシド類似体と、インターフェロンα2b(又はPEG化インターフェロンα2b)等のサイトカインとの同時投与を組み合わせることは一般的な医療行為である。実際に、リバビリン一リン酸(monophospahate)及びその誘導体がグアノシン一リン酸の合成及び細胞内濃縮を阻害する一方で、三リン酸塩がRNAm−グアニリルトランスフェラーゼ(guanilyltransferase)を妨げると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第92/06691号パンフレット(国際出願第PCT/AU90/00501号明細書)
【特許文献2】欧州特許第0539204号明細書(欧州特許出願公開第92309684.6号明細書)
【特許文献3】国際公開第91/16320号パンフレット(国際出願第PCT/AU91/00161号明細書)
【特許文献4】米国特許第5,952,375号明細書(米国特許出願第08/606,624号明細書)
【特許文献5】国際公開第99/33781号パンフレット(国際出願第PCT/US98/26871号明細書)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Yoshinori Fujiyoshi et al. "Fine structure if influenza A virus observed by electron cryo-microscopy", The EMBO Journal 13(2), pages 318-26, 1994
【非特許文献2】Wilson I. A. et al. "Structure of the haemoagglutinin membrane glycoprotein of influenza virus at 3 A resolution", Nature, 289, pages 366-73, 1981
【非特許文献3】Varghese J. N. et al. "Structure of the influenza virus glycoprotein antigen neuraminidase at 2.9 Aresolution", Nature, 303, pages 35-40, 1983
【非特許文献4】Colman P. M. et al. "Structure of the catalytic and antigenic sites in influenza virus neuraminidase", Nature, 303, pages 41-44, 1983
【非特許文献5】Herrier Georg, et al., "A synthetic sialic acid analogue is recognized by influenza C virus as a receptor but is resistant to the receptor-destroying enzyme", J. Biol. Chem., 2567 (8), pages 12501-12505, 1992
【非特許文献6】"Nature", 363 (6428), pages 418-423 (1993)
【非特許文献7】"Discovery of a novel, highly potent, orally active, and selective influenza neuraminidase inhibitor through structure-based drug design". J Med Chem, 43 (19): 3482 (2000)
【非特許文献8】Martindale 33. rd Ed. (2002) pages 639-43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一目的は、ウイルス、特にインフルエンザウイルス及び肝炎ウイルスに対して有意な阻害効果を示す新規の化合物を提供することである。新規の化合物は、より具体的にはウイルスノイラミニダーゼを妨げることにより、ウイルスにおける膜タンパク質ヘマグルチニン(HA)、M等の構造タンパク質、及びノイラミニダーゼ(NA)等の糖分解(glycolitic)酵素の複合的且つ選択的な阻害を与えるものである。新規の化合物は、C型肝炎ウイルス(HVC)に対する阻害活性を与えるものでもある。別の目的は、重度のウイルス感染に関与する最も一般的なウイルスのウイルス複製及び伝染プロセスの、現在使用されている抗ウイルス剤との交差耐性の全くない、改善された、より安価な阻害剤を提供することである。またさらなる目的は、本発明の新規の化合物、又は他の既知の抗ウイルス剤とのそれらの合理的な組み合わせを投与するための改善された方法を提供することである。付加的な目的は、上記用途に有用な医薬組成物を提供することである。
【0015】
これら及び他の目的は、本発明全体を検討することで当業者に容易に明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様において、一般式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Xは−CH−、−O−、−CHF−、−CF−を表し、
環のCとCとは単結合又は二重結合で連結され、
は−OH、ハロゲン又は−B/部分を表すが、但し上記環のCとCとを連結する二重結合が存在する場合、Rは存在せず、
は−OH、−O−CH(C、−NH、−NHC(NH)NH又は−NH−OHであり、
は−NH、−NHCO−CH又は−NH−CO−CH−OHであり、
は−CHOH−CHOH−CH−OH、−CHOH−CH−B/部分、−CH−B/部分又は−B/部分を表す)
の化合物であって、
−B/部分が:
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Rは連結官能基−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−又は
【0021】
【化3】

【0022】
を表し、
−Rは−H、−CH又は−Cであり、
−Rは−H、−CH又は−Cであり、
−Rは連結官能基−NH−、−CO−NH−又は−C(NH)−NH−を表す)
を表す、化合物、並びにそれらのC1〜4カルボキシルモノ又はポリエステル、付加塩、溶媒和物、その分割エナンチオマー及び精製ジアステレオマーが本明細書中で提供される。
【0023】
本発明の化合物を単独で、又は哺乳類、特にヒトに投与するのに適切な薬学的に許容される担体中で、他の活性薬剤と組み合わせて含有する医薬組成物も本発明に包含される。
【0024】
本発明の別の実施の形態では、ノイラミニダーゼ及び/又はタンパク質Mの活性は、ノイラミニダーゼ及び/又はタンパク質Mを含有する疑いがある試料を、本発明の化合物又は組成物で処理する工程を含む方法により阻害され得る。
【0025】
本発明の別の態様では、治療に有効な用量の本明細書中に記載される本発明による化合物を任意の適切な投与経路により宿主に投与することを含む、例えばインフルエンザウイルス又は肝炎ウイルスによって引き起こされるウイルス感染を宿主において治療又は予防する方法が提供される。
【0026】
本発明の他の実施の形態では、本発明の化合物を合成するための新規の方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】化合物1のFT−IR(フーリエ変換赤外分光)スペクトル(A)と、出発中間体アマンタジンのFT−IRスペクトル(B)との比較を示す図である。
【図2】化合物4のFT−IRスペクトル(A)と、出発中間体リマンタジンのFT−IRスペクトル(B)との比較を示す図である。
【図3】化合物8のFT−IRスペクトル(A)と、出発中間体メマンチンのFT−IRスペクトル(B)との比較を示す図である。
【図4】化合物10のFT−IRスペクトル(A)と、出発中間体リバビリンのFT−IRスペクトル(B)との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、以下の立体配置を有する構造式(I):
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、Xは−CH−、−O−、−CHF−、−CF−を表し、
環のCとCとは単結合又は二重結合で連結され、
は−OH、ハロゲン又は−B/部分を表すが、但し上記環のCとCとを連結する二重結合が存在する場合、Rは存在せず、
は−OH、−O−CH(C、−NH、−NHC(NH)NH又は−NH−OHであり、
は−NH、−NHCO−CH又は−NH−CO−CH−OHであり、
は−CHOH−CHOH−CH−OH、−CHOH−CH−B/部分、−CH−B/部分又は−B/部分を表す)
の化合物であって、
−B/部分が:
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、Rは連結官能基−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−又は
【0033】
【化6】

【0034】
を表し、
−Rは−H、−CH又は−Cであり、
−Rは−H、−CH又は−Cであり、
−Rは連結官能基−NH−、−CO−NH−又は−C(NH)−NH−を表す)
を表す、化合物に関する。
【0035】
好ましい実施の形態では、Xはシアル酸環に特有の−O−を表すが(Cのカルボン酸は非置換のままである)、これはシアル酸環がウイルスのノイラミニダーゼ(neuraminadase)の誘引点(attraction point)であると考えられているためである。別のより好ましい実施の形態では、環のCとCは単結合又は二重結合のいずれかで連結されるが、ただし、二重結合の存在下ではRは存在しない。別の典型的な実施の形態では、R又はRの少なくともいずれかは−B/部分での一置換であり得る。したがって、Rは好ましくは−OH、ハロゲン、又は典型的には−B/部分を表し、Rは−CHOH−CHOH−CH−OH又は典型的な−CHOH−CH−B/部分のいずれかを表すが、ここで−B/部分は−B1/部分又は−B2/部分のいずれかであり得る。
【0036】
典型的な−B1/部分を使用する場合、A型及びB型のインフルエンザウイルス株のノイラミニダーゼ機構に対する特異的阻害が好ましくは誘発され、Mタンパク質イオンチャネル(A型株にのみ存在する)の遮断も許容される。同様の阻害効果を達成するために−B2/部分を一置換誘導体に使用してもよい。別の適切な組み合わせでは、R及びRは同一であるか、又は異なって二置換であり得る。好ましい組み合わせでは、R及びRは共に−B2部分で置換され、得られる化合物はより選択的にHVC複製を阻害すると考えられる。
【0037】
が−B1/部分又は−B2/部分のいずれかで置換され、且つRが−B2/部分又は−B1/部分のいずれかで異なって表される場合、得られる阻害は、A型及びB型のインフルエンザウイルス株の両方、並びに同様にHVCに影響を及ぼし得ると考えられる。
【0038】
さらに好ましい組み合わせでは、Rは−OHであり、且つRは−NHCO−CHであり得る。R又はRが主構造(I)に連結する−B1/部分で同時に置換される別の好ましい実施の形態では、連結官能基Rは−NH−又は−CH(CH)−NH−であり、R及びRは好ましくは−H又は−CHであり得る。R又はRが主構造(I)に連結する−B2/部分で表される場合、連結官能基Rは好ましくは−CO−NH−であり得る。
【0039】
また、本発明の化合物の直鎖又は分岐C1〜4カルボキシルモノ又はポリエステル、付加塩、溶媒和物、分割エナンチオマー及び精製ジアステレオマーも本発明に包含される。
【0040】
本発明の別の実施の形態では、ノイラミニダーゼ及び/又はMイオンチャネルの活性は、ノイラミニダーゼ及び/又はMタンパク質を含有する疑いがあるウイルス試料を、本明細書中に記載されるような本発明の化合物又は組成物で処理することにより阻害又は遮断され得る。
【0041】
別の態様では、本発明は、治療に有効な用量の本発明による化合物を、任意の適切な投与経路で宿主に投与することを含む、哺乳類宿主における、特にA型及びB型のインフルエンザウイルス株又はHVCによるウイルス感染を治療又は予防する方法を対象とする。
【0042】
別の実施の形態では、本発明の化合物を合成するための新規の方法も提供される。
【0043】
本発明による化合物を単独で、又は例えば薬学的に許容される担体中で、本発明の別の化合物又は1つ又は複数の活性薬剤と組み合わせて含有し、例えば哺乳類への投与に適切な状態にした医薬組成物も本発明に包含される。
【0044】
本発明のさらなる態様は、上記ウイルス疾患又は状態を治療又は予防する方法を含むが、該方法は、本発明の化合物若しくは医薬組成物又はその混合物を使用して哺乳類を処置することと、同様にかかるウイルス感染を阻害可能な治療に有効な用量の別の活性薬剤での同時又は代替の処置とを組み合わせることによるものである。
【0045】
本発明の化合物を製造する方法も本発明に包含される。化合物は、当業者によく知られている適用可能な有機合成の技法のいずれかによって調製され得る。
【0046】
本発明の好ましい化合物(Rがシアル酸環のCに直接連結する(X=−O−))の一般的な調製については、Tang et al. Biochem. Biophys. Res. Commun., 132: 474-80 (1985)により最初に記載され、Stoll et al., Biochem. J., 256: 661-4 (1988)及びScharzmann G. et al., Biochem., 22: 5041-9 (1983)により変更されたような還元的アミド化プロセスが好適であり得る。実際に、上記方法に従うことにより、シアル酸環のCと−B/部分のアミノ基との間の共有結合性のアミン結合が確立され得る。
【0047】
同様に、Rがシアル酸環のCと直接連結する化合物(X=−O−)等の本発明の他の好ましい化合物の一般的調製に関しては、以下の刊行物に記載される多くの既知の技法に従うことができる:Compendium of Organic Synthetic Methods (John Wiley & Sons, New York), Vol. 1, Ian T;Harrison and Shuye, Harrison, 1971;Vol.2, Ian T. Harrison and Shuyen Harrison, 1974;Vol. 3, Louis S. Hegedus and Leroy Wade, 1977;Vol. 4, Leroy G. Wade, jr., 1980;Vol. 5, Leroy G. Wade, Jr. 1984;及びVol. 6, Michael B. Smith;並びにMarch, J., 2Advanced Organic Chemistry, Third Edition, (John Wiley & Sons, New York, 1985), Comprehensive Organic Synthesis. Selectivity, Strategy & Efficacy in modern Organic Chemistry。9 Volumes, Barry M. Trost, Editor-in-Chief (Pergamon Press, New York, 1993 printing)。
【0048】
本発明の化合物を調製するための多数の例示的な方法を下記で提供するが、これらは適用可能な方法の範囲を限定すると意図されない。
【0049】
概して、温度、反応時間、溶媒、作業(work up)手順等の反応条件は、実行する特定の反応に関して当該技術分野で一般的なものである。本明細書中で引用される資料と共に引用される参考資料は、かかる条件の詳細な説明を含む。例示的な方法としては、以下の一般的工程が本発明のR置換化合物の一般的合成に適用可能であり得る。
【0050】
しかし、当業者は、他の標準的手順が同じ物質を得るために利用可能であることを認識するであろう。
工程1−以下の構造の中間体1の調製:
【0051】
【化7】

【0052】
メタノール中、Dowex 50(H)を用いて、24時間〜48時間の還流時間でシアル酸を攪拌しながら処理する。樹脂を濾過し、濾液を濃縮乾固すると、所望のジメチル置換体(substituted)(中間体1)が生じる。
工程2−以下の構造の中間体2の調製:
【0053】
【化8】

【0054】
工程1から得られる固体を水酸化ナトリウム水溶液を用いて回収し、一般的には1時間〜3時間室温で攪拌する。次に混合物をDowex 50(H)樹脂を用いて、pH7.0〜7.5に調整する。濾過に続いて濾液を凍結乾燥すると、対応する非メチル化エステル(中間体2)が生じる。
工程3−以下の構造の中間体3及び中間体4の調製:
【0055】
【化9】

【0056】
工程2から得られる中間体を、メタ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液と、異なるモル比で(中間体3(低い比)又は中間体4(高い比)のいずれかが生じるように)、暗所で1時間反応させる。次に酢酸バリウムを沈殿物に添加し、濾過によって過剰のヨウ素酸塩及び過ヨウ素酸塩を除去する。濾液を次に凍結乾燥する。帯黄色の固体が得られる(中間体3又は中間体4)。
工程4−以下の構造の中間体5及び中間体6の調製:
【0057】
【化10】

【0058】
工程3から得られる中間体3又は中間体4を、別々に攪拌しながらギ酸水溶液に溶解し、80℃で1時間加熱する。得られる溶液を個々に凍結乾燥する。それぞれ中間体6及び中間体5が得られる。
工程5−以下の例示的な反応スキームによる最終R一置換化合物の調製:
【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
工程4から得られる中間体5又は中間体6を各々別々に蒸留水を用いて回収し(選択した反応生成物は所望の−B/部分(−B1/部分又は−B2/部分のいずれか)を生じている)、反応混合物を4℃で一晩静置する。次に水素化ホウ素ナトリウムを添加し、反応混合物を室温で1時間静置する。各々の試料をDowex 50(H)カラムで脱イオン化し、溶出液を別々に凍結乾燥すると、異なる本発明の最終化合物が生じる。
【0062】
本発明の他の典型的なR一置換(異なる−B/部分での)化合物は、例えばここに示すものであり、さらに実施例に記載する:
【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
別の好ましい製造の実施の形態には、以下の反応工程の使用によるR一置換化合物の合成が包含される:
工程1−R一置換(−B/部分)化合物の調製
シアル酸をメタノールと水との異なる比(9:1の比が好適である)での混合物に溶解し、−B/部分を生じている反応生成物を軽く攪拌しながら添加する。水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、混合物を軽く攪拌しながら60℃で2時間保持する。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換する。溶出液を凍結乾燥し、少量のメタノールを用いて回収して、濾紙に通す。残渣を取り出し、溶出液を乾燥させる。後半の操作を必要に応じて何度か(一般的には5回より多く)繰り返す。最後に得られる固体を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、所望の本発明のR一置換(−B/部分での)化合物が生じる。
【0068】
他の典型的な反応スキームは、以下のように示され得る:
【0069】
【化17】

【0070】
【化18】

【0071】
別のさらに好ましい製造の実施の形態には、以下の一般的反応スキームを採用することによるR及びR二置換化合物の合成が包含される:
工程1−R及びR二置換(−B/部分)化合物の調製
以上に記載される製造スキーム(A、B、C及びD)を組み合わせることにより、当業者は本発明の二置換化合物を生じさせることができる。
【0072】
本発明の典型的な最終二置換(同一又は異なる−B/部分での)化合物をここに示す:
【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
−B1/部分又は−B2/部分(各々、一般式(I)に示すR、R及びRの他の可能な組み合わせをもたらす)のいずれかを生じている同一の反応生成物を使用することで、類似の本発明の二置換化合物を生じさせることが可能であることが当業者には明らかである。
【0076】
【化21】

【0077】
【化22】

【0078】
同様に、−B1/部分と−B2/部分(各々、一般式(I)に示すR、R及びRの他の可能な組み合わせをもたらす)とを組み合わせた異なる反応生成物を使用することで、類似の本発明の異なる二置換化合物を生じさせることが可能である。
【0079】
また、典型的なレゾルシノール−HCl方法(Svennerholm L. "Quantitative estimation of sialic acid. II. A colorimetric resorcinol-hydrochloric acid method." Biochem. Biophys. Acta, 24 (3),:604-611, 1957; Miettinen J. et al. "Use of butyl acetate in determination of sialic acid.", Acta Chem. Scand., 13, 856-858, 1959)及びTBA(2−チオバルビツール酸)方法(Warren L. "The thiobarbituric acid assay of sialic acids.", J. Biol. Chem., 234, 1971-5, 1959; Aminoff D. "Methods for the quantitative estimation of N-acetylneuraminic acid and their application to hydrolysates of sialomucoids.", Biochem. J., 81 (2), 384-392, 1961)の使用によるシアル酸の検出及び定量は、以下の理由により異なることは当業者には明らかである:レゾルシノール−HCl方法は、遊離して存在する場合、及び例えばシアロ糖化合物のような他の糖と結合している場合のどちらでも、シアル酸及びその誘導体の検出及び定量が可能である。対照的に、TBA方法は、2位の炭素原子(C)と連結するヒドロキシル部分(R=−OH)が置換されていない場合にのみ、シアル酸及びその誘導体の検出及び定量が可能である。
【0080】
本発明の化合物は、任意又は全ての不斉原子での濃縮又は分割光学異性体も包含する。ラセミ混合物及びジアステレオマー混合物の両方、並びにそれらのエナンチオマー又はジアステレオマーパートナーを実質的に含まない単離又は合成された個々の光学異性体は全て、本発明の範囲内である。ラセミ混合物は、よく知られた技法、例えば、光学活性付加物、例えば、酸又は塩基と形成されたジアステレオマー塩を分離し、続いて光学活性物質に再び変換することにより個々の実質的に光学的に純粋な異性体に分離される。大抵の場合、所望の光学異性体は、所望の出発材料の適切な立体異性体から始まる立体特異的反応により合成される。
【0081】
本発明の組成物は、本明細書中の化合物の塩、特に、例えば無機の、又は好ましくは有機の酸又は塩基を含有する薬学的に許容される非毒性塩を任意で含む。化合物の水溶性塩が所望される場合、塩化が好ましい手順である。
【0082】
本発明の別の態様は、ノイラミニダーゼ、例えばウイルスノイラミニダーゼを含有する疑いがある試料を本発明の化合物で処理する工程を含む、ノイラミニダーゼの活性を阻害する方法に関する。本発明の化合物は、ノイラミニダーゼの阻害剤として作用するか、かかる阻害剤の中間体として作用するか、又は下記に記載されるような他の実用性を有すると考えられている。実際に、阻害剤は、ノイラミニダーゼに特有の形状を有するノイラミニダーゼの表面上又はキャビティ中の位置に結合する。しかしながら、ノイラミニダーゼに結合する化合物は、様々な程度の可逆性で結合し得る。実質的に不可逆的に結合する化合物は、本発明の方法で使用するための理想的な候補である。ノイラミニダーゼを含有する有機体には、細菌(コレラ菌(Vibrio cholerae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、及びアルトロバクター・シアロフィラス(Arthrobacter sialophilus)並びにウイルス(特に、A型及びB型のインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、変異コロナウイルス及び/又は改変コロナウイルス、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、家禽ペストウイルス、及びセンダイウイルス等のオルトミクソウイルス又はパラミクソウイルス)が含まれる。これらの有機体のいずれかから得られるか、又はいずれかに見られるノイラミニダーゼ活性の阻害は、本発明の範囲内である。本発明の化合物は、動物、例えばカモ、齧歯類、若しくはブタ、又はヒトにおけるかかる感染の治療又は予防にも有用である。
【0083】
さらなる実施の形態では、本発明の化合物は、酵素活性を評価する従来の技法によってノイラミニダーゼに対する阻害活性についてスクリーニングされる。本発明の文脈中では、化合物は典型的にはin vitroでのノイラミニダーゼの阻害について最初にスクリーニングされる。
【0084】
本発明のさらなる態様は、A型インフルエンザウイルス株等のMタンパク質を含有する疑いがある試料を、本発明の化合物で処理する工程を含む、Mタンパク質イオンチャネルを介したHイオンの流入を遮断する方法、遊離リボ核タンパク質の脱殻及び細胞質への放出を阻害する方法に関する。実際に、本発明の化合物は、ウイルスMタンパク質の機能を遮断することにより作用するとも考えられている。
【0085】
本発明の別のさらなる態様は、疑わしい試料を本発明の化合物で処理することによりHVCのRNAm及びRNAポリメラーゼ合成を遮断することを含む、グアノシン一リン酸及びRNAm−グアニリルトランスフェラーゼの合成を阻害する方法に関する。
【0086】
別の実施の形態では、本発明の異なって二置換された化合物は、ノイラミニダーゼ及びMプロトンイオンチャネルの阻害剤として同時に作用すると考えられている。
【0087】
本発明の化合物は、慣行に従って選択される従来の担体及び賦形剤を用いて製剤してもよい。錠剤は賦形剤、流動促進剤、増量剤、結合剤等を含有する。水性製剤は滅菌形態で調製されるが、経口投与以外の送達を目的とする場合、概して等張である。全ての製剤は、有名な(reknown)刊行物である"Handbook of Pharmaceutical Excipients" 4thEdition, Rowe R. C. et al., Pharmaceutical Press (2003)に記載されるような賦形剤を必要に応じて含有する。賦形剤には、アスコルビン酸及び他の抗酸化剤、EDTA等のキレート剤、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース等の炭水化物、ステアリン酸等が含まれる。
【0088】
1つ又は複数の本発明の化合物(以下、活性成分とも称される)は、治療される状態に適切な任意の経路により投与され得る。適切な経路には、経口、直腸、経鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、膣内、並びに非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)等が含まれる。当然のことながら、好ましい経路は、例えば受容者の状態によって変化し得る。本発明の化合物の利点は、生体に経口的に利用可能であり、経口医薬品形態で投薬することができることである。該化合物を肺内又は鼻腔内の経路によって投与することも可能であるが、その必要はない。
【0089】
本発明の活性成分を単独で投与することも可能であるが、医薬製剤として提供することが好適であり得る。動物用(veterinary)及びヒト用の両方であり得る本発明の製剤は、1つ又は複数の許容される担体及び任意で他の治療成分と共に、少なくとも1つの活性成分又は上記で定義されるような本発明の化合物を含む。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、且つその受容者にとって生理学的に無害であるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0090】
製剤には、前述の投与経路に適切なものが含まれる。製剤は単回投与形態で提供されるのが都合良く、薬学技術分野においてよく知られる方法のいずれかによって調製され得る。
【0091】
技法及び製剤は概して、"Remington's Pharmaceutical Sciences" Mack Publishing Co., Easton, Pa., U.S.A.に見られる。かかる方法は、活性成分を1つ又は複数の副成分を構成する担体と合わせる工程を含む。概して、製剤は活性成分と液体担体若しくは微粉化した固体担体又はその両方と均一且つ密接に合わせた後、必要に応じて、生成物を所望のように成形することにより調製され得る。
【0092】
経口投与に適切な本発明の製剤は、各々が所定の量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤等の固体単位として;散剤若しくは顆粒剤として;水性の液体若しくは非水性の液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として調製され得る。活性成分は巨丸剤、舐剤又は糊状剤として提供してもよい。
【0093】
錠剤は、必要に応じて1つ又は複数の副成分を用いて圧縮又は成形により作製される。圧縮錠剤は、適切な機械において活性成分を、必要に応じて結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、粉末又は顆粒等の易流動性の形態に圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は、適切な機械において、不活性液体希釈剤にぬらした粉末活性成分の混合物を成形することにより作製され得る。錠剤は必要に応じてコーティング又は分割(scored)してもよく、必要に応じて錠剤からの活性成分の徐放又は制御放出を提供するように製剤される。
【0094】
眼又は他の外部組織、例えば口腔及び皮膚の感染に対しては、製剤は好ましくは活性成分(複数可)を、例えば0.075%(w/w)〜20%(w/w)(0.1%〜20%の範囲で、0.6%(w/w)、0.7%(w/w)等のような0.1%(w/w)単位の活性成分(複数可)を含む)、好ましくは0.2%(w/w)〜15%(w/w)、最も好ましくは0.5%(w/w)〜10%(w/w)の量で含有する局所軟膏又はクリームとして適用され得る。軟膏に製剤される場合、活性成分(複数可)は、パラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤と共に用いられ得る。代替的には、活性成分は水中油型クリーム基剤と共にクリームに製剤してもよい。
【0095】
所望であれば、クリーム基剤の水性相は、例えば少なくとも30%(w/w)の多価アルコール、すなわち2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール(プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG 400を含む)及びその混合物等)を含んでいてもよい。また、局所製剤は望ましくは、皮膚又は他の患部を介した活性成分の吸収又は浸透を促進する化合物を含み得る。かかる皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシド及び関連類似体が挙げられる。本発明の乳剤の油性相は、既知の方法で既知の成分から構成され得る。該相は乳化剤(エマルジェント(emulgent)としても知られる)のみを含んでいてもよいが、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪若しくは油、又は脂肪及び油の両方との混合物を含むのが望ましい。好ましくは、安定剤として働く親油性乳化剤と共に親水性乳化剤が含まれる。油及び脂肪の両方が含まれているのも好ましい。乳化剤(複数可)は安定剤(複数可)と共に、又は安定剤を含まずに、いわゆる乳化ろうを構成し、該ろうは油及び脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0096】
本発明の製剤に使用するのに適切なエマルジェント及び乳化安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0097】
製剤に適切な油又は脂肪の選択は、所望のコスメティック特性(cosmetic properties)を達成するという点に基づく。クリームは好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏出を防ぐのに適切な稠度の、べとつかず、着色していない、水で落とせる製品であるべきである。ジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、又はCrodamol CAPとして知られる分岐鎖/エステルの混合物等の直鎖若しくは分岐鎖、一塩基若しくは二塩基のアルキルエステルが使用され得るが、最後の3つが好ましいエステルである。これらは所要の特性に応じて単独で、又は併用して使用してもよい。代替的には、白色軟パラフィン等の高融点脂質が使用される。
【0098】
眼への局所投与に適切な製剤には、活性成分を適切な担体、特に活性成分の水性溶媒に溶解又は懸濁した点眼剤も含まれる。活性成分は好ましくは、かかる製剤中に0.5%(w/w)〜20%(w/w)、有利には0.5%(w/w)〜10%(w/w)、特に約2.0%(w/w)の濃度で存在する。
【0099】
口腔への局所投与に適切な製剤には、風味のある基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア等の不活性基剤中に活性成分を含む香錠;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が含まれる。
【0100】
直腸投与に対する製剤は、例えばココアバター又はサリチル酸塩を含む適切な基剤を用いた坐薬として提供してもよい。
【0101】
肺内投与又は経鼻投与に適切な製剤は、0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲の粒径(0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲で、0.5ミクロン、1ミクロン、30ミクロン、35ミクロン等のようなミクロン単位の粒径を含む)を有するが、該製剤は鼻腔からの急速吸入、又は口腔からの吸入により、肺胞嚢へ到達するように投与される。適切な製剤には、活性成分の水性溶液又は油性溶液が含まれる。エアロゾル又は乾燥粉末の投与に適切な製剤は、従来の方法に従って調製され、下記に記載されるような、A型又はB型のインフルエンザ感染の治療又は予防に従来使用される化合物等の他の治療薬と共に送達され得る。
【0102】
膣内投与に適切な製剤は、活性成分に加えて当該技術分野で適切であると知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム(foams)又はスプレー状の製剤として提供してもよい。
【0103】
非経口投与に適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、制菌剤、及び対象とする受容者の血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の滅菌注射液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。
【0104】
製剤は単回投与又は複数回投与用の容器、例えば密閉したアンプル及びバイアルに入れて提供してもよく、使用の直前に滅菌液体担体(溶媒)、例えば注射用水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)条件において保管してもよい。即時調合される(Extemporaneous)注射液及び懸濁液は、前述した種類の滅菌粉末剤、顆粒剤及び錠剤から調製される。好ましい単回投与製剤は、本明細書中で上記に列挙したような1日用量又は1日副用量(daily sub-dose)単位、又はその適切な分割量の活性成分を含有するものである。
【0105】
上記で特に言及した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の種類に関して当該技術分野で慣用される他の薬剤を含んでいてもよいことを理解されたい。例えば、経口投与に適切な製剤は香味剤を含んでいてもよい。
【0106】
本発明は動物用組成物をさらに提供するが、該組成物は、上記で定義されるような少なくとも1つの活性成分を、したがって動物用担体と共に含む。
【0107】
動物用担体は、組成物を投与する目的に有用な物質であり、固体、液体、又はそうでなければ獣医学技術分野において不活性又は許容され、活性成分と適合する気体状の物質であってもよい。これらの動物用組成物は経口的、非経口的に、又は任意の他の所望の経路により投与され得る。
【0108】
本発明の化合物は、活性成分として1つ又は複数の本発明の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するために使用してもよい。該製剤では、投与頻度を下げることを可能にするか、又は所与の活性成分の薬物動態プロファイル若しくは毒性プロファイルを改善するために、活性成分の放出が制御及び調節される。
【0109】
活性成分の有効量は、治療される状態の性質、毒性、化合物を予防的に(より低用量で)、又は活動性インフルエンザ感染に対して使用するか否か、送達の方法、及び医薬製剤に少なくとも依存し、臨床医により従来の用量増加研究を用いて求められる。
【0110】
有効量は、1日当たり約0.0001mg/kg(体重)〜約100mg/kg(体重)であると期待することができる。典型的には、1日当たり約0.01mg/kg(体重)〜約10mg/kg(体重)である。より典型的には、1日当たり約0.01mg/kg(体重)〜約5mg/kg(体重)である。より典型的には、1日当たり約0.05mg/kg(体重)〜約0.5mg/kg(体重)である。例えば、体重がおよそ70kgの成人のヒトの吸入に関する候補1日用量は、1mg〜1000mg、好ましくは5mg〜500mg超であり、単回投与又は複数回投与の形態をとり得る。被験者の病状により必要とされる場合には、治療に有効な1日用量をより高用量で投与してもよい。
【0111】
本発明の活性成分(又は化合物)はまた、他の活性成分と併用して使用される。かかる組み合わせは治療される状態、成分の交差反応性、及びその組み合わせの薬物特性(pharmacoproperties)に基づいて選択される。例えば、呼吸器系のウイルス感染、特にインフルエンザ感染を治療する場合、本発明の組成物は、抗ウイルス剤(アマンタジン(amantidine)、リマンタジン及びリバビリン等)、粘液溶解薬、去痰薬、気管支拡張薬、抗生物質、解熱薬、又は鎮痛剤と組み合わせられる。通常は、抗生物質、解熱薬、及び鎮痛剤が本発明の化合物と共に投与される。
【0112】
本発明は、当業者が以下の実施例の対象物を作製及び使用するのを可能にするのに十分なほど詳細に記載されている。以下の実施例の方法及び組成物の或る特定の変更を、本発明の範囲及び精神の中で為すことができるのは明らかである。本発明は、以下の例示的な実施形態、及び添付の図1〜図4に関してさらに記載される。
【実施例】
【0113】
実施例1
中間体1の調製
40mlの無水メタノールに溶解した225mgのシアル酸(0.73mmol)を、0.5gのDowex 50(H)樹脂に混合した。混合物を絶えず攪拌しながら48時間還流した。レゾルシノール−HCl及びチオバルビツール酸(TBA)を用いた分析測定によって、24時間及び48時間に、それぞれ85%及び97%のシアル酸が中間体1に変換されたことが示された。次に樹脂を現行の濾紙で濾過し、溶出液をロータリエバポレータにより濃縮乾固すると、帯黄色の油性液体が生じた。油性液体を次に、少量(reduced volume of)のエチルエーテル:メタノール(3:1(w/w))混合物を用いて回収した。溶液を4℃で24時間〜48時間静置し、結晶性沈殿物を濾過により回収して、P上で乾燥させた。145mgの固体中間体1(分子量:337.4)を得た(収率:60.0%)。
【0114】
得られた中間体1は、レゾルシノール−HCl反応に対して陽性であり(シアル酸と同じ強度)、TBA反応に対して陰性であるという結果となった。
実施例2
中間体2の調製
145mgの中間体1(0.43mmol)を10.7mlの0.06M水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、室温で2時間〜3時間絶えず攪拌した。次に混合物を、Dowex 50(H)樹脂を用いてpH7.0〜7.5に調整した。樹脂を濾過し、溶出液を凍結乾燥すると、帯白色の固体が生じた。132.6mgの固体中間体2(分子量:323.3)を得た(収率:95.0%)。
【0115】
得られた中間体2は、レゾルシノール−HCl反応に対して陽性であり(シアル酸と同じ強度)、TBA反応に対して陰性であるという結果となった。
実施例3
中間体3の調製
132.6mg(0.41mmol)の凍結乾燥固体(中間体2)を、4.3mlの蒸留水に溶解した。次に10.7mlの分割量の0.038Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)水溶液(0.41mmol)を添加し(モル比=1:1)、溶液を暗所において室温で1時間絶えず攪拌しながら保持した。12.8mlの0.1M酢酸バリウム水溶液を混合物に添加し、過剰のヨウ素酸塩及び過ヨウ素酸塩を沈殿させた。混合物を現行の濾紙を使用して濾過した。溶出液を二酸化炭素を通気することにより飽和させ、過剰の酢酸バリウムを沈殿させた後、濾紙で濾過した。溶出液を凍結乾燥すると、淡黄色の固体が生じた。101.9mgの固体中間体3(分子量:291.3)を回収した(収率:85.0%)。
【0116】
得られた中間体3は、レゾルシノール−HCl反応に対して陽性であり(シアル酸と同じ強度)、TBA反応に対して陰性であるという結果となった。
実施例4
中間体4の調製
132.6mg(0.41mmol)の凍結乾燥固体(中間体2)を4.3mlの蒸留水に溶解した。10.7mlの0.2Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)水溶液(2.14mmol)(モル比=1:5.24)を溶液に添加し、絶えず攪拌しながら暗所において室温で1時間保持した。
【0117】
12.8mlの0.1M酢酸バリウム水溶液を混合物に添加し、過剰のヨウ素酸塩及び過ヨウ素酸塩を沈殿させた。混合物を現行の濾紙を使用して濾過した。溶出液を二酸化炭素を通気することにより飽和させ、過剰の酢酸バリウムを沈殿させた後、濾紙で濾過した。溶出液を凍結乾燥すると、淡黄色の固体が生じた。91.4mgの固体中間体4(分子量:261.23)を回収した(収率:85.0%)。
【0118】
得られた中間体4は、レゾルシノール−HCl反応に対して陽性であり(シアル酸と同じ強度)、TBA反応に対して陰性であるという結果となった。
実施例5
中間体5の調製
91.43mg(0.35mmol)の凍結乾燥粉末中間体4を、2.0mlの2.3mMギ酸水溶液(pH:約4.0)に溶解した。溶液を80℃に1時間加熱した。次に溶液を凍結乾燥した。
【0119】
72.76mgの中間体5(分子量:247.20)を得た(収率:84.1%)。
【0120】
得られた中間体5はレゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例6
中間体6の調製
101.96mg(0.35mmol)の凍結乾燥固体中間体3を、2.0mlの2.3mMギ酸水溶液(pH:約4.0)に溶解した。溶液を80℃に1時間加熱した。次に溶液を凍結乾燥した。
【0121】
93.83mgの中間体6(分子量:277.23)を得た(収率:96.7%)。
【0122】
得られた中間体6はレゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例7
化合物1の調製
84.0mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体5)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、51.442mgのアマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)樹脂カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥固体を次に少量のメタノールを用いて回収し、溶出液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。最後に乾燥固体を少量の水を用いて回収した後、凍結乾燥すると、最終化合物1が生じた。
【0123】
110.53mgの化合物1(分子量:382.45)を得た(収率:85.0%)。
【0124】
回収した化合物1は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。図1に表した、出発中間体アマンタジンのFT−IR(フーリエ変換赤外分光)スペクトル(B)と比較した、化合物1のFT−IRスペクトル(A)は、以下の基準(references)を示す:a)アミドIバンド:1640cm−1;b)アミドIIバンド:1550cm−1;c)第1級アミノ基:600cm−1〜800cm−1、1590cm−1〜650cm−1、3330cm−1〜3380cm−1;第2級アミノ基:700cm−1〜800cm−1;1615cm−1;3300cm−1
実施例8
化合物2の調製
94.26mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体6)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、82.7mgのリバビリン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)樹脂カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物(lyophilized)を次に少量のメタノールを用いて回収し、溶出液を再び乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。最後に乾燥固体を少量の水を用いて回収した後、凍結乾燥すると、固体(化合物2)が生じた。94.02mgの固体化合物2(分子量:505.4)を回収した(収率:89.0%)。
【0125】
回収した化合物2は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例9
化合物3の調製
94.26mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体6)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、51.442mgのアマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物を、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換するためにDowex 50(H)カラムに通した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥固体を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥固体を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物3がもたらされた。122.02mgの固体化合物3(分子量:412.5)を回収した(収率:87.0%)。
【0126】
回収した化合物3は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例10
化合物4の調製
84.0mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体5)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、60.962mgのリマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥固体を次に少量のメタノールを用いて回収し、溶出液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返す。次に乾燥粉末を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物4が生じる。
【0127】
125.61mgの化合物4(分子量:410.5)を回収した(収率:90.0%)。
【0128】
回収した化合物4は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。図2に表した、出発中間体リマンタジンのFT−IRスペクトル(B)と比較した、化合物4のFT−IRスペクトル(A)は、以下の基準を示す:a)アミドIバンド:1640cm−1;b)アミドIIバンド:1550cm−1;c)第1級アミノ基:600cm−1〜800cm−1、1590cm−1〜650cm−1、3330cm−1〜3380cm−1;第2級アミノ基:700cm−1〜800cm−1;1615cm−1;3300cm−1
実施例11
化合物5の調製
94.26mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体6)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、60.962mgのリマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物を、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換するためにDowex 50(H)カラムに通した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、溶出液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥固体を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物5が生じた。137.79mgの最終化合物5(分子量:440.5)を回収した(収率:92.0%)。
【0129】
回収した化合物5は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例12
化合物6の調製
84.0mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体5)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、70.5mgのソマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。濾液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥粉末を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物6が生じた。125.26mgの化合物6(分子量:438.6)を回収した(収率:84.0%)。
【0130】
回収した化合物6は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例13
化合物7の調製
94.26mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体6)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、61.0mgのソマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。次に溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥粉末を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物7が生じた。135.43mgの固体化合物7(分子量:468.6)を回収した(収率:85.0%)。
【0131】
回収した化合物は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例14
化合物8の調製
84.0mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体5)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、61.0mgのメマンチン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥粉末を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物8が生じた。129.80mgの固体化合物8(分子量:410.5)を回収した(収率:93.0%)。
【0132】
回収した化合物は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。図3に表した、出発中間体メマンチンのFT−IRスペクトル(B)と比較した、化合物8のFT−IRスペクトル(A)は、以下の基準を示す:a)アミドIバンド:1640cm−1;b)アミドIIバンド:1550cm−1;c)第1級アミノ基:600cm−1〜800cm−1、1590cm−1〜650cm−1、3330cm−1〜3380cm−1;第2級アミノ基:700cm−1〜800cm−1;1615cm−1;3300cm−1
実施例15
化合物9の調製
94.26mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体6)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、61.0mgのメマンチン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。次に溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥粉末を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物9が生じた。
【0133】
134.79mgの化合物9(分子量:440.5)を得た(収率:90.0%)。
【0134】
回収した化合物9は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。
実施例16
化合物10の調製
84.0mg(0.34mmol)の凍結乾燥固体(中間体5)を5.0mlの蒸留水に溶解した。その後、82.7mgのリバビリン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。混合物をゆっくりと攪拌しながら4℃で一晩保持した。40.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら室温で1時間保持した。次に混合物をDowex 50(H)カラムに通して、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも3回繰り返した。次に乾燥粉末を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると、最終化合物10が生じた。140.62mgの化合物10(分子量:475.4)を回収した(収率:87.0%)。回収した化合物は、レゾルシノール−HCl反応及びTBA反応の両方に対して陽性であった。図4に表した、出発中間体リバビリンのFT−IRスペクトル(B)と比較した、化合物10のFT−IRスペクトル(A)は、以下の基準を示す:a)アミドIバンド:1640cm−1;b)アミドIIバンド:1550cm−1;c)第1級アミノ基:600cm−1〜800cm−1、1590cm−1〜650cm−1、3330cm−1〜3380cm−1;第2級アミノ基:700cm−1〜800cm−1;1615cm−1;3300cm−1
実施例17
化合物11の調製
102.5mg(0.34mmol)の凍結乾燥中間体シアル酸を、50.0mlのメタノール:蒸留水(9:1、v/v)混合物に溶解した。その後、51.442mgのアマンタジン(0.34mmol)をゆっくりと攪拌しながら添加した。100.0mgの水素化ホウ素ナトリウムを添加した後、反応混合物を攪拌しながら60℃で1時間保持した。次に混合物を、過剰の水素化ホウ素ナトリウムをホウ酸に変換するためにDowex 50(H)カラムに通した。溶出液を凍結乾燥した。凍結乾燥物を次に少量のメタノールに溶解し、濾液を乾燥させた。この操作を少なくとも5回繰り返した。次に乾燥固体を少量の水に溶解した後、凍結乾燥すると最終化合物11が生じた。合計133.90mgの固体化合物11(分子量:442.5)を回収した(収率:89.0%)。回収した化合物はレゾルシノール−HCl反応に対して陽性であり、TBA反応に対して陰性であった。
実施例18
A型及びB型のインフルエンザウイルス株に対する本発明の化合物の抗ウイルス活性評価。
目的及び研究計画
特に、A型及びB型のインフルエンザウイルスに対する化合物1及び化合物8のin vitro抗ウイルス活性を、抗ウイルス活性を評価するための2つの化合物であるアマンタジン(adamantine)及びメマンチンと比較して、評価した。この研究に対して、2つのA型インフルエンザウイルス分離株及び単離B型ウイルス分離株を使用した。
材料及び方法
1−インフルエンザウイルスの増殖及び滴定
インフルエンザウイルスA/H3N2株(A/パナマ/2007/99)、A/H1N1株(A/ニューカレドニア/20/99)、及びB型株(B/山東/7/97)を有胚(embryonic)鶏卵に伝播させた。要するに、インフルエンザウイルス株を受精11日目の鶏卵に尿膜経路により接種した。その後(Therefore)、卵を37℃で3日間インキュベートして、尿膜腔液を回収し、続いて滴定した(titred)。
【0135】
この検定の測定はプラーク形成試験(Plaque Assay、PA)により実行した。特に、段階希釈(10−1〜10−11)した各々のウイルス分離株を、12ウェルプレート中のMDCK(Madin−Darbyイヌ腎臓)細胞のコンフルエント単層に接種した。37℃で1時間インキュベートした後、接種ウイルス(viral inoculate)を除去し、感染培地(10μg/mlのトリプシン、2%寒天を含有するMEM(最小必須培地))を添加した。37℃、5%COで3日間インキュベートした後、細胞の単層を5%グルタルアルデヒド溶液で固定し、寒天を除去した後、5%石炭酸フクシン溶液で染色した。
【0136】
プラークを目視で計数し、単離検定を1ml当たりのプラーク形成単位(PFU)(PFU/ml)の数値で表した。
2−アマンタジン及びメマンチンに対する化合物1及び化合物8の抗ウイルス活性の評価
2.1.分析用の化合物の調製
72時間乾燥させた後の化合物1及び化合物8、並びに比較化合物のアマンタジン及びメマンチンを、滅菌蒸留水中で1000μMの濃度で適切に再構成させた。その後、各々の試験用化合物について、0.01μM〜100μMの範囲で10倍毎の段階希釈を実行した。
2.2.プラーク減少検定(PRA)
12ウェル(1×10細胞/ml)プレートにおいて増殖させたMDCK細胞のコンフルエント単層を、各々の単離ウイルス(A/パナマ/2007/99−H3N2、A/ニューカレドニア/20/99−H1N1及びB/山東/7/97)約50PFU/mlに感染させた。ウイルスを吸着させるために、37℃、5%COで1時間インキュベートした後、接種ウイルスを除去し、細胞の単層をMEM培養培地で2回洗った。重層培地(MEM中10μg/mlのトリプシン、2%寒天)を、段階希釈した(0.01μM〜100μM)分析用化合物を含有する各々のウェルに添加した。試験を2重に実行し、同時に抗ウイルス化合物を含有しない反応対照を添加した。その後、細胞培養物を37℃、5%COで3日間インキュベートした。続いて、細胞の単層を5%グルタルアルデヒド溶液を使用して固定し、寒天への浸透を促進するために、室温で少なくとも3時間インキュベートした。寒天を除去した後、細胞の単層を5%石炭酸フクシン溶液で染色した。プラークを目視で計数し、試験用化合物を含有しない対照に対するプラーク阻害の程度を算出した。このようにして、化合物を含有しない対照に対してプラーク数を50%に低減するのに必要な化合物の濃度を求めた。
結果
化合物1及び化合物8、並びに対照化合物のアマンタジン及びメマンチンの抗ウイルス活性を、MDCK細胞を使用してプラーク減少検定(PRA)により評価した。結果を表1に示す。
【0137】
化合物1は、A型ウイルスH3N2に対してアマンタジンと同様の活性を示したが、A型ウイルスH1N1に対する活性は10倍低かった。B型インフルエンザウイルスに対する化合物1の抗ウイルス活性は、アマンタジン(>100μM)の活性よりも高い(>10倍)という結果となった。(表1)
化合物8は、分析されたA型インフルエンザウイルス(A/H3N2及びA/H1N1)に対して、メマンチンのほぼ10倍を上回る抗ウイルス活性を示した。試験した濃度範囲における化合物8のどの抗ウイルス活性も、B型インフルエンザウイルスに対するものであると証明されている(表1)。
【0138】
【表1】

【0139】
結論:
したがって、このデータは、アマンタジンと比較したB型インフルエンザウイルスに対する化合物1の向上した抗ウイルス活性の証拠を提供する。アマンタジンは、A型インフルエンザウイルスのみに存在し、B型インフルエンザウイルスには存在しないMタンパク質イオンチャネルを遮断することにより作用するため、これは将来の研究の目的となる新規の作用機序となり得ることに留意されたい。
【0140】
化合物8は、A型インフルエンザウイルスに対してメマンチンよりも10倍高い抗ウイルス活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化1】

(式中、Xは−CH−、−O−、−CHF−、−CF−を表し、
環のCとCとは単結合又は二重結合で連結され、
は−OH、ハロゲン又は−B/部分を表すが、但し前記環のCとCとを連結する二重結合が存在する場合、Rは存在せず、
は−OH、−O−CH(C、−NH、−NHC(NH)NH又は−NH−OHであり、
は−NH、−NHCO−CH又は−NH−CO−CH−OHであり、
は−CHOH−CHOH−CH−OH、−CHOH−CH−B/部分、−CH−B/部分又は−B/部分を表す)
の化合物であって、
前記−B/部分が:
【化2】

(式中、Rは連結官能基−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−又は
【化3】

を表し、
−Rは−H、−CH又は−Cであり、
−Rは−H、−CH又は−Cであり、
−Rは連結官能基−NH−、−CO−NH−又は−C(NH)−NH−を表す)
のいずれかを表す、化合物、並びにそれらの直鎖又は分岐C1〜4カルボキシルモノ又はポリエステル、付加塩、溶媒和物、その分割エナンチオマー及び精製ジアステレオマー。
【請求項2】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

から成る群から選択される、−B/部分でのC又はC一置換化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化8】

から成る群から選択される、−B/部分でのC一置換化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
−B1/部分でのC及びC二置換化合物
【化9】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
−B2/部分でのC及びC二置換化合物
【化10】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
【化11】

【化12】

から選択される、異なる−B1/部分又は−B2/部分でのC及びC二置換化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体中に請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、又はその混合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
ヘマグルチニン(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)及び/又はMタンパク質含有ウイルスによって引き起こされるウイルス感染を治療する方法であって、治療に有効な量の請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を、かかる治療を必要とする宿主に任意の適切な投与経路で投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記感染が、A型及びB型のインフルエンザウイルス又はその突然変異体によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ARNm及びARNポリメラーゼによって媒介される疾患又は状態を治療する方法であって、治療に有効な量のARNm−グアニリルトランスフェラーゼを阻害する請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を、かかる治療を必要とする宿主に任意の適切な投与経路で投与することを含む、方法。
【請求項11】
ARNm、ARNポリメラーゼ及び酵素ARNm−グアニリルトランスフェラーゼの媒介による前記感染が、C型肝炎ウイルス(HVC)感染である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物を、治療に有効な量のA型及びB型のインフルエンザウイルス又はその突然変異体に対して活性を有する別の化合物と併用して投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
A型及びB型のインフルエンザウイルス又はその突然変異体に対して活性を有する前記化合物が、ザナミビル及び/又はオセルタミビルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物を、治療に有効な量のC型肝炎ウイルス(HVC)又はその突然変異体に対して活性を有する別の化合物と併用して投与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
HVCに対して活性を有する前記化合物が、単独の、又はリバビリンと併用した、インターフェロンα若しくはPEG化インターフェロンαである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療において使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
前記治療が、哺乳類におけるHA又はNA又はMタンパク質の媒介によるウイルス感染の治療である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記治療が、哺乳類におけるARNm、ARNポリメラーゼ及び酵素ARNm−グアニリルトランスフェラーゼの媒介によるHVCの治療である、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
前記ウイルス感染が、A型インフルエンザウイルス若しくはB型インフルエンザウイルスのいずれか、又はそれらのサブタイプ並びに別の株及び突然変異体によって引き起こされる、請求項17又は18に記載の化合物。
【請求項20】
哺乳類におけるHA又はNA又はMタンパク質の媒介によるウイルス感染の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
哺乳類におけるARNm、ARNポリメラーゼ及び酵素ARNm−グアニリルトランスフェラーゼの媒介によるウイルス感染の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
前記ウイルス感染が、A型インフルエンザウイルス若しくはB型インフルエンザウイルス、又はそれらのサブタイプ並びに別の株及び突然変異体によって引き起こされる、請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
前記ウイルス感染が、A型インフルエンザウイルス若しくはB型インフルエンザウイルス若しくはC型肝炎ウイルスのいずれか、又はそれらのサブタイプ並びに別の株及び突然変異体によって引き起こされる、請求項22に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−516658(P2010−516658A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545951(P2009−545951)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050703
【国際公開番号】WO2008/090151
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(592255486)テラピコン エス.アール.エル. (4)
【氏名又は名称原語表記】THERAPICON S.R.L.
【Fターム(参考)】