説明

抗マラリア活性を有する9a−カルバモイル−γ−アミノプロピル−および9a−チオカルバモイル−γ−アミノプロピル−アザリド

9a−カルバモイル−γ−アミノプロピル−および9a−チオカルバモイル−γ−アミノプロピル−アザリドならびにその医薬上許容される誘導体は、マラリアの処置および予防のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マラリアの処置および予防のための9a−カルバモイル−γ−アミノプロピル−および9a−チオカルバモイル−γ−アミノプロピル−アザリドならびにその医薬上許容される誘導体の使用に関する。
【0002】
技術的課題
本発明は、マラリアを処置するためにこれまで使用されていない、マラリア寄生体が耐性を発達させていない抗マラリア剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
マラリアは、重篤な感染症である。毎年2〜3億人がマラリアに感染し、200〜300万人がマラリアで死亡する。疾患は、雌性ハマダラカによって伝染する寄生体(プラスモディウム属の原虫)によって引き起こされる。ヒトに影響をもたらし得る4つの寄生体(熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫および四日熱マラリア原虫)が存在する。熱帯熱マラリア(熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされる)、三日熱マラリア(三日熱マラリア原虫または卵形マラリア原虫によって引き起こされる)、および四日熱マラリア(四日熱マラリア原虫によって引き起こされる)が区別される。熱帯熱マラリアが疾患の最も重篤な形態であり、重篤な全身症状によって特徴づけられ、そして時々死亡を引き起こす。
【0004】
マラリアは、体内での寄生体の新たな世代の発達に必要とされる時間に依存する間隔で生じる悪寒、発熱および発汗の発作によって特徴づけられる。急性発作からの回復の後、疾患は、時々の再発をともなって、慢性的になる傾向を有する。この疾患は、ブラジルのアマゾン地域、東および南アフリカならびに東南アジアを含む世界の熱帯および亜熱帯地域で蔓延している。マラリアの万能薬として大量に使用される薬物であるクロロキンに対して耐性なマラリア寄生体の出現が深刻な問題になっており、それゆえ有効な治療薬を開発する差し迫った必要性が存在する。また、マラリアワクチンを開発する試みは失敗している。このことは、マラリアを処置するための代替の薬物に基づくアプローチを見出す差し迫った必要性を上乗せする。
【0005】
多様な化学クラスの薬物(例えば、クロロキン、メフロキン、ハロファントリン、アルテミシニン、アドバコン/プログアニル(Malarone(登録商標))、ドキシサイクリンおよびプリマキン)がマラリアの処置のために開発されている。しかし、マラリアのいくつかの株に対してわずかに成功したが、マラリアの大部分の株は個々の薬物に対してだけでなく多数の組み合わせの薬物に対しても耐性を発達させているようである。はじめは作用した薬物が、ある期間の後に全く無効になる。寛解のはじめの期間の後に、疾患に対して何も有効でないように思われる期間がしばしば続く。これは多剤耐性として知られ、抗マラリア薬物開発の努力における問題点のままである。1つ以上の薬物による処置に対してはじめは応答したマラリア寄生体が、以前に使用された薬物だけでなく、多くの他の抗マラリア薬物を使用した処置にも耐性になる。このことは、マラリアに対する良好な効力および最小の毒性を示す新たな化合物を見出す差し迫った必要性をさらに強調する。
【0006】
近年、マクロライドがマラリアに対する予防的および治療的な使用についての潜在力を有すことをいくつかの報告が示した。1989年にプラスモディウム・ベルゲイ(ネズミマラリア原虫)およびプラスモディウム・ヨエリ(マウスマラリア原虫)ナイジェリエンシス(マウス)ならびにプラスモディウム・サイノモルギ(カニクイザルマラリア原虫)(アカゲザル)を使用する2つの感染症モデルにおいてミデカマイシニン(midecamycinin)が研究された(S. K. Puri and G. P. Duti, Chemotherap.35 (1989) 187)。両方のマウスモデルにおいて、ミデカマイシニンは活性であった。ネズミマラリア原虫感染症についての用量は、マウスマラリア原虫ナイジェリエンシスについての用量より有意に低かった。サルモデルにおいて、効力は示されなかった。他の研究において、動物モデルがアジスロマイシンを用いて検証された(S. K. Puri and N. Singh, Exp. Parasitol. 94 (2000) 8)。25〜50mg/kgの用量養生法は、抗細菌処置のために使用される同じ用量を反映している。予防的および治療的投薬においてアジスロマイシンは作用し、ミデカマイシニンとは対照的にサルモデルにおいてもアジスロマイシンは活性であった。
【0007】
マラリア感染症に対する処置におけるアジスロマイシンの効力が、ガンビアにおいて研究された(S. T. Sadiq et al, Lancet 1995 30, 346,881)。トラコーマのための治療(アジスロマイシンはトラコーマクラミジアに対して高度に有効である)を受けている子供はまた、マラリア予防または治療効果の兆候について試験された。マラリア感染症の種々の指標の明らかな改善は、アジスロマイシンの有意な治療上の利点を示唆した。アジスロマイシンの予防的効力は、ケニアにおいて確認された(S. L. Anderson et al., Ann. Intern. Med. 123, 771)。一週1000mgの養生法に対して一日250mgの投薬スキームの使用を通して得られたより良好な予防をともなって、成人ボランティアにおける有意な防御が達成された。また、インドネシアのイリアンジャヤにおけるアジスロマイシンを用いた二重盲検プラセボ対照試験(W. R. Taylor et al., Clin. Infect. Dis. 28 (1999) 522)において、アジスロマイシン処置された非免疫患者における予防的効力は、コントロールと比較して熱帯熱マラリア原虫について71.6%、および三日熱マラリア原虫について98.9%であった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
9a−カルバモイル−γ−アミノプロピル−および9a−チオカルバモイル−γ−アミノプロピル−アザリドが抗マラリア活性を有することが見出された。それゆえ、これらの化合物はマラリアの処置および予防において使用され得る。
【0009】
本発明は、一般式(I):
【化1】

(I)
[式中、
Rは、Hまたは式(II):
【化2】

(II)
で表されるクラジノース糖であり;
は、Hまたはβ−シアノエチル基であり;
は、C1−4アルキル、−(CH−Arであり、ここで、Arは非置換のまたはハロゲン、C1−6ハロアルキル、C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシの1つ以上によって置換された10個までの炭素原子の単環式または二環式芳香環であり、そしてmは0〜3であるか;あるいは
は、式(III):
【化3】

(III)
[式中、RはH、C1〜C4アルキルまたはハロゲンである]
で表される置換アリール基であり、
Xは、酸素または硫黄である]
によって表される9a−カルバモイルおよびチオカルバモイルアザリド
およびその医薬上許容される誘導体
を投与する工程を包含する、マラリアを処置または予防する方法に関する。
【0010】
本発明はまた、マラリア疾患の予防またはそれとの闘いにおける式Iで表される化合物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
いくつかの実施態様において、マラリアを処置または予防する方法は式(I):
[式中、
Rは、Hまたは式(II):
【化4】

(II)
で表されるクラジノース糖であり;
は、Hまたはβ−シアノエチル基であり;
は、イソプロピル、1−ナフチル、2−ナフチル、ベンジル、2−(トリフルオロメチル)フェニル、3−フェニルプロピル、β−フェニルエチル、エトキシカルボニルメチル、1−(1−ナフチル)エチル、3,4,5−トリメトキシフェニルもしくは2,4−ジクロロフェニル基であるか;または
は、式(III):
【化5】

(III)
[式中、Rは2−メチル、4−メチルまたは2−クロロである]
で表される置換アリール基であり、
Xは、酸素または硫黄である]
で表される化合物
およびその医薬上許容される誘導体
を投与する工程を包含する。
【0012】
特に好ましい化合物は、以下を含む:
【化6】

【化7】

【化8】

【0013】
式Iで表されるアザリド化合物は、国際特許出願WO2004/052904およびWO2004/043984(その全体を出典明示で援用する)記載の方法によって調製され得る。特に、例えばWO2004/052904の5〜6頁記載のプロセスに従って化合物は調製され得る。
【0014】
式Iで表される化合物の調製において使用される中間体の保護された誘導体を使用することが望ましくあり得ることは、当業者によって理解される。官能基の保護および脱保護は、当該分野において公知の方法によって行われ得る。ヒドロキシル基またはアミノ基は、任意のヒドロキシル保護基またはアミノ保護基を用いて保護され得る(例えば、Green and Wuts. Protective Groups in Organic Synthesis. John Wiley and Sons, New York, 1999に記載のように)。保護基は、従来の技術によって除去され得る。例えば、アシル基(例えば、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基およびアリーロイル基)は、加溶媒分解によって(例えば、酸性または塩基性条件下での加水分解によって)除去され得る。アリールメトキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル)は、触媒(例えば、パラジウム−炭)の存在下での水素化分解によって切断され得る。
【0015】
当業者に周知である標準的な技術を使用して、最後から2番目の中間体に存在する任意の保護基を除去することによって、標的化合物の合成は完了する。次いで、必要に応じて標準的な技術(例えば、シリカゲルクロマトグラフィー、シリカゲル上でのHPLC等)を使用してまたは再結晶化によって、脱保護された最終生成物は精製される。
【0016】
用語「塩」は、酸付加塩または遊離塩基の付加塩を含み得る。医薬上許容される酸付加塩を形成するために用いられ得る酸の例としては、限定するものではないが、非毒性無機酸(例えば、硝酸、リン酸、硫酸または臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸)から誘導される塩、ならびに非毒性有機酸(例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシルアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸、ならびに酢酸、マレイン酸、コハク酸またはクエン酸)から誘導される塩が挙げられる。そのような塩の非限定的な例としては、ナパジシル酸塩、ベシル酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられる。アミノ酸の塩(例えば、アルギネート(arginate)など)およびグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩もまた意図される(例えば、Berge S. M. et al. “Pharmaceutical Salts,” J. of Pharma. Sci., 1977; 66:1を参照のこと)。
【0017】
従来の方法で遊離塩基形態を充分量の所望の酸と接触させて塩を生じさせることによって塩基性化合物の酸付加塩は調製される。従来の方法で塩形態を塩基と接触させ、そして遊離塩基を単離することによって、遊離塩基形態が再生され得る。特定の物理的性質(例えば、極性溶媒中での溶解度)において、遊離塩基形態はそのそれぞれの塩形態といくらか異なるが、その他の点では本発明の目的のために塩はそのそれぞれの遊離塩基と等価である。
【0018】
医薬上許容される塩基付加塩は、金属またはアミン(例えば、アルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミン)を用いて形成される。陽イオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミンおよびプロカインである。
【0019】
従来の方法で遊離酸形態を充分量の所望の塩基と接触させて塩を生じさせることによって酸性化合物の塩基付加塩は調製される。塩形態を酸と接触させ、そして遊離酸を単離することによって、遊離酸形態は再生され得る。
【0020】
本発明の組成物に関連して使用される用語「医薬上許容される」は、生理学的に許容できそして哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合に不都合な反応を代表的には生じない分子体およびそのような組成物の他の成分をいう。好ましくは、本明細書で使用される用語「医薬上許容される」は、連邦もしくは州政府の監督官庁によって承認されるか、または哺乳動物、より特定するとヒトにおける使用のために米国薬局方または他の一般に認められている薬局方において列挙されていることを意味する。
【0021】
本明細書で使用される用語「医薬上許容される誘導体」は、レシピエントへの投与に際して本発明の化合物またはその活性な代謝産物もしくは残基を(直接的にまたは間接的に)提供可能である本発明の化合物の任意の医薬上許容される塩、溶媒和化合物またはプロドラッグ(例えば、エスエル)を意味する。そのような誘導体は、過度の実験なしに当業者に認識可能である。それにもかかわらず、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1:Principles and Practice(そのような誘導体の教示の範囲で出典明示で援用する)の教示に言及する。好ましい医薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和化合物、エステル、カルバメートおよびリン酸エステルである。特に好ましい医薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物およびエステルである。最も好ましい医薬上許容される誘導体は、塩およびエステルである。
【0022】
式Iで表される化合物は、1つ以上の担体とともに投与され得る。本発明の医薬組成物に適用される用語「担体」は、それとともに活性化合物が投与される希釈剤、賦形剤またはビヒクルをいう。そのような医薬担体は無菌の液体(例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、グリセロール水溶液および油(石油、動物、植物または合成起源のもの(例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラル油、ゴマ油など)を含む))であり得る。適切な医薬担体は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences” by E.W. Martin, 18th Editionに記載される。即時遊離(すなわち、短期間(例えば60分以下)にわたっての有効成分の大部分または全部の遊離)に適切な担体は、本発明のために特に好ましく、そして薬物の迅速な吸収を可能にする。
【0023】
本発明はまた、式Iで表される化合物のプロドラッグ、すなわち、哺乳動物被験体に投与された場合にインビボで式Iで表される活性親薬物を遊離する化合物を含む。式Iで表される化合物のプロドラッグは、インビボで修飾が切断されて親化合物が遊離され得るように式Iで表される化合物に存在する官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、式Iで表される化合物のヒドロキシ基、アミノ基、またはカルボキシ基が、インビボで切断されて遊離のヒドロキシル基、アミノ基またはカルボキシ基をそれぞれ再生し得る任意の基に結合される、式Iで表される化合物を含む。プロドラッグの例としては、限定するものではないが、生理的pHにした際にもしくは酵素作用を通じて活性親薬物に変換される式Iで表される化合物のエステル(例えば、酢酸エステル、ギ酸エステルおよび安息香酸エステル誘導体)または任意の他の誘導体が挙げられる。
【0024】
本発明はまた、式Iで表される化合物の溶媒和物またはその塩を含む。好ましい溶媒和物は水和物である。
【0025】
式Iで表される化合物は1つ以上のキラル中心を有し、そして個々の置換基の性質に依存して、それらはまた、幾何異性体を有し得る。空間におけるその原子の配置において異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いの鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、そして互いの重ね合わせることができない鏡像であるものは「鏡像異性体」と呼ばれる。化合物がキラル中心を有する場合、1対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体はその不斉中心の絶対立体配置によって特徴付けられ得、カーンおよびプレローグのR−およびS−順位則によって記載されるか、または分子が偏光の平面を回転させる様式によって記載され、そして右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ(+)または(−)異性体)と命名される。キラル化合物は、個々の鏡像異性体としてまたは鏡像異性体の混合物としてのいずれかで存在し得る。同等の割合の鏡像異性体を含む混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。本発明は、式Iで表される化合物の全ての個々の異性体を含む。明細書および請求の範囲における特定の化合物の記載または命名は、個々の鏡像異性体およびその混合物(ラセミまたはその他、すなわち、1つ以上の異性体が富化された)の両方を含むことが意図される。立体化学の決定および立体異性体の分割のための方法は、当該分野において周知である。
【0026】
本明細書で基または基の一部として使用される用語「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の炭化水素鎖をいう。例えば、C1−6アルキルは1〜6個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキル鎖を意味し;そのような基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、3−メチルブチル、ヘキシルおよび2,3−ジメチルブチルなどが挙げられる。同様に、用語C1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキル鎖を意味する。
【0027】
本明細書で基または基の一部として使用される用語「アルケニル」は、特定の数の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含む直鎖状または分枝状の炭化水素鎖をいう。例えば、用語「C2−4アルケニル」は少なくとも2個および多くとも4個の炭素原子を含み、そして少なくとも1つの二重結合を含む直鎖状または分枝状のアルケニルを意味する。本明細書で使用される「アルケニル」の例としては、限定するものではないが、エテニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、2−メチルブト−2−エテニルが挙げられる。形態−O−C2−6アルケニルの基において二重結合は好ましくは酸素に隣接しないことが理解される。
【0028】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、特定の数の炭素原子を含む酸素原子を通じて親分子部分に結合された直鎖状または分枝状の鎖C1−5アルキル(以前に定義したような)をいう。例えば、C1−4アルコキシは、少なくとも1個および多くとも4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルコキシを意味する。本明細書で使用される「アルコキシ」の例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、プロプ−2−オキシ、ブトキシ、ブト−2−オキシ、2−メチルプロプ−1−オキシおよび2−メチルプロプ−2−オキシが挙げられる。
【0029】
用語「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、1つ以上のハロゲン(ここで、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子である)で置換された「アルキル」基および「アルコキシ」基(以前に定義したような)をいう。
【0030】
本明細書で使用される用語「アリール」は、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含む、1個または2個の芳香環を有する単環式または二環式炭素環式環系をいう。
【0031】
製剤の型に依存して、式Iで表される一つ以上の化合物の治療有効量に加えて、それらは医薬用途のための固体または液体の賦形剤または希釈剤、およびおそらく医薬製剤の調製において通常使用される他の添加物(例えば、増粘剤、凝集剤、潤滑剤、崩壊剤、香味剤および着色剤)を含む。
【0032】
「医薬上許容される賦形剤」は、一般に安全であり、非毒性であり、そして生物学的またはそのほかの点でも所望されないことのない、医薬組成物の調製において有用である賦形剤を意味し、獣医学用途およびヒト医薬用途に許容される賦形剤を含む。本出願において使用される「医薬上許容される賦形剤」は、1つのおよび1つより多くのの両方のそのような賦形剤を含む。
【0033】
マラリアの「処置(treating)」または「処置(treatment)」は以下を包含する:
i.寄生体と接触した哺乳動物中で発達するマラリアの臨床症状の出現の予防または遅延。
ii.マラリアの阻害、すなわち、マラリアの発達またはその再発または少なくとも1つのその臨床もしくは準臨床症状の停止、減少または遅延、あるいは、
iii.1つ以上のマラリアの臨床または準臨床症状の軽減または減弱。
【0034】
処置されるべき被験体にとっての利点は、統計学的に有意であるか、または少なくとも患者もしくは医師にとって知覚できるものであるかのいずれかである。
【0035】
マラリアの「予防的処置」は、マラリアを発達させる危険性のある被験体を処置することを包含する。これは、マラリアを有するカに曝露された被験体の処置、マラリアが風土性である国に旅行することを意図する被験体の処置、およびマラリアを有するカに対する曝露のその他の危険を冒す被験体の処置を含む。
【0036】
準臨床症状の「軽減」の例は、炎症誘発性サイトカインもしくはリンホカインを分泌する免疫細胞数における減少、またはそのようなリンホカインもしくはサイトカインをコードするmRNAにおける減少の処置された個体における観察である。
【0037】
「維持療法」は急性期の後のマラリア期の間の療法であり、ここで疾患の次回の再発まで1つ以上の疾患の症状の寛解(完全なまたは部分的な)を寄生体は達成する。三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫寄生体は、数年間無症状のままであり得る休眠肝臓期を有する。これらの株のための維持療法は、特に重要である。急性期の特徴は、悪寒、発熱のような症状を含む。
【0038】
「応答体」は、特定の量での特定の活性薬剤(または活性薬剤の組み合わせ)の投与を含む非感染性炎症性疾患のための処置に以前に応答した患者をいう。
【0039】
「被験体」は動物をいい、これは好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトまたは家畜である。最も好ましくは、被験体はヒトである。本明細書で使用される用語患者は、被験体と同義に使用される。
【0040】
「治療有効量」は、状態、障害または体調を処置するために哺乳動物に投与される場合に、そのような処置をもたらすために充分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度ならびに処置されるべき哺乳動物の年齢、体重、健康状態および反応性に依存して変動する。
【0041】
医薬組成物
本発明の方法における使用のために式Iで表される化合物はバルク物質として投与され得ることが可能であるが、有効成分を医薬製剤中で与えることが好ましい(例えば、ここで、薬剤は意図される投与経路および標準的な医薬実施に関して選択される医薬上許容される担体と混合されている)。
【0042】
「医薬上許容される賦形剤」は、一般に安全であり、非毒性であり、そして生物学的またはそのほかの点でも所望されないことのない、医薬組成物の調製に有用である賦形剤を意味し、獣医学用途およびヒト医薬用途のために許容される賦形剤を含む。本出願において使用される「医薬上許容される賦形剤」は、1つのおよび1つより多くのの両方のそのような賦形剤を含む。
【0043】
用語「担体」は、それとともに活性化合物が投与される希釈剤、賦形剤および/またはビヒクルをいう。本発明の医薬組成物は、1つより多い担体の組み合わせを含み得る。そのような医薬担体は、無菌の液体(例えば水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、グリセロール水溶液)および油(石油、動物、植物または合成起源のもの(例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラル油、ゴマ油など)を含む)であり得る。水または水溶液生理食塩水ならびにブドウ糖水溶液およびグリセロール水溶液は、好ましくは担体(特に注射用溶液のための)として用いられる。適切な医薬担体は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”,by E.W. Martin 18th Editionに記載される。
【0044】
本発明の化合物は、ヒト医学または獣医学における使用のための任意の簡便な方法での投与のために製剤され得、そしてそれゆえ本発明はその範囲にヒト医学または獣医学における使用のために適応された本発明の化合物を含む医薬組成物を含む。そのような組成物は、1つ以上の適切な担体の助けによって従来の方法での使用のために与えられ得る。治療的使用のために許容される担体は医薬分野において周知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載される。医薬担体の選択は、意図される投与経路および標準的な医薬実施に関して選択され得る。医薬組成物は、さらに担体として任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コート剤および/または可溶化剤を含み得る。
【0045】
本発明に従う使用のための医薬組成物は、経口、非経口、経皮、吸入、舌下、局所、移植、鼻内、または経腸的に投与される(または他の粘膜的に投与される)懸濁液、カプセルあるいは錠剤(1つ以上の医薬上許容される担体または賦形剤を使用して従来の方法で製剤され得る)の形態であり得る。
【0046】
異なる送達システムに依存して異なる組成物/製剤の要件が存在し得る。全ての化合物が同じ経路によって投与される必要があるわけではないことが理解されるべきである。同様に、組成物が1つより多い活性成分を含む場合、それらの成分は異なる経路によって投与され得る。例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを使用してまたは粘膜経路によって、例えば鼻内噴霧または吸入用エアロゾルまたは摂取可能溶液として、あるいは、非経口で(ここで、例えば静脈内、筋肉内または皮下経路による送達のために注射用形態によって組成物が製剤される)送達されるように製剤され得る。あるいは、製剤は多数の経路によって送達されるように設計され得る。
【0047】
本発明はさらに、医薬上許容されるビヒクルと混合された治療有効量の式Iで表される化合物またはその塩の1つを含む医薬製剤に関する。本発明の医薬製剤は、経口および/または非経口投与に適切である液体(例えば、使用の用意ができているかまたは凍結乾燥された産物の希釈によって調製される点滴剤、シロップ、溶液、注射用溶液)であり得るが、好ましくは錠剤、カプセル、顆粒剤、散剤、ペレット剤、膣坐薬、坐薬、クリーム、軟膏(salve)、ゲル、軟膏(ointment)として固体または半流動体であるか;あるいは経皮経路または吸入による投与に適切な溶液、懸濁液、乳剤または他の形態である。
【0048】
本発明の化合物は、即時、遅延、改変、持続、パルスまたは制御放出適用のために投与され得る。
【0049】
最も好ましい経口組成物は、緩、遅延または位置付け放出(例えば、腸内、特に結腸放出)錠剤またはカプセル錠である。この放出プロフィールは、限定するものではないが、胃内の条件に対して耐性であるが、病変または炎症部位が同定された結腸または胃腸管の他の部分において内容物を放出するコーティングの使用によって達成され得る。または、単に緩慢に崩壊するコーティングによって遅延放出が達成され得る。または、2つ(遅延および位置付け放出)のプロフィールは、1つ以上の適切なコーティングおよび他の賦形剤の選択によって単一の製剤において組み合わせられ得る。そのような製剤は、本発明のさらなる特徴を構成する。
【0050】
遅延もしくは位置付け放出および/または腸溶コートされる経口製剤のための適切な組成物は、耐水性である、pH感受性である、腸液によって消化または乳化される、あるいは湿った場合に緩慢だが規則的な速度で脱ぎ去られる材料でフィルムコートされる錠剤製剤を含む。適切なコート材料は、限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸(metacrylic acid)のポリマーおよびそのエステルならびにその組み合わせを含む。可塑剤(例えば、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、フタル酸ジブチル、トリアセチンおよびヒマシ油)が使用され得る。色素もまた、フィルムを着色するために使用され得る。坐薬は、ココアバター、坐薬基剤(例えば、Suppocire CおよびSuppocire NA50(Gattefosse Deutschland GmbH、D−Weil am Rhein, Germanyによって供給される)ならびに水素添加パーム油およびパームカーネル油(C〜C18トリグリセリド)のエステル交換、グリセロールおよび特定の脂肪酸のエステル化によって得られる他のSuppocire型賦形剤、またはポリグリコシル化グリセリド、ならびにwhitepsol(添加剤を含む水素添加植物油誘導体))のような担体を使用することによって調製される。本発明による適切な活性化合物、および懸濁のための溶剤または賦形剤を使用することによって、浣腸は製剤される。微粉化化合物、ならびに以下のような懸濁物安定化剤、増粘剤および乳化剤を含む適切なビヒクルを使用することによって懸濁物は生産される:カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシビニルポリマーおよびその塩、アルギン酸およびその塩、プロピレングリコールアルギネート、キトサン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミドポリマー、ポリビニルメタクリレート、ポリエチレングリコール、プルロニック、ゼラチン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、可溶性デンプン、プルランおよびアクリル酸メチルおよび2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマー、レシチン、レシチン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水和ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびプルロニックならびにpH範囲6.5〜8の適切な緩衝系。防腐剤、マスキング剤の使用は適切である。微粉化粒子の平均直径は1〜20μmの間であり得えるか、または1μm未満であり得る。化合物はまた、その水溶性塩形態を使用することによって、製剤に取り入まれ得る。
【0051】
あるいは、材料は錠剤のマトリックス(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースまたはアクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー)に取り込まれ得る。これらの後者の材料はまた、圧縮コーティングよって錠剤に適用され得る。
【0052】
投与の方法に依存して、異なる形態を有し得る医薬上許容される担体と治療有効量の活性物質を混合することによって医薬組成物は調製され得る。従来の医薬賦形剤および調製の方法を使用することによって、医薬組成物は調製され得る。経口投与のための形態は、カプセル、散剤または錠剤であり得る。ここで、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マニトールを含む通常の固体ビヒクル、ならびに、限定するものではないが、エタノール、グリセロールおよび水を含む通常の液体経口賦形剤が添加され得る。全ての賦形剤は、崩壊剤、溶媒、粒化剤、湿潤剤および結合剤と混合され得る。経口組成物の調製のために固体担体が使用される場合(例えば、デンプン、糖、カオリン、結合剤、崩壊剤)、調製物は、限定するものではないが、散剤、顆粒もしくはコートされた粒子を含むカプセル、錠剤、硬カプセル、または顆粒剤の形態であり得、そして固体担体の量は変動し得る(1mg〜1gの間)。錠剤およびカプセルは、好ましい経口組成物形態である。
【0053】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、例えば溶液、懸濁物または乳剤を含む意図される投与方法に適切な任意の形態であり得る。溶液、懸濁物および乳剤の調製において、液体担体が代表的には使用される。本発明の実施における使用が意図される液体担体は、例えば水、生理食塩水、医薬上許容される有機溶剤、医薬上許容される油または油脂など、ならびにその2つ以上の混合物を含む。液体担体は、他の適切な医薬上許容される添加物(例えば、可溶化剤、乳化剤、栄養剤、緩衝剤、防腐剤、懸濁剤、増粘剤、粘性調節剤、安定剤など)を含み得る。適切な有機溶剤は、例えば一価アルコール(例えば、エタノール)、および多価アルコール(例えば、グリコール)を含む。適切な油は、例えば大豆油、ココナッツ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などを含む。非経口投与について、担体はまた油性エステル(例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなど)であり得る。本発明の組成物はまた、微小粒子、微小カプセル、リポソームカプセルなど、ならびにその任意の2つ以上の組み合わせの形態であり得る。
【0054】
本発明において有用な経口組成物のための医薬上許容される崩壊剤の例としては、限定するものではないが、デンプン、アルファ化デンプン、グリコール酸デンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、微結晶性セルロース、アルギン酸塩、樹脂、界面活性剤、発泡性組成物、水性ケイ酸アルミニウムおよび架橋ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0055】
本明細書における有用な経口組成物のための医薬上許容される結合剤の例としては、限定するものではないが、アカシア;セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース);ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリエチレングリコールまたはベントナイトが挙げられる。
【0056】
経口組成物のための医薬上許容される充填剤の例としては、限定するものではないが、ラクトース、アンヒドロラクトース、ラクトース一水和物、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、セルロース(特に微結晶性セルロース)、ジヒドロまたはアンヒドロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムが挙げられる。
【0057】
本発明の組成物において有用な医薬上許容される潤滑剤の例としては、限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびコロイド状二酸化ケイ素が挙げられる。
【0058】
経口組成物のための適切な医薬上許容される着臭剤の例としては、限定するものではないが、合成芳香および天然芳香油(例えば、油、花、果実(例えば、バナナ、リンゴ、スミノミザクラ、モモ)およびその組み合わせの抽出物)、ならびに類似の芳香が挙げられる。その使用は多くの因子に依存し、医薬組成物を服用する集団に対する感覚受容の許容性が最も重要である。
【0059】
経口組成物のための適切な医薬上許容される色素の例としては、限定するものではないが、合成色素および天然色素(例えば、二酸化チタン、βカロテンおよびグレープフルーツ皮の抽出物)が挙げられる。
【0060】
経口組成物のための医薬上許容される甘味料の適切な例としては、限定するものではないが、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクトースおよびスクロースが挙げられる。
【0061】
医薬上許容される緩衝剤の適切な例としては、限定するものではないが、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0062】
医薬上許容される界面活性剤の適切な例としては、限定するものではないが、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートが挙げられる。
【0063】
医薬上許容される防腐剤の適切な例としては、限定するものではないが、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、四級アンモニウム塩およびパラベン(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなど)))が挙げられる。
【0064】
医薬上許容される安定剤および抗酸化剤の適切な例としては、限定するものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ尿素、トコフェロールおよびブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。
【0065】
本発明の化合物はまた、例えば坐薬(例えば、ヒト医学もしくは獣医学における使用のための従来の坐薬基剤を含む)として、または膣坐薬(例えば、従来の膣坐薬基剤を含む)として製剤され得る。
【0066】
本発明による化合物は、局所投与のために、ヒト医学および獣医学における使用のために、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、シャンプー、散剤(噴霧または散布粉剤を含む)、膣坐薬、タンポン、噴霧剤、ディップ、エアロゾル、点滴剤(例えば、目、耳もしくは鼻点滴剤)またはポアオン(pour-on)の形態で製剤され得る。
【0067】
皮膚への局所的な適用のために、本発明の薬剤は例えば以下の1つ以上との混合物中に懸濁または溶解された活性化合物を含む適切な軟膏として製剤され得る:ミネラル油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。そのような組成物はまた、他の医薬上許容される賦形剤(例えば、ポリマー、油、液体担体、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、安定剤、抗酸化剤、湿潤剤、軟化剤、着色料および着臭剤)を含み得る。
【0068】
そのような局所組成物に適切な医薬上許容されるポリマーの例としては、限定するものではないが、アクリルポリマー;セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース);天然ポリマー(例えば、アルギン酸塩、トラガカント、ペクチン、キサンタンおよびシトサン(cytosan))が挙げられる。
【0069】
示すように、本発明の化合物は鼻腔内にまたは吸入によって投与され得、そして適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン(例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134AT””)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA))、二酸化炭素あるいは他の適切なガス)を使用して、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザからの乾燥散剤吸入器またはエアロゾル噴霧剤提示の形態で簡便に送達される。加圧エアロゾルの場合、計量される量の送達のための弁を提供することによって、投与量単位は決定され得る。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザは、例えば溶剤としてのエタノールおよび噴霧剤の混合物(これは、潤滑剤(例えば、トリオレイン酸ソルビタン)をさらに含み得る)を使用して、活性化合物の溶液または懸濁物を含み得る。
【0070】
吸入器または注入器における使用のためのカプセルおよび薬包(例えば、ゼラチンから作製される)は、化合物および適切な散剤基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)の散剤混合物を含むように製剤され得る。
【0071】
吸入による局所投与のために、本発明による化合物は、ヒト医学または獣医学における使用のためにネブライザを介して送達され得る。
【0072】
本発明の医薬組成物は、0.01〜99%(w/v)の活性物質を含み得る。局所投与について、例えば組成物は一般に0.01〜10%、より好ましくは0.01〜1%の活性物質を含む。
【0073】
本発明の化合物の治療有効量は、当該分野において公知の方法によって決定され得る。治療有効量は、年齢および患者の一般的な生理学的状態、投与経路および使用される医薬製剤に依存する。被験体に感染したマラリア寄生体の株によってもまたそれは決定される。治療用量は一般に約10〜2000mg/日の間であり、好ましくは約30〜1500mg/日の間である。例えば50〜500mg/日、50〜300mg/日、100〜200mg/日を含む、他の範囲が使用され得る。予防的処置に必要とされる化合物の量(予防有効投与量という)は、治療的処置について記載されるものと一般に同じである。
【0074】
投与は1日に1度、1日に2度またはそれより多くであり得、そして疾患または障害の維持期の間に減少され得る(例えば、毎日または1日に2回の代わりに2〜3日ごとに1回)。用量および投与頻度は、当業者に公知の急性期の少なくとも1つ以上、好ましくは1つより多くの臨床徴候の減少または非存在を有して、寛解期の維持を確認する臨床症状に依存する。
【実施例】
【0075】
実施例
本発明の特徴および利点を、以下の非限定的な実施例によってより完全に示す。
【0076】
実施例中で提供された実験において、本発明の化合物の治療効果を決定した。
【0077】
実施例1
インビトロスクリーニングプロトコル
内因性抗マラリア活性についてのインビトロでのスクリーニングは、Desjardins RE, Canfield CJ, Haynes JD, Chulay JD. (半自動微量希釈技術によるインビトロでの抗マラリア活性の定量的評価. Antimicrob Agents Chemother. 1979 Dec;16(6):710−8.)、Chulay JD, Haynes JD, Diggs CL. (熱帯熱マラリア原虫:[H]ヒポキサンチン取り込みによるインビトロ増殖の評価. Exp. Parasitol. 1983 55:138−146.)、およびMilhous WK, Weatherly NF, Bowdre JH, Desjardins RE. (抗葉酸性(antifol)抗マラリア薬物に対する耐性のインビトロでの活性および機構. Antimicrob Agents Chemother. 1985 Apr;27(4):525−30.)によって記載される手順の改変に基づいた。システムを赤血球無性生活環に対する内因性の活性(血液殺シゾント薬)の評価に限定した。全てのアッセイについて、CDC/Indochina III (W−2)およびCDC/Sierra Leone I (D−6)由来の2つの熱帯熱マラリア原虫クローン(Oduola AM, Weatherly NF, Bowdre JH, Desjardins RE.熱帯熱マラリア原虫:単一赤血球顕微操作によるクローニングおよびインビトロでの不均一性. Exp Parasitol. 1988 66(1):86−95.)を使用した。プレスクリーニングアッセイについて、TM91C235(タイ由来の多剤耐性単離物)を使用した。W−2はクロロキン、キニーネおよびピリメタミンに耐性であり、メフロキンに対して感受性である。D−6はメフロキンに対してより耐性であり、クロロキン、キニーネおよびピリメタミンに対して感受性である傾向がある。この段落において引用する全ての文献の全体を出典明示で援用する。
【0078】
6%洗浄ヒトA陽性(A+)(赤血球、25mM Hepes、32nM NaHCO、および10%熱不活化A+ヒト血漿またはALBUMAX(登録商標)(多脂質ウシ血清アルブミン;Invitrogen, Carlsbad, CA)を補充したRPMI−1640培地中での連続長期培養物中で全ての寄生体を維持した。全ての培養およびアッセイを、37℃で、Nの均衡を保ちつつ5%COおよび5%Oの雰囲気下で行った。
【0079】
実施例2
プレスクリーニングアッセイ
プレスクリーニングアッセイは、葉酸不含およびp−アミノ安息香酸不含RPMI−1640およびALBUMAX(登録商標)培地中の1%ヘマトクリット中で0.4%寄生体血に希釈したTM91C235を使用する。代表的には1mgの化合物を100μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解する。化合物を、第1の初開始濃度のために、ALBUMAX(登録商標)を含む培養培地(FF)中でさらに希釈する。ストック薬物溶液の残りを−70℃で保持した。BIOMEK(登録商標)2000 automated laboratory workstationを使用して、96ウェルマイクロタイタープレート(MTP)において48時間、試験化合物の3つの濃度(25,000ng/ml、2,500ng/mlおよび25 ng/ml)で二連で単離物を前曝露した。化合物の相対活性を評価するためおよびTM91C235の応答をモニターするために、各MTPはコントロールとしてクロロキンを含む。
【0080】
プレインキュベーションの後、[H]ヒポキサンチンをMTPの各ウェルに添加した。(アッセイは、繁殖を示す寄生体による放射能標識ヒポキサンチンの取り込みに依存し、同位体取り込みの阻害は既知または候補抗マラリア薬物の活性に起因した)。72時間の全インキュベーション時間の後にMTPを凍結して、赤血球および寄生体を溶解した。Packard FilterMate(登録商標) Cell Harvesterを使用してグラスファイバーフィルタープレート上に溶解物回収することによって、寄生体DNAを回収した。Packard TopCount(登録商標) microplate scintillation counter上で放射能を計数した。3つの未処理感染寄生体コントロールウェルからのCPMの算術平均で割った各薬物濃度でのウェルあたりのカウント毎分(CPM)として、結果を記録した。
【0081】
実施例3
段階希釈アッセイ
25,000ng/mlにおいて化合物が寄生体の増殖に影響を及ぼさなかった場合、それは不活性として分類した。化合物が25,000ng/mlにおいて未処理感染コントロールの算術平均から2標準偏差より大きく抑制したが、25,000ng/mlにおいて50%より小さく抑制した場合、化合物は部分的に活性として示した。しかし、化合物が、2,500ng/mlにおいて未処理感染コントロール寄生体と比較して50%より大きく[H]ヒポキサンチン取り込み抑制した場合、化合物は完全に活性として分類され、IC50値(50%阻害濃度)を決定するために、さらに2倍段階希釈によって評価した。
【0082】
上記の予備的スクリーニングのために使用したのと同じアッセイ条件および化合物のストック溶液を使用して、段階希釈アッセイを行った。D−6およびW−2両方のクローンを使用した。予備的スクリーニングに基づいた開始濃度で、11個の異なる濃度範囲にわたって、化合物を2倍希釈した。各薬物について、濃度応答プロフィールを決定し、そして非線形ロジスティック用量応答分析プログラムを使用することによって50%阻害濃度(IC50)を決定した。このアッセイ由来の結果が予備的スクリーニングの濃度範囲と一致しない場合、アッセイを繰り返した。各アッセイについて、各クローンについてのIC50を、既知の抗マラリア剤であるクロロキンおよびメフロキンに対して決定した。これらのコントロール値は、既知の抗マラリア剤と比較しての化合物の相対的寄生体感受性プロフィールを確立した。
【0083】
実施例4
本明細書に記載のアッセイにおいて異なる単離物/クローンを使用することによって、広範な地理的場所由来の薬物耐性単離物/クローンについて、IC50を同様に決定し得る。式Iによるサンプルおよび異なるマラリア株由来の単離物/クローンの両方を使用して、実施例1〜3に記載のアッセイを反復して、化合物の抗マラリア活性を決定し得る。例えば、マラリア株TM91C235(メフロキン、クロロキンおよびキニーネに耐性であると報告されている)、D6(メフロキンに耐性であると報告されている)ならびにW2(クロロキン、キニーネおよびピリメタンに耐性であると報告されている)についてのIC50値を決定するために、上記のアッセイを使用し得る。
【0084】
実施例5
アッセイ結果
上記のように、寄生体を72時間曝露した。3つの寄生体株に対するアジスロマイシンのインビトロ効力試験由来のデータを平均し、そしてこれらの数字を「活性」なマクロライド化合物の同定のために使用した。TM91C235、D6およびW2株に対するこれらの平均IC50は、それぞれ1621.2ng/mL、796.9ng/mLおよび1759.2ng/mLであった。
【0085】
表1.選択し試験した化合物の構造。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【0086】
表2.異なる耐性のパターンを有する3つの寄生体株(TM91C235、D6およびW2)に対して試験した、アジスロマイシンに比較しての、マクロライド化合物のIC50値。
【表2−1】

【表2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の一般式(I):
【化1】


[式中、
Rは、Hまたは式(II):
【化2】

(II)
で表されるクラジノース糖であり;
は、Hまたはβ−シアノエチル基であり;
は、C1−4アルキル、−(CH−Arであり、ここで、Arは非置換のまたはハロゲン、C1−6ハロアルキル、C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシの1つ以上によって置換された10個までの炭素原子の単環式または二環式芳香環であり、そしてmは0〜3であるか;あるいは
は、式(III):
【化3】

(III)
[式中、RはH、C1〜C4アルキルまたはハロゲンである]
で表される置換アリール基であり、
Xは、酸素または硫黄である]
によって表される9a−カルバモイル−γ−アミノプロピル−または9a−チオカルバモイル−γ−アミノプロピル−アザリドおよび
その医薬上許容される誘導体
を被験体に投与する工程を包含する、そのような処置を必要とする被験体におけるマラリアの治療的および/または予防的処置のための方法。
【請求項2】
Rが、Hまたは式(II):
【化4】

(II)
で表されるクラジノース糖であり;
が、Hまたはβ−シアノエチル基であり;
が、イソプロピル、1−ナフチル、2−ナフチル、ベンジル、2−(トリフルオロメチル)フェニル、3−フェニルプロピル、β−フェニルエチル、エトキシカルボニルメチル、1−(1−ナフチル)エチル、3,4,5−トリメトキシフェニルもしくは2,4−ジクロロフェニル基であるか;または
が、式(III):
【化5】

(III)
[式中、Rは2−メチル、4−メチルまたは2−クロロである]
で表される置換アリール基であり;
Xが、酸素または硫黄である;および
その医薬上許容される誘導体
である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験体が熱帯熱マラリア原虫に感染している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
被験体が三日熱マラリア原虫に感染している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
被験体が卵形マラリア原虫に感染している、請求項1記載の方法。
【請求項6】
被験体が四日熱マラリア原虫に感染している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
9a−カルバモイル−γ−アミノプロピル−または9a−チオカルバモイル−γ−アミノプロピル−アザリドが以下から選択される、請求項1記載の方法:
【化6】

【化7】

またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項8】
被験体がマラリア寄生体に曝露された後に式Iで表される化合物が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
マラリアが風土性である国に被験体が旅行する前に式Iで表される化合物が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
被験体がマラリア寄生体に曝露された後に化合物が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
マラリア寄生体が薬剤耐性マラリア株である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
薬剤耐性マラリア株がクロロキン、メフロキン、ハロファントリン、アルテミシニン、アトバコン/プログアニル、ドキシサイクリンまたはプリマキンの1つ以上に対して耐性である、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2008−526947(P2008−526947A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550876(P2007−550876)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001140
【国際公開番号】WO2006/075256
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506261316)グラクソスミスクライン・イストラジヴァッキ・センタル・ザグレブ・ドルズバ・ゼー・オメイェノ・オドゴヴォルノスティオ (25)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE ISTRAZIVACKI CENTAR ZAGREB D.O.O.
【Fターム(参考)】