抗ウイルス細胞透過性ペプチド
ヒト免疫不全ウイルスの処置として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。1つの実施態様において、細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法が提供され、その方法は、細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、細胞を開示されたペプチドに接触させることを含む。別の実施態様において、その細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類にある。別の実施態様において、その方法は、哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2008年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/050,955号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
ヒト免疫不全ウイルスの治療薬として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。
【背景技術】
【0003】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こす病原菌である。AIDS Epidemic Update(UNAIDS、2007年12月)によると、約3600万人の人が、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV)と共に生きている。最も激しく冒された地域は、サハラ以南のアフリカおよび東南アジアであるが、北アメリカ、西および中央ヨーロッパにおいて200万人以上の人々がこの疾患と共に生きている。アフリカ系アメリカ人におけるHIV感染の有意な増加が報告され、そして米国において2002年、アフリカ系アメリカ人女性の間でHIV/AIDSが死亡原因の1位であった。従って、AIDSの流行は、世界中で依然として主な健康問題である。臨床的に有用な抗HIV薬は、HIV−1の生活環における2つの重要な酵素、逆転写酵素(RT)およびプロテアーゼ(PR)を主に標的とする;しかし、別の必須の酵素、インテグラーゼを標的とした新しい薬剤が、米国食品医薬品局によって最近認可された。高度に活性な抗レトロウイルス治療(HAART)の導入は、罹患率およびHIV−1に感染した個人における死亡率の減少に有意に寄与した。しかし、多くの場合、それらの薬剤に対する抵抗性の発達が、患者が利用可能な処置オプションに対して深刻な脅威を与える。
【0004】
10年以上の集中した努力の後、HIV−1の侵入を標的としたペプチドに基づく薬剤、T−20(エンフビルチド)が開発され、そして2003年初期にFDAによって認可された。その薬剤は、高価であるが、他の利用可能な薬剤に対して非応答者である患者の処置に可能性を示した。この成功は、HIV−1生活環の重要な工程を同定し、そしてそれらをHIV−1感染の可能性のある介入のための新しい標的として使用することが重要であるという事実に対する証拠である。最近のHIVワクチン試験および殺菌剤試験の失敗の報告は、新しい種類の抗HIV−1治療薬を開発するために、より新しい標的を同定および利用する決定的な必要を確認した。
【0005】
HIV−1ゲノムは、3つの主な遺伝子、gag、pol、およびenvで構成されている。gag遺伝子は、Gagポリタンパク質、HIV−1の重要な構造タンパク質をコードし、一方polは逆転写酵素(RT)、プロテアーゼ(PR)、およびインテグラーゼ(IN)のような、HIVの生活環に必須のウイルス酵素をコードし、そしてenvはウイルスエンベロープタンパク質(Env)をコードする。HIV−1の生活環において重要な工程であるアセンブリーは一般的に、アセンブリーが起こる細胞膜に輸送される、Gagポリタンパク質の制御された重合によって起こると考えられる。次いでウイルス粒子が形成され、そして球状の未成熟な非感染性粒子として出芽する。出芽の直後、粒子は成熟として知られる過程を経る。この工程の間に、Gagタンパク質が、ウイルスプロテアーゼによって、マトリックス(MX)、カプシド(CA)、ヌクレオカプシド(NC)、およびp6ドメイン、および2つのスペーサータンパク質、SP1およびSP2に連続的に切断される。この過程は、粒子の形態に劇的な変化を引き起こし、そして円錐体のカプシドによって囲まれた高電子密度のコアが形成される。成熟カプシドの形成が、ウイルスの感染性において重要な役割を果たす。Gagは、あらゆる他のタンパク質またはウイルスRNAの非存在下で、ウイルス様粒子(VLP)を形成するために必須および十分であることが示された。これは、遺伝的アプローチによる、HIV−1アセンブリーの原因であるgagの領域の決定において、多くの続く研究を導いた。Gagにおけるアミノ酸の欠失、挿入、および置換によって得られたデータは、ウイルスアセンブリーに最も重要なGagの3つの領域を同定した。それらは、膜結合ドメインまたはMドメイン、相互作用ドメインまたはIドメイン、および後期ドメインまたはLドメインと名付けられた。
【0006】
感染ウイルス粒子の融合後の、侵入直後のイベントは、明らかには理解されていない。しかし、さらなる処理のためにウイルスの遺伝的物質を放出する、成熟ウイルスコアのアンコーティングおよび分解が、HIV−1生活環に重要であることが明らかである。Gag変異に関わる多くの研究が、GagはHIV−1生活環のこれらの初期のイベントにおいて重要な役割を果たし得ることを示した。
【0007】
HIV−1アセンブリーおよび形態形成の間に、Gagは2つの完全に異なる配置、未成熟型および成熟型に組織化する。未成熟型の場合、Gagはインタクトなままであるが、成熟型は、ウイルスプロテアーゼによって切断されたタンパク質から成る。この成熟粒子の形成が、HIV−1の感染性のために必須であり、そしてGag切断産物から得られるカプシドタンパク質が、ウイルスゲノムを囲むウイルスの円錐体のコアの形成において中心的な役割を果たす。そのカプシドタンパク質(CA、p24)は、2つのドメイン、N末端ドメイン(NTD、アミノ酸1−145)、およびC末端ドメイン(CTD、アミノ酸146−231)から成る、疎水性タンパク質である。これらの2つのドメインは、5アミノ酸のリンカーで連結しており、そしてお互い独立に折り畳まれている。未成熟粒子におけるCA−CA接触およびその相互作用の正確な性質は完全に公知ではないが、成熟粒子において、構造研究および純粋な成熟ウイルス粒子およびアセンブルされたウイルス様粒子のクリオ電子顕微鏡による画像再構成に基づいてCA格子が作られた。HIV−1カプシドは、ウイルスアセンブリー、成熟および初期の侵入後工程において重要な役割を果たす。NTDおよびCTDの両方におけるカプシドの変異は、ウイルスアセンブリーおよび放出の欠損を引き起こすことが示された。それに加えて、カプシドは、非分裂細胞において、レトロウイルス感染性の主な決定因子であることが示された。
【0008】
HIV−1カプシドのNTDは、シクロフィリン(cyclophylin)Aに結合し、そしてウイルスコアの形成に重要である;しかし、ウイルスアセンブリーおよび成熟に必須の、Gagオリゴマー形成の重要な決定因子は、カプシドのC末端ドメインに位置する。それに加えて、CTDは、主要相同性領域(MHR)として公知の、Gagの最も保存された部分を含む。この保存された領域の変異は、ウイルスアセンブリーおよび成熟に重度の欠損を引き起こす。HIV−1カプシドの単離されたCTDは、全長カプシドと同じ親和性で、溶液中で二量体を形成する。CTDの二量体化は、Gagアセンブリー、ウイルスの出芽、および成熟の主要な推進力であることが示された。CTD二量体のいくつかの構造が報告され、それは二量体界面の重要な情報を提供した。CTD単量体の界面残基の変異は、二量体の形成を破壊し、カプシドアセンブリーおよび成熟を損ない、そしてウイルスを非感染性にする。
【0009】
要約すると、カプシドがHIV−1アセンブリーおよび成熟において重要な役割を果たしており、そしてAIDS治療のための新しい世代の薬剤を開発するための可能性のある標的として認識されたことは明らかである。
【0010】
タンパク質−タンパク質相互作用が、抗原−抗体相互作用、ウイルスアセンブリー、プログラム細胞死、細胞分化およびシグナル伝達のような、ある範囲の生物学的過程において重要な役割を果たす。従って、これらの相互作用を制御することは、新規治療薬を開発する機会を提供する。しかし、ほとんどのタンパク質−タンパク質相互作用に関わる浅い結合界面および比較的大きな界面領域のために、伝統的な薬剤発見技術によってこれらの過程を阻害することは、複雑および困難であり得る。最近まで、タンパク質−タンパク質相互作用を阻害することは事実上不可能であると考えられた。しかし、この領域における最近の進歩のために、この概念は今変わりつつある。それに加えて、結晶化抗原−抗体複合体についての最近の研究が、各タンパク質パートナーからの限られた数の残基のみが、タンパク質−タンパク質相互作用の媒介に関与していることを示した。結合界面のこれらの制限された領域は、「ホットスポット」、タンパク質界面の結合自由エネルギーのほとんどを占める出っ張りおよびへこみの小さい領域として知られる。従って、阻害分子は、タンパク質−タンパク質相互作用を阻害するために、結合界面全体を覆う必要はないこと、およびこれらの「ホットスポット」を標的とすることが、タンパク質間の接触を強力に阻害し得ることが立証された。
【0011】
二量体タンパク質は、表面認識によるタンパク質−タンパク質相互作用の古典的な例を提供する。タンパク質界面の構造を活用する、タンパク質二量体化の競合的阻害剤のいくつかの例が存在する。例えば、界面ペプチドは、HIV−1インテグラーゼ、プロテアーゼ、および逆転写酵素の二量体化を阻害することが示された。しかし、その細胞透過性の欠如のために、これらのペプチドは臨床的に有用ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
ウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)に対する治療薬として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。
【0013】
1つの実施態様において、長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドが本明細書中で開示され、ここでそのアミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸である;ここでその非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここでその非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成する;ここでそのペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含む;ここで2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換する;そしてここで2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0〜6個のR2で置換される、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【0014】
【化1】
である;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体である;
R3はHまたはC1−C10アルキルである;
R4はH、アルキル、または治療薬である;および
nは1−4の整数である。
【0015】
別の実施態様において、その非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンである。別の実施態様において、非天然アミノ酸は、ペプチドの6番目および10番目のアミノ酸を置換する。
【0016】
さらに別の実施態様において、2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、
【0017】
【化2】
を含み、ここで(C)は非天然アミノ酸のα炭素である。
【0018】
別の実施態様において、そのペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17から成るグループから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
1つの実施態様において、哺乳類におけるウイルス感染の処置のための組成物が提供され、その組成物は、ヒト免疫不全ウイルスカプシドタンパク質の少なくとも一部のアミノ酸配列を有する抗ウイルスペプチドを含み、そのペプチドは最初のアミノ酸および2番目のアミノ酸に置換を有し、ここでそのペプチドはその置換において架橋される。別の実施態様において、最初のアミノ酸は、ペプチドの位置(i)に存在し、そして2番目のアミノ酸は、ペプチドの位置(i+4)または(i+7)に存在する。別の実施態様において、その置換は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンのような、非天然アミノ酸を含む。
【0020】
別の実施態様において、その組成物は、薬剤学的に許容可能な担体中にそのペプチドを含む。
【0021】
1つの実施態様において、細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法が提供され、その方法は、細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、細胞を開示されたペプチドに接触させることを含む。別の実施態様において、その細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類にある。別の実施態様において、その方法は、哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することを含む。
【0022】
1つの実施態様において、開示されたペプチドを、ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、哺乳類に投与することを含む、ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置する方法が提供される。
【0023】
別の実施態様において、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類の処置のための薬物の製造において、少なくとも1つの開示されたペプチドを使用することが、本明細書中で開示される。
【0024】
さらに別の実施態様において、哺乳類がヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクを減少させる、哺乳類の処置のための薬物の製造において、少なくとも1つの開示されたペプチドを使用することが、本明細書中で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1−1】図1は、選択されたペプチドのアミノ酸配列を示す。Z=(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニン;X=(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニン。
【図1−2】図1は、選択されたペプチドのアミノ酸配列を示す。Z=(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニン;X=(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニン。
【図2】図2は、NYAD−201およびNYAD−209の円偏光二色性(CD)スペクトルを示す。
【図3】図3は、NYAD216(図3A−3C)およびNYAD−201(図3D−3F)の細胞透過性を示す。図3Aおよび3Dは、生きた細胞の画像を表す(DIC);図3Bおよび3Dは、図3Aおよび3Cと同じ視野の蛍光画像を表す;そして図3Cおよび3Fは、それぞれ図3Aおよび3B、および3Cおよび3Dの合わせた画像を表す。
【図4】図4は、ペプチドなし(図4A)、0.25モル当量のNYAD−201ペプチド(図4B)、0.50モル当量のNYAD−201ペプチド(図4C)、1.0モル当量のNYAD−201ペプチド(図4D)、3.0モル当量のNYAD−201ペプチド(図4E)、および5.0モル当量のNYAD−201ペプチド(図4F)の存在下における、カプシド(CA)タンパク質(50μM)の電子顕微鏡(EM)画像によって証明される、NYAD−201による成熟様粒子のインビトロアセンブリーの阻害を示す。
【図5】図5は、50μMのNYAD−201の非存在下(図5A)または存在下(図5B)において産生されるHIV−1ウイルス様粒子の電子顕微鏡分析を示す。
【図6】図6は、30分の曝露後の、Jurkat細胞におけるペプチドNYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203の細胞毒性を示す。
【図7】図7は、2時間の曝露後の、Jurkat細胞におけるペプチドNYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203の細胞毒性を示す。
【図8】図8は、4時間の曝露後の、Jurkat細胞におけるペプチドNYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203の細胞毒性を示す。
【図9】図9は、NYAD−201およびNYAD−202による処理後、MT−2細胞から放出されたHIV−1ウイルスの感染性を示す。
【図10】図10は、NYAD−201およびNYAD−202によって処理したMT−2細胞の上清における、HIV−1ウイルス粒子結合タンパク質のウェスタンブロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)に対する治療薬として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。
【0027】
HIV−1アセンブリーおよび形態形成の間に、構造タンパク質であるGagは2つの完全に異なる配置である、未成熟型および成熟型に組織化する。未成熟型において、Gagはインタクトなままであるが、成熟型において、そのタンパク質はウイルスプロテアーゼによって切断される。この成熟粒子の形成が、HIV−1の感染性のために必須であり、そしてGag切断産物から得られるカプシドタンパク質が、ウイルスゲノムを囲むウイルスの円錐体のコアの形成において中心的な役割を果たす。そのカプシドタンパク質(CA、p24;配列番号1)は、2つのドメイン、すなわちN末端ドメイン(NTD、アミノ酸1〜145)、およびC末端ドメイン(CTD、アミノ酸146〜231)から成る、疎水性タンパク質である。これらの2つのドメインは、5アミノ酸のリンカーで連結しており、そしてお互い独立に折り畳まれている。未成熟粒子におけるカプシドタンパク質の接触およびその相互作用の正確な性質は完全に公知ではないが、成熟粒子において、CA格子が形作られた。NTDおよびCTDの両方における変異は、ウイルスアセンブリー、放出、および成熟の欠損を引き起こす。それに加えて、カプシドは、非分裂細胞において、レトロウイルス感染性の主な決定因子である。
【0028】
NTDはシクロフィリンAに結合し、そしてウイルスコアの形成に重要である。しかし、ウイルスアセンブリーに必須の、Gagオリゴマー形成の重要な決定因子は、CTDに位置する。それに加えて、CTDは、主要相同性領域(MHR)として公知の、Gagの最も保存された部分を含む。この保存された領域の変異は、ウイルスアセンブリーおよび成熟に重度の欠損を引き起こす。HIV−1の単離されたCTDは、全長タンパク質と同じ親和性で、溶液中で二量体を形成する。CTDの二量体化は、Gagアセンブリー、ウイルスの出芽、および成熟の主要な推進力であることが示された。CTD二量体のいくつかの異なる3次元構造が公知であり、そして二量体界面についての情報を提供した。CTD単量体の界面領域におけるアミノ酸残基の変異は、二量体の形成を破壊し、カプシドアセンブリーおよび成熟を損なわせ、そしてウイルスを非感染性にする。従って、CTD二量体は、抗HIV−1薬のための潜在的な標的である。
【0029】
HIV−1カプシドは、溶液中で低い親和性(Kd=18μM)で二量体を形成する。その二量体界面は、x線構造分析によって、CTDへリックスIIに位置していた。CTD二量体は、HIV−1アセンブリーにおいて重要な役割を果たすので、CTD二量体のx線構造(PDBコード:1a43および1a8o)を徹底的に分析し、そして二量体界面領域における1つの単量体からの短いαヘリックス部分(aa175−195)を、CTDの1つの単量体に競合的に結合し、そしてCTDの二量体化を防止し得る抗ウイルス剤を設計するための開始点として選択した。これらの短いペプチドの最も大きな困難は、それらは通常溶液中で不定形であり、そして細胞を透過しないことである。CTD二量体の形成は細胞内で起こるので、二量体形成を妨害しようとするあらゆる可能性のある薬剤は、必然的に細胞に入らなくてはならない。従って、本発明者らは、炭化水素ステープリングがその短いペプチドのらせん構造を安定化させ、そしてそれらを細胞透過性にすることを決定した。これらのペプチドは、パートナー単量体よりも高い親和性で、界面において単量体CTDに結合し、そしてそれらはHIV−1アセンブリーおよび成熟に必要な工程である、カプシド二量体の形成を阻害する。
【0030】
炭化水素ステープリングと呼ばれる化学的アプローチは、完全なタンパク質の関係から除去した場合に、短いペプチドが、その重要な3次元構造−およびその望ましく機能する能力−を失う傾向を克服する。これは、治療薬として短いペプチドを使用することに伴う最も大きな障害の1つであり、そして医薬品リード化合物としてのその正当性を妨げてきた。この技術において、様々な長さのオレフィン側鎖を含むαメチル化アミノ酸を、ペプチド配列の(i)および(i+4)または(i+7)いずれかの位置に導入し、そして次いでオレフィンメタセシスによって環状化する。本明細書中で使用する場合、(i)は参照アミノ酸残基を指し、そして(i+x)という用語は、(i)アミノ酸からx残基のアミノ酸を指す。ペプチドを分解に対してより抵抗性にし、そしてその細胞取り込みを可能にすることによって、炭化水素ステープリングは、ペプチド治療薬のいくつかの古典的な欠点を克服する。ステープリングされたペプチドは、その天然の形を保持し、分解に対して抵抗性であり、そして細胞に入り、そして細胞においてその意図された機能を発揮し得る。
【0031】
炭化水素ステープリングは、非天然アミノ酸が、お互いに架橋し得る炭化水素を含むように、選択された位置で、非天然アミノ酸を天然アミノ酸に置き換える過程を指す。「ステープル」は、ペプチドの2次構造を制限する、非天然アミノ酸の間のつなぎを提供する。
【0032】
本開示は、細胞透過性ペプチドを含む、哺乳類においてウイルス感染を処置するための組成物に注目する。その細胞透過性ペプチドは、HIV−1ウイルスカプシドタンパク質の少なくとも1部のアミノ酸配列を含み、そのペプチドは最初のアミノ酸および2番目のアミノ酸で置換を有し、ここでそのペプチドは、その置換で架橋される。
【0033】
1つの実施態様において、長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドが本明細書中で開示され、ここでそのアミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸である;ここでその非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここでその非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成する;ここでそのペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含む;ここでその2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換する;そしてここで2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0〜6個のR2で置換される、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【0034】
【化3】
である;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体である;
R3はHまたはC1−C10アルキルである;
R4はH、アルキル、または治療薬である;および
nは1−4の整数である。
【0035】
上記の式において、アミノ酸は、「ここでそのペプチドのアミノ酸配列は〜を含む」における括弧内の文字によってのみ表されることが理解されなければならない。それらの括弧の外側のR(R1、R2、R3、およびR4)および「(R1−K−R1)」のKは、続いて規定される変数を表すことが理解され、そしてそれらの括弧の外側のH、C、Sは、それぞれ水素、炭素、および硫黄原子を表すことが理解される。
【0036】
他の実施態様において、そのペプチドは、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)のC末端またはN末端のいずれかに、さらなるアミノ酸を含む。
【0037】
開示されたペプチドはまた、αヘリックスを安定化するための公知の手順において、さらなる改変を含むことが企図される。例えば、非天然アミノ酸のメチル基を、インビトロまたはインビボにおけるそのペプチドの活性、または架橋してペプチドを安定化させ、そしてそのαらせん度を増加させる能力に影響を与えずに、別の小さい(例えばC1−C5)アルキル、アルケニル、またはアルキニルで置換され得ると考えられる。
【0038】
本明細書中で使用する場合、アミノ酸の間にスラッシュを有する括弧内の1つ以上のアミノ酸(通常の1文字アミノ酸コードを用いて)としての、本ペプチドのアミノ酸残基の命名は、示したアミノ酸またはその模倣物(明確に除外しなければ)のいずれかが、その残基を占め得ることを意味する。例えば、(I/L/V)(T/S/A/V/C)は、最初の残基はイソロイシン、ロイシン、またはバリンのいずれか1つであり得、そして2番目の残基はスレオニン、セリン、アラニン、バリン、またはシステインのいずれか1つ、または模倣物であり得ることを意味する。
【0039】
本明細書中で使用する場合、模倣物またはペプチド模倣物は、タンパク質において天然親アミノ酸を模倣し得る化合物であり、ここでペプチド模倣物の天然アミノ酸との置換は、タンパク質の活性に影響を与えない。ペプチド模倣物を含むタンパク質は、一般的にプロテアーゼの基質ではなく、そして天然タンパク質と比較してより長い時間インビボで活性である可能性が高い。それに加えて、それらはより抗原性が低く、そして全体的により高い生物学的利用能を示し得る。当業者は、あらゆる特定のペプチド(例えば、本発明のペプチド)のアミノ酸を置換し得る、ペプチド模倣物の設計および合成は、過度の実験を必要としないことを理解する。本発明のために有用な模倣物の制限しない例は、Dアミノ酸および制約されたアミノ酸(例えば、ノルロイシンまたは2−アミノイソ酪酸)を含む。ペプチド配列のアミノ酸が、αヘリックスを形成する性質を有するアミノ酸で置換され得ることも、本発明の範囲内である。
【0040】
本開示のペプチドはそれぞれ、ペプチドの安定性、反応性、および/または溶解度を増強するために、特定のアミノ酸、および/またはアミノ末端および/またはカルボキシル末端において、1つまたはそれ以上の化学基の追加を含み得る。例えば、カルボベンゾイル、ダンシル、アセチル、t−ブチルオキシカルボニル基、または9−フルオレニルメトキシカルボニル(fluorenylmethyoxycarbonyl)基のような疎水性基を、ペプチドのアミノ末端に加え得る。別の例において、疎水性基、t−ブチルオキシカルボニル、またはp−ニトロベンジルエステル基、または1〜5個のリシンのような親水性基を、ペプチドのカルボキシ末端に加え得る。そのような修飾を導入するための技術は、当業者に周知である。
【0041】
本開示のペプチドは、あらゆる薬剤学的に許容可能な塩の形態であり得る。開示化合物の酸付加塩を、ペプチドおよび過剰な酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、またはメタンスルホン酸)から、適当な溶媒中で調製し得る。これらのペプチドが酸性部分を含む場合、適当な薬剤学的に許容可能な塩は、ナトリウムまたはカリウム塩のようなアルカリ金属塩、またはカルシウムまたはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩を含み得る。アミノ末端がHであり、そしてカルボキシ末端がNH2であるペプチドの塩が好ましい。本開示の範囲はまた、遊離酸型のペプチドを含む。
【0042】
開示されたアミノ酸残基は、保存的置換を含む。例えば、保存的アミノ酸変化を行い得、それはタンパク質またはペプチドの一次配列を変化させるが、通常その機能を変化させない。保存的アミノ酸置換は、典型的には以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リシンおよびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。
【0043】
炭化水素ステープリングにおいて使用するために適当な非天然アミノ酸は、α炭素においてRまたはS立体化学のいずれかを有し、そしてここでその非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここでその非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αヘリックスの同じ側にあり、そして2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成する能力を有する。
【0044】
1つの実施態様において、2つの非天然アミノ酸の間の架橋は
【0045】
【化4】
であり、ここで(C)は非天然アミノ酸のα炭素である。
【0046】
いかなる特定のメカニズムに拘束されることなく、上記ペプチドはHIV gagタンパク質のカプシドドメインに結合し、アンコーティング、ウイルスアセンブリー、および成熟、そして従って複製を防止すると考えられる。したがって、開示されたペプチドは、あらゆるカプシドを含むウイルスに結合し、そしてその複製を阻害することが予期される。従って、好ましいペプチドは、細胞においてカプシドを含むウイルスの複製を阻害し得る。カプシドを含むウイルスの例は、HIVのような、レンチウイルスを含むレトロウイルス科;風疹ウイルスを含むトガウイルス科;エンテロウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、およびA型肝炎ウイルスのようなピコルナウイルス科;インフルエンザウイルスのようなオルトミクソウイルス科;パラミクソウイルスのようなパラミクソウイルス科;ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルスのようなヘルペスウイルス科;B型肝炎ウイルスのようなヘパドナウイルス科(Hepnaviridae);フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、ダニ媒介脳炎、黄熱、およびデング熱ウイルスのようなフラビウイルス科;SARSウイルスおよびトロウイルスを含むコロナウイルスのようなコロナウイルス科;エボラおよびマールブルグウイルスのようなフィロウイルス科;ハンタウイルスおよびアレナウイルスのようなブニヤウイルス科を含む。
【0047】
カプシドを含むウイルスは、好ましくは、レトロウイルス、例えばHIV、HTLV−1、2および3、ネコ免疫不全ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ肉腫または白血病ウイルス、またはウシ白血病ウイルスである。
【0048】
より好ましくは、そのペプチドはレンチウイルスの複製を阻害する。ある実施態様において、そのペプチドは、HIVの複製を阻害し得る。実施例は、上記で記載したペプチドが広い範囲のHIV単離物を阻害することを示すので、そのペプチドは、HIV−1およびHIV−2を含むHIVのあらゆる株を阻害し得ることが予期される(表2)。
【0049】
1つの実施態様において、NYAD−201ペプチド(配列番号4)を、NおよびC末端両方から3アミノ酸を欠失し、そして二量体界面配列(図1:EQASQEVKNWMTETLLVQNAN、配列番号2)の6(i)および10(i+4)位置における2つの天然アミノ酸を、非天然アミノ酸(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンで置換することによって産生した。4つのNおよびC末端残基(EQASおよびQNAN)も、それぞれ1つのアラニンで置換した。カプシドのCTD二量体界面のx線結晶構造に基づいて、6番目および10番目の残基を選択した(PDBコード:1a43および1a8o)。それらは二量体界面の反対側に位置する。6番目および10番目の位置のステープリング残基は、修飾ペプチドの疎水性ポケットへの結合に影響与えないことが予測される;その代わりに、ペプチドのαらせん度および細胞透過性を増強することが予測される。ペプチドNYAD−202(配列番号5)を、NYAD−201の3番目の残基をアラニンへ置換することによって得た。NYAD−201の可溶性アナログである、NYAD−203(配列番号6)も、NYAD−201のC末端に3つのリシンを加えることによって合成した。それに加えて、構造−活性相関研究(SAR)の一部として、あるアミノ酸が修飾された、特に配列のC末端にさらなるアミノ酸を追加した、およびステープリング面がC末端に向かって移動するように、さらに他のアミノ酸を移動した(NYAD−218、配列番号12)、様々なステープリングされたペプチドを合成した。その修飾を、図1で例示的なペプチドにおいて示す。
【0050】
別の実施態様において、NYAD−221(配列番号15)を、配列番号19の6(i)および13(i+7)位置において、天然アミノ酸を、それぞれ非天然アミノ酸(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンおよび(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンで置換することによって産生した。NYAD−201に関して前に記載したのと同じ原理に基づいて、6番目および13番目の残基を選択した。NYAD−222(配列番号16)を同様に作成したが、いくつかのアミノ酸を他の天然アミノ酸で置換し、そしてC末端を1つのさらなるアミノ酸で伸長した(図1)。
【0051】
【表1−1】
本開示はまた、薬剤学的に許容可能な担体中に、カプシドを含むウイルスのアンコーティング、アセンブリー、および成熟を阻害し得る、上記で記載したペプチドを含む医薬品組成物に関する。
【0052】
本発明の医薬品組成物の用量および望ましい薬剤濃度は、構想する特定の使用に依存して変動し得る。適当な用量または投与経路の決定は、当業者の知識の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効な投与量の決定のために信頼できる指標を提供する。Mardenti,J.およびChappell,W.「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」 Toxicokinetics and New Drug Development、Yacobiら編、Pergamon Press、New York 1989、42−96頁によって規定された原理に従って、有効な投与量の種間スケーリングを行い得る。本明細書中で使用される、「治療的に有効な」量という用語は、例えば感染性疾患のような疾患の特定の処置を行うために必要な量を指す。「処置」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)処置の両方を指し、ここでその目的は、標的となる病理学的状態または疾患を予防または遅らせる(軽減する)ことである。処置の必要のある人は、既に疾患を有する人、および疾患を有する傾向のある人、または疾患を予防すべき人を含む。1つの実施態様において、その疾患は存在する。別の実施態様において、細胞または個人の生命は、本明細書中で記載した方法に起因して延長される。
【0053】
上記で記載した化合物を、特定の適用のために適切なように、ヒトを含む哺乳類に対する投与のために、過度の実験無しに処方し得る。さらに、適当な組成物の用量を、標準的な用量−反応プロトコールを用いて、過度の実験無しに決定し得る。
【0054】
よって、経口、鼻腔内、舌、舌下、頬側、および口腔内投与のためにデザインした組成物を、例えば不活性な希釈剤、または薬剤学的に許容可能な担体と共に、当該分野において周知の手段によって、過度の実験無しに作成し得る。その組成物を、ゼラチンカプセルに封入する、または錠剤に圧縮する。経口治療投与の目的のために、その医薬品組成物を、賦形剤と共に組み込み、そして錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガム等の形態で使用し得る。「薬剤学的に許容可能な担体」は、あらゆる標準的な医薬品担体を意味する。適当な担体の例は、当該分野において周知であり、そしてリン酸緩衝化生理食塩水溶液、Polysorb80を含むリン酸緩衝化生理食塩水、水、水中油型エマルジョンのようなエマジション、および様々な型の湿潤剤のような、あらゆる標準的な医薬品担体を含み得るがこれらに限らない。他の担体はまた、滅菌溶液、錠剤、コーティングされた錠剤、およびカプセルを含み得る。典型的には、そのような担体は、デンプン、乳、糖、特定の型の粘土、ゼラチン、ステアリン酸またはその塩、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、タルク、植物性脂肪または油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤のような、賦形剤を含む。そのような担体はまた、矯味矯臭剤および着色添加物または他の成分を含み得る。そのような担体を含む組成物を、周知の従来の方法によって処方する。
【0055】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等はまた、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、甘味料、および矯味矯臭剤を含み得る。結合剤のいくつかの例は、結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンを含む。賦形剤の例は、デンプンまたはラクトースを含む。崩壊剤のいくつかの例は、アルギン酸、コーンスターチ等を含む。潤沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カリウムを含む。流動促進剤の例は、コロイド性二酸化ケイ素である。甘味料のいくつかの例は、ショ糖、サッカリン等を含む。矯味矯臭剤の例は、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料等を含む。これらの様々な組成物を調製するのに使用した材料は、薬剤学的に純粋であり、そして使用する量で無毒性であるべきである。
【0056】
例えば静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または皮下注射でのように、化合物を容易に非経口投与し得る。非経口投与を、化合物を溶液または懸濁液に組み込むことによって達成し得る。そのような溶液または懸濁液はまた、注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒のような、滅菌希釈剤を含み得る。非経口処方はまた、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤、およびEDTAのようなキレート化剤を含み得る。酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような浸透圧を調節するための薬剤も加えられ得る。非経口調製物を、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスまたはプラスチックでできた複数回投与バイアルに封入し得る。
【0057】
直腸内投与は、医薬品組成物中で、化合物を直腸または大腸に投与することを含む。これを、坐剤、浣腸、ゲル、クリーム、錠剤等を用いて達成し得る。坐剤処方物は、当該分野で公知の方法によって容易に作成され得る。同様に、坐剤、ゲル、圧注、クリーム、錠剤、リング等を含む膣内投与形態も処方され得る。その組成物を、例えば坐剤の形態で、直腸内または膣内投与のために意図し得、それは直腸内で溶解し、そして薬剤を放出する。直腸内または膣内投与のための組成物は、適当な非刺激性賦形剤として油性基剤を含み得る。そのような基剤は、制限無しに、ラノリン、カカオバター、およびポリエチレングリコールを含む。低融点ワックスが、坐剤の調製に好ましく、ここで脂肪酸グリセリドおよび/またはカカオバターの混合物が適当なワックスである。そのワックスは溶解し得、そして撹拌によってシクロヘキシルアミン化合物をそこに均一に分散する。溶解した均一な混合物を次いで簡便なサイズの型に注ぎ、冷却し、そしてそれによって凝固させる。
【0058】
局所投与のために意図された開示組成物は、溶液、エマルジョン、軟膏、クリーム、またはゲル基剤を適当に含み得る。例えば、その基剤は、1つまたはそれ以上の以下のものを含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、水およびアルコールのような希釈剤、および乳化剤および安定剤。局所投与のための医薬品組成物中に、増粘剤が存在し得る。
【0059】
経皮投与は、皮膚を通した組成物の経皮的吸収を含む。経皮処方は、パッチ、イオン導入装置、軟膏、クリーム、ゲル、膏薬等を含む。
【0060】
上記組成物は、固体または液体投与単位の物理的形態を改変する、様々な物質を含み得る。例えば、その組成物は、活性成分の周りにコーティングシェルを形成する物質を含み得る。コーティングシェルを形成する物質は、典型的には不活性であり、そして例えば糖、セラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択し得る。あるいは、その活性成分を、ゼラチンカプセルまたはカシェ剤中に包み得る。
【0061】
上記開示はさらに、細胞においてカプシドを含むウイルスの複製を阻害する方法に関する。その方法は、細胞においてカプシドを含むウイルスの複製を阻害するために十分な方法で、細胞を、カプシドを含むウイルスを阻害し得る上記で記載したペプチドと接触させることを含む。
【0062】
これらの方法は、あらゆるカプシドを含むウイルスに有用である。好ましくは、そのウイルスはレトロウイルスであり、より好ましくはレンチウイルスであり、そして最も好ましくはHIVである。
【0063】
カプシドを含むウイルスに感染した、あらゆる原核細胞、真核細胞、または古細菌細胞を、本発明のペプチドで処置し得る。上記方法は、培養中の(例えば実施例におけるように)、または好ましくは、あらゆる植物または動物を含む生きた多細胞生物中の細胞を利用し得る。より好ましくは、その細胞は、カプシドを含むウイルスで感染した、生きた脊椎動物の部分である。さらにより好ましくは、その細胞は、カプシドを含むウイルスで感染した哺乳類中にある。さらにより好ましくは、その哺乳類はヒトであり、最も好ましくはHIVに感染している。
【0064】
ウイルスが生きた哺乳類中にある場合、本方法を、少なくとも1つの他の抗ウイルス治療、例えばHIVに対して使用されるあらゆる抗ウイルス治療またはその組み合わせと組み合わせて使用し得ることが企図される。
【0065】
上記開示はさらに、カプシドを含むウイルスに感染した哺乳類を処置する方法に関する。その方法は、哺乳類を処置するために十分な方法で、上記で記載した医薬品組成物を哺乳類へ投与することを含む。好ましくは、その哺乳類はヒトである。
【0066】
これらの方法のいくつかの適用は、ウイルスに感染した母親を有する子宮中の胎児を処置して、ウイルスを子宮内の胎児へ、または分娩中に乳児へ伝達するリスクを減少させることを含む。
【0067】
本方法を、少なくとも1つの他の抗ウイルス処置、例えばHIVに対して使用されるあらゆる抗ウイルス処置、またはその組み合わせ、またはワクチン接種を含むあらゆる予防的抗ウイルス処置と組み合わせて使用し得ることも企図される。
【0068】
さらに、上記開示は、あらゆる上記で記載したペプチドを作成する方法に関する。その方法は、アミノ酸を連続的に結合すること、次いで非天然アミノ酸の2つのオレフィン基を、オレフィンメタセシスを用いて結合することを含む。これらの方法が、例えば米国特許出願公開2006/0008848A1およびPCT特許出願公開WO2005/044839A2において記載され、それらはどちらもペプチドの炭化水素ステープリングに関してそれらが開示する全てに関して、本明細書中で参考文献に組み込まれる。好ましくは、そのアミノ酸を、固相合成を用いて結合する。
【0069】
カプシドを含むウイルスに感染した哺乳類を処置するための薬物の製造のために、カプシドを含むウイルスのアンコーティング、アセンブリー、および成熟を阻害する、上記で記載したペプチドのいずれかを使用することにも関する。さらに、哺乳類がカプシドを含むウイルスに感染するリスクを減少させるために哺乳類を処置するための薬物の製造のために、カプシドを含むウイルスのアセンブリーを阻害し得る、上記で記載したペプチドのいずれかを使用すること。
【0070】
また、上記開示は、カプシドを含むウイルスに感染した哺乳類を処置するための、上記で記載した医薬品組成物の使用に関する。その開示はさらに、カプシドを含むウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置するための、上記で記載した組成物の使用に関する。
【0071】
本開示の組成物を、治療的に有効な量で、適当な投与レジメンに従って投与し得る。当業者によって理解されるように、必要な正確な量は、患者の種、年齢、および全身の状態、感染の重症度、特定の薬剤および投与方法に依存して、患者ごとに異なり得る。いくつかの実施態様において、患者の体重に基づいて、約0.001mg/kgから約50mg/kgの組成物を、1日1回またはそれ以上投与して、望ましい治療的効果を得る。他の実施態様において、患者の体重に基づいて、約1mg/kgから約25mg/kgの組成物を、1日1回またはそれ以上投与して、望ましい治療的効果を得る。
【0072】
組成物の合計1日投与量を、主治医が、適切な医学的判断の範囲内で決定する。あらゆる特定の患者または対象のために特異的な治療的に有効な投与量レベルは、処置する疾患およびその疾患の重症度、採用した特定の化合物の活性、採用した特定の組成物、患者または対象の年齢、体重、全身の健康、性別および食事、投与の時間、投与経路、および採用した特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いた特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用する薬剤、および医学的分野において周知の他の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0073】
開示された組成物をまた、併用療法において採用し得る。すなわち、現在開示されている組成物を、1つまたはそれ以上の他の望ましい組成物、治療薬、治療または医学的手順と同時に、それの前に、またはそれに続いて投与し得る。投与する処置の特定の組み合わせを、主治医が決定し、そして治療の適合性および達成される望ましい治療的効果を考慮する。組み合わせて利用する治療的に活性な薬剤を、単一の組成物、治療、または手順において共に投与し得る、またはあるいは、別々に投与し得る。
【0074】
例えば、開示された組成物を、例えば1つまたはそれ以上のヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、ケモカイン受容体(CXCR4、CCR5)阻害剤、および/またはヒドロキシウレアを含むがこれに限らない、1つまたはそれ以上の他のHIV阻害剤と組み合わせて投与し得る。
【0075】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、アバカビル(ABC;Ziagen(登録商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン(ddI);Videx(登録商標))、ラミブジン(3TC;Epivir(登録商標))、スタブジン(d4T;Zerit(登録商標)、ZeritXR(登録商標))、ザルシタビン(ジデオキシシチジン(ddC);Hivid(登録商標))、ジドブジン(ZDV、以前はアジドチミジン(AZT)として公知であった;Retrovir(登録商標))、アバカビル、ジドブジン、およびラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジドブジンおよびラミブジン(Combivir(登録商標))、およびエムトリシタビン(Emtriva(登録商標))を含むがこれに限らない。ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤は、フマル酸テノホビルジソプロキシル(Viread(登録商標))を含む。HIVのための非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ネビラピン(Viramune(登録商標))、メシル酸デラビルジン(Rescriptor(登録商標))、およびエファビレンツ(Sustiva(登録商標))を含むがこれに限らない。
【0076】
プロテアーゼ阻害剤(PI)は、アンプレナビル(Agenerase(登録商標))、メシル酸サキナビル(Fortovase(登録商標)、Invirase(登録商標))、リトナビル(Norvir(登録商標))、硫酸インジナビル(Crixivan(登録商標))、メシル酸ネルフィナビル(nelfmavir)(Viracept(登録商標))、ロピナビルおよびリトナビル(Kaletra(登録商標))、アタザナビル(Reyataz(登録商標))、およびホスアンプレナビル(Lexiva(登録商標))を含む。アタザナビルおよびホスアンプレナビル(Lexiva)は、最近米国食品医薬品局(FDA)によって、HIV−1感染の処置のために認可された、新しいプロテアーゼ阻害剤である(atazanavir(Reyataz) and emtricitabine(Emtriva) for HIV infection、Medical Letter on Drugs and Therapeutics、www.medletter.comからオンラインで入手可能;U.S. Department of Health and Human Services(2003)、Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV−infected Adults and Adolescents;aidsinfo.nih.gov/guidelinesからオンラインで入手可能、を参照のこと)。
【0077】
融合/侵入阻害剤は、CD4+細胞(ある型の白血球)の外側またはCCR5およびCXCR4のような共受容体、またはgp41およびgp120のようなウイルス膜タンパク質に結合する。融合/侵入阻害剤は、ウイルスおよび細胞間の融合が起こること、またはウイルスの細胞への侵入を防ぎ、そして従って、HIV感染および複製を防止する。融合/侵入阻害剤は、エンフビルチド(Fuzeon(登録商標))、Lalezariら、New England J.Med.、348:2175−2185(2003);およびマラビロク(Selzentry(登録商標)、Pfizer)を含むがこれに限らない。
【0078】
インテグラーゼ阻害剤は、インテグラーゼの作用を阻害し、HIV−1遺伝物質が宿主DNAに組み込まれるのを防ぎ、そしてそれによってウイルスの複製を停止させる。インテグラーゼ阻害剤は、ラルテグラビル(Isentress(登録商標)、Merck);およびエルビテグラビル(GS9137、Gilead Sciences)を含むがこれに限らない。
【0079】
あるいはまたはさらに、本明細書中で開示された組成物を、1つまたはそれ以上の抗感染性薬剤(例えば抗生物質等)、鎮痛薬、または1つまたはそれ以上の疾患、障害、または免疫無防備状態の個人においてよく見られるが、HIVによって直接引き起こされるのではない状態の症状に取り組むために意図された他の薬剤と組み合わせて投与し得る。
【実施例】
【0080】
実施例1
ステープリングされたペプチドの合成
(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンおよび(R)−Fmoc−2−(2’−オクテニル)アラニンの不斉合成を、Ala−Ni(II)−BPB−複合体法によって行った。NYAD−201(D−201としても公知である)を、位置1のアミノ酸セリンおよび位置15のグルタミンを、アラニンで置換すること、および配列の6(i)および10(i+4)位置の2つの天然アミノ酸を、非天然アミノ酸(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンで置換することによって、二量体界面配列(図1:EQASQEVKNWMTETLLVQNAN、配列番号2)から得て(NYAD−201、配列番号4)、そして下記で記載した方法に従って合成した。上記配列の6番目および10番目の残基を選択する原理は、カプシドの二量体CTDのx−線結晶構造に基づいた。NYAD−201のもとの配列は、カプシドにおいてらせん状構造をとる。さらなる構造解析は、残基6(N)および10(E)が、二量体界面の反対側に位置することを明らかにした。これらの位置におけるステープリング残基は、修飾ペプチドの二量体界面への結合に影響を与えない;実際、それはペプチドのαらせん度および細胞透過性を増強し得る。NYAD−202(D−202としても公知である)(配列番号5)を、配列番号4の3番目のアミノ酸を、アラニンと置換すること、およびNYAD−201と同じ位置でステープリングすることによってデザインした。NYAD−201の可溶性アナログ、NYAD−203(D−203としても公知である)(配列番号6)を、NYAD−202のC末端に3つのリシンを加えることによってデザインした(図1)。NYAD−221(配列番号15)およびNYAD−222(配列番号16)を、6(i)および13(i+7)位置の2つの天然アミノ酸を、2つの非天然アミノ酸、(R)−Fmoc−2−(2’−オクテニル)アラニンおよび(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンでそれぞれ置換することによってデザインした。これらのペプチドを、RinkアミドMBHA樹脂(0.33mmol/g)を用いて、Fmoc固相合成によって、手作業で合成した。正常アミノ酸に関して、その結合を4倍過剰のアミノ酸によって行った。Fmocアミノ酸を、Fmocアミノ酸:HBTU:HOBt:DIEAの1:1:1:2の比を用いて活性化した。(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンに関して、その結合を2倍過剰のアミノ酸によって行い、それをDIC:HOAt(1:1)によって活性化した。ペプチドオレフィンメタセシスに関して、N末端をFmocグループによって保護したペプチド樹脂を、室温で2時間、Grubbs触媒、二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)(10mM)を含む脱気した1,2−ジクロロエタンで処理し、そしてその反応を完了のために1度繰り返した。脱Fmoc後、樹脂に結合したペプチドを、標準的なプロトコール(95%TFA、2.5%水、2.5%TIS)を用いて切断した。切断したペプチドを、0.1%(v/v)TFA/水および0.1%(v/v)TFA/アセトニトリルを用いたRP−HPLCによって精製し、そしてその純度および質量を、質量分析によって確認した。
【0081】
NYAD−201およびNYAD−209(配列番第3)の円偏光二色性(CD)スペクトルを、250μMの最終濃度で、15%(vol/vol)アセトニトリルの存在下で、Tris−HCl緩衝液(20mMTris、pH8.0)中、標準的な測定パラメーターを用いて、20℃で、Jasco J−715 円二色性分散計imeter(Jasco Inc,日本)で得た。全てのサンプルにおいて、ペプチドおよび塩の最終濃度は常に同じであり、そしてスペクトルを、適当な参照溶媒のCDスペクトルを引くことによって補正した。
【0082】
円偏光二色性を用いて、溶液中の非複合体状態において、NYAD−201およびその直線状アナログである、NYAD−209の二次構造を特徴付けた。NYAD−201のCDスペクトルは、222および208nm両方における区別できる最小値(αらせん状構造を示す)を示した(図2)。炭化水素ステープリングしたペプチドは、溶液中でαらせん状態を好む。しかし、直線状ペプチドである、NYAD−209はそのような区別できる最小値を示さない;従って、このペプチドは、溶液中でαらせん構造として存在しない。
【0083】
実施例2
NYAD−201の細胞透過性の評価
共焦点顕微鏡研究を行って、拘束されたステープリングペプチドである、NYAD−201は、細胞膜を透過し、そして細胞によって取り込まれるが、一方NYAD−209と呼ばれる直線状アナログは透過しないことを示した。
【0084】
2つの型の細胞、293T(ヒト胎児腎臓293細胞)およびMT2(ヒトリンパ球系細胞)を、4ウェルのチャンバープレートに播種し、そして血清を含まない培地中で4時間、または/および血清を含む完全培地中でさらに16時間、上で記載したFITC結合ペプチド(FITC誘導体化NYAD−209をNYAD−216とする、図1を参照のこと)とインキュベートした。1×PBSで3回洗浄した後、生きた細胞を調査し、そして共焦点顕微鏡(Zeiss)下で画像化した。図3に示すように、NYAD−201は細胞膜を透過し、そして細胞によって取り込まれたが、直線状ペプチド(NYAD−209)は透過しなかった。
【0085】
実施例3
インビトロアセンブリーの阻害を研究するための電子顕微鏡
細胞非含有系、および細胞ベースの系の両方において、インビトロアセンブリーを研究した。細胞非含有系を、少し改変して、以前に記載したように設定した(Husebyら、J Biol Chem 280:17664−17670、2005;Ganser−Pornillosら、J Virol 78:2545−2552、2004;およびGrossら、Eur J Biochem 249:592−600、1997)。50ミリモル濃度ののNa2HPO4、pH8.0を、透析緩衝液として使用した。アセンブリー研究のために使用した緩衝液も、1.2MのNaClを含み、そして500−Da−MWCO透析チューブ(Spectra/Por)を、ペプチドの透析のために使用した。簡単には、ストックタンパク質を、pH8.0のNa2HPO4緩衝液中で、適当な濃度(CAタンパク質に関して50μM)に調整した。様々な用量のNYAD−201と、4℃で30分間インキュベートした後、サンプルを、1.2MのNaClを含むpH8.0のNa2HPO4緩衝液中で、4℃で一晩透析した。アセンブリーを確認するために、ネガティブ染色を使用した。炭素被覆銅格子(200メッシュサイズ;EM Sciences)を、20μlのポリ−L−リシン(1mg/ml;Sigma)で2分間処理した。20マイクロリットルの反応溶液を、格子上に2分間置いた。次いで点状の格子を、30μlの酢酸ウラニル溶液で2分間染色した。過剰な染色を除去し、そして格子を空気乾燥させた。標本を、Philips EM410電子顕微鏡で調査した。
【0086】
精製CAタンパク質が発現し、そして管状の粒子を得た(図4)。NYAD−201による処理は、成熟様粒子の用量依存性の破壊を引き起こした。0.25および0.5倍モル当量のNYAD−201とインキュベーションした後、管状粒子の完全性は大きく損傷した(図4)。1、3および5倍モル当量のNYAD−201とインキュベーションした後、管状粒子のアセンブリーは完全に阻害された(図4)。
【0087】
細胞ベースの系において、ウイルス様粒子(VLP)の放出および形態に対するNYAD−201の影響を、Gag−Polをコードするプラスミドによるトランスフェクションの1日後に電子顕微鏡によって分析した。トランスフェクションの前日、6ウェルプレートに、ウェルあたり40000個の293T細胞を播種した。トランスフェクションの4時間後、細胞を2回洗浄し、そしてさらに20時間、異なる濃度のNYAD−201の存在または非存在下で、完全培地と共にインキュベートした。次いで細胞を、100mMのカコジル酸ナトリウム中3%のグルタルアルデヒド中で1時間固定し、そして100mMのカコジル酸ナトリウム中1%のOsO4中でさらに1時間、後固定した。次いで標本を、段階的な一連のエタノール溶液によって脱水し、そしてEPON培地に包埋した。酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛による染色後、超薄切片を、Philips EM410電子顕微鏡下で、80Kvで調査した。
【0088】
Gag−Pol発現ベクターでトランスフェクトした、未処理の細胞の場合、高電子密度のコア構造を含む多数の成熟粒子が見出された(図5)。Gag−Pol発現細胞を50μMのNYAD−201で処理した場合、高電子密度のコア構造の形成は、著しく阻害された(図5)。これらのデータは、NYAD−201はカプシドを標的とし、そしてGag−Pol発現細胞において、適切な粒子アセンブリーおよび成熟を損傷することを確認する。
【0089】
実施例4
HIV−1感染性の阻害
NYAD−201、および関連するステープリングされたペプチドの、実験室適応HIV−1株による感染に対する阻害活性を、少し改変して、以前に記載したように決定した(Jiangら、J Exp.Med 174:1557−1563、1991)。アジドチミジン(AZT)を、感染性アッセイにおけるポジティブコントロールとして使用した。簡単には、1×104のMT−2細胞を、段階的な濃度のペプチドの存在または非存在下で一晩、10%のFBSを含む200μlのRPMI1640培地中で、100TCID50(50%組織培養感染用量)(0.01MOI[感染多重度])でHIV−1に感染させた。次いで培養上清を除去し、そして新しく調製した試験ペプチドを含む新しい培地を加えた。感染後4日目に、100μlの培養上清を各ウェルから回収し、等容積の5%TritonX−100と混合し、そしてELISAによってp24抗原に関して試験した。
【0090】
一次HIV−1単離物による感染に対するペプチドの阻害活性を、以前に記載したように決定した(Jiangら、Antimicrob.Agents Chemother.48:4349−4359、2004)。末梢血単核球(PBMC)を、Histopaque−1077(Sigma−Aldrich)を用いて、標準的な密度勾配遠心によって、New York Blood Centerにおいて、健康なドナーの血液から単離した。その細胞を37℃で2時間培養した。非接着細胞を回収し、そして10%のFBS、5μg/mlのPHA、および100U/mlのIL−2(Sigma−Aldrich)を含むRPMI−1640培地1mlあたり5×106細胞で再懸濁し、続いて37℃で3日間インキュベートした。段階的な濃度のペプチド阻害剤の非存在または存在下で、PHA刺激細胞(5×104細胞/ウェル)に、500TCID50(0.01MOI)で、一次HIV−1単離物を感染させた。培地を3日ごとに交換し、そして新しく調製した阻害剤を含む新しい培地と交換した。感染の7日後に上清を回収し、そしてELISAによってp24抗原に関して試験した(図6)。p24産生の阻害パーセント、IC50およびIC90値を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software Inc.)によって計算した。
【0091】
NYAD−201は、細胞非含有系、および細胞ベースの系において、成熟様粒子のアセンブリーの阻害を示したので、NYAD−201および関連するステープリングされたペプチドを、HIV−1 IIIB株を用いた、細胞に基づくアッセイにおいて、抗HIV−1活性に関して試験した(表2)。それに加えて、NYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203をまた、それぞれMT−2細胞およびPBMC(末梢血単核球)において、いくつかの実験室適応単離物および一次単離物を用いて試験した。NYAD−201およびそのアナログによる、MT−2細胞におけるp24産生の阻害を、ある範囲の濃度にわたって測定し、そしてp24産生の50%を阻害するために必要な濃度(IC50)を計算した。表2および3の結果は、これらのペプチドは、R5、X4、またはR5X4共受容体を用いる、異なるサブタイプを代表する、広い範囲のHIV−1株を有効に阻害したことを示す。NYAD−201およびそのアナログは、実験室株を低μMの効力で(IC50〜2−8μM)阻害し、そしてR5およびX4向性ウイルスの両方を、同様の効力で阻害した。1つのX4向性RT抵抗性(AZT−R)、および1つのPR抵抗性株も、MT−2細胞において試験し、そして有意な阻害を示した。
【0092】
NYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203をまた、多様な共受容体の利用を有する、ほとんどはグループM、そして1つはグループOを代表する、PBMC中の一次HIV−1単離物のセットに対して試験した。それらは、グループOからの単離物を含む、試験した全ての一次単離物に対して阻害を示した(表3)。この多様な範囲の一次単離物に対するペプチドの阻害活性は同様であり、広い範囲のHIV−1単離物に対する有効性を示した。
【0093】
実施例5
細胞透過性ペプチドの細胞毒性
MT−2細胞およびPBMCにおけるペプチドの細胞毒性を、XTT[(ナトリウム3’−(1−(フェニルアミノ)−カルボニル)−3,4−テトラゾリウム−ビス(4−メトキシ−6−ニトロ)ベンゼンスルホン酸水和物)]法によって、以前に記載したように測定した(Jiangら、2004)。簡単には、MT−2細胞に関して、段階的な濃度の100μlのペプチドを、96ウェルプレートにおいて、等容積の細胞(1×105細胞/ml)に加え、続いて37℃で4日間インキュベートし、それをMT−2における中和化アッセイと並行して行った(ウイルスの代わりに培地を加えたことを除いて)。PBMCの場合、5×105細胞/mlを使用し、そして細胞毒性を7日後に測定した。XTT(PolySciences,Inc.)を加えた後、可溶性細胞内ホルマザンを、620nmにおける参照を用いて、4時間後に450nmにおいて比色測定で定量した。細胞毒性のパーセントおよびCC50値を、上記のように計算した(表2および表3)。
【0094】
細胞毒性アッセイを、HIV−1阻害アッセイと並行して行った。MT−2細胞およびPBMCにおけるNYAD−201およびそのアナログのCC50(50%の細胞毒性を生じるために必要な阻害剤の濃度)値を、表2および3で報告する。
【0095】
細胞毒性を、PromegaLDH漏出検出キットを用いて、Jurkat細胞においても評価した。Jurkat細胞を、200μlの容積中、104細胞/ウェルで播種した。NYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203化合物への接触の30分、2時間、および4時間後に試験を行った。NYAD−201およびNYAD−202は、あまり可溶性ではなかったにも関わらず、毒性を示さず、NYAD−203は2つのより高い用量においてより毒性であった(図6−8)。
【0096】
【表1−2】
【0097】
【表2】
実施例6
NYAD−201およびNYAD−202による処理後、感染MT−2細胞から放出されたHIV−1ウイルスの感染性
5×104/mlのMT−2細胞を、異なる濃度のステープリングされたペプチドNYAD−201およびNYAD−202の存在下で、HIV−1 IIIB(MOI=0.01)で感染させた。コントロール細胞は未処理であり、そして1μg/mlのAMD3100(CXCR−4受容体阻害剤)または500nMのネルフィナビル(NFV)(HIV−1プロテアーゼ阻害剤)で処理した。一晩インキュベートした後、培地を完全に除去し、そして新しい培地と交換した。感染後4日目に、上清を回収し、そして0.45μmのPVDF膜でろ過した。各サンプルからの上清の1つのアリコートを、p24定量のために、5%Triton X−100の溶液と1:1で混合し、そして4℃で保存し、別のアリコートをすぐに−80℃で冷凍し、そしてNYAD−201およびNYAD−202処理細胞によって放出されたウイルス粒子の感染性を、未処理細胞によって放出されたウイルス粒子と比較するために使用した。タンパク質p24を、最初にサンドイッチELISAによって定量し、次いでウイルスサンプルをp24含有量に関して基準化し、そして滴定してTCID50を計算した。MT−2細胞を、2倍希釈のNYAD−201およびNYAD−202処理および未処理細胞からのウイルスで感染させた。インキュベーション後、接種材料を含む培地の3/4を新しい培地と交換した。感染後4日目に、上清をサンドイッチELISAによるp24定量のために回収し、そしてSpearman−Karber統計学的方法によってTCID50を計算した。
【0098】
中和化実験は、NYAD−201およびNYAD−202処理MT−2細胞によるHIV−1ウイルス粒子放出の減少を示した。本発明者らの制限しない仮説は、NYAD−201およびNYAD−202は、ウイルスのアンコーティング、ウイルスのアセンブリー、および成熟を妨害し、新規に産生され、そして上清に放出されたウイルス粒子に回復不能な損傷を誘発するということである。
【0099】
これらの理由のために、上清に放出されたウイルス粒子の量だけでなく質も評価した。まず、NYAD−201およびNYAD−202処理の後、上清に放出されたp24/ウイルス粒子を定量し、次いでサンプルあたり同じ量のp24から始めて、上清に放出されたウイルスを滴定した。TCID50を計算し、そして未処理のポジティブコントロールに関して、感染性パーセントとして表した。予測したように、NFV−処理細胞によって産生されたウイルス、および2つの高用量のステープリングされたペプチドである、NYAD−201およびNYAD−202で処理した細胞によって産生されたウイルスは、感染性でなかったか、またはわずかに感染性であった(図9)。さらに、低用量のNYAD−201(6.25μg/ml)およびNYAD−202(6.25および3.13μg/ml)で処理した細胞によって産生されたウイルスのそれぞれ50%および40%のみが感染性であった。これらのデータは、NYAD−201およびNYAD−202がウイルスのアンコーティング、アセンブリー、および/またはウイルス成熟を妨害し得るという仮説を支持する。
【0100】
ウェスタンブロット
5×104/mlのMT−2細胞を、異なる濃度のステープリングされたペプチド、NYAD−201およびNYAD−202の存在下で、HIV−1 IIIB(MOI=0.01)で感染させた。コントロール細胞は未処理であり、そして1μg/mlのAMD3100で処理した。一晩インキュベートした後、培地を完全に除去し、そして新しい培地と交換した。感染後4日目に、上清をろ過し、およびSW28ローターで、27,000rpmで2時間、20%ショ糖クッションで超遠心して、ウイルス粒子を濃縮した。ウイルスのペレットをゆっくりと再懸濁し、そしてタンパク質分析のために処理した。同じ容積のウイルスタンパク質を、NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris Gel(Invitrogen)上で分離した。次いでタンパク質をウェスタンブロットによって可視化し、そしてHIV−1抗p24Gagモノクローナル抗体(NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)によって免疫検出した(図10)。
【0101】
NYAD−201およびNYAD−202処理および未処理細胞によって上清に放出されたウイルス粒子由来の、同じ量のタンパク質調製物を、抗p24mAbによって免疫検出した。図10は、NYAD−201およびNYAD−202による処理は、p24およびp55レベルの用量依存性の減少を誘発したことを示し、中和化実験によって得られたデータを確認した。これらの結果は、NYAD−201およびNYAD−202はまた、ウイルスの出芽に対して効果を有し得ることを示唆する。
【0102】
他に示さなければ、明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、分子量、反応条件等のような性質を表す全ての数は、「約」という用語によって、全ての場合において改変されると理解される。よって、そうでないことを示さない限り、明細書および添付の特許請求の範囲において述べる数字のパラメーターは、近似であり、それは本発明によって得ようとする望ましい性質に依存して変動し得る。少なくとも、そして同等物の理論の特許請求の範囲に対する適用を制限する試みとしてではなく、数字のパラメーターそれぞれは、少なくとも報告された有意な数字の数として、および通常の丸める技術を適用することによって、解釈されるべきである。広い範囲の本発明を述べる数字の範囲およびパラメーターは近似であるにも関わらず、特定の実施例において述べる数値は、できるだけ正確に報告する。しかし、あらゆる数値は、そのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差を本質的に含む。
【0103】
本発明を説明する文脈において(特に続く請求の文脈において)使用される、「a」、「an」、「the」という用語および同様の指示対象は、本明細書中で他に示さなければ、または文脈によって明らかに否定されなければ、単数および複数の両方を含むと解釈される。本明細書中における値の範囲の引用は、単にその範囲内に含まれる別々の値それぞれに個々に言及する略式の方法となることが意図される。本明細書中で他に示されなければ、各値はそれぞれ、それが本明細書中で個々に引用されたかのように、明細書中に組み込まれる。本明細書中で他に示されなければ、または他に文脈によって明らかに否定されなければ、本明細書中で記載した全ての方法を、あらゆる適当な順序で行い得る。本明細書中で提供される、あらゆるおよび全ての実施例、または代表的な言語(例えば「〜のような」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにするために意図され、そして他に請求される本発明の範囲を制限しない。明細書中の言語は、本発明の実施に必須の、請求されない要素を示すと解釈されない。
【0104】
本明細書中で開示された本発明の代替要素または実施態様のグループ分けは、制限として解釈されない。各グループのメンバーに、個々に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書中で見出される他の要素とのあらゆる組み合わせで言及または特許請求し得る。グループの1つまたはそれ以上のメンバーを、簡便さおよび/または特許性の理由で、グループに含み得る、またはグループから削除し得ることが予期される。あらゆるそのような含有または削除が起こる場合、明細書はグループを改変するように含み、従って添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカシュグループの記載されたた説明を満たすと考えられる。
【0105】
本発明を行うために、発明者らに公知の最良の方法を含む、本発明のある実施態様が本明細書中で記載される。もちろん、これらの記載された実施態様の改変が、前述の説明を読んだ時に当業者に明らかになる。発明者は、当業者がそのような改変を適当に採用することを期待し、そして発明者らは、本発明が本明細書中で明確に記載されたのとは別に実施されることを意図する。よって、本発明は、適用可能な法律によって許されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲において引用された内容の全ての改変および同等物を含む。さらに、本明細書中で他に示されなければ、または他に文脈によって明らかに否定されなければ、その全ての可能なバリエーションで、上記で記載した要素のあらゆる組み合わせが、本発明によって含まれる。
【0106】
本明細書中で開示された特定の実施態様を、〜から成る、または実質的に〜から成るという言語を用いて、請求においてさらに制限し得る。請求において使用する場合、出願時または修正のために加えたかに関わらず、移行の用語「〜から成る」は、請求によって特定されないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。移行の用語「実質的に〜から成る」は、請求の範囲を、特定された物質または工程および基本的および新規の特徴に物質的に影響を与えないものに制限する。そのように請求された本発明の実施態様は、本明細書中で本質的にまたは明白に、記載および可能にされる。
【0107】
さらに、本明細書を通じて、特許および印刷された出版物に多くの言及がなされた。上記で述べた個々の参考文献および印刷された出版物は、それぞれその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0108】
終わりに、本明細書中で開示された本発明の実施態様は、本発明の原理を説明することが理解される。採用し得る他の改変が、本発明の範囲内である。従って、例として、しかし制限としてではなく、本発明の代替の構成を、本明細書中の教示に従って利用し得る。よって、本発明は、正確に示され、そして記載されるようには制限されない。
【0109】
(項目1) 長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドであって、
ここで該アミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸であり;
ここで該非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここで該非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して該2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成し;
ここで該ペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含み;
ここで該2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換し;そして
ここで該2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0−6R2で置換され、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【0110】
【化5】
であり;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体であり;
R3はHまたはC1−C10アルキルであり;
R4はH、アルキル、または治療薬であり;および
nは1−4の整数である、
ペプチド。
(項目2) 前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンである、項目1に記載のペプチド。
(項目3) 前記非天然アミノ酸は、前記ペプチドの6番目および10番目のアミノ酸を置換する、項目1に記載のペプチド。
(項目4) 前記2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、
【0111】
【化6】
を含み、ここで(C)は該非天然アミノ酸のα炭素である、項目1に記載のペプチド。
(項目5) 配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17から成るグループから選択される配列を含む、項目1に記載のペプチド。
(項目6) 哺乳類におけるウイルス感染の処置のための組成物であって、該組成物は、ヒト免疫不全ウイルスカプシドタンパク質の少なくとも一部のアミノ酸配列を有する抗ウイルスペプチドを含み、該ペプチドは最初のアミノ酸および2番目のアミノ酸に置換を有し、ここで該ペプチドは該置換において架橋される、組成物。
(項目7) 前記最初のアミノ酸は、前記ペプチドの位置(i)に存在し、そして前記2番目のアミノ酸は、該ペプチドの位置(i+4)または(i+7)に存在する、項目6に記載の組成物。
(項目8) 前記置換は、非天然アミノ酸を含む、項目6に記載の組成物。
(項目9) 前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンおよび(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンから成るグループから選択される、項目8に記載の組成物。
(項目10) 前記ペプチドは、薬剤学的に許容可能な担体中の項目1に記載のペプチドを含む、項目6に記載の組成物。
(項目11) 細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は、該細胞において該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、該細胞を項目1に記載のペプチドに接触させる工程を含む、方法。
(項目12) 前記細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類である、項目11に従う方法。
(項目13) 前記哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することをさらに含む、項目11に従う方法。
(項目14) ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置する方法であって、該方法は、項目1に記載の組成物を、該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で該哺乳類に投与することを含む、方法。
(項目15) ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類の処置のための薬物の製造における、項目1に記載のペプチドの使用。
(項目16) 哺乳類がヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクを減少させる、該哺乳類の処置のための薬物の製造における、項目1に記載のペプチドの使用。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2008年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/050,955号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
ヒト免疫不全ウイルスの治療薬として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。
【背景技術】
【0003】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こす病原菌である。AIDS Epidemic Update(UNAIDS、2007年12月)によると、約3600万人の人が、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV)と共に生きている。最も激しく冒された地域は、サハラ以南のアフリカおよび東南アジアであるが、北アメリカ、西および中央ヨーロッパにおいて200万人以上の人々がこの疾患と共に生きている。アフリカ系アメリカ人におけるHIV感染の有意な増加が報告され、そして米国において2002年、アフリカ系アメリカ人女性の間でHIV/AIDSが死亡原因の1位であった。従って、AIDSの流行は、世界中で依然として主な健康問題である。臨床的に有用な抗HIV薬は、HIV−1の生活環における2つの重要な酵素、逆転写酵素(RT)およびプロテアーゼ(PR)を主に標的とする;しかし、別の必須の酵素、インテグラーゼを標的とした新しい薬剤が、米国食品医薬品局によって最近認可された。高度に活性な抗レトロウイルス治療(HAART)の導入は、罹患率およびHIV−1に感染した個人における死亡率の減少に有意に寄与した。しかし、多くの場合、それらの薬剤に対する抵抗性の発達が、患者が利用可能な処置オプションに対して深刻な脅威を与える。
【0004】
10年以上の集中した努力の後、HIV−1の侵入を標的としたペプチドに基づく薬剤、T−20(エンフビルチド)が開発され、そして2003年初期にFDAによって認可された。その薬剤は、高価であるが、他の利用可能な薬剤に対して非応答者である患者の処置に可能性を示した。この成功は、HIV−1生活環の重要な工程を同定し、そしてそれらをHIV−1感染の可能性のある介入のための新しい標的として使用することが重要であるという事実に対する証拠である。最近のHIVワクチン試験および殺菌剤試験の失敗の報告は、新しい種類の抗HIV−1治療薬を開発するために、より新しい標的を同定および利用する決定的な必要を確認した。
【0005】
HIV−1ゲノムは、3つの主な遺伝子、gag、pol、およびenvで構成されている。gag遺伝子は、Gagポリタンパク質、HIV−1の重要な構造タンパク質をコードし、一方polは逆転写酵素(RT)、プロテアーゼ(PR)、およびインテグラーゼ(IN)のような、HIVの生活環に必須のウイルス酵素をコードし、そしてenvはウイルスエンベロープタンパク質(Env)をコードする。HIV−1の生活環において重要な工程であるアセンブリーは一般的に、アセンブリーが起こる細胞膜に輸送される、Gagポリタンパク質の制御された重合によって起こると考えられる。次いでウイルス粒子が形成され、そして球状の未成熟な非感染性粒子として出芽する。出芽の直後、粒子は成熟として知られる過程を経る。この工程の間に、Gagタンパク質が、ウイルスプロテアーゼによって、マトリックス(MX)、カプシド(CA)、ヌクレオカプシド(NC)、およびp6ドメイン、および2つのスペーサータンパク質、SP1およびSP2に連続的に切断される。この過程は、粒子の形態に劇的な変化を引き起こし、そして円錐体のカプシドによって囲まれた高電子密度のコアが形成される。成熟カプシドの形成が、ウイルスの感染性において重要な役割を果たす。Gagは、あらゆる他のタンパク質またはウイルスRNAの非存在下で、ウイルス様粒子(VLP)を形成するために必須および十分であることが示された。これは、遺伝的アプローチによる、HIV−1アセンブリーの原因であるgagの領域の決定において、多くの続く研究を導いた。Gagにおけるアミノ酸の欠失、挿入、および置換によって得られたデータは、ウイルスアセンブリーに最も重要なGagの3つの領域を同定した。それらは、膜結合ドメインまたはMドメイン、相互作用ドメインまたはIドメイン、および後期ドメインまたはLドメインと名付けられた。
【0006】
感染ウイルス粒子の融合後の、侵入直後のイベントは、明らかには理解されていない。しかし、さらなる処理のためにウイルスの遺伝的物質を放出する、成熟ウイルスコアのアンコーティングおよび分解が、HIV−1生活環に重要であることが明らかである。Gag変異に関わる多くの研究が、GagはHIV−1生活環のこれらの初期のイベントにおいて重要な役割を果たし得ることを示した。
【0007】
HIV−1アセンブリーおよび形態形成の間に、Gagは2つの完全に異なる配置、未成熟型および成熟型に組織化する。未成熟型の場合、Gagはインタクトなままであるが、成熟型は、ウイルスプロテアーゼによって切断されたタンパク質から成る。この成熟粒子の形成が、HIV−1の感染性のために必須であり、そしてGag切断産物から得られるカプシドタンパク質が、ウイルスゲノムを囲むウイルスの円錐体のコアの形成において中心的な役割を果たす。そのカプシドタンパク質(CA、p24)は、2つのドメイン、N末端ドメイン(NTD、アミノ酸1−145)、およびC末端ドメイン(CTD、アミノ酸146−231)から成る、疎水性タンパク質である。これらの2つのドメインは、5アミノ酸のリンカーで連結しており、そしてお互い独立に折り畳まれている。未成熟粒子におけるCA−CA接触およびその相互作用の正確な性質は完全に公知ではないが、成熟粒子において、構造研究および純粋な成熟ウイルス粒子およびアセンブルされたウイルス様粒子のクリオ電子顕微鏡による画像再構成に基づいてCA格子が作られた。HIV−1カプシドは、ウイルスアセンブリー、成熟および初期の侵入後工程において重要な役割を果たす。NTDおよびCTDの両方におけるカプシドの変異は、ウイルスアセンブリーおよび放出の欠損を引き起こすことが示された。それに加えて、カプシドは、非分裂細胞において、レトロウイルス感染性の主な決定因子であることが示された。
【0008】
HIV−1カプシドのNTDは、シクロフィリン(cyclophylin)Aに結合し、そしてウイルスコアの形成に重要である;しかし、ウイルスアセンブリーおよび成熟に必須の、Gagオリゴマー形成の重要な決定因子は、カプシドのC末端ドメインに位置する。それに加えて、CTDは、主要相同性領域(MHR)として公知の、Gagの最も保存された部分を含む。この保存された領域の変異は、ウイルスアセンブリーおよび成熟に重度の欠損を引き起こす。HIV−1カプシドの単離されたCTDは、全長カプシドと同じ親和性で、溶液中で二量体を形成する。CTDの二量体化は、Gagアセンブリー、ウイルスの出芽、および成熟の主要な推進力であることが示された。CTD二量体のいくつかの構造が報告され、それは二量体界面の重要な情報を提供した。CTD単量体の界面残基の変異は、二量体の形成を破壊し、カプシドアセンブリーおよび成熟を損ない、そしてウイルスを非感染性にする。
【0009】
要約すると、カプシドがHIV−1アセンブリーおよび成熟において重要な役割を果たしており、そしてAIDS治療のための新しい世代の薬剤を開発するための可能性のある標的として認識されたことは明らかである。
【0010】
タンパク質−タンパク質相互作用が、抗原−抗体相互作用、ウイルスアセンブリー、プログラム細胞死、細胞分化およびシグナル伝達のような、ある範囲の生物学的過程において重要な役割を果たす。従って、これらの相互作用を制御することは、新規治療薬を開発する機会を提供する。しかし、ほとんどのタンパク質−タンパク質相互作用に関わる浅い結合界面および比較的大きな界面領域のために、伝統的な薬剤発見技術によってこれらの過程を阻害することは、複雑および困難であり得る。最近まで、タンパク質−タンパク質相互作用を阻害することは事実上不可能であると考えられた。しかし、この領域における最近の進歩のために、この概念は今変わりつつある。それに加えて、結晶化抗原−抗体複合体についての最近の研究が、各タンパク質パートナーからの限られた数の残基のみが、タンパク質−タンパク質相互作用の媒介に関与していることを示した。結合界面のこれらの制限された領域は、「ホットスポット」、タンパク質界面の結合自由エネルギーのほとんどを占める出っ張りおよびへこみの小さい領域として知られる。従って、阻害分子は、タンパク質−タンパク質相互作用を阻害するために、結合界面全体を覆う必要はないこと、およびこれらの「ホットスポット」を標的とすることが、タンパク質間の接触を強力に阻害し得ることが立証された。
【0011】
二量体タンパク質は、表面認識によるタンパク質−タンパク質相互作用の古典的な例を提供する。タンパク質界面の構造を活用する、タンパク質二量体化の競合的阻害剤のいくつかの例が存在する。例えば、界面ペプチドは、HIV−1インテグラーゼ、プロテアーゼ、および逆転写酵素の二量体化を阻害することが示された。しかし、その細胞透過性の欠如のために、これらのペプチドは臨床的に有用ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
ウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)に対する治療薬として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。
【0013】
1つの実施態様において、長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドが本明細書中で開示され、ここでそのアミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸である;ここでその非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここでその非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成する;ここでそのペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含む;ここで2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換する;そしてここで2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0〜6個のR2で置換される、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【0014】
【化1】
である;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体である;
R3はHまたはC1−C10アルキルである;
R4はH、アルキル、または治療薬である;および
nは1−4の整数である。
【0015】
別の実施態様において、その非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンである。別の実施態様において、非天然アミノ酸は、ペプチドの6番目および10番目のアミノ酸を置換する。
【0016】
さらに別の実施態様において、2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、
【0017】
【化2】
を含み、ここで(C)は非天然アミノ酸のα炭素である。
【0018】
別の実施態様において、そのペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17から成るグループから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
1つの実施態様において、哺乳類におけるウイルス感染の処置のための組成物が提供され、その組成物は、ヒト免疫不全ウイルスカプシドタンパク質の少なくとも一部のアミノ酸配列を有する抗ウイルスペプチドを含み、そのペプチドは最初のアミノ酸および2番目のアミノ酸に置換を有し、ここでそのペプチドはその置換において架橋される。別の実施態様において、最初のアミノ酸は、ペプチドの位置(i)に存在し、そして2番目のアミノ酸は、ペプチドの位置(i+4)または(i+7)に存在する。別の実施態様において、その置換は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンのような、非天然アミノ酸を含む。
【0020】
別の実施態様において、その組成物は、薬剤学的に許容可能な担体中にそのペプチドを含む。
【0021】
1つの実施態様において、細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法が提供され、その方法は、細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、細胞を開示されたペプチドに接触させることを含む。別の実施態様において、その細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類にある。別の実施態様において、その方法は、哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することを含む。
【0022】
1つの実施態様において、開示されたペプチドを、ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、哺乳類に投与することを含む、ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置する方法が提供される。
【0023】
別の実施態様において、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類の処置のための薬物の製造において、少なくとも1つの開示されたペプチドを使用することが、本明細書中で開示される。
【0024】
さらに別の実施態様において、哺乳類がヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクを減少させる、哺乳類の処置のための薬物の製造において、少なくとも1つの開示されたペプチドを使用することが、本明細書中で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1−1】図1は、選択されたペプチドのアミノ酸配列を示す。Z=(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニン;X=(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニン。
【図1−2】図1は、選択されたペプチドのアミノ酸配列を示す。Z=(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニン;X=(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニン。
【図2】図2は、NYAD−201およびNYAD−209の円偏光二色性(CD)スペクトルを示す。
【図3】図3は、NYAD216(図3A−3C)およびNYAD−201(図3D−3F)の細胞透過性を示す。図3Aおよび3Dは、生きた細胞の画像を表す(DIC);図3Bおよび3Dは、図3Aおよび3Cと同じ視野の蛍光画像を表す;そして図3Cおよび3Fは、それぞれ図3Aおよび3B、および3Cおよび3Dの合わせた画像を表す。
【図4】図4は、ペプチドなし(図4A)、0.25モル当量のNYAD−201ペプチド(図4B)、0.50モル当量のNYAD−201ペプチド(図4C)、1.0モル当量のNYAD−201ペプチド(図4D)、3.0モル当量のNYAD−201ペプチド(図4E)、および5.0モル当量のNYAD−201ペプチド(図4F)の存在下における、カプシド(CA)タンパク質(50μM)の電子顕微鏡(EM)画像によって証明される、NYAD−201による成熟様粒子のインビトロアセンブリーの阻害を示す。
【図5】図5は、50μMのNYAD−201の非存在下(図5A)または存在下(図5B)において産生されるHIV−1ウイルス様粒子の電子顕微鏡分析を示す。
【図6】図6は、30分の曝露後の、Jurkat細胞におけるペプチドNYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203の細胞毒性を示す。
【図7】図7は、2時間の曝露後の、Jurkat細胞におけるペプチドNYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203の細胞毒性を示す。
【図8】図8は、4時間の曝露後の、Jurkat細胞におけるペプチドNYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203の細胞毒性を示す。
【図9】図9は、NYAD−201およびNYAD−202による処理後、MT−2細胞から放出されたHIV−1ウイルスの感染性を示す。
【図10】図10は、NYAD−201およびNYAD−202によって処理したMT−2細胞の上清における、HIV−1ウイルス粒子結合タンパク質のウェスタンブロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)に対する治療薬として有用な、細胞透過性ペプチドが本明細書中で開示される。
【0027】
HIV−1アセンブリーおよび形態形成の間に、構造タンパク質であるGagは2つの完全に異なる配置である、未成熟型および成熟型に組織化する。未成熟型において、Gagはインタクトなままであるが、成熟型において、そのタンパク質はウイルスプロテアーゼによって切断される。この成熟粒子の形成が、HIV−1の感染性のために必須であり、そしてGag切断産物から得られるカプシドタンパク質が、ウイルスゲノムを囲むウイルスの円錐体のコアの形成において中心的な役割を果たす。そのカプシドタンパク質(CA、p24;配列番号1)は、2つのドメイン、すなわちN末端ドメイン(NTD、アミノ酸1〜145)、およびC末端ドメイン(CTD、アミノ酸146〜231)から成る、疎水性タンパク質である。これらの2つのドメインは、5アミノ酸のリンカーで連結しており、そしてお互い独立に折り畳まれている。未成熟粒子におけるカプシドタンパク質の接触およびその相互作用の正確な性質は完全に公知ではないが、成熟粒子において、CA格子が形作られた。NTDおよびCTDの両方における変異は、ウイルスアセンブリー、放出、および成熟の欠損を引き起こす。それに加えて、カプシドは、非分裂細胞において、レトロウイルス感染性の主な決定因子である。
【0028】
NTDはシクロフィリンAに結合し、そしてウイルスコアの形成に重要である。しかし、ウイルスアセンブリーに必須の、Gagオリゴマー形成の重要な決定因子は、CTDに位置する。それに加えて、CTDは、主要相同性領域(MHR)として公知の、Gagの最も保存された部分を含む。この保存された領域の変異は、ウイルスアセンブリーおよび成熟に重度の欠損を引き起こす。HIV−1の単離されたCTDは、全長タンパク質と同じ親和性で、溶液中で二量体を形成する。CTDの二量体化は、Gagアセンブリー、ウイルスの出芽、および成熟の主要な推進力であることが示された。CTD二量体のいくつかの異なる3次元構造が公知であり、そして二量体界面についての情報を提供した。CTD単量体の界面領域におけるアミノ酸残基の変異は、二量体の形成を破壊し、カプシドアセンブリーおよび成熟を損なわせ、そしてウイルスを非感染性にする。従って、CTD二量体は、抗HIV−1薬のための潜在的な標的である。
【0029】
HIV−1カプシドは、溶液中で低い親和性(Kd=18μM)で二量体を形成する。その二量体界面は、x線構造分析によって、CTDへリックスIIに位置していた。CTD二量体は、HIV−1アセンブリーにおいて重要な役割を果たすので、CTD二量体のx線構造(PDBコード:1a43および1a8o)を徹底的に分析し、そして二量体界面領域における1つの単量体からの短いαヘリックス部分(aa175−195)を、CTDの1つの単量体に競合的に結合し、そしてCTDの二量体化を防止し得る抗ウイルス剤を設計するための開始点として選択した。これらの短いペプチドの最も大きな困難は、それらは通常溶液中で不定形であり、そして細胞を透過しないことである。CTD二量体の形成は細胞内で起こるので、二量体形成を妨害しようとするあらゆる可能性のある薬剤は、必然的に細胞に入らなくてはならない。従って、本発明者らは、炭化水素ステープリングがその短いペプチドのらせん構造を安定化させ、そしてそれらを細胞透過性にすることを決定した。これらのペプチドは、パートナー単量体よりも高い親和性で、界面において単量体CTDに結合し、そしてそれらはHIV−1アセンブリーおよび成熟に必要な工程である、カプシド二量体の形成を阻害する。
【0030】
炭化水素ステープリングと呼ばれる化学的アプローチは、完全なタンパク質の関係から除去した場合に、短いペプチドが、その重要な3次元構造−およびその望ましく機能する能力−を失う傾向を克服する。これは、治療薬として短いペプチドを使用することに伴う最も大きな障害の1つであり、そして医薬品リード化合物としてのその正当性を妨げてきた。この技術において、様々な長さのオレフィン側鎖を含むαメチル化アミノ酸を、ペプチド配列の(i)および(i+4)または(i+7)いずれかの位置に導入し、そして次いでオレフィンメタセシスによって環状化する。本明細書中で使用する場合、(i)は参照アミノ酸残基を指し、そして(i+x)という用語は、(i)アミノ酸からx残基のアミノ酸を指す。ペプチドを分解に対してより抵抗性にし、そしてその細胞取り込みを可能にすることによって、炭化水素ステープリングは、ペプチド治療薬のいくつかの古典的な欠点を克服する。ステープリングされたペプチドは、その天然の形を保持し、分解に対して抵抗性であり、そして細胞に入り、そして細胞においてその意図された機能を発揮し得る。
【0031】
炭化水素ステープリングは、非天然アミノ酸が、お互いに架橋し得る炭化水素を含むように、選択された位置で、非天然アミノ酸を天然アミノ酸に置き換える過程を指す。「ステープル」は、ペプチドの2次構造を制限する、非天然アミノ酸の間のつなぎを提供する。
【0032】
本開示は、細胞透過性ペプチドを含む、哺乳類においてウイルス感染を処置するための組成物に注目する。その細胞透過性ペプチドは、HIV−1ウイルスカプシドタンパク質の少なくとも1部のアミノ酸配列を含み、そのペプチドは最初のアミノ酸および2番目のアミノ酸で置換を有し、ここでそのペプチドは、その置換で架橋される。
【0033】
1つの実施態様において、長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドが本明細書中で開示され、ここでそのアミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸である;ここでその非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここでその非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成する;ここでそのペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含む;ここでその2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換する;そしてここで2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0〜6個のR2で置換される、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【0034】
【化3】
である;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体である;
R3はHまたはC1−C10アルキルである;
R4はH、アルキル、または治療薬である;および
nは1−4の整数である。
【0035】
上記の式において、アミノ酸は、「ここでそのペプチドのアミノ酸配列は〜を含む」における括弧内の文字によってのみ表されることが理解されなければならない。それらの括弧の外側のR(R1、R2、R3、およびR4)および「(R1−K−R1)」のKは、続いて規定される変数を表すことが理解され、そしてそれらの括弧の外側のH、C、Sは、それぞれ水素、炭素、および硫黄原子を表すことが理解される。
【0036】
他の実施態様において、そのペプチドは、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)のC末端またはN末端のいずれかに、さらなるアミノ酸を含む。
【0037】
開示されたペプチドはまた、αヘリックスを安定化するための公知の手順において、さらなる改変を含むことが企図される。例えば、非天然アミノ酸のメチル基を、インビトロまたはインビボにおけるそのペプチドの活性、または架橋してペプチドを安定化させ、そしてそのαらせん度を増加させる能力に影響を与えずに、別の小さい(例えばC1−C5)アルキル、アルケニル、またはアルキニルで置換され得ると考えられる。
【0038】
本明細書中で使用する場合、アミノ酸の間にスラッシュを有する括弧内の1つ以上のアミノ酸(通常の1文字アミノ酸コードを用いて)としての、本ペプチドのアミノ酸残基の命名は、示したアミノ酸またはその模倣物(明確に除外しなければ)のいずれかが、その残基を占め得ることを意味する。例えば、(I/L/V)(T/S/A/V/C)は、最初の残基はイソロイシン、ロイシン、またはバリンのいずれか1つであり得、そして2番目の残基はスレオニン、セリン、アラニン、バリン、またはシステインのいずれか1つ、または模倣物であり得ることを意味する。
【0039】
本明細書中で使用する場合、模倣物またはペプチド模倣物は、タンパク質において天然親アミノ酸を模倣し得る化合物であり、ここでペプチド模倣物の天然アミノ酸との置換は、タンパク質の活性に影響を与えない。ペプチド模倣物を含むタンパク質は、一般的にプロテアーゼの基質ではなく、そして天然タンパク質と比較してより長い時間インビボで活性である可能性が高い。それに加えて、それらはより抗原性が低く、そして全体的により高い生物学的利用能を示し得る。当業者は、あらゆる特定のペプチド(例えば、本発明のペプチド)のアミノ酸を置換し得る、ペプチド模倣物の設計および合成は、過度の実験を必要としないことを理解する。本発明のために有用な模倣物の制限しない例は、Dアミノ酸および制約されたアミノ酸(例えば、ノルロイシンまたは2−アミノイソ酪酸)を含む。ペプチド配列のアミノ酸が、αヘリックスを形成する性質を有するアミノ酸で置換され得ることも、本発明の範囲内である。
【0040】
本開示のペプチドはそれぞれ、ペプチドの安定性、反応性、および/または溶解度を増強するために、特定のアミノ酸、および/またはアミノ末端および/またはカルボキシル末端において、1つまたはそれ以上の化学基の追加を含み得る。例えば、カルボベンゾイル、ダンシル、アセチル、t−ブチルオキシカルボニル基、または9−フルオレニルメトキシカルボニル(fluorenylmethyoxycarbonyl)基のような疎水性基を、ペプチドのアミノ末端に加え得る。別の例において、疎水性基、t−ブチルオキシカルボニル、またはp−ニトロベンジルエステル基、または1〜5個のリシンのような親水性基を、ペプチドのカルボキシ末端に加え得る。そのような修飾を導入するための技術は、当業者に周知である。
【0041】
本開示のペプチドは、あらゆる薬剤学的に許容可能な塩の形態であり得る。開示化合物の酸付加塩を、ペプチドおよび過剰な酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、またはメタンスルホン酸)から、適当な溶媒中で調製し得る。これらのペプチドが酸性部分を含む場合、適当な薬剤学的に許容可能な塩は、ナトリウムまたはカリウム塩のようなアルカリ金属塩、またはカルシウムまたはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩を含み得る。アミノ末端がHであり、そしてカルボキシ末端がNH2であるペプチドの塩が好ましい。本開示の範囲はまた、遊離酸型のペプチドを含む。
【0042】
開示されたアミノ酸残基は、保存的置換を含む。例えば、保存的アミノ酸変化を行い得、それはタンパク質またはペプチドの一次配列を変化させるが、通常その機能を変化させない。保存的アミノ酸置換は、典型的には以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リシンおよびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。
【0043】
炭化水素ステープリングにおいて使用するために適当な非天然アミノ酸は、α炭素においてRまたはS立体化学のいずれかを有し、そしてここでその非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここでその非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αヘリックスの同じ側にあり、そして2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成する能力を有する。
【0044】
1つの実施態様において、2つの非天然アミノ酸の間の架橋は
【0045】
【化4】
であり、ここで(C)は非天然アミノ酸のα炭素である。
【0046】
いかなる特定のメカニズムに拘束されることなく、上記ペプチドはHIV gagタンパク質のカプシドドメインに結合し、アンコーティング、ウイルスアセンブリー、および成熟、そして従って複製を防止すると考えられる。したがって、開示されたペプチドは、あらゆるカプシドを含むウイルスに結合し、そしてその複製を阻害することが予期される。従って、好ましいペプチドは、細胞においてカプシドを含むウイルスの複製を阻害し得る。カプシドを含むウイルスの例は、HIVのような、レンチウイルスを含むレトロウイルス科;風疹ウイルスを含むトガウイルス科;エンテロウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、およびA型肝炎ウイルスのようなピコルナウイルス科;インフルエンザウイルスのようなオルトミクソウイルス科;パラミクソウイルスのようなパラミクソウイルス科;ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルスのようなヘルペスウイルス科;B型肝炎ウイルスのようなヘパドナウイルス科(Hepnaviridae);フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、ダニ媒介脳炎、黄熱、およびデング熱ウイルスのようなフラビウイルス科;SARSウイルスおよびトロウイルスを含むコロナウイルスのようなコロナウイルス科;エボラおよびマールブルグウイルスのようなフィロウイルス科;ハンタウイルスおよびアレナウイルスのようなブニヤウイルス科を含む。
【0047】
カプシドを含むウイルスは、好ましくは、レトロウイルス、例えばHIV、HTLV−1、2および3、ネコ免疫不全ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ肉腫または白血病ウイルス、またはウシ白血病ウイルスである。
【0048】
より好ましくは、そのペプチドはレンチウイルスの複製を阻害する。ある実施態様において、そのペプチドは、HIVの複製を阻害し得る。実施例は、上記で記載したペプチドが広い範囲のHIV単離物を阻害することを示すので、そのペプチドは、HIV−1およびHIV−2を含むHIVのあらゆる株を阻害し得ることが予期される(表2)。
【0049】
1つの実施態様において、NYAD−201ペプチド(配列番号4)を、NおよびC末端両方から3アミノ酸を欠失し、そして二量体界面配列(図1:EQASQEVKNWMTETLLVQNAN、配列番号2)の6(i)および10(i+4)位置における2つの天然アミノ酸を、非天然アミノ酸(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンで置換することによって産生した。4つのNおよびC末端残基(EQASおよびQNAN)も、それぞれ1つのアラニンで置換した。カプシドのCTD二量体界面のx線結晶構造に基づいて、6番目および10番目の残基を選択した(PDBコード:1a43および1a8o)。それらは二量体界面の反対側に位置する。6番目および10番目の位置のステープリング残基は、修飾ペプチドの疎水性ポケットへの結合に影響与えないことが予測される;その代わりに、ペプチドのαらせん度および細胞透過性を増強することが予測される。ペプチドNYAD−202(配列番号5)を、NYAD−201の3番目の残基をアラニンへ置換することによって得た。NYAD−201の可溶性アナログである、NYAD−203(配列番号6)も、NYAD−201のC末端に3つのリシンを加えることによって合成した。それに加えて、構造−活性相関研究(SAR)の一部として、あるアミノ酸が修飾された、特に配列のC末端にさらなるアミノ酸を追加した、およびステープリング面がC末端に向かって移動するように、さらに他のアミノ酸を移動した(NYAD−218、配列番号12)、様々なステープリングされたペプチドを合成した。その修飾を、図1で例示的なペプチドにおいて示す。
【0050】
別の実施態様において、NYAD−221(配列番号15)を、配列番号19の6(i)および13(i+7)位置において、天然アミノ酸を、それぞれ非天然アミノ酸(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンおよび(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンで置換することによって産生した。NYAD−201に関して前に記載したのと同じ原理に基づいて、6番目および13番目の残基を選択した。NYAD−222(配列番号16)を同様に作成したが、いくつかのアミノ酸を他の天然アミノ酸で置換し、そしてC末端を1つのさらなるアミノ酸で伸長した(図1)。
【0051】
【表1−1】
本開示はまた、薬剤学的に許容可能な担体中に、カプシドを含むウイルスのアンコーティング、アセンブリー、および成熟を阻害し得る、上記で記載したペプチドを含む医薬品組成物に関する。
【0052】
本発明の医薬品組成物の用量および望ましい薬剤濃度は、構想する特定の使用に依存して変動し得る。適当な用量または投与経路の決定は、当業者の知識の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効な投与量の決定のために信頼できる指標を提供する。Mardenti,J.およびChappell,W.「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」 Toxicokinetics and New Drug Development、Yacobiら編、Pergamon Press、New York 1989、42−96頁によって規定された原理に従って、有効な投与量の種間スケーリングを行い得る。本明細書中で使用される、「治療的に有効な」量という用語は、例えば感染性疾患のような疾患の特定の処置を行うために必要な量を指す。「処置」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)処置の両方を指し、ここでその目的は、標的となる病理学的状態または疾患を予防または遅らせる(軽減する)ことである。処置の必要のある人は、既に疾患を有する人、および疾患を有する傾向のある人、または疾患を予防すべき人を含む。1つの実施態様において、その疾患は存在する。別の実施態様において、細胞または個人の生命は、本明細書中で記載した方法に起因して延長される。
【0053】
上記で記載した化合物を、特定の適用のために適切なように、ヒトを含む哺乳類に対する投与のために、過度の実験無しに処方し得る。さらに、適当な組成物の用量を、標準的な用量−反応プロトコールを用いて、過度の実験無しに決定し得る。
【0054】
よって、経口、鼻腔内、舌、舌下、頬側、および口腔内投与のためにデザインした組成物を、例えば不活性な希釈剤、または薬剤学的に許容可能な担体と共に、当該分野において周知の手段によって、過度の実験無しに作成し得る。その組成物を、ゼラチンカプセルに封入する、または錠剤に圧縮する。経口治療投与の目的のために、その医薬品組成物を、賦形剤と共に組み込み、そして錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガム等の形態で使用し得る。「薬剤学的に許容可能な担体」は、あらゆる標準的な医薬品担体を意味する。適当な担体の例は、当該分野において周知であり、そしてリン酸緩衝化生理食塩水溶液、Polysorb80を含むリン酸緩衝化生理食塩水、水、水中油型エマルジョンのようなエマジション、および様々な型の湿潤剤のような、あらゆる標準的な医薬品担体を含み得るがこれらに限らない。他の担体はまた、滅菌溶液、錠剤、コーティングされた錠剤、およびカプセルを含み得る。典型的には、そのような担体は、デンプン、乳、糖、特定の型の粘土、ゼラチン、ステアリン酸またはその塩、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、タルク、植物性脂肪または油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤のような、賦形剤を含む。そのような担体はまた、矯味矯臭剤および着色添加物または他の成分を含み得る。そのような担体を含む組成物を、周知の従来の方法によって処方する。
【0055】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等はまた、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、甘味料、および矯味矯臭剤を含み得る。結合剤のいくつかの例は、結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンを含む。賦形剤の例は、デンプンまたはラクトースを含む。崩壊剤のいくつかの例は、アルギン酸、コーンスターチ等を含む。潤沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カリウムを含む。流動促進剤の例は、コロイド性二酸化ケイ素である。甘味料のいくつかの例は、ショ糖、サッカリン等を含む。矯味矯臭剤の例は、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料等を含む。これらの様々な組成物を調製するのに使用した材料は、薬剤学的に純粋であり、そして使用する量で無毒性であるべきである。
【0056】
例えば静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または皮下注射でのように、化合物を容易に非経口投与し得る。非経口投与を、化合物を溶液または懸濁液に組み込むことによって達成し得る。そのような溶液または懸濁液はまた、注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒のような、滅菌希釈剤を含み得る。非経口処方はまた、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤、およびEDTAのようなキレート化剤を含み得る。酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような浸透圧を調節するための薬剤も加えられ得る。非経口調製物を、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスまたはプラスチックでできた複数回投与バイアルに封入し得る。
【0057】
直腸内投与は、医薬品組成物中で、化合物を直腸または大腸に投与することを含む。これを、坐剤、浣腸、ゲル、クリーム、錠剤等を用いて達成し得る。坐剤処方物は、当該分野で公知の方法によって容易に作成され得る。同様に、坐剤、ゲル、圧注、クリーム、錠剤、リング等を含む膣内投与形態も処方され得る。その組成物を、例えば坐剤の形態で、直腸内または膣内投与のために意図し得、それは直腸内で溶解し、そして薬剤を放出する。直腸内または膣内投与のための組成物は、適当な非刺激性賦形剤として油性基剤を含み得る。そのような基剤は、制限無しに、ラノリン、カカオバター、およびポリエチレングリコールを含む。低融点ワックスが、坐剤の調製に好ましく、ここで脂肪酸グリセリドおよび/またはカカオバターの混合物が適当なワックスである。そのワックスは溶解し得、そして撹拌によってシクロヘキシルアミン化合物をそこに均一に分散する。溶解した均一な混合物を次いで簡便なサイズの型に注ぎ、冷却し、そしてそれによって凝固させる。
【0058】
局所投与のために意図された開示組成物は、溶液、エマルジョン、軟膏、クリーム、またはゲル基剤を適当に含み得る。例えば、その基剤は、1つまたはそれ以上の以下のものを含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、水およびアルコールのような希釈剤、および乳化剤および安定剤。局所投与のための医薬品組成物中に、増粘剤が存在し得る。
【0059】
経皮投与は、皮膚を通した組成物の経皮的吸収を含む。経皮処方は、パッチ、イオン導入装置、軟膏、クリーム、ゲル、膏薬等を含む。
【0060】
上記組成物は、固体または液体投与単位の物理的形態を改変する、様々な物質を含み得る。例えば、その組成物は、活性成分の周りにコーティングシェルを形成する物質を含み得る。コーティングシェルを形成する物質は、典型的には不活性であり、そして例えば糖、セラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択し得る。あるいは、その活性成分を、ゼラチンカプセルまたはカシェ剤中に包み得る。
【0061】
上記開示はさらに、細胞においてカプシドを含むウイルスの複製を阻害する方法に関する。その方法は、細胞においてカプシドを含むウイルスの複製を阻害するために十分な方法で、細胞を、カプシドを含むウイルスを阻害し得る上記で記載したペプチドと接触させることを含む。
【0062】
これらの方法は、あらゆるカプシドを含むウイルスに有用である。好ましくは、そのウイルスはレトロウイルスであり、より好ましくはレンチウイルスであり、そして最も好ましくはHIVである。
【0063】
カプシドを含むウイルスに感染した、あらゆる原核細胞、真核細胞、または古細菌細胞を、本発明のペプチドで処置し得る。上記方法は、培養中の(例えば実施例におけるように)、または好ましくは、あらゆる植物または動物を含む生きた多細胞生物中の細胞を利用し得る。より好ましくは、その細胞は、カプシドを含むウイルスで感染した、生きた脊椎動物の部分である。さらにより好ましくは、その細胞は、カプシドを含むウイルスで感染した哺乳類中にある。さらにより好ましくは、その哺乳類はヒトであり、最も好ましくはHIVに感染している。
【0064】
ウイルスが生きた哺乳類中にある場合、本方法を、少なくとも1つの他の抗ウイルス治療、例えばHIVに対して使用されるあらゆる抗ウイルス治療またはその組み合わせと組み合わせて使用し得ることが企図される。
【0065】
上記開示はさらに、カプシドを含むウイルスに感染した哺乳類を処置する方法に関する。その方法は、哺乳類を処置するために十分な方法で、上記で記載した医薬品組成物を哺乳類へ投与することを含む。好ましくは、その哺乳類はヒトである。
【0066】
これらの方法のいくつかの適用は、ウイルスに感染した母親を有する子宮中の胎児を処置して、ウイルスを子宮内の胎児へ、または分娩中に乳児へ伝達するリスクを減少させることを含む。
【0067】
本方法を、少なくとも1つの他の抗ウイルス処置、例えばHIVに対して使用されるあらゆる抗ウイルス処置、またはその組み合わせ、またはワクチン接種を含むあらゆる予防的抗ウイルス処置と組み合わせて使用し得ることも企図される。
【0068】
さらに、上記開示は、あらゆる上記で記載したペプチドを作成する方法に関する。その方法は、アミノ酸を連続的に結合すること、次いで非天然アミノ酸の2つのオレフィン基を、オレフィンメタセシスを用いて結合することを含む。これらの方法が、例えば米国特許出願公開2006/0008848A1およびPCT特許出願公開WO2005/044839A2において記載され、それらはどちらもペプチドの炭化水素ステープリングに関してそれらが開示する全てに関して、本明細書中で参考文献に組み込まれる。好ましくは、そのアミノ酸を、固相合成を用いて結合する。
【0069】
カプシドを含むウイルスに感染した哺乳類を処置するための薬物の製造のために、カプシドを含むウイルスのアンコーティング、アセンブリー、および成熟を阻害する、上記で記載したペプチドのいずれかを使用することにも関する。さらに、哺乳類がカプシドを含むウイルスに感染するリスクを減少させるために哺乳類を処置するための薬物の製造のために、カプシドを含むウイルスのアセンブリーを阻害し得る、上記で記載したペプチドのいずれかを使用すること。
【0070】
また、上記開示は、カプシドを含むウイルスに感染した哺乳類を処置するための、上記で記載した医薬品組成物の使用に関する。その開示はさらに、カプシドを含むウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置するための、上記で記載した組成物の使用に関する。
【0071】
本開示の組成物を、治療的に有効な量で、適当な投与レジメンに従って投与し得る。当業者によって理解されるように、必要な正確な量は、患者の種、年齢、および全身の状態、感染の重症度、特定の薬剤および投与方法に依存して、患者ごとに異なり得る。いくつかの実施態様において、患者の体重に基づいて、約0.001mg/kgから約50mg/kgの組成物を、1日1回またはそれ以上投与して、望ましい治療的効果を得る。他の実施態様において、患者の体重に基づいて、約1mg/kgから約25mg/kgの組成物を、1日1回またはそれ以上投与して、望ましい治療的効果を得る。
【0072】
組成物の合計1日投与量を、主治医が、適切な医学的判断の範囲内で決定する。あらゆる特定の患者または対象のために特異的な治療的に有効な投与量レベルは、処置する疾患およびその疾患の重症度、採用した特定の化合物の活性、採用した特定の組成物、患者または対象の年齢、体重、全身の健康、性別および食事、投与の時間、投与経路、および採用した特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いた特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用する薬剤、および医学的分野において周知の他の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0073】
開示された組成物をまた、併用療法において採用し得る。すなわち、現在開示されている組成物を、1つまたはそれ以上の他の望ましい組成物、治療薬、治療または医学的手順と同時に、それの前に、またはそれに続いて投与し得る。投与する処置の特定の組み合わせを、主治医が決定し、そして治療の適合性および達成される望ましい治療的効果を考慮する。組み合わせて利用する治療的に活性な薬剤を、単一の組成物、治療、または手順において共に投与し得る、またはあるいは、別々に投与し得る。
【0074】
例えば、開示された組成物を、例えば1つまたはそれ以上のヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、ケモカイン受容体(CXCR4、CCR5)阻害剤、および/またはヒドロキシウレアを含むがこれに限らない、1つまたはそれ以上の他のHIV阻害剤と組み合わせて投与し得る。
【0075】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、アバカビル(ABC;Ziagen(登録商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン(ddI);Videx(登録商標))、ラミブジン(3TC;Epivir(登録商標))、スタブジン(d4T;Zerit(登録商標)、ZeritXR(登録商標))、ザルシタビン(ジデオキシシチジン(ddC);Hivid(登録商標))、ジドブジン(ZDV、以前はアジドチミジン(AZT)として公知であった;Retrovir(登録商標))、アバカビル、ジドブジン、およびラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジドブジンおよびラミブジン(Combivir(登録商標))、およびエムトリシタビン(Emtriva(登録商標))を含むがこれに限らない。ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤は、フマル酸テノホビルジソプロキシル(Viread(登録商標))を含む。HIVのための非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ネビラピン(Viramune(登録商標))、メシル酸デラビルジン(Rescriptor(登録商標))、およびエファビレンツ(Sustiva(登録商標))を含むがこれに限らない。
【0076】
プロテアーゼ阻害剤(PI)は、アンプレナビル(Agenerase(登録商標))、メシル酸サキナビル(Fortovase(登録商標)、Invirase(登録商標))、リトナビル(Norvir(登録商標))、硫酸インジナビル(Crixivan(登録商標))、メシル酸ネルフィナビル(nelfmavir)(Viracept(登録商標))、ロピナビルおよびリトナビル(Kaletra(登録商標))、アタザナビル(Reyataz(登録商標))、およびホスアンプレナビル(Lexiva(登録商標))を含む。アタザナビルおよびホスアンプレナビル(Lexiva)は、最近米国食品医薬品局(FDA)によって、HIV−1感染の処置のために認可された、新しいプロテアーゼ阻害剤である(atazanavir(Reyataz) and emtricitabine(Emtriva) for HIV infection、Medical Letter on Drugs and Therapeutics、www.medletter.comからオンラインで入手可能;U.S. Department of Health and Human Services(2003)、Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV−infected Adults and Adolescents;aidsinfo.nih.gov/guidelinesからオンラインで入手可能、を参照のこと)。
【0077】
融合/侵入阻害剤は、CD4+細胞(ある型の白血球)の外側またはCCR5およびCXCR4のような共受容体、またはgp41およびgp120のようなウイルス膜タンパク質に結合する。融合/侵入阻害剤は、ウイルスおよび細胞間の融合が起こること、またはウイルスの細胞への侵入を防ぎ、そして従って、HIV感染および複製を防止する。融合/侵入阻害剤は、エンフビルチド(Fuzeon(登録商標))、Lalezariら、New England J.Med.、348:2175−2185(2003);およびマラビロク(Selzentry(登録商標)、Pfizer)を含むがこれに限らない。
【0078】
インテグラーゼ阻害剤は、インテグラーゼの作用を阻害し、HIV−1遺伝物質が宿主DNAに組み込まれるのを防ぎ、そしてそれによってウイルスの複製を停止させる。インテグラーゼ阻害剤は、ラルテグラビル(Isentress(登録商標)、Merck);およびエルビテグラビル(GS9137、Gilead Sciences)を含むがこれに限らない。
【0079】
あるいはまたはさらに、本明細書中で開示された組成物を、1つまたはそれ以上の抗感染性薬剤(例えば抗生物質等)、鎮痛薬、または1つまたはそれ以上の疾患、障害、または免疫無防備状態の個人においてよく見られるが、HIVによって直接引き起こされるのではない状態の症状に取り組むために意図された他の薬剤と組み合わせて投与し得る。
【実施例】
【0080】
実施例1
ステープリングされたペプチドの合成
(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンおよび(R)−Fmoc−2−(2’−オクテニル)アラニンの不斉合成を、Ala−Ni(II)−BPB−複合体法によって行った。NYAD−201(D−201としても公知である)を、位置1のアミノ酸セリンおよび位置15のグルタミンを、アラニンで置換すること、および配列の6(i)および10(i+4)位置の2つの天然アミノ酸を、非天然アミノ酸(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンで置換することによって、二量体界面配列(図1:EQASQEVKNWMTETLLVQNAN、配列番号2)から得て(NYAD−201、配列番号4)、そして下記で記載した方法に従って合成した。上記配列の6番目および10番目の残基を選択する原理は、カプシドの二量体CTDのx−線結晶構造に基づいた。NYAD−201のもとの配列は、カプシドにおいてらせん状構造をとる。さらなる構造解析は、残基6(N)および10(E)が、二量体界面の反対側に位置することを明らかにした。これらの位置におけるステープリング残基は、修飾ペプチドの二量体界面への結合に影響を与えない;実際、それはペプチドのαらせん度および細胞透過性を増強し得る。NYAD−202(D−202としても公知である)(配列番号5)を、配列番号4の3番目のアミノ酸を、アラニンと置換すること、およびNYAD−201と同じ位置でステープリングすることによってデザインした。NYAD−201の可溶性アナログ、NYAD−203(D−203としても公知である)(配列番号6)を、NYAD−202のC末端に3つのリシンを加えることによってデザインした(図1)。NYAD−221(配列番号15)およびNYAD−222(配列番号16)を、6(i)および13(i+7)位置の2つの天然アミノ酸を、2つの非天然アミノ酸、(R)−Fmoc−2−(2’−オクテニル)アラニンおよび(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンでそれぞれ置換することによってデザインした。これらのペプチドを、RinkアミドMBHA樹脂(0.33mmol/g)を用いて、Fmoc固相合成によって、手作業で合成した。正常アミノ酸に関して、その結合を4倍過剰のアミノ酸によって行った。Fmocアミノ酸を、Fmocアミノ酸:HBTU:HOBt:DIEAの1:1:1:2の比を用いて活性化した。(S)−Fmoc−2−(2’−ペンテニル)アラニンに関して、その結合を2倍過剰のアミノ酸によって行い、それをDIC:HOAt(1:1)によって活性化した。ペプチドオレフィンメタセシスに関して、N末端をFmocグループによって保護したペプチド樹脂を、室温で2時間、Grubbs触媒、二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)(10mM)を含む脱気した1,2−ジクロロエタンで処理し、そしてその反応を完了のために1度繰り返した。脱Fmoc後、樹脂に結合したペプチドを、標準的なプロトコール(95%TFA、2.5%水、2.5%TIS)を用いて切断した。切断したペプチドを、0.1%(v/v)TFA/水および0.1%(v/v)TFA/アセトニトリルを用いたRP−HPLCによって精製し、そしてその純度および質量を、質量分析によって確認した。
【0081】
NYAD−201およびNYAD−209(配列番第3)の円偏光二色性(CD)スペクトルを、250μMの最終濃度で、15%(vol/vol)アセトニトリルの存在下で、Tris−HCl緩衝液(20mMTris、pH8.0)中、標準的な測定パラメーターを用いて、20℃で、Jasco J−715 円二色性分散計imeter(Jasco Inc,日本)で得た。全てのサンプルにおいて、ペプチドおよび塩の最終濃度は常に同じであり、そしてスペクトルを、適当な参照溶媒のCDスペクトルを引くことによって補正した。
【0082】
円偏光二色性を用いて、溶液中の非複合体状態において、NYAD−201およびその直線状アナログである、NYAD−209の二次構造を特徴付けた。NYAD−201のCDスペクトルは、222および208nm両方における区別できる最小値(αらせん状構造を示す)を示した(図2)。炭化水素ステープリングしたペプチドは、溶液中でαらせん状態を好む。しかし、直線状ペプチドである、NYAD−209はそのような区別できる最小値を示さない;従って、このペプチドは、溶液中でαらせん構造として存在しない。
【0083】
実施例2
NYAD−201の細胞透過性の評価
共焦点顕微鏡研究を行って、拘束されたステープリングペプチドである、NYAD−201は、細胞膜を透過し、そして細胞によって取り込まれるが、一方NYAD−209と呼ばれる直線状アナログは透過しないことを示した。
【0084】
2つの型の細胞、293T(ヒト胎児腎臓293細胞)およびMT2(ヒトリンパ球系細胞)を、4ウェルのチャンバープレートに播種し、そして血清を含まない培地中で4時間、または/および血清を含む完全培地中でさらに16時間、上で記載したFITC結合ペプチド(FITC誘導体化NYAD−209をNYAD−216とする、図1を参照のこと)とインキュベートした。1×PBSで3回洗浄した後、生きた細胞を調査し、そして共焦点顕微鏡(Zeiss)下で画像化した。図3に示すように、NYAD−201は細胞膜を透過し、そして細胞によって取り込まれたが、直線状ペプチド(NYAD−209)は透過しなかった。
【0085】
実施例3
インビトロアセンブリーの阻害を研究するための電子顕微鏡
細胞非含有系、および細胞ベースの系の両方において、インビトロアセンブリーを研究した。細胞非含有系を、少し改変して、以前に記載したように設定した(Husebyら、J Biol Chem 280:17664−17670、2005;Ganser−Pornillosら、J Virol 78:2545−2552、2004;およびGrossら、Eur J Biochem 249:592−600、1997)。50ミリモル濃度ののNa2HPO4、pH8.0を、透析緩衝液として使用した。アセンブリー研究のために使用した緩衝液も、1.2MのNaClを含み、そして500−Da−MWCO透析チューブ(Spectra/Por)を、ペプチドの透析のために使用した。簡単には、ストックタンパク質を、pH8.0のNa2HPO4緩衝液中で、適当な濃度(CAタンパク質に関して50μM)に調整した。様々な用量のNYAD−201と、4℃で30分間インキュベートした後、サンプルを、1.2MのNaClを含むpH8.0のNa2HPO4緩衝液中で、4℃で一晩透析した。アセンブリーを確認するために、ネガティブ染色を使用した。炭素被覆銅格子(200メッシュサイズ;EM Sciences)を、20μlのポリ−L−リシン(1mg/ml;Sigma)で2分間処理した。20マイクロリットルの反応溶液を、格子上に2分間置いた。次いで点状の格子を、30μlの酢酸ウラニル溶液で2分間染色した。過剰な染色を除去し、そして格子を空気乾燥させた。標本を、Philips EM410電子顕微鏡で調査した。
【0086】
精製CAタンパク質が発現し、そして管状の粒子を得た(図4)。NYAD−201による処理は、成熟様粒子の用量依存性の破壊を引き起こした。0.25および0.5倍モル当量のNYAD−201とインキュベーションした後、管状粒子の完全性は大きく損傷した(図4)。1、3および5倍モル当量のNYAD−201とインキュベーションした後、管状粒子のアセンブリーは完全に阻害された(図4)。
【0087】
細胞ベースの系において、ウイルス様粒子(VLP)の放出および形態に対するNYAD−201の影響を、Gag−Polをコードするプラスミドによるトランスフェクションの1日後に電子顕微鏡によって分析した。トランスフェクションの前日、6ウェルプレートに、ウェルあたり40000個の293T細胞を播種した。トランスフェクションの4時間後、細胞を2回洗浄し、そしてさらに20時間、異なる濃度のNYAD−201の存在または非存在下で、完全培地と共にインキュベートした。次いで細胞を、100mMのカコジル酸ナトリウム中3%のグルタルアルデヒド中で1時間固定し、そして100mMのカコジル酸ナトリウム中1%のOsO4中でさらに1時間、後固定した。次いで標本を、段階的な一連のエタノール溶液によって脱水し、そしてEPON培地に包埋した。酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛による染色後、超薄切片を、Philips EM410電子顕微鏡下で、80Kvで調査した。
【0088】
Gag−Pol発現ベクターでトランスフェクトした、未処理の細胞の場合、高電子密度のコア構造を含む多数の成熟粒子が見出された(図5)。Gag−Pol発現細胞を50μMのNYAD−201で処理した場合、高電子密度のコア構造の形成は、著しく阻害された(図5)。これらのデータは、NYAD−201はカプシドを標的とし、そしてGag−Pol発現細胞において、適切な粒子アセンブリーおよび成熟を損傷することを確認する。
【0089】
実施例4
HIV−1感染性の阻害
NYAD−201、および関連するステープリングされたペプチドの、実験室適応HIV−1株による感染に対する阻害活性を、少し改変して、以前に記載したように決定した(Jiangら、J Exp.Med 174:1557−1563、1991)。アジドチミジン(AZT)を、感染性アッセイにおけるポジティブコントロールとして使用した。簡単には、1×104のMT−2細胞を、段階的な濃度のペプチドの存在または非存在下で一晩、10%のFBSを含む200μlのRPMI1640培地中で、100TCID50(50%組織培養感染用量)(0.01MOI[感染多重度])でHIV−1に感染させた。次いで培養上清を除去し、そして新しく調製した試験ペプチドを含む新しい培地を加えた。感染後4日目に、100μlの培養上清を各ウェルから回収し、等容積の5%TritonX−100と混合し、そしてELISAによってp24抗原に関して試験した。
【0090】
一次HIV−1単離物による感染に対するペプチドの阻害活性を、以前に記載したように決定した(Jiangら、Antimicrob.Agents Chemother.48:4349−4359、2004)。末梢血単核球(PBMC)を、Histopaque−1077(Sigma−Aldrich)を用いて、標準的な密度勾配遠心によって、New York Blood Centerにおいて、健康なドナーの血液から単離した。その細胞を37℃で2時間培養した。非接着細胞を回収し、そして10%のFBS、5μg/mlのPHA、および100U/mlのIL−2(Sigma−Aldrich)を含むRPMI−1640培地1mlあたり5×106細胞で再懸濁し、続いて37℃で3日間インキュベートした。段階的な濃度のペプチド阻害剤の非存在または存在下で、PHA刺激細胞(5×104細胞/ウェル)に、500TCID50(0.01MOI)で、一次HIV−1単離物を感染させた。培地を3日ごとに交換し、そして新しく調製した阻害剤を含む新しい培地と交換した。感染の7日後に上清を回収し、そしてELISAによってp24抗原に関して試験した(図6)。p24産生の阻害パーセント、IC50およびIC90値を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software Inc.)によって計算した。
【0091】
NYAD−201は、細胞非含有系、および細胞ベースの系において、成熟様粒子のアセンブリーの阻害を示したので、NYAD−201および関連するステープリングされたペプチドを、HIV−1 IIIB株を用いた、細胞に基づくアッセイにおいて、抗HIV−1活性に関して試験した(表2)。それに加えて、NYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203をまた、それぞれMT−2細胞およびPBMC(末梢血単核球)において、いくつかの実験室適応単離物および一次単離物を用いて試験した。NYAD−201およびそのアナログによる、MT−2細胞におけるp24産生の阻害を、ある範囲の濃度にわたって測定し、そしてp24産生の50%を阻害するために必要な濃度(IC50)を計算した。表2および3の結果は、これらのペプチドは、R5、X4、またはR5X4共受容体を用いる、異なるサブタイプを代表する、広い範囲のHIV−1株を有効に阻害したことを示す。NYAD−201およびそのアナログは、実験室株を低μMの効力で(IC50〜2−8μM)阻害し、そしてR5およびX4向性ウイルスの両方を、同様の効力で阻害した。1つのX4向性RT抵抗性(AZT−R)、および1つのPR抵抗性株も、MT−2細胞において試験し、そして有意な阻害を示した。
【0092】
NYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203をまた、多様な共受容体の利用を有する、ほとんどはグループM、そして1つはグループOを代表する、PBMC中の一次HIV−1単離物のセットに対して試験した。それらは、グループOからの単離物を含む、試験した全ての一次単離物に対して阻害を示した(表3)。この多様な範囲の一次単離物に対するペプチドの阻害活性は同様であり、広い範囲のHIV−1単離物に対する有効性を示した。
【0093】
実施例5
細胞透過性ペプチドの細胞毒性
MT−2細胞およびPBMCにおけるペプチドの細胞毒性を、XTT[(ナトリウム3’−(1−(フェニルアミノ)−カルボニル)−3,4−テトラゾリウム−ビス(4−メトキシ−6−ニトロ)ベンゼンスルホン酸水和物)]法によって、以前に記載したように測定した(Jiangら、2004)。簡単には、MT−2細胞に関して、段階的な濃度の100μlのペプチドを、96ウェルプレートにおいて、等容積の細胞(1×105細胞/ml)に加え、続いて37℃で4日間インキュベートし、それをMT−2における中和化アッセイと並行して行った(ウイルスの代わりに培地を加えたことを除いて)。PBMCの場合、5×105細胞/mlを使用し、そして細胞毒性を7日後に測定した。XTT(PolySciences,Inc.)を加えた後、可溶性細胞内ホルマザンを、620nmにおける参照を用いて、4時間後に450nmにおいて比色測定で定量した。細胞毒性のパーセントおよびCC50値を、上記のように計算した(表2および表3)。
【0094】
細胞毒性アッセイを、HIV−1阻害アッセイと並行して行った。MT−2細胞およびPBMCにおけるNYAD−201およびそのアナログのCC50(50%の細胞毒性を生じるために必要な阻害剤の濃度)値を、表2および3で報告する。
【0095】
細胞毒性を、PromegaLDH漏出検出キットを用いて、Jurkat細胞においても評価した。Jurkat細胞を、200μlの容積中、104細胞/ウェルで播種した。NYAD−201、NYAD−202、およびNYAD−203化合物への接触の30分、2時間、および4時間後に試験を行った。NYAD−201およびNYAD−202は、あまり可溶性ではなかったにも関わらず、毒性を示さず、NYAD−203は2つのより高い用量においてより毒性であった(図6−8)。
【0096】
【表1−2】
【0097】
【表2】
実施例6
NYAD−201およびNYAD−202による処理後、感染MT−2細胞から放出されたHIV−1ウイルスの感染性
5×104/mlのMT−2細胞を、異なる濃度のステープリングされたペプチドNYAD−201およびNYAD−202の存在下で、HIV−1 IIIB(MOI=0.01)で感染させた。コントロール細胞は未処理であり、そして1μg/mlのAMD3100(CXCR−4受容体阻害剤)または500nMのネルフィナビル(NFV)(HIV−1プロテアーゼ阻害剤)で処理した。一晩インキュベートした後、培地を完全に除去し、そして新しい培地と交換した。感染後4日目に、上清を回収し、そして0.45μmのPVDF膜でろ過した。各サンプルからの上清の1つのアリコートを、p24定量のために、5%Triton X−100の溶液と1:1で混合し、そして4℃で保存し、別のアリコートをすぐに−80℃で冷凍し、そしてNYAD−201およびNYAD−202処理細胞によって放出されたウイルス粒子の感染性を、未処理細胞によって放出されたウイルス粒子と比較するために使用した。タンパク質p24を、最初にサンドイッチELISAによって定量し、次いでウイルスサンプルをp24含有量に関して基準化し、そして滴定してTCID50を計算した。MT−2細胞を、2倍希釈のNYAD−201およびNYAD−202処理および未処理細胞からのウイルスで感染させた。インキュベーション後、接種材料を含む培地の3/4を新しい培地と交換した。感染後4日目に、上清をサンドイッチELISAによるp24定量のために回収し、そしてSpearman−Karber統計学的方法によってTCID50を計算した。
【0098】
中和化実験は、NYAD−201およびNYAD−202処理MT−2細胞によるHIV−1ウイルス粒子放出の減少を示した。本発明者らの制限しない仮説は、NYAD−201およびNYAD−202は、ウイルスのアンコーティング、ウイルスのアセンブリー、および成熟を妨害し、新規に産生され、そして上清に放出されたウイルス粒子に回復不能な損傷を誘発するということである。
【0099】
これらの理由のために、上清に放出されたウイルス粒子の量だけでなく質も評価した。まず、NYAD−201およびNYAD−202処理の後、上清に放出されたp24/ウイルス粒子を定量し、次いでサンプルあたり同じ量のp24から始めて、上清に放出されたウイルスを滴定した。TCID50を計算し、そして未処理のポジティブコントロールに関して、感染性パーセントとして表した。予測したように、NFV−処理細胞によって産生されたウイルス、および2つの高用量のステープリングされたペプチドである、NYAD−201およびNYAD−202で処理した細胞によって産生されたウイルスは、感染性でなかったか、またはわずかに感染性であった(図9)。さらに、低用量のNYAD−201(6.25μg/ml)およびNYAD−202(6.25および3.13μg/ml)で処理した細胞によって産生されたウイルスのそれぞれ50%および40%のみが感染性であった。これらのデータは、NYAD−201およびNYAD−202がウイルスのアンコーティング、アセンブリー、および/またはウイルス成熟を妨害し得るという仮説を支持する。
【0100】
ウェスタンブロット
5×104/mlのMT−2細胞を、異なる濃度のステープリングされたペプチド、NYAD−201およびNYAD−202の存在下で、HIV−1 IIIB(MOI=0.01)で感染させた。コントロール細胞は未処理であり、そして1μg/mlのAMD3100で処理した。一晩インキュベートした後、培地を完全に除去し、そして新しい培地と交換した。感染後4日目に、上清をろ過し、およびSW28ローターで、27,000rpmで2時間、20%ショ糖クッションで超遠心して、ウイルス粒子を濃縮した。ウイルスのペレットをゆっくりと再懸濁し、そしてタンパク質分析のために処理した。同じ容積のウイルスタンパク質を、NuPAGE Novex 4−12% Bis−Tris Gel(Invitrogen)上で分離した。次いでタンパク質をウェスタンブロットによって可視化し、そしてHIV−1抗p24Gagモノクローナル抗体(NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)によって免疫検出した(図10)。
【0101】
NYAD−201およびNYAD−202処理および未処理細胞によって上清に放出されたウイルス粒子由来の、同じ量のタンパク質調製物を、抗p24mAbによって免疫検出した。図10は、NYAD−201およびNYAD−202による処理は、p24およびp55レベルの用量依存性の減少を誘発したことを示し、中和化実験によって得られたデータを確認した。これらの結果は、NYAD−201およびNYAD−202はまた、ウイルスの出芽に対して効果を有し得ることを示唆する。
【0102】
他に示さなければ、明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、分子量、反応条件等のような性質を表す全ての数は、「約」という用語によって、全ての場合において改変されると理解される。よって、そうでないことを示さない限り、明細書および添付の特許請求の範囲において述べる数字のパラメーターは、近似であり、それは本発明によって得ようとする望ましい性質に依存して変動し得る。少なくとも、そして同等物の理論の特許請求の範囲に対する適用を制限する試みとしてではなく、数字のパラメーターそれぞれは、少なくとも報告された有意な数字の数として、および通常の丸める技術を適用することによって、解釈されるべきである。広い範囲の本発明を述べる数字の範囲およびパラメーターは近似であるにも関わらず、特定の実施例において述べる数値は、できるだけ正確に報告する。しかし、あらゆる数値は、そのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差を本質的に含む。
【0103】
本発明を説明する文脈において(特に続く請求の文脈において)使用される、「a」、「an」、「the」という用語および同様の指示対象は、本明細書中で他に示さなければ、または文脈によって明らかに否定されなければ、単数および複数の両方を含むと解釈される。本明細書中における値の範囲の引用は、単にその範囲内に含まれる別々の値それぞれに個々に言及する略式の方法となることが意図される。本明細書中で他に示されなければ、各値はそれぞれ、それが本明細書中で個々に引用されたかのように、明細書中に組み込まれる。本明細書中で他に示されなければ、または他に文脈によって明らかに否定されなければ、本明細書中で記載した全ての方法を、あらゆる適当な順序で行い得る。本明細書中で提供される、あらゆるおよび全ての実施例、または代表的な言語(例えば「〜のような」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにするために意図され、そして他に請求される本発明の範囲を制限しない。明細書中の言語は、本発明の実施に必須の、請求されない要素を示すと解釈されない。
【0104】
本明細書中で開示された本発明の代替要素または実施態様のグループ分けは、制限として解釈されない。各グループのメンバーに、個々に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書中で見出される他の要素とのあらゆる組み合わせで言及または特許請求し得る。グループの1つまたはそれ以上のメンバーを、簡便さおよび/または特許性の理由で、グループに含み得る、またはグループから削除し得ることが予期される。あらゆるそのような含有または削除が起こる場合、明細書はグループを改変するように含み、従って添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカシュグループの記載されたた説明を満たすと考えられる。
【0105】
本発明を行うために、発明者らに公知の最良の方法を含む、本発明のある実施態様が本明細書中で記載される。もちろん、これらの記載された実施態様の改変が、前述の説明を読んだ時に当業者に明らかになる。発明者は、当業者がそのような改変を適当に採用することを期待し、そして発明者らは、本発明が本明細書中で明確に記載されたのとは別に実施されることを意図する。よって、本発明は、適用可能な法律によって許されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲において引用された内容の全ての改変および同等物を含む。さらに、本明細書中で他に示されなければ、または他に文脈によって明らかに否定されなければ、その全ての可能なバリエーションで、上記で記載した要素のあらゆる組み合わせが、本発明によって含まれる。
【0106】
本明細書中で開示された特定の実施態様を、〜から成る、または実質的に〜から成るという言語を用いて、請求においてさらに制限し得る。請求において使用する場合、出願時または修正のために加えたかに関わらず、移行の用語「〜から成る」は、請求によって特定されないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。移行の用語「実質的に〜から成る」は、請求の範囲を、特定された物質または工程および基本的および新規の特徴に物質的に影響を与えないものに制限する。そのように請求された本発明の実施態様は、本明細書中で本質的にまたは明白に、記載および可能にされる。
【0107】
さらに、本明細書を通じて、特許および印刷された出版物に多くの言及がなされた。上記で述べた個々の参考文献および印刷された出版物は、それぞれその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0108】
終わりに、本明細書中で開示された本発明の実施態様は、本発明の原理を説明することが理解される。採用し得る他の改変が、本発明の範囲内である。従って、例として、しかし制限としてではなく、本発明の代替の構成を、本明細書中の教示に従って利用し得る。よって、本発明は、正確に示され、そして記載されるようには制限されない。
【0109】
(項目1) 長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドであって、
ここで該アミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸であり;
ここで該非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここで該非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して該2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成し;
ここで該ペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含み;
ここで該2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換し;そして
ここで該2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0−6R2で置換され、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【0110】
【化5】
であり;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体であり;
R3はHまたはC1−C10アルキルであり;
R4はH、アルキル、または治療薬であり;および
nは1−4の整数である、
ペプチド。
(項目2) 前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンである、項目1に記載のペプチド。
(項目3) 前記非天然アミノ酸は、前記ペプチドの6番目および10番目のアミノ酸を置換する、項目1に記載のペプチド。
(項目4) 前記2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、
【0111】
【化6】
を含み、ここで(C)は該非天然アミノ酸のα炭素である、項目1に記載のペプチド。
(項目5) 配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17から成るグループから選択される配列を含む、項目1に記載のペプチド。
(項目6) 哺乳類におけるウイルス感染の処置のための組成物であって、該組成物は、ヒト免疫不全ウイルスカプシドタンパク質の少なくとも一部のアミノ酸配列を有する抗ウイルスペプチドを含み、該ペプチドは最初のアミノ酸および2番目のアミノ酸に置換を有し、ここで該ペプチドは該置換において架橋される、組成物。
(項目7) 前記最初のアミノ酸は、前記ペプチドの位置(i)に存在し、そして前記2番目のアミノ酸は、該ペプチドの位置(i+4)または(i+7)に存在する、項目6に記載の組成物。
(項目8) 前記置換は、非天然アミノ酸を含む、項目6に記載の組成物。
(項目9) 前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンおよび(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンから成るグループから選択される、項目8に記載の組成物。
(項目10) 前記ペプチドは、薬剤学的に許容可能な担体中の項目1に記載のペプチドを含む、項目6に記載の組成物。
(項目11) 細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は、該細胞において該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、該細胞を項目1に記載のペプチドに接触させる工程を含む、方法。
(項目12) 前記細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類である、項目11に従う方法。
(項目13) 前記哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することをさらに含む、項目11に従う方法。
(項目14) ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置する方法であって、該方法は、項目1に記載の組成物を、該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で該哺乳類に投与することを含む、方法。
(項目15) ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類の処置のための薬物の製造における、項目1に記載のペプチドの使用。
(項目16) 哺乳類がヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクを減少させる、該哺乳類の処置のための薬物の製造における、項目1に記載のペプチドの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドであって、
ここで該アミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸であり;
ここで該非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここで該非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して該2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成し;
ここで該ペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含み;
ここで該2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換し;そして
ここで該2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0−6R2で置換され、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【化5】
であり;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体であり;
R3はHまたはC1−C10アルキルであり;
R4はH、アルキル、または治療薬であり;および
nは1−4の整数である、
ペプチド。
【請求項2】
前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記非天然アミノ酸は、前記ペプチドの6番目および10番目のアミノ酸を置換する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、
【化6】
を含み、ここで(C)は該非天然アミノ酸のα炭素である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17から成るグループから選択される配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
哺乳類におけるウイルス感染の処置のための組成物であって、該組成物は、請求項1に記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項7】
前記最初のアミノ酸は、前記ペプチドの位置(i)に存在し、そして前記2番目のアミノ酸は、該ペプチドの位置(i+4)または(i+7)に存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記置換は、非天然アミノ酸を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンおよび(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンから成るグループから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドは、薬剤学的に許容可能な担体中の請求項1に記載のペプチドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は、該細胞において該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、該細胞を請求項1に記載のペプチドに接触させる工程を含む、方法。
【請求項12】
前記細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類である、請求項11に従う方法。
【請求項13】
前記哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することをさらに含む、請求項11に従う方法。
【請求項14】
ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置する方法であって、該方法は、請求項1に記載の組成物を、該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で該哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項15】
ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類の処置のための薬物の製造における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項16】
哺乳類がヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクを減少させる、該哺乳類の処置のための薬物の製造における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項1】
長さが14から21アミノ酸の配列を含むペプチドであって、
ここで該アミノ酸のうち2つは、α炭素でRまたはS立体化学のいずれかを有する非天然アミノ酸であり;
ここで該非天然アミノ酸のα炭素は、メチル基およびオレフィン基を含み、ここで該非天然アミノ酸の2つのオレフィン基は、αへリックスの同じ側にあり、そして結合して該2つの非天然アミノ酸の間に架橋を形成し;
ここで該ペプチドの配列は、(Q/A)(E/A/K)(V/W)(E/K)NW(M/A)TETLL(V/K)(QAE)を含み;
ここで該2つの非天然アミノ酸は、4アミノ酸または7アミノ酸離れたあらゆる位置にあるアミノ酸の2つを置換し;そして
ここで該2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、C1−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、(R1−K−R1)nであり、それらはそれぞれ0−6R2で置換され、
ここでR1はアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、
KはO、S、SO、SO2、CO、CONR4、または
【化5】
であり;
R2はハロ、C1−C10アルキル、OR3、N(R3)2、SR3 SOR3、SO2R3、CO2R3、R3、蛍光部分または放射性同位体であり;
R3はHまたはC1−C10アルキルであり;
R4はH、アルキル、または治療薬であり;および
nは1−4の整数である、
ペプチド。
【請求項2】
前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンまたは(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記非天然アミノ酸は、前記ペプチドの6番目および10番目のアミノ酸を置換する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記2つの非天然アミノ酸の間の架橋は、
【化6】
を含み、ここで(C)は該非天然アミノ酸のα炭素である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号17から成るグループから選択される配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
哺乳類におけるウイルス感染の処置のための組成物であって、該組成物は、請求項1に記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項7】
前記最初のアミノ酸は、前記ペプチドの位置(i)に存在し、そして前記2番目のアミノ酸は、該ペプチドの位置(i+4)または(i+7)に存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記置換は、非天然アミノ酸を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記非天然アミノ酸は、(S)−α−2−(2’−ペンテニル)アラニンおよび(R)−α−2−(2’−オクテニル)アラニンから成るグループから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドは、薬剤学的に許容可能な担体中の請求項1に記載のペプチドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は、該細胞において該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で、該細胞を請求項1に記載のペプチドに接触させる工程を含む、方法。
【請求項12】
前記細胞は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類である、請求項11に従う方法。
【請求項13】
前記哺乳類を少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬で処置することをさらに含む、請求項11に従う方法。
【請求項14】
ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある哺乳類を処置する方法であって、該方法は、請求項1に記載の組成物を、該ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するのに十分な用量で該哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項15】
ヒト免疫不全ウイルスに感染した哺乳類の処置のための薬物の製造における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項16】
哺乳類がヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクを減少させる、該哺乳類の処置のための薬物の製造における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図3】
【図4】
【図10】
【図1−2】
【図2】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図3】
【図4】
【図10】
【公表番号】特表2011−522796(P2011−522796A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508615(P2011−508615)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/042913
【国際公開番号】WO2009/137532
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(509051222)ニューヨーク ブラッド センター, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/042913
【国際公開番号】WO2009/137532
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(509051222)ニューヨーク ブラッド センター, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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