説明

抗ノッチ3アゴニスト抗体とノッチ3関連疾患の治療におけるその使用

本発明はノッチ3に特異的に結合しシグナル伝達を活性化させるアゴニスト抗体に関する。本発明は第一のLin12ドメインを含むエピトープに結合する抗体を含む。本発明はまたノッチ3関連疾病又は疾患を治療し又は予防するためのこれらの抗体の使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本出願は、その開示を出典明示によりここに援用する2006年10月19日出願の米国仮出願第60/852861号及び2007年1月6日出願の米国仮出願第60/879218号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は抗ノッチ3アゴニスト抗体と、ノッチ3関連疾患又は障害の寛解、治療、又は予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ノッチ遺伝子はミバエ(キイロショウジョウバエ)の系統がノッチのある羽ブレードを有していることが分かった1917年に最初に開示された(Morgan, Am Nat 51:513 (1917))。その遺伝子はほぼ70年後にクローニングされ、ショウジョウバエにおいて多くの異なった細胞型及び組織の発生に重要な役割を果たしている細胞表面レセプターであることが分かった(Wharton等, Cell 43:567 (1985))。ノッチシグナル伝達経路はまもなく細胞間接着によって媒介されるシグナル伝達機構であることが見出され、ショウジョウバエからヒトへ進化的に保存されている。ノッチレセプターは、多くの細胞プロセス、例えば分化、細胞運命決定、幹細胞の維持、細胞運動性、増殖、発生及び組織ホメオスタシスの間における様々な細胞型でのアポトーシスに関与していることが見出された(Artavanis-Tsakonas等, Science 268:225 (1995)参照)。
【0004】
哺乳類は4つのノッチレセプタータンパク質(ノッチ1からノッチ4と命名されている)と5つの対応するリガンド(Delta様1(DLL−1)、 Delta様3(DLL−3)、Delta様4(DLL−4)、Jagged−1及びJagged−2と命名されている)を持っている。哺乳類のノッチレセプター遺伝子は、細胞表面へのその輸送の間に切断されヘテロ二量体として存在する〜300kDのタンパク質をコードしている。ノッチレセプターの細胞外部分は34の上皮増殖因子(EGF)様反復と3つのシステインリッチのノッチ/LIN12反復を有している。2つの切断されたサブユニットの結合は切断部位のN末端及びC末端の直ぐ近くにある配列によって媒介され、これらの2つのサブユニットはノッチヘテロ二量体化(HD)ドメインを構成している(Wharton等, Cell 43:567 (1985);Kidd等, Mol Cell Biol 6:3431 (1986);Kopczynski等, Genes Dev 2:1723 (1988);Yochem等, Nature 335:547 (1988))。
【0005】
現在でも、ノッチシグナル伝達が異なったレセプターによってどのようにして調節されるのか、又は5つのリガンドはそのシグナル伝達又は調節においてどのように異なっているのかは、未だ明らかではない。シグナル伝達及び/又は調節の差は異なった組織中におけるその発現パターンによって、あるいは異なった環境要因によって制御されうる。Jagged/Serrate及びDelta/Delta様を含むノッチリガンドタンパク質はEGF反復領域に特異的に結合し、レセプター媒介ノッチシグナル伝達を誘導する(Bray, Nature Rev Mol Cell Biol. 7:678 (2006)及びKadesch, Exp Cell Res. 260:1 (2000)により概説されている)。EGF反復のなかで、10番目から12番目の反復はノッチレセプターへのリガンド結合に必要とされ、他のEGF反復はレセプター−リガンド相互作用を亢進しうる(Xu等, J Biol Chem. 280:30158 (2005);Shimizu等, Biochem Biophys Res Comm. 276:385 (2000))。LIN12反復と二量体化ドメインは、リガンド結合に直接的には関与していないが、それらはヘテロ二量体タンパク質複合体の維持に重要な役割を果たしており、リガンド独立性のプロテアーゼ切断及びレセプター活性化を防止している(Sanche-Irizarry等, Mol Cell Biol. 24:9265 (2004);Vardar等, Biochem. 42:7061 (2003))。
【0006】
腸及び神経幹細胞を含む多くの組織由来の正常な幹細胞は、自己複製及び運命決定のためにノッチシグナル伝達に依存している(Fre等, Nature, 435:964 (2005);van Es等, Nature, 435:959 (2005);Androutsellis-Theotokis等, Nature, 442:823 (2006))。従って、ノッチ3アゴニスト抗体は神経変性疾患に用途を有しうる。CADASIL(皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、カダシル)は、その重要な特徴が再発性皮質下虚血性事象及び血管性認知症を含むあるタイプの脳卒中及び認知症を引き起こす。CADASILは、染色体19に局在化した変異遺伝子が伴っていることが見出されている(Joutel等, Nature 383:707 (1996))。Joutel等は、CADASILの患者において、ノッチ3遺伝子の深刻な破壊を引き起こす変異を同定し、ノッチ3がCADASILの患者における欠損タンパク質でありうることを示している。不幸にも、この無能力化率の高いしばしば致死的な疾患は、診断未確定か多発性硬化症及びアルツハイマー病と誤診されたままのことが多い。現在の研究は、これが最初に考えられたよりもはるかに広範な症状であることを証明することにある傾向がある。
【0007】
ノッチ3関連疾患の更なる例は、ノッチ3遺伝子と同じ染色体19の領域に位置しているアウラを伴う常染色体優性形態の片頭痛である家族性片麻痺性片頭痛(FHM)である。CADASILに罹患している患者の30%より多くがアウラを伴う片頭痛をまた被っていることは留意されなければならない。しかしながら、後者は人口の約5%だけに観察され、この観察はこの症状の機序におけるノッチ3遺伝子の関与の発見に至った。同様に、家族性発作性失調は染色体19の同じ領域に位置している遺伝子に関連しており、ノッチ3はこの症状に関連している。ノッチ3に関連している他の症状及び疾患にはアラジール症候群が含まれる(Flynn等, J Pathol 204:55 (2004))。
【0008】
進行中の調査研究は、現在は、ノッチ3発現及び/又はシグナル伝達欠陥に関連した他の疾患及び症状を特定するためになされている。ノッチ3のシグナル経路に関連した非常に多くのヒト疾患に鑑みれば、これらの疾患を予防し治療する新しい方法を同定することが重要である。本発明はこの未だ対処されていない医療必要性に有用な抗ノッチ3アゴニスト抗体を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、LIN12ドメインにおけるヒトノッチ3レセプターのエピトープに特異的に結合する新規なアゴニスト抗体とその断片を提供する。本発明の他の態様は、本発明の抗体と同じ該エピトープに結合するエピトープ結合部位及び抗体を含む。本発明の抗体はリガンド結合とは独立してノッチ3レセプターを介したノッチ3媒介性シグナル伝達を活性化する。
【0010】
本発明は抗体の可変重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列とその対応する核酸配列を含む。本発明の他の実施態様はこれらの抗体のCDR配列を含む。
【0011】
本発明の他の実施態様は本発明の抗体配列を内部に持つ細胞株及びベクターを含む。
【0012】
本発明はまた本発明のアゴニスト抗体によって認識されるエピトープを含む。本発明はまたこのエピトープに結合する抗体を含む。該実施態様は、配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の配列同一性を有するLin12ドメインを含むノッチ3エピトープを含む。より詳細には、ノッチ3エピトープは配列番号11を含む。本発明はこのエピトープに結合するアゴニスト抗体を含む。
【0013】
本発明の他の実施態様は、例えばレセプター不活性化に関連したノッチ3関連疾患及び障害の治療のための医薬又は組成物の調製のためのこれら抗体の使用である。
【0014】
本発明の他の実施態様は、例えばリガンド結合とは独立にノッチ3シグナル伝達を活性化させることによる、上記欠損の活性化を含む、例えばレセプター不活性化に関連したノッチ3関連疾患又は障害の治療におけるこれらの抗体の使用である。ノッチ3関連障害には、限定されないが、CADASIL、家族性片麻痺性片頭痛(FHM)、家族性発作性失調、アラジール症候群及び他の変性疾患が含まれうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はノッチ3のアミノ酸配列を示す。EGF反復領域はアミノ酸残基43から1383まで伸長している;LIN12ドメインはアミノ酸残基1384から1503まで伸長している;二量体化ドメインはアミノ酸残基1504から1640まで伸長している。
【図2A】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2B】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2C】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2D】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2E】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2F】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2G】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図2H】ヒトノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4間のアミノ酸配列比較を示す。
【図3】ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、及びノッチ4のパーセント同一性を示す。
【図4】4A及び4Bは、抗ノッチ3モノクローナル抗体MAb256A−13(配列番号2)の重鎖及び軽鎖可変領域を示し、CDR領域には下線を付す。
【図5】ノッチ3レセプターに対する抗ノッチ3MAbsによる活性化効果を示す実施例5のルシフェラーゼレポーターアッセイを示す。
【図6】ノッチ3のメタロプロテアーゼ切断に対するノッチ3アゴニスト抗体の影響を示す。
【図7】256A−13の結合部位のエピトープマッピングのためのノッチ3−Fc融合タンパク質コンストラクトを示す。
【図8】図8は、天然ノッチ3リーダーペプチドコード配列(NCBI GenBank受託番号NM_000435)に対する遺伝子操作ノッチ3リーダーペプチドコード配列の比較を示し、ヌクレオチドの変化を示し(8A)、また遺伝子操作ノッチリーダーペプチド配列の翻訳されたアミノ酸配列を示す(8B)。図8CはLIN12ドメインを示し、8DはLIN12のサブドメインエピトープを示す。
【図9】PCR−SOE法によるドメインスワップコンストラクトの生成を示す。矢印バーはPCRプライマーを表す。白抜きバーはノッチ3配列。塗り潰しバーはノッチ1配列である。
【図10】MAb256A−13のノッチ3LIN12ドメインエピトープマッピングに使用されたアミノ酸配列を示す。
【図11】256A−13の線形エピトープマッピングのためのアラニンスキャニングペプチドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ここに記載された特定の方法、プロトコル、細胞株、ベクター、又は試薬には、それらは変わりうるので、限定されない。更に、ここで使用される用語法は特定の実施態様だけを記述する目的のものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」、「the」は文脈が明らかに他の意味になっていない限り、複数形を含む。例えば、「宿主細胞(a host cell)」は複数のかかる宿主細胞を含む。別の意味に定義されていない限り、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語及び任意の頭字語は本発明の分野で当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。ここに記載されたものと同様な又は等価な任意の方法及び材料を本発明の実施に使用することができるが、例示的な方法、装置、及び材料をここに記載する。
【0017】
ここで述べられる全ての特許及び刊行物は、本発明で使用されるかもしれないそこで報告されたタンパク質、酵素、ベクター、宿主細胞、及び方法論を記述し開示する目的のために、法律によって許容される範囲で、出典明示によりここに援用される。しかしながら、ここでの何も本発明にはそのような開示に先行する権利が与えられていないということを自認するものと解釈してはならない。
【0018】
定義
この出願を通して使用される用語は、当業者にとって通常の典型的な意味を持つものと解されるものである。しかしながら、本出願人は、次の用語には、以下に記載される特定の定義が与えられることを所望する。
【0019】
抗体鎖ポリペプチド配列に関する「実質的に同一」なる語句は、参照ポリペプチド配列に対して少なくとも70%、又は80%、又は90%、又は95%の配列同一性を示す抗体鎖と解することができる。核酸配列に関する該用語は、参照核酸配列に対して少なくとも約85%、又は90%、又は95%、又は97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列と解することができる。
【0020】
「同一性」又は「相同性」なる用語は、配列をアラインメントさせ、全配列に対して最大の配列同一性を達成するために必要ならばギャップを導入し、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない、比較される対応する配列の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率を意味するものと解釈される。N末端又はC末端伸長又は挿入の何れも同一性又は相同性を減少させると解されない。アラインメントの方法及びコンピュータプログラムは当該分野でよく知られている。配列同一性は配列解析ソフトウェアを使用して測定することができる。
【0021】
「抗体」なる用語は最も広い意味で使用され、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、及び多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望する生物活性を示す限りは抗体断片を包含する。抗体(Abs)及び免疫グロブリン(Igs)は同じ構造的特性を有する糖タンパク質である。抗体は特定の標的に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは標的特異性を欠く抗体と他の抗体様分子の双方を含む。 本発明の抗体は任意のタイプ (例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスでありうる。天然抗体及び免疫グロブリンは、通常は、2つの同一の軽(L)鎖よ2つの同一の重(H)鎖からなる約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)を、その他端に定常ドメインを有する。
【0022】
ここで使用される場合、「抗ノッチ3抗体」は、リガンドとは独立にノッチ3シグナル伝達を活性化させるような形でヒトノッチ3に特異的に結合する抗体を意味する。
【0023】
抗体の可変ドメインの文脈における「可変」なる用語は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が広く異なり、その特定の標的に対する各特定の抗体の結合及び特異性に使用されるという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインに均一には分散していない。軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方において高頻度可変領域としても知られている相補性決定領域(CDRs;つまりCDR1、CDR2、及びCDR3)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインの更に高度に保存されている部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大体においてβシート構造をとる4つのFR領域を有し、該FR領域は、ある場合には該βシート構造の一部を形成しながら該βシート構造を連結するループを形成する3つのCDRにより連結される。各鎖中のCDRはFR領域によって近接して保持され、他方の鎖からのCDRとともに抗体の標的結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1987))。本明細書において、免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付けは、特に明記しない限り、Kabat等の免疫グロブリンアミノ酸残基番号付けにしたがって行われる。
【0024】
「抗体断片」なる用語は、全長抗体の部分、通常は標的結合又は可変領域を指す。抗体断片の例は、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)、及びFv断片を含む。抗体の「機能的断片又はアナログ」なる語句は、全長抗体と同様に定性的生物活性を有する化合物である。例えば、抗ノッチ3抗体の機能的断片又はアナログは、レセプターがそのリガンドに結合する又はシグナル伝達を開始する能力を抑制するか又は実質的に低減するようにノッチ3レセプターに結合できるものである。ここで使用する、抗体に関する「機能的断片」はFv、F(ab)、及びF(ab’)断片を指す。「Fv」断片は、一つの重鎖可変ドメインと一つの軽鎖可変ドメインとが緊密に非共有会合した二量体(V−V二量体)からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V二量体の表面上に抗原結合部位を定めるのはこのような立体配置においてである。集合的に、6つのCDRが該抗体に標的結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は標的に特異的な3つのCDRのみを有するFvの半分)であっても、完全な結合部位に比べると低い親和性においてではあるが標的を認識及び結合する能力を有する。
【0025】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインはポリペプチド単鎖中に存在している。一般に、Fvポリペプチドは、標的結合のための所望の構造をsFvが形成することを可能にするポリペプチドリンカーをV及びVドメイン間に更に含む。
【0026】
「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、該断片は同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖上で2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いることによって、これらのドメインは別の相補ドメインと対をなし、そして2つの抗原結合部位を生成する。
【0027】
F(ab)断片は、軽鎖定常ドメインと重鎖第一定常ドメイン(CH1)を含む。F(ab’)断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が加わっている点でF(ab)断片と異なる。F(ab’)断片は、F(ab’)ペプシン消化産物のヒンジシステインのジスルフィド結合を切断することにより生産される。抗体断片の更なる化学結合は当業者に周知である。
【0028】
ここで使用する「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均質な抗体の集団、すなわち該集団を構成する個々の抗体が最小量で存在しうる天然発生する可能性のある突然変異以外は同一であるもの、から得られた抗体を指す。本明細書においてモノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か又は相同であり、残りの鎖が、特定の種由来の抗体、又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、並びに所望の生物活性を示す限りにおいてそういった抗体の断片を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc Natl Acad Sci USA 81:6851 (1984))。モノクローナル抗体は、単一の標的部位に対して向けられており、高度に特異的である。更に、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を典型的に含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は標的上の単一の決定基に向けられている。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は他の免疫グロブリンが混入することのないハイブリドーマ培養により合成されうる点で有利である。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に相同な集団から得られたという抗体の性質を示し、何らかの特定の方法で抗体を生産する必要があると解釈されるものではない。例えば、本発明で使用するモノクローナル抗体は、周知の技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離されうる。本発明に従って使用される親モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature 256:495 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法で作製でき、又は組換え法により作製できる。
【0029】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小で含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、又は抗体の他の標的結合性のサブ配列など)である。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン鋳型配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、典型的には選択されたヒト免疫グロブリン鋳型のものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含みうる。
【0030】
「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」なる用語は子孫を含む。全ての子孫は、故意の、或いは故意ではない変異によりDNA含量が厳密に同一でなくてもよいことも理解されたい。独自に形質転換された細胞においてスクリーニングされた同一の機能又は生物学的特性を有する変異子孫も含まれる。本発明で使用される「宿主細胞」は、概して原核生物又は真核生物宿主である。
【0031】
DNAによる細胞生物、細胞、又は細胞株の「形質転換」は、染色体外要素としてか又は染色体への組込みによって、DNAが複製可能であるようにDNAを標的細胞に導入することを意味する。DNAによる細胞又は生物の「形質移入(トランスフェクション)」は、いかなるコード配列が実際に発現されるかに関わらず、細胞又は生物によるDNA、例えば発現ベクターの引受けを指す。「形質移入された宿主細胞」及び「形質転換された」なる用語は、DNAが導入された細胞を指す。該細胞は「宿主細胞」と称され、原核生物又は真核生物のものでありうる。典型的な原核生物宿主細胞は、様々な大腸菌株を含む。典型的な真核生物宿主細胞は、哺乳類のもの、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞、又はヒト起源の細胞である。導入されたDNA配列は、宿主細胞と同じ種のものであっても、宿主細胞と異なる種のものであってもよく、或いは何らかの外来DNA及び何らかの相同DNAを含むハイブリッドDNA配列であってよい。
【0032】
「ベクター」なる用語は、適切な宿主でDNAの発現をもたらすことができる適切な制御配列に作用可能に連結されたDNA配列を含むDNAコンストラクトを意味する。こういった制御配列は、転写をもたらすプロモーター、そういった転写を制御する任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び翻訳の終止を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は単に潜在的ゲノム挿入でありうる。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは複製し宿主ゲノムと独立して機能しうるか又は、いくつかの例においてはゲノムそのものに組込まれうる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合がある。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たす、当該分野で周知の又は周知となる他の形態のベクターを含むことを意図する。
【0033】
治療を目的とした「哺乳動物(類)」は、ヒト、家畜、非ヒト霊長類、及び動物園、運動競技、又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳類として類別されるいかなる動物も指す。
【0034】
ここで使用する「標識」なる語は、例えば抗体といった、分子又はタンパク質に直接又は間接的にコンジュゲートできる検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば放射性同位元素標識、又は蛍光標識)か又は、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変化を触媒しうる。
【0035】
ここで使用する「固相」は、本発明の抗体が接着する非水性マトリックスを意味する。ここで網羅する固相の例は、ガラス(例えば孔制御ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、及びシリコンから部分的又は完全になるものを含む。特定の実施態様において、状況次第で、固相はアッセイプレートのウェルを含み、他の実施態様では精製カラム(アフィニティクロマトグラフィカラム)である。
【0036】
ここで使用する「ノッチ3介在障害」なる用語は、ノッチ3レセプターの欠損又は過少発現(underexpress)を特徴とする状態又は疾患を意味する。特に、該用語は、カダシル(CADASIL)、FHM、家族性発作性運動障害(失調)、アラジール症候群、及び他の変性疾患といった変性疾患に関連する状態を含むと解釈されるものである。
【0037】
抗体を生産するためのノッチ3レセプター免疫原
可溶型標的又はその断片は抗体の生産のための免疫原として使用することができる。抗体は対象の標的に対してつくられる。好ましくは、標的は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患又は障害を被っている哺乳類への投与がその哺乳類において治療的効果を生じうる。全細胞を、抗体を作製するための免役原として使用することができる。免役原は組換え的に生産され又は合成法を使用して作製されうる。免役原は天然源から単離することもまたできる。
【0038】
レセプターのような膜貫通分子の場合、これらの断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)を免役原として使用することができる。別法として、膜貫通分子を発現する細胞を免役原として使用することができる。かかる細胞は天然源(例えば癌細胞株)から誘導することができ、又は膜貫通分子を過剰発現させる組換え技術によって形質転換されている細胞でありうる。抗体調製のために有用な免役原の他の形態は当業者には明らかであろう。
【0039】
別法として、ヒトノッチ3レセプターをコードする遺伝子又はcDNAをプラスミド又は他の発現ベクター中にクローニングし、当業者によく知られている方法に従って多くの発現系の何れかにおいて発現させることができる。ノッチ3レセプター及びヒトノッチ3レセプターに対する核酸配列をクローニングし発現させる方法は知られている(例えば米国特許第5821332号及び同第5759546号を参照)。遺伝コードが縮重しているので、ノッチ3レセプタータンパク質又はポリペプチドをコードする多数のヌクレオチド配列を使用できる。可能なコドン選択に基づき組合せを選択することによってヌクレオチド配列を変更できる。これらの組合せは、天然発生ノッチ3レセプターをコードするヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝コードに従ってなされ、全てのそのような変形が考慮されうる。これらのポリペプチドの何れか一つが、ヒトノッチ3レセプターに結合する抗体を生産するために動物の免疫化で使用されうる。
【0040】
他の種からの組換えノッチ3タンパク質もまた、ノッチ3のアミノ酸配列の保存性の高さにより、抗体生産のための免疫原として使用できる。ヒトとマウスのノッチ3の比較では、90%を超えるアミノ酸配列が2つの種の間で同一であることが示された。
【0041】
免疫原ノッチ3レセプターは、有益な場合、融合セグメントに付着したノッチ3レセプターを有する融合タンパク質として発現されうる。融合セグメントはしばしば、例えば融合タンパク質の単離及びアフィニティクロマトグラフィによる精製を可能にすることによるタンパク質精製に役立つが、免疫原性の増進にも使用できる。融合タンパク質は、タンパク質のカルボキシル及び/又はアミノ末端の何れかに付着した融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸配列で形質転換した組換え細胞を培養することで生産することができる。融合セグメントとしては、免疫グロブリンFc領域、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、二価金属イオンに結合可能なポリ-ヒスチジンセグメント、及びマルトース結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
実施例1に記載の組換えノッチ3レセプタータンパク質を使用してマウスを免疫化し、本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを生産した。例示的なポリペプチドは、配列番号1の全て又は一部、又はその変異形を含む。
【0043】
抗体生産
本発明の抗体は、当該分野で周知のいかなる適切な方法により生産してもよい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体の調製方法は、当業者に周知である(出典明示によりここに援用するHarlow等, Antibodies: a Laboratory Manual, Cold spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. (1988))。
【0044】
例えば、実施例1に記載の免疫原を様々な宿主動物、限定するものではないが例えばウサギ、マウス、ラット等に投与して、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の生産を誘発してよい。免疫原の投与には、免疫剤、及び所望であればアジュバントの一又は複数の注入が伴いうる。宿主の種に応じて、免疫応答を増大するために様々なアジュバントが使用でき、限定するものではないが、フロイントアジュバント(完全及び不完全)、無機物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及び潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウムパルバムを含む。使用されうるアジュバントの更なる例としては、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコルは当該分野で周知であり、選択された動物宿主において免疫応答を引き起こすいかなる方法によっても実行できる。アジュバントもまた当該分野で周知である。
【0045】
典型的に、免疫原(アジュバントあり又はなし)は、頻回皮下又は腹腔内注射、又は筋肉又は静脈注射により哺乳類に注入される。免疫原は、ノッチ3ポリペプチド、融合タンパク質、又はその変異体を含みうる。ポリペプチドの性質(つまり、疎水性パーセント、親水性パーセント、安定性、正味荷電、等電点等)に応じて、免疫化されている哺乳類において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫原をコンジュゲートすることが有用でありうる。かかるコンジュゲートは、共有結合が形成されるようにコンジュゲートすべき免疫原性タンパク質と免疫原の両方に活性化学官能基を誘導体化することによるか又は誘導タンパク質に基づいた手順を介した化学的コンジュゲート、又は当業者に周知の他の方法を含む。かかる免疫原性タンパク質の例としては、限定するものではないが、キーホールリンペットヘモシアニン、オボアルブミン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、ダイズトリプシンインヒビター、及び乱交雑Tヘルパーペプチドが挙げられる。上述したように、免疫応答を増大するために様々なアジュバントが使用されうる。
【0046】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体は、単一抗原部位を認識する抗体である。それらの均一な特異性により、モノクローナル抗体は、通常多様な異なる抗原部位を認識する抗体を含むポリクローナル抗体よりはるかに有用である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、例えばKohler等, Nature 256:495 (1975);米国特許番号第4376110号; Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. (1988)及びHammerling等, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier (1981)に記載のもの、組換えDNA法、又は当業者に周知の他の方法を用いて調製できる。モノクローナル抗体の生産に使用されうる他の方法の例としては、限定するものではないが、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor等, Immunology Today 4:72 (1983); Cole等, Proc Natl Acad Sci USA 80:2026 (1983))、及びEBVハイブリドーマ技術(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, 77-96ページ, Alan R. Liss (1985))が挙げられる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンクラス、及びそのサブクラスのものであってよい。本発明のMAbを生産するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養されうる。
【0047】
ハイブリドーマモデルにおいて、宿主、例えばマウス、ヒト化マウス、ヒト免疫系を有するマウス、ハムスター、ウサギ、ラクダ、又は任意の他の適切な宿主動物は免疫化され、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を生産するか又は生産可能なリンパ球を誘導する。別法として、リンパ球はインビトロで免疫化されうる。リンパ球は次いで、ポリエチレングリコールといった適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞に融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 59-103ページ (1986))。
【0048】
通常、抗体生産ハイブリドーマの作製において、ヒト由来の細胞が所望される場合は末梢血リンパ球(PBLs)が使用され、又は非ヒト哺乳類源が所望される場合は脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。リンパ球は次いで、ポリエチレングリコールといった適切な融合剤を用いて不死化細胞株に融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 59-103ページ (1986))。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳類細胞、特にげっ歯類、ウシ又はヒト由来の骨髄腫細胞である。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは未融合の不死化細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地において培養されうる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失している場合、ハイブリドーマ培地は典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を防ぐ物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む(「HAT培地」)。
【0049】
好適な不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体生産細胞による安定した高レベルの抗体生産を支援し、且つHAT培地といった培地に感受性があるものである。これらの骨髄腫細胞株としては、マウス骨髄腫株、例えばthe Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. U.S.から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びAmerican Type Culture Collection, Rockville, Md. USAから入手可能なSP2/0又はX63-Ag8-653細胞由来のものがある。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の生産のために記載されている(Kozbor, J Immunol 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc, 51-63ページ (1987))。マウス骨髄腫細胞株NSOもまた使用されうる(European Collection of Cell Cultures, Salisbury, Wilshire, UK)。
【0050】
ハイブリドーマ細胞が増殖する培地が、ノッチ3に対するモノクローナル抗体の生産のためにアッセイされる。ハイブリドーマ細胞により生産されたモノクローナル抗体の結合特性は、免疫沈降又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素免疫測定法(ELISA)によって決定されうる。かかる技術は、当該分野及び当業者には周知である。ノッチ3に対するモノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Scatchard分析により決定できる(Munson等, Anal Biochem 107:220 (1980))。
【0051】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を生産するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、限界希釈法によりサブクローニングされ、標準的な方法により増殖されうる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 59-103ページ (1986))。この目的に適切な培地としては例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM)又はRPMI-1640培地が挙げられる。また、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖してもよい。
【0052】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインAセファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル排除クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィにより、培地、腹水、又は血清から適切に分離又は単離される。
【0053】
モノクローナル抗体の生産のための様々な方法が当該分野に存在し、よって、本発明はハイブリドーマでの生産のみに限定されるものではない。例えば、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号に記載のものによって作製されてよい。この文脈で「モノクローナル抗体」なる用語は、単一の真核生物、ファージ又は原核生物クローン由来の抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えばマウス抗体、又はヒト、ヒト化又は他の起源からの重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブによって)(Innis等, In PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Academic (1990);Sanger等, Proc Natl Acad Sci 74:5463 (1977))、容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞はかかるDNAの源として役立つ。一旦単離されると、DNAは発現ベクター内に挿入され、該ベクターは次いで宿主細胞、例えば大腸菌細胞、NS0細胞、シミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を生産しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。DNAはまた、例えば相同なマウス配列を、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインをコードする配列に置換することによって(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc Natl Acad Sci USA 81:6851 (1984))、或いは非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全て又は一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって、修飾されうる。かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインと置換可能か、又は本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインと置換可能で、キメラ二価抗体を作製できる。
【0054】
抗体は一価抗体であってよい。一価抗体の調製方法は当該分野で周知である。例えば、ある方法は、免疫グロブリンの軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を伴う。重鎖は通常、重鎖の架橋を防ぐためにFc領域の任意の点で切断される。或いは、重鎖の架橋を防ぐために、関連するシステイン残基が別のアミノ酸残基に置換されるか又は削除される。
【0055】
特異的エピトープを認識する抗体断片は周知の技術によって生成されうる。伝統的には、これらの断片はインタクトな抗体のタンパク分解を介して誘導された(例えばMorimoto等, J Biochem Biophys Methods 24:107 (1992);Brennan等, Science 229:81 (1985)を参照)。例えば本発明のFab及びF(ab’)断片は、酵素、例えば(Fab断片の生産のために)パパイン、又は(F(ab’)断片の生産のために)ペプシンを用いて、免疫グロブリン分子のタンパク分解的切断により生産されうる。F(ab’)断片は、可変領域、軽鎖定常領域、及び重鎖のCH1ドメインを含む。しかしながら、これらの断片は現在、組換え宿主細胞により直接生産できる。例えば、抗体断片は、抗体ファージライブラリから単離できる。或いは、F(ab’)-SH断片が、大腸菌から直接回収され、F(ab’)断片を形成するために化学的に結合できる(Carter等, Bio/Technology 10:163 (1992))。別法によると、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離できる。他の抗体断片生産技術は、当業者には明らかであろう。他の実施態様において、最適な抗体は単鎖Fv断片(Fv)である(国際公報第93/16185号)。
【0056】
ヒトにおける抗体のインビボでの使用及びインビトロ検出アッセイを含む、いくつかの使用では、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体の使用が好ましい。キメラ抗体は、抗体の複数の異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばマウスモノクローナル抗体由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体である。キメラ抗体の生産方法は当該分野で周知である。例えば、出典明示によりここに援用するMorrison, Science 229:1202 (1985);Oi等, BioTechniques 4:214 (1986);Gillies等, J Immunol Methods 125:191 (1989);米国特許第5807715号;同第4816567号;及び同第4816397号を参照。
【0057】
ヒト化抗体は、動物由来のモノクローナル抗体よりもヒト免疫グロブリンに高い相同性を持つように設計される。ヒト化は、実質的に一以下のインタクトなヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体の作製技術である。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の一又は複数の相補性決定領域(CDRs)を有する所望の抗原と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク(FR)領域とを結合する非ヒト種で生成される抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基は、抗原結合を改変、好ましくは改良するためにCDRドナー抗体由来の対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法、例えば抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリング、及び特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較により、同定される。例えば、出典明示によりここに援用する米国特許第5585089号;Riechmann等, Nature 332:323 (1988)を参照。抗体は、例えばCDRグラフト技術(欧州特許第239400号;国際公報第91/09967号;米国特許第5225539号;同第5530101号;及び同第5,585089号)、ベニアリング(veneering)又はリサーフェシング(resurfacing)(欧州特許第592106号;欧州特許第519596号;Padlan, Molecular Immunology 28:489 (1991);Studnicka等, Protein Engineering 7:805 (1994);Roguska等, Proc Natl Acad Sci USA 91:969 (1994))、及び鎖シャフリング(chain shuffling)(米国特許第5565332号)を含む当該分野で周知の様々な技術を用いてヒト化可能である。
【0058】
通常、ヒト化抗体は、非ヒト源から導入された一又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列をCDR配列に置換することにより、Winter及び共同研究者等の方法に従って基本的に実行可能である(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536(1988))。よって、かかる「ヒト化」抗体は、実質的に一以下のインタクトなヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によってはいくらかのFR残基がげっ歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0059】
抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが更に重要である。この目標を達成するべく、好適な方法では、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における特定の残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼすのはCDR残基であるが、このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった望ましい抗体特性が最大化されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。
【0060】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作製する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、非ヒト抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に非ヒト親抗体のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトFRとして受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。別の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導された特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを複数の異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623 (1993))。
【0061】
ヒト患者の治療には完全なヒト抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリを用いて上述したファージディスプレイ法を含む当該分野で周知の様々な方法によって作製できる。米国特許第4444887号及び同第4716111号;及び国際公報第98/46645号、同第98/50433、同第98/24893、同第98/16654、同第96/34096、同第96/33735、及び同第91/10741も参照のこと。これらは出典明示によりここに援用する。Cole等及びBoerder等の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Riss (1985);及びBoerner等, J Immunol 147:86 (1991))。
【0062】
ヒト抗体はまた、機能的内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生産することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体が、ランダムに又は相同的組換えにより、マウスES細胞に導入されうる。或いは、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域が、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えてマウスES細胞へ導入されてもよい。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同的組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別個に又は同時に非機能性を付与されうる。特に、JH領域のホモ接合体欠失は内因性抗体生産を防止する。改変ES細胞は、キメラマウスを生産するために伸長され胚盤胞に微量注入される。キメラマウスは次いで、ヒト抗体を発現するホモ接合型の子孫を生産するために交配される。例えばJakobovitis等, Proc Natl Acad Sci USA 90:2551 (1993);Jakobovitis等, Nature 362:255 (1993);Bruggermann等, Year in Immunol 7:33 (1993);Duchosal等, Nature 355:258 (1992)を参照。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えば本発明のポリペプチドの全て又は一部を用いて通常の手順で免疫化される。抗原に対するモノクローナル抗体が、従来のハイブリドーマ技術を用いて免疫化されたトランスジェニックマウスから得られる。トランスジェニックマウスに宿ったヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞の分化中に再配列し、続いてクラススイッチと体細胞変異を遂げる。このように、かかる技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、及びIgE抗体を生産することができる。ヒト抗体を生産するための当該技術の概要については、Lonberg等, Int Rev Immunol 13:65-93 (1995)を参照のこと。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生産するための当該技術及びかかる抗体を生産するためのプロトコルの詳細な考察については、例えば国際公報第98/24893号;同第92/01047号;同第96/34096号;同第96/33735号;欧州特許第0598877号;米国特許第5413923号;同第5625126号;同第5633425号;同第5569825号;同第5661016号;同第5545806号;同第5814318号;同第5885793号;同第5916771号;及び同第5939598号を参照のこと。これらは出典明示によりここに援用する。加えて、Abgenix, Inc. (Freemont, Calif.)、Genpharm (San Jose, Calif.)、及びMedarex, Inc. (Princeton, N.J.)といった企業が、上述したものと類似の技術を用いて、選択された抗原に対するヒト抗体を提供することに取り組みうる。
【0063】
また、ヒトMAbは、ヒト末梢血白血球、脾細胞、又は骨髄を移植されたマウスを免疫化することによって作製されうる(Trioma techniques of XTL)。選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイド選択(guided selection)」と称される技術を用いて生産できる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を用いて、同一のエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする(Jespers等, Bio/technology 12:899 (1988))。
【0064】
更に、本発明のポリペプチドに対する抗体を使用して、次に、当業者に周知の技術を用いて本発明のポリペプチドを「模倣」する抗イディオタイプ抗体を生産することができる(例えばGreenspan等, FASEB J 7:437 (1989);Nissinoff, J Immunol 147:2429 (1991)を参照)。例えば、リガンドに結合し、そしてポリペプチドのマルチマー化及び/又は本発明のポリペプチドのリガンドへの結合を競合的に阻害する抗体を使用して、ポリペプチドのマルチマー化及び/又はドメイン結合を「模倣」し、その結果ポリペプチド及び/又はそのリガンドに結合し不活性化する抗イディオタイプを生産できる。かかる不活性化抗イディオタイプ、又はかかるイディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを不活性化する治療法で使用することができる。例えば、かかる抗イディオタイプ抗体を使用して、本発明のポリペプチドを結合及び/又はそのリガンド/レセプターを結合し、それによりその生物活性を遮断することができる。
【0065】
本発明の抗体は二重特異性抗体であってよい。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト又はヒト化抗体である。本発明では、結合特異性の一つはノッチ3に対するものであり、もう一つは他の何らかの抗原に対するもの、好ましくは細胞表面タンパク質、レセプター、レセプターサブユニット、組織特異的抗原、ウィルス由来のタンパク質、ウィルスによりコードされた外膜タンパク質、バクテリア由来のタンパク質、又は細菌表面タンパク質等に対するものであってよい。
【0066】
二重特異性抗体の作製方法は周知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え生産は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖の対の共発現に基づき、ここで2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein等, Nature 305:537 (1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生産し、該分子の一つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は通常、アフィニティクロマトグラフィ工程によりなされる。同様の手順が国際公報第93/08829号、及びTraunecker等, EMBO J 10:3655 (1991)に開示されている。
【0067】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合が好ましい。それは、融合の少なくとも一つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第一重鎖定常領域(CH1)を有しうる。免疫グロブリン重鎖融合、及び所望であれば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に同時形質転換される。二重特異性抗体の生産の更なる詳細については、例えば
Suresh等, Meth In Enzym 121:210 (1986)を参照。
【0068】
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明で考えられる。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。かかる抗体は例えば、免疫系細胞を不要な細胞に標的化するために提案されてきた(米国特許第4676980号)。該抗体は、架橋剤を伴うものを含む、合成タンパク質化学の周知の方法を用いたインビトロでの調製が考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて又はチオエスエル結合を形成して、免疫毒素が構築されてよい。この目的のための適切な試薬の例としては、イミノチオレート、及びメチル-4-メルカプトブチルイミダート、及び例えば米国特許第4676980号に開示のものが挙げられる。
【0069】
また、ノッチ3に対する単一ドメイン抗体を生産することができる。この技術の例は、ラクダ重鎖Ig由来の抗体に関する国際公報第94/25591号、並びにファージライブラリからの単一ドメイン完全ヒト抗体の単離を記載した米国特許公報第2003/0130496号に記載されている。
【0070】
重鎖及び軽鎖Fv領域が結合されているペプチド単鎖結合分子を生成することもできる。単鎖抗体(「scFv」)及びそれらの構築方法は、米国特許第4946778号に記載されている。或いは、同様の手段によってFabを構築及び発現することができる。全ての完全及び部分的ヒト抗体が、完全マウスMAbよりも免疫原性が低く、断片及び単鎖抗体もまた免疫原性が低い。
【0071】
抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature 348:552 (1990)に記載の技術を用いて生成された抗体ファージライブラリから単離できる。Clarkson等, Nature 352:624 (1991)、及びMarks等, J Mol Biol 222:581 (1991)は、ファージライブラリを用いた、それぞれマウス抗体とヒト抗体の単離を記載している。続いて公開された文献は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology 10:779 (1992))、並びに非常に大きなファージライブラリの構築方策としての組合せ感染(combinatorial infection)及びインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc Acids Res 21:2265 (1993))を記載している。よって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な別法である。
【0072】
DNAはまた、例えば相同なマウス配列を、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインをコードする配列に置換することによって修飾されうる(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc Natl Acad Sci USA 81:6851 (1984))。
【0073】
更なる別法は、化学融合ではなく電気融合を用いてハイブリドーマを形成することである。この技術は定着している。融合の代わりに、例えばエプスタイン・バー・ウィルス又は形質転換遺伝子を用いて、B細胞を形質転換し、それを不死化することもできる。例えば、“Continuously Proliferating Human Cell Lines Synthesizing Antibody of Predetermined Specificity,” Zurawaki, 等, in Monoclonal Antibodies, Kennett等編, Plenum Press, 19-33ページ (1980)を参照。抗ノッチ3MAbは、真核細胞系か原核細胞系の何れかにより発現されたノッチ3タンパク質、融合タンパク質、又はその断片でげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター及びモルモット)を免疫化することによって作製できる。他の動物、例えば非ヒト霊長類、トランスジェニックマウス発現イムノグロブリン、及びヒトBリンパ球を移植された重症複合免疫不全(SCID)マウスを、免疫化に用いることができる。ハイブリドーマは、上述したように(Koehler等, Nature 256:495 (1975))免疫化動物からのBリンパ球を骨髄腫細胞(例えばSp2/0及びNSO)と融合することによって従来の手順で生成できる。更に、抗ノッチ3抗体は、ファージディスプレイ系におけるヒトBリンパ球からの組換え単鎖Fv又はFabライブラリのスクリーニングによって生成できる。ノッチ3に対するMAbの特異性は、ELISA、ウェスタン免疫ブロット法、又は他の免疫化学的技術によって試験できる。補体活性化に対する抗体の阻害活性は、古典的補体経路について感作されたチキン又はヒツジRBCを用いて溶血アッセイにより評価できる。陽性ウェルのハイブリドーマは限界希釈法によりクローニングされる。抗体は、上述のアッセイにより、ヒトノッチ3に対する特異性についての特徴付けのために精製される。
【0074】
抗ノッチ3抗体の同定
本発明は、リガンド結合とは独立してノッチ3媒介性シグナル伝達を活性化するアゴニストモノクローナル抗体を提供する。特に、本発明の抗体はノッチ3に結合し、それを活性化する。本発明の抗体は、256A-13に対する抗体を含む。本発明はまた、256A-13と同じエピトープに結合する抗体を含む。
【0075】
候補抗ノッチ3抗体を、酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタン免疫ブロット法、又は他の免疫化学的技術によって試験した。個々の抗体を特徴付けるために実行したアッセイは実施例に記載する。
【0076】
本発明の抗体は、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、一価、二重特異性、ヘテロコンジュゲート、多重特異性、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリにより生産された断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、及び上述の何れかのエピトープ結合断片を含む。
【0077】
抗体は、本発明のヒト抗原結合抗体断片であってよく、限定するものではないが、Fab、Fab’及びF(ab’)、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、及びVL又はVHドメインの何れかを含む単一ドメイン抗体を含む。単鎖抗体などの抗原結合抗体断片は、単独の、或いはヒンジ領域、CH1、CH2及びCH3ドメインの全体又は一部と結合した可変領域を含みうる。また本発明には、可変領域と、ヒンジ領域、CH1、CH2及びCH3ドメインとの何らかの結合を含む抗原結合断片も含まれる。本発明の抗体は、トリ及び哺乳類など動物由来のものであってよい、好適には、抗体は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えばマウス及びラット)、ゴリラ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリ由来のものである。
【0078】
ここで使用する「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、そして、以下及びKucherlapati等による米国特許第5939598号に記載のように、内因性免疫グロブリンを発現しない一又は複数のヒト免疫グロブリントランスジェニック動物からか又は、ヒト免疫グロブリンライブラリから単離された抗体を含む。
【0079】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、又はそれ以上の多重特異性であってよい。多重特異性抗体は、ノッチ3の異なるエピトープに特異的であってよく、又はノッチ3と異種エピトープ、例えば異種ポリペプチド又は固体担体物質の両方に特異的であってよい。例えば、国際公報第93/17715号;同第92/08802号;同第91/00360号;同第92/05793号;Tutt等, J Immunol 147:60 (1991);米国特許第4474893号;同第4714681号;同第4925648号;同第5573920号;同第5601819号;Kostelny等, J Immunol 148:1547 (1992)を参照のこと。
【0080】
本発明の抗体は、それらが認識又は特異的に結合するノッチ3のエピトープ又は部分に関して説明又は特定されうる。エピトープ又はポリペプチド部分は、本明細書に記載のように、例えばN末端及びC末端位置によって、隣接アミノ酸残基のサイズによって、又は表及び図面に掲載されたように、特定されうる。
【0081】
本発明の抗体はまた、交差反応性に関して説明又は特定されうる。ノッチ3と少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、及び少なくとも50%の同一性(当該分野で周知の方法を用いて計算され、及び本明細書に記載されたとおり)を有するノッチ3ポリペプチドに結合する抗体もまた、本発明に含まれる。抗ノッチ3抗体はまた、約10−7M以下、約10−6M以下、約10−5M以下のKで他のタンパク質、例えば抗ノッチ3抗体が対象とするもの以外の種由来の抗ノッチ抗体と結合しうる。
【0082】
特定の実施態様において、本発明の抗体は、ヒトノッチ3のサル相同体、及び対応するそのエピトープと交差反応する。特定の実施態様において、上述の交差反応性は、何らかの単一特異的抗原性又は免疫原性ポリペプチド、又はここに開示した特異的抗原性及び/又は免疫原性ポリペプチドの組合せに関する。
【0083】
更に、ストリンジェントなハイブリダイズ条件下でノッチ3をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドを結合する抗体も本発明に含まれる。本発明の抗体はまた、本発明のポリペプチドに対するそれらの結合親和性に関して説明又は特定されうる。好適な結合親和性は、10−8から10−15M、10−8から10−12M、10−8から10−10M、又は10−10から10−12MのK又は平衡解離定数を有するものを含む。本発明はまた、競合的結合を決定するための当該分野で周知の任意の方法、例えばここに記載のイムノアッセイによって決定されるような、本発明のエピトープに対する抗体の結合を競合的に阻害する抗体を提供する。好適な実施態様では、抗体は、エピトープに対する結合を少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%、競合的に阻害する。
【0084】
ベクター及び宿主細胞
別の態様において、本発明は、ここに開示の抗体変異体をコードする単離された核酸配列、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターコンストラクト、かかるベクターを含む宿主細胞、及び抗体を生産するための組換え技術を提供する。
【0085】
抗体変異体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入される。抗体変異体をコードするDNAは、従来の手順で(例えば、抗体変異体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)容易に単離及び配列決定される。クローニング及び形質転換のための標準的な技術が、本発明の抗体を発現する細胞株の調製に使用されうる。
【0086】
ベクター
多くのベクターが利用できる。ベクター成分は通常、限定するものではないが、以下のもの:シグナル配列、複製起点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列の一又は複数を含む:。本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターは、周知の技術を用いて調製できる。発現ベクターは、適切な転写又は翻訳制御ヌクレオチド配列、例えば哺乳類、微生物、ウィルス、又は昆虫遺伝子由来のものに作用可能に連結されたヌクレオチド配列を含む。制御配列の例としては、転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、及び/又は転写及び翻訳の開始及び終結を制御する他の適切な配列が挙げられる。ヌクレオチド配列は、制御配列が適切なポリペプチドのヌクレオチド配列と機能的に関連するとき「作用可能に連結」する。このように、プロモーターヌクレオチド配列は、該配列が適切なヌクレオチド配列の転写を制御する場合、例えば抗体重鎖配列と作用可能に連結する。
【0087】
また、抗体重鎖及び/軽鎖配列を天然には伴わない適切なシグナルペプチドをコードする配列を、発現ベクターに組込むことができる。例えば、抗体がペリプラズム空間又は培地に分泌されるように、シグナルペプチド(分泌リーダー)のヌクレオチド配列をインフレームでポリペプチド配列に融合してよい。意図した宿主細胞において機能的なシグナルペプチドが、適切な抗体の細胞外分泌を増進する。シグナルペプチドは、細胞からの抗体の分泌時にポリペプチドから切断されうる。かかる分泌シグナルの例は周知で、例えば米国特許第5698435;同第5698417号;及び同第6204023号を含む。
【0088】
ベクターは、プラスミドベクター、一本鎖又は二本鎖ファージベクター、又は一本鎖又は二本鎖RNA又はDNAウィルスベクターであってよい。かかるベクターは、DNA及びRNAを細胞に導入する周知の技術によって、ポリヌクレオチドとして細胞に導入されうる。ファージ及びウィルスベクターの場合、ベクターはまた、周知の感染及び形質導入技術によって、パッケージ化又はカプセル化されたウィルスとして細胞に導入されうる。ウィルスベクターは、複製可能又は複製欠損であってよい。後者の場合、ウィルス増殖は通常、相補宿主細胞でのみ起こる。また、無細胞翻訳系を利用して、本DNAコンストラクト由来のRNAを用いてタンパク質を生産してもよい。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでよく(国際公報第86/05807及び同第89/01036号;及び米国特許第5122464号)、抗体の可変ドメインが、完全重鎖又は軽鎖の発現のためにかかるベクターにクローニングされうる。
【0089】
宿主細胞
本発明の抗体は、任意の適切な宿主細胞から発現できる。本発明で有用な宿主細胞の例としては、原核、酵母、又は高等真核細胞が挙げられ、及び、限定するものではないが、抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたバクテリア(例えば大腸菌、枯草菌)といった微生物;抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス、ピチア);抗体コード配列を含む組換えウィルス発現ベクター(例えばバキュロウィルス)で感染させた昆虫細胞系;組換えウィルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウィルス,CaMV;タバコモザイクウィルス,TMV)で感染させた、又は抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は哺乳類細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)又は哺乳類ウィルス由来のプロモーター(例えばアデノウィルス遅発性プロモーター;ワクシニアウィルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現コンストラクトを内部に持つ哺乳類細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が含まれる。
【0090】
本発明の宿主細胞として有用な原核生物は、グラム陰性又はグラム陽性の生物、例えば大腸菌、枯草菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、セラチア、赤痢菌、並びにバシラス、シュードモナス、及びストレプトマイセスを含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は、大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の株、例えば大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)、及び大腸菌W3110(ATCC27325)も適切である。これらの例は、限定するものではなく例示的なものである。
【0091】
原核宿主細胞で使用する発現ベクターは通常、一又は複数の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は例えば、抗生物質耐性を付与するか又は独立栄養要件を満たすタンパク質をコードする遺伝子である。原核宿主細胞のための有用な発現ベクターの例としては、市販のプラスミド由来のベクター、例えばpKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)、pGEM1(Promega Biotec, Madison, Wisconsin., USA)及びpET(Novagen, Madison, Wisconsin, USA)、及びpRSET(Invitrogen, Carlsbad, CA)シリーズのベクター(Studier, J Mol Biol 219:37 (1991);Schoepfer, Gene 124:83 (1993))が挙げられる。組換え原核宿主細胞発現ベクターに一般的に使用されるプロモーター配列は、T7(Rosenberg等, Gene 56:125 (1987))、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Chang等, Nature 275:615 (1978);Goeddel等, Nature 281:544 (1979))トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel等, Nucl Acids Res 8:4057 (1980))、及びtacプロモーター(Sambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory (1990))を含む。
【0092】
本発明で有用な酵母又は糸状菌としては、サッカロミセス、ピチア、放線菌類、クルイベロミセス、シゾサッカロミセス、カンジダ、トリコデルマ、アカパンカビ、及び糸状菌、例えばアカパンカビ、ペニシリウム、トリポクラディウム、及びアスペルギルス由来のものが挙げられる。酵母ベクターは多くの場合、2μ酵母プラスミドからの複製起点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化配列、転写終結配列、選択可能マーカー遺伝子を含む。酵母ベクターの適切なプロモーター配列は、特に、メタロチオネイン、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman,等, J Biol Chem 255:2073 (1980))、又は他の糖分解酵素(Holland等, Biochem 17:4900 (1978))、例えばエノラーゼ、グリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、及びグルコキナーゼのプロモーターを含む。酵母発現での使用に適切な他のベクター及びプロモーターは更に、Fleer等, Gene 107:285 (1991)に記載されている。酵母及び酵母形質転換プロトコルのための他の適切なベクター及びプロモーターは当該分野で周知である。酵母形質転換プロトコルは周知である。かかるプロトコルの一つは、Hinnen等, Proc Natl Acad Sci 75:1929 (1978)に記載されている。Hinnenプロトコルは、選択培地におけるTrp形質転換体について選択する。
【0093】
また、哺乳類又は昆虫宿主細胞培養系を利用して、組換え抗体を発現してもよい。原則的に、脊椎動物細胞由来でも又は非脊椎動物細胞由来でも、いかなる高等真核細胞培養も有効である。非脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞(Luckow等, Bio/Technology 6:47 (1988);Miller等, Genetics Engineering, Setlow等編. Vol. 8, 277-9ページ, Plenam Publishing (1986);Mseda等, Nature 315:592 (1985))が挙げられる。例えば、異種タンパク質の生産のためにバキュロウィルス系が使用されうる。昆虫系では、-オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウィルス(AcNPV)が、外来遺伝子の発現のためのベクターとして使用されうる。該ウィルスは、スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で増殖する。抗体コード配列は、ウィルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれうる。同定された他の宿主は、ネッタイシマカ、キイロショウジョウバエ、及びカイコを含む。トランスフェクションのための様々なウィルス株が、例えばAcNPVのL-1変異体、及びカイコNPVのBm-5株など公的に入手可能で、かかるウィルスは、特にスポドプテラフルギペルダ細胞のトランスフェクションのために本発明に従ってここでのウィルスとして使用できる。更に、綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養もまた宿主として利用される。
【0094】
培養(組織培養)における脊椎動物細胞、及び脊椎動物細胞の増殖は常法となっている。Tissue Culture, Kruse等編, Academic Press (1973)を参照。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、サル腎臓;ヒト胚腎臓株;ベビーハムスター腎細胞;チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞;ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎細胞;ヒト肺細胞;ヒト肝細胞;マウス乳房腫瘍;及びNS0細胞である。
【0095】
宿主細胞は、抗体生産のために上述のベクターで形質転換され、プロモーターの導入、転写及び翻訳制御配列、形質転換細胞の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適当に改変された従来の栄養培地で培養される。通常使用されるプロモーター配列及びハンハンサー配列は、ポリオーマウィルス、アデノウィルス2、シミアンウィルス40(SV40)、及びヒトサイトメガロウィルス(CMV)由来である。例えばSV40由来の早期及び後期プロモーター、エンハンサー、スプライス、及びポリアデニル化部位といったSV40ウィルスゲノム由来のDNA配列を用いて、哺乳類宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝要素が提供されうる。ウィルス早期及び後期プロモーターは、何れもウィルス複製起点も含みうる断片としてウィルスゲノムから容易に得られるため、特に有用である。哺乳類宿主細胞で使用するための例示的な発現ベクターは、市販されている。
【0096】
本発明の抗体変異体の生産に使用される宿主細胞は、様々な培地で培養されうる。ハム(Ham)のF10(Sigma, St Louis, MO)、最小必須培地(MEM, Sigma, St Louis, MO)、RPMI-1640(Sigma, St Louis, MO)及びダルベッコの改良イーグル培地(DMEM, Sigma, St Louis, MO)といった市販の培地が宿主細胞の培養に適している。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980)、及び米国特許第4767704号;同第4657866号;同第4560655号;又は同第5122469号;5712163号;同第6048728号に記載された何れの培地も宿主細胞のための培地として使用できる。これらの培地には何れも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン又は表皮成長因子)、塩類(例えばX塩化物、ここでXはナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩である)バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばGENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は等価なエネルギー源を、必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた、当業者であればわかる適当な濃度で含まれてよい。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0097】
抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明は更に、本発明の抗体及びその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド又は核酸、例えばDNAを提供する。例示的なポリヌクレオチドとしては、ここに記載の一又は複数のアミノ酸配列を含む抗体鎖をコードするものが挙げられる。本発明はまた、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイズ条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
【0098】
当該分野で周知の任意の方法によって、ポリヌクレオチドが得られ、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が決定されうる。例えば、抗体のヌクレオチド配列は周知で、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルされ(例えばKutmeier等, Bio/Techniques 17:242 (1994)に記載のように)、これにはつまり、抗体をコードする配列の部分を含む重複オリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニール及びライゲート、及びそれに続くライゲートされたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅が伴う。
【0099】
或いは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な源からの核酸から生成されうる。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが入手できないが、その抗体分子の配列がわかっている場合、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いたPCR増幅によって、又は抗体をコードするcDNAライブラリから例えばcDNAクローンを同定するために特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてクローニングすることによって、免疫グロブリンをコードする核酸を、適切な源(例えば、本発明の抗体を発現するために選択されたハイブリドーマ細胞など抗体を発現する任意の細胞又は組織から生成されたcDNAライブラリ又は抗体cDNAライブラリ、又はそれから単離された核酸、好適にはポリARNA)から得るか又は化学合成することができる。
【0100】
抗体のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作に関して当該分野で周知の方法、例えば組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発法、PCRなど(例えば、出典明示によりここに援用するSambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory (1990);Ausubel等編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1998)を参照)を用いて、例えばアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を生成するため、異なるアミノ酸配列を有する抗体を生産するために操作されうる。
【0101】
特定の実施態様において、周知の方法、例えばわかっている重鎖及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と比較して配列超可変領域を決定することによって、重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を調べてCDRの配列を同定することができる。常法の組換えDNA技術を用いて、上述したように、一又は複数のCDRを、フレームワーク領域内で、ヒトフレームワーク領域に挿入し非ヒト抗体をヒト化できる。フレームワーク領域は、天然に発生したものか、コンセンサスフレームワーク領域であってよく、好ましくはヒトフレームワーク領域である(ヒトフレームワーク領域の一覧については例えばChothia等, J Mol Biol 278: 457 (1998)を参照)。好適には、フレームワーク領域とCDRの組合せにより生成されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。好適には、上述したように、一又は複数のアミノ酸置換がフレームワーク領域内でなされ、好ましくは、アミノ酸置換は抗体の抗原への結合を向上する。また、かかる方法を用いて、内鎖ジスルフィド結合に関与する一又は複数の可変領域システイン残基のアミノ酸置換又は欠失を行い、一又は複数の内鎖ジスルフィド結合を欠いた抗体分子を生成することもできる。ポリヌクレオチドへの他の改変も本発明及び当該分野の範囲内である。
【0102】
また、適切な抗原特異性を持つマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物活性を持つヒト抗体分子由来の遺伝子とともにスプライスすることによる「キメラ抗体」の生産のために開発された技術(Morrison等, Proc Natl Acad Sci 81:851 (1984);Neuberger等, Nature 312:604 (1984); Takeda等, Nature 314:452 (1985))を用いることができる。上述したように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばマウスMAb由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するもの、例えばヒト化抗体である。
【0103】
或いは、単鎖抗体の生産について記載された技術(米国特許第4946778号;Bird, Science 242:423 (1988);Huston等, Proc Natl Acad Sci USA 85:5879 (1988);及びWard等, Nature 334:544 (1989))を、単鎖抗体の生産に適応することができる。単鎖抗体は、アミノ酸を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を結合することによって形成され、単鎖ポリペプチドがもたらされる。大腸菌における機能的Fv断片のアセンブリ技術もまた使用されうる(Skerra等, Science 242:1038 (1988))。
【0104】
抗ノッチ3抗体の生産方法
本発明の抗体は、抗体合成のための当該分野で周知の任意の方法によって、特に化学合成によって、又は好ましくは組換え発現技術によって生産できる。
【0105】
本発明の抗体、その断片、誘導体、又はアナログ(例えば本発明の抗体又は本発明の単鎖抗体の重鎖又は軽鎖)の組換え発現は、抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。抗体分子をコードするポリヌクレオチドが一旦得られると、抗体生産のためのベクターが組換えDNA技術によって生産されうる。抗体コード配列及び適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターが構築される。これらの方法には、例えばインビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。
【0106】
発現ベクターは従来技術により宿主細胞に伝達され、トランスフェクトされた細胞は次いで、本発明の抗体を生産するために従来技術により培養される。本発明の一態様において、重鎖及び軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述するように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞で共発現されうる。
【0107】
様々な宿主発現ベクター系が、上述したような本発明の抗体分子を発現するために利用されうる。かかる宿主発現系は、対象のコード配列を生成し続いて精製しうる担体を表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトされるとインシチュで本発明の抗体分子を発現しうる細胞も表す。細菌性細胞、例えば大腸菌、及び真核細胞が、組換え抗体分子の発現、特に完全組換え抗体分子の発現のために一般にしようされる。例えば、ヒトサイトメガロウィルスからの主要中間体初期遺伝子プロモーター要素といったベクターと併用される、CHOなどの哺乳類細胞が、抗体の効果的な発現系である(Foecking等, Gene 45:101 (1986);Cockett等, Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0108】
また、挿入された配列の発現を調節するか、又は所望の特定の形態に遺伝子産物を修飾及びプロセシングする宿主細胞株が選ばれてよい。タンパク質産物のかかる調節(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要でありうる。様々な宿主細胞が、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的及び特異的メカニズムを持つ。適切な細胞株又は宿主系を選んで、発現された異種タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確認することができる。このために、遺伝子産物のリン酸化、グリコシル化、及び一次転写産物の適正なプロセシングのための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が用いられうる。かかる哺乳類宿主細胞は、限定するものではないが、CHO、COS、293、3T3、又は骨髄腫細胞を含む。
【0109】
組換えタンパク質の長期の高収率生産のためには、安定した発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定して発現する細胞株が作出されうる。ウィルス複製起点を含む発現ベクターを用いる以外に、宿主細胞を、選択可能マーカー、及び適切な発現制御因子(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)で制御されたDNAで形質転換できる。外来DNAの導入後、作出された細胞は強化培地で一日から2日間増殖され、次いで選択的培地に移される。組換えプラスミドの選択可能マーカーにより、選択に耐性が付与され、そして細胞は、安定にプラスミドをそれらの染色体に組込むことができ、且つクローニングされ及び細胞株に拡充されうる増殖巣を形成するために増殖することができる。当該方法は、抗体分子を発現する細胞株を作出するために有利に使用されうる。このように作出された細胞株は、抗体分子と直接又は非直接的に相関する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用でありうる。
【0110】
多くの選択系が使用されてよく、限定するものではないが、単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(Wigler等, Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska等, Proc Natl Acad Sci USA 48:202 (1992))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy等, Cell 22:817 (1980))遺伝子がそれぞれ、tk、hgprt又はaprt細胞で使用されうる。また、代謝拮抗物質耐性が、以下の遺伝子:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler等, Proc Natl Acad Sci USA 77:357 (1980);O'Hare等, Proc Natl Acad Sci USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan等, Proc Natl Acad Sci USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG418に対する耐性を付与するneo(Wu等, Biotherapy 3:87 (1991));及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre等, Gene 30:147 (1984))についての選択基準として利用できる。組換えDNA技術の当該分野で一般に知られた方法が、所望の組換えクローンの選択に常套的に適用され、かかる方法は例えば、出典明示によりここに援用するAusubel等編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1993);Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press (1990);及びChapters 12及び13, Dracopoli等編, Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons (1994);Colberre-Garapin等, J Mol Biol 150:1 (1981)に記載されている。
【0111】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅(概説については、Bebbington等, "The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells," DNA Cloning, Vol.3. Academic Press (1987)を参照)により上昇できる。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養に存在するインヒビターのレベル上昇は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させることになる。増幅された領域は抗体遺伝子と関連するので、抗体の生産もまた増加する(Crouse等, Mol Cell Biol 3:257 (1983))。
【0112】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、重鎖由来ポリペプチドをコードする第一のベクター及び軽鎖由来ポリペプチドをコードする第二のベクターをコトランスフェクトされうる。2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの均一な発現を可能にする同一の選択可能マーカーを含みうる。或いは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドをコードし且つそれを発現することができる単一のベクターを用いてもよい。かかる状況において、軽鎖は、過剰な毒性自由重鎖を回避するために重鎖の前に配置すべきである(Proudfoot, Nature 322:52 (1986);Kohler, Proc Natl Acad Sci USA 77:2197 (1980))。重鎖及び軽鎖のコード配列はcDNA又はゲノムDNAを含みうる。
【0113】
本発明の抗体分子は、一旦動物により生産されるか、化学合成されるか、又は組換え技術により発現されると、免疫グロブリン分子精製のための当該分野で周知の任意の方法によって、例えばクロマトグラフィ()、遠心分離、分別溶解、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技術によって、精製されうる。また、本発明の抗体又はその断片は、精製を容易にするために、ここに記載しているか又は当該分野で知られた異種ポリペプチド配列に融合できる。
【0114】
本発明は、ポリペプチドに組換え技術により融合されたか又は化学的にコンジュゲート(共有及び非共有コンジュゲートの両方を含む)された抗体を包含する。本発明の融合又はコンジュゲート抗体は、精製を用意にするために使用されうる。例えば、出典明示によりここに援用する、国際公報第93/21232;欧州特許第439095号;Naramura等, Immunol Lett 39:91 (1994);米国特許第5474981号;Gillies等, Proc Natl Acad Sci USA 89:1428 (1992);Fell等, J Immunol 146:2446 (1991)を参照のこと。
【0115】
更に、本発明の抗体又はその断片は、精製を容易にするためにマーカー配列、例えばペプチドに融合できる。好適な実施態様において、マーカーアミノ酸配列はヘキサヒスチジンペプチド、例えば多くが市販されているもののなかでも特にpQEベクター(QIAGEN, Inc., Chatsworth, CA)において供給されるタグである。Gentz等, Proc Natl Acad Sci USA 86:821 (1989)に記載のように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製に役立つ。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定するものではないが、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質由来のエピトープに対応する「HA」タグ(Wilson等, Cell 37:767 (1984))及び「flag」タグが挙げられる。
【0116】
抗体精製
組換え技術を利用する場合、抗体変異体は、細胞内のペリプラズム空間に生産するか、又は培地に直接分泌することができる。抗体が細胞内で生産される場合、第一工程として、微粒子状破片、宿主細胞か溶解断片のいずれか、が例えば遠心分離又は限外ろ過によって除去されうる。Carter等, Bio/Technology 10:163 (1992)に、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される抗体を単離する手順が記載されている。簡潔には、細胞ペーストが酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分以上溶解される。細胞破片は遠心分離により除去できる。抗体変異体が培地に分泌されると、通常、かかる発現系からの上清が、市販のタンパク質収集フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを用いてまず収集される。PMSFといったプロテアーゼインヒビターが、タンパク質分解を阻害するために前述の工程のいずれかに含まれてよく、そして抗生物質が、外来性汚染物質の増殖を防止するために含まれてよい。
【0117】
細胞から調製された抗体組成物は、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィを用いて精製することができ、アフィニティクロマトグラフィが好適な精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する何らかの免疫グロブリンFcドメインのアイソタイプ及び種に依存する。プロテインAは、ヒトIgG1、IgG2、又はIgG4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトIgG3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 15671575 (1986))。アフィニティリガンドが結合されるマトリックスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムによる分画化、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィ、ヘパリンSEPHAROSETMによるクロマトグラフィ、アニオン-又はカチオン-交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)によるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈降といった他のタンパク質精製技術もまた、回収すべき抗体変異体に応じて利用可能である。
【0118】
任意の予備精製工程に続いて、対象とする抗体と汚染物質とを含む混合物に、約2.5−4.5のpHでの溶出バッファーを用いて、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィを施してもよく、これは好ましくは低い塩濃度(例えば約0−0.25M塩)で実施される。
【0119】
医薬製剤
ポリペプチド又は抗体の治療製剤は、所定の純度を持つポリペプチドを、当該分野で典型的に用いられる任意の「製薬的に許容される」担体、賦形剤又は安定化剤、つまり緩衝剤、安定化剤、保存料、等張化剤、非イオン性洗浄剤、酸化防止剤及び他の添加剤と混合することにより凍結乾燥製剤又は水溶液として調製され保存されうる。Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Osol編, (1980)を参照。このような添加剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性でなければならない。
【0120】
緩衝剤は、pHを生理学的条件近傍に維持するのを助ける。それらは、約2mMから約50mMの範囲の濃度で存在する。本発明での使用に適した緩衝剤は、有機及び無機酸の両方及びその塩、例えば、クエン酸塩バッファー(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩バッファー(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩バッファー(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩バッファー(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩バッファー(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩バッファー(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩バッファー(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)、及び酢酸塩バッファー(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)を含む。更に、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファー、及びトリス等のトリメチルアミン塩が挙げられる。
【0121】
保存料は、微生物増殖を抑制するために添加されてよく、0.2%−1%(w/v)の範囲の量で添加されてよい。本発明での使用に適した保存料は、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、及びアルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペンタノールを含む。
【0122】
等張化剤は「安定化剤」としても知られ、本発明の液体組成物の等張性を確保するために存在し、多価糖アルコール、好ましくは三価又はそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールを含む。
【0123】
安定化剤は、機能が充填剤から、治療薬を可溶化するか又は変性又は容器壁面への付着の防止を助ける添加剤までに及ぶ、大きな部類の賦形剤を指す。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール(上で列挙した);アミノ酸、例えばアルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン等、有機糖又は糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース(stachyose)、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール、ガラクチトール、グリセロール等、イノシトール等のシクリトールを含む;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;イオウ含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(<約10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース等の単糖類;ラクトース、マルトース、スクロース等の二糖類;ラフィノース等の三糖類;及びデキストラン等の多糖類とすることができる。安定化剤は、活性タンパク質重量部当たり0.1から10,000重量の範囲で存在しうる。
【0124】
非イオン性界面活性剤又は洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療薬の可溶化を助けるため、並びに撹拌に誘発される凝集に抗して治療用タンパク質を保護するために添加されてよく、これはまた、製剤をタンパク質変性することなく応力のかかった剪断表面に暴露するのを可能にする。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、80等)、ポロキサマー(184、188等)、プルロニック(Pluronic)(登録商標)ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(Tween-20(登録商標)、Tween-80(登録商標)等)を含む。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mlから約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/mlから約0.2mg/mlの範囲で存在しうる。
【0125】
更なる種々の賦形剤は、充填剤(例えばデンプン)、キレート化剤(例えばEDTA)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)及び共溶媒を含む。ここで製剤は、治療すべき特定の症状の必要に応じて一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものを含有してもよい。例えば、免疫抑制剤を更に提供するのが望ましい場合がある。このような分子は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に存在させる。また活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションの、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入されていてもよい。これらの技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16版, Osal編 (1980)に開示されている。
【0126】
インビボ投与に用いられる製剤は無菌でなければならない。これは、例えば除菌膜を介したろ過によって容易に達成される。持続放出製剤を調製することもできる。持続放出製剤の適切な例は、抗体変異体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、当該マトリックスは造形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニル酢酸塩、非分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、100日を越えて分子を放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはより短期間しかタンパク質を放出しない。カプセル化抗体が体内に長時間滞在すると、それらは37℃の水分に暴露された結果、変性又は凝集して生物活性の喪失、及び場合によっては免疫原性の変化を起こすことがある。関連するメカニズムに応じて、安定化のために合理的な方策が考えられる。例えば、凝集メカニズムがチオ‐ジスルフィド交換を通した細胞間S--S結合形成であることが見出された場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分の制御、適当な添加剤の使用、及び特定のポリマーマトリックス組成の開発によって安定化が達成されうる。
【0127】
特定の疾患又は状態の治療において有効な治療用ポリペプチド、抗体又はその断片の量は、疾患又は状態の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定できる。可能ならば、最初にインビトロで、次いでヒトにおける試験の前に有用な動物モデル系で本発明の製薬組成物についての用量−応答曲線を決定することが望ましい。
【0128】
好ましい実施態様では、治療用ポリペプチド、抗体又はその断片の水溶液が皮下注射によって投与される。各用量は体重1kg当たりに約0.5μgから約50μg、より好ましくは体重1kg当たりに約3μgから約30μgの範囲であってよい。
【0129】
皮下投与の投薬スケジュールは、疾患の種類、疾患の重篤さ、及び治療薬に対する患者の感受性を含む複数の臨床学的因子に応じて、月に1回から毎日変更されうる。
【0130】
抗ノッチ3抗体の治療への使用
本発明の抗体は哺乳類を治療するために用いてもよいと考えられる。一実施態様において、抗体は、例えば、臨床前データを得るためにヒト以外の哺乳類に投与される。治療されるヒト以外の哺乳類の例には、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、齧歯動物と他の哺乳類が含まれ、それらについて臨床前研究が実施される。このような哺乳類は、抗体で治療される疾患のために確立された動物モデルであってもよく、または、興味の抗体の毒性を研究するために用いられてもよい。これら実施態様の各々において、用量漸増研究が哺乳動物において実施されうる。
【0131】
抗体は、単独で、または治療剤として使用できる因子(類)と組合せて投与された。本発明はノッチ3介在性疾患、障害または病状を治療するために動物、哺乳類、またはヒトに本発明の抗体を投与することを含む抗体ベースの治療に関する。動物または患者は、特定の治療を必要とする哺乳類、例えば特定の障害(例えば、ノッチ3に関連するもの)を有すると診断されている哺乳類であってもよい。ノッチ3に対する抗体は、ウシ、ブタ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、非ヒト霊長類その他を非限定的に含む哺乳類とヒトにおいて、変性疾患、およびCADASIL、FHM、アラジール症候群、神経障害および変性障害を含む他のノッチ3関連性疾患に対して有効である。例えば、本発明の抗ノッチ3抗体または複数の抗体または本発明の抗体の混合物または異なる起源の他の抗体と組合わせの治療的に許容可能な用量を投与することによって、治療された哺乳類、特にヒトにおいて疾患症は改善または予防されうる。
【0132】
本発明の治療的化合物は、抗体(本願明細書に記載のとおり、それらの断片、類似体及び誘導体を含む)および後述するように本発明の抗体をコードする核酸(本願明細書に記載のとおり、それらの断片、類似体および誘導体、および抗イディオタイプ抗体を含む)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体は、本願明細書に記載されている疾患、障害、または病状を非限定的に含む、ノッチ3の異常な発現および/または活性と関連する疾患、障害または病状を治療、抑制、または予防するために用いることができる。ノッチ3の異常な発現および/または活性と関連する疾患、障害または病状の治療および/または予防は、それらの疾患、障害または病状に伴う少なくとも一つの症状を緩和することを含むが、これに限定されるものではない。従来技術で知られているように、または本願明細書に記載されているように、本発明の抗体は薬学的に許容可能な組成物の状態で提供されうる。
【0133】
本発明の抗ノッチ3抗体は、種々の疾患において治療的に用いられうる。本発明は、哺乳類のノッチ3介在性疾患を予防または治療する方法を提供する。方法は、哺乳類に抗ノッチ3抗体の疾患予防量または疾患治療量を投与することを含む。抗ノッチ3抗体は、ノッチ3に結合してその機能をアゴナイズする。ノッチ3シグナリングは、CADASAL、FHM、家族性発作性運動失調症、アラジール症候群および他の変性疾患および神経障害のようなさまざまな疾患と関連づけられている(Joutel等, Nature 383:707 (1996); Flynn等, J Pathol 204:55 (2004))。また、抗ノッチ3抗体は上述した疾患の予防に効果的であると推察される。
【0134】
ノッチ3の異常な発現および/または活性に伴う疾患または障害の治療、抑制および予防に効果的な抗体の用量は、標準の臨床技術によって決定されてもよい。投与量は、治療される疾患の種類、疾患の重症度およびコース、抗体が予防目的あるいは治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴および抗体への応答性、および主治医の裁量に依存する。抗体は、例えば、病態を改善するための1〜数日にわたる単回または数回の投与および疾患の進行を阻害し疾患の再発を妨げるための長期間にわたる定期的投与のような治療計画によって投与されてもよい。加えて、インビトロアッセイは、最適用量範囲の特定を助けるために、任意に使用することができる。また、製剤に使用される正確な用量は、投与経路、疾患または障害の重症度に依存するものであり、施術者の判断と各患者の状況に従って決定されなければならない。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験システムから導いた用量反応曲線から推定されてもよい。
【0135】
抗体に関して、患者に投与される用量は、典型的に、患者の体重につき0.1mg/kg〜150mg/kgである。好ましくは、患者に投与される用量は、患者の体重につき0.1mg/kgと20mg/kgとの間であり、より好ましくは、患者の体重につき1mg/kgと10mg/kgとの間である。通常、ヒト抗体は人体の中で他種からの抗体より長い半減期を有するが、これは異種ポリペプチドに対する免疫反応のためである。したがって、ヒト抗体ではより低い投与量およびより低い頻度の投与が大抵は可能である。更に、本発明の抗体の投与量および投与の頻度は、例えば脂質化のような修飾によって、(例えば、脳内への)抗体の取込みおよび組織透過性を増強することによって減少されてもよい。少なくとも数日にわたって繰り返される投与について、状況に応じて、治療は疾患症状の所望の抑制が生じるまで継続される。しかしながら、他の投与計画が有効な場合がある。この治療の進行度は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0136】
抗体変異体組成物は、適正な医療行為に合致する方法で、処方、服用および投与される。ここで考慮する要因には、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳類、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、作用剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、および医師が知りうる他の要因が含まれる。投与される抗体変異体の「治療上の有効量」は、このような考慮によって調整されて、疾患又は障害を予防、改善、または治療するために必要な最小限の用量である。必要ではないが場合によっては、問題の疾患を予防または治療するために現在用いられる一つ以上の作用剤と抗体変異体とを処方する。そのような他の作用剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患または治療の種類、及び上述の他の因子に依存する。一般的に、前の使用と同じ用量及び投与経路で、又はこれまでに用いた用量の1〜99%で用いる。
【0137】
本発明の抗体は、単独でまたは他のタイプの治療と組み合わせて投与されてもよい。
【0138】
好適な態様において、抗体は、十分に精製される(例えば、その効果を制限するかまたは望まれていない副作用を生じる物質を実質的に存在しない)。
【0139】
注入、例えばリポソーム、微小粒子またはマイクロカプセルへの被包、化合物を発現できる組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシス(例えば,Wu等, J Biol Chem 262:4429(1987)を参照)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構造を含む さまざまなデリバリー系が知られており、本発明の抗体を投与するために用いることができる。
【0140】
抗ノッチ3抗体は、任意の許容可能な方法で哺乳類に投与することができる。導入の方法は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、硬膜外、吸入、および経口の経路を含むがこれに限定されるものではなく、免疫抑制治療が望ましいならば、病巣内投与である。非経口的注入は、筋肉内、皮内、静脈内か、動脈内、腹膜内投与を含む。抗体または組成物は、任意の便利な経路、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管の粘膜など)による吸収によって投与されてもよく、他の生物学的に活性な薬剤とともに投与されてもよい。投与は、全身または局所的でもよい。加えて、脳室内およびクモ膜下注射を含む任意の適切な経路によって、本発明の治療的抗体または組成物を中枢神経系に導入することが望ましい場合がある;脳室内注入は、例えばオマヤ漕のようなリザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって促進されてもよい。加えて、抗体は、特に抗体の用量の減少を伴うパルス注入によって最適に投与される。投与は、投与が短期かまたは長期間にわたるかどうかにある程度依存して、好ましくは注射、最も好ましくは静脈内または皮下注射によって与えられる。
【0141】
また、肺投与は、例えば、吸入器またはネブライザーの使用、およびエアロゾル化剤による製剤によって行うことができる。また、抗体は乾燥粉末組成物の形態で、患者の肺に投与されてもよい(例えば米国特許第6514496号を参照)。
【0142】
特定の実施態様において、治療を必要とする範囲に局所的に本発明の治療的抗体または組成物を投与することが望ましい場合がある;これは、例えば、限定的な意味でなく、局所注入、局所適用、注射によって、カテーテルによって、坐薬によって、またはインプラントによって達成されてもよく、該インプラントは、シラスティック膜または繊維のような膜を含む多孔性、非多孔性、ゼリー状の物質である。好ましくは、本発明の抗体を投与するときに、タンパク質を吸収しない物質の使用に配慮しなければならない。
【0143】
別の実施態様において、抗体はビヒクルで送達することができる(Langer, Science 249:1527(1990);Treat等,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein等編,353-365頁(1989);Lopez-Berestein, 同書, pp.317-27;同書の全般を参照)。
【0144】
さらに別の実施形態では、抗体は制御放出系で送達することができる。ある実施形態において、ポンプが使用されてもよい(Langer,Science249:1527(1990);Sefton,CRC Crit Ref Biomed Eng 14:201(1987);Buchwald等,Surgery 88:507 (1980);Saudek等,N Engl J Med 321:574(1989)参照)。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer等編, CRC Press(1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance,Smolen等編,Wiley(1984);Ranger等,J Macromol Sci Rev Macromol Chem 23:61(1983);Levy等,Science 228:190(1985);During等,Ann Neurol 25:351(1989);Howard等,J Neurosurg 71:105(1989)参照)。さらに別の実施形態では、制御放出系は治療標的の近傍に配置することができる。
【0145】
また、本発明は医薬組成物を提供する。このような組成物は、抗体の治療的有効量および生理学的に許容可能な担体を含む。特定の実施態様では、「生理学的に許容可能」という用語は、動物、より詳細にはヒトへの使用について、連邦又は州政府の規制機関によって承認されるか、アメリカ合衆国薬局方又は他の一般的に認められた薬局方に掲載されることを意味する。「担体」という用語はそれと共に治療剤が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを意味する。このような生理学的担体は滅菌液、例えば石油、動物、野菜または合成由来のもの、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む油と水でもよい。医薬品組成物が静注で投与されるときに、水は好適な担体である。また、生理食塩水及び水性デキストロースおよびグリセロール溶液は液体担体、特に注射可能な溶液として使用することができる。好適な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等々が含まれる。組成物は、所望されるならば、少量の湿潤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含みうる。これらの組成物は溶液懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放製剤等々の形態をとりうる。組成物は、伝統的なバインダーとトリグリセリドのような担体を用いて座薬として処方できる。経口製剤は、標準的な担体、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等々を含みうる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinの「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、好ましくは精製形態の治療的有効量の治療剤を、患者への適切な投与のための形態となるように好適な量の担体と共に含む。製剤は投与態様に適応しなければならない。
【0146】
ある実施態様において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適応する医薬品組成物として、常法に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張性水性バッファー溶液である。また、必要な場合には、可溶化剤および注入部位の痛みを緩和するリグノカインのような局所麻酔薬を含んでもよい。通常、成分は、密封容器(例えば活性薬剤の量を示しているアンプルまたはサッシェ (sachette))に密閉された凍結乾燥粉末または水非含有濃縮物として、別々に供給されるか、あるいは単位剤形中に一緒に混合されて供給される。組成物を点滴により投与する場合は、無菌の製薬グレードの水または生理食塩水を含有する点滴ボトルにより送出することができる。組成物が注射により投与される場合には、無菌注入用水又は生理食塩水のアンプルを、成分が投与前に混合されるように提供することができる。また、本発明はまた本発明の医薬組成物の一又は複数の成分が満たされた一又は複数の容器を含んでなる医薬パック又はキットを提供する。場合によってそのような容器に付随させることができるものは、医薬又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって指示された形態の注意書きで、ヒトへの投与のために製造し、使用し、又は販売することに対する機関の承認を反映する注意書きである。
【0147】
製造品
本発明の他の実施態様では、前述した疾患の治療に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は容器及び説明書を含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はバイアルであってよい)。容器上の又は容器に付随する説明書には、組成物が、選択された病状の治療に使用されることが示されている。さらに製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガル液及びブドウ糖液を収容する第2の容器をさらに具備しうる。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用指示書を含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0148】
抗体ベースの遺伝子療法
本発明の別の態様において、抗体またはその機能的な誘導体をコードする配列の核酸は、遺伝子療法として、ノッチ3の異常な発現および/または活性に伴う疾患または障害を治療、抑制または予防するために投与される。遺伝子療法とは発現した又は発現可能な核酸を、患者に投与することによって実施される治療法を意味する。本発明の実施態様において、核酸はそれらがコードする、治療効果をもたらタンパク質を産生する。利用可能な遺伝子療法の任意の方法が、本発明によって使用できる。以下に、典型的な方法について説明する。
【0149】
遺伝子療法の方法の一般的な総説については、Goldspiel等, Clinical Pharmacy 12:488(1993);Wu等, Biotherapy 3:87(1991);Tolstoshev,Ann Rev Pharmacol Toxicol 32:573(1993);Mulligan, Science 260:926(1993);Morgan等,Ann Rev Biochem 62:191(1993);May,TIBTECH 11:155(1993)を参照できる。
【0150】
一態様において、化合物は、抗体をコードする核酸配列を含み、該核酸配列は適切な宿主において抗体又はそれらの断片又は重鎖又は軽鎖を発現する発現ベクターの一部である。特に、このような核酸配列は、抗体コード領域に作用可能に連結したプロモーターを有し、該プロモーターは誘導的又は構成的、場合によっては組織特異的である。
【0151】
別の特定の実施態様において、抗体コード配列および任意の他の所望の配列の横に、ゲノム中の所望の部位における相同組換えを促進する領域が配置された核酸分子が使用され、したがって抗体をコードする核酸の染色体内発現を提供する(Koller等,Proc Natl Acad Sci USA 86:8932(1989);Zijlstra等,Nature 342:435(1989))。特定の実施態様において、発現する抗体分子は、一本鎖抗体である;あるいは、核酸配列は、抗体の重鎖および軽鎖の両方またはその断片をコードする配列を含む。
【0152】
患者への核酸の送達は、直接的(この場合、患者が核酸または核酸を担持するベクターに直接的に曝される)であるか、あるいは間接的(この場合、はじめに細胞が核酸によってインビボで形質転換され、次に患者に移植される)であってもよい。これらの2つのアプローチは、それぞれインビボまたはエクスビボ遺伝子療法として知られている。
【0153】
特定の実施態様において、核酸配列はインビボに直接投与され、そこで発現し、コードする産物を産生する。これは、従来技術で知られている多数の方法の何れかによって、例えば、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれらを構築し、投与して、細胞内のものとすることによって、例えば、不完全または弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルスベクターを使用した感染によって(米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接の注射によって、または微小粒子照射(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)、または脂質または細胞表面レセプターまたは形質移入化剤による被膜、リポソーム、微小粒子またはマイクロカプセルへの被包を用いて、または核に入ることが知られているペプチドに結合させて投与することによって、受容体依存性エンドサイトーシスに対するリガンドと結合させて投与すること(例えば、Wu等,J Biol Chem 262:4429(1987)を参照)(受容体を特に発現する標的細胞タイプに使用することができる)等によって達成できる。別の実施態様において、リガンドがエンドソームを崩壊させる融合ウイルスペプチドを含み、核酸のリソソーム劣化を回避することを可能にする核酸−リガンド複合体を形成させることができる。さらに別の実施形態において、核酸は、特異的な受容体を標的とすることによって、細胞特異的な取り込みと発現のためのインビボにおける標的とすることができる(例えば、PCT公報WO92/06180;WO92/22635;WO92/20316;WO93/14188,WO93/20221を参照)。あるいは、相同組換えによって、核酸を細胞内に導入し、発現のための宿主細胞DNA内に組み込むことができる(Koller等,Proc Natl Acad Sci USA 86:8932(1989);Zijlstra等,Nature 342:435(1989))。
【0154】
特定の実施態様において、本発明の抗体をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを使用する。例えば、レトロウイルスベクターを使用できる(Miller等, Meth Enzymol 217:581(1993)参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスのゲノムの正しいパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みのために必要な構成要素を含む。遺伝子療法で使用される抗体をコードする核酸配列は一つ以上のベクターにクローン化され、それは患者への遺伝子の送達を容易にする。レトロウイルスベクターについてはBoesen等, Biotherapy 6:291(1994)に詳細があり、それは幹細胞を化学療法に対してより耐性があるようにするためにmdrl遺伝子を造血幹細胞に送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの使用を例示する他の参考文献は、以下の通りである:Clowes等,J Clin Invest 93:644(1994);Kiem等,Blood 83:1467(1994);Salmons等,Human Gene Therapy 4:129(1993);およびGrossman等, Curr Opin Gen and Dev 3:110(1993)。
【0155】
また、本発明においてアデノウイルスが使用されてもよい。特に、アデノウイルスは抗体を呼吸上皮に送達するための本発明の魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは、自然に呼吸上皮に感染する。アデノウイルスベースの送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは非分裂細胞に感染できるという利点がある。Kozarsky等(Curr Opin Gen Dev 3:499(1993))はアデノウイルスベースの遺伝子療法の総説である。Bout等(Human Gene Therapy 5:3(1994))はアデノウイルスの使用によりアカゲザルの呼吸上皮に遺伝子が運ばれることを証明した。遺伝子療法におけるアデノウイルスの使用の他の例は、Rosenfeld等,Science 252:431(1991);Rosenfeld等, Cell68:143(1992);Mastrangeli等,J Clin Invest 91:225(1993);PCT公報WO94/12649;Wang等,Gene Therapy 2:775(1995)に記載されている。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)の遺伝子療法への使用が提案されている(Walsh等,Proc Soc Exp Biol Med 204:289(1993);米国出願番号第5436146号;第6632670号;および第6642051号)。
【0156】
遺伝子療法の他のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム介在形質移入またはウイルス感染症のような方法によって、遺伝子を組織培養の細胞に導入することを含む。通常、導入の方法は、選別可能なマーカーを細胞に導入することを含む。それから、細胞は、導入された遺伝子を取り込み発現する細胞を分離するために、選択の下に置かれる。次に、それらの細胞は患者に送達される。
【0157】
本実施態様において、核酸は、結果として生じる組換え細胞のインビボ投与前に、細胞に導入される。このような導入は、限定されるものではないが、形質移入、エレクトロポレーション、顕微注射、核酸配列を含むウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体介在性遺伝子導入、ミクロセル介在性遺伝子導入、スフェロプラスト融合等を含む公知技術の任意の方法によって実施することができる。細胞への異種遺伝子の導入について、多数の技術が公知技術となっており(例えば、Loeffler等, Meth Enzymol 217:599(1993);Cohen等, Meth Enzymol 217:618(1993);Cline, Pharmac Ther 29:69(1985)参照)、受容細胞の必須の発生学的と生理学的機能を崩壊させないならば、本発明によって使用されてもよい。核酸は細胞によって発現可能であり、好ましくは遺伝性であり、その細胞後代によって発現可能であるために、技術は細胞への核酸の安定した導入を提供しなければならない。
【0158】
結果として生じる組換え細胞は、公知技術の様々な方法によって患者に送達することができる。組換え血液細胞(例えば造血幹または前駆細胞)は、好ましくは静脈内投与される。使用に想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態等に依存し、当業者により決定されうる。
【0159】
核酸が遺伝子療法の目的で導入することができる細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を包含し、限定されるものではないが上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、骨髄巨核球、顆粒白血球;様々な幹細胞または前駆細胞、特に造血幹または前駆細胞、例えば骨髄、さい帯血、末しょう血液、胎児の肝臓等から得られるものを含む。
【0160】
一実施態様において、遺伝子療法に使用される細胞は患者において自己由来である。本発明の抗体をコードする核酸配列は、細胞またはそれらの後代によって発現可能である細胞に導入され、次に組換え細胞は治療的効果の目的でインビボに投与される。特定の実施態様において、幹細胞または前駆細胞が使用される。分離しインビボで保持することができる任意の幹細胞および/または前駆細胞は、本発明のこの実施態様によって使用することができる可能性がある(例えば、PCT公報WO94/08598;Stemple等, Cell 71:973(1992);Rheinwald, Meth Cell Bio 21A:229(1980);Pittelkow等, Mayo Clinic Proc 61:771(1986))。
【実施例】
【0161】
実施例1:免疫原の生産:ノッチ3細胞外ドメイン-Fc融合タンパク質
ヒトノッチ3のLIN12/二量体化ドメイン(以降「LD」)に特異的に結合する抗ノッチ3モノクローナル抗体を、組換えノッチ3-Fc融合タンパク質を、カルボキシ末端がγ1Fc領域に融合したノッチ3LDを含む免疫原として用いて生産した。特に、免疫原は、ノッチ3LDのアミノ酸残基1378から1640(図1参照)とヒトγ1Fc融合タンパク質とを含んだ。制御抗体を、アミノ酸残基43から1377由来のノッチ3EGF反復領域を免疫原として用いて生成した。
【0162】
ノッチ3タンパク質配列を、インターネットベースの調査ソフトウェア及びサービス(Motif Search, http://motif.genome.jp/)を利用して分析した。ヒト肝臓及び脾臓RNA(Ambion, Inc. Austin, TX)を鋳型として用いて、標準的な市販のcDNA合成キットで第一のcDNA鎖を合成した。ノッチ3LD及びEGF反復領域をコードするcDNAを、ベタイン(1−2M)及びDMSO(5%)の存在下でPCR増幅した。PCR合成されたノッチ3LD DNA断片(〜0.8kb)及びノッチ3-EGF反復DNA断片(〜4kb)を、それぞれ異なる抗生物質マーカーを有する市販のベクターpSec又は市販のベクターpCD3.1中にHis-γ1Fcを含む発現ベクターにクローニングした。このクローニングの結果、2つの発現プラスミド、一つはノッチ3-LD/Fcを発現するもの、及びもう一つはノッチ3-EGF/Fc融合タンパク質を発現するもの、が生じた。
【0163】
プラスミドの構築を容易にし、且つ様々なノッチ3組換えタンパク質の発現を増進するために、ノッチ3核酸コード配列の第一の135塩基対を含むリーダーペプチド配列に相当するオリゴヌクレオチドを生成した。これらのオリゴヌクレオチドは、GC含量を低減するためにウォブルコード位置に複数の変化を含んだ。ヌクレオチド配列の変化は全てサイレントで、つまりアミノ酸配列の変化はなかった(図8A及び8B)。オリゴヌクレオチドを共にアニールした後、作出されたリーダーペプチドコード配列を、PCR-SOEにより残りのコード配列に連結した(Ho等, Gene 77:51 (1989);Horton等, BioTechniques 8:528 (1990))。このリーダーペプチドコード配列を、ノッチ3-LD/Fc及びノッチ3発現コンストラクトで使用した。従って、両方のFc融合タンパク質が、N末端に連結したシグナルペプチドと、C末端に融合したヒトγ1Fc配列とを含む。リーダーペプチドを含むノッチ3-LDのアミノ酸配列を、図8B及び配列番号6に示す。
【0164】
ノッチ3-EGF/Fc及びノッチ3-LD/Fc融合タンパク質の発現を、ノッチ3発現プラスミドの、それぞれ293T(ATCC番号 CRL‐11268, Manassas, VA)及びCHO細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)への一過性トランスフェクションにより確認した。トランスフェクションに先立ち、細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのグルタミン、及び1×必須アミノ酸溶液を含有するDMEM(Invitrogen, Carlsbad, CA)増殖培地で培養し、続いてウェル当たり約3−5×10細胞を6ウェルプレートに播種し、そしておよそ24時間増殖させた。Lipofectamine2000トランスフェクション系(Invitrogen, Carlsbad, CA)を製造業者のプロトコルに従って使用して、それぞれ3マイクログラムのノッチ3融合タンパク質発現プラスミドを各ウェルの細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞を、新鮮な増殖培地で培養し、ノッチ3融合タンパク質発現分析を行う前に約40−48時間、COインキュベーターで培養した。或いは、トランスフェクションの後、細胞を、3−4時間、増殖培地で培養し、その後2%FCSを含有するDMEM培地に移し、分泌されたタンパク質の分析のためのならし培地を注ぐ前におよそ60−66時間、培養する。
【0165】
適切な細胞株を、ノッチ3-EGF/Fc(His-Fcγ/pSecベクター)及びノッチ3-LD/Fc(His-Fcγ/pSecベクター)の両方のために生成した。各プラスミドをCHO細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞を一晩、DMEM増殖培地で培養し、次いで800μg/mlのハイグロマイシンを有する増殖培地に移し、ノッチ3発現プラスミドを持たない細胞が抗生物質により除去されるまで、少なくとも2週間培養した。安定な細胞株からのならし培地を、ウェスタンブロット分析にかけた。
【0166】
安定な又は一過性の形質移入細胞についてノッチ3−LD/Fc又はノッチ3−EGF/Fc融合タンパク質の発現及び分泌をアッセイした。培養皿から集めた形質移入細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で一回洗浄し、脱イオン水中に再懸濁させ、等容量の2×タンパク質試料負荷バッファー(BioRad, Hercules, CA) と混合し、ついで約100℃で10分間加熱した。分泌されたタンパク質を等容量の2×タンパク質試料負荷バッファーと混合し100℃で10分間加熱した条件培地を使用して分析した。試料を4−15%の勾配のSDS−PAGEを使用して分離した。タンパク質を、タンパク質を移す少なくとも1時間前にPBST(0.05%のTWEEN-20(登録商標)を含むPBS)中に5%の脱脂粉乳でブロックしたPVDF膜(BioRad, Hercules, CA)にゲルから移した。
【0167】
ノッチ3−EGF/Fc及びノッチ3−LD/Fc融合タンパク質を、ブロッキングバッファー中のγFc特異的なHRP結合抗体(Sigma, St Louis, MO)と共にインキュベートすることによって検出した。その膜をPBST中で3回洗浄し、化学発光基質を用いて発現させた。
【0168】
ノッチ3ドメイン/Fc融合タンパク質の精製では、上に記載したCHO安定細胞株を、2%のFCSを含むDMEM中で5日間まで培養した。1リットルの条件培地を集め、アフィニティー結合のためのプロテインAビーズ充填カラムにかけた。カラムをPBSで洗浄し、結合したタンパク質を50mMのクエン酸塩バッファー(pH2.8)で溶出させ、1Mのトリス−HClバッファー(pH8)を添加してpHを中性にした。タンパク質の純度を、4−15%の勾配のSDS−PAGEを使用するタンパク質ゲル分析によって評価した。タンパク質の濃度は製造者のプロトコル(Pierce, Rockford, IL)に従ってクーマシーブルー試薬を使用してアッセイした。この手順を通して、ミリグラム量のノッチ3−LD/Fc及びノッチ3−EGF/Fcタンパク質を免疫及びELISA結合アッセイのために精製した。
【0169】
実施例2:
8−12週齢の雄A/Jマウス(Harlan, Houston, TX)に、200μlのPBS中のフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI)中の25μgのノッチ3−EGF/Fc又はノッチ3−LD/Fcを皮下的に注射した。注射の2週間後で屠殺の3日前に、マウスにまたPBS中の同じ抗原25μgを腹腔内注射した。各融合体について、単一の細胞懸濁液を免疫化細胞の脾臓から調製し、Sp2/0ミエローマ細胞との融合に使用した;5×10のSp2/0及び5×10の脾臓細胞を、50%のポリエチレングリコール(分子量1450) (Kodak, Rochester, NY)及び5%のジメチルスルホキシド(Sigma, St. Louis, MO)を含む培地中で融合させた。ついで、細胞を、10%のウシ胎仔血清、100ユニット/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.1μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、及び16μMのチミジンを補填したIscove培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中において200μlの懸濁液中1.5×10脾臓細胞の濃度まで調整した。200マイクロリットルの細胞懸濁液を約96ウェルプレートの各ウェルに加えた。約10日後、培養上清を、ELISAを使用するその抗原結合活性についてのスクリーニングのために取り出した。
【0170】
96ウェル平底Immulon IIマイクロテストプレート(Dynatech, Laboratories, Chantilly, VA)を、1×フェノールレッド及び3−4滴のpHix/リットル(Pierce, Rockford, IL)を含む(PBS)中の100μlのノッチ3−EGF/Fc又はノッチ3−LD/Fc(0.1μg/ml)を使用してコートし、室温で一晩インキュベートした。コーティング溶液を、プレートをはじいて除去した後、0.1%のメルチオレートを含むPBST中に2%のBSAを含む200μlのブロッキングバッファーを、非特異的結合をブロックするために各ウェルに1時間加えた。ついで、そのウェルをPBSTで洗浄した。各融合体ウェルから50マイクロリットルの培養上清を集め、50μlのブロッキングバッファーと混合し、ついでマイクロプレートの個々のウェルに添加した。1時間のインキュベーション後、ウェルをPBSTで洗浄した。ついで、結合したマウス抗体を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合Fc特異的ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)との反応によって検出した。0.1%の3,3,5,5−テトラメチルベンジジン及び0.0003%の過酸化水素を含むHRP基質溶液を、30分間、発色のためにウェルに添加した。50mlの2MのHSO/ウェルを添加して反応を終了させた。450nmでのODをELISAプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で読み取った。
【0171】
単離し分析した185のハイブリドーマのうち、ノッチ3−LD/Fcで免疫したマウスからの一つのハイブリドーマクローンがノッチ3アゴニスト抗体256A−13を生産したが、該抗体を更に特徴付けした。MAbs256A−13を生産するハイブリドーマクローンからの上清を使用してELISAを実施した。結果は、それが産生された精製ノッチ3LD/FC融合タンパク質に対して強い結合活性を示したが、ヒトノッチ1−LD/Fc(LIN/カルボキシル末端でFc領域に融合した二量体化ドメイン)又はコントロールヒトFcタンパク質には結合しなかった(データは示さず)(表1)。
【0172】

【0173】
この一次ELISAスクリーニングからの陽性ハイブリドーマクローンを、単一コロニーピッキングによって更に単離し、上に記載した第二ELISAアッセイを実施して、選択された免疫原に対する特異的結合を証明した。確認されたハイブリドーマクローンを、より大きなスケールの培養で増量させた。モノクローナル抗体(MAbs)をプロテインAアフィニティーカラムを使用してこれら大きなスケールの培養の培地から精製した。ついで、抗ノッチ3アゴニストMAbsを、細胞ベースアッセイ、顕微鏡、ウェスタンブロット、及びFACS分析を使用して特徴付けした。
【0174】
実施例3:抗ノッチ3MAbsに対する細胞ベース結合アッセイ
抗ノッチ3MAbsを特徴付けるために使用する細胞ベース結合アッセイには、ベクター、この場合にはpcDNA3.1/Hygro(Invitrogen, Carlsbad, CA)中へのヒトノッチ3オープンリーディングフレームの完全長のクローニングが必要であった。ノッチ3コーディング領域は、鋳型としてヒト肝臓腫瘍RNA (Ambion, Inc., Austin, TX) を使用してRT−PCRによって合成した。最終のプラスミドコンストラクトノッチ3/Hygroは、図1に示されるように完全長ノッチ3タンパク質を発現した。ノッチ3を発現する安定な細胞株は、実施例1に記載されたものと同じ手順に従ってリポフェクタミン2000キッとを使用して、ノッチ3/Hygroプラスミドコンストラクトを293T細胞(ATCC番号CRL−11268)中に形質移入させることによって生産した。形質移入後、細胞をDMEM増殖培地で一晩培養し、ついで200μg/mlのハイグロマイシンを含む増殖培地に再播種し、12−14日間培養した。良好に単離された単一コロニーを取り上げ、別個のウェルで、十分なコロニー細胞が増幅されるまで増殖させた。ハイグロマイシン選択に耐性があり高レベルのノッチ3タンパク質を発現した安定な293Tクローンを、ウェスタンブロット分析と、ポリクローナル抗ノッチ3抗体を使用する蛍光電子顕微鏡観察(R&D Systems, Minneapolis, MN)によって同定した。
【0175】
ノッチLIN12/二量体化(LD)ドメイン及び膜貫通(TM)ドメインだけを含む部分的ノッチ3発現プラスミドをまたPCRによって構築し、pcDNA3.1.中にサブクローニングした。
【0176】
天然にノッチ3を発現するヒトSup−T1細胞株(ATCC番号CRL−1942)をまたウェスタンブロットによって確認した。Sup−T1細胞を、10%のウシ胎仔血清、2mMのグルタミン及び1×の必須アミノ酸溶液を含むRPMI1640培地で増殖させた。
【0177】
細胞ベースの抗体結合は、製造者によって提供されたプロトコルに従ってFMAT(登録商標)(蛍光マクロ共焦点高ハイスループットスクリーニング)8100HTSシステム(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して評価した。ノッチ3を天然に発現するかノッチ3発現コンストラクトが安定に形質移入された細胞株を96ウェルプレートに播種した。別法として、一過性に形質移入した293T又はCHO細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞は1ウェル当たり30000−50000細胞の密度で播種した。20−24時間後、抗ノッチ3MAbs及び1×PBS反応バッファーをウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。一次抗体の除去後、Cy−5結合抗マウスIgG抗体をウェルに添加した。
【0178】
細胞ベースの抗体結合はまた、内部的に生産した293T/ノッチ3安定細胞株と双方ともノッチ3を天然に発現する(データは示さず)二つの癌細胞株であるヒトSup−T1及びA2780細胞株(UK ECACC番号カタログ番号93112519)を使用して、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によっても評価した。細胞は最初に1×PBS中で抗ノッチMAbsと共にインキュベートした。3回の洗浄後、細胞を蛍光分子結合二次抗体と共にインキュベートした。細胞を再懸濁し、0.1%のパラホルムアルデヒドを含む1×PBS中で固定し、FACS(BD Sciences, Palo Alto, CA)で分析した。その結果は、256A−13が、培養された細胞中で組換えプラスミドコンストラクトから又は天然タンパク質として発現されたノッチ3レセプターに結合することを示している(表2)。ノッチ3/Hygroプラスミドを含む一過性に形質移入した293T細胞をまた上に記載のように免疫蛍光で染色し、蛍光顕微鏡によって観察した。
【0179】

【0180】
細胞ベースのFMAT及びFACS分析では、培養された細胞中で組換えプラスミドコンストラクトから又は天然タンパク質として発現されるノッチ3レセプターにMAbs256A−13が確かに結合する(表2及び表3)ことが確認された。
【0181】

【0182】
陽性の結合シグナルを、IgG1コントロール及び他の陰性ハイブリドーマクローンのものよりも有意に高い(p>0.01)FMATシグナルの読み取りに基づいて決定した。IgG1コントロールの結合読み取りはバックグラウンドと考えた。ノッチ3/Hygroプラスミドが一過性に形質移入された293T細胞をまた上に記載のように免疫蛍光で染色し、蛍光顕微鏡によって観察した。
【0183】
MAb256A−13の結合親和性をBiacoreシステム(Biacore Inc., Piscataway, NJ)によって分析した。抗体をアミンカップリングを介してチップに直接固定(固定化レベル:200RU)し、ノッチ3−LD/Fcタンパク質(抗原)を5通りの異なった濃度で注射した(5−8分の会合時間と1から2時間の解離時間で37.5から120nMの範囲)。流通バッファー及び試料バッファーはPBS(5mMのCa2+を含む)であった。チップ表面は10mMのグリシン,pH2で再生された。抗体は二組が特徴付けされた。表4は計算された統計的平均、標準誤差及び動態解離定数(KD)を開示している。抗体は280pMのKDで高い親和性を有しており、遅い解離速度を有していた。標準誤差とカイ二乗は共に低く良好に一致した(動的曲線は示さず)。
【0184】

【0185】
実施例4:256A−13結合活性のウェスタンブロット解析
変性条件下でのノッチ3レセプターに対する256A−13の結合活性、並びにヒト細胞株中でのノッチ3及び他のノッチ関連タンパク質の発現レベルを評価するためにウェスタンブロットを実施した。精製したノッチ3−LD/Fc融合タンパク質をタンパク質負荷バッファーと組み合わせた。タンパク質試料をまた実施例1に記載された一過性に又は安定に形質移入された細胞から調製し、これを培養皿から収集し、PBSで一回洗浄し、全細胞性タンパク質抽出物バッファー(Pierce, Rockford, IL)に再懸濁させ、等容量の2×タンパク質試料負荷バッファーの添加後に100℃で加熱した。全試料を4−15%勾配のSDS−PAGEでの電気泳動によって分離した。タンパク質をゲルからPVDF膜に移し、256A−13を一次検出抗体としてウェスタンブロット膜に適用した。HRP結合二次抗体を検出に使用し、上述のように化学発光基質を使用してシグナルを生成した。ヒトFc、V5タグ、ノッチ3及びノッチ1に対して陽性のコントロール抗体は(Invitrogen, R&D Systems, Santa Cruz Biotechnologies, 及びOrbigen)から購入した。
【0186】
ウェスタンブロット分析は、MAb256A−13が変性条件下でノッチ3−LD/Fcに結合し、またELISA及びFACS解析において観察されたように天然の分子立体構造を示した。
【0187】
実施例5:ルシフェラーゼレポーターアッセイによる256−A13の機能の評価
A.プラスミドコンストラクト
上の実施例3に記載された完全長ノッチ3発現コンストラクトを配列決定により確認したところ、図1に示された発表されている配列と一致していた。ノッチ3の発現は実施例4に記載されたように一過性トランスフェクションとウェスタンブロットによって確証した。
【0188】
ノッチシグナル伝達のためのルシフェラーゼレポータープラスミドを生成するために、CBF1結合モチーフのタンデム反復を含み次の配列を有する2つの相補的オリゴヌクレオチドプライマーを合成した:
5’GCTCGAGCTCGTGGGAAAATACCGTGGGAAAATGAACCGTGGGAAAATCTCGTGG(配列番号12)
5’GCTCGAGATTTTCCCACGAGATTTTCCCACGGTTC(配列番号13)
【0189】
これら2つのオリゴプライマーを、4mMの濃度の各オリゴで100mMのNaCl中で65℃にてアニールした。互いにアニールした後、プライマーをPCRによって伸長させた。PCR産物を市販のベクター中にクローニングした。挿入断片を配列決定によって証明したところ、CBF1結合モチーフの4つのタンデム反復と2つの隣接Xho I部位を含んでいた。Xho Iを使用して挿入断片を切除し、ホタルルシフェラーゼレポーターコード配列の下流にライゲーションした。ルシフェラーゼレポーターアッセイ及び配列決定解析後に、CBF1結合モチーフの8つの反復を持つプラスミドクローンを選択し、CBF1−Lucと標記した。
【0190】
B.安定な細胞株の生産
2つの安定な細胞株を、ヒト胚性腎細胞株 (HEK293)を使用して機能的アッセイのために生産した。一つの細胞株は核ゲノム中に組み込まれたノッチ3発現プラスミド及びCBF1−Lucレポータープラスミドを含んでいた。この細胞株は、製造者のプロトコルに従ってリポフェクタミン2000を使用して293T細胞中にノッチ3/ハイグロマイシン及びCBF1−Lucプラスミドを同時形質移入することによって生産した。 安定な形質移入細胞クローンを、DMEM増殖培地において200μg/mlのハイグロマイシンに対して選択し、ルシフェラーゼレポーターアッセイ及びウェスタンブロットによってスクリーニングした。比較的高いレベルのノッチ3レセプター発現(ウェスタンブロットに基づく)及びルシフェラーゼ活性を有する細胞株を機能アッセイに使用するために選択し、NC85と標示した。
【0191】
C.ノッチ3過剰発現細胞単独でのルシフェラーゼレポーターアッセイ
NC85細胞をMAb 256−A13の存在下で24から48時間培養した。ついで培地を吸引によって除去し、細胞を1×Passive溶解バッファー(E1501, Promega, Madison, WI)に溶解させ、TD−20/20ルミノメーター(Turner Designs Instrument, Sunnyvale, CA)において製造者のプロトコルに従ってルシフェラーゼアッセイシステム(E1501, Promega, Madison, WI)を使用してルシフェラーゼ活性をアッセイした。図5に示されるように、MAb 256−A13の存在下で培養されたNC85細胞で、ルシフェラーゼ活性はコントロール抗体G3のものと比較してほぼ4倍に増加した。該ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、MAb 256−A13がリガンド結合なしでルシフェラーゼ活性の劇的な増加を誘導する一方、アゴニスト抗ノッチ3抗体MAbs 256A−4及び256A−8は誘導しなかったことが実証された(図5)。
【0192】
実施例8:256A−13の結合エピトープのマッピング
A.ノッチ3単一ドメイン及びFc融合タンパク質コンストラクトを使用するエピトープマッピング方策及び原理
ノッチ3LIN12−二量体化ドメイン(ノッチ3−LD)とも呼ばれるノッチ3LIN12/ヘテロ二量体化ドメインは、3つのLIN12ドメイン、第一LIN12(L1)、第二LIN12(L2)及び第三LIN12(L3)からなる(図10参照)。5つのノッチ3単一ドメイン/Fc融合タンパク質発現コンストラクト(図7)を生産し、ウェスタンブロットを実施して、どのドメインがMAb256A−13結合に十分かを評価した。一過性形質移入後、分泌されたノッチ3単一ドメイン/Fc融合タンパク質を伴う上清をSDS−PAGEによって分析した。その結果は、MAb 256A−13はノッチ3−L1にだけ結合し、他のドメインには結合しないことを示している。ELISA実験はまたMAb256A−13がノッチ3−L1に対して非常に強い結合性を、ノッチ3−L3に対して弱い結合性を有し、他のドメインには結合しないことを示している(表5)。
【0193】

【0194】
A.サブドメインスワップによる結合エピトープの同定
第一に、アゴニストノッチ3MAbの256A−13はノッチ3LIN12/二量体化ドメイン(LD)に結合するが、相同のヒトノッチ1LIN12/二量体化ドメインには結合しない(表5)。第二に、抗ノッチ3 MAbは実施例4及び8において検討されたようにウェスタンブロットにおいて変性ノッチ3タンパク質に結合し、256A−13が単一エピトープに結合するか又は互いに独立の別々のエピトープに結合することを示している。 第三に、ノッチ3及びノッチ1はLIN12/二量体化ドメインにおいておよそ55%のアミノ酸配列相同性を共有しており、従って、この領域内のノッチ3とノッチ1の間のサブドメインスワップはタンパク質のコンフォメーションを破壊しないであろうと結論された。ノッチ1−LD cDNAを標準的なPCR法を使用してPCR増幅させた。 第一ストランドcDNA鋳型はPA−1細胞全RNA(ATCC番号CRL−1572)から合成した。ヒトIgGカッパ鎖リーダーペプチドコード配列をPCR増幅させ、リーダーペプチドとして使用してノッチ1−LDの5’にPCR−SOEによって結合させ、His−γ1Fc/pSecにサブクローニングした。
【0195】

【0196】
B.サブドメインスワップ融合タンパク質コンストラクトの生成
上のセクションAに提供したELISA解析に基づいて、第一LIN12ドメインの標的ドメイン又はL1を更に3つのサブドメインに分け、ノッチ1−L1の対応するサブドメインと個々にスワップさせた。サブドメインスワップコンストラクトは、図9及び10に示すように、PCR−SOE(Ho等, Gene 77:51 (1989);Horton等, BioTechniques 8:528 (1990))を使用して作製した。PCR及びPCR−SOE反応は、反応に加えた1Mのベタイン及び5%のDMSOでのPCRを使用して実施した。最終PCR−SOE産物をサブクローニングし、配列決定によって証明した。正確な挿入配列を有するプラスミドクローンをNheI及びXhoIで切断して挿入断片を切断し、これをゲル精製してサブクローニングした。5つのノッチ3/ノッチ1サブドメインスワップコンストラクトを図7に示す。エピトープマッピングを容易にするために、ヒトIgGカッパ鎖シグナル伝達ペプチドをドメインスワップコンストラクト中でリーダーペプチドとして使用した。サブドメインコンストラクトのアミノ酸配列は図10に示す。
【0197】
C.ノッチ3/ノッチ1サブドメインスワップ融合タンパク質の発現
ノッチ/ノッチ1−LDドメインスワッププラスミドを、リポフェクタミン2000を使用してCHO細胞中で一過性に形質移入した。CHO細胞を6ウェルプレートで1ウェル当たり0.8〜1×10細胞にて10%のFCSを含むDMEM増殖培地に播種し、形質移入前に一晩COインキュベーターに維持した。細胞を約3時間の増殖培地での形質移入後に回収した後、2%FCSを含むDMEMに切り替え、3日間培養した。条件培地を集め、3500rpmで10分間遠心分離した。CHOから分泌されたノッチ3−LDドメインスワップタンパク質を含む上清を集め、ウェスタンブロット及びELISA結合解析のために準備した。ELISAは、全てのドメインスワップ融合タンパク質が発現され、条件培地中に分泌された(表4)ことを示しており、これは、更にウェスタンブロット分析によって確認された(データは示さず)。
検出抗体として抗ヒトFc抗体を使用したELISAの読み取りは、全てのタンパク質が条件培地中に発現されたことを示している。ヒトでIgG/Fcをコントロールとして使用した。各ウェルにおいてコートされたヒトIgG/Fcの開始点は100ngである。
【0198】
D.ELISAを使用するエピトープ結合アッセイ
96ウェル平底Immulon IIマイクロテストプレート(Dynatech, Laboratories, Chantilly, VA)を、1×フェノールレッド及び3−4滴のpHix/リットル(Pierce, Rockford, IL)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の100μlの抗体(0.1μg/ml)を添加することによって抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch)でコートし、室温で一晩インキュベートした。コーティング溶液を、プレートをはじいて除去した後、0.1%のメルチオレート及びPBST中に2%のBSAを含む200μlのブロッキングバッファーを、非特異的結合をブロックするために各ウェルに1時間加えた。ついで、そのウェルをPBSTで洗浄した。ノッチ3/ノッチ1ドメインスワップコンストラクトの各形質移入体から50マイクロリットルの上の条件培地を集め、50μlのブロッキングバッファーと混合し、マイクロプレートの個々のウェルに添加した。1時間のインキュベーション後、ノッチ3/ノッチ1−LDドメインスワップタンパク質をコートした抗Fc抗体によって捕捉し、ウェルをPBSTで洗浄した。抗ノッチ3MAbs及びアイソタイプ一致コントロールMAbsを上のようにブロッキングバッファーで連続希釈し、50μlの希釈したMAbsを各ウェルに添加して、結合ノッチ3/ノッチ1ドメインスワップタンパク質への結合を評価した。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合Fc特異的ヤギ抗マウスIgGを検出に使用した。0.1%の3,3,5,5−テトラメチルベンジジン及び0.0003%の過酸化水素を含むHRP基質溶液を、30分間、発色のためにウェルに添加した。50mlの2MのHSO/ウェルを添加して反応を終了させた。450nmでのODをELISAリーダーで読み取った。サブドメインスワップコンストラクト及び変異のクラスターを上のELISA分析によって同様にして検査した。
【0199】
サブドメインスワップタンパク質に対するMAb256A−13を使用するELISA結合実験は、ノッチ3−L1ドメイン(L1)中の第一サブドメインのスワップが結合に影響を与えなかったことを示し、256A−13がこの領域に結合しないことを示している。他方、ノッチ3−L1中の第二及び第三のサブドメインのスワップは結合を有意に低減させた。従って、その二つのサブドメインはMAb256A−13に対する結合エピトープを含んでいる(図10)。対照的に、アイソタイプ一致の負のコントロール抗体G3はELISAアッセイにおいてドメインスワップ融合タンパク質の何れにも結合しない(図10)。上記の実験から、第一LIN12ドメインがMAb256A−13の結合に、特に第二及び第三のサブドメイン領域内において、必要とされることが結論付けられた。
【0200】
MAb256A−13が結合する特異的エピトープを更にマッピングするために、ノッチ3−L1ドメインの第二及び第三サブドメインを更に5つのアミノ酸クラスターに分割し、ノッチ1中の対応するアミノ酸残基と交換させた(図10)。ELISA結合アッセイは、DRE(ノッチ3配列)からSQL(ノッチ1配列)への交換がELISA結合活性を完全に消滅させたことを示しており、このエピトープだけがノッチ3−L1ドメイン内におけるMAb256A−13結合に必要とされることを示している。
【0201】
MAb256A−13結合に必要とされるアミノ酸残基のピンポイント解析を、ジ-アラニンペプチドスキャニングを使用して行った。アラニンペプチドはアミノ酸スワップ解析によってマッピングしたDREエピトープをカバーする。ペプチドはナイロン支持体膜に架橋させられたスポットとして合成される。抗体ブロット結合はドットブロットによって評価される。MAb G3がコントロールIgG1として使用される。ペプチド配列は図11に提供する。
【0202】
実施例9:抗ノッチ3MABSの配列決定
抗体結合特性は重鎖と軽鎖の双方の可変領域に完全に依存するので、256−A13の可変配列をサブタイプ化し、配列決定した。抗体IgGサブタイプを、Isostripマウスモノクローナル抗体キット(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)を使用して決定した。 その結果は、256A−13がIgG1重鎖とカッパ軽鎖を有していることを示した。
【0203】
重鎖及び軽鎖の可変領域配列をRT−PCR及びcDNAクローニングを通して解読した。ハイブリドーマクローン256A−13からの全RNAを、製造者のプロトコルに従って RNeasy Miniキット(Qiagen Sciences, Valencia, CA)を使用して単離した。第一ストランドcDNAを、RNA鋳型とSuperscriptaseIIIキットを使用して合成した。軽鎖及び重鎖cDNAsの可変領域を、マウスカッパ鎖コード領域の 5’-末端をカバーする変性順方向プライマーと可変領域の3’-末端との接合部で定常領域に対応する逆方向プライマーを使用して、又はマウス重鎖コード領域の5’-末端をカバーする変性順方向プライマーとマウス重鎖の定常領域逆方向プライマーを使用して、第一ストランドcDNAからPCR増幅させた。PCR産物を市販のベクター中にクローニングし、Lone Star Lab(Houston, TX)によって配列決定した。ヌクレオチド配列を、コンピュータソフトウェアプログラムDNAStar(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を利用して解析した。各抗ノッチ3 MAb配列を、同じハイブリドーマクローンから誘導した複数のPCRクローンからの配列によって決定した。
【0204】
Mab 256A−13の可変重鎖領域は121のアミノ酸残基を含み、軽鎖可変領域は102のアミノ酸残基を含む(図4A及び4B)。
【0205】
実施例10:ノッチ3のメタロプロテアーゼ切断に対するノッチ3アゴニスト抗体の影響
ノッチレセプター活性化は膜近傍部位(S2)でのリガンド誘導メタロプロテアーゼ切断を含み、細胞外サブユニットを生じる。この切断は、活性化されたノッチ細胞内領域を放出するためのS3切断に対する必須の条件である。アゴニスト抗体が、2つのタンパク分解性切断を含むリガンド独立性の逐次ノッチ活性化事象を誘導しうるかどうかを試験するために、組換えノッチ3レセプターを安定に発現する293T細胞(NC85細胞)をG3又は256−A13の何れかで処理した。培養培地においてタンパク分解性切断によって生成された可溶型細胞外サブユニットを、ノッチ3切断産物を認識する固体表面に結合した抗体を使用してELISAアッセイによって検出した。図6に示されるように、ノッチ3アゴニストMAbは条件培地において可溶型ノッチ3細胞外サブユニットの生成を増大させたが、コントロール抗体G3は増大させなかった。
【0206】
実施例12:ノッチ3関連疾患のためのアッセイ
ノッチ3関連疾患を同定するために、患者の試料からノッチ3遺伝子を配列決定することができ、又は患者の組織を使用してノッチ3レセプターの過小発現を調べるために免疫組織化学的検査を実施することができる。また、ノッチ3関連疾患に罹患していることが疑われる患者から細胞を単離し、培養し、ノッチ3シグナル伝達に対する本発明のアゴニスト抗体の影響を研究することができる。
【0207】
当業者であればここに記載された発明の特定の実施態様に対する多くの均等物を、認識するか、又はただの常套的な実験を使用して確認することができる。かかる均等物は次の特許請求の範囲によって包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に記載のものと少なくとも95%の同一性を有するアミノ配列を含む可変重(「VH」)鎖配列。
【請求項2】
定常領域を更に含む請求項1に記載のVH鎖領域。
【請求項3】
定常領域のCH1、CH2及びCH3ドメインを含む請求項2に記載のVH鎖領域。
【請求項4】
定常領域がIgG抗体のものである請求項2に記載のVH鎖領域。
【請求項5】
IgG抗体が、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、又はIgG4抗体である請求項4に記載のVH鎖領域。
【請求項6】
配列番号3に記載のものと少なくとも95%の同一性を有するアミノ配列を含む可変軽(「VL」)鎖配列。
【請求項7】
定常領域を更に含む請求項6に記載のVL鎖領域。
【請求項8】
配列番号4、配列番号5、及び配列番号6を含むVH鎖配列。
【請求項9】
配列番号7、配列番号8、及び配列番号9を含むVL鎖配列。
【請求項10】
請求項1又は請求項6の可変重鎖配列及び/又は可変軽鎖配列をコードする核酸。
【請求項11】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9の一又は複数をコードする核酸。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の一又は複数の核酸を含むベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含む細胞。
【請求項14】
抗体がノッチ3に特異的に結合する、請求項1に記載のVH鎖領域を含む抗体又は抗体断片。
【請求項15】
抗体がノッチ3に特異的に結合する、請求項6に記載のVL鎖領域を含む抗体又は抗体断片。
【請求項16】
請求項6に記載のVL鎖領域を更に含む請求項13に記載の抗体。
【請求項17】
VL鎖領域が配列番号3を含み、VH鎖領域が配列番号2を含む請求項15に記載の抗体。
【請求項18】
抗体がノッチ3に特異的に結合する、請求項6に記載のVL鎖領域を含む抗体又は抗体断片。
【請求項19】
請求項1に記載のVHを更に含む請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
配列番号4、配列番号5、及び配列番号6を含む抗体。
【請求項21】
配列番号7、配列番号8、及び配列番号9を更に含む請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
抗体が単鎖Fvである請求項14から21の何れか一項に記載の抗体。
【請求項23】
標識を更に含む請求項14から22の何れか一項に記載の抗体。
【請求項24】
請求項13に記載の細胞を抗体の生産に適した条件下で培養し、生産された抗体を単離することを含む抗体の生産方法。
【請求項25】
医薬の調製における請求項14から22又は請求項24の何れか一項に記載の抗体の使用。
【請求項26】
ノッチ3関連疾病又は疾患の治療のための請求項14から22又は請求項24の何れか一項に記載の抗体の使用。
【請求項27】
疾病が神経変性疾患である請求項26に記載の使用。
【請求項28】
疾病がカダシル、家族性片麻痺性片頭痛(FHM)、家族性発作性運動失調、又はアラジール症候群である請求項26に記載の使用。
【請求項29】
ノッチ3関連疾病を検出するための請求項23に記載の抗体の使用。
【請求項30】
配列番号10を含むノッチ3結合エピトープ。
【請求項31】
配列番号11を含むノッチ3結合エピトープ。
【請求項32】
請求項30又は請求項31のエピトープに結合する抗体。
【請求項33】
抗体がアゴニストである請求項32に記載の抗体。
【請求項34】
上記抗体が配列番号2及び配列番号3を有する請求項33に記載の抗体。
【請求項35】
抗体が配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9を含む請求項33に記載の抗体。
【請求項36】
請求項14から22又は32から35の何れか一項に記載の抗体を含有する組成物。
【請求項37】
ノッチ3関連疾病又は疾患を治療するための請求項36に記載の組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図2G】
image rotate

【図2H】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2010−506596(P2010−506596A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533527(P2009−533527)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081797
【国際公開番号】WO2008/051797
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】