説明

抗レトロウイルス性組合せ

(i)リトナビルまたは薬学的に許容されるその塩およびエステル;
(ii)ダルナビルまたは薬学的に許容されるその塩およびエステル
を含む固体単位投与量形態を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規抗レトロウイルス性組合せ、特に、薬学的に安定した組成物およびその組成物を製造する方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
<背景および先行技術>
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は病原性レトロウイルスであり、後天性免疫不全症候群(AIDS)および関連する疾患の原因となる病原体である(Barre-Sinossi, F. et al; 1983, Science 220:868-870; Gallo, R. et al., 1984, Science 224:500-503)。少なくとも2つの異なった型のHIV−1(Barre-Sinossi, F. et al; 1983, Science 220:868-870; Gallo, R. et al., 1984, Science 224:500-503)とHIV−2(Clavel. F. et al., 1986, Science 223:343-346; Guyader, M. et al., 1987, Nature 326:662-669)が存在する。更に、大量の遺伝学的異種がこれらの型の夫々の母集団には存在する。ヒトCD−4+Tリンパ球のHIVウイルス感染は、その細胞型の枯渇を導き、最終的には日和見感染、神経障害、新生物の増殖および早期の死を導く。
【0003】
HIVは、レトロウイルスのレンチウイルス科に属する(Teich, N. et al., 1984; RNA Tumor Viruses, Weiss, R. et al., eds., CSH-press, pp. 949-956)。レトロウイルスは小型のエンベロープウイルスであり、二倍体の、一本鎖RNAゲノムを含み、ウイルス性にコードされた逆転写酵素、RNA依存性DNAポリメラーゼにより生成されるDNA中間体を経て複製する(Varmus, H., 1988, Science 240:1427-1439)。他のレトロウイルスは、例えば、発癌性ウイルス、例えば、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV−1、−II,−III)およびネコ白血病ウイルスなどを含む。HIVウイルス粒子はウイルスコアで構成され、p24およびp18と呼ばれるタンパク質から成り立っている。ウイルスコアはウイルス性RNAゲノムと複製に付随する諸現象に必要とされる酵素を含む。ミリスチル化されたgagタンパク質は、ウイルスコアを取り囲む外部ウイルス殻を形成し、これは次に感染細胞膜に由来する脂質膜エンベロープで囲まれている。
【0004】
HIVエンベロープ表面糖タンパク質は単一の160kDの前駆タンパク質として合成され、これは細胞プロテアーゼによってウイルスの発芽の間に2つの糖タンパク質、gp41とgp120とに切断される。gp41は、膜貫通タンパク質であり、gp120は細胞外タンパク質であり、gp41との非共有結合的な結合が3量体または多量体の形態で残っている(Hammerwskjold, M. and Rekosh, D., 1989, Biochem. Biophys. Acta 989:269-280)。
【0005】
注目は、HIV感染の治療のためのワクチンの開発にも向かっている。HIV−1エンベロープタンパク質(gp160、gp120、gp41)は、AIDS患者に存在する抗HIV抗体タンパク質の主要な抗原であると見られている(Barin et al., 1985, Science 228:1094-1096)。従って長い間、これらのタンパク質は抗HIV開発のための抗原として作用する最も有望な候補であるように思われている。この目的のために、幾つかのグループが宿主免疫系のための免疫原性標的としてgp160、gp120および/またはgp41の種々のタンパク質の使用を開始している。例えば、Ivanoff, L. et al., U.S. Pat. No. 5,141,867; Saith, G. et al., WO 92/22, 654; Schafferman, A., WO 91/09,872; Formoso, C. et al., WO 90/07,119を参照されたい。しかしながら、これらの候補ワクチンに関する臨床的結果は、なお遠く未来に残されている。
【0006】
米国特許5,541,206および欧州特許0674513Bはリトナビルの合成を開示する。
【0007】
米国特許5,541,206はHIV感染を阻害するためのリトナビルの使用を開示する。
【0008】
米国特許5,674,882は、HIV感染を阻害するための1または1以上のHIVプロテアーゼ阻害剤との組合せにおけるリトナビルの使用を開示する。
【0009】
米国特許6,037,157およびWO97/01349は、チトクロームp450モノオキシゲナーゼにより代謝された化合物の薬物動態を増強するためのリトナビルの使用を開示する。
【0010】
米国特許5,484,801は経口投与のためのリトナビルの液体剤形を開示する。
【0011】
WO95/07696は、リトナビルのための被包性の固体または半固体剤形を開示する。
【0012】
WO9967254は、ダルナビル(darunavir)の合成とそれがHIV感染の治療のために使用されてよい様式を開示する。
【0013】
WO9967254は、ダルナビルの経口投与に適した剤形を開示する。
【0014】
US20070208009は、テノフォビル(tenofovir)、リトナビルおよびダルナビルを含むHIV感染の治療または予防のための組合せを開示する。
【0015】
現行のAIDS治療で、当該疾患を治療および/または後退することにおいて全面的に有効であるものは提供されていない。加えて、AIDSを治療するために現在使用されている化合物の多くは、低血小板数、腎毒性および骨髄血球減少症を含む有害な副作用を引き起こす。
【0016】
幾つかの薬物と、特に幾つかのHIVプロテアーゼ阻害剤はチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝され、都合の悪い薬物動態を導くものであり、それ故に、高頻度と高用量が必要とされるが、チトクロームP450モノオキシゲナーゼによる代謝を阻害する薬剤と合わせてのそのような薬物の投与は、当該薬物の薬物動態が改善されるであろう(例えば、半減期の増大、血漿濃度のピークまでの時間の増大、血中濃度の増大)。
【0017】
更に、組合せ療法は、高い毒性の殆どの抗HIV薬物療法とそれらの有効性の低さが潜在的な問題事項である。従って、治療未処置の患者および治療を経験している患者のための有効であり、更に無毒性の組合せ療法が必要とされている。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、薬学的に許容される賦形剤を伴うダルナビルとリトナビルの選択的な組合せ、およびより単純な製造方法の使用が所望の製剤を達成できることを見出した。
【0019】
我々は、両方の当該活性物が、それ自体が混合されたときには不適合性を示すことから、従って、安定した剤形を形成する必要があることを見出している。
【0020】
<発明の目的>
本発明の目的は、同時に、別々にまたは順次に投与されてよい新規の抗レトロウイルス性組合せを含む医薬組成物を提供することである。
【0021】
もう1つの本発明の目的は、治療経験のある患者から治療未経験の患者に亘る範囲において優れた有効性をもつ新規の抗レトロウイルス性組合せを有する医薬組成物を提供することである。
【0022】
本発明のもう1つの目的は、広い種類および多剤抵抗性のHIV株に対して高い効能をもつ新規の抗レトロウイルス性組合せを含む医薬組成物を提供することである。
【0023】
また更に、本発明のもう1つの目的は、製造が容易な抗レトロウイルス性の医薬組成物を提供することである。
【0024】
更なる本発明の目的は、ダルナビルおよびリトナビルの安定した組成物を提供することである。
【0025】
<発明の概要>
本発明の1つの側面に従うと、以下を含む薬学的組合せが提供される:
(i)プロテアーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩;
(ii)チトクロームP450阻害剤または薬学的に許容されるその塩。
【0026】
当該プロテアーゼ阻害剤は、好ましくはダルナビルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0027】
当該チトクロームP450阻害剤は、好ましくはリトナビルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0028】
プロテアーゼ阻害剤、特にダルナビルは、遊離塩基として、またはその適切な薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される鏡像異性体、薬学的に許容される誘導体、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される多型または薬学的に許容されるプロドラッグの形態で、提供されてもよいことが理解されるであろう。
【0029】
当該チトクロームP450阻害剤、特にリトナビルは、遊離塩基として、または適切な薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される鏡像異性体、薬学的に許容される誘導体、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される多型または薬学的に許容されるプロドラッグの形態で提供されてもよいことが理解されるであろう。
【0030】
本発明のもう1つの側面に従うと、単一投与量の処方において、1または1以上のプロテアーゼ阻害剤および1または1以上のチトクロームP450阻害剤および任意の1または1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む抗レトロウイルス性の組成物が提供される。
【0031】
本発明のもう1つの側面に従うと、1または1以上のプロテアーゼ阻害剤および1または1以上のチトクロームP450阻害剤を含む当該抗レトロウイルス性の組成物の製造方法が提供される。
【0032】
また更なる本発明の側面に従うと、1または1以上のプロテアーゼ阻害剤および1または1以上のチトクロームP450阻害剤、並びに任意に1または1以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、HIV/AIDSに対する治療において使用するための薬学的組合せが提供される。
【0033】
本発明の更なるもう1つの側面に従うと、1または1以上のプロテアーゼ阻害剤および1または1以上のチトクロームP450阻害剤、並びに任意に1または1以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、HIV/AIDSに対する治療において使用される医薬の製造における使用のための薬学的組合せが提供される。
【0034】
ダルナビルおよびリトナビルの不適合性のために、これらの2つの活性物質が互いに別々に製剤化されることが本発明の特徴である。
【0035】
<発明の詳細な説明>
本発明の好ましい態様において、
当該リトナビルまたはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される鏡像異性体、薬学的に許容される誘導体、薬学的に許容される多型、薬学的に許容されるエステルまたは薬学的に許容されるプロドラッグと、ダルナビルまたはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される鏡像異性体、薬学的に許容される誘導体、薬学的に許容される多型、薬学的に許容されるエステルまたは薬学的に許容されるプロドラッグとの共投与による、ヒトにおけるHIV感染またはAIDS(後天性免疫不全症候群)の阻害、治療または予防のための前記組合せを含む組成物が提供される。
【0036】
好ましくは、本発明に従う当該製剤は、固体の投与量形態にあり、都合よくは単位投与量形態にあり、経口、口腔内または膣内投与に適切な剤形を含む。
【0037】
本発明に従う固体の投与量形態は、好ましくは錠剤の形態にあるが、通常の他の剤形、例えば、粉末、ペレット、カプセルおよびサッシェ(sachets)も本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本発明に従う好ましい製剤は、錠剤の投与量形態にある。
【0039】
錠剤製剤は、そのより優れた安定性、他の医薬との間での化学的相補作用のリスクの低下、より小さなバルク、正確な用量および容易な生産のために、好ましくは固体投与量形態である。
【0040】
好ましい態様に従うと、当該製剤は、同時に、別々にまたは順次に単一の単位投与量形態で投与されてよい。
【0041】
好ましい態様に従うと、当該組合せは、経口、直腸内、膣内経路により投与されてよい。HIV感染の系統的な治療の最初には、単一の薬学的製剤を使用して同時に投与されることが好ましい。
【0042】
これらの目的のために、単一の製剤において共製剤化された、または同時、別々または順次使用するために製剤化された本発明の組合せを含む組成物は、種々の投与量形態で投与されてもよく、錠剤、カプセル、サッシュを含んでもよく、それらは顆粒化された製剤を含んでもよく、通常の無毒性の薬学的に許容さえる担体、アジュバントおよび媒体を含んでもよい。
【0043】
活性物質の不適合性のような製剤化の問題のために、当該薬物の両方が互いに混合された単一層の錠剤での製剤化は困難である。カプセルは、当該両方の薬物を別々に顆粒化し、当該カプセルに充填することにより形成できる。
【0044】
従って、本発明はまた、多重層を有する錠剤製剤もまた包含するものであり、これは典型的に患者に対して投与され、且つ治療されるべき特定の病態の治療のために有効な薬学的に活性な薬剤の送達を可能にする、または達成することが可能であり、例えば、HIVの治療のために特に適している。
【0045】
好ましい態様に従うと、当該製剤は、多重層錠剤、好ましくは二重層錠剤として投与されてよく、ここで各層は単独で薬物および薬学的に許容される賦形剤を含み、それらは次に二重層錠剤を得るために圧縮される。
【0046】
更に他の態様に従うと、当該製剤はシールコーティングされてよい。更なるもう1つの態様に従うと、当該製剤はシールコーティングされてもよく、更にフィルムコーティングされてもよい。
【0047】
もう1つの好ましい態様に従うと、本発明はまた性的接触または親密な接触が行われる部位、例えば、生殖器、直腸、口腔、特に膣および口腔に対する適用に適合する形態にある医薬組成物に関し、薬学的に許容される担体および活性成分として本発明に従う組合せの有効量を含む。
【0048】
適切に特に適用される組成物の場合、膣、直腸、口腔に対する適用のために通常使用される全ての組成物が引用されてよく、例えば、膣用または直腸用または口腔内用錠剤がある。
【0049】
しかしながら、何れの特定の患者につていの本発明に従う当該組合せの特定の用量程度および頻度は様々であってよく、使用される特定の化合物の活性、代謝的安定性および当該化合物の活性の長さ、特定の状態の重症度および治療を受ける主対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排泄率、薬物の組合せを含む種々の因子に依存するだろうことが理解されるだろう。
【0050】
好ましい態様に従うと、本発明に従う当該組合せは、以下の1日投与量で投与されるであろう; ダルナビル約300〜800 mg、好ましくは300〜600mgおよびリトナビル約50〜100mg。
【0051】
本発明は、当該技術分野において公知の種々の技術または方法を経て製造されてもよく、それらは以下に限定されるものではないが、直接圧縮、湿式顆粒化、メルト顆粒化、メルト押出、スプレー乾燥および溶液蒸発を含む。
【0052】
好ましい態様に従うと、本発明は、1または1以上の薬物と1または1以上のポリマーのホットメルト押出を含むホットメルト押出技術を経て処理されてもよく、ここにおいて、当該ポリマーは、1または1以上の水不溶性ポリマーおよび/または1または1以上の水可溶性ポリマーと1または1以上の水不溶性ポリマーの組合せを含み、ここにおいて、当該薬物:ポリマーの割合は、1:1〜1:6の範囲である。
【0053】
一般的に用語において、ホットメルト押出の処理は、当業者に公知の慣習的な押出機において実施される。
【0054】
当該メルト押出処理は、1または1以上の薬物、当該ポリマーおよび当該賦形剤の均質な融解物を用意する工程と、当該融解物を固体化するまで冷却する工程を含む。「融解(メルト、Melting)」は、液体またはゴム状状態への変化を意味し、そこにおいて、1つの要素が、他の要素に均質に埋め込まれることを可能にする。
【0055】
典型的に1つの要素が融解し、他の要素は当該融解物に溶解され、それにより溶液が形成される。融解は通常、当該ポリマーの軟化点以上の加熱を含む。当該融解物の調製は、種々の方法で行われ得る。当該要素の混合が当該融解物の形成の前、形成中または形成後に行われる。例えば、当該要素が最初に混合されて、次に融解物が押出されるか、または均質に混合されて融解物が押出される。通常、当該活性成分を効率的に分散するために、当該融解物は均質である。また、まず当該ポリマーが融解されて、次に当該活性成分が混合されて均質化されることが都合がよいかもしれない。
【0056】
通常、融解温度は約50℃〜約200℃、好ましくは約70℃〜約200℃、より好ましくは約80℃〜約180℃、最も好ましくは約90℃〜約150℃の範囲である。
【0057】
適切な押出機は、単一スクリュー押出機、かみ合い供給スクリュー押出機または他のマルチスクリュー押出機を含み、好ましくはツインスクリュー押出機を含み、これは共回転またはカウンター回転が可能であり、任意に混練ディスクを備える。作業温度は、また押出機の種類または使用される押出機における構成の種類により決定されることが認識されるであろう。
【0058】
押出物は、ビーズ、粒質物、管状物、糸状体物または円柱状物の形態であってよく、これが更に何れかの所望の形態に加工されてもよい。
【0059】
ここにおいて使用される用語「押出物」は、1または1以上の薬物と1または1以上のポリマーおよび任意の薬学的に許容される賦形剤の固形産物の溶体(solid product solutions)、固体分散物(solid dispersions)およびガラス溶体(glass solutions)をいう。
【0060】
好ましい態様に従うと、1または1以上の活性薬物とポリマーおよび任意の薬学的賦形剤の粉末配合物が、単一スクリュー押出機の回転スクリューにより、押出機の加熱されたバレルを通って移動し、それによって当該粉末配合物が融解し、溶解された溶液産物がコンベヤー上に回収され、そこにおいて冷却され、押出物が形成される。押出物の成形は、その表面に相互に整合されたくぼみのある2つのカウンター・回転性ローラーを有するカレンダーにより行われることが都合よい。
【0061】
錠剤の幅の範囲は、くぼみの異なる型を有するローラーを使用することにより達成される。或いは、押出物は、固体化の後に断片に切断されてもよく、更に適切な剤形に加工されてもよい。より好ましくは、そのように上記の工程から最終的に得られた押出物は次に、当業者に公知の手段により粉砕および磨り潰されて、顆粒とされてもよい。
【0062】
更に、ホットメルト押出は、更なる乾燥や非連続的な加工工程の必要性を伴わない、早い、連続した、単一ポット製造工程である:それにより、活性物の短時間の熱への暴露が、熱感受性の活性物の処理を可能にし;加工温度は可塑剤の添加により低下でき;他の加工に比べて機器についての比較的により低い投資とできることを可能にする。全体の工程が無水的であり、処理中に生じる激しい混合や粉末配合物の攪拌が、非常に均質な押出物に寄与する。
【0063】
1つの側面において、本発明に従う好ましい態様は、1または1以上のプロテアーゼ阻害剤または1または1以上のチトクロームP450阻害剤および1または1以上の水可溶性および/または水不溶性ポリマーを含んでよく、これが、ここにおいて記載された通りの工程によりメルト押出されてもよく、プロテアーゼ阻害剤、もっとも好ましくはダルナビルと、チトクロームP450阻害剤、もっとも好ましくはリトナビルと、ポリマーと、適切なバルキング剤およびフレーバー剤を含んでよい他の任意の賦形剤の粉末配合物がここにおいて記載された通りの工程によりメルト押出されてもよい。
【0064】
他の側面において、本発明に従う好ましい態様は、1または1以上のチトクロームP450阻害剤および1または1以上の水可溶性および/または水不溶性ポリマーを含んでよく、これが、ここにおいて記載された通りの工程によりメルト押出されてもよく、チトクロームP450阻害剤、最も好ましくはリトナビル、ポリマーおよび適切なバルキング剤およびフレーバー剤を含んでよい他の任意の賦形剤の粉末配合物がここにおいて記載された通りの工程によりメルト押出されてもよい。
【0065】
当該成分は、加工されて粉末配合物を形成し、押出機の過熱されたバレルを通って移動されて、それにより当該粉末配合物は融解し、溶融された溶液産物はコンベヤーに回収されて、それによって冷却および押出物の形成が可能になる。
【0066】
或いは、押出物は、固体化の後に断片に切断されてもよく、更に適切な剤形に加工されてもよい。より好ましくは、そのように上記の工程から最終的に得られた押出物は次に、当業者に公知の手段により粉砕および磨り潰されて、顆粒とされてもよい。
【0067】
もう1つの側面において、本発明に従う好ましい態様は、1または1以上のプロテアーゼ阻害剤または1または1以上のチトクロームP450阻害剤および1または1以上の水不溶性ポリマーおよび1または1以上の水可溶性ポリマーの組合せを含んでもよく、これらがここにおいて記載された通りの工程によりメルト押出されてもよく、プロテアーゼ阻害剤、最も好ましくはダルナビルおよびチトクロームP450、もっとも好ましくはリトナビルと、水可溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーの組合せと、および適切なバルキング剤およびフレーバー剤を含んでよい他の賦形剤の粉末配合物がここにおいて記載された通りの工程によりメルト押出されてもよい。
【0068】
当該成分は、加工されて粉末配合物を形成し、押出機の過熱されたバレルを通って移動されて、それにより当該粉末配合物は融解し、溶融された溶液産物はコンベヤーに回収されて、それによって冷却および押出物の形成が可能になる。
【0069】
或いは、押出物は、固体化の後に断片に切断されてもよく、更に適切な剤形に加工されてもよい。より好ましくは、そのように上記の工程から最終的に得られた押出物は次に、当業者に公知の手段により粉砕および磨り潰されて、顆粒とされてもよい。
【0070】
水可溶性ポリマーは、N−ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマー、特に、N−ビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)のホモポリマーおよびコポリマー、PVPおよびビニルアセテートのコポリマー、N−ビニルピロリドンおよびビニルアセテートまたはビニルプロピオネート、セルロースエステルおよびセルロースエーテル、高分子ポリアルキレンオキサイド、例えば、ポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキサイドのコポリマーおよびエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのコポリマーから選択されてもよい。薬物のポリマーに対する割合が1:1〜1:6の範囲に存在する。
【0071】
水不溶性ポリマーは、アクリルコポリマー、例えば、エウドラジットE100(Eudragit E100)またはエウドラジッド EPO(Eudragit EPO)、エウドラジッド L30D-55(Eudragit L30D-55)、エウドラジッド FS30D(Eudragit FS30D)、エウドラジッド RL30D(Eudragit RL30D)、エウドラジッド RS30D(Eudragit RS30D)、エウドラジッド NE30D(Eudragit NE30D)、アクリル−イーズ(Acryl-Eze(Colorcon Co.));ポリビニルアセテート、例えば、コリコートSR 3OD(Kollicoat SR 3OD (BASF Co.));セルロース誘導体、例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、例えば、シュアリース(Surelease (Colorcon Co.))、アクアコートECD (Aquacoat ECD)およびアクアコートCPD(Aquacoat CPD (FMC Co.))から選択されてもよい。当該水不溶性ポリマーは、薬物のポリマーに対する割合が1:1〜1:6の範囲に存在する。
【0072】
可塑剤は、当該ポリマーと当該方法の要求条件に依存して組込まれる。これらがホットメルト押出工程において使用されると、有利に当該ポリマーのガラス転移温度を低下する。可塑剤はまた、ポリマー融解物の粘度を低下するのに役立ち、それにより、融解押出の間において、より低い処理温度と押出機のより低いトルクを可能にする。本発明において使用される可塑剤の例は、これらに限定するものではないが、ポリソルベート、例えば、ソルビタンモノラウレート(スパン20(Span 20))、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノイソステアレート;シトレートエステル型の可塑剤、例えば、トリエチルシトレート、シトレートフタレート;プロピレングリコール:グリセリン;低分子量ポリエチレングリコール;トリアセチン;ジブチルセバケート、トリブチルセバケート;ジブチルタートレート、ジブチルフタレートを含む。可塑剤は、ポリマーの重量に対して0%〜10%の範囲の量で存在してよい。
【0073】
好ましい態様に従うと、本発明は、適切な崩壊剤(disintegrating agent)を含んでもよく、それは、これらに限定されるものではないが、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ソディウムスターチグリコレート(sodium starch glycollate)、コーンスターチ、ポテトスターチ、トウモロコシスターチ、および変性スターチ、ケイ酸カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースを含んでよい。崩壊剤の量は好ましくは当該組成物の重量の5%〜35%の範囲にある。
【0074】
好ましい態様に従うと、本発明は、更に適切なバルキング剤を含んでよく、それは、これらに限定されるものではないが、サッカライド、例えば、モノサッカライド、ジサッカライド、ポリサッカライドおよび糖アルコール、例えば、アラビノース、ラクトース、デキストロース、スクロース、フルクトース、マルトース、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトールおよび他のバルキング剤、例えば、粉末セルロース、微結晶性セルロース、精製糖、およびその誘導体を含む。当該製剤は、上記のバルキング剤の1または1以上を組込んでよく、好ましくはラクトースおよび微結晶性セルロースがバルキング剤を形成する。バルキング剤の量は、当該組成物の重量の好ましくは15%〜70%の範囲である。
【0075】
従って、本発明は、更に、適切な滑沢剤(lubricants)および潤滑剤(グライダント(glidants))を組込んでもよく、これは、これらに限定するものではないが、ステアリン酸およびその誘導体またはエステル、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム、対応するエステル、例えば、ソディウムステアリルフマレート;タルクおよびコロイド状二酸化ケイ素がそれぞれ含まれてよい。滑沢剤および/または潤滑剤は、好ましくは当該組成物の重量の0.25%〜5%の範囲である。
【0076】
もう1つの態様に従うと、本発明は、更に、1または1以上の製造工程を含み、単一投与量形態が形成されてよく、即ち、当該または各薬物が上述の技術により処理され、最終的に圧縮されて単一投与量形態が得られる。好ましくは、1または1以上の任意の賦形剤との組合せにおいて、当該ダルナビルおよびリトナビルが、別々に上述の技術により加工され、組み合わされて、1つの単一投与形態が形成されてもよい。当該ダルナビル配合物は、錠剤へ圧縮されて且つ加圧されて錠剤になり、リトナビル配合物は錠剤へ圧縮されて且つ加圧されて錠剤になり、最終的に各個々の層が二重層錠剤に圧縮されてもよい。更に好ましくは、当該錠剤は、シールコーティングされてよい。最も好ましくは、当該錠剤はシールコーティングされ、最終的にフィルムコーティングされる。当該製剤はレディー・カラー・ミックス・システムReady colour mix systems (such as Opadry colour mix systems)でコートされてよい。
【0077】
もう1つの更なる態様に従うと、本発明は、当該ダルナビルは湿式顆粒化、メルト顆粒化、直接圧縮、メルト押出などを経て加工されるなど、上述した通りに製剤化されてよく、当該リトナビルは、メルト顆粒化、メルト押出などを経て加工されるなど、上述した通りに製剤化されてよい。
【0078】
好ましくは、当該ダルナビルは、これらに限定するものではないが、希釈剤、崩壊剤を含む顆粒内賦形剤(intragranular excipients)と共に混合されてもよく、水と粒状化されてもよく、ふるいに掛けられても、シフターに掛けられても、および潤滑されても、および乾燥されてもよい。或いは、乾燥された顆粒が錠剤に加圧されてもよい。
【0079】
好ましくは当該リトナビルおよび1または1以上の賦形剤、これらに限定するものではないが、ポリマー(即ち、水可溶性または水不溶性またはその混合物の何れかである)、1または1以上の可塑剤、1または1以上の崩壊剤、1または1以上の滑沢剤および潤滑剤を含んでよく、これらがホットメルト押出技術を介して押出しされ、押出し物は、所望の形態に成型されてもよく、サッシェに充填されてもよく、または顆粒化されてもよい。或いは、当該顆粒が錠剤に加圧されてもよい。
【0080】
好ましい態様に従うと、上述のように得られた当該顆粒(個々の活性物を含む)は、更に混合されても、ふるいに掛けられても、シフターに掛けられても、カプセルまたはサッシェに充填されてもよく、当該顆粒が直接に投与されてもよい。
【0081】
更なる他の態様に従うと、上述のように得られた当該または各顆粒(個々の活性物を含む)は個々に2つの錠剤に加圧されてもよく、最後に二重層錠剤に圧縮および加圧されてもよい。或いは、当該錠剤がシールコーティングまたは最後にフィルムコーティングされてもよい。或いは、2つの錠剤がカプセルに封入されてもよい。
【0082】
以下の例は、本発明を説明する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を制限するように如何なる方向においても意図するものではない。
【表1−1】

【表1−2】

【0083】
<方法>
(1) ダルナビルを、予めふるいおよびシフターにかけた量のクロスポビドン、黄酸化鉄(yellow iron oxide)、ポリビニルピロリドンK30、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムと混合し、精製水で顆粒化した。
【0084】
(2) 少量のコロイド状二酸化ケイ素を伴うリトナビルをシフターにかけ、コリドンVA64(kollidon VA64)とスパン20(Span 20)とミキサー内で混合した。
【0085】
(3) (2)で得られた内容物を、混合し、最後にホットメルト押出し(HME)に供し(ここにおいて、押出し工程のための融解温度は、70〜200℃の範囲である)、それにより得られた融解マスは、コンベヤー上に回収され、冷却されて押出物が形成され、更なる粉砕においてこれらの押出物は顆粒に変えられ、次にクロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素および微結晶性セルロースが添加され、更に、ソディウムステアリルモノステアレートで滑沢化された。
【0086】
(4) (1)および(3)で得られた顆粒を共に加圧して、二重層錠剤を形成し、次にシールコーティングおよび最後にフィルムコーティングを行った。
【表2】

【0087】
<方法>
(1) ダルナビルエタノール(Darunavir Ethanolate)を、予めふるいおよびシフターにかけた量のクロスポビドンおよび微結晶性セルロースと混合し、PVP K−30で顆粒化し、続いて、クロスポビドン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムと混合し、滑沢(lubrication)した。
【0088】
(2) 少量のコロイド状二酸化ケイ素を伴うリトナビルをシフターにかけ、コリドンVA64(kollidon VA64)とポリオキシル40硬化ヒマシ油とミキサー中で混合した。
【0089】
(3) (2)で得られた内容物を、混合し、最後にホットメルト押出し(HME)に供し(ここにおいて、押出し工程のための融解温度は、70〜200℃の範囲である)、それにより得られた融解マスは、コンベヤー上に回収され、冷却されて押出物が形成され、更なる粉砕においてこれらの押出物は顆粒に変えられ、次に、コロイド状二酸化ケイ素および無水二塩基性リン酸カルシウムが添加された。
【0090】
(4) (1)および(3)で得られた顆粒を共に加圧して、二重層錠剤を形成し、次に最後にフィルムコーティングを行った。
【0091】
種々の置換および修飾が、本発明の範囲を逸脱せずに、ここに開示された本発明に対して行い得ることは当業者には容易且つ明白であろう。従って、本発明は、好ましい態様および任意の特徴により特に開示されているが、ここに開示される概念を変更および変量が当業者により報告されてもよく、そのような変更および変量は本発明の範囲に含まれると見なされることが理解されるべきである。
【0092】
ここで使用される表現および用語は、説明のためのものであり、制限するものとして見なされるべきではないことが理解されるべきである。ここにおいて、「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」およびそのバリエーションの使用は、その後に列記される項目、およびその等価物、並びに更なる項目を含むことを意味する。
【0093】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「当該(the)」は、その状況において他の明確な記載がない限り、複数の言及を含むものである。従って、例えば、「ポリマー」との記載は、単一のポリマーと、2または2以上の異なるポリマーを含み、「可塑剤」との記載は、単一の可塑剤または2または2以上の可塑剤の組合せなどにまで言及するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)リトナビルまたは薬学的に許容されるその塩およびエステル;
(ii)ダルナビルまたは薬学的に許容されるその塩およびエステル
を含む固体単位投与量形態を含む医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、前記リトナビルをその製剤の第1の層に、前記ダルナビルはその製剤の第2の層に含む錠剤形態である医薬組成物。
【請求項3】
更に水不溶性ポリマーおよび/または水可溶性ポリマーを含む前記何れかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物であって、当該リトナビルまたはダルナビルの当該ポリマーの重量に対する重量が1:1〜1:6である医薬組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の医薬組成物であって、当該ポリマーが少なくとも当該リトナビルを含む層に存在する医薬組成物。
【請求項6】
少なくとも1の薬学的に許容される賦形剤を更に含む前記何れかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の医薬組成物であって、当該賦形剤が可塑剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
前記何れかの請求項に記載の医薬組成物であって、当該ダルナビルが300〜800mgの量で存在する医薬組成物。
【請求項9】
前記何れかの請求項に記載の医薬組成物であって、当該リトナビルが50〜100mgの量で存在する医薬組成物。
【請求項10】
HIVまたはAIDSの治療において使用するための前記何れかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項2〜10の何れか1項に記載の医薬組成物であって、請求項2または3に従属している場合に、当該リトナビルを含む層が、前記リトナビルを当該ポリマーとホットメルト押出により得られる医薬組成物。
【請求項12】
前記何れかの請求項に記載の医薬組成物の治療学的な有効量を投与することを具備するHIVまたはAIDSの治療方法。
【請求項13】
請求項2〜11の何れか1項に記載の医薬組成物の製造方法であって、請求項2に従属している場合に、当該リトナビルをホットメルト押出して押出物を形成し、次に当該押出物を前記第1の層に配合すること;前記ダルナビルを前記第2の錠剤層に配合すること;および前記第1および第2の層を組合せて単一単位多重層錠剤製剤を提供することを具備する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、当該ホットメルト押出工程より先に、当該リトナビルが水可溶性ポリマーおよび/または水不溶性ポリマーと混合される方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、当該ダルナビルが、水可溶性ポリマーおよび/または水不溶性ポリマーと混合され、且つホットメルト造粒処理またはメルト造粒処理により押し出される方法。
【請求項16】
当該リトナビルまたはダルナビルの実質的に均質な溶融物と任意の1または1以上の賦形剤とを準備すること、当該溶融物を押出すること、およびそれが凝固するまで当該溶融物を冷却することを含む請求項13または14または15に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、当該溶融物が実質的に50℃〜実質的に200℃の温度で形成される方法。
【請求項18】
請求項13または14に記載の方法であって、当該リトナビル、当該ポリマーおよび任意の1または1以上の賦形剤を加工することにより、当該押出器の加熱バレルを通って移動される粉末混合物を形成すること、それによって、当該粉末混合溶融物および溶融溶液産物を形成し、これを冷やして押出物を形成する方法。
【請求項19】
当該冷却された押出物を所望の医薬剤形に加工することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
錠剤またはカプセルまたはカプセル中の錠剤の形態にある請求項19に記載の医薬剤形。
【請求項21】
請求項13、14、18、19および20の何れか1項に記載の方法であって、当該ダルナビルを含む層が直接の圧縮または湿式造粒により製造される方法。
【請求項22】
請求項13〜21の何れか1項に記載の方法により製造され、HIVまたはAIDSの治療において使用するための組成物。

【公表番号】特表2011−507940(P2011−507940A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540173(P2010−540173)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004291
【国際公開番号】WO2009/081174
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(501312451)シプラ・リミテッド (56)
【Fターム(参考)】