説明

抗ウイルス薬の効能促進剤としての新規なアミド化合物

本発明は、CYP450阻害特性を有する、従って特定の薬剤の効能促進剤として用いるに有用である化合物に関する、即ちこれらは特定の薬剤と一緒に投与された時にそれらが示す薬物動態変数の中の少なくとも1つを向上させる能力を有する。本発明は、更に、前記化合物を特定の薬剤が示す生物学的利用能を向上させる化合物として用いることも提供する。また、本発明の化合物の製造方法および本化合物を含有して成る製薬学的組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CYP450阻害特性を有する、従って特定の薬剤の効能促進剤として用いるに有用である化合物に関する、即ちこれらは特定の薬剤と一緒に投与された時にそれらが示す薬物動態変数の中の少なくとも1つを向上させる能力を有する。本発明は、更に、前記化合物を特定の薬剤が示す生物学的利用能を向上させる化合物として用いることも提供する。また、本発明の化合物の製造方法および本化合物を含有して成る製薬学的組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
ある種のHIVプロテアーゼ阻害剤(PI)および非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)を包含する様々な薬剤はシトクロムP450系によって代謝を受ける。シトクロムP450系は肝臓および腸の中に存在する群の酵素であり、それらは人の体内で数多くの機能を果たす。シトクロムP450が示す活性は個体間および集団間で異なる。遺伝的変異が起こるとそれが小さくても様々な個々の酵素が発現する様式、従って当該薬剤が代謝を受ける速度が影響を受け得る。個々の遺伝子から生じたシトクロムP450酵素はアイソフォームと呼ばれる。アイソフォームは、それらが示す化学的構成の類似性を基にファミリーおよびサブファミリーに細分される。酵素変異体は、これらの化学的および遺伝的構造を示す番号付けおよび標記システムで記述される。
【0003】
シトクロムP450、即ちサブファミリーIIIA(ニフェジピンオキシダーゼ)、ポリペプチド4(またCYP3A4とも呼ばれる)は、薬剤および他の物質の分解および除去で用いられる1つの特別な代謝経路である。ある薬剤がシトクロムP450系による代謝を受けると結果としてしばしば前記薬剤が示す薬物動態が好ましくなくなることで投薬頻度および投薬量を最も好ましい頻度および量よりも高くする必要がある。そのような薬剤をシトクロムP450系による代謝を阻害する作用剤と一緒に投与すると前記薬剤が示す薬物動態が向上する可能性がある。これに関して、特定の薬剤が示す薬物動態を向上させる方法は公開されている(例えば特許文献1、非特許文献1などを参照)。
【0004】
ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラニル含有HIVプロテアーゼ阻害剤が示す薬物動態を向上させる方法が特許文献2に開示されており、その方法は、それを必要としている人に治療的に有効な量のヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラニル含有HIVプロテアーゼ阻害剤と治療的に有効な量のシトクロムP450阻害剤の組み合わせを投与することを含んで成る。
【0005】
臨床的治療で用いられる大部分のHIVプロテアーゼ阻害剤は、現在、接触度合を向上させて臨床的効力を促進させる目的でリトナビルと一緒に用いられる。この種類に当てはまる薬剤−薬剤相互作用は「効能促進」と呼ばれる。効能促進は、また、毎日服用するピルの負担および頻度を低くすることで現在のPIの治療計画を簡潔にするにも役立つ。
【0006】
不幸なことには、リトナビルによってPI療法を促進させると、それの投薬量が低くても危険を伴う。リトナビルはそれ自身がHIVプロテアーゼ阻害剤である。リトナビルに対する耐性は数種の耐性突然変異の中の1つ以上が選択されることに関連している。リトナビルによって選択された耐性突然変異によってしばしば他のプロテアーゼ阻害剤に対する耐性が生じるか或はそれがそのような耐性の一因になる。様々な突然変異は様々な薬剤に対する交差耐性と関連している。例えば、M461はインジナビル、ネルフィナビルおよびフォサムプレナビルに対する交差耐性(サキナビルに対してではなく)に関連しており、V82A、F、T、Sは単独でインジナビルに対する交差耐性に関連しているが、他
の突然変異と組み合わさると、また、ネルフィナビル、フォサムプレナビルおよびサキナビルに対する耐性も生じさせ、そしてI84Vは使用可能なあらゆるプロテアーゼ阻害剤に対する耐性の一因になる。ロピナビルに対する完全な耐性に関連しているのはそのような突然変異の中の1つのみではなく、各々が部分的耐性の一因になっていて、存在する数種の突然変異が一緒になって耐性を生じさせている可能性がある。リトナビルに対する耐性が存在する状況ではインジナビルへの反応は起こらない可能性がある。
【0007】
このように、抗HIV治療を有効かつ安全に行うには効能促進剤としてのリトナビルの代わりになる薬剤が医学的に非常に必要とされている。また、抗HIV治療を有効かつ安全に行うには効能促進剤としてのリトナビルの代わりになりかつ耐性が生じる可能性のない代替効能促進剤も医学的に非常に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,037,157号
【特許文献2】WO03/049746
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D.E.Kempf他、Antimicrob.Agents Chemother.、41、654−660頁(1997)
【発明の概要】
【0010】
本発明に従い、ここに、下記の式(I)で表される化合物がCYP450阻害特性を有することで効能促進剤として用いるに有用であることを見いだした。そのような化合物は、式
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、
は、5−チアゾリルまたは3−ピリジニルであり、
は、イソブチル、2,2−ジメチルプロピル、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピルまたはシクロヘキシルメチルであり、
は、場合により1個以上のハロゲン、トリフルオロメチル、C1−6−アルキルまたはC1−6−アルコキシ(場合により前記アルコキシ基の中の2個が互いに連結して5員もしくは6員環を形成していてもよい)で置換されていてもよいフェニル;ヘテロアリール;場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいC3−7−シクロアルキル;場合によりヘテロアリールで置換されていてもよいC1−6−アルキル;−O−CH−(ヘテロアリール)である]
で表される化合物、これらの塩および立体異性体形態物である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適な化合物は、Rが5−チアゾリルであり、RがイソブチルでありそしてRがキノキサリルである化合物である。
【0014】
最も好適な化合物は、化学名が1S−2R−{1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−[イソブチル−(キノキサリン−2−カルボニル)−アミノ]−プロピル}−カルバミン酸チアゾール−5イルメチルエステルである式(II)
【0015】
【化2】

【0016】
で表される化合物、これらの塩および立体異性体形態物である。
【0017】
上述した化合物は、これに対してHIVが耐性を示さないか或は示す耐性の度合が最小限であることを見いだし、従ってHIV阻害剤の効能促進剤としてのリトナビル(RTV)の代わりになる有用な効能促進剤である。
【0018】
また、前記化合物は他のウイルス阻害剤、例えばHCVおよび/またはRSV阻害剤などの効能促進剤としても有用であることも見いだした。前記化合物と他の薬剤、例えばHIV、HCVまたはRSV阻害剤などを組み合わせると、それによって、そのような抗ウイルス薬を単独で投与した時に比べて、感染した患者を安全かつ有効に治療することが可能になりかつ抗ウイルス薬の治療的に有効な量が低くなり得る点でそのような組み合わせは有益である。投薬量を低くすることは、毒性およびピルの負担の点で常に好ましいことであり、それらによって、それぞれ、副作用率の低下および治療受諾の向上がもたらされる。前記式(I)および(II)で表される化合物とHIV阻害剤または他のウイルス阻害剤の組み合わせは、前記組み合わせをそれを必要としている患者に投与した時にそのような抗ウイルス薬に対して相乗効果をもたらす。
【0019】
本明細書の上および以下で用いるように、特に明記しない限り、下記の定義を適用する。
【0020】
用語「置換」を本発明の化合物の定義で用いる場合にはいつでも、「置換」を用いた表現の中に記述されているか或は含まれている原子に存在していた1個以上の水素が示した基から選択される基に置き換わっていることを表すことを意味するが、但し前記原子の通常の原子価を越えないこととその置換の結果として化学的に安定な化合物、即ちそれの構造および分子同定を便利な時間に渡って有効な純度で維持する化合物がもたらされることを条件とする。そのような便利な時間は用途分野に依存するであろう。
【0021】
用語「ハロ(ゲン)」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードの総称である。
【0022】
本明細書で「C1−4アルキル」を基または基の一部として用いる場合、これは炭素原子数が1から4の直鎖もしくは分枝鎖飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピルなどを定義するものである。
【0023】
「C1−6アルキル」は、C1−4アルキル基および炭素原子数が5または6の高級同
族体、例えば1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ペンチル、2−エチル−1−ブチル、3−メチル−2−ペンチルなどを包含する。とりわけ興味の持たれるC1−6アルキルはC1−4アルキル、特にイソブチルである。
【0024】
3−7シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルの総称である。
【0025】
「ヘテロアリール」は当該技術分野で認識されており、5員もしくは6員の(縮合)芳香環を1または2個含有する単環式もしくは二環式環系を指し、前記環系は窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個含有しかつ前記ヘテロ原子は場合によりC1−6アルキルで置換されていてもよい。
【0026】
この定義で用いる分子部分のいずれかに位置する基の場所はそれが化学的に安定である限り前記部分上の如何なる場所であってもよいことを注目すべきである。
【0027】
変項の定義で用いる基には、特に明記しない限り、可能なあらゆる異性体が含まれる。例えば、ピリジルには2−ピリジル、3−ピリジルおよび4−ピリジルが含まれる。
【0028】
用語「例えば式(I)で表される化合物」、「本化合物」、「本発明の化合物」または同様な用語を本明細書の以下で用いる場合にはいつでも、それに式(I)で表される化合物およびこれの全てのサブグループ、以下の表および実施例に示す如き化合物、および前記化合物全てのプロドラッグ、立体化学異性体形態物、ラセミ混合物、エステル、付加塩、溶媒和物、第四級アミン、N−オキサイド、金属錯体および代謝産物を包含させることを意味する。1つの態様は、式(I)で表される化合物または本明細書に示すそれの全てのサブグループに加えてそれのN−オキサイド、塩ばかりでなく可能な立体異性体形態物も包含する。
【0029】
用語「HIV抗ウイルス薬1種または2種以上」および「HIV阻害剤1種または2種以上」を本明細書の以下で用いる場合にはいつでも、それらは互換的であり、この記述の文脈において同じ意味を有する。
【0030】
式(I)で表される化合物は、これらの置換基に関してキラリティー中心を含有する可能性があり、従って、立体化学異性体形態物として存在する可能性がある。本明細書で用いる如き用語「立体化学異性体形態物」、「立体異性体形態物」および同様な用語は、式(I)で表される化合物が持ち得る同じ配列の結合で結合している同じ原子で構成されているが交換不能な異なる三次元構造を有するあらゆる可能な化合物を定義するものである。
【0031】
ある置換基内のキラル原子の絶対配置を表示する目的で(R)または(S)を用いるか或は星印(*)で示す事例を言及する場合、孤立している置換基ではなく化合物全体を考慮に入れて表示する。
【0032】
特に記述も表示もしない限り、ある化合物の化学的表示は、前記化合物が持ち得る可能なあらゆる立体化学異性体形態物の混合物を包含する。前記混合物は、前記化合物の基本的分子構造を有するあらゆるジアステレオマーおよび/または鏡像異性体を含有している可能性がある。本発明の化合物の立体化学異性体形態物の全部を高純度形態または互いの混合物の両方とも本発明の範囲内に包含させることを意図する。
【0033】
本明細書に記述する如き化合物および中間体の高純度立体異性体形態物は、前記化合物
または中間体の同じ基本的分子構造を有する他の鏡像異性体もジアステレオマー形態物も実質的に含有しない異性体であると定義する。特に、用語「立体異性体的に高純度」は、立体異性体過剰度が少なくとも80%(即ち、1つの異性体が最小限で90%でありそして他の可能な異性体が最大限で10%である)から立体異性体過剰度が100%(即ち、1つの異性体が100%でありそして他の異性体がゼロである)の化合物もしくは中間体、より特別には立体異性体過剰度が90%から100%、更により特別には立体異性体過剰度が94%から100%、最も特別には立体異性体過剰度が97%から100%の化合物もしくは中間体に関する。用語「鏡像異性体的に高純度」および「ジアステレオマー的に高純度」も同様な様式で理解されるべきであるが、それぞれ、当該混合物の鏡像異性体過剰度およびジアステレオマー過剰度に関する。
【0034】
本発明の化合物および中間体の高純度立体異性体形態物を当該技術分野で公知の手順を用いて得ることができる。例えば、鏡像異性体を光学活性酸もしくは塩基と一緒にして生じさせたジアステレオマー塩を選択的に結晶化させることでそれらを互いに分離させることができる。それの例は酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸および樟脳スルホン酸である。別法として、キラル固定相を用いたクロマトグラフィー技術を利用して鏡像異性体の分離を行うことも可能である。また、適切な出発材料の相当する立体化学的に高純度の異性体形態物を用いて前記立体化学的に高純度の異性体形態物を生じさせることも可能であるが、但しその反応が立体特異的に起こることを条件とする。好適には、特定の立体異性体が必要な場合、前記化合物の合成を立体特異的製造方法で実施することになるであろう。そのような方法では有利に鏡像異性体的に高純度の出発材料を用いることになるであろう。
【0035】
本発明の化合物のジアステレオマーラセミ体を通常の方法で個別に得ることができる。有利に使用可能な適切な物理的分離方法は、例えば選択的結晶化およびクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィーなどである。
【0036】
本発明の特定の化合物、これらのプロドラッグ、N−オキサイド、塩、溶媒和物、第四級アミンまたは金属錯体およびこれらの製造で用いる中間体では、絶対的立体化学配置を実験的に測定してはいない。当業者は、そのような化合物の絶対配置を当該技術分野で公知の方法、例えばX線回折などで測定することができるであろう。
【0037】
また、本化合物に存在する原子のあらゆる同位体を本発明に包含させることも意図する。同位体には、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子が含まれる。限定するものでないが、一般例として、水素の同位体には三重水素および重水素が含まれる。炭素の同位体にはC−13およびC−14が含まれる。
【0038】
本文脈全体に渡って用いる如き用語「プロドラッグ」は、薬理学的に許容される誘導体、例えばエステル、アミドおよび燐酸塩などを意味し、そのような誘導体が生体内で生体内変換を受ける結果としてもたらされる生成物は式(I)で表される化合物で定義した如き活性薬剤である。プロドラッグを記述しているGoodmanおよびGilmanによる文献(The Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、McGraw−Hill,Int.Ed.1992、「Biotransformation of Drugs」、13−15頁)は一般に本明細書に組み入れられる。プロドラッグは好適には優れた水溶性、向上した生物学的利用能を有し、かつ生体内で容易に代謝を受けて活性阻害剤になる。本発明の化合物のプロドラッグの調製は、本化合物に存在する官能基に修飾をこの修飾を受けた部分が通常の操作または生体内のいずれかで開裂を起こして親化合物が生じるような様式で受けさせることで実施可能である。
【0039】
生体内で加水分解を受ける製薬学的に許容されるエステルであるプロドラッグが好適であり、ヒドロキシもしくはカルボキシル基を有する式(I)で表される化合物からそのようなエステルを生じさせる。生体内で加水分解を受けるエステルは、ヒトまたは動物の体内で加水分解を受けて親酸もしくはアルコールを生じるエステルである。カルボキシに適切な製薬学的に許容されるエステルには、C1−6アルコキシメチルエステル、例えばメトキシメチルなど、C1−6アルカノイルオキシメチルエステル、例えばピバロイルオキシメチルなど、フタリジルエステル、C3−8シクロアルコキシカルボニルオキシC1−6アルキルエステル、例えば1−シクロヘキシルカルボニル−オキシエチルなど、1,3−ジオキソレン−2−オニルメチルエステル、例えば5−メチル−1,3−ジオキソレン−2−オニルメチルなど、およびC1−6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば1−メトキシカルボニルオキシエチルなどが含まれ、それらを本発明の化合物に存在するカルボキシ基のいずれかの所に生じさせることができる。
【0040】
ヒドロキシ基を含有する式(I)で表される化合物の生体内加水分解性エステルには、無機エステル、例えば燐酸エステルおよびα−アシルオキシアルキルエーテル、およびそのようなエステルが生体内で加水分解による分解を起こして結果として親ヒドロキシ基が生じる関連化合物が含まれる。α−アシルオキシアルキルエステルの例には、アセトキシ−メトキシおよび2,2−ジメチルプロピオニルオキシメトキシが含まれる。ヒドロキシに関して生体内で加水分解を受けるエステル形成基の選択には、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカーボネートエステルをもたらす)、ジアルキルカルバモイルおよびN−(ジアルキルアミノエチル)−N−アルキルカルバモイル(カルバメートをもたらす)、ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。ベンゾイルに存在する置換基の例には、環の窒素原子からメチレン基を通してベンゾイル環の3位もしくは4位と連結しているモルホリノおよびピペラジノが含まれる。
【0041】
治療で用いるに適した式(I)で表される化合物の塩は、対イオンが製薬学的に許容される塩である。しかしながら、また、製薬学的に許容されない酸および塩基の塩も例えば製薬学的に許容される化合物の調製または精製などでは使用可能である。製薬学的に許容されるか或は許容されないかに拘わらず、あらゆる塩が本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
本明細書の上に記述した如き製薬学的に許容される酸および塩基付加塩は、これらに式(I)で表される化合物が形成し得る治療的に有効な無毒の酸および塩基付加塩形態物を包含させることを意味する。そのような製薬学的に許容される酸付加塩を便利には塩基形態物をそのような適切な酸で処理することで得ることができる。適切な酸には、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸または臭化水素酸など、硫酸、硝酸、燐酸など、または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、しゅう酸(即ちエタン二酸)、マロン酸、こはく酸(即ちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(即ちヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パーム酸(palmoic)などが含まれる。
【0043】
逆に、前記塩形態物を適切な塩基で処理することで遊離塩基形態物に変化させることも可能である。
【0044】
また、酸性プロトンを含有する式(I)で表される化合物を適切な有機もしくは無機塩基で処理することで無毒の金属もしくはアミン付加塩形態物に変化させることも可能である。適切な塩基塩形態物には、例えばアンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミンなどとの塩、
およびアミノ酸、例えばアルギニン、リシンなどとの塩が含まれる。
【0045】
本明細書では、i)本発明の化合物ばかりでなくこれの塩およびii)1種以上の製薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、メタノール、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチル、アニソール、テトラヒドロフランまたはメシレートなどを含有して成る分子複合体を記述する目的で用語「溶媒和物」を用いる。前記溶媒が水の場合には用語「水化物」を用いる。
【0046】
本明細書の上で用いた如き用語「第四級アミン」は、式(I)で表される化合物が有する塩基性窒素と適切な第四級化剤、例えば場合により置換されていてもよいハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アリールアルキル、例えばヨウ化メチルまたはヨウ化ベンジルなどの間の反応によって式(I)で表される化合物が形成し得る第四級アンモニウム塩を定義するものである。また、良好な脱離基を有する他の反応体、例えばトリフルオロメタンスルホン酸アルキル、メタンスルホン酸アルキルおよびp−トルエンスルホン酸アルキルなどを用いることも可能である。第四級アミンは正に帯電した窒素を有する。製薬学的に許容される対イオンには、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテートおよびアセテートが含まれる。その選択した対イオンの導入をイオン交換樹脂を用いて行うことができる。
【0047】
本化合物のN−オキサイド形態物は、これに1個もしくは数個の窒素原子が酸化されていわゆるN−オキサイドになっている式(I)で表される化合物を包含させることを意味する。
【0048】
式(I)で表される化合物は金属と結合する性質、キレートする性質、錯体を形成する性質を有する可能性があり、従って金属錯体または金属キレート物として存在する可能性があることは理解されるであろう。式(I)で表される化合物のそのような金属化誘導体を本発明の範囲内に包含させることを意図する。
【0049】
また、式(I)で表される化合物の中の数種は互変異性体として存在する可能性もある。そのような形態を前記式の中に明確には示さなかったが、そのような形態物を本発明の範囲内に包含させることを意図する。
【0050】
式(I)で表される化合物は、以下の星印で示す如き不斉中心を2個有する:
【0051】
【化3】

【0052】
好適には、式(I)で表される化合物は、以下の式(I−a)で表される構造で示す如き立体化学を有する:
【0053】
【化4】

【0054】
本発明に従う式(I)で表される化合物は、以下の表1に示す化合物の中のいずれか1つから選択可能である。置換様式(R、R、Rで示す)以外にLC−MSデータ(m/z(M+1)および滞留時間(R)も報告する。示す結果および例は本発明を例示する目的で示すものであり、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきでない。
【0055】
【表1−1】

【0056】
【表1−2】

【0057】
好適な化合物は化合物C12である。
【0058】
本発明の好適な態様では、(a)式(I)で表される化合物、これの塩または立体異性体形態物および(b)HIV抗ウイルス薬またはこれの製薬学的に許容される塩を含有して成る組み合わせを提供し、ここで、前記式(I)で表される化合物はC12である。
【0059】
本発明の好適な態様では、(a)式(I)で表される化合物、これの塩または立体異性体形態物および(b)HIV抗ウイルス薬またはこれの製薬学的に許容される塩を含有し
て成る組み合わせを提供し、ここで、前記式(I)で表される化合物はC12であり、そしてここでは、前記HIV抗ウイルス薬を例えばヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)、例えばジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、エムトリシタビン(FTC)、アバカビル(ABC)、アプリシタビン(AVX−754)、エルブシタビン(ACH−126,443)、ホスファジド、KP−1461、MIV−210、ラシビル(PSI−5004)など、または非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、例えばデラビルジン(DLV)、エファビレンズ(EFV)、ネビラピン(NVP)、カプラビリン(CPV)、カラノリドA、ダピビリン(TMC120)、エトラビリン(TMC125)、リルピビリン(TMC278)、アロブジン(MIV−310)、UC−781など、またはヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤(NtRTI)、例えばテノフォビルおよびテノフォビルジソプロキシルフマレート(TDF)など、またはトランス活性蛋白質の阻害剤、例えばTAT阻害剤、例えばRO−5−3335、BI−201など、REV阻害剤、またはプロテアーゼ阻害剤、例えばリトナビル(RTV)、サキナビル(SQV)、ロピナビル(ABT−378またはLPV)、インジナビル(IDV)、アムプレナビル(VX−478)、TMC−126、ネルフィナビル(AG−1343)、アタザナビル(BMS−232632)、ダルナビル(TMC−114)[現在Prezista(商標)として市販]、SPI−256、フォサムプレナビル(GW433908またはVX−175)、P−1946、MK−8122(PPL−100)、チプラナビル(PNU−140690)、または化学名が(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルであるプロテアーゼ阻害剤など、またはウイルスのインテグラーゼ阻害剤、例えばラルテグラビル(MK−518)、エルビテグラビル(GS−9137、JTK−303)、BMS−538,158など、または侵入阻害剤[融合阻害剤(例えばT−20またはエンフビルチド、T−1249)、付着阻害剤およびコレセプター阻害剤が含まれ、後者にはCCR5拮抗剤およびCXR4拮抗剤(例えばAMD−3100)が含まれ、侵入阻害剤の例はPRO−140、PRO−542、TBR−220(TAK−220)、TBR−652(TAK−652)、ビクリビロック(SCH−417,690)、TNX−355、マラビロック(UK−427,857)、BMS−488,043、BMS−806である]、成熟阻害剤、例えばベビリマット(PA−457)など、リボヌクレオチド系還元酵素阻害剤(細胞阻害剤)、例えばヒドロキシ尿素など、または前記いずれかの組み合わせから選択する。
【0060】
最も好適な態様は、(a)化合物C12、これの塩または立体異性体形態物および(b)ダルナビル(N−[(2S,3R)−4−[(4−アミノフェニル)スルホニル−(2−メチルプロピル)アミノ]−3−ヒドロキシ−1−フェニル−ブタン−2−イル]カルバミン酸[(1R,5S,6R)−2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクト−6−イル])または化学名が(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルである化合物から選択したHIV抗ウイルス薬を含有して成る組み合わせである。
【0061】
本発明の1つの態様では、本明細書に記述した如き組み合わせを製造する方法を提供し、この方法は、式(I)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩とHIV抗ウイルス薬またはこれの製薬学的に許容される塩を組み合わせる段階を含んで成る。本発明の代替態様では、その組み合わせに本明細書に記述する如き1種以上の追加的薬剤を含有させる方法を提供する。
【0062】
本発明の組み合わせは薬剤として使用可能である。薬剤または治療方法としての前記使用は、HIVに感染した被験体にHIVに関連した病状を治すに有効な量を全身投与することを含んで成る。従って、本発明の組み合わせは、哺乳動物におけるHIV感染に関連した感染または病気を治療、予防または治すに有用な薬剤の製造で使用可能である。
【0063】
本発明の1つの態様では、本明細書に記述した態様の中のいずれか1つに従う組み合わせと製薬学的に許容される賦形剤を含有して成る製薬学的組成物を提供する。特に、本発明は、(a)治療的に有効な量の式(I)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩、(b)治療的に有効な量のHIV抗ウイルス薬またはこれの製薬学的に許容される塩および(c)製薬学的に許容される賦形剤を含有して成る製薬学的組成物を提供する。場合により、その製薬学的組成物にHIV抗ウイルス薬から選択した追加的薬剤を更に含有させることも可能である。
【0064】
用語「組成物」を本明細書で用いる場合、これに指定材料ばかりでなく指定材料を組み合わせる結果として直接または間接的にもたらされる生成物のいずれかを含有して成る製品を包含させることを意図する。
【0065】
本明細書で用いる如き用語「治療的に有効な量」は、活性化合物もしくは成分もしくは薬剤の量が本発明に照らして研究者、獣医、医者または他の臨床医が探求する組織、系、動物またはヒトに生物学的もしくは医学的反応を引き出す量を意味し、そのような反応には治療すべき病気の症状の軽減が含まれる。本発明では2種以上の薬剤を含有して成る組み合わせを言及することから、「治療的に有効な量」は、そのような薬剤を一緒にした時にその組み合わされた効果によって所望の生物学的もしくは医学的反応が引き出されるような量である。例えば、(a)式(I)で表される化合物と(b)HIV抗ウイルス薬を含有して成る組成物の治療的に有効な量は、前記式(I)で表される化合物の量と前記HIV抗ウイルス薬の量を一緒にした時に治療的に有効な組み合わせ効果がもたらされる量である。
【0066】
製薬学的組成物の調製は当業者に本質的に公知の様式で実施可能である。この目的で、式(I)で表される化合物またはこれのサブグループのいずれかの中の少なくとも1種とHIV抗ウイルス薬を1種以上の固体状もしくは液状の製薬学的賦形剤および必要ならば他の製薬学的活性化合物と組み合わせて一緒にすることで適切な投与形態もしくは投薬形態物を生じさせた後にそれらをヒト用薬または獣医用薬に入れる薬剤として用いてもよい。
【0067】
1つの態様では、本発明の組み合わせをまた適宜HIV治療で同時、個別または逐次的に用いるための組み合わせ製剤として構築することも可能である。そのような場合には、一般式(I)で表される化合物またはこれのサブグループのいずれかを他の製薬学的に許容される賦形剤が入っている製薬学的組成物として構築し、そして適切なHIV抗ウイルス薬を個別に他の製薬学的に許容される賦形剤が入っている製薬学的組成物として構築する。便利には、その2種類の個別の製薬学的組成物を同時、個別または逐次的に用いるためのキットの一部としてもよい。
【0068】
このように、本発明の組み合わせに含める個々の成分を治療過程中の異なる時間に個別に投与するか或は細分または単一組み合わせ形態で同時に投与してもよい。従って、本発明はそのような同時または交互治療管理の全部を包含すると理解されるべきであり、かつ用語「投与」もそれに応じて解釈されるべきである。好適な態様では、個別の投薬形態物をほぼ同時に投与する。
【0069】
本発明の組み合わせを含有して成る組成物もしくは製品は、これを単一製剤として一緒
に構築するか或は同時、個別または逐次的に用いる目的で構築するかに拘わらず、通常の無毒の製薬学的に許容される担体、アジュバントおよび賦形剤を含有する投薬単位製剤として、経口(懸濁液、カプセル、錠剤、小袋、溶液、懸濁液、乳液を包含)、舌下、非経口(皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内注射または点滴技術を包含)、局所、直腸(座薬を包含)、膣、移植貯留層経由で投与可能である。
【0070】
経口投与形態物の場合、本発明の組成物を適切な添加剤、例えば賦形剤、安定剤または不活性希釈剤などと混合した後、通常方法で適切な投与形態物、例えば錠剤、被覆錠剤、硬質カプセル、水溶液、アルコール溶液または油溶液などにすることができる。適切な不活性担体の例は、アラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、燐酸カリウム、ラクトース、グルコースまたは澱粉、特にトウモロコシ澱粉である。この場合の調製は乾燥顆粒および湿潤顆粒の両方として実施可能である。適切な油状賦形剤もしくは溶媒は植物油または動物油、例えばヒマワリ油またはタラ肝油などである。水溶液もしくはアルコール溶液に適切な溶媒は、水、エタノール、糖溶液またはこれらの混合物である。また、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールも他の投与形態物用のさらなる助剤として用いるに有用である。即効型錠剤として、そのような組成物に当該技術分野で公知の微結晶性セルロース、燐酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウムおよびラクトースおよび/または他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および滑剤を含有させてもよい。
【0071】
本発明の組み合わせの経口投与を適切には粉末形態の各成分を適切な量で均一かつ密に一緒に混合(場合によりまた微細な固体状担体を含有させることも可能である)しそしてその混合物を例えば硬質ゼラチン製カプセルなどの中に封じ込めることで達成する。そのような固体状担体には、結合剤、滑剤、崩壊剤、着色剤などとして働く1種以上の物質が含まれ得る。適切な固体状担体には、例えば燐酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点のワックスおよびイオン交換樹脂などが含まれる。
【0072】
本発明の組み合わせの経口投与をまた式(I)で表される化合物のみを所望量で含有するカプセルまたは錠剤(場合により上述した如き固体状担体と混合しておいてもよい)および当該HIV抗ウイルス薬のみを所望量で含有するカプセルを調製することで達成することも可能である。式(I)で表される化合物を含有する圧縮錠剤の調製は、本有効成分を上述した如き固体状担体と一緒に均一かつ密に混合して必要な圧縮特性を有する混合物を生じさせた後にその混合物を適切な機械で圧縮固化させて所望の形状および大きさにすることで実施可能である。成形錠剤の製造は粉末にした式(I)で表される化合物を不活性な液状希釈剤で湿らせた混合物を適切な機械で成形することで実施可能である。また、式(I)で表される化合物を正に記述したようにして含有させておいた圧縮もしくは成形錠剤、即ち標準的カプセル(例えば硬質ゼラチン製カプセル)の中に挿入するに適した大きさの錠剤の調製を実施した後にその錠剤をHIV抗ウイルス薬粉末を適切な量で入れておいたカプセルの中に挿入することで経口投与を達成することも可能である。
【0073】
本組成物の有効成分を皮下または静脈内投与する場合、必要ならば、それをそれ用の通常の物質、例えば可溶化剤、乳剤またはさらなる助剤などと一緒にして、溶液、懸濁液または乳液にする。また、そのような組成物の成分に凍結乾燥を受けさせることも可能であり、その得た凍結乾燥品を例えば注射もしくは点滴用製剤の製造などで用いてもよい。適切な溶媒は、例えば水、生理学的食塩溶液またはアルコール、例えばエタノール、プロパノール、グリセロールなどに加えてまた糖溶液、例えばグルコースまたはマンニトール溶液など、または上述したいろいろな溶媒の混合物などである。注射用溶液もしくは懸濁液の構築は公知技術に従って適切な無毒の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒、例えばマンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンゲル液または等張性塩化ナトリウム
溶液、または適切な分散もしくは湿潤剤および懸濁剤、例えば無菌性で無刺激性の固定油(合成モノ−もしくはジグリセリドを包含)および脂肪酸(オレイン酸を包含)などを用いることで実施可能である。
【0074】
本発明の製薬学的組成物の投与をまた局所的に行うことも可能であり、特に治療標的に局所投与によって容易に近づくことが可能な領域または器官が含まれる場合に可能であり、それには目、皮膚または下部消化管の病気が含まれる。そのような領域または器官の各々に適した局所的製剤の調製は容易である。下部消化管への局所的投与は直腸座薬製剤(以下を参照)または適切な浣腸製剤の状態で実施可能である。また、局所的経皮パッチの使用も可能である。
【0075】
局所投与用の製薬学的組成物の構築は、有効成分が1種以上の担体の中に懸濁または溶解している適切な軟膏として実施可能である。本発明の化合物を局所投与する場合の担体には、これらに限定するものでないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化用ワックスおよび水が含まれる。別法として、そのような製薬学的組成物の構築を有効成分が1種以上の製薬学的に許容される担体の中に懸濁または溶解している適切なローションまたはクリームとして実施することも可能である。適切な担体には、これらに限定するものでないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれる。
【0076】
そのような製剤を座薬の形態で直腸投与しようとする場合、それの調製は、本発明に従う組成物に含める個々の成分を通常の温度では固体であるが直腸空洞部の中では当該薬剤を放出するように液化および/または溶解する適切な非刺激性賦形剤、例えばココアバター、合成グセリドエステルまたはポリエチレングリコールなどと一緒に混合することで実施可能である。
【0077】
本発明の方法の別の態様では、投与を食物(例えば高脂肪食)と一緒にか或は食物無しに実施してもよい。用語「食物と一緒に」は、本発明に従う組み合わせに含める一方もしくは両方の成分を投与している間または投与する前の約1時間以内または投与した後の約1時間以内に食物が消費されることを意味する。
【0078】
1つの態様において、本発明の組み合わせに含有させる式(I)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩の量は、このHIV阻害剤もしくは抗ウイルス薬の生物学的利用能が当該HIV阻害剤もしくは抗ウイルス薬を単独で投与した時の生物学的利用能に比べて臨床的に向上するに充分な量である。
【0079】
別の態様では、本発明の組み合わせに含有させる式(I)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩の量をt1/2、Cmin、Cmax、Css、例えば12時間時のAUCまたは例えば24時間時のAUCから選択したHIV阻害剤の薬物動態変数の中の少なくとも1つが前記HIV阻害剤を単独で投与した時の前記少なくとも1つの薬物動態変数に比べて向上するに充分な量にする。
【0080】
さらなる態様は、HIV阻害剤が示す生物学的利用能を改善する方法に関し、この方法は、前記改善を必要としている個体に本明細書で定義する如き組み合わせを投与することを含んで成り、ここでは、前記組み合わせにこの組み合わせの各成分を治療的に有効な量で含有させておく。
【0081】
さらなる態様として、本発明は、式(I)で表される化合物またはこれの製薬学的に許
容される塩をt1/2、Cmin、Cmax、Css、例えば12時間時のAUCまたは例えば24時間時のAUCから選択したHIV阻害剤の薬物動態変数の中の少なくとも1つを向上させる化合物として使用することに関するが、但し前記使用の実施がヒトの体の中でも動物の体の中でもないことを条件とする。
【0082】
本明細書で用いる如き用語「個体」は、治療、観察または実験の対象である動物、好適には哺乳動物、最も好適にはヒトを指す。
【0083】
生物学的利用能は投与量の中の全身循環に到達した分率であると定義する。t1/2は半減期、即ち血漿中濃度が元々の値の半分にまで降下するに要する時間を表す。Cssは定常状態の濃度、即ち薬剤投入速度が薬物の消失速度と等しくなる時の濃度である。Cminは投与間隔の間に測定された最低(最小限)の濃度であると定義する。Cmaxは投与間隔の間に測定された最高(最大限)の濃度を表す。AUCは指定時間、例えば12時間または24時間の間の血漿中濃度−時間曲線下の面積であると定義する。
【0084】
本発明の組み合わせは、前記組み合わせに含める各成分に指定した投薬範囲内でヒトに投与可能である。前記組み合わせに含める成分を一緒または個別に投与してもよい。当該HIV阻害剤および式(I)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩もしくはエステルの投薬レベルを1日当たり0.02から5.0グラムの桁にしてもよい。
【0085】
当該HIV阻害剤または抗ウイルス薬と式(I)で表される化合物を組み合わせて投与する場合、そのHIV阻害剤と式(I)で表される化合物の重量比を適切には約40:1から約1:15、または約30:1から約1:15、または約15:1から約1:15、典型的には約10:1から1:10、より典型的には約8:1から約1:8の範囲内にする。また、当該HIV阻害剤と式(I)で表される化合物の重量比を約6:1から約1:6、または約4:1から約1:4、または約3:1から約1:3、または約2:1から約1:2、または約1.5:1から約1:1.5の範囲にするのも有効である。1つの面では、当該HIV阻害剤の量を重量で表して式(I)で表される化合物のそれに等しいか或はそれ以上にし、当該HIV阻害剤と式(I)で表される化合物の重量比を適切には約1:1から約15:1、典型的には約1:1から約10:1、より典型的には約1:1から約8:1の範囲内にする。また、当該HIV阻害剤と式(I)で表される化合物の重量比を約1:1から約6:1、または約1:1から約5:1、または約1:1から約4:1または約3:2から約3:1、または約1:1から約2:1、または約1:1から約1.5:1の範囲にするのも有効である。
【0086】
1つの態様に従い、当該HIV阻害剤と式(I)で表される化合物を日に1回または2回、週に1回、2回、3回、4回、5回または6回、好適には経口で一緒に投与してもよく、1回分当たりのHIV阻害剤の量を約10から約2500mgにしそして1回分当たりの式(I)で表される化合物の量を10から約2500mgにする。別の態様では、日に1回または2回共投与する場合の1回分当たりの量をHIV阻害剤の量が約50から約1500mgで式(I)で表される化合物の量が約50から約1500mgになるようにする。更に別の態様では、毎日または毎週共投与する場合の1回分当たりの量をHIV阻害剤の量が約100から約1000mgで式(I)で表される化合物の量が約100から約800mgになるようにする。更に別の態様では、毎日または毎週共投与する場合の1回分当たりの量をHIV阻害剤の量が約150から約800mgで式(I)で表される化合物の量が約100から約600mgになるようにする。更に別の態様では、毎日または毎週共投与する場合の1回分当たりの量をHIV阻害剤の量が約200から約600mgで式(I)で表される化合物の量が約100から約400mgになるようにする。更に別の態様では、毎日または毎週共投与する場合の1回分当たりの量をHIV阻害剤の量が約200から約600mgで式(I)で表れる化合物の量が約20から約300mgになる
ようにする。更に別の態様では、毎日または毎週共投与する場合の1回分当たりの量をHIV阻害剤の量が約100から約400mgで式(I)で表される化合物の量が約40から約100mgになるようにする。
【0087】
日に2回投与する場合のHIV阻害剤(mg)/式(I)で表される化合物(mg)の典型的な組み合わせには、50/100、100/100、150/100、200/100、250/100、300/100、350/100、400/100、450/100、50/133、100/133、150/133、200/133、250/133、300/133、50/150、100/150、150/150、200/150、250/150、50/200、100/200、150/200、200/200、250/200、300/200、50/300、80/300、150/300、200/300、250/300、300/300、200/600、400/600、600/600、800/600、1000/600、200/666、400/666、600/666、800/666、1000/666、1200/666、200/800、400/800、600/800、800/800、1000/800、1200/800、200/1200、400/1200、600/1200、800/1200、1000/1200および1200/1200が含まれる。日に2回投与する場合のHIV阻害剤(mg)/式(I)で表される化合物(mg)の他の典型的な組み合わせには、1200/400、800/400、600/400、400/200、600/200、600/100、500/100、400/50、300/50および200/50が含まれる。
【0088】
しかしながら、個々の患者いずれに関しても特定の投薬濃度および投薬頻度は様々であり得、多様な要因に依存すると理解し、そのような要因には、用いる特定の化合物が示す活性、その化合物が示す代謝安定性および作用の長さ、当該患者の年齢、体重、一般的健康状態、性および食事、投与の様式および時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、個々の状態のひどさおよび治療を受けさせる患者の種類が含まれる。
【0089】
本発明の1つの態様では、HIV感染の治療に有効な本明細書に記述する如き組み合わせを含有して成る組成物およびこの組成物をHIVによる感染の治療で用いることができることを示すラベルを包含する包装材料を含有して成る製品を提供する。
【実施例】
【0090】
示す結果および例は、本発明を例示する目的で示すものであり、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきでない。本発明に従う化合物に様々なインビトロ検定法による試験を受けさせ、その結果を本明細書の以下に示す表に挙げる。
【0091】
検定法1および2:抗ウイルス活性/毒性
本発明の化合物に抗ウイルス活性に関する試験を細胞検定法で受けさせ、それを以下の手順に従って実施した。
【0092】
ヒトT細胞系MT4に緑色蛍光蛋白質(GFP)およびHIV特異的プロモーターであるHIV−1の長い末端反復(LTR)を用いた改変を受けさせる。前記細胞系をMT4
LTR−EGFPと表示し、これは調査化合物の抗HIV活性をインビトロで評価する目的で使用可能である。HIV−1に感染した細胞では、LTRプロモーターを上方調節して最終的にGFPレポーター産生の刺激をもたらすTat蛋白質が産生されることで、進行するHIV感染を蛍光分析で測定することができる。同様にして、MT4細胞にもGFPおよび構成サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによる改変を受けさせる。前記細胞系をMT4 CMV−EGFPと表示し、これは調査化合物の細胞毒性をインビトロで評価する目的で使用可能である。この細胞系では、GFP濃度が感染したMT4
LTR−EGFP細胞のそれと同等である。細胞毒性のある調査化合物は模擬感染MT4
CMV−EGFP細胞のGFP濃度を低下させる。
【0093】
有効濃度値、例えば50%有効濃度(EC50)などを測定することができ、それを通常はμMで表す。EC50値は、試験化合物がHIV感染細胞の蛍光を50%低下させる時の濃度であると定義する。50%細胞毒性濃度(μMで表すCC50)は、試験化合物が模擬感染細胞の蛍光を50%低下させる時の濃度であると定義する。EC50に対するCC50の比率を選択指数(SI)として定義し、これは当該阻害剤が示す抗HIV活性の選択率の指標である。HIV−1感染および細胞毒性の最終的監視を走査電子顕微鏡を用いて実施する。画像を分析することでウイルス感染を非常に高感度に検出することができる。測定を細胞壊死前に実施するが、細胞壊死に要する時間は一般に感染から約5日後であることから、特に測定を感染から3日後に実施する。
【0094】
表2に、野生型HIV−1 IIIB株と対比したpEC50値に加えて選択した数の本発明の化合物が示したpCC50値を挙げる。pEC50値は−log10(EC50)に相当する。pCC50値は−log10(CC50)に相当する。
【0095】
pEC50値が4.00未満の化合物からpEC50値が最大の4.50である化合物を挙げる。市販のHIVプロテアーゼ阻害剤であるダルナビルが示すpEC50は8.17である。pEC50の範囲が<4から4.50であることは、8.17と比較して、抗ウイルス活性の点で有意に低く、従って、本発明の化合物はHIVがこれに対して示す耐性が最小限であるか或はゼロであることを示している。
【0096】
相当して、本発明の化合物に関して報告する毒性値はpCC50が4.00未満から最大値の4.46の範囲内であり、このことは、本化合物の毒性が低いか或は最低限であることを示している。
【0097】
【表2】

【0098】
検定法3: 試験化合物が示す代謝安定性(HLM15’)
細胞内組織調製をGorrod他[Xenobiotica、5、453−462頁(1975)]に従って組織を機械的に均一にした後に遠心分離にかけることで行う。ヒト肝組織を氷冷0.1MのTris−HCl(pH7.4)緩衝液に入れて濯ぐことで余分な血液を洗い流す。次に、組織を吸い取りで乾燥させ、重量を測定した後、外科用ハサミで粗く切断する。その組織片を3倍体積の氷冷0.1M燐酸塩緩衝液(pH7.4)に入れてテフロン製乳棒が備わっているPotter−S(Braun、イタリア)またはSorvall Omni−Mixホモジナイザーのいずれかを用いて7x10秒間均一に
する。両方の場合とも、均一化過程中にその容器を氷の中/上に維持する。組織ホモジネートにSorvall遠心分離機またはBeckman超遠心分離機を用いた9000xgの遠心分離を4℃で20分間受けさせる。その結果として得た上澄み液を−80℃で貯蔵してもよく、それを「S9」と表示する。そのS9画分にBeckman超遠心分離機を用いた100,000xgの遠心分離を4℃で60分間受けさせる。その結果として得た上澄み液を注意深く吸引し、一定分量に分けて、「サイトゾル」と表示する。沈澱物を0.1Mの燐酸塩緩衝液(pH7.4)に入れて最終体積が元々の組織重量0.5g当たり1mlになるように再懸濁させて、それを「ミクロソーム」と表示する。細胞内画分の全部を一定分量に分け、液体窒素に入れて直ちに凍結させた後、使用時まで−80℃で貯蔵する。
【0099】
0.1Mの燐酸塩緩衝液(pH7.4)に入れて懸濁させておいたヒト肝臓ミクロソーム(「ミクロソーム」画分、蛋白質濃度が1mg/ml)に試験化合物とNADPH産生系を試験化合物が5μMでD−グルコース−6−燐酸が0.8mMでMgClが0.8mMでグルコース−6−燐酸デヒドロゲナーゼが0.8U/mlの最終反応混合物濃度になるように加えた。熱で不活性(95℃で10分間)にしておいた「S9」またはミクロソームをブランク実験の目的で用いた。反応混合物を37℃で5分間インキュベートした後、0.8mMのβ−NADPを添加することで反応を開始させた。その反応物のインキュベーションを0または15分間実施した。次に、DMSO(またはアセトニトリル)を2倍の体積で添加することで反応を停止させた。サンプルを遠心分離(10分間、900xg)にかけた後、LC−MSによる分析を実施した。表3に結果を要約する。
【0100】
【表3】

【0101】
検定法4: CYP450阻害
様々なCYP P450アイソザイムによる試験化合物代謝の阻害の測定を特定の基質を蛍光分子に変える大腸菌発現蛋白質(3A4、2C9、2D6、1A2および2C19)を用いて実施した(表6)。その蛍光分子の測定を蛍光プレート読み機[Victor2(Wallac)またはFluoroskan(Labsystems)]を用いて実施した。酵素反応を阻害する化合物は結果として蛍光シグナルを低下させるであろう。CYP P450酵素を会社内で調製するか或は商業的に購入して、−80℃で貯蔵した。表4に結果を要約する。
【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
検定を黒色の96穴Costarプレートを用いて実施した。試験化合物をNADPH産生系存在下のCYP P450酵素溶液に加えた。予備インキュベーションを37℃で5分間実施した後、新しく調製した燐酸塩緩衝(pH7.4)基質溶液を加えた。公知CYP P450阻害剤を正対照として用い、負対照をCYP P450酵素無しで実施した。最終的反応混合物濃度に関しては表6を参照のこと。反応混合物のインキュベーションを37℃でそれぞれ30分間(CYP3A4−BFC)、30分間(CYP3A4−BQ)、10分間(CYP3A4−DBF)、15分間(CYP1A2−CEC)、30分間(CYP2C9−MFC、CYP2C19−CEC)または45分間(CYP2D6−AMMC)実施した。次に、アセトニトリルを200μl添加することで反応を停止させた後、蛍光シグナルの検出を実施した。
【0105】
【表6】

【0106】
検定法5: 代謝遮断%:TMC114代謝の阻害
ダルナビル(現在Prezista(商標)として市販されているTMC 114)および試験効能促進剤化合物を燐酸カリウム緩衝液(pH7.4)に入れて懸濁させておいたヒト肝臓ミクロソーム(「ミクロソーム」画分、蛋白質濃度が1mg/ml)にダルナビルが3μMで試験化合物が3μMの最終反応混合物濃度になるように加えた。効能を促進させない並行反応では試験化合物を添加しなかった。
【0107】
ブランク実験では沸騰させたヒト肝臓ミクロソームを用いた。β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド燐酸(β−NADP、0.5mg/ml、653.2μM)とD−グルコース−6−燐酸(2mg/ml、7.1mM)とグルコース−6−燐酸デヒドロゲナーゼ(1.5U/ml)を2%のNaHCOに入れることで構成させたNADPH産生混合物を添加[1:3(体積/体積)の比率]した後の反応混合物のインキュベーションを37℃で30分間または120分間実施した後、温度を95℃に上昇させることで反応を停止させた。ダルナビル濃度の測定をHPLC−MSを用いて実施した。効能を促進させていない反応(=試験化合物を存在させていない)の時に残存するTMC114のパーセントを測定することで得た対照値は12%(10回の実験の中央値)である。表7に結果を要約する。
【0108】
【表7】

【0109】
効能促進剤がダルナビルの鍵となる薬物動態パラメーターに対して示す影響
「効能促進能力」(=当該化合物がダルナビルの薬物動態を向上させる能力)をインビボで試験する目的で、代表例の化合物C12をオスビーグル犬のグループ(n=3)に体重1kg当たり5mgの量で経口投与(例えばPEG400またはPEG400/30%の食塩水またはHpβCDの如き適切な媒体に入れて)で与えてから15分後にダルナビルを体重1kg当たり5mg投与した。経口投与を強制飼養で実施した。前記犬を常に自由にしかつ絶えず水が飲めるようにした。1回分投与してから0(=投与前)、0.5、
1、2、4、7および24時間後に血液サンプルを頸静脈から採取した。そのサンプルを1900xgの遠心分離に5℃で10分間かけることで血漿を分離した。分離した血漿を血液採取から2時間以内に冷凍庫に入れて貯蔵した。常に血液および血漿サンプルを溶融氷の上に置きかつ光から防護した。個々の血漿サンプルにダルナビルおよび効能促進剤化合物に関する分析をLC−MS/MSで受けさせた。ダルナビルに関する薬物動態パラメーターの計算を無隔壁分析、WinNonLinソフトウエアバージョン5.0(Pharsight)を用いて実施して、表8に示す。示した値は3匹の犬の平均値である。フォールドチャンジ(fold change)(FC)値は、ダルナビルを5mg/kgのみ与えた対照実験との差を示している。
【0110】
【表8】

【0111】
実験
反応体を商業源から購入して、受け取ったまま用いた。薄層クロマトグラフィーをシリカゲル60 F254プレート(Merck)を用いて実施した。LC−MS分析を下記の方法の中のいずれか1つを用いて実施した。化合物C1−27が示したデータを表1に挙げる(上を参照)。
【0112】
LCMS方法1
HPLC装置:Waters Alliance 2695(ポンプ+オートサンプラー)、Waters 996(光ダイオードアレイ検出器)
カラム:Waters XTerra MS C18 2.5μm 50x4.6mm
温度:55℃
可動相:A:10mMのHCOONH+HO中0.1%のHCOOH
B:CHCN
勾配:0分:Bが15%、3分:Bが95%、4.2分:Bが95%
平衡時間:1.2分
流量:2ml/分
注入体積:0.5mg/mlの溶液を5μl
MS検出器:Waters ZQ
イオン化:正および負モードのエレクトロスプレー
【0113】
LCMS方法2
HPLC装置:Waters Alliance 2790(ポンプ+オートサンプラー)、Waters 996(光ダイオードアレイ検出器)
カラム:Waters SunFire C18 3.5μm 100x4.6mm
温度:55℃
可動相:A:10mMのNHOOCH+HO中0.1%のHCOOH
B:アセトニトリル
勾配:0分:Bが5%、5.4分:Bが95%、7.2分:Bが95%
平衡時間:1.8分
流量:1.5ml/分
注入体積:0.5mg/mlの溶液を5μl
MS検出器:Waters LCT
イオン化:正および負モードのエレクトロスプレー
【0114】
NMRスペクトルの記録をBruker Avance 400分光計を400MHzで操作することで実施した。化学シフトをppmで示しかつJ値をHzで示す。多重度を下記の省略形を用いて示す:二重線をd、三重線をt、多重線をm、等々。化合物の名称をChemdraw Ultraのバージョン9.0.7(CambridgeSoft)を用いて生じさせた。
【0115】
化学
式(I)で表される化合物の調製を以下に示す一般的方法に従って実施し、その例をC12の合成に関して記述する詳細な手順で示す。
【0116】
【化5】

【0117】
1(1.0当量、106ミリモル、28.0g)とイソブチルアミン(1060ミリモル、10当量、106mL)をイソプロパノール(200mL)に入れることで生じさせた溶液を80℃で3時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた後、粗生成物2をそのまま次の段階で用いた。
【0118】
【化6】

【0119】
2(32.53g、97ミリモル、1.0当量)と塩化キノキサリン−2−カルボニル(18.62g、97ミリモル、1.0当量)とトリエチルアミン(40.4mL、291ミリモル、3.0当量)をTHF(200mL)に入れることで生じさせた溶液を室温で2時間撹拌した。水を添加した後、CHClを用いた抽出を実施した。その有機相を一緒にして飽和NaHCO水溶液で2回洗浄し、MgSOで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲル使用カラムクロマトグラフィー(CHCl中0−3%のMeOH)で精製することで3を得た(46.69g、収率=98%)。
【0120】
【化7】

【0121】
3(19.58g、40ミリモル、1.0当量)とクロロ−トリメチル−シラン(12.95g、120ミリモル、3.0当量)とヨウ化ナトリウム(23.83g、160ミリモル、4.0当量)とTBAF(199mL、200ミリモル、5.0当量、THF中1.0M溶液)をアセトニトリル(150mL)に入れることで生じさせた溶液を室温で1時間撹拌した。水を添加した後、CHClを用いた抽出を実施した。その有機相を一緒にしてMgSOで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その粗生成物をそのまま次の段階で用いた。
【0122】
【化8】

【0123】
4(36.0g、92ミリモル、1.0当量)と5(32.4g、127ミリモル、1.38当量)とトリエチルアミン(18.28mL、131ミリモル、1.43当量)をアセトニトリル(500mL)に入れることで生じさせた溶液を室温で2時間撹拌した。水を添加した後、CHClを用いた抽出を実施した。その有機相を一緒にして飽和NaHCO水溶液で2回洗浄し、MgSOで乾燥させた後、真空下で濃縮した。その残留物をシリカゲル使用カラムクロマトグラフィー(CHCl中0−2%のMH(MeOH中7Mの溶液))で精製することで6を得た。残存するTBAFを除去して高純度の6(=C12)を得る(38.2g、収率=78%、純度(LC)=94%)にはシリカゲル(EtOAc)を用いたカラムクロマトグラフィーによる2回目の精製を行う必要があった。NMRスペクトルは、2種類の回転異性体が2−1の存在比率で存在することを示していた。H−NMR(CDCl)、主要回転異性体:9.28ppm(s,1H),8.78(s,1H),8.21ppm(dd,1H,J=8.41,J=2.2),8.09(m,1H),7.92−7.8(m,2H);7.77(s,1H);7.3−7.05(m,5H);6.6(d,1H,J=6.49);5.24(d,1H);5.14(s,2H);4.93(d,1H,J=9.32);4.0(m,2H);3.8(m,2H);3.67(m,1H);3.51(d,1H,J=7.46),3.3−3.2(m,2H);3.0−2.84(m;2H);2.18(sep,1H,J=7.46),1.0(m,6H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
は、5−チアゾリルまたは3−ピリジニルであり、
は、イソブチル、2,2−ジメチルプロピル、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピルまたはシクロヘキシルメチルであり、
は、場合により1個以上のハロゲン、トリフルオロメチル、C1−6−アルキルまたはC1−6−アルコキシ(場合により前記アルコキシ基の中の2個が互いに連結して5員もしくは6員環を形成していてもよい)で置換されていてもよいフェニル;ヘテロアリール;場合により1個以上のハロゲンで置換されていてもよいC3−7−シクロアルキル;場合によりヘテロアリールで置換されていてもよいC1−6−アルキル;−O−CH−(ヘテロアリール)である]
で表される化合物、これの塩および立体異性体形態物。
【請求項2】
が5−チアゾリルであり、RがイソブチルでありそしてRがキノキサリルである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化学名が1S−2R−{1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−[イソブチル−(キノキサリン−2−カルボニル)−アミノ]−プロピル}−カルバミン酸チアゾール−5イルメチルエステルである式
【化2】

で表される請求項1または2記載の化合物、これの塩および立体異性体形態物。
【請求項4】
薬剤として用いるための請求項1−3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
抗ウイルス薬の効能を促進させる薬剤を製造するための請求項1−3のいずれか1項記載化合物の使用。
【請求項6】
a)請求項1−3のいずれか1項記載の化合物、および
b)HIV阻害剤またはこれの製薬学的に許容される塩、
を含有して成る組み合わせ物。
【請求項7】
前記HIV阻害剤がN−[(2S,3R)−4−[(4−アミノフェニル)−スルホニ
ル(2−メチルプロピル)アミノ]−3−ヒドロキシ−1−フェニル−ブタン−2−イル]カルバミン酸[(1R,5S,6R)−2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクト−6−イル]または(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルである請求項6記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記化合物が1S−2R−{1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−[イソブチル−(キノキサリン−2−カルボニル)−アミノ]−プロピル}−カルバミン酸チアゾール−5イルメチルエステルでありそして前記HIV阻害剤がN−[(2S,3R)−4−[(4−アミノフェニル)−スルホニル(2−メチルプロピル)アミノ]−3−ヒドロキシ−1−フェニル−ブタン−2−イル]カルバミン酸[(1R,5S,6R)−2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクト−6−イル]または(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルである請求項7記載の組み合わせ物。
【請求項9】
薬剤として用いるための請求項6−8のいずれか1項記載の組み合わせ物。
【請求項10】
HIV感染を治療または予防する薬剤を製造するための請求項6−8のいずれか1項記載組み合わせ物の使用。
【請求項11】
前記式(I)または(II)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩のいずれかの量が前記HIV阻害剤が示す生物学的利用能を前記HIV阻害剤を単独で投与した時の生物学的利用能に比べて臨床的に向上させるに充分である請求項6−9のいずれか1項記載組み合わせ物。
【請求項12】
前記式(I)または(II)で表される化合物またはこれの製薬学的に許容される塩のいずれかの量がt1/2、Cmin、Cmax、Css、12時間時のAUCまたは24時間時のAUCから選択される前記HIV阻害剤が示す薬物動態変数の中の少なくとも1つを前記HIV阻害剤を単独で投与した時の前記少なくとも1つの薬物動態変数に比べて向上させるに充分である請求項6−9のいずれか1項記載組み合わせ物。
【請求項13】
請求項6−9のいずれか1項記載の組み合わせ物および製薬学的に許容される賦形剤を含有して成る製薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1−3のいずれか1項記載の式(I)または(II)のいずれかで表される化合物およびHIV阻害剤またはこれの製薬学的に許容される塩をHIV治療で同時、個別または順次用いるための組み合わせ製剤として含有する製品。
【請求項15】
前記HIV阻害剤がN−[(2S,3R)−4−[(4−アミノフェニル)スルホニル−(2−メチルプロピル)アミノ]−3−ヒドロキシ−1−フェニル−ブタン−2−イル]カルバミン酸[(1R,5S,6R)−2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクト−6−イル]または(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルである請求項14記載の製品。

【公表番号】特表2012−505157(P2012−505157A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529584(P2011−529584)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062996
【国際公開番号】WO2010/040762
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509350217)
【Fターム(参考)】