抗プロペルジン抗体と、その作製方法および使用方法
本発明は、抗原プロペルジンを対象とする抗体と、そのような抗体の使用に関する。詳細には、本発明によれば、抗原プロペルジンを対象とする完全ヒトモノクローナル抗体が提供される。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、およびこのような分子を含むポリペプチド、特にフレームワーク領域および/または相補性決定領域(CDR)、特にFR1からFR4にまたはCDR1からCDR3に跨る近接した重鎖および軽鎖に対応する配列が提供される。ハイブリドーマ、またはそのような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するその他の細胞系も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2004年11月3日に出願した米国特許出願第10/981300号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、抗体、詳細にはプロペルジンに特異的な抗体の分野にある。
【背景技術】
【0003】
補体系は、微生物感染およびその他の急性傷害に対する炎症応答を開始し増幅する、早期活動メカニズムを提供する。補体活性化は、病原に対する防御の価値ある第一線を提供するが、補体の不適切な活性化は、宿主に対して潜在的な害を及ぼす。例えば補体系は、心肺バイパス後の炎症、心筋梗塞、脳卒中、急性呼吸不全症候群(ARDS)、敗血症性ショック、移植拒絶、火傷、多発性硬化症、重症筋無力症、およびリウマチ様関節炎を含めたいくつかの急性および慢性状態の病因への寄与に関係している。補体は、このような状態の病原の単なる原因はないかもしれないが、補体活性は主な要因のように見え、治療介入の部位を表すことに留意することが重要である。この様々な疾患状態における補体媒介型組織損傷の重要性についての広がりつつある認識は、効果的な補体阻害性薬物の必要性を明らかにしている。
【0004】
補体系は、古典経路および副経路と呼ばれる2つの酵素カスケードを通して活性化することができる。これらの経路を、図11に概略的に示す。増えつつある科学的証拠は、副補体経路が、多くの急性および慢性障害の病状を導き出すのに主要な役割を演ずると主張している。
【0005】
古典経路は、外来の病原体に結合した抗体によって引き起こされ、したがって、特異的抗体の生成のために病原体に事前に曝す必要がある。この古典経路に特異的に関与する3種の血漿タンパク質:C1、C2、およびC4がある。これとは対照的に、副経路は、外来またはその他の異常な表面(細菌、酵母、ウイルス感染細胞、または損傷組織)によって自発的に引き起こされ、したがって即座に応答することが可能である。また、副経路に特異的な3種の血漿タンパク質:BおよびD因子とプロペルジンも存在する。古典および副補体経路は共に、活性化カスケードの後期に関与する共通のタンパク質(C3、C5-9)を共有することに留意することが重要である。どちらの補体経路の活性化後に生成された生物活性分子も、アナフィラトキシンC3aおよびC5a、ならびにC5b-9として知られており膜侵襲複合体(MAC)とも呼ばれる末端補体複合体を含む。これらのアナフィラトキシンは、病原体感染の場合には有益であるが不適切に生成された場合にはおそらく有害である、細胞炎症反応を開始する。例えばMACは、細胞膜へのその挿入を通して細胞損傷を引き起こす。C3aおよびC5aのように、MACは病原体の破壊に積極的な役割を演ずることができるが、宿主細胞を攻撃する場合は有害になる可能性がある。
【0006】
最近まで、疾患の病因における補体活性化の理解は、不十分であった。この原因は、一部には、動物疾患モデルでの補体の役割を直接評価するのに使用することができる特異的阻害剤が存在しないことにあった。補体受容体1(sCR1)、すなわち両方の補体経路の阻害剤の可溶形態の開発は、疾患病因における補体活性化が演じる役割に光を当てた。sCR1分子は、2つの補体経路のC3-(C4b2aおよびC3bBb)およびC5-コンバターゼ(C4b2a3bおよび(C3b2Bb))に存在するC3bおよびC4bサブユニットに可逆的に結合することによって、補体活性化を抑制する。sCR1は、炎症、虚血性再潅流、移植拒絶、外傷、および自己免疫疾患の動物モデルで有益であることが実証されている。
【0007】
sCR1は、生体内で補体を阻害するのに効果的であるが、治療薬としては制約がある可能性がある。動物研究からの結果に基づけば、sCR1の有効治療濃度は非常に高くなる。さらに、血流からのsCR1のクリアランスは驚くほど速い。また、sCR1は古典および副補体カスケードを阻止するので、宿主側防御が損なわれることになる。
【0008】
疾患の病態における不適切な補体活性化の重要性に関するさらなる証拠は、抗C5モノクローナル抗体の使用によってもたらされている。抗C5抗体は、関節炎および免疫複合体性腎炎のマウスモデルで有益であることを示している。心肺バイパス(CPB)誘導性炎症の生体外モデルでは、抗ヒトC5モノクローナル抗体の投与によって、通常はそのような手順で生ずる白血球および血漿の活性化を阻害した。
【0009】
抗C5抗体は生体内での効力を実証したが、C5には、治療薬としてある欠点がある。まず、C5は豊富な血漿タンパク質であり(約85μg/ml);したがって、高濃度の抗C5モノクローナル抗体が、C5活性を阻止するのに必要と考えられる。さらにこの手法は、C3a、すなわち別の強力な炎症性媒介物質の形成を阻止しない可能性があることに留意することが重要である。C3aは、単球からの炎症誘発性のサイトカインおよびプロスタグランジンの放出、肥満細胞からのヒスタミン放出、および好酸球の脱顆粒も含めた、潜在的に有害な現象を引き起こすことができるという証拠が蓄積されつつある。
【0010】
利用可能な臨床データは、多くの急性および慢性の損傷状況において、補体活性化が副経路によって主に媒介されることを示唆している。これらの知見は、心肺バイパス後炎症や心筋梗塞、再潅流傷害、脳卒中、リウマチ様関節炎、および熱傷などの様々な損傷状況で、副経路媒介型組織損傷を特異的に阻害するのに有利になり得ることを示す。これは、免疫複合体処理を扱うために、かつ感染に対する宿主側防御を助けるために、古典経路の態様を無傷のままにすると考えられる。
【0011】
副経路の重要な酵素作用ステップは、C3-コンバターゼ(C3bBb)によって媒介され、C3が切断されてC3aおよびC3bが得られる。副経路特異的タンパク質、プロペルジンは、C3およびC5コンバターゼ複合体(それぞれC3bBbおよびC3bBbC3b)の半減期を延ばすその能力によって、副経路の調節の際にある役割を演ずると推測される。
【特許文献1】米国特許出願第10/981300号
【特許文献2】公開米国特許出願第20020015701号
【特許文献3】米国特許第5770429号
【特許文献4】米国特許第6162963号
【特許文献5】米国特許第6150584号
【特許文献6】米国特許第6114598号
【特許文献7】米国特許第6075181号
【特許文献8】米国特許第5151510号
【特許文献9】WO99/49019
【特許文献10】米国特許第6066476号
【特許文献11】米国特許第6020192号
【特許文献12】米国特許第5985577号
【特許文献13】米国特許第5976796号
【特許文献14】米国特許第5968750号
【特許文献15】米国特許第5968738号
【特許文献16】米国特許第5958713号
【特許文献17】米国特許第5919445号
【特許文献18】米国特許第5874304号
【特許文献19】米国特許第5939598号
【特許文献20】日本国特許第3068180B2号
【特許文献21】日本国特許第3068506B2号
【特許文献22】日本国特許第3068707B2号
【特許文献23】米国特許出願第08/759620号
【特許文献24】欧州特許第EP463151B1号
【特許文献25】国際特許出願第WO94/02602号
【特許文献26】国際特許出願第WO96/34096号
【特許文献27】WO98/24893
【特許文献28】WO00/76310
【特許文献29】米国特許第5545807号
【特許文献30】米国特許第5545806号
【特許文献31】米国特許第5625825号
【特許文献32】米国特許第5625126号
【特許文献33】米国特許第5633425号
【特許文献34】米国特許第5661016号
【特許文献35】米国特許第5789650号
【特許文献36】米国特許第5814318号
【特許文献37】米国特許第5877397号
【特許文献38】米国特許第5874299号
【特許文献39】米国特許第6255458号
【特許文献40】米国特許第5591669号
【特許文献41】米国特許第6023010号
【特許文献42】米国特許第5612205号
【特許文献43】米国特許第5721367号
【特許文献44】米国特許第5789215号
【特許文献45】米国特許第5643763号
【特許文献46】米国特許出願第07/574748号
【特許文献47】米国特許出願第07/575962号
【特許文献48】米国特許出願第07/810279号
【特許文献49】米国特許出願第07/853408号
【特許文献50】米国特許出願第07/904068号
【特許文献51】米国特許出願第07/990860号
【特許文献52】米国特許出願第08/053131号
【特許文献53】米国特許出願第08/096762号
【特許文献54】米国特許出願第08/155301号
【特許文献55】米国特許出願第08/161739号
【特許文献56】米国特許出願第08/165699号
【特許文献57】米国特許出願第08/209741号
【特許文献58】欧州特許第0546073B1号
【特許文献59】国際特許出願第WO92/03918号
【特許文献60】国際特許出願第WO92/22645号
【特許文献61】国際特許出願第WO92/22647号
【特許文献62】国際特許出願第WO92/22670号
【特許文献63】国際特許出願第WO93/12227号
【特許文献64】国際特許出願第WO94/00569号
【特許文献65】国際特許出願第WO94/25585号
【特許文献66】国際特許出願第WO96/14436号
【特許文献67】国際特許出願第WO97/13852号
【特許文献68】国際特許出願第WO98/24884号
【特許文献69】米国特許第5981175号
【特許文献70】欧州特許出願第773288号
【特許文献71】欧州特許出願第843961号
【特許文献72】WO92/02190
【特許文献73】米国特許第5530101号
【特許文献74】米国特許第5585089号
【特許文献75】米国特許第5693761号
【特許文献76】米国特許第5693792号
【特許文献77】米国特許第5714350号
【特許文献78】米国特許第5777085号
【特許文献79】米国特許第4683195号
【特許文献80】米国特許第4683202号
【特許文献81】米国特許第5733743号
【特許文献82】米国特許第5703057号
【特許文献83】米国特許第4816397号
【特許文献84】米国特許第5916771号
【特許文献85】米国特許第6207418号
【特許文献86】米国特許第5194594号
【特許文献87】米国特許第4681581号
【特許文献88】米国特許第4735210号
【特許文献89】米国特許第5101827号
【特許文献90】米国特許第5102990号
【特許文献91】米国特許第5648471号
【特許文献92】米国特許第5697902号
【特許文献93】国際特許出願第WO94/29444号
【特許文献94】国際特許出願第WO97/38137号
【特許文献95】米国特許第4399216号
【特許文献96】米国特許第4912040号
【特許文献97】米国特許第4740461号
【特許文献98】米国特許第4959455号
【特許文献99】米国特許第4692147号
【特許文献100】米国特許第4360019号
【特許文献101】米国特許第4487603号
【特許文献102】米国特許第4725852号
【特許文献103】米国特許第5820589号
【特許文献104】米国特許第5643207号
【特許文献105】米国特許第6198966号
【非特許文献1】Gupta-Bansal他(2000) Mol. Immunol. 37:191〜201
【非特許文献2】Green (1999) J. Immunol. Methods 231: 11〜23
【非特許文献3】Wells (2000) Chem Biol 7:R185〜6
【非特許文献4】Davis他(1999) Cancer Metastasis Rev 18(4):421〜5
【非特許文献5】Vuagnat他, (2000) Mol Immunol. 37: 467〜478
【非特許文献6】Perdikoulis他, (2000) Biochem. Biophys. Acta1548:265〜277
【非特許文献7】Laplanche他 Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986)
【非特許文献8】Stec他 J.Am.Chem.Soc. 106:6077 (1984)
【非特許文献9】Stein他 Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988)
【非特許文献10】Zon他 Anti-Cancer Drug Design 6:539 (1991)
【非特許文献11】Zon他 Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, 第87〜108頁 (F.Eckstein編, Oxford University Press, Oxford England (1991))
【非特許文献12】Stec他; UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543 (1990)
【非特許文献13】Dayhoff, M.O., Atlas of Protein Sequence and Structure, 第101〜110頁(第5巻, National Biomedical Research Foundation (1972))およびこの巻の補遺2, 第1〜10頁
【非特許文献14】SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math. 2:482 (1981)
【非特許文献15】NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol. 48:443 (1970)
【非特許文献16】PearsonおよびLipman Proc.Natl.Acad.Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)
【非特許文献17】Immunology-A Synthesis (第2版, E.S.GolubおよびD.R.Gren編, Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))
【非特許文献18】Bowie他 Science 253:164 (1991)
【非特許文献19】Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編, W.H.Freeman and Company, New York (1984))
【非特許文献20】Introduction to Protein Structure (C.BrandenおよびJ.Tooze編, Garland Publishing, New York, N.Y. (1991))
【非特許文献21】Thornton他, Nature 354:105 (1991)
【非特許文献22】Fauchere, J.Adv.Drug Res. 15:29 (1986)
【非特許文献23】VeberおよびFreidinger TINS p.392 (1985)
【非特許文献24】Evans他 J.Med.Chem. 30: 1229 (1987)
【非特許文献25】RizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem. 61:387 (1992)
【非特許文献26】The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker,S.編, McGraw-Hill, San Francisco (1985))
【非特許文献27】Sambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))
【非特許文献28】Green, Antibody engineering via genetic engineering of the mouse: XenoMouse(登録商標) strains are a vehicle for the facile generation of therapeutic human monoclonal antibodies, J.Immunol.Methods 231: 11〜23, 1999
【非特許文献29】Wells, Eek, a XenoMouse(登録商標): Abgenix,Inc., Chem Biol 2000 Aug; 7(8): R185〜6
【非特許文献30】Davis他, Transgenic mice as a source of fully human antibodies for the treatment of cancer Cancer Metastasis Rev 1999; 18(4):421〜5
【非特許文献31】Matz他(1999) Nature Biotechnology 17:969〜973
【非特許文献32】Peelle他(2001) J.Protein Chem. 20:507〜519
【非特許文献33】Fundamental Immunology Ch.7 (Paul,W.編, 第2版 Raven Press, N.Y. (1989))
【非特許文献34】Sequence of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987および1991))
【非特許文献35】Chothia & Lesk J.Mol. Biol. 196: 901〜917 (1987)
【非特許文献36】Chothia他 Nature 342: 878〜883 (1989)
【非特許文献37】Songsivilai & Lachmann Clin. Exp. Immunol. 79: 315〜321
【非特許文献38】Kostelny他 J.Immunol. 148: 1547〜1553 (1992)
【非特許文献39】Green他 Nature Genetics 7: 13〜21 (1994)
【非特許文献40】Mendez他 Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)
【非特許文献41】GreenおよびJakobovits J.Exp.Med. 188:483〜495 (1998)
【非特許文献42】WinterおよびHarris, Immunol Today 14: 43〜46 (1993)
【非特許文献43】Wright他, Crit, Reviews in Immunol. 12125〜168 (1992)
【非特許文献44】Liu他, P.N.A.S. 84: 3439 (1987)
【非特許文献45】J.Immunol. 139: 3521 (1987)
【非特許文献46】Kabat他(1991) Sequence of Proteins of Immunological Interest, N.I.H.公報第91-3242号
【非特許文献47】Okayama他, Mol.Cell.Bio. 3:280 (1983)
【非特許文献48】Gorman他, P.N.A.S. 79:6777 (1982)
【非特許文献49】Grosschedl他, Cell 41: 885 (1985)
【非特許文献50】HanesおよびPlucthau, PNAS USA 94:4937〜4942 (1997)
【非特許文献51】ParmleyおよびSmith, Gene 73: 305〜318 (1988)
【非特許文献52】Scott, TIBS 17: 241〜245 (1992)
【非特許文献53】Cwirla他, PNAS USA 87: 6378〜6382 (1990)
【非特許文献54】Russel他 Nucl.Acids Research 21:1081〜1085 (1993)
【非特許文献55】Hoganboom他, Immunol.Reviews 130: 43〜68 (1992)
【非特許文献56】ChiswellおよびMcCafferty, TIBTECH 10: 80〜84 (1992)
【非特許文献57】Fanger他 Immunol Methods 4: 72〜81 (1994)
【非特許文献58】Traunecker他 Int.J.Cancer (補遺) 7:51〜52 (1992)
【非特許文献59】Deo他 18: 127 (1997)
【非特許文献60】Valerius他 Blood 90: 4485〜4492 (1997)
【非特許文献61】Vitetta Immunol Today 14:252 (1993)
【非特許文献62】Junghans他 Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655〜686 (第2版, ChafnerおよびLongo編, Lippincott Raven (1996))
【非特許文献63】Houghten他 Biotechniques 13: 412〜421 (1992)
【非特許文献64】Houghten PNAS USA 82: 5131〜5135 (1985)
【非特許文献65】Pinalla他 Biotechniques 13: 901〜905 (1992)
【非特許文献66】BlakeおよびLitzi-Davis BioConjugate Chem. 3: 510〜513 (1992)
【非特許文献67】Chen他 Human Gene Therapy 5:595〜601 (1994)
【非特許文献68】Marasco Gene Therapy 4: 11〜15 (1997)
【非特許文献69】Capsey他 Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs (Stockton Press, NY (1988))
【非特許文献70】Remington's Pharmaceutical Sciences (第15版, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975))
【非特許文献71】Baldrick P.「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.」Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2): 210〜8 (2000)
【非特許文献72】Wang W.「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」Int. J.Pharm. 203(1〜2): 1〜60 (2000)
【非特許文献73】Charman WN「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.」J Pharm Sci. 89(8): 967〜78 (2000)
【非特許文献74】Powell他「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol. 52: 238〜311 (1998)
【非特許文献75】Short Protocols in Molecular Biology (1999) F.Ausubel他編, Wiley & Sons
【非特許文献76】A.Gennaro (2000)「Remington: The science and Practice of Pharmacy,」第20版, Lippencott, Williams, & Willkins
【非特許文献77】Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C.Ansel他編, 第7版, Lippencott. Williams, & Wilkins
【非特許文献78】Handbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H.Kibbe他, 第3版, Amer.Pharmaceutical Assoc.
【非特許文献79】Kearney他, J.Immunol. 123, 1979, 1548〜1550
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当技術分野では、少なくとも一部には副補体経路によって媒介される、炎症およびその他の障害を低減させる薬剤が求められている。本発明は、この要求に対処するものである。
【0013】
(文献)
Gupta-Bansal他(2000) Mol. Immunol. 37:191〜201;公開米国特許出願第20020015701号;米国特許第5770429号;米国特許第6162963号;米国特許第6150584号;米国特許第6114598号;米国特許第6075181号;Green (1999) J. Immunol. Methods 231: 11〜23; Wells (2000) Chem Biol 7:R185〜6;およびDavis他(1999) Cancer Metastasis Rev 18(4): 421〜5; Vuagnat他(2000) Mol Immunol. 37: 467〜478; Perdikoulis他(2001) Biochem. Biophys. Acta 1548:265〜277。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、抗原プロペルジンを対象とする抗体と、そのような抗体の使用とに関する。詳細には、本発明によれば、抗原プロペルジンを対象とする完全ヒトモノクローナル抗体が提供される。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列と、重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子を含むポリペプチド、特に、具体的にはFR1からFR4までまたはCDR1からCDR3までフレームワーク(FR)および/または相補性決定領域(CDR)を跨ぐ近接重鎖および軽鎖配列に対応する配列が、提供される。そのような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたはその他の細胞系も提供される。
【0015】
(定義)
本明細書で使用する「単離ポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、または合成由来のポリヌクレオチド、あるいはこれらのいくつかの組合せであって、その由来によって、「単離ポリヌクレオチド」は、(1)「単離ポリヌクレオチド」が自然状態で見出されるポリヌクレオチドの全てまたは一部に結合しておらず、(2)自然状態では結合していないポリヌクレオチドに作動可能に結合しており、または(3)より大きい配列の一部として自然状態では生じないものを意味するものとする。
【0016】
本明細書で言及される「単離タンパク質」という用語は、cDNA、組換えRNA、または合成由来のタンパク質、あるいはこれらの組合せであって、その由来または誘導源によって、「単離タンパク質」は、(1)自然状態で見出されるタンパク質に結合しておらず、(2)同じ供給源からの別のタンパク質を含んでおらず、例えばマウスタンパク質を含んでおらず、(3)異なる種からの細胞によって発現され、または(4)自然状態んで生じないものを意味する。
【0017】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、天然タンパク質、ポリペプチド配列の断片、または類似体を指すための総称として使用する。したがって、天然タンパク質、断片、および類似体は、ポリペプチド属の種である。本発明による好ましいポリペプチドは、図17A〜Cによって表される可変領域アミノ酸配列(例えば、配列番号4、8、12、16、および20)を含むヒト重鎖免疫グロブリン分子、および図17A〜Cによって表される可変領域アミノ酸配列(例えば、配列番号2、6、10、14、および18)を含むヒトκ軽鎖免疫グロブリン分子、ならびに重鎖免疫グロブリン分子とκ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子との組合せによって形成された抗体分子、およびその逆であるもの、ならびにこれらの断片および類似体を含む。
【0018】
対象に利用されるときの、本明細書で使用される「天然に生ずる」という用語は、対象を自然状態で見出すことができることを指す。例えば、自然状態で供給源から単離することができ、かつ実験室またはその他の方法で人間によって意図的に変更されていない、生物体(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は天然に生ずる。
【0019】
本明細書で使用される「作動可能に結合した」という用語は、そのように記述された構成要素の位置が、その意図される手法で機能することが可能な関係にあることを指す。コード配列に「作動可能に結合した」対照配列は、コード配列の発現が対照配列に適合した条件下で実現されるようにライゲートされる。
【0020】
本明細書で使用する「対照配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列、すなわちこれがライゲートされるコード配列の、発現およびプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。そのような対照配列の性質は、宿主生物に応じて異なり;原核生物では、そのような対照配列は一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では、一般にそのような対照配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。「対照配列」という用語は、最低限でも、その存在が発現およびプロセシングに必須である全ての構成要素を含むものであり、その存在が有利である追加の構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列を含むこともできる。
【0021】
本明細書で言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが少なくとも10塩基対であるポリマー形態のヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチド、あるいはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態である。この用語は、1本鎖および2本鎖形態のDNAを含む。
【0022】
本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に生じまた非天然に生ずるオリゴヌクレオチド結合によって一緒に結合された、天然に生ずる修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般に200塩基対以下の長さを含むポリヌクレオチドのサブセットである。オリゴヌクレオチドは、その長さが10〜60塩基であることが好ましく、最も好ましくは12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基の長さである。オリゴヌクレオチドは、例えばプローブの場合は通常1本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば遺伝子変異体の構成に使用する場合は2本鎖でよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかにすることができる。
【0023】
本明細書で言及される「天然に生ずるヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾されまたは置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチオエートやホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれている、LaPlanche他 Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986); Stec他 J.Am.Chem.Soc. 106:6077 (1984); Stein他 Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988); Zon他 Anti-Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon他 Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, 第87〜108頁 (F.Eckstein編, Oxford University Press, Oxford England (1991)); Stec他 米国特許第5151510号; UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて検出用の標識を含むことができる。
【0024】
本明細書で言及される「選択的にハイブリダイズする」という用語は、検出可能にかつ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびこれらの断片は、本発明により、非特異的核酸に対する検出可能な結合の目に見える量を最小限にする、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件下で核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件は、当技術分野で知られるように、かつ本明細書で論じられるように、選択的ハイブリダイゼーション状態を実現するのに使用することができる。一般に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および断片と、問題にされる核酸配列との核酸配列の相同性は、少なくとも80%になり、より典型的には、相同性が少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%増加することが好ましい。2つのアミノ酸配列は、それらの間で部分的にまたは完全に同一である場合、相同である。例えば、85%の相同性は、2つの配列が最大限マッチングするように並べたときに、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。ギャップ(マッチングしている2つの配列のいずれかで)は、最大限のマッチングにおいて可能であり、ギャップ長は5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0025】
あるいは、また好ましくは、2つのタンパク質配列(またはこれらから得られる、長さが少なくとも30アミノ酸のポリペプチド配列)は、これらが変異データマトリックスを有するプログラムALIGNを使用して5よりも大きいアライメントスコア(標準偏差単位で)を有し、かつギャップペナルティが6以上である場合、本明細書でこの用語が使用される通り相同である。Dayhoff, M.O., Atlas of Protein Sequence and Structure, 第101〜110頁(第5巻, National Biomedical Research Foundation (1972))およびこの巻の補遺2, 第1〜10頁を参照されたい。2つの配列またはその一部は、ALIGNプログラムを使用して最適に並べたときにこれらのアミノ酸が50%以上同一である場合、相同であることがより好ましい。「対応する」という用語は、本明細書では、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部に対して相同である(すなわち、同一であり、厳密に進化的に関係していない)こと、あるいはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列に同一であることを意味するのに使用する。これとは対照的に、「相補的な」という用語は、本明細書では、相補配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部に相同であることを意味するのに使用する。例として、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に相補的である。
【0026】
下記の用語、すなわち「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的同一性」は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列同士の配列関係を記述するのに使用する。「参照配列」は、配列比較の根拠として使用される定義済み配列であり; 参照配列は、例えば配列表に示される完全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントなど、より大きい配列のサブセットでよく、あるいは、完全cDNAまたは遺伝子配列を含むことができる。一般に、参照配列は、その長さが少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸であり、しばしば少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸の長さであり、しばしば少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸の長さである。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ、(1)2個の分子同士で類似する配列(すなわち、完全ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含み、(2)2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列同士で多岐にわたる配列をさらに含むことができるので、2個(またはそれ以上)の分子同士での配列比較は、典型的な場合、局所領域の配列類似性を特定し比較するために、「比較ウィンドウ」上で2個の分子の配列を比較することによって行われる。
【0027】
本明細書で使用する「比較ウィンドウ」は、少なくとも18近接ヌクレオチドの位置または6アミノ酸の概念的セグメントを指し、この場合、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18近接ヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照配列と比較することができ、また比較ウィンドウ上のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントを目的として参照配列(付加または欠失を含まない)と比較したときに、20%以下の付加、欠失、置換など(すなわちギャップ)を含むことができるものである。比較ウィンドウをアライメントするための、配列の最適なアライメントは、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman Proc.Natl.Acad.Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらアルゴリズムのコンピュータ化されたインプリメンテーションによって(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, (Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.), Geneworks, またはMac Vectorソフトウェアパッケージ中の、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、あるいは検査によって実施することができ、様々な方法によって生成される最良のアライメント(すなわち、比較ウィンドウ上で相同性に関して最高のパーセンテージをもたらす)が選択される。
【0028】
本明細書で使用される、20の従来のアミノ酸およびその略語は、従来の用法に従う。参照により本明細書に組み込まれるImmunology-A Synthesis (第2版, E.S.GolubおよびD.R.Gren編, Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照されたい。20の従来のアミノ酸、α-,α-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、およびその他の非従来型アミノ酸の立体異性体(例えばD-アミノ酸)も、本発明のポリペプチドに適切な構成要素とすることができる。非従来型アミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、およびその他の類似するアミノ酸およびイミノ酸(例えば4-ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用されるポリペプチドという表記では、標準的な用法および慣習によれば、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0029】
同様に、他に特に指定しない限り、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端が5'末端であり、2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向を、5'方向と呼ぶ。新生RNA転写物の5'-3'付加方向を転写方向と呼び、RNAと同じ配列を有しかつ5'からRNA転写物の5'末端までのDNA鎖の配列領域を、「上流配列」と呼び、RNAと同じ配列を有しかつ3'からRNA転写部物の3'末端までのDNA鎖上の配列領域を、「下流配列」と呼ぶ。
【0030】
ポリペプチドに適用するとき、「実質的に同一」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップの重みを使用したプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアライメントしたときに少なくとも80%の配列同一性を共有し、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なることが好ましい。保存的アミノ酸置換は、類似する側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族測鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり; 脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり; アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり; 芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり; 塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり; 硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン-アスパラギン、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0031】
本明細書で論じられるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中の少量の変化は、このアミノ酸配列中の変化が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、および最も好ましくは99%維持する場合には、本発明により包含されると考えられる。特に、保存的アミノ酸置換が考えられる。保存的置換は、側鎖に関連性を有するアミノ酸ファミリー内で生ずるのものである。遺伝的にコードされるアミノ酸を、一般に(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸; (2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン; (3) 非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン; および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンのファミリーに分割する。より好ましいファミリーは: セリンおよびトレオニンが脂肪族-ヒドロキシファミリーであり; アスパラギンおよびグルタミンがアミド含有ファミリーであり: アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンが脂肪族ファミリーであり; フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが芳香族ファミリーである。例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシン、グルタミン酸によるアスパラギン酸、セリンによるトレオニンの単独の置換、または構造的に関係のあるアミノ酸によるアミノ酸の同様の置換は、特にこの置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を巻き込まない場合、得られる分子の結合または性質に大きな影響を及ぼさないと予測することが理に適っている。
【0032】
アミノ酸の変化が機能ペプチドにもたらされるかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性のアッセイを行うことによって、容易に決定することができる。アッセイは、本明細書に詳細に記述される。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、当業者が容易に調製することができる。断片または類似体の好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界付近に生ずる。構造および機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データと、公開されまたは所有権を主張できる配列データベースとの比較によって、特定することができる。好ましくは、コンピュータ化した比較方法を使用して、構造および/または機能が知られているその他のタンパク質で生ずる配列モチーフまたは予測されるタンパク質構造ドメインを特定する。既知の3次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を特定する方法は、知られている。Bowie他 Science 253:164 (1991)。したがって前述の例は、当業者が、本発明により構造および機能ドメインを画定するのに使用することができる、配列モチーフおよび構造的立体配座を認識できることを実証する。
【0033】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、(5)そのような類似体のその他の物理化学的または機能的性質を与えまたは変更するものである。類似体は、天然に生ずるペプチド配列以外の配列の、様々な突然変異タンパク質を含むことができる。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)を、天然に生ずる配列で(好ましくは、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分で)行うことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造特性を実質的に変更すべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列中に生ずるヘリックスを破断する傾向にあるべきではなく、または親配列を特徴付けるその他の2次構造を分裂させる傾向にあるべきではない)。当技術分野で認められるポリペプチド2次構造および3次構造の例は、参照により本明細書にそれぞれ組み込まれるProteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編, W.H.Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C.BrandenおよびJ.Tooze編, Garland Publishing, New York, N.Y. (1991)); およびThornton他, Nature 354:105 (1991)に記載されている。
【0034】
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、アミノ末端および/またはカルボキシル末端欠失を有するポリペプチドであって、しかし残りのアミノ酸配列が、例えば完全長cDNA配列から推論される天然に生ずる配列での対応する位置に同一であるポリペプチドを指す。断片は、典型的には少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも14アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり、通常は少なくとも50アミノ酸長であり、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。本明細書で使用される「類似体」という用語は、推論されるアミノ酸配列の一部に実質的に同一である少なくとも25アミノ酸のセグメントからなり、また対応する天然ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を有するポリペプチドを指す。典型的な場合、ポリペプチド類似体は、天然に生ずる配列に対して保存的アミノ酸置換(あるいは付加または欠失)を含む。類似体は、典型的には少なくとも20アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも50アミノ酸長またはそれ以上であり、しばしば完全長の天然に生ずるポリペプチド程度に長くすることができる。
【0035】
ペプチド類似体は、一般に、鋳型ペプチドの場合に類似した性質を有する非ペプチド薬物として、製薬産業で使用される。これらのタイプの非ペプチド化合物を、「ペプチドミメティクス(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)」と呼ぶ。参照により本明細書に組み込まれるFauchere, J.Adv.Drug Res. 15:29 (1986); VeberおよびFreidinger TINS p.392 (1985); およびEvans他 J.Med.Chem. 30: 1229 (1987)。そのような化合物は、コンピュータ化した分子モデリングの助けを借りてしばしば開発される。治療上有用なペプチドに構造的に類似しているペプチドミメティクスを、同等の治療効果または予防効果をもたらすために使用することができる。一般に、ペプチドミメティクスは、ヒト抗体など典型的なポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当技術分野で周知の方法により、--CH2NH--、--CH2S--、--CH2-CH2--、--CH=CH-(cisおよびtrans)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--からなる群から選択された結合によって任意選択で置換された、1つまたは複数のペプチド結合を有する。同じタイプのD-アミノ酸によるコンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の系統的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を使用して、より安定なペプチドを生成することができる。さらに、コンセンサス配列、または実質的に同一のコンセンサス配列の変種を含む制約型ペプチドは、当技術分野で知られている方法によって(参照により本明細書に組み込まれるRizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem. 61:387 (1992)); 例えば、ペプチドを環化する分子間ジスルフィド橋を形成することが可能な内部システイン残基を付加することによって、生成することができる。
【0036】
「抗体」または「抗体ペプチド」は、無傷の抗体、または特異的結合のために無傷の抗体と競合するその結合断片を指す。結合断片は、組換えDNA技法によって、あるいは無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって生成される。結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、および単鎖抗体が含まれる。「2重特異性」または「2元官能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれを同一にすることが理解される。抗体は、過剰な抗体が、特異的結合パートナーに結合したポリペプチドの量を少なくとも約20%、40%、60%、または80%、さらにより一般には約85%を超えて低下させる場合(生体外競合結合アッセイで測定したとき)、ポリペプチドと特異的結合パートナーとの接着を実質的に阻害する。
【0037】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することが可能な任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸や糖側鎖などの、分子の化学的に活性な表面グループからなり、通常は、特異的3次元構造特性ならびに特異的荷電特性を有する。抗体は、解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMである場合、抗原に特異的に結合すると言われている。
【0038】
「薬剤」という用語は、本明細書では、化合物、化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的物質から作製された抽出物を示すのに使用する。
【0039】
本明細書で使用する「標識」または「標識された」という用語は、例えば、放射能標識されたアミノ酸の組込み、あるいはマークされたアビジン(例えば、光学的方法または比色法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)により検出することが可能なビオチニル部分のポリペプチドへの結合による、検出可能なマーカーの組込みを指す。ある状況では、標識またはマーカーも治療に役立てることができる。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法は、当技術分野で知られており、使用することができる。ポリペプチドに対する標識の例には、下記の物質、すなわち放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光ラベル(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、2次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、2次抗体用の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が含まれるが、これらに限定するものではない。いくつかの実施形態では、標識を、様々な長さのスペーサーアームにより結合して、潜在的な立体障害を低下させる。
【0040】
本明細書で使用する「医薬品」という用語は、患者に適正に投与したときに所望の治療効果を誘導することが可能な化合物または組成物を指す。本明細書におけるその他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (参照により本明細書に組み込まれるParker,S.編, McGraw-Hill, San Francisco (1985))により例示されるように、当技術分野での従来の用法に従って使用する。
【0041】
本明細書で使用する「実質的に純粋」とは、その対象の種が、存在する主な種であることを意味し(すなわち、モルベースで、組成物中の任意のその他の個々の種よりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製された画分が、存在する全ての高分子種に対してその対象の種が少なくとも約50%(モルベースで)含まれている組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80%よりも多く含むことになり、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%よりも多い。対象の種は、本質的な均一性へと精製され(汚染物質種を、従来の検出方法によって組成物中に検出することができない)、この組成物が本質的に単一の高分子種からなるものであることが最も好ましい。
【0042】
「患者」および「哺乳動物宿主」などの用語は、本明細書では同義に使用され、ヒトおよび獣医学的対象を含めた哺乳類を指す。
【0043】
「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウ上で、2つのアミノ酸配列が同一であることを意味する(すなわち、ヌクレオチドごとにまたは残基ごとに)。「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、比較ウィンドウ上で最適にアライメントされた2つの配列を比較し、マッチングする位置の数が得られるように、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)または残基が両方の配列で生ずる位置の数を決定し、マッチングする位置の数を、比較ウィンドウ上の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に、配列同一性のパーセンテージが得られるように100を掛けることによって計算する。本明細書で使用する「実質的に同一」という用語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を示すものであって、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で、しばしば少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で、参照配列に比べて少なくとも85%の配列同一性を、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性を、より一般には99%の配列同一性を有する配列を含んでおり、この配列同一性のパーセンテージは、参照配列と、比較ウィンドウ上で参照配列の20%以下をなす欠失または付加を含むことができる配列とを比較することによって計算されるものである。参照配列は、より大きい配列のサブセットでよい。
【0044】
本明細書で使用する、「治療」および「治療する」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防ぐという観点から予防的なものでよく、かつ/または、疾患および/または疾患に起因し得る副作用を部分的にまたは完全に治癒させるという観点から治療的なものでよい。本明細書で使用する「治療」は、哺乳類、特にヒトの疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患に罹る可能性がありまたは疾患になる危険性があるが、まだ疾患状態にあるとは診断されてい患者において、疾患が生ずるのを防ぐこと、(b)疾患を阻害すること、すなわち疾患の発症を抑止すること、および(c)疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行を引き起こすことうぃを含む。
【0045】
本明細書で使用する「副補体経路に関連する疾患または障害」という用語は、副補体経路の活性化によって直接または間接的に引き起こされる疾患または障害、副補体経路の1つまたは複数の構成要素によって直接または間接的に媒介される疾患または障害、あるいは副補体経路によって生成される生成物を指す。この用語は、副補体経路の1つまたは複数の構成要素によって悪化する疾患または障害、あるいは副補体経路によって生成される生成物も指す。
【0046】
本発明についてさらに述べる前に、本発明は、記述される特定の実施形態に限定されず、したがって当然ながら様々に変化させることができることを理解されたい。また、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記述するためのものであって限定しようとするものではないことを理解されたい。
【0047】
ある範囲の値が与えられた場合、文脈において他に特に明瞭に指示されない限り、その下限の単位の10分の1に至るまでその範囲の上限と下限との間にある介入値と、その示される範囲内での任意のその他の表示される値または介入値は、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲内に独立して含めることができ、やはり本発明に包含され、表示される範囲内の任意の特に除外される限界に従属している。表示される範囲が、これら限界の一方または両方を含む場合、これら含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0048】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した任意の方法および材料も、本発明を実施しまたは試験する際に使用することができるが、好ましい方法および材料について次に述べる。本明細書で述べる全ての文献は、これら文献が引用されるものと関連して方法および/または材料を開示し記述するために、参照により本明細書に組み込む。
【0049】
他に定義しない限り、本発明と関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者により一般に理解される意味を有するべきである。さらに、文脈により他に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。一般に、本明細書に記述される、細胞および組織の培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、およびハイブリダイゼーションに関連して利用される名称およびこれらの技術は、周知でありかつ当技術分野で一般に使用される。標準的な技法が、組換えDNA、オリグヌクレオチド合成、組織の培養および変換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション)に関して使用される。酵素反応および生成技法は、製造業者の仕様に従って行われ、または当技術分野で一般に実現されるように、または本明細書で述べるように行う。前述の技法および手順は、一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従い実施され、また本明細書全体を通して引用されかつ論じられる様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように実施される。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照されたい。本明細書で記述される分析化学、合成有機化学、医薬および製薬化学に関連して使用される名称およびその実験室での手順および技法は、周知でありかつ当技術分野で一般に使用される。標準的な技法が、化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤、および送達、患者の治療に関して使用される。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「および」、および「the」は、文脈において他に特に指示しない限り、複数の対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば「抗プロペルジン抗体」と言うときは、そのような抗体の複数が含まれ、「疾患」と言うときは、1種または複数の疾患、および当業者に知られているその均等物などが含まれる。
【0051】
本明細書で論じられる文献は、本出願の出願日前の、それらの単なる開示を目的として提供される。先行発明によってそのような文献が先行するように、本明細書に権利が与えられないことを認めるものと解釈すべきものは、本明細書には何もない。さらに、与えられた文献の日付は、実際の公開日とは異なる可能性があり、これは別に確認する必要があると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は、完全ヒト抗プロペルジン抗体と、この抗体を含む組成物とを提供する。対象抗体は、XenoMouse(登録商標)、すなわちヒト抗体のアミノ酸配列、例えばヒトフレームワーク(FR)およびヒト定常領域アミノ酸配列を有する抗体を生成する、遺伝子組換えがなされたマウスの抗体生成細胞によって生成される。
【0053】
XenoMouse(登録商標)遺伝子組換えマウス株は、遺伝子操作がなされたマウスであり、マウスIgHおよびIgk座が、酵母人工YAC導入遺伝子上のこれらのIg対応物によって機能的に置換されているものである。これらのヒトIg導入遺伝子は、ヒト可変レパートリーの大部分を運ぶことができ、IgMからIgGアイソタイプへのクラススイッチを受けることができる。XenoMouseの免疫系は、投与されたヒト抗原を異物として認識し、強力な体液応答をもたらす。十分確立されたハイブリドーマ技法と併せたXenoMouse(登録商標)の使用は、ヒト抗原に対してサブナノモルの親和性を有する完全ヒトIgG mAbをもたらす(「Transgenic non-human animals capable of producing heterologous antibodies」という名称の米国特許第5770429号; 「Generation of Xenogenic antibories」という名称の米国特許第6162963号; 「Human antibodies derived from immunized xenomice」という名称の米国特許第6150584号; 「Generation of xenogenic antibodies」という名称の米国特許第6114598号; および「Human antibodies derived from immunized xenomice」という名称の米国特許第6075181号参照; 概略に関しては、Green, Antibody engineering via genetic engineering of the mouse: XenoMouse(登録商標) strains are a vehicle for the facile generation of therapeutic human monoclonal antibodies, J.Immunol.Methods 231: 11〜23, 1999; Wells, Eek, a XenoMouse(登録商標): Abgenix,Inc., Chem Biol 2000 Aug; 7(8): R185〜6; およびDavis他, Transgenic mice as a source of fully human antibodies for the treatment of cancer Cancer Metastasis Rev 1999; 18(4):421〜5参照)。
【0054】
対象抗体は、様々な治療方法に有用である。対象抗プロペルジン抗体は、副補体経路の構成要素によって、かつ/または副補体経路の活性化後に発生した因子によって、直接または間接的に媒介された疾患を治療するための治療方法に有用である。
【0055】
対象抗プロペルジン抗体は、げっ歯類抗体に関連した問題、すなわち蕁麻疹、呼吸困難、低血圧、およびアナフィラキシーなどを含めた超過敏反応などの、ヒトにおける副作用を回避する。
【0056】
(抗プロペルジン抗体)
本発明は、完全ヒト抗プロペルジン抗体と、この抗体を含む組成物とを提供する。対象抗体は、XenoMouse(登録商標)、すなわちヒト抗体のアミノ酸配列、例えばヒトフレームワーク(FR)およびヒト定常領域アミノ酸配列を有する抗体を生成する、遺伝子組換えがなされたマウスの抗体生成細胞によって生成される。
【0057】
(プロペルジン)
プロペルジンポリペプチドは、当技術分野で知られている。例えば、ヒトおよびマウスプロペルジンのアミノ酸配列は、下記のアクセション番号の下、GenBankデータベースに見出される: ヒトプロペルジンに関しては、例えばGenBankアクセション番号AAA36489、NP_002612、AAH15756、AAP43692、S29126、CAA40914を参照されたい; マウスプロペルジンに関しては、例えばGenBankアクセション番号P11680およびS05478を参照されたい。ヒトプロペルジンは、シグナルペプチド(アミノ酸1〜28)と、それぞれが下記のように約60アミノ酸である非同一トロンボスポンジン1型リピート(TSR)を6個含む、すなわちアミノ酸80〜134(TSR1)、アミノ酸139〜191(TSR2)、アミノ酸196〜255(TSR3)、アミノ酸260〜313(TSR4)、アミノ酸318〜377(TSR5)、およびアミノ酸382〜462(TSR6)を含む、469アミノ酸タンパク質である。プロペルジンは、棒状モノマーを環状ダイマー、トリマー、およびテトラマーにオリゴマー化することによって形成される。
【0058】
(抗体活性)
対象抗プロペルジン抗体は、下記の活性の1つまたは複数を示し、すなわち(1)プロペルジンとC3bとの結合を阻害し、(2)プロペルジンモノマーのオリゴマー化を阻害し、(3)副補体経路の構成要素のレベルおよび/または生成、あるいは副補体経路の構成要素の動作により生成された因子を減少させ、(4)膜侵襲複合体(MAC)の形成を減少させ、(5)アナフィラキシー、例えばC3aおよび/またはC5aの形成を減少させ、(6)C3cの形成を減少させる活性の1つまたは複数を示す。
【0059】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、プロペルジンのTSR内のエピトープに結合し、例えば対象抗体は、TSR1、TSR2、TSR3、TSR4、TSR5、またはTSR6内のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、対象抗体は、プロペルジンポリペプチドの2つ以上のTSRに結合し、例えばエピトープは、TSR同士またはTSRの間で共有され、共有されたエピトープは、必ずしも必要ではないがアミノ酸配列を同一にすることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、プロペルジンとC3bとの結合を阻害する。これらの実施形態では、対象抗体が、プロペルジンとCb3との結合を、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上阻害する。
【0061】
対象抗体がプロペルジン/C3b結合を阻害するか否かは、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)アッセイ、生物発光共鳴エネルギー伝達(BRET)アッセイ、蛍光消光アッセイ; 蛍光アニソトロピーアッセイ; 免疫学的アッセイ; および検出可能に標識されたタンパク質と固定化されたタンパク質との結合に関わるアッセイが含まれるがこれらに限定することのない、タンパク質-タンパク質結合を検出するいくつかの周知のアッセイのいずれかを使用することによって決定することができる。免疫学的アッセイ、および検出可能に標識されたタンパク質と固定化されたタンパク質との結合に関わるアッセイは、様々な方法で準備することができる。例えば、C3bを固体支持体上に固定化し、試験抗体の存在下、プロペルジンとC3bとの結合を検出する。プロペルジンは、実施例1に記述されるように、直接または間接的に検出可能に標識することができる。
【0062】
対象抗体は、副補体経路の1つまたは複数の構成要素、および/または副補体経路の1つまたは複数の構成要素の動作によって生成された1つまたは複数の因子の、哺乳動物宿主でのレベルおよび/または生成を阻害する。例示的な、減少する構成要素および因子の非限定的な例には、MAC(C5b-9)、C3c、およびC3aやC5aなどのアナフィラキシーが含まれる。対象抗体は、副補体経路の1つまたは複数の構成要素、および/または副補体経路の1つまたは複数の構成要素の動作によって生成された1つまたは複数の因子のレベルを、対象抗体が存在しない場合の構成要素または因子のレベルに比べて少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させる。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、哺乳動物宿主におけるMACのレベルおよび/または生成を低下させる。これらの実施形態では、対象抗体は、抗体で処理しない哺乳動物宿主中のMACのレベルと比較して、MACの形成を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させる。対象抗体がMACの形成を低下させるか否かは、任意の知られているアッセイを使用して、例えば実施例1に記述されるような生体外アッセイを使用して、容易に決定することができる。例えばヒト血清を、試験抗体の存在下でまたは存在しない状態で、固定化したリポ多糖(LPS)に接触させ、それによって補体を活性化し、その結果、C5b-9と固定化LPSとが共有結合する。LPSに結合したC5b-9は、C5b-9に特異的な抗体を使用して検出する。
【0064】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、哺乳動物宿主におけるC3aやC5aなどのアナフィラトキシンのレベルおよび/または生成を低下させる。これらの実施形態では、対象抗体は、抗体で処理していない哺乳動物宿主中のアナフィラトキシンのレベルと比較して、アナフィラトキシンの形成を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させる。アナフィラトキシンのレベルが低下するか否かは、実施例に記述される方法を含めた任意の知られているアッセイを使用して、容易に決定することができる。
【0065】
(検出可能な標識)
いくつかの実施形態では、対象抗体を検出可能に標識する。検出可能な標識には、蛍光タンパク質; 酵素(例えばβ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼなど); 放射性同位体、例えば32P、35S、3H;蛍光発光体、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、および蛍光タンパク質; 化学発光体; 特異的結合分子; 粒子、例えば磁気粒子などが含まれるが、これらに限定するものではない。特異的結合分子には、ビオチンとストレプトアビジンや、ジゴキシンと抗ジゴキシンなどの対が含まれる。適切な蛍光タンパク質には、Matz他((1999) Nature Biotechnology 17:969〜973)記載されるもの、任意の種またはその誘導体からの緑色蛍光タンパク質; 例えば、Renilla reniformisやRenilla mulleri、またはPtilosarcus guernyiなどの別の種からのGFP、例えば、WO99/49019およびPeelle他(2001) J.Protein Chem. 20:507〜519に記載されているもの; 「ヒト化」組換えGFP(hrGFP) (Stratagene): Aequoria victoriaまたはその蛍光変異体からのGFP、例えば米国特許第6066476号; 第6020192号; 第5985577号; 第5976796号; 第5968750号; 第5968738号; 第5958713号; 第5919445号; 第5874304号に記載されているものが含まれる。
【0066】
(抗体構造)
基本的な抗体構造単位は、テトラマーを含むことがわかっている。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、それぞれの対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に関わる約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端部分は、エフェクター機能に主に関わっている定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgA、およびIgEと定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域とは、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって接合され、この重鎖は、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含んでいる。一般に、Fundamental Immunology Ch.7 (Paul,W.編, 第2版 Raven Press, N.Y. (1989))(その全体を、全ての目的で参照に組み込む)を参照されたい。各軽/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0067】
したがって、無傷の抗体は、2つの結合部位を有する。2元官能性または2重特異性抗体の場合を除き、2つの結合部位は同じである。
【0068】
鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって接合された、相対保存フレームワーク(FR)の同じ一般構造を示す。それぞれの対の2つの鎖からのCDRをフレームワーク領域により位置合わせし、特異的エピトープに結合させる。N末端からC末端に至るまで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割当ては、Kabatの定義 Sequence of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987および1991))またはChothia & Lesk J.Mol. Biol. 196: 901〜917 (1987); Chothia他 Nature 342: 878〜883 (1989)に従う。
【0069】
いくつかの実施形態では、対象抗体は、図17A〜Cに示すように、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んだ軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含んだ軽鎖を含む。当業者なら、軽鎖可変領域のどのアミノ酸を変化させることができるか容易に決定することができる。例えば、同じ特異性を有する抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列を比較することによって、当業者なら、特異性を変化させない状態でどのアミノ酸を変化させることができるか決定することができる。例えば、例示的な抗プロペルジン抗体軽鎖のCDRアミノ酸配列の比較に関しては、図12を参照されたい。さらに、特異性が変化するか否かは、抗原結合アッセイを使用して容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含んだ軽鎖を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、対象抗体は、図17A〜Cに示すように、配列番号04、08、12、16、および20のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んだ重鎖を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号04、08、12、16、または20のいずれか1つに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含んだ重鎖を含む。当業者なら、重鎖可変領域のどのアミノ酸を変化させることができるか容易に決定することができる。例えば、同じ特異性を有する抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列を比較することによって、当業者なら、特異性を変化させない状態でどのアミノ酸を変化させることができるか決定することができる。例えば、例示的な抗プロペルジン抗体重鎖のCDRアミノ酸配列の比較に関しては、図14を参照されたい。さらに、特異性が変化するか否かは、抗原結合アッセイを使用して容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号04、08、12、16、および20のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含んだ重鎖を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号04、08、12、16、および20のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号04で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号06で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号08で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号10で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号12で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号14で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号16で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。
【0072】
2重特異性または2元官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。2重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の結合を含めた様々な方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann Clin. Exp. Immunol. 79: 315〜321 (1990)、Kostelny他 J.Immunol. 148: 1547〜1553 (1992)を参照されたい。2重特異性抗体の生成は、従来の抗体生成に比べて比較的労働集約的なプロセスになる可能性があり、2重特異性抗体の収量および純度は大幅に低下する。2重特異性抗体は、単一結合部位を有する断片(例えばFab、Fab'、およびFv)の形で存在しない。
【0073】
(ヒト抗体および抗体のヒト化)
ヒト抗体は、マウスまたはラット可変および/または定常領域を保有する抗体に関連した問題のいくつかを回避する。そのようなマウスまたはラット由来のタンパク質の存在は、抗体の迅速なクリアランスをもたらすことができ、または患者による抗体に対する免疫応答の発生をもたらすことができる。マウスまたはラット由来抗体の利用を避けるため、げっ歯類が完全ヒト抗体を生成することができるようにげっ歯類へのヒト抗体機能の導入を通して、ヒト化抗体を発生させることができまたは完全ヒト抗体を生成できるとされている。
【0074】
(ヒト抗体)
YACでメガベースサイズのヒト遺伝子座をクローニングし再構成する能力と、これらをマウス生殖系列に導入する能力によって、非常に大きくまたは大まかにマッピングした遺伝子座の機能性構成要素を解明し、ならびにヒト疾患の有用なモデルを生成するための、強力な手法が提供される。さらに、マウス遺伝子座をそのヒト均等物で置換するために、そのような技術を利用することによって、発生中のヒト遺伝子生成物の発現および調節、その他の系との連絡、疾患の誘導および進行への関与に対する独自の洞察を提供することができる。
【0075】
そのような戦略の重要で現実的な適用例は、マウス体液免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されているマウスに、ヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を導入すると、抗体のプログラム化された発現およびアセンブリの基礎をなすメカニズム、ならびにそれらのB細胞における役割を研究する機会が与えられる。さらに、そのような戦略は、完全ヒトモノクローナル抗体(Mab)を生成するための理想的な源を提供することができ、すなわちヒト疾患における抗体療法への希望を適える重要な段階をもたらすことができる。完全ヒト抗体は、マウスまたはマウス誘導体化Mabに固有の免疫原性およびアレルギー性応答を最小限に抑え、したがって投与された抗体の効力および安全性が増すことが期待される。完全ヒト抗体の使用は、繰り返し抗体を投与する必要がある、炎症や自己免疫、および癌などの慢性および再発性のヒト疾患の治療において、十分な利点をもたらすと予測することができる。
【0076】
この目的に向かう1つの手法は、マウス抗体の生成が不十分なマウス株を、マウス抗体が存在しない状態でそのようなマウスがヒト抗体の大きいレパートリーを生成し得ることを期待して、ヒトIg遺伝子座の大きい断片を用いて設計製作することであった。大きいヒトIg断片は、広範囲にわたる様々な遺伝子の多様性、ならびに抗体の生成および発現の適正な調節を、維持することができる。抗体の多様性および選択に関するマウスのメカニズムとヒトタンパク質に対する免疫寛容の不足を活用することによって、これらのマウス株で再生されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含めた問題の任意の抗原に対して高親和性抗体をもたらすべきである。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMabを容易に生成し選択することができる。
【0077】
この一般的戦略は、1994年に公表された本発明者等の第1世代XenoMouse(商標)に関係して実証された。Green他 Nature Genetics 7: 13〜21 (1994)を参照されたい。XenoMouse(商標)株は、コア可変および定常領域配列をそれぞれ含有するヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖系列構造断片を含有する、酵母人工染色体(YAC)を用いて設計製作した(同上)。ヒトIg含有YACは、抗体の再配列および発現の両方に関してマウス系に適合することが証明され、不活性化マウスIg遺伝子の代わりをすることが可能であった。これは、B細胞を誘導することができ、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを生成することができ、抗原特異的ヒトMabを発生させることができることが実証された。これらの結果は、より多くの数のV遺伝子、追加の調節要素、およびヒトIg定常領域を含有するヒトIg遺伝子座のより大きい部分の導入によって、感染および免疫化に対するヒト体液応答の特徴である完全レパートリーを実質的に反復できることも示唆した。Green他の研究は、最近、XenoMouse(商標)マウスを生成するために、それぞれヒト重鎖遺伝子およびκ軽鎖遺伝子のメガベースサイズの生殖系列YAC構造の導入を通して、ヒト抗体レパートリーの約80%よりも多い導入にまで広げられた。参照によりその開示が本明細書に組み込まれるMendez他 Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)、および1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759620号を参照されたい。
【0078】
そのような手法は、米国特許第6162963号、第6150584号、第6114598号、第6075181号、および第5939598号と、日本国特許第3068180B2号、第3068506B2号、および第3068707B2号にさらに論じられ描写されている。Mendez他 Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)、GreenおよびJakobovits J.Exp.Med. 188:483〜495 (1998)も参照されたい。1996年6月12日に付与された欧州特許第EP463151B1号、1994年2月3日に公開された国際特許出願第WO94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願第WO96/34096号、1998年6月11日に公開されたWO98/24893、2000年12月21日に出願されたWO00/76310も参照されたい。上記引用された特許、出願、および参考文献のそれぞれの開示は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0079】
代替の手法では、GenPharm International,Inc.を含めたその他のものが、「ミニ遺伝子座」手法を利用している。ミニ遺伝子座手法では、外因性Ig遺伝子座を、Ig遺伝子座からの種(個々の遺伝子)の包含によって模倣する。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、μ定常領域、および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物への挿入のための構成体に形成される。この手法は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれているSurani他の米国特許第5545807号と、それぞれLonbergおよびKayの米国特許第5545806号、第5625825号、第5625126号、第5633425号、第5661016号、第5770429号、第5789650号、第5814318号、第5877397号、第5874299号、および第6255458号と、KrimpenfortおよびBernsの米国特許第5591669号および第6023010号と、Berns他の米国特許第5612205号、第5721367号、および第5789215号と、ChoiおよびDunnの米国特許第5643763号と、GenPharm Internationalの1990年8月29日出願の米国特許出願第07/574748号、1990年8月31日出願の第07/575962号、1991年12月17日出願の第07/810279号、1992年3月18日出願の第07/853408号、1992年6月23日出願の第07/904068号、1992年12月16日出願の第07/990860号、1993年4月26日出願の第08/053131号、1993年7月22日出願の第08/096762号、1993年11月18日出願の第08/155301号、1993年12月3日出願の第08/161739号、1993年12月10日出願の第08/165699号、1994年3月9日出願の第08/209741号とに記載されている。また、その全体が参照により本明細書に組み込まれている欧州特許第0546073B1号、国際特許出願第WO92/03918号、第WO92/22645号、第WO92/22647号、第WO92/22670号、第WO93/12227号、第WO94/00569号、第WO94/25585号、第WO96/14436号、第WO97/13852号、および第WO98/24884号、および米国特許第5981175号も参照されたい。さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれているTaylor他, 1992、Chen他, 1993、Tuaillon他, 1993、Choi他, 1993、Lonberg他, (1994)、Taylor他, (1994)、およびTuaillon他, (1995)、Fishwild他, (1996)を参照されたい。
【0080】
上記にて列挙されかつ医学研究審議会(「MRC」)に任命されたSurani他の発明者等は、ミニ遺伝子座手法の使用によって、Ig遺伝子座を保有するトランスジェニックマウスを生み出した。上記にて列挙したGenPharm Internationalの研究に関する発明者等、LonbergおよびKayは、本発明の発明者等に倣って、実質的にSurani他の研究の繰り返しになる内因性マウスIg遺伝子座の不活性化を提案した。
【0081】
ミニ遺伝子座の利点は、Ig遺伝子座の一部を含む構成体を生成して動物に導入することができる迅速性にある。しかし、これと相応したミニ遺伝子座手法の著しい欠点とは、理論上、少数のV、D、およびJ遺伝子の包含を通して不十分な多様性が導入されることである。確かに、公表された研究はこの課題を裏付けるように見える。ミニ遺伝子座手法の使用を通してもたらされた動物のB細胞の発生および抗体生成は、阻止されるように見える。したがって、本発明を取り巻く研究は、より広範な多様性を実現するために、また動物の免疫レパートリーを再構成する目的で、一貫してIg遺伝子座の大部分の導入を対象としている。
【0082】
Kirinは、微小核体融合、大きい染色体片、または染色体全体を通して導入されたマウスからのヒト抗体の発生も実証している。参照によりその開示が本明細書に組み込まれている欧州特許出願第773288号および第843961号を参照されたい。
【0083】
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答は、キメラまたはその他の手法によりヒト化された抗体を調製する産業をリードしてきた。キメラ抗体はヒト定常領域およびマウス可変領域を有するが、あるヒト抗キメラ抗体(HACA)応答は、特に抗体の慢性的なまたは多数回用量分の利用で観察されると予測される。したがって、HAMAまたはHACA応答の重要性および/または効果を低下させるために、プロペルジンに対する完全ヒト抗体を提供することが望ましいと考えられる。
【0084】
(ヒト化およびディスプレイ技法)
ヒト抗体生成に関して上記にて論じたように、免疫原性が低下した抗体を生成する利点がある。ある程度まで、これは、適切なライブラリーを使用するヒト化の技法およびディスプレイ技法と関連して実現することができる。マウス抗体、またはその他の種からの抗体は、当技術分野で周知の技法を使用して、ヒト化または霊長類化できることが理解されよう。例えば、WinterおよびHarris, Immunol Today 14: 43〜46 (1993)と、Wright他, Crit, Reviews in Immunol. 12125〜168 (1992)を参照されたい。問題にされる抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/またはフレームワークドメインが対応するヒト配列に代わるように、組換えDNA技法によって設計製作することができる(WO92/02190、および米国特許第5530101号、第5585089号、第5693761号、第5693792号、第5714350号、および第5777085号参照)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子を構成するためのIg cDNAの使用も、当技術分野で知られている(Liu他, P.N.A.S. 84: 3439 (1987)およびJ.Immunol. 139: 3521 (1987))。mRNAは、ハイブリドーマ、または抗体を生成するその他の細胞から単離され、cDNAを生成するのに使用される。問題にされるcDNAは、特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することができる(米国特許第4683195号および第4683202号)。あるいは、ライブラリーを作製しスクリーニングして、問題にされる配列を単離する。次いで抗体の可変領域をコードするDNA配列を、ヒト定常領域配列に融合する。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabat他(1991) Sequence of Proteins of Immunological Interest, N.I.H.公報第91-3242号に見出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、既知のクローンから容易に入手可能である。アイソタイプの選択は、補体結合などの所望のエフェクター機能、または抗体依存性細胞の細胞毒性の活性によって導かれることになる。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかを使用することができる。次いでキメラ性のヒト化抗体を、従来の方法によって発現させる。
【0085】
Fv、F(ab')2、およびFabなどの抗体断片は、例えばプロテアーゼまたは化学的切断により、無傷のタンパク質を切断することによって調製することができる。あるいは、短縮された遺伝子を設計する。例えば、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードし、その後に翻訳終止コドンが続くDNA配列を含むことができ、それによって、短縮された分子が得られる。
【0086】
HおよびLJ領域のコンセンサス配列は、後で行われるV領域セグメントとヒトC領域セグメントの結合を目的として、J領域に有用な制限部位を導入するために、プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドを設計するのに使用することができる。C領域cDNAは、ヒト配列における類似位置に制限部位を配置するために、部位指向変異誘発によって修飾することができる。
【0087】
発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、YAC、およびEBV由来エピソームなどを含む。都合の良いベクターは、機能的に競合するヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものであり、適切な制限部位が、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入し発現させることができるように設計製作されている。そのようなベクターでは、スプライシングは通常、挿入されたJ領域のスプライスドナー部位と、ヒトC領域の先にあるスプライスアクセプター部位との間で生じ、またヒトCHエキソン内に生ずるスプライス領域でも生ずる。ポリデニル化および転写終結は、コード領域の下流にある天然の染色体部位で生ずる。得られたキメラ抗体は、レトロウイルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayama他, Mol.Cell.Bio. 3:280 (1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman他, P.N.A.S. 79:6777 (1982))、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grossched他, Cell 41: 885 (1985))を含めた任意の強力なプロモーターに接合することができる。また、理解されるように、天然のIgプロモーターなどを使用してもよい。
【0088】
さらに、ヒト抗体またはその他の種からの抗体は、当技術分野で周知の技法を使用したファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、およびその他の技法を含めるがこれらに限定することのないディスプレイ型技術を通して生成することができ、得られた分子に対し、親和性成熟などの追加の成熟を行うことができるが、これはそのような技法が当技術分野で周知だからである。WrightおよびHarris, 前掲、HanesおよびPlucthau, PNAS USA 94:4937〜4942 (1997) (リボソームディスプレイ)、ParmleyおよびSmith, Gene 73: 305〜318 (1988) (ファージディスプレイ)、Scott, TIBS 17: 241〜245 (1992)、Cwirla他, PNAS USA 87: 6378〜6382 (1990)、Russel他 Nucl.Acids Research 21:1081〜1085 (1993)、Hoganboom他, Immunol.Reviews 130: 43〜68 (1992)、ChiswellおよびMcCafferty, TIBTECH 10: 80〜84 (1992)、および米国特許第5733743号。ディスプレイ技術を利用して、ヒトではない抗体を生成する場合、そのような抗体は、上述のようにヒト化することができる。
【0089】
これらの技法を使用して、抗体を、プロペルジン発現細胞、プロペルジンそのもの、プロペルジンエピトープまたはそのペプチドの形、およびそれに対する発現ライブラリー(例えば、米国特許第5703057号参照)に生成することができ、その後、上述の活性化を目的として上述のようにスクリーニングすることができる。
【0090】
(抗体療法に関する追加の基準)
本明細書で論じるように、対象抗プロペルジン抗体の機能は、その作動形態の少なくとも一部にとって重要と思われる。機能とは、一例として、副補体経路の阻害における抗プロペルジン抗体の活性を意味し、例えば、対象抗プロペルジン抗体は、下記の性質の1つまたは複数、すなわち(1)プロペルジンとC3bとの結合を阻害し、(2)プロペルジンモノマーのオリゴマー化を阻害し、(3)副補体経路の構成要素または副補体経路の構成要素の動作により生成された因子の形成を減少させ、(4)膜侵襲複合体(MAC)の形成を減少させ、(5)アナフィラトキシン、例えばC3aおよび/またはC5aの形成を減少させ、(6)C3cの形成を減少させるという性質の、1つまたは複数を示す。
【0091】
対象抗体は、いくつかの実施形態において、IgG1ヒト重鎖定常領域を含むことになり、その他の実施形態では、IgG2ヒト重鎖定常領域を含み、その他の実施形態では、IgG3ヒト重鎖定常領域を含む。生成された抗体は、そのようなアイソタイプを最初に保有する必要がなく、むしろ、生成されたときの抗体は任意のアイソタイプを保有することができ、この抗体を、当技術分野で周知の従来の技法を使用して、その後スイッチングされるアイソタイプにすることができることが理解されよう。そのような技法には、とりわけ直接組換え技法(例えば、米国特許第4816397号参照)、細胞間融合技法(例えば、米国特許第5916771号および第6207418号)の使用が含まれる。
【0092】
細胞間融合技法では、任意の所望のアイソタイプの重鎖を保有する骨髄腫またはその他の細胞系を調製し、軽鎖を保有する別の骨髄腫またはその他の細胞系を調製する。そのような細胞を、その後、融合することができ、無傷の抗体を発現する細胞系を単離することができる。
【0093】
一例として、本明細書で論じる抗プロペルジン抗体は、ヒト抗プロペルジンIgG2抗体である。そのような抗体が、プロペルジンポリペプチドまたはエピトープまたはその断片との所望の結合を保有する場合、容易にアイソタイプスイッチを行って、ヒトIgM、ヒトIgG1、またはヒトIgG3アイソタイプを生成することができ、それでもなお同じ可変領域を保有することができる(抗体の特異性およびその親和性のいくつかを定める)。
【0094】
このように、上記にて論じた所望の「構造的」属性をに適う抗体候補が生成されるので、これらの候補は一般に、アイソタイプスイッチングを通して所望の「機能的」属性の少なくともいくつかを得ることができる。
【0095】
(その他の治療手段の設計および生成)
本発明によれば、また副補体経路の阻害に関して本明細書で生成され特徴付けられた抗体の活性に基づけば、抗体部分を超えたその他の治療モダリティの設計が容易になる。そのようなモダリティには、2重特異性抗体や免疫毒素、および放射能標識治療手段などの高度抗体治療手段、ペプチド治療手段の生成、遺伝子療法、特に細胞内抗体、アンチセンス治療手段、および小分子が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0096】
高度抗体治療手段の生成に関し、補体結合が望ましい属性である場合には、例えば2重特異性、免疫毒素、または放射能標識の使用を通して、細胞致死に関する補体依存性の回避を可能にすることができる。
【0097】
例えば2重特異性抗体に関して、(i)2個の抗体、すなわちその一方が、プロペルジンに対して特異性を有し、他方が、一緒に結合された第2の分子に対して特異性を有する抗体、(ii)プロペルジンに特異的な1つの鎖、および第2の分子に特異的な第2の鎖を有する単一抗体、または(iii)プロペルジンおよびその他の分子に対して特異性を有する単鎖抗体を含む、2重特異性抗体を生成することができる。そのような2重特異性抗体は、例えば周知の技法を使用して生成することができ、(i)および(ii)に関しては、例えばFanger他 Immunol Methods 4: 72〜81 (1994)、WrightおよびHarris, 前掲を、また(iii)に関しては、例えばTraunecker他 Int.J.Cancer (補遺) 7:51〜52 (1992)を参照されたい。それぞれの場合において、第2の特異性は、CD16またはCD64(例えば、Deo他 18: 127 (1997)参照)またはCD89(例えば、Valerius他 Blood 90: 4485〜4492 (1997)参照)を含むがこれらに限定することのない重鎖活性化受容体に対して生成することができる。前述の内容に従って調製された2重特異性抗体は、プロペルジンを発現する細胞、特に本発明の抗プロペルジン抗体が有効である細胞を死滅させる可能性が高いと考えられる。
【0098】
免疫毒素に関しては、抗体を、当技術分野で周知の技法を利用して免疫毒素とし働くように修飾することができる。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252 (1993)を参照されたい。また、米国特許第5194594号も参照されたい。放射能標識抗体の調製に関しては、そのように修飾された抗体も、当技術分野で周知の技法を利用して容易に調製することができる。例えば、Junghans他のCancer Chemotherapy and Biotherapy 655〜686 (第2版, ChafnerおよびLongo編, Lippincott Raven (1996))を参照されたい。また、米国特許第4681581号、第4735210号、第5101827号、第5102990号 (RE 35500)、第5648471号、および第5697902号も参照されたい。免疫毒素および放射能標識分子のそれぞれは、プロペルジンを発現する細胞、特に本発明の抗体が有効である細胞を死滅させる可能性が高いと考えられる。
【0099】
治療用ペプチドの生成に関しては、プロペルジンおよびその抗体、例えば本発明の抗体(小分子に関して以下に論じるように)などに関する構造情報の利用によって、またはペプチドライブラリーのスクリーニングによって、プロペルジンを対象とした治療用ペプチドを生成することができる。ペプチド治療手段の設計およびスクリーニングは、Houghten他 Biotechniques 13: 412〜421 (1992)、Houghten PNAS USA 82: 5131〜5135 (1985)、Pinalla他 Biotechniques 13: 901〜905 (1992)、BlakeおよびLitzi-Davis BioConjugate Chem. 3: 510〜513 (1992)に関連して論じられる。免疫毒素および放射能標識分子も、抗体に関して上記にて論じたようにぺプチド部分に関する類似の手法で調製することができる。
【0100】
プロペルジン分子(またはスプライスバリアントや代替形態などの形)が疾患過程で機能的に活性であると仮定すると、従来の技法によって、遺伝子およびそれに対するアンチセンス治療手段を設計することも可能になる。そのようなモダリティは、プロペルジンの機能を調節するのに利用することができる。それに関して、本発明の抗体は、それに関係した機能的アッセイの設計および使用を容易にする。アンチセンス治療手段に関する設計および戦略は、国際特許出願第WO94/29444号に詳細に論じられている。遺伝子療法に関する設計および戦略は、周知である。しかし特に、細胞内抗体に関わる遺伝子治療技法の使用が特に有利であることを、証明することができた。例えば、Chen他 Human Gene Therapy 5:595〜601 (1994)およびMarasco Gene Therapy 4: 11〜15 (1997)を参照されたい。また、遺伝子治療の一般設計および遺伝子治療に関連する考察は、国際特許出願第WO97/38137号で検討されている。
【0101】
小分子治療手段も、本発明により想像することができる。薬物は、本発明に基づいてプロペルジンの活性が調節されるように設計することができる。プロペルジン分子の構造、およびプロペルジン分子と、本発明の抗体、プロペルジンなど本発明による他の分子との相互作用から収集した知識を利用して、追加の治療モダリティを合理的に設計することができる。これに関し、X線結晶構造解析やコンピューダ補助(支援)分子モデリング(CAMM)、定量的または定性的構造活性相関(QSAR)、および類似の技術などの、合理的な薬物設計技法を利用して、薬物送達に努力を集中させることができる。合理的な設計によって、プロペルジンの活性を変化させまたは調節するのに使用することができる分子またはその特異的形態と、相互に作用することができるタンパク質または合成構造の予測が可能になる。そのような構造は、化学的に合成することができ、または生物系で発現させることができる。この手法は、Capsey他 Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs (Stockton Press, NY (1988))で検討されている。さらに、コンビナトリアルアライブラリーを設計し、合成して、高速大量処理スクリーニングの試みなどのスクリーニングプログムで使用することができる。
【0102】
(治療的投与および製剤)
本発明による治療手段本体は、改善された移動、送達、および耐性などを提供するために、適切な担体、賦形剤、および製剤に組み込まれるその他の薬剤と共に投与されることが理解されよう。多数の適切な製剤は、全ての薬剤師に知られている処方集: Remington's Pharmaceutical Sciences (第15版, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975))、特にその中のBlaug, Seymourによる第87章に見出すことができる。これらの製剤には、例えば粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオン性または陰イオン性)含有小胞(Lipofectin (商標)など)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。前述の混合物のいずれかは、製剤中の活性成分が製剤によって不活性化されず、またこの製剤が投与経路に対して生理学的に適合性がありかつ耐性があるという条件で、本発明による治療および療法に適したものにすることができる。薬剤師に周知の製剤、賦形剤、および担体に関する追加の情報については、Baldrick P.「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.」Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2): 210〜8 (2000)、Wang W.「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」Int. J.Pharm. 203(1〜2): 1〜60 (2000)、Charman WN「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.」J Pharm Sci. 89(8): 967〜78 (2000)、Powell他「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol. 52: 238〜311 (1998)およびこの中の引用も参照されたい。
【0103】
(抗体の調製)
本発明による抗体は、挿入されたヒト抗体生成ゲノムのかなりの部分を有するが、内因的マウス抗体の生成が不十分なものになるトランスジェニックマウスを利用することによって、調製することが好ましい。次いでそのようなマウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を生成することが可能であり、マウス免疫グロブリン分子および抗体の生成が不十分である。これを実現するために利用される技術は、特許、出願、および本明細書の背景で開示される参考文献に開示されている。しかし詳細には、マウスおよびそこからの抗体のトランスジェニック生成の好ましい実施形態は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759620号、および1998年6月11日公開の国際特許出願第WO98/24893号、および2000年12月21日公開のWO00/76310に開示されている。また、参照によりその開示が本明細書に組み込まれるNature Genetics 15: 146〜156 (1997)も参照されたい。
【0104】
そのような技術の使用により、本発明者等は、様々な抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体を生成した。本質的に、本発明者等は、問題にされる抗原でマウスのXenoMouse(登録商標)系を免疫化し、抗体を発現するリンパ細胞(B細胞など)を回収し、そのような回収された細胞と骨髄型細胞系とを融合して不死ハイブリドーマ細胞系を調製し、そのようなハイブリドーマ細胞系をスクリーニングし、問題にされる抗原に特異的な抗体を生成するハイブリドーマ細胞系を特定する。本発明者等は、プロペルジンに特異的な抗体を調製するために、本発明によるこれらの技法を利用した。本明細書において、本発明者等は、プロペルジンに特異的な抗体を生成する複数のハイブリドーマ細胞系の生成について、記述する。さらに本発明者等は、そのような抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列分析も含めた、そのような細胞系によって生成された抗体の特徴付けを行う。
【0105】
本明細書で論じられるハイブリドーマ細胞系は、本明細書に提示される指針から、当業者によって容易に生成される。対象細胞系により生成される抗体のそれぞれは、ヒトκ軽鎖を有する完全ヒトIgG2またはIgG4重鎖のいずれかである。一般に、本発明による抗体は、非常に高い親和性を保有し、固相および溶液相のいずれかにより測定したときに、典型的には約10-9〜約10-11MまでのKdを保有する。
【0106】
理解されるように、本発明による抗体は、ハイブリドーマ細胞系以外の細胞系で発現することができる。特定の抗体をコードする配列は、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換で使用することができる。形質転換は、例えばウイルス(またはウイルスベクター)でポリヌクレオチドを包み、このウイルス(またはベクター)を宿主細胞に形質導入することを含めた、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の知られている方法によるもの、あるいは米国特許第4399216号、第4912040号、第4740461号、および第4959455号(これらの特許を、参照により本明細書に組み込む)に例示されるような、当技術分野で知られているトランスフェクション手順によるものでよい。使用される形質転換手順は、形質転換がなされる宿主に応じて異なる。哺乳動物細胞に異種ポリヌクレオチドを導入するための方法は、当技術分野で周知であり、デキストラン媒介型トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介型トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、および核へのDNAの直接微量注入が含まれる。
【0107】
発現のために宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当技術分野で周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、およびいくるかのその他の細胞系を含むがこれらに限定することのない、Amercan Type Culture Collection (ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が含まれる。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有するのか、またどの細胞系が、構成プロペルジン結合特性を備えた抗体を生成するのか決定することによって選択される。
【0108】
本発明により実証された結果は、プロペルジンに対して現在利用可能な抗体よりも本発明の抗体をより有効にすることができるある品質を、本発明の抗体が保有することを示している。本発明による抗体は高い親和性を有し、副補体経路の阻害に、したがって副補体経路に関連しかつ/または副補体経路により媒介された障害の治療に有効であるように思われる。
【0109】
(ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞)
本発明はさらに、対象抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドを含めたポリヌクレオチドを提供する。本発明はさらに、対象ポリヌクレオチドを含む、発現ベクターを含めたベクターを提供する。本発明はさらに、対象ポリヌクレオチドまたは対象ベクターを含む、単離宿主細胞を含めた宿主細胞を提供する。多くの実施形態で、対象宿主細胞は対象抗体を生成する。
【0110】
本発明は、対象抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドを含めたポリヌクレオチド(「核酸」)、ならびにそのような核酸を含む組成物を提供する。核酸組成物とは、対象抗体をコードし、適切な条件下で対象抗体として発現することが可能な、オープンリーディングフレームを有するDNAの配列を含む組成物を意味する。
【0111】
対象抗体をコードする核酸は、cDNAまたはゲノムDNAまたはその断片でよい。遺伝子という用語は、対象発明の特定の抗体をコードするオープンリーディングフレーム、およびイントロン、ならびにコード領域を超えて約20kbまでであるが可能な限りいずれかの方向にさらに及ぶ、発現の調節に関与する隣接する5'および3'非コードヌクレオチド配列を意味するものとする。遺伝子は、染色体外維持または宿主ゲノムへの組込みに適切なベクターに導入することができる。
【0112】
本明細書で使用する「cDNA」という用語は、天然成熟mRNA種に見出される配列要素の構成を共有する全ての核酸であって、配列要素がエキソンと3'および5'非コード領域であるものを含むものとする。通常、mRNA種は近接エキソンを有し、存在する場合には介在イントロンが、核RNAスプライシングによって除去され、その結果、対象発明によるタンパク質をコードする連続オープンリーディングフレームが生成される。
【0113】
いくつかの実施形態では、対象抗体軽鎖をコードする対象核酸が、図16A〜Fに示される配列番号01、05、09、13、および17のいずれかに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体軽鎖をコードする対象核酸は、配列番号01、05、09、13、および17のいずれかに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドだけ異なっている。いくつかの実施形態では、対象抗体軽鎖をコードする対象核酸は、配列番号01、05、09、13、および17のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、対象抗体重鎖をコードする対象核酸が、図16A〜Fに示される配列番号03、07、11、15、および19のいずれかに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体重鎖をコードする対象核酸は、配列番号03、07、11、15、および19のいずれかに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドだけ異なっている。いくつかの実施形態では、対象抗体重鎖をコードする対象核酸は、配列番号03、07、11、15、および19のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0115】
例示的な非限定的抗体は、下記の通りである: (1) 配列番号02で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号01で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号04で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号03で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H8_7と指定された抗体; (2) 配列番号06で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号05で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号08で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号07で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H8_14と指定された抗体; (3) 配列番号10で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号09で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号11で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H8_11と指定された抗体;(4) 配列番号14で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号13で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号16で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号15で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H1_6_2と指定された抗体; および(5) 配列番号18で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号17で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号20で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号19で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H1_12_1と指定された抗体。
【0116】
問題にされるゲノム配列は、列挙される配列で定められるように、開始コドンと停止コドンとの間に存在する核酸を含み、これには天然の染色体に通常存在するイントロンの全てが含まれる。この配列はさらに、成熟mRNAに見出される3'および5'非翻訳領域を含むことができる。この配列はさらに、転写領域の5'または3'末端のいずれかに、1kbであるがおそらくはより多くのフランキングゲノムDNAを含んだプロモーターやエンハンサーなどの特異的転写および翻訳調節配列含むことができる。ゲノムDNAは、100kbp以下の断片として単離することができ、フランキング染色体配列を実質的に含まない。3'または5'のいずれかでコード領域の側面に接するゲノムDNA、あるいはイントロン内に時々見られる内部調節配列は、適正な組織および段階に特異的な発現に必要とされる配列を含有する。
【0117】
対象核酸分子は、ベクターの一部として提供してもよく(例えば「構成体」)、その広く様々なものが当技術分野で知られており、本明細書で詳述する必要はない。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、人工染色体(YAC、BACなど)、およびミニ染色体などが含まれるが、これらに限定するものではない。ベクターは、例えばShort Protocols in Molecular Biology (1999) F.Ausubel他編, Wiley & Sonsも含め、当業者に周知の数多くの文献に十分に記載されている。ベクターは、対象核酸の発現をもたらすことができ、対象核酸の伝播をもたらすことができ、またはこれらの両方である。
【0118】
対象遺伝子は単離され、一般には無傷の染色体以外のものとして十分な純度で得られる。通常DNAは、対象遺伝子の配列またはその断片を含まないその他の核酸配列を実質的に含まずに得られることになり、一般には少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%の純度であり、典型的には「組換え体」、すなわち通常は天然に生ずる染色体に結合していない1つまたは複数のヌクレオチドが両側に接するものである。
【0119】
対象核酸組成物は、対象抗体の全てまたは一部の調製に用途を見出している。発現では、発現カセットを用いることができる。発現ベクターは、誘導性または構造性でよい転写および翻訳開始領域を提供することになり、コード領域は、転写開始領域と転写および翻訳終止領域の転写制御下で作動可能に結合されている。これらの領域は、対照ペプチドをコードする遺伝子に由来するものでよく、または外因性供給源から得ることができる。
【0120】
発現ベクターは、一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を行うために、プロモーター配列の近くに位置付けられた都合のよい制限部位を有する。発現に効果のある選択可能なマーカーが存在してよい。発現ベクターは、融合タンパク質の生成に使用することができ、外因性融合ペプチドは、追加の機能を提供し、すなわち増加したタンパ質合成、安定性、定められた抗血清との反応性、酵素マーカー、例えばβ-ガラクトシダーゼなどを提供する。
【0121】
対象抗体は、発現の目的に応じて、従来の方法に従って原核生物または真核生物で発現することができる。タンパク質の大規模な生成では、単細胞生物、例えばE.coliやB.subtilis、S.cerevisiae、昆虫細胞であってバキュロウイルスベクターと組み合わせたもの、または脊椎動物などの高等生物、特に哺乳類の細胞、例えばCOS 7細胞を、発現宿主細胞として使用することができる。いくつかの状況では、真核細胞内で核酸を発現し、コードされたタンパク質が天然の折り畳みおよび翻訳後修飾から利益を得ることが望ましい。
【0122】
本発明は、対象ポリヌクレオチドまたは対象ベクターを含む、単離された宿主細胞を含めた宿主細胞を提供する。多くの実施形態では、対象宿主細胞は、対象発現ベクターで遺伝子組換えした後に抗体を生成することが可能な真核宿主細胞である。多くの実施形態では、対象宿主細胞は、プロペルジンで免疫化されているXenoMouse(登録商標)からの抗体生成細胞と、融合パートナーとしての役割をする細胞、例えば抗体を生成しない骨髄腫融合パートナーとの融合によって生成されるハイブリドーマ細胞である。
【0123】
(治療方法)
本発明は、副補体経路の阻害する方法、副補体経路の活性化後に生成されたポリペプチドのレベルを低下させる方法、膜侵襲複合体(MAC)のレベルを低下させる方法、アナフィラトキシンのレベルを低下させる方法、C3cのレベルを低下させる方法、および副補体経路により媒介される疾患または障害を治療する方法を含む、哺乳動物宿主で実施される治療方法での対象抗プロペルジン抗体の使用を含んだ治療方法を提供する。これらの方法は一般に、有効量の対象抗体を、その必要のある哺乳動物被験体に投与するステップを含む。
【0124】
対象抗体の「有効量」は、副補体経路の活性化後に生成されたポリペプチドの生成および/またはレベルを、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させるのに有効な量である。
【0125】
対象抗体は、医薬品として許容される賦形剤との配合物として、個体に投与する。広く様々な医薬品として許容される賦形剤は、当技術分野で知られており、本明細書で詳細に論じる必要はない。医薬品として許容される賦形剤は、例えばA.Gennaro (2000)「Remington: The science and Practice of Pharmacy,」第20版, Lippencott, Williams, & Willkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C.Ansel他編, 第7版, Lippencott. Williams, & Wilkins; およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H.Kibbe他, 第3版, Amer.Pharmaceutical Assoc.を含めた様々な文献に、十分に記載されている。
【0126】
ビヒクルやアジュバント、担体、または希釈剤などの、医薬品として許容される賦形剤は、一般に向け容易に入手可能である。さらに、pH調節剤や緩衝剤、等張化剤、安定剤、および湿潤剤などの、医薬品として許容される補助物質は、一般に向け容易に入手可能である。
【0127】
対象となる方法では、所望の治療効果をもたらすことが可能な任意の従来の手段を使用して、対象抗体を宿主に投与することができる。したがって抗体は、治療的投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、対象抗体は、適切な医薬品として許容される担体または希釈剤と組み合わせることによって、医薬品組成物に配合することができ、錠剤やカプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、液剤、坐薬、注射液、吸入薬、およびエアロゾルなどの、固体、半固体、液体、または気状形態で製剤に配合することができる。
【0128】
したがって、対象抗体の投与は、経口、頬、直腸、非経口、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、経皮、鼻内、肺、気管内投与などを含めた様々な方法で実現することができる。
【0129】
対象抗体の皮下投与は、標準的な方法および機器、例えば針および注射器、皮下注入口送達システムなどを使用して実現される。筋肉内投与は、標準的な手段、例えば針および注射器、連続送達システムなどによって実現される。
【0130】
いくつかの実施形態では、対象抗体を、連続送達システムにより送達する。「連続送達システム」という用語は、本明細書では「制御送達システム」と同義に使用され、カテーテルおよび注射器などと組み合わせた連続(例えば制御された)送達機器(例えばポンプ)を包含し、その広く様々なシステムが当技術分野で知られている。機械式または電気機械式輸液ポンプも、本発明と共に使用するのに適したものになり得る。そのような機器の例には、例えば米国特許第4692147号、第4360019号、第4487603号、第4360019号、第4725852号、第5820589号、第5643207号、および第6198966号などに記載されるものが含まれる。一般に、薬物送達の本発明の方法は、様々な再充填可能なポンプシステムのいずれかを使用して実現することができる。ポンプは、経時的に一定の制御放出を行う。
【0131】
医薬品剤形では、薬剤を、医薬品として許容されるその塩の形で投与することができ、あるいは単独で使用してもよく、またはその他の医薬品として活性な化合物と適切に結合させて、また同様に組み合わせて使用してもよい。下記の方法および賦形剤は単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0132】
対象抗体は、望みに応じて可溶化剤や等張化剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、および保存剤などの従来の添加剤と共に、植物油またはその他同様の油や合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸またはプロピレングリコールのエステルなどの、水性または非水性溶媒に溶解し、懸濁し、または乳化することによって、注射用製剤に配合することができる。
【0133】
注射または静脈内投与に向けた単位剤形は、滅菌水、正常食塩水、または別の医薬品として許容される担体に溶かした溶液として、阻害剤を組成物中に含むことができる。
【0134】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物被験体に対する単一の投薬量として適切な、物理的に個別の単位を指し、各単位は、医薬品として許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと結合して所望の効果を発揮するのに十分な量に計算された所定量の対象抗体を含有する。本発明の単位剤形に関する仕様は、用いられる特定の化合物および発揮される効果と、宿主内での各化合物に関連した薬力学的作用に応じて異なる。
【0135】
対象抗体は、所望の治療効果が発揮されるような頻度および期間にわたって、個体に投与される。例えば対象抗体は、月に1回、月に2回、月に3回、1週おき(qow)、週に1回(qw)、週に2回(biw)、週に3回(tiw)、週に4回、週に5回、週に6回、1日おき(qod)、毎日(qd)、日に2回(qid)、または日に3回(tid)、あるいは、約1日から約1週間、約2週間から約4週間、約1カ月から約2カ月、約2カ月から約4カ月、約5カ月から約6カ月、またはそれ以上に及ぶ期間にわたって実質的に連続的に、または連続的に投与される。
【0136】
(併用療法)
対象抗体は、いくつかの実施形態では、第2の治療薬との併用療法において有効量で投与されることになる。適切な第2の治療薬には、抗炎症薬、心血管障害の治療に使用される薬剤、およびステロイド系抗炎症薬などが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0137】
適切な抗炎症薬には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)アセタミノフェン、サリチレート、アセチル-サリチル酸(アスピリン、ジフルニサル)、イブプロフェン、モトリン、ナプロシン、ナルフォン、およびトリリセート、インドメタシン、グルカメタシン、アセメタシン、スリンダク、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク、ベノキサプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロジン、エトドラク、ケトロラク、トロメタミン、ケトロラク、およびナブメトンなど、および前述の薬剤の2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。その他の適切な抗炎症薬には、メトトレキセートが含まれる。
【0138】
適切なステロイド系抗炎症薬には、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、およびトリアムシノロンが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0139】
心血管適応症に適した薬剤には、Integrilin(登録商標)(エプチフィバチド); アプロチニン; およびReoPro(登録商標)(アブシキシマブ)などのGP IIb-IIIa阻害剤が含まれる。
【0140】
適切な第2の治療薬には、アルブテロール、硫酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、酢酸ピルブテロール、およびサルメテロールフォルモトロールを含めた気管支拡張薬; ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド、フルチカゾン、ブデソニド、およびトリアムシノロンアセトニドを含めたステロイドを含む、βアドレナリン作動薬が含まれる。呼吸器疾患の治療に関連して使用される抗炎症薬には、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルニソリド、およびフルチカゾンなどのステロイドが含まれる。その他の適切な抗炎症薬には、クロモリンナトリウムなどのクロモグリケートが含まれる。気管支拡張剤と見なされるその他の呼吸器用薬剤には、臭化イプラトロピウムを含めた抗コリン作動薬が含まれる。抗ヒスタミンには、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クレマスチン、ジメンヒドリネート、プリルアミン、トリペレナミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、メクリジン、クロルシクリジン、プロメタジン、ドキシルアミン、ロラタジン、およびテルフェナジンが含まれるが、これらに限定するものではない。特定の抗ヒスタミンには、リノラスト(Astelin)、クララチン(Claritin)、クララチンD(Claritin D)、テルファスト(Allegra)、ザイトレック、およびベコナーゼが含まれる。
【0141】
いくつかの実施形態では、対象抗体を、第2の治療薬と同時に投与する。本明細書で使用する「同時に」という用語は、対象抗体および第2の治療薬を別々に投与すること、および互いに約5秒から約15秒以内、約15秒から約30秒以内、約30秒から約60秒以内、約1分から約5分以内、約5分から約15分以内、約15分から約30分以内、約30分から約60分以内、約1時間から約2時間以内、約2時間から約6時間以内、約6時間から約12時間以内、約12時間から約24時間以内、または約24時間から約48時間以内に投与することを示す。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象抗体を、第2の治療薬と共に全治療過程の間に投与する。その他の実施形態では、対象抗体は、第2の治療薬での治療期間に重なる期間にわたって投与され、例えば抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始する前に開始し、第2の治療薬での治療を終了する前に終了することができ; 抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始した後に開始し、抗体治療が終了した後に終了することができ; 抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始した後に開始し、第2の治療薬での治療を終了する前に終了させることができ; または抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始する前に開始し、第2の治療薬での治療が終了した後に終了することができる。
【0143】
(治療に適切な被験体)
対象となる方法を用いた治療に適した被験体には、下記の障害の1つまたは複数に罹っている個体、すなわち心肺バイパス後炎症、心筋梗塞、脳卒中、急性呼吸困難症候群(ARDS)、敗血症性ショック、移植拒絶、熱傷、多発性硬化症、重症筋無力症、心血管障害、およびリウマチ様関節炎の1つまたは複数に罹っている個体が含まれる。対象方法での治療に適した被験体には、全身性エリテマトーデス、膜性腎炎、類天疱瘡、皮膚筋炎、および抗リン脂質症候群を含むがこれらに限定することのない任意の炎症性障害に罹っている個体も含まれる。治療に適した被験体には、腎透析を受けている被験体も含まれる。
【0144】
(参考文献による組込み)
特許、特許出願、論文、および教科書などを含めた本明細書で引用される全ての参考文献と、そこに引用される参考文献は、それらが既に組み込まれていない程度まで、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、下記の参考文献も、そのような参考文献で引用された参考文献も含めたその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
(均等物)
前述の説明および例は、本発明のある好ましい実施形態について詳述しており、本発明により企図される最良の形態について述べている。しかし、前述の事項を文章でどんなに詳述しても、本発明を多くの方法で実施することができ、本発明は、添付される特許請求の範囲およびその任意の均等物に基づいて解釈すべきことが理解されよう。
【0146】
(実施例)
以下の実施例は、当業者に対して、本発明をどのように作製しまた使用するのかという完全な開示および記述を行うように提示され、本発明者等が自らの発明と見なすものの範囲を限定するものではなく、また以下の実験が全てであることまたはその実験しか行われないことを意図するものでもない。使用される数(例えば量、温度など)に関する正確さを確かなものにするために努力がなされているが、いくらかの実験誤差およびずれを考慮すべきである。他に特に指示しない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。標準的な略称を使用することができ、例えばbp、塩基対; kb、キロ塩基; pl、ピコリットル; s、秒; min、分; およびhr、時などである。
【0147】
(実施例1: 抗プロペルジンモノクローナル抗体の調製および特徴付け)
(概要)
この研究の目的は、高親和性でヒトプロペルジンに結合しかつ補体副経路を阻止する、完全ヒトモノクローナル抗体(MoAb)を特定することであった。これらのMoAbは、それ自体が補体またはFcγ受容体の活性を介して炎症を引き起こさないことが重要であるので、IgG2およびIgG4 XenoMouse株が免疫化の目標とされた。ヒトプロペルジンを免疫原として使用し、いくつかのIgG2およびIgG4 XenoMouse動物に、足蹠または尾静脈の免疫化を行った。IgG2およびIgG4動物の両方からの脾細胞との融合を行い、IgG2ハイブリドーマ上澄みサンプルがヒトプロペルジンに結合するように決定した。これらのサンプルに関し、プロペルジン機能を中和する能力について評価した。結果は、完全ヒト抗プロペルジンMoAbのいくつかがプロペルジン機能を阻止することを明らかにしている。
【0148】
(材料および方法)
(ハイブリドーマの生成)
Xenomouse動物を、全ての注射に関して足蹠経路を介して免疫化した。各注射の全体積は、マウス当たり50μlであり、または足蹠当たり25μlであった。初期注射は、マウス当たりTiterMax Goldと1:1 v/vで混合したパイロジェンフリーのDPBS中に溶かした10μgのヒトプロペルジンと一緒であった。その後、マウス当たりAdju-Phos (リン酸アルミニウムゲル)25μgと混合したパイロジェンフリーのDPBS中に溶かした10ugのヒトプロペルジンで、追加免疫を6回行い、次いで最終的な追加免疫を、マウス当たりアジュバントを含まないパイロジェンフリーDPBS中に溶かした10μgのヒトプロペルジンで行った。これらの動物を、このプロトコルを目的として第0、3、6、10、13、17、20、および24日目に免疫化し; 第29日目に融合を行った。上述の免疫化計画に従って、マウスを安楽死させ、次いで鼠径および腰部リンパ節を回収した。
【0149】
リンパ球を、組織粉砕器を使用したリンパ節の機械的破壊により遊離させ、その後、CD90ネガティブセレクションによるT細胞の枯渇が行われた。融合は、洗浄された豊富なB細胞およびATCCから購入した非分泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞、カタログ番号CRL 1580 (Kearney他, J.Immunol. 123, 1979, 1548〜1550)を、1:1の比で混合することによって行った。細胞混合物を、800gでの遠心分離によって穏やかにペレット化した。上澄みを完全に除去した後、細胞を、2〜4mLのPronase溶液(CalBiochem, カタログ番号53702; リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.5mg/ml)、2分以下で処理した。次いでウシ胎児血清(FBS)3〜5mlを添加して酵素活性を停止させ、懸濁液を、細胞融合溶液、ECFS(0.3Mスクロース、Sigma、カタログ番号S7903、0.1mM酢酸マグネシウム、Sigma、カタログ番号M2545、0.1mM酢酸カルシウム、Sigma、カタログ番号C4705)を使用して40mlの全体積に調節した。上澄みを遠心分離後に除去し、細胞を、40ml ECFS中に再懸濁した。この洗浄ステップを繰り返し、細胞を再びECFS中に再懸濁して濃度2×106細胞/mlにした。細胞融合は、融合発生器(モデルECM2001, Genetronic,Inc., San Diego, CA.)を使用して行った。使用した融合チャンバのサイズは2.0mlであり、下記の機器設定を使用した。
【0150】
アラインメント条件: 電圧: 50v、時間: 50秒
【0151】
膜破壊: 電圧: 3000v、時間: 30マイクロ秒
【0152】
融合後保持時間: 3秒
【0153】
融合後、細胞を、ハイブリドーマ融合培地: DMEM (JRH Biosciences)、15%FBS (Hyclone)、0.5×アザセリンヒポキサチン(HA) (Sigma、カタログ番号A9666)を含有し、L-グルタミン、pen/strep、OPI (オキサロアセテート、ピルベート、ウシインスリン) (全てSigmaから)およびIL-6 (Boehringer Mannheim)が補われたものに再懸濁して、37℃でかつ空気中10%のCO2で培養した。細胞を、平底96ウェル組織培養皿に、ウェル当たり4×104細胞となるように蒔いた。培養物を、ハイブリドーマ融合培地中に2週間維持し、その後、ハイブリドーマ培地: DMEM (JRH Biosciences)、15%FBS (Hyclone)であって、L-グルタミン、pen/strep (ペニシリン/ストレプトマイシン)、OPI (オキサロアセテート、ピルベート、ウシインスリン) (全てSigmaから)およびIL-6 (Boehringer Mannheim)が補われたものに移した。ハイブリドーマは、0.5×HAハイブリドーマ融合培地での生存を目的として選択し、ハイブリドーマを含有するこれらのウェルからの上澄みを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、抗原反応性に関してスクリーニングした。
【0154】
クローニングは、限られた希釈プレーティングを使用して、選択された抗原陽性ウェルに関して行った。プレートは、単一コロニーの成長に関して視覚的に検査し、次いで単一コロニーのウェルから得た上澄みを、上述の抗原特異的ELISAによってスクリーニングした。非常に反応性のあるクローンについて、Luminex機器を使用した多重ELISAによりヒトγおよびκ鎖の純度を検証するためにアッセイを行った。
【0155】
(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))
ELISAフォーマットでは、抗原被覆プレート(ヒトプロペルジン被覆プレート)上での上澄みのインキュベート、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識したマウス抗ヒトIgGを使用したヒト抗ヒトプロペルジン結合抗体の検出を行った。全ての陽性サンプルは、2組のELISAで並行して確認したが、このELISAでは、抗原被覆プレート(ヒトプロペルジン被覆プレート)上での上澄みのインキュベート、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識したマウス抗ヒトγおよびκ鎖を使用したヒト抗ヒトプロペルジン結合抗体の検出を行った。
【0156】
(LPS補体活性-C5b-9アッセイ)
ヒト血清中の補体を、マイクロタイターウェル上に固定化されているリポ多糖(LPS)によって活性化する。これは、C5b-9とLPSとの共有結合をもたらす。簡単に言うと、マイクロタイターウェル(培地結合プレート、Corning Costar)を、50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に溶かした1μg/50μl/ウェルのSalmonella typhosaからのLPS (Sigma Chemical)で、一晩、4℃で被覆した。LPS溶液を吸引した後、ウェルを、PBSに溶かした1%BSAで、室温で2時間遮断した。このインキュベーションの終わりにウェルをPBSで洗浄し、a) Mg++-EGTA-VBS緩衝液(5mMバルビツール酸ジエチル、120mM NaCl、5mM MgCl2、5mM EGTA、pH7.2)中0.4%HAS (ヒト血清アルブミン)、またはb) EDTA-VBS緩衝液(5mMバルビツール酸ジエチル、120mM NaCl、20mM EDTA)中0.4%HASで、8%正常ヒト血清と共にインキュベートした。EDAT-VBS中のサンプルは、背景対照としての役割をした。
【0157】
マイクロタイタープレートを、水浴中で1時間、37℃でインキュベートして、LPS媒介型補体活性化を発生させた。プレートをPBSで洗浄し、堆積したC5b-9を、1%遮断溶液中1:1000希釈のマウス抗ヒトC5b-9モノクローナル抗体(Quidel Corp. San Diego, CA)を添加することによって検出した。室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBSで再び洗浄し、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(Sigma、遮断溶液中1:2000希釈)を添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBSで大規模に濯ぎ、3,3',5,5'テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Kirkegaard & Perry Laboratories)100μlを添加した。TMBの反応を、1Mリン酸100μlを添加することによって停止させ、プレートを、ELISAプレートリーダで、450nmで読み取った。
【0158】
C5b-9形成に対するIgG2サンプルの影響を、固定濃度のヒト血清中に3μg/mlのIgGを添加することによって評価した。C5b-9形成の阻害の程度は、上述の抗体検出システムを使用して決定した。
【0159】
(C3b-プロペルジン結合アッセイ)
ポリスチレンマイクロタイタープレート(96ウェル培地結合プレート、Corning Costar)を、PBS中のヒトC3b(0.5μg/50μl/ウェル; Calbiochem, San Diego, CA)で、一晩4℃で被覆した。C3b溶液を吸引した後、ウェルを、1%BSAを含有するPBSで2時間、室温で遮断した。C3bコーティングのないウェルは、背景対照として働いた。IgG2サンプルがC3b-プロペルジン結合を阻害する能力は、様々なIgG2サンプル(最終濃度3μg/ml)を一定濃度のプロペルジン(1nM)に添加することによって評価した。室温で2時間インキュベートした後、ウェルをPBSで大規模に濯いだ。C3b結合プロペルジンは、遮断溶液中1:1000希釈であるマウス抗ヒトプロペルジンモノクローナル抗体P#2(Quidel, San Diego, CA)を添加し、室温で1時間インキュベートしておくことによって検出した。PBSでプレートを洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(遮断溶液中、1:1000希釈)を添加し、1時間インキュベートさせた。プレートを再びPBSで完全に濯ぎ、TMB基質100μlを添加した。TMBの反応を、1Mリン酸100μlを添加することによって停止させ、プレートを、マイクロプレートリーダで、450nmで読み取った。
【0160】
(LPS補体活性化-C3cアッセイ)
ヒト血清中の補体を、マイクロタイターウェル上に固定化されているリポ多糖(LPS)によって活性化させる。これは、C3cとLPSとの共有結合をもたらす。簡単に言うと、ポリスチレンマイクロタイターウェル(培地結合プレート、Corning Codtar)を、50mM重炭酸緩衝液(pH9.5)に溶かしたSalmonella typhosaからのLPS (1μg/50μl/ウェル、Sigma Chemical)で、一晩4℃で被覆した。LPS溶液を吸引した後、ウェルを、1%BSAを含有するPBSで1時間、室温で遮断し、次いでPBSで洗浄し、氷上に置いた。Mg++-EGTA-GVB緩衝液(13mM MgCl2、13mM EGTA、ゼラチンベローナル緩衝液、pH7.3)またはEDTA-GVB緩衝液(20mM EDTA、ゼラチンベローナル緩衝液中、pH7.3)中、IgG(1μg/ml)および8%正常ヒト血清を含有するサンプルを、4℃で調製し、サンプル(50μl/ウェル)をマイクロタイタープレートに移した。
【0161】
補体を、マイクロタイタープレートを37℃で30分間加熱することによって活性化した。次いでプレートを水浴中で0℃に冷却して、さらなる補体活性化を停止させ、冷PBS-Tween(0.05% Tween 20 (商標)非イオン性界面活性剤、PBS中)で大規模に洗浄した。PBS-ウシ血清アルブミン(BSA)(2mg/ml BSAを含有するPBS)に溶かしたウサギ抗ヒトC3c (DAKO #A0062, 1:10000希釈)を添加し、室温で1時間インキュベートさせた。PBSでプレートを洗浄した後、PBS-BSA中のペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(American Qualex, 1:10000希釈)を添加し、室温で1時間インキュベートさせた。プレートを再びPBSで完全に濯ぎ、TMB基質100μlを添加した。TMBの反応を、1Mリン酸100μlを添加することによって停止させ、プレートを、マイクロプレートリーダで、450nmで読み取った。
【0162】
(結果)
11個のサンプルに関し、1) 補体副経路のリポ多糖(LPS)誘導活性化を阻害し、2) 補体タンパク質C3bとのプロペルジン結合を阻止する能力について分析した。これらのサンプルを、図1、2、および3において1.1、1.2、1.6、1.7、1.11、1.14、1.16、1.20、1.21、1.22、および1.25で示す。モノクローナル抗体#23(MoAb #23)を、陽性対照として含めた。
【0163】
IgG2上澄みサンプルのいくつかは、LPS活性化副経路アッセイにおいて3μg/mlで試験したときに(図1)、補体活性化生成物C5b-9の形成に減少を引き起こした。特に、サンプル1.1、1.6、1.11、1.16、および1.22は、C5b-9形成に≧50%の阻害を引き起こした。サンプル1.11および1.16の活性は、アッセイで陽性対照として含められた強力な遮断マウス抗ヒトプロペルジンIgG1であるMoAb #23で観察された、阻害レベルに近付いた。
【0164】
C3b-プロペルジン結合アッセイでの上澄みサンプルの分析では、LPS活性化アッセイの結果との全体的な一致が明らかにされた。特にサンプル1.6、1.11、および1.22は、C3bとのプロペルジン結合の50%以上の阻害を引き起こした(図2)。興味深いことに、LPS活性化アッセイでは活性であったサンプル1.1および1.16は、C3b-プロペルジン結合アッセイではほとんど活性を示さなかった。このことは、これらサンプルが、C3bとのプロペルジン結合を乱すことなく補体副経路機能を阻止できることを示唆している。低濃度のIgG2を含有するサンプルについても、このアッセイで実現可能な最高濃度で試験をした。表1にまとめたこの分析の結果は、0.25μg/mlが著しい効果を引き起こしたので、サンプル1.12がC3b-プロペルジン結合の有効な阻害剤であったことを示している。試験がなされたのが比較的低い濃度であるとすると、サンプル1.13はかなりの阻止活性を有するとも考えられる。
【0165】
【表1】
【0166】
第2の補体副経路アッセイを利用して、サンプル1.1および1.16が、たとえC3b-プロペルジン結合を阻止しなかったとしても補体活性化を阻害できることを確認した。このアッセイも、補体のLPS活性化に依拠するが、C5b-9の代わりに活性化生成物C3cの形成を測定する。このアッセイは、前の実施例で使用した3μg/mlの代わりにサンプル1μg/mlを用いて実施したことに留意すべきである。図1に示した結果の通り、C3cアッセイで最も活性なサンプルは、1.11および1.16であった(図3)。さらに、サンプル1.6は、副経路活性化を部分的に阻害するようであった。これらのサンプルの中で、標準的な抗プロペルジンMoAb #23と同じように活性の高いサンプルはなかった。しかし、これらのサンプルはクローンの混合物である可能性が高く、各サンプルの上澄み中に複数のIgG2種が存在する可能性がある。サンプル1.16が2つの別々の機能的アッセイで活性であるがC3b-プロペルジン結合アッセイでは不活性であったという観察結果によりこのMoAbが独自のメカニズムによって動作することが確認されたように思われる。
【0167】
上記アッセイで活性を示す前述の系列をクローニングし、補体活性化を阻害するその能力を確かめるためにさらに評価した。より具体的には、系列1.16、1.11、1.22、および1.6をクローニングし、再評価した。1.16、1.22、および1.11系列のクローンは、C3c生成を部分的に阻害するだけであることが決定された。これらの結果に基づき、系列1.16、1.22、および1.11から得られたクローンに関しては、これ以上の研究は行わなかった。しかし、1.6系列のクローンは、C3c生成の強力な阻害剤であることが決定された。1.6系列からの最有力候補クローンを1.6.2.1.3で示し、補体活性化の阻害におけるその効力を決定するためにさらに分析を行った。
【0168】
(実施例2: 抗プロペルジンモノクローナル抗体は、8%ヒト血清においてC3cおよびsC5b-9生成を阻害する)
(材料および方法)
(ヒトC3cおよびsMAC ELISAアッセイ)
Sigma S.typhosa LPS L6386 (25mg/サンプル)を使用した。LPS (3mg)を、炭酸緩衝液1ml中に溶解し、炭酸緩衝液中20μg/mlに希釈した(1:150希釈)。LPS原液は、使用前に新鮮にした。50mM炭酸緩衝液pH9.5中、20μg/ml LPSを50μl/ウェル用いて、ウェルを4℃で一晩被覆した (1μg LPS/ウェル)。
【0169】
炭酸緩衝液は、50mM原液用に50mlの滅菌H2OにNa2CO3 0.265gを溶解することによって作製した。AP緩衝液(13mM EGTA、13mM MgCl2をゼラチンベローナル緩衝液(Sigma-Aldrich、カタログ番号: G6514) pH7.3中に溶かしたもの)を作製した。陰性対照として、ゼラチンベローナル緩衝液に溶かした13mM EDTAを使用した。ヒト血清(QED BioScience,Inc.)は、ヒト血清をAP緩衝液で、またはEDTA-ゼラチンベローナル緩衝液で、16%に希釈することによって調製した。抗体サンプルは、2mg/ml BSA-PBS中180μg/mlの濃度に希釈し、STOCK Aのラベルを付けた。ストックB、C、およびDは、2mg/ml BSA-PBSでSTOCK Aを希釈した連続1:10希釈液を調製することにより作製した。
【0170】
ELISAアッセイは、下記の通り実施した。96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、ウェル当たり50μlの体積中に新しく調製したLPS 1μgで被覆した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。ウェルを200μlのPBSで3回洗浄した。100μlの遮断緩衝液(30ml PBS、300mg BSA、すなわち1% BSA)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを、200μlのPBSを使用して3回洗浄した。プレートを、引き続き氷上に保ち、ウェル当たり50μlのサンプルを添加した(4重に行った)。プレートを、水浴中で、37℃で30分間インキュベートした。プレートを、水浴から、氷-水の混合物が入っている氷バケットに移すことによって、反応を停止させた。上澄みサンプルを、氷上の0.7mlの試験管に収集し、その後、C3aおよびsC5b-9 ELISAアッセイにかけた。サンプルは、-70℃で保存した。
【0171】
ウェルを、氷冷PBS-Tween 20 (PBS中0.05% Tween 20-PBS 500ml中Tween 20が250μl)200μlを使用して3回洗浄した。洗浄は、氷上で行った。ウェルを、室温で200μlのPBSを使用して2回洗浄した。PBS-BSA(2mg/ml)中1:10000希釈のDAKO A0062ウサギ抗ヒトC3c (1次抗体)を、100μl/ウェル添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートした。ウェルを、200μlのPBSで5回洗浄した。PBS-2mg/ml BSA中1:10000希釈のAmerican Qualex (A102PU)ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(2次抗体)を、100μl添加した。抗体2.2μlを含有する溶液を調製した。プレートを、室温で1時間インキュベートした。インキュベーションの後、プレートを200μlのPBSで5回洗浄した。室温まで事前に温めた基質を添加し(100μl/ウェル)、プレートを約5分間(室温で)インキュベートした。反応を、1N H3PO4 100μlで停止させ、OD450を測定した。
【0172】
(結果)
結果を図4および5に示す。図4は、抗プロペルジン抗体を使用した生体外LPSアッセイでの、sMAC生成の用量依存性阻害を実証する。上述のように、アイソタイプPK対照抗体を使用して、sMAC生成の阻害がないことが観察される。完全に無傷の抗プロペルジン(クローン1.6.2.1.3)またはF(ab)'2抗体は、濃度10μg/mlで、sMAC生成のほぼ完全な阻害を示した。図5は、抗プロペルジン抗体を使用した生体外LPSアッセイでの、C3a生成の用量依存性阻害を実証する。上述のように、アイソタイプPK対照抗体を使用して、sMAC生成の阻害がないことが観察される。完全に無傷の抗プロペルジン(クローン1.6.2.1.3)またはF(ab)'2抗体は、濃度10μg/mlで、C3a生成の著しい阻害を示した。
【0173】
(実施例3: 心肺バイパスのチュービングループモデルにおける補体活性化の阻害に対する抗プロペルジンモノクローナル抗体の効果)
(実験設計)
この実験では、チュービングループに、健康なボランティアからの希釈血液1.5mlを満たした。チュービングループを37℃の水浴中で2時間、垂直方向に回転させて、補体活性を引き起こした。チュービングループからの血液サンプルを、補体活性化を決定するためにEDTAが事前に充填されたポリプロピレンチューブに移した。EDTAの添加によって、通常ならサンプル処理中に生ずる可能性のある別の補体活性化が防止される。血液サンプルを遠心分離にかけて、血漿を分離し、分析用に一定量分取した。
【0174】
(材料/試薬)
血液(25ml)を、ブタヘパリン125μlが入っている50mlポリプロピレンチューブに収集した。血液を、plasmalyte-148(Baxter Healthcare Corporation)で1:1に希釈して、最終的なヘパリン濃度を希釈血液1ml当たり2.5単位にした。各チューブに、700μl PBS(未処理)、無傷の抗体、またはF(ab)'2抗体を添加した(それぞれ最終濃度200μg/mlまたは133μg/ml)。陰性対照として、希釈血液1.5mlを、EDTA 48μlが入っているポリプロピレンチューブに添加した(最終濃度20mM)。陰性対照サンプルはチュービングループに添加せず、背景対照とした。
【0175】
ポリスチレンチュービング(16.5インチ)に血液サンプル1.5mlを満たし、1片のシリコーンチュービングでループ状に閉じた。チュービングを37℃の水浴中でインキュベートし、垂直方向に回転させた。37℃で2時間インキュベートした後、0.5M EDTAを事前に充填したポリプロピレンチューブ(4.0ml容量)に血液サンプルを一定分量分取した(最終的なEDTA濃度は20mM)。血液サンプルを4℃で遠心分離にかけて(2500Gで20分間)、血漿を収集した。C3a、sMAC、およびC5aのレベルをELISAにより評価した。
【0176】
(結果)
結果を図6、7、および8に示す。図6は、plasmalyte-148で1:1に希釈された血液を使用した、チュービングループモデルでのsMACレベルの生成を示す。この研究は、sMACレベルが急速に増加し、2時間でピークに達することを実証している。図7は、plasmalyte-148で1:1に希釈された血液を使用した、チュービングループモデルでのC3aレベルの生成を示す。この研究は、C3aレベルが急速に増加し、3時間でピークに達することを実証している。図8は、抗プロペルジン抗体が、用量依存的にチュービングループモデルにおいてC3a生成を効果的に阻害することを実証する。上述の研究では、完全に無傷の(クローン1.6.2.1.3)、F(ab)'2、およびFab抗プロペルジン抗体について評価した。前述の抗体の全ては、血液濃度10μg/mlで、C3a生成のほぼ完全な阻害をもたらした。
【0177】
(実施例4: 体外循環に曝された血液中の補体に対する抗プロペルジンモノクローナル抗体の効果)
(実験設計)
完全ヒト抗プロペルジンモノクローナルF(ab')2抗体断片を生成して、CPBモデルで補体活性を阻害する能力について評価した。より具体的には、以下に示されるこの研究は、小児心肺バイパス(CPB)ユニットの使用を介して体外循環に曝された血液中の補体の活性化に対する、抗プロペルジンF(ab')2抗体の効果が評価されるように設計した。簡単に言うと、小児バイパス回路は、診療治療中のその使用に一致するやり方で組み立てた。一般的なローラポンプ、人工肺、および温度調節器を使用して、2つの回路を新しく収集されたヘパリン処理済みヒト血液と共に同時に実行した。並列回路の一方の血液をF(ab')2抗プロペルジン抗体で処理したのに対し、他方の回路の血液をアイソタイプマッチ抗体で処理した。シミュレートされたCPB手順中の規則的な間隔で、血液サンプルを収集し、それによって補体活性化生成物の測定を行った。
【0178】
(試験方法)
(1) 体外循環回路を、一体化熱交換器モジュールを備えた中空糸小児用膜型人工肺(D 901 Lilliput 1; Dideco, Mirandola, イタリア)、一体化心臓切開フィルタを備えた小児静脈リザーバ(D754 Venomidicard; Dideco)、潅流チュービングセット(Sorin Biomedical,Inc., Irvine, CA)、および多流式ローラポンプを使用して組み立てた。血液に試験抗体および対照抗体を添加する効果を精密に比較するために、各実験は、同じ多流式ローラポンプを使用して並列体外循環回路で両方の血液サンプルを同時に実験にかけるステップからなっていた。
【0179】
(2) 実験の日に、新鮮なヒト全血(それぞれ約225mLを2体積)を、ブタヘパリン(1125単位)が入っているトランスファーパックに引き入れた。参加前に、ボランティアは下記のエントランス基準を満たす必要があった。
【0180】
(試験対象基準)
1. 男
2. 米国麻酔医学会(ASA)指針に基づいて格付けされたクラスI(正常、健康)
3. 年齢18〜65才の間
4. 体重は少なくとも110ポンド
【0181】
(試験除外基準)
1. 過去8週間で提供された血液
2. 血小板凝集を阻害する可能性がある、現在服用中の薬物
3. 引き入れる前の異常な血圧、脈拍数、温度、またはヘマトクリット
【0182】
(3) 抗プロペルジンF(ab')2抗体またはアイソタイプマッチ抗体対照薬剤を、収集の後トランスファーパックに添加した。各回路で使用される血液の正確な量を決定するために、トランスファーパックを計量した。使用されるヘパリンの総量は、血液1mL当たり5単位であるべきである。
【0183】
(4) 体外循環回路に血液を添加する前に、2つの1.5mL血液サンプルをトランスファーパックから取り出し、等体積のplasmalyte-148と混合した。この希釈された血液サンプルを、下記のステップ7で述べるように処理する。このサンプルは、t=0分を表す。
【0184】
(5) CPB回路に対し、32℃で450mLのplasmalyte-148で初回刺激を行い、100%酸素を使用して掃引ガスを1分当たり0.25リットルに維持しながら500mL/分で循環させた。血液を回路に添加した後に、掃引ガスを、酸素(95%)と二酸化炭素(5%)の混合物に変えた。この系に初回刺激を行ったら、プライムポートを介してリザーバに血液200mLを添加した。血液を添加した後、プライム流体(plasmalyte-148)250mLを同時に人工肺出口の遠位方向へと引き入れて、最終的な回路体積を400mLにした。pH、pCO2、pO2、および潅流液温度を、再循環期間全体を通して連続的に記録した。血液をプライム流体と共に循環させることにより、3分間にわたって完全な混合を行った。3分後、循環血液: plasmalyte-148(1:1)の一定分量3mLを回路から回収した(t=3分)(プライム流体で希釈した後の最終ヘパリン濃度は、2.5単位ヘパリン/mL希釈血液であることに留意されたい)。
【0185】
(6) 低体温下での外科手術の処置を模倣するには、下記のプロトコルに従って血液を冷却し再び温める。血液およびplasmalyte-148を混合した後、血液をa) 5分間にわたって27℃に冷却し、b) 60分間にわたるCPB循環により循環させ、c) 30分間にわたって37℃に再び温めた。
【0186】
(7) 2つの血液サンプル1.5mLを、各CPB回路から様々な時間間隔で回収した(3、8、15、30、40、50、60、68、80、90、および98分、ならびに最後のサンプル)。表2に示すタイムテーブルが観察された。
【0187】
【表2】
【0188】
(8) 血液サンプルを収集したらすぐに、2つのサンプルを個別に2000×g、4℃で遠心分離にかけて、血漿を分離した。
【0189】
(9) 得られた血漿サンプルをドライアイス上で凍結し、補体活性化アッセイにおける次の分析のために-80℃で保存した。
【0190】
(結果)
結果を図9および10に示す。
【0191】
図9は、生体外CPBモデルにおける抗プロペルジン抗体の効果を示す。より具体的には、完全に無傷の(クローン1.6.2.1.3)、aF(ab)'2、およびFab抗プロペルジン抗体について、その補体活性化阻害の効力を決定するために、様々な濃度で評価した。これらの結果は、図に示されるような各コホートのそれぞれに関する、いくつかの個体からの平均C3a値を表す。標準偏差を、垂直棒として表す。補体の明らかな活性化は、対照サンプルでのC3aレベルにより測定されるように、上述の研究で明らかに認められる。C3aレベルの著しい阻害は、完全に無傷の抗プロペルジン抗体を使用したとき(投薬量 200μg/ml血液)、ならびに133μg/ml血液でのF(ab)'2のモル当量用量が求められたときに観察された。F(ab)'2抗体が25μg/mlの用量であるときに、同等レベルの阻害が観察されたことに留意することも重要である。最後にこの研究は、抗プロペルジンFab抗体が、上述のモデルでC3a生成を効果的に阻害することも実証している。驚くべきことに、Fab抗体は、3μg/ml血液程度に低い投薬量で効力があることを実証した。
【0192】
図10は、生体外CPBモデルにおける抗プロペルジン抗体の効果を示す。より具体的には、完全に無傷の(クローン1.6.2.1.3)、aF(ab)'2、およびFab抗プロペルジン抗体について、その補体活性化阻害の効力を決定するために、様々な濃度で評価した。これらの結果は、図に示されるような各コホートのそれぞれに関する、いくつかの個体からの平均C3a値を表す。標準偏差を、垂直棒として表す。補体の明らかな活性化は、対照サンプルでのsMACレベルにより測定されるように、上述の研究で明らかに認められる。sMACレベルの著しい阻害は、完全に無傷の抗プロペルジン抗体を使用したとき(投薬量 200μg/ml血液)、ならびに133μg/ml血液でのF(ab)'2のモル当量用量が求められたときに観察された。これらの結果は、C3aレベルの測定で観察された知見と一致している。F(ab)'2抗体が25μg/mlの用量であるときに、同等レベルの阻害が観察されたことに留意することも重要である。最後にこの研究は、抗プロペルジンFab抗体が、上述のモデルでsMAC生成を効果的に阻害することも実証している。驚くべきことに、Fab抗体は、3μg/ml血液程度に低い投薬量で効力があることを実証した。
【0193】
高分解能Biacore分析を、ヒトプロペルジンを使用して抗プロペルジン抗体に関して実施した。親和性測定値を、無傷、Fab、およびF(ab)'2抗プロペルジン抗体に関して記録した。データを下記の表3に示す。
【0194】
【表3】
【0195】
本発明について、その特定の実施形態を参照しながら述べてきたが、当業者なら、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、かつ均等物に置き換えることができることを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセスステップを本発明の目的、精神、および範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。そのような修正例の全ては、本明細書に添付される特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】LPS-活性化C5b-9アッセイでのIgG2抗体の分析を示す図である。
【図2】C3b-プロペルジン結合アッセイでのIgG2抗体の分析を示す図である。
【図3】LPS-活性化C3cアッセイでのIgG2抗体の分析を示す図である。
【図4】抗プロペルジン抗体による膜侵襲複合体生成の阻害を示す図である。
【図5】抗プロペルジン抗体によるC3a生成の阻害を示す図である。
【図6】チュービングループモデルでの膜侵襲複合体の生成を示す図である。
【図7】チュービングループモデルでのC3aの生成を示す図である。
【図8】チュービングループモデルでの抗プロペルジン抗体(無傷な抗体、F(ab')2断片、およびFab断片)によるC3a生成の阻害を示す図である。
【図9】生体外心肺バイパスモデルでの抗プロペルジン抗体(無傷な抗体、F(ab')2断片、およびFab断片)による膜侵襲複合体の阻害を示す図である。
【図10】生体外心肺バイパスモデルでの抗プロペルジン抗体(無傷な抗体、F(ab')2断片、およびFab断片)によるMAC生成の阻害を示す図である。
【図11】補体活性への2つの経路を概略的に示す図である。
【図12】生殖系列(「GL」)アミノ酸配列と比較した、例示的な対象抗体軽鎖可変領域のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびJ領域を示す図である。破線は、所与のGL配列に対してアミノ酸が同一であることを示し; #は、GL配列に導入されたギャップを表す。
【図13】V-J接合(「V配列」;「J配列」)で、付加されたN配列の数;ならびにCDRの位置および長さと、様々な例示的な対象抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列について、ヌクレオチド配列を比較する図である。
【図14】生殖系列(「GL」)アミノ酸配列と比較した、例示的な対象抗体重鎖可変領域のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびJ領域を示す図である。破線は、所与のGL配列に対してアミノ酸が同一であることを示し; #は、GL配列に導入されたギャップを表す。
【図15】V-D-J接合(「V配列」;「D1配列」;および「J配列」)で、付加されたN配列の数;ならびにCDRの位置および長さと、様々な例示的な対象抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列について、ヌクレオチド配列を比較する図である。
【図16A】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16B】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16C】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16D】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16E】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16F】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図17A】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図17B】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図17C】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2004年11月3日に出願した米国特許出願第10/981300号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、抗体、詳細にはプロペルジンに特異的な抗体の分野にある。
【背景技術】
【0003】
補体系は、微生物感染およびその他の急性傷害に対する炎症応答を開始し増幅する、早期活動メカニズムを提供する。補体活性化は、病原に対する防御の価値ある第一線を提供するが、補体の不適切な活性化は、宿主に対して潜在的な害を及ぼす。例えば補体系は、心肺バイパス後の炎症、心筋梗塞、脳卒中、急性呼吸不全症候群(ARDS)、敗血症性ショック、移植拒絶、火傷、多発性硬化症、重症筋無力症、およびリウマチ様関節炎を含めたいくつかの急性および慢性状態の病因への寄与に関係している。補体は、このような状態の病原の単なる原因はないかもしれないが、補体活性は主な要因のように見え、治療介入の部位を表すことに留意することが重要である。この様々な疾患状態における補体媒介型組織損傷の重要性についての広がりつつある認識は、効果的な補体阻害性薬物の必要性を明らかにしている。
【0004】
補体系は、古典経路および副経路と呼ばれる2つの酵素カスケードを通して活性化することができる。これらの経路を、図11に概略的に示す。増えつつある科学的証拠は、副補体経路が、多くの急性および慢性障害の病状を導き出すのに主要な役割を演ずると主張している。
【0005】
古典経路は、外来の病原体に結合した抗体によって引き起こされ、したがって、特異的抗体の生成のために病原体に事前に曝す必要がある。この古典経路に特異的に関与する3種の血漿タンパク質:C1、C2、およびC4がある。これとは対照的に、副経路は、外来またはその他の異常な表面(細菌、酵母、ウイルス感染細胞、または損傷組織)によって自発的に引き起こされ、したがって即座に応答することが可能である。また、副経路に特異的な3種の血漿タンパク質:BおよびD因子とプロペルジンも存在する。古典および副補体経路は共に、活性化カスケードの後期に関与する共通のタンパク質(C3、C5-9)を共有することに留意することが重要である。どちらの補体経路の活性化後に生成された生物活性分子も、アナフィラトキシンC3aおよびC5a、ならびにC5b-9として知られており膜侵襲複合体(MAC)とも呼ばれる末端補体複合体を含む。これらのアナフィラトキシンは、病原体感染の場合には有益であるが不適切に生成された場合にはおそらく有害である、細胞炎症反応を開始する。例えばMACは、細胞膜へのその挿入を通して細胞損傷を引き起こす。C3aおよびC5aのように、MACは病原体の破壊に積極的な役割を演ずることができるが、宿主細胞を攻撃する場合は有害になる可能性がある。
【0006】
最近まで、疾患の病因における補体活性化の理解は、不十分であった。この原因は、一部には、動物疾患モデルでの補体の役割を直接評価するのに使用することができる特異的阻害剤が存在しないことにあった。補体受容体1(sCR1)、すなわち両方の補体経路の阻害剤の可溶形態の開発は、疾患病因における補体活性化が演じる役割に光を当てた。sCR1分子は、2つの補体経路のC3-(C4b2aおよびC3bBb)およびC5-コンバターゼ(C4b2a3bおよび(C3b2Bb))に存在するC3bおよびC4bサブユニットに可逆的に結合することによって、補体活性化を抑制する。sCR1は、炎症、虚血性再潅流、移植拒絶、外傷、および自己免疫疾患の動物モデルで有益であることが実証されている。
【0007】
sCR1は、生体内で補体を阻害するのに効果的であるが、治療薬としては制約がある可能性がある。動物研究からの結果に基づけば、sCR1の有効治療濃度は非常に高くなる。さらに、血流からのsCR1のクリアランスは驚くほど速い。また、sCR1は古典および副補体カスケードを阻止するので、宿主側防御が損なわれることになる。
【0008】
疾患の病態における不適切な補体活性化の重要性に関するさらなる証拠は、抗C5モノクローナル抗体の使用によってもたらされている。抗C5抗体は、関節炎および免疫複合体性腎炎のマウスモデルで有益であることを示している。心肺バイパス(CPB)誘導性炎症の生体外モデルでは、抗ヒトC5モノクローナル抗体の投与によって、通常はそのような手順で生ずる白血球および血漿の活性化を阻害した。
【0009】
抗C5抗体は生体内での効力を実証したが、C5には、治療薬としてある欠点がある。まず、C5は豊富な血漿タンパク質であり(約85μg/ml);したがって、高濃度の抗C5モノクローナル抗体が、C5活性を阻止するのに必要と考えられる。さらにこの手法は、C3a、すなわち別の強力な炎症性媒介物質の形成を阻止しない可能性があることに留意することが重要である。C3aは、単球からの炎症誘発性のサイトカインおよびプロスタグランジンの放出、肥満細胞からのヒスタミン放出、および好酸球の脱顆粒も含めた、潜在的に有害な現象を引き起こすことができるという証拠が蓄積されつつある。
【0010】
利用可能な臨床データは、多くの急性および慢性の損傷状況において、補体活性化が副経路によって主に媒介されることを示唆している。これらの知見は、心肺バイパス後炎症や心筋梗塞、再潅流傷害、脳卒中、リウマチ様関節炎、および熱傷などの様々な損傷状況で、副経路媒介型組織損傷を特異的に阻害するのに有利になり得ることを示す。これは、免疫複合体処理を扱うために、かつ感染に対する宿主側防御を助けるために、古典経路の態様を無傷のままにすると考えられる。
【0011】
副経路の重要な酵素作用ステップは、C3-コンバターゼ(C3bBb)によって媒介され、C3が切断されてC3aおよびC3bが得られる。副経路特異的タンパク質、プロペルジンは、C3およびC5コンバターゼ複合体(それぞれC3bBbおよびC3bBbC3b)の半減期を延ばすその能力によって、副経路の調節の際にある役割を演ずると推測される。
【特許文献1】米国特許出願第10/981300号
【特許文献2】公開米国特許出願第20020015701号
【特許文献3】米国特許第5770429号
【特許文献4】米国特許第6162963号
【特許文献5】米国特許第6150584号
【特許文献6】米国特許第6114598号
【特許文献7】米国特許第6075181号
【特許文献8】米国特許第5151510号
【特許文献9】WO99/49019
【特許文献10】米国特許第6066476号
【特許文献11】米国特許第6020192号
【特許文献12】米国特許第5985577号
【特許文献13】米国特許第5976796号
【特許文献14】米国特許第5968750号
【特許文献15】米国特許第5968738号
【特許文献16】米国特許第5958713号
【特許文献17】米国特許第5919445号
【特許文献18】米国特許第5874304号
【特許文献19】米国特許第5939598号
【特許文献20】日本国特許第3068180B2号
【特許文献21】日本国特許第3068506B2号
【特許文献22】日本国特許第3068707B2号
【特許文献23】米国特許出願第08/759620号
【特許文献24】欧州特許第EP463151B1号
【特許文献25】国際特許出願第WO94/02602号
【特許文献26】国際特許出願第WO96/34096号
【特許文献27】WO98/24893
【特許文献28】WO00/76310
【特許文献29】米国特許第5545807号
【特許文献30】米国特許第5545806号
【特許文献31】米国特許第5625825号
【特許文献32】米国特許第5625126号
【特許文献33】米国特許第5633425号
【特許文献34】米国特許第5661016号
【特許文献35】米国特許第5789650号
【特許文献36】米国特許第5814318号
【特許文献37】米国特許第5877397号
【特許文献38】米国特許第5874299号
【特許文献39】米国特許第6255458号
【特許文献40】米国特許第5591669号
【特許文献41】米国特許第6023010号
【特許文献42】米国特許第5612205号
【特許文献43】米国特許第5721367号
【特許文献44】米国特許第5789215号
【特許文献45】米国特許第5643763号
【特許文献46】米国特許出願第07/574748号
【特許文献47】米国特許出願第07/575962号
【特許文献48】米国特許出願第07/810279号
【特許文献49】米国特許出願第07/853408号
【特許文献50】米国特許出願第07/904068号
【特許文献51】米国特許出願第07/990860号
【特許文献52】米国特許出願第08/053131号
【特許文献53】米国特許出願第08/096762号
【特許文献54】米国特許出願第08/155301号
【特許文献55】米国特許出願第08/161739号
【特許文献56】米国特許出願第08/165699号
【特許文献57】米国特許出願第08/209741号
【特許文献58】欧州特許第0546073B1号
【特許文献59】国際特許出願第WO92/03918号
【特許文献60】国際特許出願第WO92/22645号
【特許文献61】国際特許出願第WO92/22647号
【特許文献62】国際特許出願第WO92/22670号
【特許文献63】国際特許出願第WO93/12227号
【特許文献64】国際特許出願第WO94/00569号
【特許文献65】国際特許出願第WO94/25585号
【特許文献66】国際特許出願第WO96/14436号
【特許文献67】国際特許出願第WO97/13852号
【特許文献68】国際特許出願第WO98/24884号
【特許文献69】米国特許第5981175号
【特許文献70】欧州特許出願第773288号
【特許文献71】欧州特許出願第843961号
【特許文献72】WO92/02190
【特許文献73】米国特許第5530101号
【特許文献74】米国特許第5585089号
【特許文献75】米国特許第5693761号
【特許文献76】米国特許第5693792号
【特許文献77】米国特許第5714350号
【特許文献78】米国特許第5777085号
【特許文献79】米国特許第4683195号
【特許文献80】米国特許第4683202号
【特許文献81】米国特許第5733743号
【特許文献82】米国特許第5703057号
【特許文献83】米国特許第4816397号
【特許文献84】米国特許第5916771号
【特許文献85】米国特許第6207418号
【特許文献86】米国特許第5194594号
【特許文献87】米国特許第4681581号
【特許文献88】米国特許第4735210号
【特許文献89】米国特許第5101827号
【特許文献90】米国特許第5102990号
【特許文献91】米国特許第5648471号
【特許文献92】米国特許第5697902号
【特許文献93】国際特許出願第WO94/29444号
【特許文献94】国際特許出願第WO97/38137号
【特許文献95】米国特許第4399216号
【特許文献96】米国特許第4912040号
【特許文献97】米国特許第4740461号
【特許文献98】米国特許第4959455号
【特許文献99】米国特許第4692147号
【特許文献100】米国特許第4360019号
【特許文献101】米国特許第4487603号
【特許文献102】米国特許第4725852号
【特許文献103】米国特許第5820589号
【特許文献104】米国特許第5643207号
【特許文献105】米国特許第6198966号
【非特許文献1】Gupta-Bansal他(2000) Mol. Immunol. 37:191〜201
【非特許文献2】Green (1999) J. Immunol. Methods 231: 11〜23
【非特許文献3】Wells (2000) Chem Biol 7:R185〜6
【非特許文献4】Davis他(1999) Cancer Metastasis Rev 18(4):421〜5
【非特許文献5】Vuagnat他, (2000) Mol Immunol. 37: 467〜478
【非特許文献6】Perdikoulis他, (2000) Biochem. Biophys. Acta1548:265〜277
【非特許文献7】Laplanche他 Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986)
【非特許文献8】Stec他 J.Am.Chem.Soc. 106:6077 (1984)
【非特許文献9】Stein他 Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988)
【非特許文献10】Zon他 Anti-Cancer Drug Design 6:539 (1991)
【非特許文献11】Zon他 Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, 第87〜108頁 (F.Eckstein編, Oxford University Press, Oxford England (1991))
【非特許文献12】Stec他; UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543 (1990)
【非特許文献13】Dayhoff, M.O., Atlas of Protein Sequence and Structure, 第101〜110頁(第5巻, National Biomedical Research Foundation (1972))およびこの巻の補遺2, 第1〜10頁
【非特許文献14】SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math. 2:482 (1981)
【非特許文献15】NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol. 48:443 (1970)
【非特許文献16】PearsonおよびLipman Proc.Natl.Acad.Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)
【非特許文献17】Immunology-A Synthesis (第2版, E.S.GolubおよびD.R.Gren編, Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))
【非特許文献18】Bowie他 Science 253:164 (1991)
【非特許文献19】Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編, W.H.Freeman and Company, New York (1984))
【非特許文献20】Introduction to Protein Structure (C.BrandenおよびJ.Tooze編, Garland Publishing, New York, N.Y. (1991))
【非特許文献21】Thornton他, Nature 354:105 (1991)
【非特許文献22】Fauchere, J.Adv.Drug Res. 15:29 (1986)
【非特許文献23】VeberおよびFreidinger TINS p.392 (1985)
【非特許文献24】Evans他 J.Med.Chem. 30: 1229 (1987)
【非特許文献25】RizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem. 61:387 (1992)
【非特許文献26】The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker,S.編, McGraw-Hill, San Francisco (1985))
【非特許文献27】Sambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))
【非特許文献28】Green, Antibody engineering via genetic engineering of the mouse: XenoMouse(登録商標) strains are a vehicle for the facile generation of therapeutic human monoclonal antibodies, J.Immunol.Methods 231: 11〜23, 1999
【非特許文献29】Wells, Eek, a XenoMouse(登録商標): Abgenix,Inc., Chem Biol 2000 Aug; 7(8): R185〜6
【非特許文献30】Davis他, Transgenic mice as a source of fully human antibodies for the treatment of cancer Cancer Metastasis Rev 1999; 18(4):421〜5
【非特許文献31】Matz他(1999) Nature Biotechnology 17:969〜973
【非特許文献32】Peelle他(2001) J.Protein Chem. 20:507〜519
【非特許文献33】Fundamental Immunology Ch.7 (Paul,W.編, 第2版 Raven Press, N.Y. (1989))
【非特許文献34】Sequence of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987および1991))
【非特許文献35】Chothia & Lesk J.Mol. Biol. 196: 901〜917 (1987)
【非特許文献36】Chothia他 Nature 342: 878〜883 (1989)
【非特許文献37】Songsivilai & Lachmann Clin. Exp. Immunol. 79: 315〜321
【非特許文献38】Kostelny他 J.Immunol. 148: 1547〜1553 (1992)
【非特許文献39】Green他 Nature Genetics 7: 13〜21 (1994)
【非特許文献40】Mendez他 Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)
【非特許文献41】GreenおよびJakobovits J.Exp.Med. 188:483〜495 (1998)
【非特許文献42】WinterおよびHarris, Immunol Today 14: 43〜46 (1993)
【非特許文献43】Wright他, Crit, Reviews in Immunol. 12125〜168 (1992)
【非特許文献44】Liu他, P.N.A.S. 84: 3439 (1987)
【非特許文献45】J.Immunol. 139: 3521 (1987)
【非特許文献46】Kabat他(1991) Sequence of Proteins of Immunological Interest, N.I.H.公報第91-3242号
【非特許文献47】Okayama他, Mol.Cell.Bio. 3:280 (1983)
【非特許文献48】Gorman他, P.N.A.S. 79:6777 (1982)
【非特許文献49】Grosschedl他, Cell 41: 885 (1985)
【非特許文献50】HanesおよびPlucthau, PNAS USA 94:4937〜4942 (1997)
【非特許文献51】ParmleyおよびSmith, Gene 73: 305〜318 (1988)
【非特許文献52】Scott, TIBS 17: 241〜245 (1992)
【非特許文献53】Cwirla他, PNAS USA 87: 6378〜6382 (1990)
【非特許文献54】Russel他 Nucl.Acids Research 21:1081〜1085 (1993)
【非特許文献55】Hoganboom他, Immunol.Reviews 130: 43〜68 (1992)
【非特許文献56】ChiswellおよびMcCafferty, TIBTECH 10: 80〜84 (1992)
【非特許文献57】Fanger他 Immunol Methods 4: 72〜81 (1994)
【非特許文献58】Traunecker他 Int.J.Cancer (補遺) 7:51〜52 (1992)
【非特許文献59】Deo他 18: 127 (1997)
【非特許文献60】Valerius他 Blood 90: 4485〜4492 (1997)
【非特許文献61】Vitetta Immunol Today 14:252 (1993)
【非特許文献62】Junghans他 Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655〜686 (第2版, ChafnerおよびLongo編, Lippincott Raven (1996))
【非特許文献63】Houghten他 Biotechniques 13: 412〜421 (1992)
【非特許文献64】Houghten PNAS USA 82: 5131〜5135 (1985)
【非特許文献65】Pinalla他 Biotechniques 13: 901〜905 (1992)
【非特許文献66】BlakeおよびLitzi-Davis BioConjugate Chem. 3: 510〜513 (1992)
【非特許文献67】Chen他 Human Gene Therapy 5:595〜601 (1994)
【非特許文献68】Marasco Gene Therapy 4: 11〜15 (1997)
【非特許文献69】Capsey他 Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs (Stockton Press, NY (1988))
【非特許文献70】Remington's Pharmaceutical Sciences (第15版, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975))
【非特許文献71】Baldrick P.「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.」Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2): 210〜8 (2000)
【非特許文献72】Wang W.「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」Int. J.Pharm. 203(1〜2): 1〜60 (2000)
【非特許文献73】Charman WN「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.」J Pharm Sci. 89(8): 967〜78 (2000)
【非特許文献74】Powell他「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol. 52: 238〜311 (1998)
【非特許文献75】Short Protocols in Molecular Biology (1999) F.Ausubel他編, Wiley & Sons
【非特許文献76】A.Gennaro (2000)「Remington: The science and Practice of Pharmacy,」第20版, Lippencott, Williams, & Willkins
【非特許文献77】Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C.Ansel他編, 第7版, Lippencott. Williams, & Wilkins
【非特許文献78】Handbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H.Kibbe他, 第3版, Amer.Pharmaceutical Assoc.
【非特許文献79】Kearney他, J.Immunol. 123, 1979, 1548〜1550
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当技術分野では、少なくとも一部には副補体経路によって媒介される、炎症およびその他の障害を低減させる薬剤が求められている。本発明は、この要求に対処するものである。
【0013】
(文献)
Gupta-Bansal他(2000) Mol. Immunol. 37:191〜201;公開米国特許出願第20020015701号;米国特許第5770429号;米国特許第6162963号;米国特許第6150584号;米国特許第6114598号;米国特許第6075181号;Green (1999) J. Immunol. Methods 231: 11〜23; Wells (2000) Chem Biol 7:R185〜6;およびDavis他(1999) Cancer Metastasis Rev 18(4): 421〜5; Vuagnat他(2000) Mol Immunol. 37: 467〜478; Perdikoulis他(2001) Biochem. Biophys. Acta 1548:265〜277。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、抗原プロペルジンを対象とする抗体と、そのような抗体の使用とに関する。詳細には、本発明によれば、抗原プロペルジンを対象とする完全ヒトモノクローナル抗体が提供される。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列と、重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子を含むポリペプチド、特に、具体的にはFR1からFR4までまたはCDR1からCDR3までフレームワーク(FR)および/または相補性決定領域(CDR)を跨ぐ近接重鎖および軽鎖配列に対応する配列が、提供される。そのような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたはその他の細胞系も提供される。
【0015】
(定義)
本明細書で使用する「単離ポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、または合成由来のポリヌクレオチド、あるいはこれらのいくつかの組合せであって、その由来によって、「単離ポリヌクレオチド」は、(1)「単離ポリヌクレオチド」が自然状態で見出されるポリヌクレオチドの全てまたは一部に結合しておらず、(2)自然状態では結合していないポリヌクレオチドに作動可能に結合しており、または(3)より大きい配列の一部として自然状態では生じないものを意味するものとする。
【0016】
本明細書で言及される「単離タンパク質」という用語は、cDNA、組換えRNA、または合成由来のタンパク質、あるいはこれらの組合せであって、その由来または誘導源によって、「単離タンパク質」は、(1)自然状態で見出されるタンパク質に結合しておらず、(2)同じ供給源からの別のタンパク質を含んでおらず、例えばマウスタンパク質を含んでおらず、(3)異なる種からの細胞によって発現され、または(4)自然状態んで生じないものを意味する。
【0017】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、天然タンパク質、ポリペプチド配列の断片、または類似体を指すための総称として使用する。したがって、天然タンパク質、断片、および類似体は、ポリペプチド属の種である。本発明による好ましいポリペプチドは、図17A〜Cによって表される可変領域アミノ酸配列(例えば、配列番号4、8、12、16、および20)を含むヒト重鎖免疫グロブリン分子、および図17A〜Cによって表される可変領域アミノ酸配列(例えば、配列番号2、6、10、14、および18)を含むヒトκ軽鎖免疫グロブリン分子、ならびに重鎖免疫グロブリン分子とκ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子との組合せによって形成された抗体分子、およびその逆であるもの、ならびにこれらの断片および類似体を含む。
【0018】
対象に利用されるときの、本明細書で使用される「天然に生ずる」という用語は、対象を自然状態で見出すことができることを指す。例えば、自然状態で供給源から単離することができ、かつ実験室またはその他の方法で人間によって意図的に変更されていない、生物体(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は天然に生ずる。
【0019】
本明細書で使用される「作動可能に結合した」という用語は、そのように記述された構成要素の位置が、その意図される手法で機能することが可能な関係にあることを指す。コード配列に「作動可能に結合した」対照配列は、コード配列の発現が対照配列に適合した条件下で実現されるようにライゲートされる。
【0020】
本明細書で使用する「対照配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列、すなわちこれがライゲートされるコード配列の、発現およびプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。そのような対照配列の性質は、宿主生物に応じて異なり;原核生物では、そのような対照配列は一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では、一般にそのような対照配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。「対照配列」という用語は、最低限でも、その存在が発現およびプロセシングに必須である全ての構成要素を含むものであり、その存在が有利である追加の構成要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列を含むこともできる。
【0021】
本明細書で言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが少なくとも10塩基対であるポリマー形態のヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチド、あるいはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態である。この用語は、1本鎖および2本鎖形態のDNAを含む。
【0022】
本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に生じまた非天然に生ずるオリゴヌクレオチド結合によって一緒に結合された、天然に生ずる修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般に200塩基対以下の長さを含むポリヌクレオチドのサブセットである。オリゴヌクレオチドは、その長さが10〜60塩基であることが好ましく、最も好ましくは12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基の長さである。オリゴヌクレオチドは、例えばプローブの場合は通常1本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば遺伝子変異体の構成に使用する場合は2本鎖でよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかにすることができる。
【0023】
本明細書で言及される「天然に生ずるヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾されまたは置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチオエートやホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれている、LaPlanche他 Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986); Stec他 J.Am.Chem.Soc. 106:6077 (1984); Stein他 Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988); Zon他 Anti-Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon他 Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, 第87〜108頁 (F.Eckstein編, Oxford University Press, Oxford England (1991)); Stec他 米国特許第5151510号; UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて検出用の標識を含むことができる。
【0024】
本明細書で言及される「選択的にハイブリダイズする」という用語は、検出可能にかつ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびこれらの断片は、本発明により、非特異的核酸に対する検出可能な結合の目に見える量を最小限にする、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件下で核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件は、当技術分野で知られるように、かつ本明細書で論じられるように、選択的ハイブリダイゼーション状態を実現するのに使用することができる。一般に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および断片と、問題にされる核酸配列との核酸配列の相同性は、少なくとも80%になり、より典型的には、相同性が少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%増加することが好ましい。2つのアミノ酸配列は、それらの間で部分的にまたは完全に同一である場合、相同である。例えば、85%の相同性は、2つの配列が最大限マッチングするように並べたときに、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。ギャップ(マッチングしている2つの配列のいずれかで)は、最大限のマッチングにおいて可能であり、ギャップ長は5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0025】
あるいは、また好ましくは、2つのタンパク質配列(またはこれらから得られる、長さが少なくとも30アミノ酸のポリペプチド配列)は、これらが変異データマトリックスを有するプログラムALIGNを使用して5よりも大きいアライメントスコア(標準偏差単位で)を有し、かつギャップペナルティが6以上である場合、本明細書でこの用語が使用される通り相同である。Dayhoff, M.O., Atlas of Protein Sequence and Structure, 第101〜110頁(第5巻, National Biomedical Research Foundation (1972))およびこの巻の補遺2, 第1〜10頁を参照されたい。2つの配列またはその一部は、ALIGNプログラムを使用して最適に並べたときにこれらのアミノ酸が50%以上同一である場合、相同であることがより好ましい。「対応する」という用語は、本明細書では、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部に対して相同である(すなわち、同一であり、厳密に進化的に関係していない)こと、あるいはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列に同一であることを意味するのに使用する。これとは対照的に、「相補的な」という用語は、本明細書では、相補配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部に相同であることを意味するのに使用する。例として、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に相補的である。
【0026】
下記の用語、すなわち「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的同一性」は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列同士の配列関係を記述するのに使用する。「参照配列」は、配列比較の根拠として使用される定義済み配列であり; 参照配列は、例えば配列表に示される完全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントなど、より大きい配列のサブセットでよく、あるいは、完全cDNAまたは遺伝子配列を含むことができる。一般に、参照配列は、その長さが少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸であり、しばしば少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸の長さであり、しばしば少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸の長さである。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ、(1)2個の分子同士で類似する配列(すなわち、完全ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含み、(2)2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列同士で多岐にわたる配列をさらに含むことができるので、2個(またはそれ以上)の分子同士での配列比較は、典型的な場合、局所領域の配列類似性を特定し比較するために、「比較ウィンドウ」上で2個の分子の配列を比較することによって行われる。
【0027】
本明細書で使用する「比較ウィンドウ」は、少なくとも18近接ヌクレオチドの位置または6アミノ酸の概念的セグメントを指し、この場合、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18近接ヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照配列と比較することができ、また比較ウィンドウ上のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントを目的として参照配列(付加または欠失を含まない)と比較したときに、20%以下の付加、欠失、置換など(すなわちギャップ)を含むことができるものである。比較ウィンドウをアライメントするための、配列の最適なアライメントは、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman Proc.Natl.Acad.Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらアルゴリズムのコンピュータ化されたインプリメンテーションによって(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, (Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.), Geneworks, またはMac Vectorソフトウェアパッケージ中の、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、あるいは検査によって実施することができ、様々な方法によって生成される最良のアライメント(すなわち、比較ウィンドウ上で相同性に関して最高のパーセンテージをもたらす)が選択される。
【0028】
本明細書で使用される、20の従来のアミノ酸およびその略語は、従来の用法に従う。参照により本明細書に組み込まれるImmunology-A Synthesis (第2版, E.S.GolubおよびD.R.Gren編, Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照されたい。20の従来のアミノ酸、α-,α-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、およびその他の非従来型アミノ酸の立体異性体(例えばD-アミノ酸)も、本発明のポリペプチドに適切な構成要素とすることができる。非従来型アミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、およびその他の類似するアミノ酸およびイミノ酸(例えば4-ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用されるポリペプチドという表記では、標準的な用法および慣習によれば、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0029】
同様に、他に特に指定しない限り、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端が5'末端であり、2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向を、5'方向と呼ぶ。新生RNA転写物の5'-3'付加方向を転写方向と呼び、RNAと同じ配列を有しかつ5'からRNA転写物の5'末端までのDNA鎖の配列領域を、「上流配列」と呼び、RNAと同じ配列を有しかつ3'からRNA転写部物の3'末端までのDNA鎖上の配列領域を、「下流配列」と呼ぶ。
【0030】
ポリペプチドに適用するとき、「実質的に同一」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップの重みを使用したプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアライメントしたときに少なくとも80%の配列同一性を共有し、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なることが好ましい。保存的アミノ酸置換は、類似する側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族測鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり; 脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり; アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり; 芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり; 塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり; 硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン-アスパラギン、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0031】
本明細書で論じられるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中の少量の変化は、このアミノ酸配列中の変化が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、および最も好ましくは99%維持する場合には、本発明により包含されると考えられる。特に、保存的アミノ酸置換が考えられる。保存的置換は、側鎖に関連性を有するアミノ酸ファミリー内で生ずるのものである。遺伝的にコードされるアミノ酸を、一般に(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸; (2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン; (3) 非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン; および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンのファミリーに分割する。より好ましいファミリーは: セリンおよびトレオニンが脂肪族-ヒドロキシファミリーであり; アスパラギンおよびグルタミンがアミド含有ファミリーであり: アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンが脂肪族ファミリーであり; フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが芳香族ファミリーである。例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシン、グルタミン酸によるアスパラギン酸、セリンによるトレオニンの単独の置換、または構造的に関係のあるアミノ酸によるアミノ酸の同様の置換は、特にこの置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を巻き込まない場合、得られる分子の結合または性質に大きな影響を及ぼさないと予測することが理に適っている。
【0032】
アミノ酸の変化が機能ペプチドにもたらされるかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性のアッセイを行うことによって、容易に決定することができる。アッセイは、本明細書に詳細に記述される。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、当業者が容易に調製することができる。断片または類似体の好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界付近に生ずる。構造および機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データと、公開されまたは所有権を主張できる配列データベースとの比較によって、特定することができる。好ましくは、コンピュータ化した比較方法を使用して、構造および/または機能が知られているその他のタンパク質で生ずる配列モチーフまたは予測されるタンパク質構造ドメインを特定する。既知の3次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を特定する方法は、知られている。Bowie他 Science 253:164 (1991)。したがって前述の例は、当業者が、本発明により構造および機能ドメインを画定するのに使用することができる、配列モチーフおよび構造的立体配座を認識できることを実証する。
【0033】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、(5)そのような類似体のその他の物理化学的または機能的性質を与えまたは変更するものである。類似体は、天然に生ずるペプチド配列以外の配列の、様々な突然変異タンパク質を含むことができる。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)を、天然に生ずる配列で(好ましくは、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分で)行うことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造特性を実質的に変更すべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列中に生ずるヘリックスを破断する傾向にあるべきではなく、または親配列を特徴付けるその他の2次構造を分裂させる傾向にあるべきではない)。当技術分野で認められるポリペプチド2次構造および3次構造の例は、参照により本明細書にそれぞれ組み込まれるProteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編, W.H.Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C.BrandenおよびJ.Tooze編, Garland Publishing, New York, N.Y. (1991)); およびThornton他, Nature 354:105 (1991)に記載されている。
【0034】
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、アミノ末端および/またはカルボキシル末端欠失を有するポリペプチドであって、しかし残りのアミノ酸配列が、例えば完全長cDNA配列から推論される天然に生ずる配列での対応する位置に同一であるポリペプチドを指す。断片は、典型的には少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも14アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり、通常は少なくとも50アミノ酸長であり、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。本明細書で使用される「類似体」という用語は、推論されるアミノ酸配列の一部に実質的に同一である少なくとも25アミノ酸のセグメントからなり、また対応する天然ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を有するポリペプチドを指す。典型的な場合、ポリペプチド類似体は、天然に生ずる配列に対して保存的アミノ酸置換(あるいは付加または欠失)を含む。類似体は、典型的には少なくとも20アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも50アミノ酸長またはそれ以上であり、しばしば完全長の天然に生ずるポリペプチド程度に長くすることができる。
【0035】
ペプチド類似体は、一般に、鋳型ペプチドの場合に類似した性質を有する非ペプチド薬物として、製薬産業で使用される。これらのタイプの非ペプチド化合物を、「ペプチドミメティクス(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)」と呼ぶ。参照により本明細書に組み込まれるFauchere, J.Adv.Drug Res. 15:29 (1986); VeberおよびFreidinger TINS p.392 (1985); およびEvans他 J.Med.Chem. 30: 1229 (1987)。そのような化合物は、コンピュータ化した分子モデリングの助けを借りてしばしば開発される。治療上有用なペプチドに構造的に類似しているペプチドミメティクスを、同等の治療効果または予防効果をもたらすために使用することができる。一般に、ペプチドミメティクスは、ヒト抗体など典型的なポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当技術分野で周知の方法により、--CH2NH--、--CH2S--、--CH2-CH2--、--CH=CH-(cisおよびtrans)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--からなる群から選択された結合によって任意選択で置換された、1つまたは複数のペプチド結合を有する。同じタイプのD-アミノ酸によるコンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の系統的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を使用して、より安定なペプチドを生成することができる。さらに、コンセンサス配列、または実質的に同一のコンセンサス配列の変種を含む制約型ペプチドは、当技術分野で知られている方法によって(参照により本明細書に組み込まれるRizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem. 61:387 (1992)); 例えば、ペプチドを環化する分子間ジスルフィド橋を形成することが可能な内部システイン残基を付加することによって、生成することができる。
【0036】
「抗体」または「抗体ペプチド」は、無傷の抗体、または特異的結合のために無傷の抗体と競合するその結合断片を指す。結合断片は、組換えDNA技法によって、あるいは無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって生成される。結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、および単鎖抗体が含まれる。「2重特異性」または「2元官能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれを同一にすることが理解される。抗体は、過剰な抗体が、特異的結合パートナーに結合したポリペプチドの量を少なくとも約20%、40%、60%、または80%、さらにより一般には約85%を超えて低下させる場合(生体外競合結合アッセイで測定したとき)、ポリペプチドと特異的結合パートナーとの接着を実質的に阻害する。
【0037】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することが可能な任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸や糖側鎖などの、分子の化学的に活性な表面グループからなり、通常は、特異的3次元構造特性ならびに特異的荷電特性を有する。抗体は、解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMである場合、抗原に特異的に結合すると言われている。
【0038】
「薬剤」という用語は、本明細書では、化合物、化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的物質から作製された抽出物を示すのに使用する。
【0039】
本明細書で使用する「標識」または「標識された」という用語は、例えば、放射能標識されたアミノ酸の組込み、あるいはマークされたアビジン(例えば、光学的方法または比色法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)により検出することが可能なビオチニル部分のポリペプチドへの結合による、検出可能なマーカーの組込みを指す。ある状況では、標識またはマーカーも治療に役立てることができる。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法は、当技術分野で知られており、使用することができる。ポリペプチドに対する標識の例には、下記の物質、すなわち放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光ラベル(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、2次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、2次抗体用の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が含まれるが、これらに限定するものではない。いくつかの実施形態では、標識を、様々な長さのスペーサーアームにより結合して、潜在的な立体障害を低下させる。
【0040】
本明細書で使用する「医薬品」という用語は、患者に適正に投与したときに所望の治療効果を誘導することが可能な化合物または組成物を指す。本明細書におけるその他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (参照により本明細書に組み込まれるParker,S.編, McGraw-Hill, San Francisco (1985))により例示されるように、当技術分野での従来の用法に従って使用する。
【0041】
本明細書で使用する「実質的に純粋」とは、その対象の種が、存在する主な種であることを意味し(すなわち、モルベースで、組成物中の任意のその他の個々の種よりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製された画分が、存在する全ての高分子種に対してその対象の種が少なくとも約50%(モルベースで)含まれている組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80%よりも多く含むことになり、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%よりも多い。対象の種は、本質的な均一性へと精製され(汚染物質種を、従来の検出方法によって組成物中に検出することができない)、この組成物が本質的に単一の高分子種からなるものであることが最も好ましい。
【0042】
「患者」および「哺乳動物宿主」などの用語は、本明細書では同義に使用され、ヒトおよび獣医学的対象を含めた哺乳類を指す。
【0043】
「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウ上で、2つのアミノ酸配列が同一であることを意味する(すなわち、ヌクレオチドごとにまたは残基ごとに)。「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、比較ウィンドウ上で最適にアライメントされた2つの配列を比較し、マッチングする位置の数が得られるように、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)または残基が両方の配列で生ずる位置の数を決定し、マッチングする位置の数を、比較ウィンドウ上の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に、配列同一性のパーセンテージが得られるように100を掛けることによって計算する。本明細書で使用する「実質的に同一」という用語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を示すものであって、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で、しばしば少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で、参照配列に比べて少なくとも85%の配列同一性を、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性を、より一般には99%の配列同一性を有する配列を含んでおり、この配列同一性のパーセンテージは、参照配列と、比較ウィンドウ上で参照配列の20%以下をなす欠失または付加を含むことができる配列とを比較することによって計算されるものである。参照配列は、より大きい配列のサブセットでよい。
【0044】
本明細書で使用する、「治療」および「治療する」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防ぐという観点から予防的なものでよく、かつ/または、疾患および/または疾患に起因し得る副作用を部分的にまたは完全に治癒させるという観点から治療的なものでよい。本明細書で使用する「治療」は、哺乳類、特にヒトの疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患に罹る可能性がありまたは疾患になる危険性があるが、まだ疾患状態にあるとは診断されてい患者において、疾患が生ずるのを防ぐこと、(b)疾患を阻害すること、すなわち疾患の発症を抑止すること、および(c)疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行を引き起こすことうぃを含む。
【0045】
本明細書で使用する「副補体経路に関連する疾患または障害」という用語は、副補体経路の活性化によって直接または間接的に引き起こされる疾患または障害、副補体経路の1つまたは複数の構成要素によって直接または間接的に媒介される疾患または障害、あるいは副補体経路によって生成される生成物を指す。この用語は、副補体経路の1つまたは複数の構成要素によって悪化する疾患または障害、あるいは副補体経路によって生成される生成物も指す。
【0046】
本発明についてさらに述べる前に、本発明は、記述される特定の実施形態に限定されず、したがって当然ながら様々に変化させることができることを理解されたい。また、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記述するためのものであって限定しようとするものではないことを理解されたい。
【0047】
ある範囲の値が与えられた場合、文脈において他に特に明瞭に指示されない限り、その下限の単位の10分の1に至るまでその範囲の上限と下限との間にある介入値と、その示される範囲内での任意のその他の表示される値または介入値は、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲内に独立して含めることができ、やはり本発明に包含され、表示される範囲内の任意の特に除外される限界に従属している。表示される範囲が、これら限界の一方または両方を含む場合、これら含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0048】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した任意の方法および材料も、本発明を実施しまたは試験する際に使用することができるが、好ましい方法および材料について次に述べる。本明細書で述べる全ての文献は、これら文献が引用されるものと関連して方法および/または材料を開示し記述するために、参照により本明細書に組み込む。
【0049】
他に定義しない限り、本発明と関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者により一般に理解される意味を有するべきである。さらに、文脈により他に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。一般に、本明細書に記述される、細胞および組織の培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、およびハイブリダイゼーションに関連して利用される名称およびこれらの技術は、周知でありかつ当技術分野で一般に使用される。標準的な技法が、組換えDNA、オリグヌクレオチド合成、組織の培養および変換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション)に関して使用される。酵素反応および生成技法は、製造業者の仕様に従って行われ、または当技術分野で一般に実現されるように、または本明細書で述べるように行う。前述の技法および手順は、一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従い実施され、また本明細書全体を通して引用されかつ論じられる様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように実施される。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照されたい。本明細書で記述される分析化学、合成有機化学、医薬および製薬化学に関連して使用される名称およびその実験室での手順および技法は、周知でありかつ当技術分野で一般に使用される。標準的な技法が、化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤、および送達、患者の治療に関して使用される。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「および」、および「the」は、文脈において他に特に指示しない限り、複数の対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば「抗プロペルジン抗体」と言うときは、そのような抗体の複数が含まれ、「疾患」と言うときは、1種または複数の疾患、および当業者に知られているその均等物などが含まれる。
【0051】
本明細書で論じられる文献は、本出願の出願日前の、それらの単なる開示を目的として提供される。先行発明によってそのような文献が先行するように、本明細書に権利が与えられないことを認めるものと解釈すべきものは、本明細書には何もない。さらに、与えられた文献の日付は、実際の公開日とは異なる可能性があり、これは別に確認する必要があると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は、完全ヒト抗プロペルジン抗体と、この抗体を含む組成物とを提供する。対象抗体は、XenoMouse(登録商標)、すなわちヒト抗体のアミノ酸配列、例えばヒトフレームワーク(FR)およびヒト定常領域アミノ酸配列を有する抗体を生成する、遺伝子組換えがなされたマウスの抗体生成細胞によって生成される。
【0053】
XenoMouse(登録商標)遺伝子組換えマウス株は、遺伝子操作がなされたマウスであり、マウスIgHおよびIgk座が、酵母人工YAC導入遺伝子上のこれらのIg対応物によって機能的に置換されているものである。これらのヒトIg導入遺伝子は、ヒト可変レパートリーの大部分を運ぶことができ、IgMからIgGアイソタイプへのクラススイッチを受けることができる。XenoMouseの免疫系は、投与されたヒト抗原を異物として認識し、強力な体液応答をもたらす。十分確立されたハイブリドーマ技法と併せたXenoMouse(登録商標)の使用は、ヒト抗原に対してサブナノモルの親和性を有する完全ヒトIgG mAbをもたらす(「Transgenic non-human animals capable of producing heterologous antibodies」という名称の米国特許第5770429号; 「Generation of Xenogenic antibories」という名称の米国特許第6162963号; 「Human antibodies derived from immunized xenomice」という名称の米国特許第6150584号; 「Generation of xenogenic antibodies」という名称の米国特許第6114598号; および「Human antibodies derived from immunized xenomice」という名称の米国特許第6075181号参照; 概略に関しては、Green, Antibody engineering via genetic engineering of the mouse: XenoMouse(登録商標) strains are a vehicle for the facile generation of therapeutic human monoclonal antibodies, J.Immunol.Methods 231: 11〜23, 1999; Wells, Eek, a XenoMouse(登録商標): Abgenix,Inc., Chem Biol 2000 Aug; 7(8): R185〜6; およびDavis他, Transgenic mice as a source of fully human antibodies for the treatment of cancer Cancer Metastasis Rev 1999; 18(4):421〜5参照)。
【0054】
対象抗体は、様々な治療方法に有用である。対象抗プロペルジン抗体は、副補体経路の構成要素によって、かつ/または副補体経路の活性化後に発生した因子によって、直接または間接的に媒介された疾患を治療するための治療方法に有用である。
【0055】
対象抗プロペルジン抗体は、げっ歯類抗体に関連した問題、すなわち蕁麻疹、呼吸困難、低血圧、およびアナフィラキシーなどを含めた超過敏反応などの、ヒトにおける副作用を回避する。
【0056】
(抗プロペルジン抗体)
本発明は、完全ヒト抗プロペルジン抗体と、この抗体を含む組成物とを提供する。対象抗体は、XenoMouse(登録商標)、すなわちヒト抗体のアミノ酸配列、例えばヒトフレームワーク(FR)およびヒト定常領域アミノ酸配列を有する抗体を生成する、遺伝子組換えがなされたマウスの抗体生成細胞によって生成される。
【0057】
(プロペルジン)
プロペルジンポリペプチドは、当技術分野で知られている。例えば、ヒトおよびマウスプロペルジンのアミノ酸配列は、下記のアクセション番号の下、GenBankデータベースに見出される: ヒトプロペルジンに関しては、例えばGenBankアクセション番号AAA36489、NP_002612、AAH15756、AAP43692、S29126、CAA40914を参照されたい; マウスプロペルジンに関しては、例えばGenBankアクセション番号P11680およびS05478を参照されたい。ヒトプロペルジンは、シグナルペプチド(アミノ酸1〜28)と、それぞれが下記のように約60アミノ酸である非同一トロンボスポンジン1型リピート(TSR)を6個含む、すなわちアミノ酸80〜134(TSR1)、アミノ酸139〜191(TSR2)、アミノ酸196〜255(TSR3)、アミノ酸260〜313(TSR4)、アミノ酸318〜377(TSR5)、およびアミノ酸382〜462(TSR6)を含む、469アミノ酸タンパク質である。プロペルジンは、棒状モノマーを環状ダイマー、トリマー、およびテトラマーにオリゴマー化することによって形成される。
【0058】
(抗体活性)
対象抗プロペルジン抗体は、下記の活性の1つまたは複数を示し、すなわち(1)プロペルジンとC3bとの結合を阻害し、(2)プロペルジンモノマーのオリゴマー化を阻害し、(3)副補体経路の構成要素のレベルおよび/または生成、あるいは副補体経路の構成要素の動作により生成された因子を減少させ、(4)膜侵襲複合体(MAC)の形成を減少させ、(5)アナフィラキシー、例えばC3aおよび/またはC5aの形成を減少させ、(6)C3cの形成を減少させる活性の1つまたは複数を示す。
【0059】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、プロペルジンのTSR内のエピトープに結合し、例えば対象抗体は、TSR1、TSR2、TSR3、TSR4、TSR5、またはTSR6内のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、対象抗体は、プロペルジンポリペプチドの2つ以上のTSRに結合し、例えばエピトープは、TSR同士またはTSRの間で共有され、共有されたエピトープは、必ずしも必要ではないがアミノ酸配列を同一にすることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、プロペルジンとC3bとの結合を阻害する。これらの実施形態では、対象抗体が、プロペルジンとCb3との結合を、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上阻害する。
【0061】
対象抗体がプロペルジン/C3b結合を阻害するか否かは、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)アッセイ、生物発光共鳴エネルギー伝達(BRET)アッセイ、蛍光消光アッセイ; 蛍光アニソトロピーアッセイ; 免疫学的アッセイ; および検出可能に標識されたタンパク質と固定化されたタンパク質との結合に関わるアッセイが含まれるがこれらに限定することのない、タンパク質-タンパク質結合を検出するいくつかの周知のアッセイのいずれかを使用することによって決定することができる。免疫学的アッセイ、および検出可能に標識されたタンパク質と固定化されたタンパク質との結合に関わるアッセイは、様々な方法で準備することができる。例えば、C3bを固体支持体上に固定化し、試験抗体の存在下、プロペルジンとC3bとの結合を検出する。プロペルジンは、実施例1に記述されるように、直接または間接的に検出可能に標識することができる。
【0062】
対象抗体は、副補体経路の1つまたは複数の構成要素、および/または副補体経路の1つまたは複数の構成要素の動作によって生成された1つまたは複数の因子の、哺乳動物宿主でのレベルおよび/または生成を阻害する。例示的な、減少する構成要素および因子の非限定的な例には、MAC(C5b-9)、C3c、およびC3aやC5aなどのアナフィラキシーが含まれる。対象抗体は、副補体経路の1つまたは複数の構成要素、および/または副補体経路の1つまたは複数の構成要素の動作によって生成された1つまたは複数の因子のレベルを、対象抗体が存在しない場合の構成要素または因子のレベルに比べて少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させる。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、哺乳動物宿主におけるMACのレベルおよび/または生成を低下させる。これらの実施形態では、対象抗体は、抗体で処理しない哺乳動物宿主中のMACのレベルと比較して、MACの形成を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させる。対象抗体がMACの形成を低下させるか否かは、任意の知られているアッセイを使用して、例えば実施例1に記述されるような生体外アッセイを使用して、容易に決定することができる。例えばヒト血清を、試験抗体の存在下でまたは存在しない状態で、固定化したリポ多糖(LPS)に接触させ、それによって補体を活性化し、その結果、C5b-9と固定化LPSとが共有結合する。LPSに結合したC5b-9は、C5b-9に特異的な抗体を使用して検出する。
【0064】
いくつかの実施形態では、対象抗体が、哺乳動物宿主におけるC3aやC5aなどのアナフィラトキシンのレベルおよび/または生成を低下させる。これらの実施形態では、対象抗体は、抗体で処理していない哺乳動物宿主中のアナフィラトキシンのレベルと比較して、アナフィラトキシンの形成を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させる。アナフィラトキシンのレベルが低下するか否かは、実施例に記述される方法を含めた任意の知られているアッセイを使用して、容易に決定することができる。
【0065】
(検出可能な標識)
いくつかの実施形態では、対象抗体を検出可能に標識する。検出可能な標識には、蛍光タンパク質; 酵素(例えばβ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼなど); 放射性同位体、例えば32P、35S、3H;蛍光発光体、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、および蛍光タンパク質; 化学発光体; 特異的結合分子; 粒子、例えば磁気粒子などが含まれるが、これらに限定するものではない。特異的結合分子には、ビオチンとストレプトアビジンや、ジゴキシンと抗ジゴキシンなどの対が含まれる。適切な蛍光タンパク質には、Matz他((1999) Nature Biotechnology 17:969〜973)記載されるもの、任意の種またはその誘導体からの緑色蛍光タンパク質; 例えば、Renilla reniformisやRenilla mulleri、またはPtilosarcus guernyiなどの別の種からのGFP、例えば、WO99/49019およびPeelle他(2001) J.Protein Chem. 20:507〜519に記載されているもの; 「ヒト化」組換えGFP(hrGFP) (Stratagene): Aequoria victoriaまたはその蛍光変異体からのGFP、例えば米国特許第6066476号; 第6020192号; 第5985577号; 第5976796号; 第5968750号; 第5968738号; 第5958713号; 第5919445号; 第5874304号に記載されているものが含まれる。
【0066】
(抗体構造)
基本的な抗体構造単位は、テトラマーを含むことがわかっている。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、それぞれの対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に関わる約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端部分は、エフェクター機能に主に関わっている定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgA、およびIgEと定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域とは、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって接合され、この重鎖は、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含んでいる。一般に、Fundamental Immunology Ch.7 (Paul,W.編, 第2版 Raven Press, N.Y. (1989))(その全体を、全ての目的で参照に組み込む)を参照されたい。各軽/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0067】
したがって、無傷の抗体は、2つの結合部位を有する。2元官能性または2重特異性抗体の場合を除き、2つの結合部位は同じである。
【0068】
鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって接合された、相対保存フレームワーク(FR)の同じ一般構造を示す。それぞれの対の2つの鎖からのCDRをフレームワーク領域により位置合わせし、特異的エピトープに結合させる。N末端からC末端に至るまで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割当ては、Kabatの定義 Sequence of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987および1991))またはChothia & Lesk J.Mol. Biol. 196: 901〜917 (1987); Chothia他 Nature 342: 878〜883 (1989)に従う。
【0069】
いくつかの実施形態では、対象抗体は、図17A〜Cに示すように、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んだ軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含んだ軽鎖を含む。当業者なら、軽鎖可変領域のどのアミノ酸を変化させることができるか容易に決定することができる。例えば、同じ特異性を有する抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列を比較することによって、当業者なら、特異性を変化させない状態でどのアミノ酸を変化させることができるか決定することができる。例えば、例示的な抗プロペルジン抗体軽鎖のCDRアミノ酸配列の比較に関しては、図12を参照されたい。さらに、特異性が変化するか否かは、抗原結合アッセイを使用して容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含んだ軽鎖を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、対象抗体は、図17A〜Cに示すように、配列番号04、08、12、16、および20のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んだ重鎖を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号04、08、12、16、または20のいずれか1つに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含んだ重鎖を含む。当業者なら、重鎖可変領域のどのアミノ酸を変化させることができるか容易に決定することができる。例えば、同じ特異性を有する抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列を比較することによって、当業者なら、特異性を変化させない状態でどのアミノ酸を変化させることができるか決定することができる。例えば、例示的な抗プロペルジン抗体重鎖のCDRアミノ酸配列の比較に関しては、図14を参照されたい。さらに、特異性が変化するか否かは、抗原結合アッセイを使用して容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号04、08、12、16、および20のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含んだ重鎖を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02、06、10、14、および18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号04、08、12、16、および20のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号02で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号04で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号06で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号08で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号10で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号12で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号14で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号16で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、対象抗体は、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含んだ重鎖とを含む。
【0072】
2重特異性または2元官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。2重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の結合を含めた様々な方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann Clin. Exp. Immunol. 79: 315〜321 (1990)、Kostelny他 J.Immunol. 148: 1547〜1553 (1992)を参照されたい。2重特異性抗体の生成は、従来の抗体生成に比べて比較的労働集約的なプロセスになる可能性があり、2重特異性抗体の収量および純度は大幅に低下する。2重特異性抗体は、単一結合部位を有する断片(例えばFab、Fab'、およびFv)の形で存在しない。
【0073】
(ヒト抗体および抗体のヒト化)
ヒト抗体は、マウスまたはラット可変および/または定常領域を保有する抗体に関連した問題のいくつかを回避する。そのようなマウスまたはラット由来のタンパク質の存在は、抗体の迅速なクリアランスをもたらすことができ、または患者による抗体に対する免疫応答の発生をもたらすことができる。マウスまたはラット由来抗体の利用を避けるため、げっ歯類が完全ヒト抗体を生成することができるようにげっ歯類へのヒト抗体機能の導入を通して、ヒト化抗体を発生させることができまたは完全ヒト抗体を生成できるとされている。
【0074】
(ヒト抗体)
YACでメガベースサイズのヒト遺伝子座をクローニングし再構成する能力と、これらをマウス生殖系列に導入する能力によって、非常に大きくまたは大まかにマッピングした遺伝子座の機能性構成要素を解明し、ならびにヒト疾患の有用なモデルを生成するための、強力な手法が提供される。さらに、マウス遺伝子座をそのヒト均等物で置換するために、そのような技術を利用することによって、発生中のヒト遺伝子生成物の発現および調節、その他の系との連絡、疾患の誘導および進行への関与に対する独自の洞察を提供することができる。
【0075】
そのような戦略の重要で現実的な適用例は、マウス体液免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されているマウスに、ヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を導入すると、抗体のプログラム化された発現およびアセンブリの基礎をなすメカニズム、ならびにそれらのB細胞における役割を研究する機会が与えられる。さらに、そのような戦略は、完全ヒトモノクローナル抗体(Mab)を生成するための理想的な源を提供することができ、すなわちヒト疾患における抗体療法への希望を適える重要な段階をもたらすことができる。完全ヒト抗体は、マウスまたはマウス誘導体化Mabに固有の免疫原性およびアレルギー性応答を最小限に抑え、したがって投与された抗体の効力および安全性が増すことが期待される。完全ヒト抗体の使用は、繰り返し抗体を投与する必要がある、炎症や自己免疫、および癌などの慢性および再発性のヒト疾患の治療において、十分な利点をもたらすと予測することができる。
【0076】
この目的に向かう1つの手法は、マウス抗体の生成が不十分なマウス株を、マウス抗体が存在しない状態でそのようなマウスがヒト抗体の大きいレパートリーを生成し得ることを期待して、ヒトIg遺伝子座の大きい断片を用いて設計製作することであった。大きいヒトIg断片は、広範囲にわたる様々な遺伝子の多様性、ならびに抗体の生成および発現の適正な調節を、維持することができる。抗体の多様性および選択に関するマウスのメカニズムとヒトタンパク質に対する免疫寛容の不足を活用することによって、これらのマウス株で再生されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含めた問題の任意の抗原に対して高親和性抗体をもたらすべきである。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMabを容易に生成し選択することができる。
【0077】
この一般的戦略は、1994年に公表された本発明者等の第1世代XenoMouse(商標)に関係して実証された。Green他 Nature Genetics 7: 13〜21 (1994)を参照されたい。XenoMouse(商標)株は、コア可変および定常領域配列をそれぞれ含有するヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖系列構造断片を含有する、酵母人工染色体(YAC)を用いて設計製作した(同上)。ヒトIg含有YACは、抗体の再配列および発現の両方に関してマウス系に適合することが証明され、不活性化マウスIg遺伝子の代わりをすることが可能であった。これは、B細胞を誘導することができ、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを生成することができ、抗原特異的ヒトMabを発生させることができることが実証された。これらの結果は、より多くの数のV遺伝子、追加の調節要素、およびヒトIg定常領域を含有するヒトIg遺伝子座のより大きい部分の導入によって、感染および免疫化に対するヒト体液応答の特徴である完全レパートリーを実質的に反復できることも示唆した。Green他の研究は、最近、XenoMouse(商標)マウスを生成するために、それぞれヒト重鎖遺伝子およびκ軽鎖遺伝子のメガベースサイズの生殖系列YAC構造の導入を通して、ヒト抗体レパートリーの約80%よりも多い導入にまで広げられた。参照によりその開示が本明細書に組み込まれるMendez他 Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)、および1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759620号を参照されたい。
【0078】
そのような手法は、米国特許第6162963号、第6150584号、第6114598号、第6075181号、および第5939598号と、日本国特許第3068180B2号、第3068506B2号、および第3068707B2号にさらに論じられ描写されている。Mendez他 Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)、GreenおよびJakobovits J.Exp.Med. 188:483〜495 (1998)も参照されたい。1996年6月12日に付与された欧州特許第EP463151B1号、1994年2月3日に公開された国際特許出願第WO94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願第WO96/34096号、1998年6月11日に公開されたWO98/24893、2000年12月21日に出願されたWO00/76310も参照されたい。上記引用された特許、出願、および参考文献のそれぞれの開示は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0079】
代替の手法では、GenPharm International,Inc.を含めたその他のものが、「ミニ遺伝子座」手法を利用している。ミニ遺伝子座手法では、外因性Ig遺伝子座を、Ig遺伝子座からの種(個々の遺伝子)の包含によって模倣する。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、μ定常領域、および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物への挿入のための構成体に形成される。この手法は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれているSurani他の米国特許第5545807号と、それぞれLonbergおよびKayの米国特許第5545806号、第5625825号、第5625126号、第5633425号、第5661016号、第5770429号、第5789650号、第5814318号、第5877397号、第5874299号、および第6255458号と、KrimpenfortおよびBernsの米国特許第5591669号および第6023010号と、Berns他の米国特許第5612205号、第5721367号、および第5789215号と、ChoiおよびDunnの米国特許第5643763号と、GenPharm Internationalの1990年8月29日出願の米国特許出願第07/574748号、1990年8月31日出願の第07/575962号、1991年12月17日出願の第07/810279号、1992年3月18日出願の第07/853408号、1992年6月23日出願の第07/904068号、1992年12月16日出願の第07/990860号、1993年4月26日出願の第08/053131号、1993年7月22日出願の第08/096762号、1993年11月18日出願の第08/155301号、1993年12月3日出願の第08/161739号、1993年12月10日出願の第08/165699号、1994年3月9日出願の第08/209741号とに記載されている。また、その全体が参照により本明細書に組み込まれている欧州特許第0546073B1号、国際特許出願第WO92/03918号、第WO92/22645号、第WO92/22647号、第WO92/22670号、第WO93/12227号、第WO94/00569号、第WO94/25585号、第WO96/14436号、第WO97/13852号、および第WO98/24884号、および米国特許第5981175号も参照されたい。さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれているTaylor他, 1992、Chen他, 1993、Tuaillon他, 1993、Choi他, 1993、Lonberg他, (1994)、Taylor他, (1994)、およびTuaillon他, (1995)、Fishwild他, (1996)を参照されたい。
【0080】
上記にて列挙されかつ医学研究審議会(「MRC」)に任命されたSurani他の発明者等は、ミニ遺伝子座手法の使用によって、Ig遺伝子座を保有するトランスジェニックマウスを生み出した。上記にて列挙したGenPharm Internationalの研究に関する発明者等、LonbergおよびKayは、本発明の発明者等に倣って、実質的にSurani他の研究の繰り返しになる内因性マウスIg遺伝子座の不活性化を提案した。
【0081】
ミニ遺伝子座の利点は、Ig遺伝子座の一部を含む構成体を生成して動物に導入することができる迅速性にある。しかし、これと相応したミニ遺伝子座手法の著しい欠点とは、理論上、少数のV、D、およびJ遺伝子の包含を通して不十分な多様性が導入されることである。確かに、公表された研究はこの課題を裏付けるように見える。ミニ遺伝子座手法の使用を通してもたらされた動物のB細胞の発生および抗体生成は、阻止されるように見える。したがって、本発明を取り巻く研究は、より広範な多様性を実現するために、また動物の免疫レパートリーを再構成する目的で、一貫してIg遺伝子座の大部分の導入を対象としている。
【0082】
Kirinは、微小核体融合、大きい染色体片、または染色体全体を通して導入されたマウスからのヒト抗体の発生も実証している。参照によりその開示が本明細書に組み込まれている欧州特許出願第773288号および第843961号を参照されたい。
【0083】
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答は、キメラまたはその他の手法によりヒト化された抗体を調製する産業をリードしてきた。キメラ抗体はヒト定常領域およびマウス可変領域を有するが、あるヒト抗キメラ抗体(HACA)応答は、特に抗体の慢性的なまたは多数回用量分の利用で観察されると予測される。したがって、HAMAまたはHACA応答の重要性および/または効果を低下させるために、プロペルジンに対する完全ヒト抗体を提供することが望ましいと考えられる。
【0084】
(ヒト化およびディスプレイ技法)
ヒト抗体生成に関して上記にて論じたように、免疫原性が低下した抗体を生成する利点がある。ある程度まで、これは、適切なライブラリーを使用するヒト化の技法およびディスプレイ技法と関連して実現することができる。マウス抗体、またはその他の種からの抗体は、当技術分野で周知の技法を使用して、ヒト化または霊長類化できることが理解されよう。例えば、WinterおよびHarris, Immunol Today 14: 43〜46 (1993)と、Wright他, Crit, Reviews in Immunol. 12125〜168 (1992)を参照されたい。問題にされる抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/またはフレームワークドメインが対応するヒト配列に代わるように、組換えDNA技法によって設計製作することができる(WO92/02190、および米国特許第5530101号、第5585089号、第5693761号、第5693792号、第5714350号、および第5777085号参照)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子を構成するためのIg cDNAの使用も、当技術分野で知られている(Liu他, P.N.A.S. 84: 3439 (1987)およびJ.Immunol. 139: 3521 (1987))。mRNAは、ハイブリドーマ、または抗体を生成するその他の細胞から単離され、cDNAを生成するのに使用される。問題にされるcDNAは、特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することができる(米国特許第4683195号および第4683202号)。あるいは、ライブラリーを作製しスクリーニングして、問題にされる配列を単離する。次いで抗体の可変領域をコードするDNA配列を、ヒト定常領域配列に融合する。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabat他(1991) Sequence of Proteins of Immunological Interest, N.I.H.公報第91-3242号に見出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、既知のクローンから容易に入手可能である。アイソタイプの選択は、補体結合などの所望のエフェクター機能、または抗体依存性細胞の細胞毒性の活性によって導かれることになる。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかを使用することができる。次いでキメラ性のヒト化抗体を、従来の方法によって発現させる。
【0085】
Fv、F(ab')2、およびFabなどの抗体断片は、例えばプロテアーゼまたは化学的切断により、無傷のタンパク質を切断することによって調製することができる。あるいは、短縮された遺伝子を設計する。例えば、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードし、その後に翻訳終止コドンが続くDNA配列を含むことができ、それによって、短縮された分子が得られる。
【0086】
HおよびLJ領域のコンセンサス配列は、後で行われるV領域セグメントとヒトC領域セグメントの結合を目的として、J領域に有用な制限部位を導入するために、プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドを設計するのに使用することができる。C領域cDNAは、ヒト配列における類似位置に制限部位を配置するために、部位指向変異誘発によって修飾することができる。
【0087】
発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、YAC、およびEBV由来エピソームなどを含む。都合の良いベクターは、機能的に競合するヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものであり、適切な制限部位が、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入し発現させることができるように設計製作されている。そのようなベクターでは、スプライシングは通常、挿入されたJ領域のスプライスドナー部位と、ヒトC領域の先にあるスプライスアクセプター部位との間で生じ、またヒトCHエキソン内に生ずるスプライス領域でも生ずる。ポリデニル化および転写終結は、コード領域の下流にある天然の染色体部位で生ずる。得られたキメラ抗体は、レトロウイルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayama他, Mol.Cell.Bio. 3:280 (1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman他, P.N.A.S. 79:6777 (1982))、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grossched他, Cell 41: 885 (1985))を含めた任意の強力なプロモーターに接合することができる。また、理解されるように、天然のIgプロモーターなどを使用してもよい。
【0088】
さらに、ヒト抗体またはその他の種からの抗体は、当技術分野で周知の技法を使用したファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、およびその他の技法を含めるがこれらに限定することのないディスプレイ型技術を通して生成することができ、得られた分子に対し、親和性成熟などの追加の成熟を行うことができるが、これはそのような技法が当技術分野で周知だからである。WrightおよびHarris, 前掲、HanesおよびPlucthau, PNAS USA 94:4937〜4942 (1997) (リボソームディスプレイ)、ParmleyおよびSmith, Gene 73: 305〜318 (1988) (ファージディスプレイ)、Scott, TIBS 17: 241〜245 (1992)、Cwirla他, PNAS USA 87: 6378〜6382 (1990)、Russel他 Nucl.Acids Research 21:1081〜1085 (1993)、Hoganboom他, Immunol.Reviews 130: 43〜68 (1992)、ChiswellおよびMcCafferty, TIBTECH 10: 80〜84 (1992)、および米国特許第5733743号。ディスプレイ技術を利用して、ヒトではない抗体を生成する場合、そのような抗体は、上述のようにヒト化することができる。
【0089】
これらの技法を使用して、抗体を、プロペルジン発現細胞、プロペルジンそのもの、プロペルジンエピトープまたはそのペプチドの形、およびそれに対する発現ライブラリー(例えば、米国特許第5703057号参照)に生成することができ、その後、上述の活性化を目的として上述のようにスクリーニングすることができる。
【0090】
(抗体療法に関する追加の基準)
本明細書で論じるように、対象抗プロペルジン抗体の機能は、その作動形態の少なくとも一部にとって重要と思われる。機能とは、一例として、副補体経路の阻害における抗プロペルジン抗体の活性を意味し、例えば、対象抗プロペルジン抗体は、下記の性質の1つまたは複数、すなわち(1)プロペルジンとC3bとの結合を阻害し、(2)プロペルジンモノマーのオリゴマー化を阻害し、(3)副補体経路の構成要素または副補体経路の構成要素の動作により生成された因子の形成を減少させ、(4)膜侵襲複合体(MAC)の形成を減少させ、(5)アナフィラトキシン、例えばC3aおよび/またはC5aの形成を減少させ、(6)C3cの形成を減少させるという性質の、1つまたは複数を示す。
【0091】
対象抗体は、いくつかの実施形態において、IgG1ヒト重鎖定常領域を含むことになり、その他の実施形態では、IgG2ヒト重鎖定常領域を含み、その他の実施形態では、IgG3ヒト重鎖定常領域を含む。生成された抗体は、そのようなアイソタイプを最初に保有する必要がなく、むしろ、生成されたときの抗体は任意のアイソタイプを保有することができ、この抗体を、当技術分野で周知の従来の技法を使用して、その後スイッチングされるアイソタイプにすることができることが理解されよう。そのような技法には、とりわけ直接組換え技法(例えば、米国特許第4816397号参照)、細胞間融合技法(例えば、米国特許第5916771号および第6207418号)の使用が含まれる。
【0092】
細胞間融合技法では、任意の所望のアイソタイプの重鎖を保有する骨髄腫またはその他の細胞系を調製し、軽鎖を保有する別の骨髄腫またはその他の細胞系を調製する。そのような細胞を、その後、融合することができ、無傷の抗体を発現する細胞系を単離することができる。
【0093】
一例として、本明細書で論じる抗プロペルジン抗体は、ヒト抗プロペルジンIgG2抗体である。そのような抗体が、プロペルジンポリペプチドまたはエピトープまたはその断片との所望の結合を保有する場合、容易にアイソタイプスイッチを行って、ヒトIgM、ヒトIgG1、またはヒトIgG3アイソタイプを生成することができ、それでもなお同じ可変領域を保有することができる(抗体の特異性およびその親和性のいくつかを定める)。
【0094】
このように、上記にて論じた所望の「構造的」属性をに適う抗体候補が生成されるので、これらの候補は一般に、アイソタイプスイッチングを通して所望の「機能的」属性の少なくともいくつかを得ることができる。
【0095】
(その他の治療手段の設計および生成)
本発明によれば、また副補体経路の阻害に関して本明細書で生成され特徴付けられた抗体の活性に基づけば、抗体部分を超えたその他の治療モダリティの設計が容易になる。そのようなモダリティには、2重特異性抗体や免疫毒素、および放射能標識治療手段などの高度抗体治療手段、ペプチド治療手段の生成、遺伝子療法、特に細胞内抗体、アンチセンス治療手段、および小分子が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0096】
高度抗体治療手段の生成に関し、補体結合が望ましい属性である場合には、例えば2重特異性、免疫毒素、または放射能標識の使用を通して、細胞致死に関する補体依存性の回避を可能にすることができる。
【0097】
例えば2重特異性抗体に関して、(i)2個の抗体、すなわちその一方が、プロペルジンに対して特異性を有し、他方が、一緒に結合された第2の分子に対して特異性を有する抗体、(ii)プロペルジンに特異的な1つの鎖、および第2の分子に特異的な第2の鎖を有する単一抗体、または(iii)プロペルジンおよびその他の分子に対して特異性を有する単鎖抗体を含む、2重特異性抗体を生成することができる。そのような2重特異性抗体は、例えば周知の技法を使用して生成することができ、(i)および(ii)に関しては、例えばFanger他 Immunol Methods 4: 72〜81 (1994)、WrightおよびHarris, 前掲を、また(iii)に関しては、例えばTraunecker他 Int.J.Cancer (補遺) 7:51〜52 (1992)を参照されたい。それぞれの場合において、第2の特異性は、CD16またはCD64(例えば、Deo他 18: 127 (1997)参照)またはCD89(例えば、Valerius他 Blood 90: 4485〜4492 (1997)参照)を含むがこれらに限定することのない重鎖活性化受容体に対して生成することができる。前述の内容に従って調製された2重特異性抗体は、プロペルジンを発現する細胞、特に本発明の抗プロペルジン抗体が有効である細胞を死滅させる可能性が高いと考えられる。
【0098】
免疫毒素に関しては、抗体を、当技術分野で周知の技法を利用して免疫毒素とし働くように修飾することができる。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252 (1993)を参照されたい。また、米国特許第5194594号も参照されたい。放射能標識抗体の調製に関しては、そのように修飾された抗体も、当技術分野で周知の技法を利用して容易に調製することができる。例えば、Junghans他のCancer Chemotherapy and Biotherapy 655〜686 (第2版, ChafnerおよびLongo編, Lippincott Raven (1996))を参照されたい。また、米国特許第4681581号、第4735210号、第5101827号、第5102990号 (RE 35500)、第5648471号、および第5697902号も参照されたい。免疫毒素および放射能標識分子のそれぞれは、プロペルジンを発現する細胞、特に本発明の抗体が有効である細胞を死滅させる可能性が高いと考えられる。
【0099】
治療用ペプチドの生成に関しては、プロペルジンおよびその抗体、例えば本発明の抗体(小分子に関して以下に論じるように)などに関する構造情報の利用によって、またはペプチドライブラリーのスクリーニングによって、プロペルジンを対象とした治療用ペプチドを生成することができる。ペプチド治療手段の設計およびスクリーニングは、Houghten他 Biotechniques 13: 412〜421 (1992)、Houghten PNAS USA 82: 5131〜5135 (1985)、Pinalla他 Biotechniques 13: 901〜905 (1992)、BlakeおよびLitzi-Davis BioConjugate Chem. 3: 510〜513 (1992)に関連して論じられる。免疫毒素および放射能標識分子も、抗体に関して上記にて論じたようにぺプチド部分に関する類似の手法で調製することができる。
【0100】
プロペルジン分子(またはスプライスバリアントや代替形態などの形)が疾患過程で機能的に活性であると仮定すると、従来の技法によって、遺伝子およびそれに対するアンチセンス治療手段を設計することも可能になる。そのようなモダリティは、プロペルジンの機能を調節するのに利用することができる。それに関して、本発明の抗体は、それに関係した機能的アッセイの設計および使用を容易にする。アンチセンス治療手段に関する設計および戦略は、国際特許出願第WO94/29444号に詳細に論じられている。遺伝子療法に関する設計および戦略は、周知である。しかし特に、細胞内抗体に関わる遺伝子治療技法の使用が特に有利であることを、証明することができた。例えば、Chen他 Human Gene Therapy 5:595〜601 (1994)およびMarasco Gene Therapy 4: 11〜15 (1997)を参照されたい。また、遺伝子治療の一般設計および遺伝子治療に関連する考察は、国際特許出願第WO97/38137号で検討されている。
【0101】
小分子治療手段も、本発明により想像することができる。薬物は、本発明に基づいてプロペルジンの活性が調節されるように設計することができる。プロペルジン分子の構造、およびプロペルジン分子と、本発明の抗体、プロペルジンなど本発明による他の分子との相互作用から収集した知識を利用して、追加の治療モダリティを合理的に設計することができる。これに関し、X線結晶構造解析やコンピューダ補助(支援)分子モデリング(CAMM)、定量的または定性的構造活性相関(QSAR)、および類似の技術などの、合理的な薬物設計技法を利用して、薬物送達に努力を集中させることができる。合理的な設計によって、プロペルジンの活性を変化させまたは調節するのに使用することができる分子またはその特異的形態と、相互に作用することができるタンパク質または合成構造の予測が可能になる。そのような構造は、化学的に合成することができ、または生物系で発現させることができる。この手法は、Capsey他 Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs (Stockton Press, NY (1988))で検討されている。さらに、コンビナトリアルアライブラリーを設計し、合成して、高速大量処理スクリーニングの試みなどのスクリーニングプログムで使用することができる。
【0102】
(治療的投与および製剤)
本発明による治療手段本体は、改善された移動、送達、および耐性などを提供するために、適切な担体、賦形剤、および製剤に組み込まれるその他の薬剤と共に投与されることが理解されよう。多数の適切な製剤は、全ての薬剤師に知られている処方集: Remington's Pharmaceutical Sciences (第15版, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975))、特にその中のBlaug, Seymourによる第87章に見出すことができる。これらの製剤には、例えば粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオン性または陰イオン性)含有小胞(Lipofectin (商標)など)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。前述の混合物のいずれかは、製剤中の活性成分が製剤によって不活性化されず、またこの製剤が投与経路に対して生理学的に適合性がありかつ耐性があるという条件で、本発明による治療および療法に適したものにすることができる。薬剤師に周知の製剤、賦形剤、および担体に関する追加の情報については、Baldrick P.「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.」Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2): 210〜8 (2000)、Wang W.「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」Int. J.Pharm. 203(1〜2): 1〜60 (2000)、Charman WN「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.」J Pharm Sci. 89(8): 967〜78 (2000)、Powell他「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol. 52: 238〜311 (1998)およびこの中の引用も参照されたい。
【0103】
(抗体の調製)
本発明による抗体は、挿入されたヒト抗体生成ゲノムのかなりの部分を有するが、内因的マウス抗体の生成が不十分なものになるトランスジェニックマウスを利用することによって、調製することが好ましい。次いでそのようなマウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を生成することが可能であり、マウス免疫グロブリン分子および抗体の生成が不十分である。これを実現するために利用される技術は、特許、出願、および本明細書の背景で開示される参考文献に開示されている。しかし詳細には、マウスおよびそこからの抗体のトランスジェニック生成の好ましい実施形態は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759620号、および1998年6月11日公開の国際特許出願第WO98/24893号、および2000年12月21日公開のWO00/76310に開示されている。また、参照によりその開示が本明細書に組み込まれるNature Genetics 15: 146〜156 (1997)も参照されたい。
【0104】
そのような技術の使用により、本発明者等は、様々な抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体を生成した。本質的に、本発明者等は、問題にされる抗原でマウスのXenoMouse(登録商標)系を免疫化し、抗体を発現するリンパ細胞(B細胞など)を回収し、そのような回収された細胞と骨髄型細胞系とを融合して不死ハイブリドーマ細胞系を調製し、そのようなハイブリドーマ細胞系をスクリーニングし、問題にされる抗原に特異的な抗体を生成するハイブリドーマ細胞系を特定する。本発明者等は、プロペルジンに特異的な抗体を調製するために、本発明によるこれらの技法を利用した。本明細書において、本発明者等は、プロペルジンに特異的な抗体を生成する複数のハイブリドーマ細胞系の生成について、記述する。さらに本発明者等は、そのような抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列分析も含めた、そのような細胞系によって生成された抗体の特徴付けを行う。
【0105】
本明細書で論じられるハイブリドーマ細胞系は、本明細書に提示される指針から、当業者によって容易に生成される。対象細胞系により生成される抗体のそれぞれは、ヒトκ軽鎖を有する完全ヒトIgG2またはIgG4重鎖のいずれかである。一般に、本発明による抗体は、非常に高い親和性を保有し、固相および溶液相のいずれかにより測定したときに、典型的には約10-9〜約10-11MまでのKdを保有する。
【0106】
理解されるように、本発明による抗体は、ハイブリドーマ細胞系以外の細胞系で発現することができる。特定の抗体をコードする配列は、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換で使用することができる。形質転換は、例えばウイルス(またはウイルスベクター)でポリヌクレオチドを包み、このウイルス(またはベクター)を宿主細胞に形質導入することを含めた、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の知られている方法によるもの、あるいは米国特許第4399216号、第4912040号、第4740461号、および第4959455号(これらの特許を、参照により本明細書に組み込む)に例示されるような、当技術分野で知られているトランスフェクション手順によるものでよい。使用される形質転換手順は、形質転換がなされる宿主に応じて異なる。哺乳動物細胞に異種ポリヌクレオチドを導入するための方法は、当技術分野で周知であり、デキストラン媒介型トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介型トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、および核へのDNAの直接微量注入が含まれる。
【0107】
発現のために宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当技術分野で周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、およびいくるかのその他の細胞系を含むがこれらに限定することのない、Amercan Type Culture Collection (ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が含まれる。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有するのか、またどの細胞系が、構成プロペルジン結合特性を備えた抗体を生成するのか決定することによって選択される。
【0108】
本発明により実証された結果は、プロペルジンに対して現在利用可能な抗体よりも本発明の抗体をより有効にすることができるある品質を、本発明の抗体が保有することを示している。本発明による抗体は高い親和性を有し、副補体経路の阻害に、したがって副補体経路に関連しかつ/または副補体経路により媒介された障害の治療に有効であるように思われる。
【0109】
(ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞)
本発明はさらに、対象抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドを含めたポリヌクレオチドを提供する。本発明はさらに、対象ポリヌクレオチドを含む、発現ベクターを含めたベクターを提供する。本発明はさらに、対象ポリヌクレオチドまたは対象ベクターを含む、単離宿主細胞を含めた宿主細胞を提供する。多くの実施形態で、対象宿主細胞は対象抗体を生成する。
【0110】
本発明は、対象抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドを含めたポリヌクレオチド(「核酸」)、ならびにそのような核酸を含む組成物を提供する。核酸組成物とは、対象抗体をコードし、適切な条件下で対象抗体として発現することが可能な、オープンリーディングフレームを有するDNAの配列を含む組成物を意味する。
【0111】
対象抗体をコードする核酸は、cDNAまたはゲノムDNAまたはその断片でよい。遺伝子という用語は、対象発明の特定の抗体をコードするオープンリーディングフレーム、およびイントロン、ならびにコード領域を超えて約20kbまでであるが可能な限りいずれかの方向にさらに及ぶ、発現の調節に関与する隣接する5'および3'非コードヌクレオチド配列を意味するものとする。遺伝子は、染色体外維持または宿主ゲノムへの組込みに適切なベクターに導入することができる。
【0112】
本明細書で使用する「cDNA」という用語は、天然成熟mRNA種に見出される配列要素の構成を共有する全ての核酸であって、配列要素がエキソンと3'および5'非コード領域であるものを含むものとする。通常、mRNA種は近接エキソンを有し、存在する場合には介在イントロンが、核RNAスプライシングによって除去され、その結果、対象発明によるタンパク質をコードする連続オープンリーディングフレームが生成される。
【0113】
いくつかの実施形態では、対象抗体軽鎖をコードする対象核酸が、図16A〜Fに示される配列番号01、05、09、13、および17のいずれかに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体軽鎖をコードする対象核酸は、配列番号01、05、09、13、および17のいずれかに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドだけ異なっている。いくつかの実施形態では、対象抗体軽鎖をコードする対象核酸は、配列番号01、05、09、13、および17のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、対象抗体重鎖をコードする対象核酸が、図16A〜Fに示される配列番号03、07、11、15、および19のいずれかに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、対象抗体重鎖をコードする対象核酸は、配列番号03、07、11、15、および19のいずれかに対して、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドだけ異なっている。いくつかの実施形態では、対象抗体重鎖をコードする対象核酸は、配列番号03、07、11、15、および19のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0115】
例示的な非限定的抗体は、下記の通りである: (1) 配列番号02で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号01で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号04で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号03で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H8_7と指定された抗体; (2) 配列番号06で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号05で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号08で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号07で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H8_14と指定された抗体; (3) 配列番号10で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号09で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号11で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H8_11と指定された抗体;(4) 配列番号14で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号13で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号16で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号15で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H1_6_2と指定された抗体; および(5) 配列番号18で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号17で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体軽鎖可変領域と、配列番号20で示されるアミノ酸配列を有し、配列番号19で示されるヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされる、抗体重鎖可変領域を含む、GL001H1_12_1と指定された抗体。
【0116】
問題にされるゲノム配列は、列挙される配列で定められるように、開始コドンと停止コドンとの間に存在する核酸を含み、これには天然の染色体に通常存在するイントロンの全てが含まれる。この配列はさらに、成熟mRNAに見出される3'および5'非翻訳領域を含むことができる。この配列はさらに、転写領域の5'または3'末端のいずれかに、1kbであるがおそらくはより多くのフランキングゲノムDNAを含んだプロモーターやエンハンサーなどの特異的転写および翻訳調節配列含むことができる。ゲノムDNAは、100kbp以下の断片として単離することができ、フランキング染色体配列を実質的に含まない。3'または5'のいずれかでコード領域の側面に接するゲノムDNA、あるいはイントロン内に時々見られる内部調節配列は、適正な組織および段階に特異的な発現に必要とされる配列を含有する。
【0117】
対象核酸分子は、ベクターの一部として提供してもよく(例えば「構成体」)、その広く様々なものが当技術分野で知られており、本明細書で詳述する必要はない。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、人工染色体(YAC、BACなど)、およびミニ染色体などが含まれるが、これらに限定するものではない。ベクターは、例えばShort Protocols in Molecular Biology (1999) F.Ausubel他編, Wiley & Sonsも含め、当業者に周知の数多くの文献に十分に記載されている。ベクターは、対象核酸の発現をもたらすことができ、対象核酸の伝播をもたらすことができ、またはこれらの両方である。
【0118】
対象遺伝子は単離され、一般には無傷の染色体以外のものとして十分な純度で得られる。通常DNAは、対象遺伝子の配列またはその断片を含まないその他の核酸配列を実質的に含まずに得られることになり、一般には少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%の純度であり、典型的には「組換え体」、すなわち通常は天然に生ずる染色体に結合していない1つまたは複数のヌクレオチドが両側に接するものである。
【0119】
対象核酸組成物は、対象抗体の全てまたは一部の調製に用途を見出している。発現では、発現カセットを用いることができる。発現ベクターは、誘導性または構造性でよい転写および翻訳開始領域を提供することになり、コード領域は、転写開始領域と転写および翻訳終止領域の転写制御下で作動可能に結合されている。これらの領域は、対照ペプチドをコードする遺伝子に由来するものでよく、または外因性供給源から得ることができる。
【0120】
発現ベクターは、一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を行うために、プロモーター配列の近くに位置付けられた都合のよい制限部位を有する。発現に効果のある選択可能なマーカーが存在してよい。発現ベクターは、融合タンパク質の生成に使用することができ、外因性融合ペプチドは、追加の機能を提供し、すなわち増加したタンパ質合成、安定性、定められた抗血清との反応性、酵素マーカー、例えばβ-ガラクトシダーゼなどを提供する。
【0121】
対象抗体は、発現の目的に応じて、従来の方法に従って原核生物または真核生物で発現することができる。タンパク質の大規模な生成では、単細胞生物、例えばE.coliやB.subtilis、S.cerevisiae、昆虫細胞であってバキュロウイルスベクターと組み合わせたもの、または脊椎動物などの高等生物、特に哺乳類の細胞、例えばCOS 7細胞を、発現宿主細胞として使用することができる。いくつかの状況では、真核細胞内で核酸を発現し、コードされたタンパク質が天然の折り畳みおよび翻訳後修飾から利益を得ることが望ましい。
【0122】
本発明は、対象ポリヌクレオチドまたは対象ベクターを含む、単離された宿主細胞を含めた宿主細胞を提供する。多くの実施形態では、対象宿主細胞は、対象発現ベクターで遺伝子組換えした後に抗体を生成することが可能な真核宿主細胞である。多くの実施形態では、対象宿主細胞は、プロペルジンで免疫化されているXenoMouse(登録商標)からの抗体生成細胞と、融合パートナーとしての役割をする細胞、例えば抗体を生成しない骨髄腫融合パートナーとの融合によって生成されるハイブリドーマ細胞である。
【0123】
(治療方法)
本発明は、副補体経路の阻害する方法、副補体経路の活性化後に生成されたポリペプチドのレベルを低下させる方法、膜侵襲複合体(MAC)のレベルを低下させる方法、アナフィラトキシンのレベルを低下させる方法、C3cのレベルを低下させる方法、および副補体経路により媒介される疾患または障害を治療する方法を含む、哺乳動物宿主で実施される治療方法での対象抗プロペルジン抗体の使用を含んだ治療方法を提供する。これらの方法は一般に、有効量の対象抗体を、その必要のある哺乳動物被験体に投与するステップを含む。
【0124】
対象抗体の「有効量」は、副補体経路の活性化後に生成されたポリペプチドの生成および/またはレベルを、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下させるのに有効な量である。
【0125】
対象抗体は、医薬品として許容される賦形剤との配合物として、個体に投与する。広く様々な医薬品として許容される賦形剤は、当技術分野で知られており、本明細書で詳細に論じる必要はない。医薬品として許容される賦形剤は、例えばA.Gennaro (2000)「Remington: The science and Practice of Pharmacy,」第20版, Lippencott, Williams, & Willkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C.Ansel他編, 第7版, Lippencott. Williams, & Wilkins; およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H.Kibbe他, 第3版, Amer.Pharmaceutical Assoc.を含めた様々な文献に、十分に記載されている。
【0126】
ビヒクルやアジュバント、担体、または希釈剤などの、医薬品として許容される賦形剤は、一般に向け容易に入手可能である。さらに、pH調節剤や緩衝剤、等張化剤、安定剤、および湿潤剤などの、医薬品として許容される補助物質は、一般に向け容易に入手可能である。
【0127】
対象となる方法では、所望の治療効果をもたらすことが可能な任意の従来の手段を使用して、対象抗体を宿主に投与することができる。したがって抗体は、治療的投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、対象抗体は、適切な医薬品として許容される担体または希釈剤と組み合わせることによって、医薬品組成物に配合することができ、錠剤やカプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、液剤、坐薬、注射液、吸入薬、およびエアロゾルなどの、固体、半固体、液体、または気状形態で製剤に配合することができる。
【0128】
したがって、対象抗体の投与は、経口、頬、直腸、非経口、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、経皮、鼻内、肺、気管内投与などを含めた様々な方法で実現することができる。
【0129】
対象抗体の皮下投与は、標準的な方法および機器、例えば針および注射器、皮下注入口送達システムなどを使用して実現される。筋肉内投与は、標準的な手段、例えば針および注射器、連続送達システムなどによって実現される。
【0130】
いくつかの実施形態では、対象抗体を、連続送達システムにより送達する。「連続送達システム」という用語は、本明細書では「制御送達システム」と同義に使用され、カテーテルおよび注射器などと組み合わせた連続(例えば制御された)送達機器(例えばポンプ)を包含し、その広く様々なシステムが当技術分野で知られている。機械式または電気機械式輸液ポンプも、本発明と共に使用するのに適したものになり得る。そのような機器の例には、例えば米国特許第4692147号、第4360019号、第4487603号、第4360019号、第4725852号、第5820589号、第5643207号、および第6198966号などに記載されるものが含まれる。一般に、薬物送達の本発明の方法は、様々な再充填可能なポンプシステムのいずれかを使用して実現することができる。ポンプは、経時的に一定の制御放出を行う。
【0131】
医薬品剤形では、薬剤を、医薬品として許容されるその塩の形で投与することができ、あるいは単独で使用してもよく、またはその他の医薬品として活性な化合物と適切に結合させて、また同様に組み合わせて使用してもよい。下記の方法および賦形剤は単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0132】
対象抗体は、望みに応じて可溶化剤や等張化剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、および保存剤などの従来の添加剤と共に、植物油またはその他同様の油や合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸またはプロピレングリコールのエステルなどの、水性または非水性溶媒に溶解し、懸濁し、または乳化することによって、注射用製剤に配合することができる。
【0133】
注射または静脈内投与に向けた単位剤形は、滅菌水、正常食塩水、または別の医薬品として許容される担体に溶かした溶液として、阻害剤を組成物中に含むことができる。
【0134】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物被験体に対する単一の投薬量として適切な、物理的に個別の単位を指し、各単位は、医薬品として許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと結合して所望の効果を発揮するのに十分な量に計算された所定量の対象抗体を含有する。本発明の単位剤形に関する仕様は、用いられる特定の化合物および発揮される効果と、宿主内での各化合物に関連した薬力学的作用に応じて異なる。
【0135】
対象抗体は、所望の治療効果が発揮されるような頻度および期間にわたって、個体に投与される。例えば対象抗体は、月に1回、月に2回、月に3回、1週おき(qow)、週に1回(qw)、週に2回(biw)、週に3回(tiw)、週に4回、週に5回、週に6回、1日おき(qod)、毎日(qd)、日に2回(qid)、または日に3回(tid)、あるいは、約1日から約1週間、約2週間から約4週間、約1カ月から約2カ月、約2カ月から約4カ月、約5カ月から約6カ月、またはそれ以上に及ぶ期間にわたって実質的に連続的に、または連続的に投与される。
【0136】
(併用療法)
対象抗体は、いくつかの実施形態では、第2の治療薬との併用療法において有効量で投与されることになる。適切な第2の治療薬には、抗炎症薬、心血管障害の治療に使用される薬剤、およびステロイド系抗炎症薬などが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0137】
適切な抗炎症薬には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)アセタミノフェン、サリチレート、アセチル-サリチル酸(アスピリン、ジフルニサル)、イブプロフェン、モトリン、ナプロシン、ナルフォン、およびトリリセート、インドメタシン、グルカメタシン、アセメタシン、スリンダク、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク、ベノキサプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロジン、エトドラク、ケトロラク、トロメタミン、ケトロラク、およびナブメトンなど、および前述の薬剤の2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。その他の適切な抗炎症薬には、メトトレキセートが含まれる。
【0138】
適切なステロイド系抗炎症薬には、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、およびトリアムシノロンが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0139】
心血管適応症に適した薬剤には、Integrilin(登録商標)(エプチフィバチド); アプロチニン; およびReoPro(登録商標)(アブシキシマブ)などのGP IIb-IIIa阻害剤が含まれる。
【0140】
適切な第2の治療薬には、アルブテロール、硫酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、酢酸ピルブテロール、およびサルメテロールフォルモトロールを含めた気管支拡張薬; ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド、フルチカゾン、ブデソニド、およびトリアムシノロンアセトニドを含めたステロイドを含む、βアドレナリン作動薬が含まれる。呼吸器疾患の治療に関連して使用される抗炎症薬には、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルニソリド、およびフルチカゾンなどのステロイドが含まれる。その他の適切な抗炎症薬には、クロモリンナトリウムなどのクロモグリケートが含まれる。気管支拡張剤と見なされるその他の呼吸器用薬剤には、臭化イプラトロピウムを含めた抗コリン作動薬が含まれる。抗ヒスタミンには、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クレマスチン、ジメンヒドリネート、プリルアミン、トリペレナミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、メクリジン、クロルシクリジン、プロメタジン、ドキシルアミン、ロラタジン、およびテルフェナジンが含まれるが、これらに限定するものではない。特定の抗ヒスタミンには、リノラスト(Astelin)、クララチン(Claritin)、クララチンD(Claritin D)、テルファスト(Allegra)、ザイトレック、およびベコナーゼが含まれる。
【0141】
いくつかの実施形態では、対象抗体を、第2の治療薬と同時に投与する。本明細書で使用する「同時に」という用語は、対象抗体および第2の治療薬を別々に投与すること、および互いに約5秒から約15秒以内、約15秒から約30秒以内、約30秒から約60秒以内、約1分から約5分以内、約5分から約15分以内、約15分から約30分以内、約30分から約60分以内、約1時間から約2時間以内、約2時間から約6時間以内、約6時間から約12時間以内、約12時間から約24時間以内、または約24時間から約48時間以内に投与することを示す。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象抗体を、第2の治療薬と共に全治療過程の間に投与する。その他の実施形態では、対象抗体は、第2の治療薬での治療期間に重なる期間にわたって投与され、例えば抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始する前に開始し、第2の治療薬での治療を終了する前に終了することができ; 抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始した後に開始し、抗体治療が終了した後に終了することができ; 抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始した後に開始し、第2の治療薬での治療を終了する前に終了させることができ; または抗体治療は、第2の治療薬での治療を開始する前に開始し、第2の治療薬での治療が終了した後に終了することができる。
【0143】
(治療に適切な被験体)
対象となる方法を用いた治療に適した被験体には、下記の障害の1つまたは複数に罹っている個体、すなわち心肺バイパス後炎症、心筋梗塞、脳卒中、急性呼吸困難症候群(ARDS)、敗血症性ショック、移植拒絶、熱傷、多発性硬化症、重症筋無力症、心血管障害、およびリウマチ様関節炎の1つまたは複数に罹っている個体が含まれる。対象方法での治療に適した被験体には、全身性エリテマトーデス、膜性腎炎、類天疱瘡、皮膚筋炎、および抗リン脂質症候群を含むがこれらに限定することのない任意の炎症性障害に罹っている個体も含まれる。治療に適した被験体には、腎透析を受けている被験体も含まれる。
【0144】
(参考文献による組込み)
特許、特許出願、論文、および教科書などを含めた本明細書で引用される全ての参考文献と、そこに引用される参考文献は、それらが既に組み込まれていない程度まで、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、下記の参考文献も、そのような参考文献で引用された参考文献も含めたその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
(均等物)
前述の説明および例は、本発明のある好ましい実施形態について詳述しており、本発明により企図される最良の形態について述べている。しかし、前述の事項を文章でどんなに詳述しても、本発明を多くの方法で実施することができ、本発明は、添付される特許請求の範囲およびその任意の均等物に基づいて解釈すべきことが理解されよう。
【0146】
(実施例)
以下の実施例は、当業者に対して、本発明をどのように作製しまた使用するのかという完全な開示および記述を行うように提示され、本発明者等が自らの発明と見なすものの範囲を限定するものではなく、また以下の実験が全てであることまたはその実験しか行われないことを意図するものでもない。使用される数(例えば量、温度など)に関する正確さを確かなものにするために努力がなされているが、いくらかの実験誤差およびずれを考慮すべきである。他に特に指示しない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。標準的な略称を使用することができ、例えばbp、塩基対; kb、キロ塩基; pl、ピコリットル; s、秒; min、分; およびhr、時などである。
【0147】
(実施例1: 抗プロペルジンモノクローナル抗体の調製および特徴付け)
(概要)
この研究の目的は、高親和性でヒトプロペルジンに結合しかつ補体副経路を阻止する、完全ヒトモノクローナル抗体(MoAb)を特定することであった。これらのMoAbは、それ自体が補体またはFcγ受容体の活性を介して炎症を引き起こさないことが重要であるので、IgG2およびIgG4 XenoMouse株が免疫化の目標とされた。ヒトプロペルジンを免疫原として使用し、いくつかのIgG2およびIgG4 XenoMouse動物に、足蹠または尾静脈の免疫化を行った。IgG2およびIgG4動物の両方からの脾細胞との融合を行い、IgG2ハイブリドーマ上澄みサンプルがヒトプロペルジンに結合するように決定した。これらのサンプルに関し、プロペルジン機能を中和する能力について評価した。結果は、完全ヒト抗プロペルジンMoAbのいくつかがプロペルジン機能を阻止することを明らかにしている。
【0148】
(材料および方法)
(ハイブリドーマの生成)
Xenomouse動物を、全ての注射に関して足蹠経路を介して免疫化した。各注射の全体積は、マウス当たり50μlであり、または足蹠当たり25μlであった。初期注射は、マウス当たりTiterMax Goldと1:1 v/vで混合したパイロジェンフリーのDPBS中に溶かした10μgのヒトプロペルジンと一緒であった。その後、マウス当たりAdju-Phos (リン酸アルミニウムゲル)25μgと混合したパイロジェンフリーのDPBS中に溶かした10ugのヒトプロペルジンで、追加免疫を6回行い、次いで最終的な追加免疫を、マウス当たりアジュバントを含まないパイロジェンフリーDPBS中に溶かした10μgのヒトプロペルジンで行った。これらの動物を、このプロトコルを目的として第0、3、6、10、13、17、20、および24日目に免疫化し; 第29日目に融合を行った。上述の免疫化計画に従って、マウスを安楽死させ、次いで鼠径および腰部リンパ節を回収した。
【0149】
リンパ球を、組織粉砕器を使用したリンパ節の機械的破壊により遊離させ、その後、CD90ネガティブセレクションによるT細胞の枯渇が行われた。融合は、洗浄された豊富なB細胞およびATCCから購入した非分泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞、カタログ番号CRL 1580 (Kearney他, J.Immunol. 123, 1979, 1548〜1550)を、1:1の比で混合することによって行った。細胞混合物を、800gでの遠心分離によって穏やかにペレット化した。上澄みを完全に除去した後、細胞を、2〜4mLのPronase溶液(CalBiochem, カタログ番号53702; リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.5mg/ml)、2分以下で処理した。次いでウシ胎児血清(FBS)3〜5mlを添加して酵素活性を停止させ、懸濁液を、細胞融合溶液、ECFS(0.3Mスクロース、Sigma、カタログ番号S7903、0.1mM酢酸マグネシウム、Sigma、カタログ番号M2545、0.1mM酢酸カルシウム、Sigma、カタログ番号C4705)を使用して40mlの全体積に調節した。上澄みを遠心分離後に除去し、細胞を、40ml ECFS中に再懸濁した。この洗浄ステップを繰り返し、細胞を再びECFS中に再懸濁して濃度2×106細胞/mlにした。細胞融合は、融合発生器(モデルECM2001, Genetronic,Inc., San Diego, CA.)を使用して行った。使用した融合チャンバのサイズは2.0mlであり、下記の機器設定を使用した。
【0150】
アラインメント条件: 電圧: 50v、時間: 50秒
【0151】
膜破壊: 電圧: 3000v、時間: 30マイクロ秒
【0152】
融合後保持時間: 3秒
【0153】
融合後、細胞を、ハイブリドーマ融合培地: DMEM (JRH Biosciences)、15%FBS (Hyclone)、0.5×アザセリンヒポキサチン(HA) (Sigma、カタログ番号A9666)を含有し、L-グルタミン、pen/strep、OPI (オキサロアセテート、ピルベート、ウシインスリン) (全てSigmaから)およびIL-6 (Boehringer Mannheim)が補われたものに再懸濁して、37℃でかつ空気中10%のCO2で培養した。細胞を、平底96ウェル組織培養皿に、ウェル当たり4×104細胞となるように蒔いた。培養物を、ハイブリドーマ融合培地中に2週間維持し、その後、ハイブリドーマ培地: DMEM (JRH Biosciences)、15%FBS (Hyclone)であって、L-グルタミン、pen/strep (ペニシリン/ストレプトマイシン)、OPI (オキサロアセテート、ピルベート、ウシインスリン) (全てSigmaから)およびIL-6 (Boehringer Mannheim)が補われたものに移した。ハイブリドーマは、0.5×HAハイブリドーマ融合培地での生存を目的として選択し、ハイブリドーマを含有するこれらのウェルからの上澄みを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、抗原反応性に関してスクリーニングした。
【0154】
クローニングは、限られた希釈プレーティングを使用して、選択された抗原陽性ウェルに関して行った。プレートは、単一コロニーの成長に関して視覚的に検査し、次いで単一コロニーのウェルから得た上澄みを、上述の抗原特異的ELISAによってスクリーニングした。非常に反応性のあるクローンについて、Luminex機器を使用した多重ELISAによりヒトγおよびκ鎖の純度を検証するためにアッセイを行った。
【0155】
(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))
ELISAフォーマットでは、抗原被覆プレート(ヒトプロペルジン被覆プレート)上での上澄みのインキュベート、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識したマウス抗ヒトIgGを使用したヒト抗ヒトプロペルジン結合抗体の検出を行った。全ての陽性サンプルは、2組のELISAで並行して確認したが、このELISAでは、抗原被覆プレート(ヒトプロペルジン被覆プレート)上での上澄みのインキュベート、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識したマウス抗ヒトγおよびκ鎖を使用したヒト抗ヒトプロペルジン結合抗体の検出を行った。
【0156】
(LPS補体活性-C5b-9アッセイ)
ヒト血清中の補体を、マイクロタイターウェル上に固定化されているリポ多糖(LPS)によって活性化する。これは、C5b-9とLPSとの共有結合をもたらす。簡単に言うと、マイクロタイターウェル(培地結合プレート、Corning Costar)を、50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に溶かした1μg/50μl/ウェルのSalmonella typhosaからのLPS (Sigma Chemical)で、一晩、4℃で被覆した。LPS溶液を吸引した後、ウェルを、PBSに溶かした1%BSAで、室温で2時間遮断した。このインキュベーションの終わりにウェルをPBSで洗浄し、a) Mg++-EGTA-VBS緩衝液(5mMバルビツール酸ジエチル、120mM NaCl、5mM MgCl2、5mM EGTA、pH7.2)中0.4%HAS (ヒト血清アルブミン)、またはb) EDTA-VBS緩衝液(5mMバルビツール酸ジエチル、120mM NaCl、20mM EDTA)中0.4%HASで、8%正常ヒト血清と共にインキュベートした。EDAT-VBS中のサンプルは、背景対照としての役割をした。
【0157】
マイクロタイタープレートを、水浴中で1時間、37℃でインキュベートして、LPS媒介型補体活性化を発生させた。プレートをPBSで洗浄し、堆積したC5b-9を、1%遮断溶液中1:1000希釈のマウス抗ヒトC5b-9モノクローナル抗体(Quidel Corp. San Diego, CA)を添加することによって検出した。室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBSで再び洗浄し、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(Sigma、遮断溶液中1:2000希釈)を添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートをPBSで大規模に濯ぎ、3,3',5,5'テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Kirkegaard & Perry Laboratories)100μlを添加した。TMBの反応を、1Mリン酸100μlを添加することによって停止させ、プレートを、ELISAプレートリーダで、450nmで読み取った。
【0158】
C5b-9形成に対するIgG2サンプルの影響を、固定濃度のヒト血清中に3μg/mlのIgGを添加することによって評価した。C5b-9形成の阻害の程度は、上述の抗体検出システムを使用して決定した。
【0159】
(C3b-プロペルジン結合アッセイ)
ポリスチレンマイクロタイタープレート(96ウェル培地結合プレート、Corning Costar)を、PBS中のヒトC3b(0.5μg/50μl/ウェル; Calbiochem, San Diego, CA)で、一晩4℃で被覆した。C3b溶液を吸引した後、ウェルを、1%BSAを含有するPBSで2時間、室温で遮断した。C3bコーティングのないウェルは、背景対照として働いた。IgG2サンプルがC3b-プロペルジン結合を阻害する能力は、様々なIgG2サンプル(最終濃度3μg/ml)を一定濃度のプロペルジン(1nM)に添加することによって評価した。室温で2時間インキュベートした後、ウェルをPBSで大規模に濯いだ。C3b結合プロペルジンは、遮断溶液中1:1000希釈であるマウス抗ヒトプロペルジンモノクローナル抗体P#2(Quidel, San Diego, CA)を添加し、室温で1時間インキュベートしておくことによって検出した。PBSでプレートを洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(遮断溶液中、1:1000希釈)を添加し、1時間インキュベートさせた。プレートを再びPBSで完全に濯ぎ、TMB基質100μlを添加した。TMBの反応を、1Mリン酸100μlを添加することによって停止させ、プレートを、マイクロプレートリーダで、450nmで読み取った。
【0160】
(LPS補体活性化-C3cアッセイ)
ヒト血清中の補体を、マイクロタイターウェル上に固定化されているリポ多糖(LPS)によって活性化させる。これは、C3cとLPSとの共有結合をもたらす。簡単に言うと、ポリスチレンマイクロタイターウェル(培地結合プレート、Corning Codtar)を、50mM重炭酸緩衝液(pH9.5)に溶かしたSalmonella typhosaからのLPS (1μg/50μl/ウェル、Sigma Chemical)で、一晩4℃で被覆した。LPS溶液を吸引した後、ウェルを、1%BSAを含有するPBSで1時間、室温で遮断し、次いでPBSで洗浄し、氷上に置いた。Mg++-EGTA-GVB緩衝液(13mM MgCl2、13mM EGTA、ゼラチンベローナル緩衝液、pH7.3)またはEDTA-GVB緩衝液(20mM EDTA、ゼラチンベローナル緩衝液中、pH7.3)中、IgG(1μg/ml)および8%正常ヒト血清を含有するサンプルを、4℃で調製し、サンプル(50μl/ウェル)をマイクロタイタープレートに移した。
【0161】
補体を、マイクロタイタープレートを37℃で30分間加熱することによって活性化した。次いでプレートを水浴中で0℃に冷却して、さらなる補体活性化を停止させ、冷PBS-Tween(0.05% Tween 20 (商標)非イオン性界面活性剤、PBS中)で大規模に洗浄した。PBS-ウシ血清アルブミン(BSA)(2mg/ml BSAを含有するPBS)に溶かしたウサギ抗ヒトC3c (DAKO #A0062, 1:10000希釈)を添加し、室温で1時間インキュベートさせた。PBSでプレートを洗浄した後、PBS-BSA中のペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(American Qualex, 1:10000希釈)を添加し、室温で1時間インキュベートさせた。プレートを再びPBSで完全に濯ぎ、TMB基質100μlを添加した。TMBの反応を、1Mリン酸100μlを添加することによって停止させ、プレートを、マイクロプレートリーダで、450nmで読み取った。
【0162】
(結果)
11個のサンプルに関し、1) 補体副経路のリポ多糖(LPS)誘導活性化を阻害し、2) 補体タンパク質C3bとのプロペルジン結合を阻止する能力について分析した。これらのサンプルを、図1、2、および3において1.1、1.2、1.6、1.7、1.11、1.14、1.16、1.20、1.21、1.22、および1.25で示す。モノクローナル抗体#23(MoAb #23)を、陽性対照として含めた。
【0163】
IgG2上澄みサンプルのいくつかは、LPS活性化副経路アッセイにおいて3μg/mlで試験したときに(図1)、補体活性化生成物C5b-9の形成に減少を引き起こした。特に、サンプル1.1、1.6、1.11、1.16、および1.22は、C5b-9形成に≧50%の阻害を引き起こした。サンプル1.11および1.16の活性は、アッセイで陽性対照として含められた強力な遮断マウス抗ヒトプロペルジンIgG1であるMoAb #23で観察された、阻害レベルに近付いた。
【0164】
C3b-プロペルジン結合アッセイでの上澄みサンプルの分析では、LPS活性化アッセイの結果との全体的な一致が明らかにされた。特にサンプル1.6、1.11、および1.22は、C3bとのプロペルジン結合の50%以上の阻害を引き起こした(図2)。興味深いことに、LPS活性化アッセイでは活性であったサンプル1.1および1.16は、C3b-プロペルジン結合アッセイではほとんど活性を示さなかった。このことは、これらサンプルが、C3bとのプロペルジン結合を乱すことなく補体副経路機能を阻止できることを示唆している。低濃度のIgG2を含有するサンプルについても、このアッセイで実現可能な最高濃度で試験をした。表1にまとめたこの分析の結果は、0.25μg/mlが著しい効果を引き起こしたので、サンプル1.12がC3b-プロペルジン結合の有効な阻害剤であったことを示している。試験がなされたのが比較的低い濃度であるとすると、サンプル1.13はかなりの阻止活性を有するとも考えられる。
【0165】
【表1】
【0166】
第2の補体副経路アッセイを利用して、サンプル1.1および1.16が、たとえC3b-プロペルジン結合を阻止しなかったとしても補体活性化を阻害できることを確認した。このアッセイも、補体のLPS活性化に依拠するが、C5b-9の代わりに活性化生成物C3cの形成を測定する。このアッセイは、前の実施例で使用した3μg/mlの代わりにサンプル1μg/mlを用いて実施したことに留意すべきである。図1に示した結果の通り、C3cアッセイで最も活性なサンプルは、1.11および1.16であった(図3)。さらに、サンプル1.6は、副経路活性化を部分的に阻害するようであった。これらのサンプルの中で、標準的な抗プロペルジンMoAb #23と同じように活性の高いサンプルはなかった。しかし、これらのサンプルはクローンの混合物である可能性が高く、各サンプルの上澄み中に複数のIgG2種が存在する可能性がある。サンプル1.16が2つの別々の機能的アッセイで活性であるがC3b-プロペルジン結合アッセイでは不活性であったという観察結果によりこのMoAbが独自のメカニズムによって動作することが確認されたように思われる。
【0167】
上記アッセイで活性を示す前述の系列をクローニングし、補体活性化を阻害するその能力を確かめるためにさらに評価した。より具体的には、系列1.16、1.11、1.22、および1.6をクローニングし、再評価した。1.16、1.22、および1.11系列のクローンは、C3c生成を部分的に阻害するだけであることが決定された。これらの結果に基づき、系列1.16、1.22、および1.11から得られたクローンに関しては、これ以上の研究は行わなかった。しかし、1.6系列のクローンは、C3c生成の強力な阻害剤であることが決定された。1.6系列からの最有力候補クローンを1.6.2.1.3で示し、補体活性化の阻害におけるその効力を決定するためにさらに分析を行った。
【0168】
(実施例2: 抗プロペルジンモノクローナル抗体は、8%ヒト血清においてC3cおよびsC5b-9生成を阻害する)
(材料および方法)
(ヒトC3cおよびsMAC ELISAアッセイ)
Sigma S.typhosa LPS L6386 (25mg/サンプル)を使用した。LPS (3mg)を、炭酸緩衝液1ml中に溶解し、炭酸緩衝液中20μg/mlに希釈した(1:150希釈)。LPS原液は、使用前に新鮮にした。50mM炭酸緩衝液pH9.5中、20μg/ml LPSを50μl/ウェル用いて、ウェルを4℃で一晩被覆した (1μg LPS/ウェル)。
【0169】
炭酸緩衝液は、50mM原液用に50mlの滅菌H2OにNa2CO3 0.265gを溶解することによって作製した。AP緩衝液(13mM EGTA、13mM MgCl2をゼラチンベローナル緩衝液(Sigma-Aldrich、カタログ番号: G6514) pH7.3中に溶かしたもの)を作製した。陰性対照として、ゼラチンベローナル緩衝液に溶かした13mM EDTAを使用した。ヒト血清(QED BioScience,Inc.)は、ヒト血清をAP緩衝液で、またはEDTA-ゼラチンベローナル緩衝液で、16%に希釈することによって調製した。抗体サンプルは、2mg/ml BSA-PBS中180μg/mlの濃度に希釈し、STOCK Aのラベルを付けた。ストックB、C、およびDは、2mg/ml BSA-PBSでSTOCK Aを希釈した連続1:10希釈液を調製することにより作製した。
【0170】
ELISAアッセイは、下記の通り実施した。96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、ウェル当たり50μlの体積中に新しく調製したLPS 1μgで被覆した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。ウェルを200μlのPBSで3回洗浄した。100μlの遮断緩衝液(30ml PBS、300mg BSA、すなわち1% BSA)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを、200μlのPBSを使用して3回洗浄した。プレートを、引き続き氷上に保ち、ウェル当たり50μlのサンプルを添加した(4重に行った)。プレートを、水浴中で、37℃で30分間インキュベートした。プレートを、水浴から、氷-水の混合物が入っている氷バケットに移すことによって、反応を停止させた。上澄みサンプルを、氷上の0.7mlの試験管に収集し、その後、C3aおよびsC5b-9 ELISAアッセイにかけた。サンプルは、-70℃で保存した。
【0171】
ウェルを、氷冷PBS-Tween 20 (PBS中0.05% Tween 20-PBS 500ml中Tween 20が250μl)200μlを使用して3回洗浄した。洗浄は、氷上で行った。ウェルを、室温で200μlのPBSを使用して2回洗浄した。PBS-BSA(2mg/ml)中1:10000希釈のDAKO A0062ウサギ抗ヒトC3c (1次抗体)を、100μl/ウェル添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートした。ウェルを、200μlのPBSで5回洗浄した。PBS-2mg/ml BSA中1:10000希釈のAmerican Qualex (A102PU)ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(2次抗体)を、100μl添加した。抗体2.2μlを含有する溶液を調製した。プレートを、室温で1時間インキュベートした。インキュベーションの後、プレートを200μlのPBSで5回洗浄した。室温まで事前に温めた基質を添加し(100μl/ウェル)、プレートを約5分間(室温で)インキュベートした。反応を、1N H3PO4 100μlで停止させ、OD450を測定した。
【0172】
(結果)
結果を図4および5に示す。図4は、抗プロペルジン抗体を使用した生体外LPSアッセイでの、sMAC生成の用量依存性阻害を実証する。上述のように、アイソタイプPK対照抗体を使用して、sMAC生成の阻害がないことが観察される。完全に無傷の抗プロペルジン(クローン1.6.2.1.3)またはF(ab)'2抗体は、濃度10μg/mlで、sMAC生成のほぼ完全な阻害を示した。図5は、抗プロペルジン抗体を使用した生体外LPSアッセイでの、C3a生成の用量依存性阻害を実証する。上述のように、アイソタイプPK対照抗体を使用して、sMAC生成の阻害がないことが観察される。完全に無傷の抗プロペルジン(クローン1.6.2.1.3)またはF(ab)'2抗体は、濃度10μg/mlで、C3a生成の著しい阻害を示した。
【0173】
(実施例3: 心肺バイパスのチュービングループモデルにおける補体活性化の阻害に対する抗プロペルジンモノクローナル抗体の効果)
(実験設計)
この実験では、チュービングループに、健康なボランティアからの希釈血液1.5mlを満たした。チュービングループを37℃の水浴中で2時間、垂直方向に回転させて、補体活性を引き起こした。チュービングループからの血液サンプルを、補体活性化を決定するためにEDTAが事前に充填されたポリプロピレンチューブに移した。EDTAの添加によって、通常ならサンプル処理中に生ずる可能性のある別の補体活性化が防止される。血液サンプルを遠心分離にかけて、血漿を分離し、分析用に一定量分取した。
【0174】
(材料/試薬)
血液(25ml)を、ブタヘパリン125μlが入っている50mlポリプロピレンチューブに収集した。血液を、plasmalyte-148(Baxter Healthcare Corporation)で1:1に希釈して、最終的なヘパリン濃度を希釈血液1ml当たり2.5単位にした。各チューブに、700μl PBS(未処理)、無傷の抗体、またはF(ab)'2抗体を添加した(それぞれ最終濃度200μg/mlまたは133μg/ml)。陰性対照として、希釈血液1.5mlを、EDTA 48μlが入っているポリプロピレンチューブに添加した(最終濃度20mM)。陰性対照サンプルはチュービングループに添加せず、背景対照とした。
【0175】
ポリスチレンチュービング(16.5インチ)に血液サンプル1.5mlを満たし、1片のシリコーンチュービングでループ状に閉じた。チュービングを37℃の水浴中でインキュベートし、垂直方向に回転させた。37℃で2時間インキュベートした後、0.5M EDTAを事前に充填したポリプロピレンチューブ(4.0ml容量)に血液サンプルを一定分量分取した(最終的なEDTA濃度は20mM)。血液サンプルを4℃で遠心分離にかけて(2500Gで20分間)、血漿を収集した。C3a、sMAC、およびC5aのレベルをELISAにより評価した。
【0176】
(結果)
結果を図6、7、および8に示す。図6は、plasmalyte-148で1:1に希釈された血液を使用した、チュービングループモデルでのsMACレベルの生成を示す。この研究は、sMACレベルが急速に増加し、2時間でピークに達することを実証している。図7は、plasmalyte-148で1:1に希釈された血液を使用した、チュービングループモデルでのC3aレベルの生成を示す。この研究は、C3aレベルが急速に増加し、3時間でピークに達することを実証している。図8は、抗プロペルジン抗体が、用量依存的にチュービングループモデルにおいてC3a生成を効果的に阻害することを実証する。上述の研究では、完全に無傷の(クローン1.6.2.1.3)、F(ab)'2、およびFab抗プロペルジン抗体について評価した。前述の抗体の全ては、血液濃度10μg/mlで、C3a生成のほぼ完全な阻害をもたらした。
【0177】
(実施例4: 体外循環に曝された血液中の補体に対する抗プロペルジンモノクローナル抗体の効果)
(実験設計)
完全ヒト抗プロペルジンモノクローナルF(ab')2抗体断片を生成して、CPBモデルで補体活性を阻害する能力について評価した。より具体的には、以下に示されるこの研究は、小児心肺バイパス(CPB)ユニットの使用を介して体外循環に曝された血液中の補体の活性化に対する、抗プロペルジンF(ab')2抗体の効果が評価されるように設計した。簡単に言うと、小児バイパス回路は、診療治療中のその使用に一致するやり方で組み立てた。一般的なローラポンプ、人工肺、および温度調節器を使用して、2つの回路を新しく収集されたヘパリン処理済みヒト血液と共に同時に実行した。並列回路の一方の血液をF(ab')2抗プロペルジン抗体で処理したのに対し、他方の回路の血液をアイソタイプマッチ抗体で処理した。シミュレートされたCPB手順中の規則的な間隔で、血液サンプルを収集し、それによって補体活性化生成物の測定を行った。
【0178】
(試験方法)
(1) 体外循環回路を、一体化熱交換器モジュールを備えた中空糸小児用膜型人工肺(D 901 Lilliput 1; Dideco, Mirandola, イタリア)、一体化心臓切開フィルタを備えた小児静脈リザーバ(D754 Venomidicard; Dideco)、潅流チュービングセット(Sorin Biomedical,Inc., Irvine, CA)、および多流式ローラポンプを使用して組み立てた。血液に試験抗体および対照抗体を添加する効果を精密に比較するために、各実験は、同じ多流式ローラポンプを使用して並列体外循環回路で両方の血液サンプルを同時に実験にかけるステップからなっていた。
【0179】
(2) 実験の日に、新鮮なヒト全血(それぞれ約225mLを2体積)を、ブタヘパリン(1125単位)が入っているトランスファーパックに引き入れた。参加前に、ボランティアは下記のエントランス基準を満たす必要があった。
【0180】
(試験対象基準)
1. 男
2. 米国麻酔医学会(ASA)指針に基づいて格付けされたクラスI(正常、健康)
3. 年齢18〜65才の間
4. 体重は少なくとも110ポンド
【0181】
(試験除外基準)
1. 過去8週間で提供された血液
2. 血小板凝集を阻害する可能性がある、現在服用中の薬物
3. 引き入れる前の異常な血圧、脈拍数、温度、またはヘマトクリット
【0182】
(3) 抗プロペルジンF(ab')2抗体またはアイソタイプマッチ抗体対照薬剤を、収集の後トランスファーパックに添加した。各回路で使用される血液の正確な量を決定するために、トランスファーパックを計量した。使用されるヘパリンの総量は、血液1mL当たり5単位であるべきである。
【0183】
(4) 体外循環回路に血液を添加する前に、2つの1.5mL血液サンプルをトランスファーパックから取り出し、等体積のplasmalyte-148と混合した。この希釈された血液サンプルを、下記のステップ7で述べるように処理する。このサンプルは、t=0分を表す。
【0184】
(5) CPB回路に対し、32℃で450mLのplasmalyte-148で初回刺激を行い、100%酸素を使用して掃引ガスを1分当たり0.25リットルに維持しながら500mL/分で循環させた。血液を回路に添加した後に、掃引ガスを、酸素(95%)と二酸化炭素(5%)の混合物に変えた。この系に初回刺激を行ったら、プライムポートを介してリザーバに血液200mLを添加した。血液を添加した後、プライム流体(plasmalyte-148)250mLを同時に人工肺出口の遠位方向へと引き入れて、最終的な回路体積を400mLにした。pH、pCO2、pO2、および潅流液温度を、再循環期間全体を通して連続的に記録した。血液をプライム流体と共に循環させることにより、3分間にわたって完全な混合を行った。3分後、循環血液: plasmalyte-148(1:1)の一定分量3mLを回路から回収した(t=3分)(プライム流体で希釈した後の最終ヘパリン濃度は、2.5単位ヘパリン/mL希釈血液であることに留意されたい)。
【0185】
(6) 低体温下での外科手術の処置を模倣するには、下記のプロトコルに従って血液を冷却し再び温める。血液およびplasmalyte-148を混合した後、血液をa) 5分間にわたって27℃に冷却し、b) 60分間にわたるCPB循環により循環させ、c) 30分間にわたって37℃に再び温めた。
【0186】
(7) 2つの血液サンプル1.5mLを、各CPB回路から様々な時間間隔で回収した(3、8、15、30、40、50、60、68、80、90、および98分、ならびに最後のサンプル)。表2に示すタイムテーブルが観察された。
【0187】
【表2】
【0188】
(8) 血液サンプルを収集したらすぐに、2つのサンプルを個別に2000×g、4℃で遠心分離にかけて、血漿を分離した。
【0189】
(9) 得られた血漿サンプルをドライアイス上で凍結し、補体活性化アッセイにおける次の分析のために-80℃で保存した。
【0190】
(結果)
結果を図9および10に示す。
【0191】
図9は、生体外CPBモデルにおける抗プロペルジン抗体の効果を示す。より具体的には、完全に無傷の(クローン1.6.2.1.3)、aF(ab)'2、およびFab抗プロペルジン抗体について、その補体活性化阻害の効力を決定するために、様々な濃度で評価した。これらの結果は、図に示されるような各コホートのそれぞれに関する、いくつかの個体からの平均C3a値を表す。標準偏差を、垂直棒として表す。補体の明らかな活性化は、対照サンプルでのC3aレベルにより測定されるように、上述の研究で明らかに認められる。C3aレベルの著しい阻害は、完全に無傷の抗プロペルジン抗体を使用したとき(投薬量 200μg/ml血液)、ならびに133μg/ml血液でのF(ab)'2のモル当量用量が求められたときに観察された。F(ab)'2抗体が25μg/mlの用量であるときに、同等レベルの阻害が観察されたことに留意することも重要である。最後にこの研究は、抗プロペルジンFab抗体が、上述のモデルでC3a生成を効果的に阻害することも実証している。驚くべきことに、Fab抗体は、3μg/ml血液程度に低い投薬量で効力があることを実証した。
【0192】
図10は、生体外CPBモデルにおける抗プロペルジン抗体の効果を示す。より具体的には、完全に無傷の(クローン1.6.2.1.3)、aF(ab)'2、およびFab抗プロペルジン抗体について、その補体活性化阻害の効力を決定するために、様々な濃度で評価した。これらの結果は、図に示されるような各コホートのそれぞれに関する、いくつかの個体からの平均C3a値を表す。標準偏差を、垂直棒として表す。補体の明らかな活性化は、対照サンプルでのsMACレベルにより測定されるように、上述の研究で明らかに認められる。sMACレベルの著しい阻害は、完全に無傷の抗プロペルジン抗体を使用したとき(投薬量 200μg/ml血液)、ならびに133μg/ml血液でのF(ab)'2のモル当量用量が求められたときに観察された。これらの結果は、C3aレベルの測定で観察された知見と一致している。F(ab)'2抗体が25μg/mlの用量であるときに、同等レベルの阻害が観察されたことに留意することも重要である。最後にこの研究は、抗プロペルジンFab抗体が、上述のモデルでsMAC生成を効果的に阻害することも実証している。驚くべきことに、Fab抗体は、3μg/ml血液程度に低い投薬量で効力があることを実証した。
【0193】
高分解能Biacore分析を、ヒトプロペルジンを使用して抗プロペルジン抗体に関して実施した。親和性測定値を、無傷、Fab、およびF(ab)'2抗プロペルジン抗体に関して記録した。データを下記の表3に示す。
【0194】
【表3】
【0195】
本発明について、その特定の実施形態を参照しながら述べてきたが、当業者なら、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、かつ均等物に置き換えることができることを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセスステップを本発明の目的、精神、および範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。そのような修正例の全ては、本明細書に添付される特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】LPS-活性化C5b-9アッセイでのIgG2抗体の分析を示す図である。
【図2】C3b-プロペルジン結合アッセイでのIgG2抗体の分析を示す図である。
【図3】LPS-活性化C3cアッセイでのIgG2抗体の分析を示す図である。
【図4】抗プロペルジン抗体による膜侵襲複合体生成の阻害を示す図である。
【図5】抗プロペルジン抗体によるC3a生成の阻害を示す図である。
【図6】チュービングループモデルでの膜侵襲複合体の生成を示す図である。
【図7】チュービングループモデルでのC3aの生成を示す図である。
【図8】チュービングループモデルでの抗プロペルジン抗体(無傷な抗体、F(ab')2断片、およびFab断片)によるC3a生成の阻害を示す図である。
【図9】生体外心肺バイパスモデルでの抗プロペルジン抗体(無傷な抗体、F(ab')2断片、およびFab断片)による膜侵襲複合体の阻害を示す図である。
【図10】生体外心肺バイパスモデルでの抗プロペルジン抗体(無傷な抗体、F(ab')2断片、およびFab断片)によるMAC生成の阻害を示す図である。
【図11】補体活性への2つの経路を概略的に示す図である。
【図12】生殖系列(「GL」)アミノ酸配列と比較した、例示的な対象抗体軽鎖可変領域のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびJ領域を示す図である。破線は、所与のGL配列に対してアミノ酸が同一であることを示し; #は、GL配列に導入されたギャップを表す。
【図13】V-J接合(「V配列」;「J配列」)で、付加されたN配列の数;ならびにCDRの位置および長さと、様々な例示的な対象抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列について、ヌクレオチド配列を比較する図である。
【図14】生殖系列(「GL」)アミノ酸配列と比較した、例示的な対象抗体重鎖可変領域のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびJ領域を示す図である。破線は、所与のGL配列に対してアミノ酸が同一であることを示し; #は、GL配列に導入されたギャップを表す。
【図15】V-D-J接合(「V配列」;「D1配列」;および「J配列」)で、付加されたN配列の数;ならびにCDRの位置および長さと、様々な例示的な対象抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列について、ヌクレオチド配列を比較する図である。
【図16A】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16B】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16C】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16D】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16E】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16F】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。
【図17A】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図17B】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図17C】例示的な対象抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペルジンに特異的に結合することを特徴とする単離ヒト抗体。
【請求項2】
モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号31、配列番号36、および配列番号41から選択されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含んだ軽鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号59、配列番号64、および配列番号69から選択されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含んだ重鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号31を含む相補性決定領域(CDR)1、配列番号36を含むCDR2、および配列番号41を含むCDR3を含んだ軽鎖を含み、前記抗体が、配列番号59を含むCDR1、配列番号64を含むCDR2、および配列番号69を含むCDR3を含んだ重鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号14に対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号16に対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖とを含んだことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
単鎖抗体、Fab断片、およびF(ab')2断片から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
プロペルジンのトロンボスポンジン1型リピート内のエピトープに特異的に結合することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記プロペルジンがヒトプロペルジンであることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
プロペルジンと補体成分C3bとの結合を阻害することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
医薬品として許容される賦形剤を含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする単離宿主細胞。
【請求項16】
請求項14に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする単離宿主細胞。
【請求項17】
哺乳動物宿主での副補体経路の活性化を阻害する方法であって、有効量の請求項1に記載の抗体を前記宿主に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
C3c、膜侵襲複合体、およびアナフィラトキシンの1つまたは複数のレベルが低下することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アナフィラトキシンが、C3aおよびC5aから選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物宿主の副補体経路媒介型障害を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の抗体を宿主に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
第2の抗炎症薬を投与するステップをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
副補体経路媒介型障害が、炎症、急性呼吸不全症候群、心肺バイパス後炎症、敗血症性ショック、移植拒絶、熱傷、全身性エリテマトーデス、膜性腎炎、類天疱瘡、皮膚筋炎、および抗リン脂質症候群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項1】
プロペルジンに特異的に結合することを特徴とする単離ヒト抗体。
【請求項2】
モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号31、配列番号36、および配列番号41から選択されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含んだ軽鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号59、配列番号64、および配列番号69から選択されたアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含んだ重鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号31を含む相補性決定領域(CDR)1、配列番号36を含むCDR2、および配列番号41を含むCDR3を含んだ軽鎖を含み、前記抗体が、配列番号59を含むCDR1、配列番号64を含むCDR2、および配列番号69を含むCDR3を含んだ重鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号14に対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んだ軽鎖と、配列番号16に対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖とを含んだことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
単鎖抗体、Fab断片、およびF(ab')2断片から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
プロペルジンのトロンボスポンジン1型リピート内のエピトープに特異的に結合することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記プロペルジンがヒトプロペルジンであることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
プロペルジンと補体成分C3bとの結合を阻害することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
医薬品として許容される賦形剤を含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする単離宿主細胞。
【請求項16】
請求項14に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする単離宿主細胞。
【請求項17】
哺乳動物宿主での副補体経路の活性化を阻害する方法であって、有効量の請求項1に記載の抗体を前記宿主に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
C3c、膜侵襲複合体、およびアナフィラトキシンの1つまたは複数のレベルが低下することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アナフィラトキシンが、C3aおよびC5aから選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物宿主の副補体経路媒介型障害を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の抗体を宿主に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
第2の抗炎症薬を投与するステップをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
副補体経路媒介型障害が、炎症、急性呼吸不全症候群、心肺バイパス後炎症、敗血症性ショック、移植拒絶、熱傷、全身性エリテマトーデス、膜性腎炎、類天疱瘡、皮膚筋炎、および抗リン脂質症候群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【公表番号】特表2008−518636(P2008−518636A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540398(P2007−540398)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/039628
【国際公開番号】WO2006/052591
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507268020)アムゲン・フレモント・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/039628
【国際公開番号】WO2006/052591
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507268020)アムゲン・フレモント・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]