説明

抗体を結晶化させるための組成物及び方法

本発明は抗ヒトTNFα(hTNFα)抗体及び抗体フラグメントを結晶化させるためのバッチ晶析方法として、前記抗体の工業的規模の生産を可能にする方法、抗体結晶(例えば抗hTNFα抗体フラグメントの結晶)の寸法の制御方法、前記結晶を含有する組成物並びに前記結晶及び組成物の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体フラグメントを含めて抗体を結晶化させるための組成物及び方法とその使用に関する。1態様において、本発明は抗ヒト腫瘍壊死因子α(hTNFα)抗体フラグメント等の抗体フラグメントの工業的規模の晶析方法と、前記抗体及び抗体フラグメント結晶の寸法の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在100種類を超えるモノクローナル抗体が臨床試験フェーズ2又は3で検討中であり、モノクローナル抗体(mAb)市場は最も有望なバイオ医薬品市場の1つであるとみなされている。これらの薬剤は多くの場合には一度に100mgを上回る用量を患者に送達する必要があるため、安定性及び安全性要件と患者コンプライアンスを満足する適切な製剤を見出すことが急務である。
【0003】
高濃度液体mAb製剤は低濃度製剤よりも粘度が高いため、患者に優しい高ゲージの針で注射しにくい。更に、mAb分子の凝集傾向は濃度の増加と共に指数的に増加し、安全性及び安定性要件を満たすことができなくなる。従って、高mAb用量の送達は大容量に限定され、一般に輸液により送達しなければならない。しかし、この投与方法はコストがかかり、患者のコンプライアンスを著しく低下させる。
【0004】
従って、結晶形態のmAbが原薬用に望ましい。しかし、周知の通り、結晶化条件による予測不能性を伴うため、このストラテジーを検討する試みは殆ど行われていない。蛋白質インスリンは結晶化に成功しているが、大半の他の蛋白質は結晶よりも不規則沈殿を形成する傾向がある。従って、特定蛋白質の結晶化条件を決定するのは厄介な作業である。今日までに、選択蛋白質に好適な結晶化条件を確実に予測できる一般原理は存在しない。
【0005】
特定蛋白質に潜在的に適切な結晶化条件をマイクロリットル規模でスクリーニングすることが可能な数種類のスクリーニングシステムが市販されている(例えばHampton 1及び2や、Wizard I及びII)。しかし、このようなスクリーニングシステムを使用して良い結果が得られたとしても、より大規模な工業的に適用可能なバッチ規模の結晶化を必ずしも成功できるとは限らない(Jen,A.et al.(2001)Pharm.Res.18(11):1483参照)。
【0006】
Baldockら((1996)J.Crystal Growth 168(1−4):170−174)は結晶化条件の初期スクリーニング法としてマイクロバッチ法と蒸気拡散法の比較について報告している。1組の結晶化溶液を使用して6種類の市販蛋白質をスクリーニングしている。スクリーニングは一般的な蒸気拡散法と、3種類のマイクロバッチ晶析法を使用して実施された。同定された58種類の結晶化条件のうち、43種類(74%)はマイクロバッチ法により同定され、41種類(71%)は蒸気拡散法により同定された。26種類の条件が両方の方法により同定され、マイクロバッチ法を全く使用しなかった場合には17種類(29%)は同定されなかった。これらのデータから明らかなように、初期結晶化スクリーニングで最も一般的に使用されている蒸気拡散法で必ずしも良い結果が得られる訳ではない。
【0007】
このように、規定方法又はアルゴリズムを使用して各種蛋白質の結晶化を首尾よく実施することはできない。確かに、過去20〜30年間の技術進歩は目覚ましい。例えば、A.McPhersonは巨大分子の結晶化のための方策、ストラテジー、試薬及び装置について詳細に記載している。しかし、当業者がそれなりに成功を見込んで実際に所定の巨大分子を結晶化させることができるような方法については記載していない。McPhersonは例えば次のように述べている。「どのような手順であれ、分子間の特異的結合相互作用を助長及び促進し、一旦形成された相互作用を安定化させるために、溶媒と溶質の両者の系のパラメータを改良及び最適化する努力を惜しんではならない。問題のこの後者側面は一般に結晶化させる特定蛋白質又は核酸の特定の化学的及び物理的性質に依存する。」(McPherson,A.(1999)Crystallization of Biological Macromolecules.Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.159)。新規該当蛋白質を選択し、特定処理工程を適用し、それにより所望の結晶を取得するための確実なアルゴリズムが存在しないことは蛋白質結晶化分野の当業者に広く認められている。
【0008】
抗体は分子の柔軟性により、特に結晶化が難しい。一方、異常Ig軽鎖二量体の結晶であるベンス・ジョーンズ蛋白質等の免疫グロブリン結晶の例は存在する(Jones,H.B.(1848)Philosophical Transactions of the Royal Society,London 138:55−62)。更に、Ig重鎖オリゴマー(von Bonsdorf,B.,H.Groth et al.(1938).Folia Haematologia 59:184−208)や、(2本の重鎖が2本の軽鎖に結合した)正常構造のヒト免疫グロブリンの結晶も記載されている(Putnam,F.W.(1955)Science 122:275−7;Terry,W.D.,et al.(1968)Nature 220(164):239−41;Huber,R.,et al.(1976).Nature 264(5585):415−20;Rajan,S.S.,et al.(1983)Mol.Immunol.20(7):787−99;Harris,L.J.,et al.(1992)Nature 360(6402):369−72;Nisonoff,A.,et al.(1968)Cold Spring Harbor Symposia on Quant.Biol.32:89−93;Connell,G.E.,et al.(1973)Canad.J.Biochem.51(8):1137−41;Mills,L.E.,et al.(1983)Annals of Int.Med.99(5):601−4;及びJentoft,J.E.,et al.(1982)Biochem.21(2):289−294)。例えば、Margolinらは治療用モノクローナル抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))を結晶化することができ(Shenoy,Govardhan et al.2002)、結晶トラスツズマブ懸濁液がマウス腫瘍モデルで治療効果を示したと報告しており、結晶トラスツズマブが生物活性を維持することを実証している(Yang,M.X.,et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(12):6934−6939)。しかし、均一な抗体結晶製剤を形成する予測可能な確実な方法については記載されていない。
【0009】
WO−A−02/072636は完全無傷な抗体リツキシマブ、インフリキシマブ及びトラスツズマブの結晶化を開示している。結晶化実験の大半はイミダゾール、2−シクロヘキシルエタンスルホネート(CHES)、メチルペンタンジオール、硫酸銅及び2−モルホリノエタンスルホネート(MES)等の毒性の不明な化学薬品を使用して実施されている。同出願の実施例の多くは結晶化を開始するために種晶を使用している。
【0010】
ヒトTNFα(hTNFα)は多数の疾患の原因物質であると考えられている。従って、hTNFα関連疾患の適切な治療方法が大いに必要とされている。1つの有望な治療アプローチは医薬有効用量の抗ヒトTNFα抗体を投与する方法である。最近、D2E7ないし属名アダリムマブ(Adalimumab(登録商標))と呼ばれるこのような抗体の1種が商品名HUMIRA(登録商標)(Abbott Laboratories)で上市されている。
【0011】
WO−A−2004/009776は等量の微量(1μl)の各種結晶化緩衝液とD2E7 F(ab)’又はFabフラグメントを混合する段階を含むシッティングドロップ蒸気拡散法を使用するマイクロリットル規模の結晶化実験を開示している。D2E7抗体又はそのフラグメントの寸法制御結晶化方法は開示されていない。
【0012】
EP−A−0260610はECACC87050801として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される一連のマウス抗hTNFαモノクローナル抗体、即ち中和抗体AM−195(別称MAK195)を開示している。MAK195のF(ab’)フラグメント(例えばMAK195F)もAfelimomab(登録商標)の名称で知られている。MAK195及びMAK195Fの結晶は開示されていない。これらの抗体のバッチ晶析はこれまでに成功していない。
【0013】
現在、抗hTNFα抗体フラグメント結晶の生産を実現する技術的教示は得られていない。更に、抗体フラグメント(例えば抗hTNFα抗体のフラグメント)を含む抗体分子の寸法制御結晶化を実現する教示も得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第02/072636号
【特許文献2】国際公開第2004/009776号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0260610号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Jen,A.et al.(2001)Pharm.Res.18(11):1483
【非特許文献2】Baldock et al.(1996)J.Crystal Growth 168(1−4):170−174
【非特許文献3】McPherson,A.(1999)Crystallization of Biological Macromolecules.Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.159
【非特許文献4】Jones,H.B.(1848)Philosophical Transactions of the Royal Society,London 138:55−62
【非特許文献5】von Bonsdorf,B.,H.Groth et al.(1938).Folia Haematologia 59:184−208
【非特許文献6】Putnam,F.W.(1955)Science 122:275−7
【非特許文献7】Terry,W.D.,et al.(1968)Nature 220(164):239−41
【非特許文献8】Huber,R.,et al.(1976).Nature 264(5585):415−20
【非特許文献9】Rajan,S.S.,et al.(1983)Mol.Immunol.20(7):787−99
【非特許文献10】Harris,L.J.,et al.(1992)Nature 360(6402):369−72
【非特許文献11】Nisonoff,A.,et al.(1968)Cold Spring Harbor Symposia on Quant.Biol.32:89−93
【非特許文献12】Connell,G.E.,et al.(1973)Canad.J.Biochem.51(8):1137−41
【非特許文献13】Mills,L.E.,et al.(1983)Annals of Int.Med.99(5):601−4
【非特許文献14】Jentoft,J.E.,et al.(1982)Biochem.21(2):289−294
【非特許文献15】Shenoy,Govardhan et al.2002
【非特許文献16】Yang,M.X.,et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(12):6934−6939。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、抗体及び抗体フラグメント(例えば抗hTNFα抗体及び抗体フラグメント)に適した結晶化条件、特にバッチ晶析条件を開発し、工業的生産に適した結晶容量を生産するための晶析プロセス条件を確立することが必要である。また、このような抗体の医薬品としての利用可能性に悪影響を与える恐れのある毒性物質を使用しない晶析方法も必要である。更に、結晶寸法の選択と制御を可能にする抗体又は抗体フラグメント(例えばFab又はF(ab’)フラグメント)の晶析方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記問題は、晶析方法と前記方法により製造された結晶及びその使用を提供する本発明により意外にも解決される。
【0018】
1側面において、本発明は抗体又は抗体フラグメント結晶の形成を可能にする条件下で抗体又は抗体フラグメントと少なくとも1種の結晶化剤を含有する水性結晶化混合物を準備し、結晶化混合物を制御条件下で撹拌し、好ましくは実質的に均一な所望の平均寸法範囲の抗体又は抗体フラグメント結晶を形成することにより、所望の平均寸法範囲の抗体又は抗体フラグメント結晶を寸法制御下に製造するための方法を提供する。
【0019】
制御条件には数種の態様があり、これらを単独で使用してもよいし、任意組合せ又は順序で併用してもよい。1態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて約1〜約200rpmの範囲の速度で撹拌することを含むか、又はこれに対応する。別の態様において、制御条件は結晶化混合物を直径約2〜約100cmの範囲のローラー容器に入れて撹拌することを含むか、又はこれに対応する。別の態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応するか、又はこれを含み、ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する。更に別の態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて約30分間〜約20日間撹拌することに対応するか、又はこれを含む。更に別の態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて約−15〜約+50℃の範囲の温度で撹拌することに対応するか、又はこれを含む。本発明の方法の撹拌段階はローリングに対応する条件下で結晶化混合物をローリング、かき混ぜ、振盪及び/又はタンブリングする段階を含むことができる。上記条件の任意数を任意順序で組合せることができる。
【0020】
別の側面において、本発明の方法は約1〜約1000μmの範囲内の均一な結晶粒径及び/又は粒長を含む抗体又は抗体フラグメント結晶の小規模及び大規模生産を実現する。別の態様において、結晶は約1〜約200μmの範囲の制御された平均結晶粒長を含む。別の態様によると、段階a)で得られた結晶化混合物に結晶化を開始又は増進するために種晶として適切な量の既存抗体又は抗体フラグメント結晶を添加できるように本発明の上記晶析方法を実施してもよい。
【0021】
1態様において、結晶化される抗体は任意型又はクラスの完全抗体又はその抗体フラグメントである。1態様において、抗体フラグメントはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体等のIgG抗体のフラグメントである。抗体フラグメントは例えばキメラ抗体又は非キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、二重可変領域免疫グロブリン(DVD−Ig(登録商標))、非糖鎖付加抗体、ヒト抗体及び非ヒト抗体(例えばマウス抗体)のポリクローナル抗体フラグメント又はモノクローナル抗体フラグメントとすることができる。1特定態様において、結晶化する抗体は場合により抗原結合性を改善するように更に処理された非キメラヒト抗体又はそのフラグメントである。
【0022】
1態様において、抗体フラグメントは抗hTNFα抗体結合フラグメントである。1特定態様において、抗体フラグメントは寄託番号ECACC87050801のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体MAK195のF(ab’)フラグメントであるMAK195F等のFab又はF(ab’)フラグメントである。
【0023】
別の側面において、本発明は(例えば溶解形態の)抗体又は抗体フラグメントと、結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレンポリオール(例えばポリアルキレングリコール)を含有する水性結晶化混合物を準備し、抗体又は抗体フラグメントの結晶が形成されるまで水性結晶化混合物をインキュベートすることにより、抗hTNFα抗体又は抗体結合フラグメントを結晶化するためのバッチ晶析方法として、ポリアルキレングリコールを(a)1段階又は(2)2段階以上で提供し、ある段階で形成された前記抗体結晶を次段階の前に取出さない方法を提供する。
【0024】
別の態様において、水性結晶化混合物のpHは約pH4〜約6.5の範囲であり、特に約4.5〜約6.0、又は約4.8〜約5.6、又は約5.0〜約5.4、例えば約5.1、約5.2又は約5.3である。上記に概説した結晶化混合物は一般に溶液又は固体としての結晶化剤を蛋白質溶液に加えることにより得られる。どちらの溶液も緩衝溶液とすることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。元の結晶化溶液中の結晶化剤濃度と緩衝液モル濃度は一般に蛋白質溶液添加時に希釈される結晶化混合物中よりも高い。1態様において、水性結晶化混合物は少なくとも1種の緩衝液を含むことができる。緩衝液は例えば酢酸塩もしくはクエン酸成分又はそのアルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩(例えば酢酸ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウム)を含むことができる。酸(例えば酢酸又はクエン酸)を加えることにより塩を必要なpHに調整する。
【0025】
晶析方法の1態様において、水性結晶化混合物中の緩衝液濃度(総酢酸塩又は総クエン酸塩)は約0〜約0.5M又は約0.02〜約0.5M、例えば約0.05〜約0.3M、約0.07〜約0.2M又は約0.09〜約0.16Mである。
【0026】
1態様において、ポリアルキレングリコールは約400〜約10,000g/molの範囲の平均分子量をもつ。例えば、ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコール(PEG)であり、総容量の約5〜約30%(w/v)の範囲の最終濃度で結晶化混合物中に存在する。
【0027】
別の態様では、以下の付加的な結晶化条件:a)インキュベーションを約1時間〜約250日間、又は約1日〜約250日間、又は約13日〜約250日間、例えば約1日〜約30日間、又は約2日〜約10日間実施する;b)インキュベーションを約−15℃〜+約50℃、例えば約4℃〜約37℃又は約15℃〜約25℃の温度で実施する;及びc)抗体混合物が約0.5〜約280mg/ml、又は約1〜200mg/ml、又は約1〜約100mg/ml、例えば約1.5〜約20mg/ml、特に約2〜約15mg/ml、又は約2〜約7mg/mlの範囲の濃度で抗体フラグメントを含有する、のうちの少なくとも1つを満足する。蛋白質濃度は例えば適切な波長(例えば280nm)における光学密度の測定等の標準蛋白質測定法により測定することができる。
【0028】
別の態様において、本発明の方法は生成された結晶を乾燥する段階を含む。適切な乾燥方法としては蒸発乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、流動層乾燥、噴霧凍結乾燥、準臨界乾燥、超臨界乾燥及び窒素ガス乾燥が挙げられる。
【0029】
別の態様において、本発明の晶析方法は例えば遠心、透析濾過、限外濾過又は他の一般に使用されている緩衝液交換技術により結晶化母液を別の液体又は緩衝液(例えば約300〜8,000ダルトンの範囲の分子量であり、結晶化に使用するものとは異なる少なくとも1種のポリアルキレンポリオール、又はその混合物、又は本明細書に記載する他の(ポリマー)キャリヤー、脂質キャリヤーもしくは油性キャリヤーを含有する液体又は緩衝液)と交換する段階を更に含む。別の液体又は緩衝液は「人工母液」と言うこともでき、結晶の「天然」結晶化母液とは異なり、形成される結晶の溶解を妨げる。mAb結晶製剤中の所定の賦形剤は結晶溶解を妨げる主機能をもつ。こうして、最終組成物中でポリエチレングリコールを置換することができる。
【0030】
好ましい1態様において、例えばPEGを結晶化剤とする晶析方法は、インキュベーションを約20℃の温度と約3〜約10mg/mlの抗体濃度で約3〜約60日間行うように実施される。
【0031】
本発明の1特定態様では、ポリアルキレングリコールを2段階以上、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10段階で段階的に加える。驚くべきことに、このような段階的添加により、望ましくない非晶質蛋白質凝集物又は沈殿の同時形成を実質的に伴わずに抗体又は抗体フラグメント結晶の総収率を更に増加することができる。
【0032】
別の態様によると、結晶化混合物の以下の条件下でバッチ晶析を実施する:(1)ポリアルキレングリコール:約8〜約12%(w/v)PEG4000;(2)緩衝液:約0〜約0.3M酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウム(総酢酸塩又は総クエン酸塩);(3)(最終)pH:約5.0〜約5.4;(4)抗hTNFαフラグメント濃度:約3〜約10mg/ml;(5)温度:約18〜約24℃;(6)バッチ容量:約1〜約100リットル;(7)撹拌:なし;又は約1〜約100rpm;(8)期間:約1〜約60日間。
【0033】
1態様において、本発明は抗体又は抗体フラグメントと、結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含有する水性結晶化混合物を準備し、抗体又は抗体フラグメントの結晶が形成されるまで水性結晶化混合物をインキュベートすることにより、抗hTNFα抗体又は抗体結合フラグメントを結晶化するためのバッチ晶析方法として、少なくとも1種のポリアルキレングリコールを(a)1段階又は(b)2段階以上で提供し、ある段階で形成された抗体結晶を次段階の前又は次段階中に取出さず、結晶寸法制御条件下で結晶化を実施する方法を提供する。
【0034】
制御条件は1種以上の制御条件を任意組合せで含むことができる。1態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて約1〜約200rpmの範囲の速度で撹拌することに対応するか、又はこれを含む。別の態様において、制御条件は結晶化混合物を直径約2〜約100cmの範囲のローラー容器に入れて撹拌することに対応するか、又はこれを含む。更に別の態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応するか、又はこれを含み、ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する。更に別の態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応するか、又はこれを含み、ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する。更に別の態様において、制御条件は結晶化混合物をローラー容器に入れて約30分間〜約20日間、又はローラー容器に入れて約−15〜約+50℃の範囲の温度で撹拌することに対応するか、又はこれを含む。撹拌段階は結晶化混合物のローリング、かき混ぜ、振盪及び/又はタンブリングに対応するか、又はこれを含むことができる。
【0035】
別の側面において、本発明は例えば本明細書に定義する方法のいずれかにより製造された抗hTNFα抗体又は抗体フラグメントの結晶を提供する。
【0036】
1態様において、結晶は針状である。例えば、本発明の結晶は約2〜約500μm又は約100〜約300μmの最大長(l)と約1〜約100の長さ/直径(l/d)比をもつ針状形態により特徴付けることができる。このような針状結晶の高さはほぼ直径の寸法内である。
【0037】
別の側面において、本発明は(a)本明細書に定義する方法により製造された抗体又は抗体フラグメントの結晶と、(b)抗体結晶を安定に維持する少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物を提供し、組成物は固体、半固体又は液体製剤として提供される。別の態様において、本発明は(a)本発明の方法により製造された抗体の結晶と、(b)少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物を提供し、賦形剤は結晶を包埋又は封入する。
【0038】
別の態様において、抗体は約1mg/mlを上回る濃度で存在する。1特定態様において、抗体は約200mg/mlを上回る濃度、例えば約200〜約600mg/ml又は約300〜約500mg/mlの濃度で存在する。別の態様において、医薬組成物は約0.1〜約9.9%(w/w)の抗体結晶を含有する固体である。
【0039】
1態様において、賦形剤は少なくとも1種の生分解性又は非生分解性ポリマーキャリヤー及び/又は少なくとも1種の油性もしくは脂質キャリヤー(その組合せもしくはブレンド又はそのコポリマーを含む)を含む。
【0040】
典型的なポリマーキャリヤーはポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、多糖、ヒドロキシエチルデンプン、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマー、並びにSAIBから構成される群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0041】
脂質キャリヤーとしては脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質が挙げられる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物資源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0042】
油性(又は油性液体)キャリヤーとしては油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、液体トリグリセリド、ポリエトキシル化ヒマシ油、液体蝋及び高級アルコール等の油類(又は油性液体)が挙げられる。賦形剤は更に主にキャリヤーに関連する(封入/包埋)。
【0043】
脂質キャリヤーとしては脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質が挙げられる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物資源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0044】
油性(又は油性液体)キャリヤーとしては油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、液体トリグリセリド、液体蝋及び高級アルコール等の油類(又は油性液体)が挙げられる。
【0045】
別の側面において、本発明は本発明の方法により取得可能な抗体又は抗体フラグメント結晶を含有する注射用液体組成物を提供し、抗体又は抗体フラグメントは約10〜約400mg/ml又は約50〜約300mg/mlの範囲、例えば約200mg/mlの濃度で存在する。
【0046】
別の側面において、本発明は本発明の方法により取得可能な抗体又は抗体フラグメント結晶を含有する結晶スラリー組成物を提供し、抗体又は抗体フラグメントは約100mg/mlを上回る濃度、例えば約150〜約600mg/ml又は約200〜約400mg/mlの濃度で存在する。
【0047】
別の側面において、本発明は本発明の方法により取得可能な有効量の抗体結晶又は組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法を提供する。結晶及びその組成物の投与方法としては限定されないが、非経口経路、経口経路、吸入、注射又はその組合せによる投与が挙げられる。
【0048】
1特定態様において、本発明は治療有効量の抗体結晶を対象に投与する段階を含む対象におけるhTNFα関連疾患の治療方法を提供する。
【0049】
別の側面において、本発明はhTNFα関連疾患の治療用医薬組成物の製造用としての本発明の抗hTNFα抗体結晶の使用を提供する。
【0050】
本発明は更に医薬用としての上記に定義したhTNFα抗体フラグメント結晶を提供する。
【0051】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点と本発明自体は添付図面を参考に以下の好ましい態様の記載から更によく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】種々のローラー速度におけるMAK195F結晶の収率を時間の関数として示す。
【図2】種々のローラー速度で得られたMAK195F結晶の顕微鏡画像を示す。
【図3】MAK195F結晶の結晶長に及ぼすローラー速度の影響を示す。5種類の異なる速度の各々について種々のローラー速度の平均粒長を示す。
【図4】MAK195Fサンプルの二次導関数IRスペクトルを示す。A結晶懸濁液;B再溶解結晶。実線は結晶MAK195Fからのサンプルを表し、破線は液体標準を示す。夫々AはBioATRセルで記録し、BはAquaSpecセルで記録した。分かりやすくするために夫々サンプルと標準間の補償を挿入した。
【図5】25℃で6カ月間保存したMAK195Fサンプル(18% PEG4,000緩衝液中200mg/mL結晶蛋白質)の二次導関数IRスペクトルを示す。A結晶懸濁液;B再溶解結晶。夫々AはBioATRセルで記録し、BはAquaSpecセルで記録した。分かりやすくするために夫々サンプルと標準間の補償を挿入した。
【図6】MAK195F結晶懸濁液、液体製剤(いずれも200mg/mL)及びPEG4,000を含有するプラセボ懸濁緩衝液のDSCサーモグラムを示す。
【図7】SEMにより得られたMAK195F結晶の代表的な写真を示す。
【図8】結晶濃度と針直径に依存するMAK195F結晶懸濁液の注射適性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
A.定義
「抗体結晶の形成を可能にする条件」とは非撹拌条件下で結晶形成を生じる溶液の任意条件を意味する。これは混合物のpHや温度等の所与条件下で時間の経過と共に結晶形成を開始するために十分な濃度の少なくとも1種の結晶化剤と抗体分子を含有する溶液を準備することを意味する。
【0054】
「〜に対応する」とは本発明の趣旨では以下のことを意味する。
【0055】
結晶化混合物を特定形状のローラー容器に入れて特定速度及び/又は特定充填容量で撹拌することを含む特定結晶化技術が寸法制御結晶化の「基準システム」を構成する。当業者は前記基準システムの記載に基づき、各種条件下で寸法制御抗体結晶化を実施できよう。「各種条件」としては、例えばローラー容器での晶析工程の大規模化もしくは小規模化、又は各種撹拌条件(例えば振盪、かき混ぜ又はタンブリングによる撹拌)の適用、又は撹拌速度の変動、又はその組合せが挙げられる。「バッチ晶析方法」とは結晶化させようとする抗体を含有する結晶化混合物に好ましくは溶解形態の少なくとも1種の結晶化剤を加える段階を含む晶析方法を意味する。
【0056】
「マイクロスケール晶析方法」とは結晶化混合物の容量が0.1μL〜10μLである任意晶析方法、特に結晶化中に蒸気拡散を実施することが可能な任意方法を意味する。例えば、蒸気拡散法に基づく方法は、マイクロリットル範囲の小容量の抗体溶液に結晶化剤を含有するリザーバ緩衝液を添加する段階と;混合物の液滴を密閉容器に入れてリザーバ緩衝液のアリコートの隣に並べる段階と;蒸気拡散により液滴とリザーバの間で溶媒を交換させる段階を含み、前記段階の間に液滴の溶媒含量が変化し、適切な結晶化条件に達すると、結晶化が認められる。
【0057】
「結晶化剤」とは結晶化させようとする抗体の結晶形成を助長、強化又は促進する物質である。
【0058】
「結晶化溶液」は溶解形態の結晶化剤を含有する。好ましくは、前記溶液は水性系であり、即ちその液体成分は主に水から構成される。例えば、80〜100重量%又は95〜100重量%又は98〜100重量%を水から構成することができる。「リザーバ溶液」なる用語も蒸気拡散法によるマイクロスケール晶析に使用される「結晶化溶液」を意味する。
【0059】
「結晶化混合物」は抗体又はそのフラグメントの水溶液と結晶化溶液を含有する。
【0060】
「結晶」とは物質(例えば蛋白質)の固体状態の1形態であり、第2の固体形態即ち原則的に無秩序な不均質固体として存在する非晶質状態から区別される。結晶は格子と一般に呼ばれる規則的な三次元構造をもつ。抗体結晶は抗体分子の規則的な三次元配列を含む(Giege,R.et al.,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ed.,pp.1−16,Oxford University Press,New York(1999)参照)。
【0061】
「完全」ないし「無傷」の抗体とはその抗原(例えばhTNFα)をインビトロ及び/又はインビボで認識してこれと結合することが可能な機能的抗体である。抗体は抗体とその抗原の結合に関連する患者のその後の免疫系反応、特に直接細胞傷害作用、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を開始することができる。抗体分子は一般に相互に共有結合した2本の同一の重鎖(各々MW約50kDa)と、各々重鎖の一方と共有結合した2本の同一の軽鎖(各々MW約25kDa)から構成される構造をもつ。4本鎖は古典的「Y」字形モチーフとして配置されている。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVRないしVHと略称する)と重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3領域から構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRないしVLと略称する)と軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1個の領域CLから構成される。VH領域とVL領域は更に相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域と、その間に配置された比較的保存度の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域に分けることができる。各VH及びVLは一般にアミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3個のCDRと4個のFRから構成される。完全な抗体分子は2個の抗原結合部位をもち、即ち「二価」である。これらの2個の抗原結合部位は単一のhTNFα抗原に特異的であり、即ち抗体は「単一特異性」である。上記構造は種の相違により異なる場合がある。
【0062】
「モノクローナル抗体」とはBリンパ球(B細胞)の単一クローンに由来し、同一の抗原決定基を認識する抗体である。完全モノクローナル抗体は2本の完全な重鎖と2本の完全な軽鎖を含む上記古典的分子構造をもつ抗体である。モノクローナル抗体は抗体産生B細胞を不死化骨髄腫細胞と融合させ、細胞培養で持続的にモノクローナル抗体を産生するB細胞ハイブリドーマを作製することにより日常的に生産される。例えばファージディスプレイ技術を使用して細菌、酵母、昆虫、真核又は哺乳動物細胞培養でモノクローナル抗体を発現させる方法;遺伝子改変動物(ウシ、ヤギ、ブタ、ウサギ、ニワトリ)又は完全ヒトB細胞ゲノムを含み、これを発現するように改変されたトランスジェニックマウスでインビボ生産する方法;あるいはタバコやトウモロコシ等の遺伝子改変植物で生産する方法等の他の生産方法も利用できる。このような全起源に由来する抗体又はフラグメントを本発明により結晶化させることができる。
【0063】
本発明により結晶化させるモノクローナル抗体としては重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定種に由来又は特定抗体分類もしくは亜分類に属する抗体中の対応配列と同一又は相同であり、鎖のその他の部分が別の種に由来又は別の抗体分類もしくは亜分類に属する抗体中の対応配列と同一又は相同である「キメラ」抗体が挙げられる。1例として、マウス抗体の可変領域抗原結合部分とヒト抗体に由来する定常領域部分を含むマウス/ヒトキメラが挙げられる。
【0064】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態も本発明に含まれる。ヒト化抗体は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)又は超可変ループ(HVL)からの残基が所望機能をもつ非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類)のCDR又はHVLからの残基で置換されたヒト免疫グロブリンである。抗原結合親和性を改善するためにヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基を対応する非ヒト残基で置換することができる。更に、ヒト化抗体は対応するヒト又は非ヒト抗体部分のどちらにも存在しない残基を含むことができる。抗体効力を更に改善するためにこれらの改変が必要となる場合がある。
【0065】
「ヒト抗体」ないし「完全ヒト抗体」とはヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列をもつ抗体又は組換え生産された抗体である。本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ抗体を意味する。本発明のヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えばランダムもしくは部位特異的インビトロ突然変異誘発又はインビボ体細胞突然変異により導入される突然変異)を例えばCDR、特にCDR3に含むことができる。他方、本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はマウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列にグラフトした抗体を意味しない。
【0066】
本明細書で使用する「組換えヒト抗体」なる用語は組換え手段により作製、発現、創製又は単離された全ヒト抗体を意味し、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylor,L.D.,et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295参照)又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列のスプライシングを伴う他の任意手段により作製、発現、創製もしくは単離された抗体が挙げられる。このような組換えヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ。しかし、所定態様では、このような組換えヒト抗体にインビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を使用する場合にはインビボ体細胞突然変異誘発)するため、組換え抗体のVH領域とVL領域のアミノ酸配列はヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来するが、インビボヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然では存在しない場合もある配列である。
【0067】
本明細書で使用する「中和抗体」(又は「hTNFα活性を中和した抗体」)とはhTNFαと結合することによりhTNFαの生物活性を阻害する抗体を意味する。
【0068】
「親和性成熟」抗体とは1個以上の超可変領域の1カ所以上の改変により、親抗体に比較して抗体の抗原親和性が改善された抗体である。親和性成熟抗体は標的抗原に対する親和性値がナノモル又はピコモルとなる。親和性成熟抗体は当分野で公知の方法により生産される。Marks et al.(1992),Bio/Technology 10:779−783はVH及びVL領域シャフリングによる親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発はBarbas et al.(1994)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813;Scier et al.(1995)Gene 169:147−155;Yelton et al.(1995)J.Immunol.155:1994−2004;Jackson et al.(1995)J.Immunol.154(7):3310−9;及びHawkins et al.(1992)J.Mol Biol.226:889−896に記載されている。
【0069】
本明細書で使用する「単離抗体」とは、異なる抗原特異性をもつ他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えばhTNFαと特異的に結合する単離抗体はhTNFα以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。他方、hTNFαと特異的に結合する単離抗体は他の種に由来するhTNFα分子等の他の抗原に対して交差反応性をもつ場合がある。更に、単離抗体は他の細胞材料及び/又は化学薬品を実質的に含まない場合がある。
【0070】
本発明により結晶化された特定「親」抗体の「機能的等価物」とは同一の抗原特異性を示すが、アミノ酸レベル又は糖鎖付加レベルで「親」抗体の分子組成と相違する抗体である。但し、相違は単に結晶化条件が本明細書に開示するようなパラメータ範囲から外れないような程度でよい。
【0071】
抗体結晶の「封入」とは、結晶がコーティング材料の少なくとも1層により個々に被覆された製剤を意味する。好ましい1態様において、このようなコーティング付き結晶は溶解速度を持続させることができる。
【0072】
抗体結晶の「包埋」とは、封入の有無に拘わらず、結晶が分散状態で固体、液体又は半固体キャリヤーに組込まれた製剤を意味する。このような包埋結晶化抗体分子はキャリヤーから制御下で持続的に放出又は溶解させることができる。
【0073】
「ポリアルキレンポリオール型の結晶化剤」を以下により詳細に定義する。
【0074】
本発明により使用される「ポリアルキレンポリオール」とは直鎖又は分岐鎖、特に直鎖のポリC−C−アルキレンポリオールである。ポリエーテルは2〜6個、2〜4個、特に2又は3個の好ましくは隣接するヒドロキシル基と、好ましくは直鎖炭素主鎖を形成する2〜6個、特に2、3又は4個の炭素原子をもつ少なくとも1種の多官能性脂肪族アルコールから形成される。非限定的な例はエチレン−1,2−ジオール(グリコール)、プロピレン−1,2−ジオール、プロピレン−1,3−ジオール、n−ブチレン−1,3−ジオール及びn−ブチレン−1,4−ジオールである。特に好ましいジオールはグリコールである。
【0075】
「ポリアルキレンポリオール」なる用語は更に上記の誘導体も含む。非限定的な例はアルキルエステル及びエーテル、特にモノアルキルエーテル及びジアルキルエーテルである。「アルキル」とは特に直鎖又は分岐鎖C−C−アルキル残基として定義され、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル及びn−ヘキシルが挙げられる。
【0076】
本発明により使用されるポリアルキレンポリオール、特にポリアルキレングリコールは更に広範囲の分子量により特徴付けられる。数又は重量平均分子量として表した分子量範囲は一般に約400〜約10,000g/mol、例えば約1,000〜約8,000g/mol、又は約2,000〜約6,000g/mol、約3,000〜約6,000g/mol又は約3,200〜約6,000g/mol、例えば約3,350〜約6,000g/mol、約3,350〜約5000g/mol又は約3,800〜約4,200g/mol、特に約4,000g/molである。
【0077】
特に好ましいポリアルキレンポリオールはポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)と対応するランダム又はブロックコポリマーである。適切なポリオールの特定例はPEG2,000、PEG3,000、PEG3,350、PEG4,000、PEG5,000及びPEG6,000である。
【0078】
結晶化混合物中のポリアルキレンポリオール濃度、特にPEG濃度は約5〜約30%(w/v)、例えば約7〜約15%(w/v)又は約9〜約16%(w/v)又は約9〜約14%(w/v)又は約9〜約12%(w/v)である。平均分子量約4,000のPEGを結晶化混合物中に1段階法では約9〜約12%(w/v)、多段階法では約10〜約16%(w/v)の濃度で使用することが好ましい。
【0079】
本発明のポリアルキレンポリオールは単一種のポリオールから構成することもできるし、少なくとも2種類の異なるポリオールの混合物から構成することもでき、ポリオールはランダムに重合してもよいし、ブロックコポリマーとして存在するものでもよい。
【0080】
本発明の好ましい1態様では、抗体蛋白質溶液と結晶化溶液を約1:1の比で混合する。従って、元の結晶化溶液中の緩衝剤/結晶化剤のモル濃度は結晶化混合物中のモル濃度の約2倍である。
【0081】
1特定態様において、結晶化混合物は約1ml〜約20,000リットル、又は1ml〜約15,000リットル、又は1ml〜約12,000リットル、又は約1ml〜約10,000リットル、又は約1ml〜約6,000リットル、又は約1ml〜約3,000リットル、又は約1ml〜約1,000リットル、又は約1ml〜約100リットル、例えば約50ml〜約8リットル、又は約100ml〜約5リットル、又は約1リットル〜約3リットル、又は約1リットル〜約1,000リットル、又は約10リットル〜約500リットルの範囲のバッチ容量を含む。1態様において、結晶化は本明細書に記載するような結晶寸法制御条件下で実施される。
【0082】
B.晶析方法
特に指定しない限り、本発明の晶析方法は任意抗体又は抗体フラグメントに適用可能である。抗体はポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体は各々糖鎖付加又は非糖鎖付加型のキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、非ヒト抗体(例えばマウス抗体)とすることができる。抗体は例えば二重特異性抗体(dsAb)又は二重可変領域抗体(DADAb)でもよい。
【0083】
特に指定しない限り、本発明の晶析方法は当分野で周知の技術的装置、化学薬品及び手法を利用する。しかし、上記に説明したように、本発明は特定結晶化条件、特に特定結晶化剤を選択し、場合により対応物質(緩衝液、抗体、結晶化剤)の特定pH条件及び/又は濃度範囲と組合せることにより、抗体又は抗体フラグメントの安定な結晶を再現可能に寸法制御条件下及び/又は大規模に製造することが初めて可能になり、これらの結晶を更に処理し、非常に有利な優れた医薬組成物の活性成分を形成できるという驚くべき発見に基づく。
【0084】
晶析方法を実施するための出発材料は一般に結晶化させようとする抗体の濃厚溶液を含む。蛋白質濃度は例えば約5〜約75mg/mlの範囲とすることができる。溶液には溶解抗体を安定化させる添加剤を添加することができる。1態様では、添加剤を予め除去することが推奨される。これは本明細書に記載する緩衝液交換段階を実施することにより達成することができる。
【0085】
好ましくは、本発明の晶析方法を実施するための出発材料はpHを約3.2〜約8.2又は約4.0〜約8.0、特に約4.5〜約.5、好ましくは約5.0〜約5.5の範囲に調整した水溶液中に抗体を含有する。pHは適切な緩衝液を終濃度約1〜約500mM、特に約1〜約100mM又は約1〜約10mMで添加することにより調整することができる。溶液を更に安定化させるために、例えば溶液の総重量に対して約0.01〜約15又は約0.1〜約5又は約0.1〜約2重量%の割合で例えば塩類、糖類、糖アルコール類及び界面活性剤等の添加剤を溶液に添加することができる。賦形剤は医薬製剤に日常的に添加される生理的に許容可能な化合物から選択することが好ましい。非限定的な例として、塩類(例えばNaCl);界面活性剤(例えばポリソルベート80(Tween 80)やポリソルベート20(Tween 20));糖類(例えばスクロースやトレハロース);糖アルコール類(例えばマンニトールやソルビトール);緩衝剤(例えば上記のようなリン酸水素ナトリウム緩衝液及びリン酸水素カリウム緩衝液等のリン酸緩衝系、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、マレイン酸緩衝液又は琥珀酸緩衝液、並びにヒスチジン緩衝液);並びにアミノ酸(例えばヒスチジン、アルギニン及びグリシン)を挙げることができる。
【0086】
緩衝液交換は例えば透析、透析濾過又は限外濾過等の常法により実施することができる。
【0087】
出発材料として使用する水溶液の初期蛋白質濃度は約0.5〜約280mg/ml又は約1〜約50mg/mlの範囲とすべきである。
【0088】
(1ml〜20,000リットルの範囲であり得る)目的最終バッチ寸法に応じて、初期容量の抗体水溶液を不活性材料(例えばガラス、ポリマー又は金属)製の適当な容器(例えば液体容器、ビン又はタンク)に入れる。水溶液の初期容量は最終バッチ寸法の約30〜約80%、通常は約50%に対応する量とすることができる。
【0089】
必要に応じて、容器に充填後の溶液を標準条件に設定する。特に、温度を約4℃〜約37℃の範囲に調整する。必要な場合又は有利な場合には、温度を一定に維持する必要がなく、例えば温度を変化させてもよく、所望形状の結晶を生じる温度プロファイルを晶析工程中に適用してもよい。
【0090】
次に、場合により抗体溶液と同様に予め条件設定した適当な濃度の結晶化剤を含有する結晶化溶液を抗体溶液に加え、結晶化混合物を形成する。
【0091】
第1段階では、通常は初期抗体蛋白質濃度の比較的高い初期結晶化混合物中に凝集物/沈殿を実質的に形成せずに結晶化を開始するために十分な約9〜11重量%の第1の終濃度まで大部分の結晶化剤を抗体溶液に加える。第1の結晶形成最大値に達するために十分な時間インキュベーション後、場合によりそれまでに形成された抗体結晶を除去した後に、結晶化剤の別のアリコートを加える。こうして結晶化剤の濃度を第2の終濃度まで約0.5〜約3重量%ずつ更に増加する。十分な時間、例えば約1時間〜約5日間更にインキュベーションする間に、実質的に凝集物/沈殿を形成せずに更に抗体結晶が形成され、上清又は「母液」から分離することができる。実質的に凝集物/沈殿を形成せずに更に抗体結晶形成が誘導される限り、同様に結晶化剤の補充を1回以上繰返すことができる。こうして結晶化剤の最終濃度は約12〜約20重量%の値に達することができる。
【0092】
別の態様によると、段階a)で得られた結晶化混合物に結晶化を開始又は増進するために種晶として適切な量の既存抗体結晶、例えば抗hTNFα抗体結合フラグメント結晶を添加できるように本発明の晶析方法を実施してもよい。
【0093】
結晶化溶液の添加は2液の混合を助長するために場合により温和な撹拌下で連続的又は不連続的に実施する。蛋白質溶液を撹拌下に添加し、結晶化溶液(又はその固体形態の結晶化剤)を制御下に添加する条件下で添加を実施することが好ましい。
【0094】
本発明の好ましい1態様では、少なくとも1種の主要パラメータ(例えばローラー速度)を選択すると、晶析工程中に形成される抗体結晶の平均粒度の制御が可能になる条件下で結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応する制御条件下で結晶化を実施する。例えば、工程は結晶形成プラトーもしくは最大結晶収率に到達するまで、又は晶析工程中の所定時間持続し、例えば時間間隔当たり(例えば1日当たり)5%超又は10%超又は15%超の結晶化速度の増加を特徴とし得る主結晶形成相の間持続する。
【0095】
本明細書で使用する「〜に対応する」とは、特定形状のローラー容器内で特定速度の撹拌を適用する特定結晶化技術を寸法制御結晶化の「基準システム」とみなすべきであることを意味する。当業者はこのような基準システムの記載に基づき、各種条件下で寸法制御抗体結晶化を実施することができ、このような条件としては、例えばローラー容器での晶析工程の大規模化もしくは小規模化、又は各種撹拌条件(例えば震盪、かき混ぜもしくはタンブリング又はその組合せによる撹拌)の適用が挙げられる。
【0096】
少数の日常的実験を実施することにより、当業者は本発明の基準ローラー容器システムに関する本明細書の一般教示を小規模化又は大規模化したローラー容器晶析法に応用することができ、あるいは例えば適切な容器内での適切な震盪、かき混ぜ又はタンブリング速度を選択したり、適切な蛋白質及び結晶化剤濃度、温度、期間、液体結晶化混合物の容器充填レベル及び/又は混合物のpHを選択することにより、適切な条件下の結晶化混合物の震盪、かき混ぜ又はタンブリングに基づく寸法制御晶析法に応用することができよう。
【0097】
本発明の基準システムによると、撹拌の1つの主要パラメータはローラー速度である。特に、ローラー速度は約1〜約200rpmの範囲の値に設定される。ローラー速度は範囲内又は範囲内の一定区間内で変動させることができ、例えば範囲の約±1〜約±5、又は約±2〜約±4rpmとすることができる。しかし、1つの特定値に速度を設定し、晶析工程期間中、一定に維持することが好ましい。例えば、ローラー速度は約2〜約150rpm、又は約5〜約120rpm又は約8〜約100rpmの範囲の値、例えば10、20、30、40、50、60、70、80又は90rpmに設定することができる。当業者はローラー容器での結晶化の大規模化もしくは小規模化又は震盪、かき混ぜもしくはタンブリングによる寸法制御結晶化に合わせて対応する適切な速度値を選択することができる。
【0098】
基準システムの別の態様によると、結晶化混合物を直径約2〜約100cm、例えば約5〜約80又は約10〜約50cmのローラー容器に入れて撹拌することに対応する制御条件下で結晶化を実施する。当然のことながら、基準ローラー容器システムで寸法制御結晶化に得られる実験設定を小規模化又は好ましくは大規模化により寸法又は容積の小さい容器又は好ましくは大きい容器(ローラー容器)に応用することができる。また、かき混ぜ、震盪又はタンブリングによる撹拌に適した小容量又は好ましくは大容量の他の型の容器に応用することもできる。適切な容器形状は当業者に周知である。
【0099】
基準システムの別の態様によると、結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応する制御条件下で寸法制御結晶化を実施し、ローラー容器の総容積の約1〜約100容量%、例えば約4〜約99、約10〜約80、約20〜約70、約30〜約60又は約40〜約50容量%に結晶化混合物を充填する。これらのパラメータ範囲は当然のことながら別の寸法の容器及びかき混ぜ、震盪又はタンブリングによる撹拌に使用する容器に応用することができる。
【0100】
基準システムの別の態様によると、結晶化混合物をローラー容器に入れて30分間〜約60日間、例えば約1〜約40日間、約2〜約20日間又は約3〜約10日間撹拌することに対応する制御条件下で寸法制御結晶化を実施する。これらのパラメータ範囲は当然のことながら、かき混ぜ、震盪又はタンブリング式撹拌による寸法制御結晶化に応用することができる。
【0101】
基準システムの別の態様によると、結晶化混合物をローラー容器に入れて約−15〜約+50℃、例えば約0〜約40、約5〜約30、約10〜約25又は約15〜約20℃の範囲の温度で撹拌することに対応する制御条件下で寸法制御結晶化を実施する。これらのパラメータは当然のことながら、かき混ぜ、震盪又はタンブリング式撹拌による寸法制御結晶化に応用することができる。
【0102】
ローラー容器での寸法制御結晶化に好ましい基準システムは以下の主要パラメータの1つ以上、特にその組合せを適用する:
ローラー容器容積:約450〜約550ml、好ましくは約500ml
ローラー容器直径:約6〜約10cm、好ましくは約8cm
ローラー速度:約1〜約100rpmの値に設定
充填:約5〜約15、好ましくは約10容量%
温度:約15〜約25、好ましくは約20℃
期間:約2〜約20、好ましくは約5〜約10日間。
【0103】
本発明の教示に従うことにより、約1〜約1000μm、例えば約5〜約400、約10〜約00、約15〜約150、約15〜約100、約15〜約50又は約18〜約40μmの範囲内に平均結晶粒度(即ち平均直径又は平均長)を調整することが可能である。1態様において、抗体フラグメントは抗hTNFα抗体結合フラグメントである。1特定態様において、抗体フラグメントはFab又はF(ab’)フラグメント、例えば寄託番号ECACC87050801のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体MAK195のF(ab’)フラグメントであるMAK195Fである。
【0104】
1特定態様において、MAK195Fは約0.5〜280mg/mlの範囲の初期蛋白質濃度で存在しており、ローラー容器に入れて約15〜約25℃の範囲の温度にて約1〜約60日間、約5〜約100rpmの範囲の速度で撹拌する。
【0105】
MAK195F結晶の寸法制御製造の好ましい1態様では、初期MAK195F蛋白質濃度が約0.5〜約280mg/ml、特に約1〜約15mg/mlの範囲、好ましくは約5mg/mlであるMAK195F含有結晶化混合物約5〜約80容量%を容積約100ml〜約1000リットル及び直径約5〜約50cmの範囲のローラー容器に充填し、約1〜約100rpmの範囲の速度で約1〜約60日間、約15〜約25℃の範囲の温度で撹拌する。
【0106】
中規模結晶化の1態様において、MAK195F蛋白質濃度は約1〜約15mg/ml、好ましくは約5mg/mlであり、ローラー容器は容積約100〜約1000ml、直径約5〜約10cmの範囲であり、結晶化混合物約5〜約20容量%を充填し、約1〜約100rpmの範囲のローラー速度で約1〜約10日間、約15〜約25℃の温度で撹拌する。
【0107】
大規模結晶化の1態様において、MAK195F蛋白質濃度は約1〜約15mg/ml、好ましくは約5mg/mlであり、容積約10〜約20,000リットル、直径約10cm〜約100cmの範囲のローラー容器に結晶化混合物約20〜約90容量%を充填し、約1〜約10rpmの範囲のローラー速度で約1〜約10日間、約15〜約25℃の温度で撹拌する。
【0108】
上記のようなポリアルキレンポリオール、特にポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)、又は上記のような少なくとも2種類の異なるポリアルキレンポリオールの混合物を結晶化剤として添加することにより、抗体結晶の形成を開始する。結晶化溶液は結晶化混合物中に約5〜30%(w/v)の範囲のポリアルキレンポリオールの終濃度を得るために十分な濃度の結晶化剤を含有する。
【0109】
好ましくは、結晶化溶液は更に結晶化混合物のpHを約4〜約6の範囲に調整できるようにするのに適した濃度の酸性緩衝液、即ち抗体溶液の緩衝液とは異なる緩衝液を含有する。
【0110】
結晶化溶液への結晶化剤の添加の完了後、抗体結晶の最大収率を得るために混合物を約1時間〜約250日間更に保温してもよい。必要に応じて、混合物を例えば撹拌、温和にかき混ぜ、ローリング又は当分野で公知の方法で運動させてもよい。結晶寸法を更に制御することが望ましい場合には、(上記に既に説明したような)制御条件下の撹拌に基づく寸法制御晶析方法を本発明のバッチ晶析方法に組込むことができる。
【0111】
得られた結晶を公知方法、例えば濾過又は遠心により分離することができ、例えば室温又は4℃にて約200〜約20,000rpm、好ましくは約500〜約2,000rpmで遠心する。残りの母液は捨ててもよいし、例えば更に結晶化剤を加えることにより更に処理してもよい。
【0112】
必要に応じて、単離した結晶を洗浄後、乾燥してもよいし、懸濁抗体の保存及び/又は最終利用に適した別の溶媒系に母液を交換してもよい。
【0113】
本発明により形成される抗体結晶は既に上述したように種々の形状をとることができる。治療投与では、結晶の寸法は投与経路により異なり、例えば皮下投与の場合の結晶寸法は静脈内投与よりも大きくすることができる。蛋白質結晶と低分子量有機及び無機分子の結晶の両者について従来記載されているように、結晶の形状は特定の付加的な添加剤を結晶化混合物に添加することにより変えることができる。
【0114】
必要に応じて、結晶が実際に抗体の結晶であることを検証してもよい。抗体の結晶を複屈折について顕微鏡分析することができる。一般に、内部立方対称以外の結晶では偏光の偏光面が回転する。更に別の方法では、結晶を単離し、洗浄し、再可溶化させ、SDS−PAGEにより分析し、場合により検出抗体で染色することができる。場合により、再可溶化させた抗体を更に標準アッセイによりその抗原との結合について試験することもできる。
【0115】
本発明により得られた結晶を更に相互に架橋させてもよい。このような架橋は結晶の安定性を増すことができる。結晶の架橋方法は例えば本明細書に援用する米国特許第5,849,296号に記載されている。グルタルアルデヒド等の二官能性試薬を使用して結晶を架橋させることができる。架橋後、結晶を凍結乾燥し、例えば診断又は治療用途に備えて保存することができる。
【0116】
場合により、結晶を乾燥することが望ましい場合がある。窒素ガス等の不活性ガス、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、蒸発、トレー乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又はローラー乾燥等により結晶を乾燥することができる。適切な方法は当分野で周知である。
【0117】
本発明により形成された結晶は元の結晶化溶液中に維持してもよいし、洗浄し、不活性キャリヤー又は成分等の他の物質を加え、本発明の結晶を含有する組成物又は製剤を形成してもよい。このような組成物又は製剤は例えば治療及び診断用途で使用することができる。
【0118】
好ましい1態様では、製剤の結晶を賦形剤により包埋又は封入するように適切なキャリヤー又は成分を本発明の結晶に添加する。適切なキャリヤー又は結晶化剤はポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン酸無水物]セバシン酸、、ポリグラクチン、ポリシロキサン、ポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、ヒドロキシエチルデンプン、そのブレンド及びコポリマー、SAIB、脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質から構成される非限定的な群から選択することができる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物資源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0119】
C.組成物
別の側面において、本発明は少なくとも1種のキャリヤー/賦形剤と共に抗体結晶を含有する組成物及び製剤を提供する。製剤は固体、半固体又は液体とすることができる。
【0120】
本発明の製剤は必要な純度の抗体をキャリヤー、賦形剤及び/又は安定剤等の生理的に許容可能な添加剤(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edn,Osol,A.Ed.(1980)参照)と混合することにより懸濁液として保存及び/又は使用に適した形態で製造され、あるいは凍結乾燥又は別の方法で乾燥される。場合により、別の抗体、生体分子、化学的又は酵素により合成された低分子量分子等の他の活性成分も加えてもよい。
【0121】
許容可能な添加剤は使用する用量及び濃度でレシピエントに非毒性である。その非限定的な例を以下に挙げる:
−酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸及び酒石酸等の酸性化剤;
−ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、イソブタン、プロパン及びトリクロロモノフルオロメタン等のエアゾール用噴射剤;
−二酸化炭素及び窒素等の空気置換剤;
−メチルイソブチルケトン及びオクタ酢酸スクロース等のアルコール変性剤;
−アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びトロラミン等のアルカリ化剤;
−ジメチコン及びシメチコン等の消泡剤;
−塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズアルコニウム溶液、塩化ベンズエトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール及びチモール等の抗菌防腐剤;
−アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール及びトコフェロール賦形剤等の酸化防止剤;
−酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、第一リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム溶液、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、ヒスチジン等の緩衝剤;
−エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及び塩並びにエデト酸等のキレート剤;
−カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬品用艶出し剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステメ、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルフタル酸塩、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋、微結晶蝋、ゼイン、ポリアミノ酸、他のポリマー(例えばPLGA等)、及びSAIB等のコーティング剤;
−酸化第二鉄等の着色剤;
−エチレンジアミン四酸化及び塩(EDTA)、エデト酸、ゲンチシン酸エタノールアミド及び硫酸オキシキノリン等の錯化剤;
−塩化カルシウム、硫酸カルシウム及び二酸化ケイ素等の乾燥剤;
−アラビアガム、コレステロール、ジエタノールアミン(付加物)、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノ及びジグリセリド、モノエタノールアミン(付加物)、オレイン酸(付加物)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミン及び乳化蝋等の乳化剤及び/又は可溶化剤;
−粉末セルロース及び精製珪藻土等の濾過助剤;
−アネトール、ベンズアルデヒド、エチルバニリン、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、オレンジ花油、ハッカ、ハッカ油、ハッカ精、バラ油、高濃度バラ水、チモール、トルーバルサムチンキ、バニラ、バニラチンキ及びバニリン等のフレーバー及び香料;
−ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素及びタルク等の流動促進剤及び/又は凝結防止剤;
−グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール及びソルビトール等の湿潤剤;
−ラノリン、無水ラノリン、親水性軟膏、白色軟膏、黄色軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ペトロラタム、親水性ペトロラタム、白色ペトロラタム、バラ水軟膏及びスクアレン等の軟膏基剤;
−ヒマシ油、ラノリン、鉱物油、ペトロラタム、ギ酸ベンジル、クロロブタノール、フタル酸ジエチル、ソルビトール、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジアセチル、グリセリン、グリセロール、モノ及びジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル及びエタノール等の可塑剤;
−低分子量(約10残基未満)等のポリペプチド;
−血清アルブミン、ゼラチン及び免疫グロブリン等の蛋白質;
−酢酸セルロース膜等のポリマー膜;
−アセトン、アルコール、希アルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーン油、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、落花生油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、胡麻油、注射用水、注射用滅菌水、洗浄用滅菌水、精製水、液体トリグリセリド、液体蝋及び高級アルコール等の溶剤;
−粉末セルロース、活性炭、精製珪藻土、二酸化炭素吸着剤、水酸化バリウム、石灰及びソーダ石灰等の吸着剤;
−水素化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステル蝋、硬質脂肪、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化蝋、白蝋及び黄蝋等の硬化剤;
−カカオバター、硬質脂肪及びポリエチレングリコール等の坐剤基剤;
−アラビアガム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微結晶及びカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントガム及びキサンタンガム等の懸濁剤及び/又は増粘剤;
−アスパルテーム、デキストレート、デキストロース、デキストロース賦形剤、フルクトース、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクロース、圧縮糖、粉糖及びシロップ等の甘味剤;
−アラビアガム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、糊化デンプン及びシロップ等の錠剤結合剤;
−炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、糊化デンプン、スクロース、圧縮糖及び粉糖等の錠剤及び/又はカプセル希釈剤;
−アルギン酸、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン及び糊化デンプン等の錠剤崩壊剤;
−ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、軽鉱物油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、精製ステアリン酸、タルク、水素化植物油及びステアリン酸亜鉛等の錠剤及び/又はカプセル滑沢剤;
−デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、塩化ナトリウム等の浸透圧調節剤;
−フレーバー入り及び/又は甘味剤入り芳香エリキシル、化合物ベンズアルデヒドエリキシル、イソアルコールエリキシル、ハッカ水、ソルビトール溶液、シロップ及びトルーバルサムシロップ等の溶媒;
−油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、固体キャリヤー粒状糖、注射用滅菌静菌水、静菌塩化ナトリウム注射液、液体トリグリセリド、液体蝋及び高級アルコール等の溶媒;
−シクロメチコン、ジメチコン及びシメチコン等の撥水剤;
−塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドクサートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポロキサマー、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40、水素化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル50、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20、セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン及びチロキサポール等の湿潤剤及び/又は可溶化剤。
【0122】
安定性及び/又は持続放出を実現するために結晶にポリマーキャリヤーを添加してもよい。このようなポリマーとしては生体適合性で生分解性のポリマーが挙げられる。ポリマーキャリヤーは単一ポリマー種でもよいし、複数のポリマー種の混合物から構成してもよい。ポリマーキャリヤーの非限定的な例は上記に挙げた通りである。
【0123】
好ましい成分又は賦形剤の例を以下に挙げる:
−グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリン及びヒスチジン等のアミノ酸の塩;
−グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びリボース等の単糖類;
−ラクトース、トレハロース、マルトース及びスクロース等の二糖類;
−マルトデキストリン、デキストラン、デンプン及びグリコーゲン等の多糖類;
−マンニトール、キシリトール、ラクチトール及びソルビトール等のアルジトール;
−グルクロン酸及びガラクツロン酸;
−メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−(3−シクロデキストリン)等のシクロデキストリン類;
−塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ホウ酸、炭酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機塩類;
−酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩及び乳酸塩等の有機塩類;
−アラビアガム、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン及び他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、蝋、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体等の乳化剤又は可溶化剤;並びに
−寒天、アルギン酸とその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースとその誘導体、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチロキサポール等の増粘剤。
【0124】
本明細書に記載する製剤は更に有効量の結晶抗体を含有する。特に、本発明の製剤は「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明の抗体結晶を含有することができる。「治療有効量」とは必要な用量と期間で所望治療結果を達成するために有効な量を意味する。抗体結晶の「治療有効量」は個体の疾患状態、年齢、性別及び体重や、個体に所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子により変動し得る。治療有効量は抗体の有益な治療作用が毒性ないし有害作用を上回る量でもある。「予防有効量」とは必要な用量と期間で所望予防結果を達成するために有効な量を意味する。一般に、疾患以前又は疾患の初期段階の対象では予防用量を使用するので、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0125】
適切な用量は標準方法を使用して容易に決定することができる。抗体を患者に一度に投与するか又は一連の治療で投与すると適切である。例えば1回もしくは2回以上に分けて投与するか、又は連続輸液により投与するかに関係なく、上記因子に応じて抗体約1μg/kg〜約50mg/kg、例えば約0.1〜約20mg/kgが患者に投与する初期候補用量である。典型的な1日又は1週間用量は病態に応じて約1μg/kg〜約20mg/kg又はそれ以上とすることができ、疾患症状の所望の抑制が得られるまで投与を繰返す。しかし、他の投与レジメンが有用な場合もある。場合により、製剤は再可溶化時に少なくとも約1g/L以上の濃度の抗体を含有する。他の態様では、抗体濃度は再可溶化時に少なくとも約1g/L〜約100g/Lとする。
【0126】
抗体の結晶又はこのような結晶を含有する製剤は単独で投与してもよいし、医薬製剤の一部として投与してもよい。本発明の結晶は経口、非経口、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼球、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所又は頭蓋内経路で投与することができ、あるいは口腔内に投与してもよい。投与技術の特定例としては、肺吸入、病巣内投与、有針注射、乾燥粉末吸入、皮膚エレクトロポレーション、エアゾール送達及び無針注射技術(無針皮下投与を含む)が挙げられる。
【0127】
hTNFα関連疾患は以下の疾患リストから選択することができる。
【0128】
【表1】








【0129】
hTNFα関連疾患は以下の疾患リストから選択することもできる:リウマチ性脊椎炎、肺障害、腸障害、心臓障害、炎症性骨障害、骨吸収疾患、ウイルス性肝炎、劇症肝炎、凝固障害、熱傷、再潅流障害、ケロイド形成、瘢痕組織形成、発熱、歯周病、肥満症及び放射線傷害;脊椎関節症、代謝障害、貧血、疼痛、肝障害、皮膚障害、爪障害、特発性肺線維症(IPF)、貧血、疼痛、クローン病関連障害、慢性プラーク乾癬、加齢性悪液質、脳浮腫、炎症性脳損傷、薬物反応、脊髄内及び/又は周囲の浮腫、家族性周期性発熱、フェルティ症候群、連鎖球菌感染後糸球体腎炎又はIgA腎症、人工器官の緩み、多発性骨髄腫、癌、多臓器障害、睾丸炎、骨溶解、急性、慢性及び膵膿瘍を含む膵炎、歯周病、進行性腎不全、偽痛風、壊疽性膿皮症、再発性多発性軟骨炎、硬化性胆管炎、脳卒中、胸腹部大動脈瘤修復(TAAA)、黄熱病ワクチン接種関連症候群、耳関連炎症性疾患(例えば慢性耳炎症又は小児耳炎症)、並びに脈絡膜血管新生又は狼瘡。
【0130】
D.MAK195F
MAK195FはAfelimomab(登録商標)とも呼ばれ、概算分子量100kDaの腫瘍壊死因子α(TNFα)に特異的なマウスIgGモノクローナル抗体のF(ab’)フラグメントである。F(ab’)フラグメントはIgGモノクローナル抗体のペプチド消化物により産生され、2個のヘテロ二量体から構成される。ヘテロ二量体はIgG抗体の軽鎖ポリペプチドと重鎖ポリペプチドのFd’部分から構成される。抗体分子の4本の鎖は内部でジスルフィド結合により相互に結合されている。軽鎖と重鎖のFd’部分の全システイン残基がジスルフィド結合に関与している。以下のシステイン残基対がジスルフィド結合により結合されると予想される。軽鎖内の結合:L23−L88とL134−L194、Fd’フラグメント内の結合:H22−H95とH144−H198、軽鎖とFd’フラグメント間の結合:L214−H132、Fd’フラグメント間の結合:H229−H229。予想されるジスルフィドパターンはAfelimomab(登録商標)ポリペプチドのアミノ酸配列と、既知ジスルフィド構造をもつIgG抗体の高度に相同のアミノ酸配列との比較に基づく。ジスルフィド結合の形成は全ジスルフィド結合である程度まで不完全であり、F(ab’)分子1個当たり約0.3個のシステイン残基が遊離システインとして存在することが分かっている。
【0131】
軽鎖は各々214アミノ酸を含む。軽鎖のアミノ酸配列を以下に示す。アスパラギン残基1個(AsnL157)の脱アミノ化以外に、軽鎖の共有構造の変異は検出されなかった。完全IgG抗体の重鎖のアミノ酸配列は各々447アミノ酸を含む。アミノ酸配列を以下に示す。cDNA配列に由来する重鎖のN末端はアミノ酸グルタミンから開始する。このアミノ酸は完全にピログルタミン酸に変換される。
【0132】
【化1】

【0133】
N末端Fd’フラグメントの形成に関与する蛋白分解開裂はヒンジ領域で行われ、H233位(得られるFd’フラグメントのC末端 ...PPGN(配列番号3))、H235位(...PPGNIL(配列番号4))、H236位(...PPGNILG(配列番号5))、H239位(...NILGGPS(配列番号6))、H240位(...NILGGPSV(配列番号7))及びH241位(...NILGGPSVF(配列番号8))でアミノ酸のC末端側に開裂を生じる。H236位の開裂を除き、開裂位置はAfelimomab(登録商標)APIの製造に使用される蛋白分解剤であるペプシンに特異的である。H236位の開裂はカテプシンDに起因することが分かった。カテプシンDは無細胞上清中に存在しており、ペプシン等の酸性プロテアーゼである。この内在プロテアーゼの含量はクロマトグラフィー段階により低下させることができる。ペプシンの限られた特異性により、F(ab’)分子の重鎖ポリペプチドのC末端はある程度の不均一性を示す。
【0134】
SerH222の部分O−結合型糖鎖付加もAfelimomab(登録商標)分子の不均一性の一因である。Fd’フラグメントの約70%は糖鎖付加されていない。糖鎖付加フラグメントのうち、SerH222に結合した主要なオリゴ糖構造はGalNAc−Gal−NGNAとして同定された(GalNAc:N−アセチルガラクトサミン、Gal:ガラクトース、NGNA:N−グリコリルノイラミン酸)。更に、程度は低いが、2個のNGNA部分をもつオリゴ糖ともたないオリゴ糖も認められた(下記参照)。
【0135】
【表2】

【0136】
以下、実施例により本発明の実施について更に詳細に説明するが、以下の実施例は例証のみを目的とし、本発明を限定するものと解釈すべきではない。当業者は以下の記載の概説部分と自身の一般知識に基づき、過度の実験を要することなしに本発明の他の態様に想到できよう。
【0137】
実施例
A.材料
a)蛋白質
全実験はMAK195FロットG008.01E/PZ0105P025を初期mAb濃度12.39mg/mLで使用して実施した。
【0138】
b)精製化学薬品
酢酸ナトリウムはGrussing GmbH,Filsumから入手した。ポリエチレングリコール4,000はClariant GmbH,Sulzbachから入手した。更に、所定のマイクロスケール実験には市販結晶化スクリーニングキット及び試薬(Hampton Research,Emerald BioStructures,Jena Bioscience)を使用した。全化学薬品はSigma−Aldrich,Steinheim又はMerck,Darmstadtから入手した。
【0139】
B.一般方法
a)Afelimomab(登録商標)(MAK195F)原薬の融解
MAK195Fは撹拌下の水浴中で25℃にて融解した。
【0140】
b1)緩衝液交換−方法A
MAK195F溶液のアリコートをSLIDE−A−LYZER透析カセット(Pierce Biotechnology Inc.)に注入した。選択緩衝液を充填したビーカーに透析カセットを入れ、4℃で一晩撹拌下に緩衝液交換を行った。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0141】
b2)緩衝液交換−方法B
MAK195F溶液のアリコートを30KDa MWCO Vivaspin 4コンセントレーター(Vivascience)にピペットで注入した。蛋白質サンプルを新しい緩衝液で4倍に希釈し、4℃にて10,000×gで遠心(Sigma 4K 15実験室用遠心機)することにより、サンプル容量を元のサンプル容量に戻した。希釈/遠心工程を2回繰返し、元のサンプル緩衝液の64倍に希釈した。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0142】
b3)緩衝液交換−方法C
MAK195F溶液のアリコートを30KDa MWCO Vivaspin 20コンセントレーター(Vivascience)にピペットで注入した。蛋白質サンプルを新しい緩衝液で10倍に希釈し、4℃にて5,000×gで遠心(Sigma 4K 15実験室用遠心機)することにより、サンプル容量を元のサンプル容量に戻した。希釈/遠心工程を1回繰返し、元のサンプル緩衝液の100倍に希釈した。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0143】
b4)緩衝液交換−方法D
MAK195F溶液のアリコートを30KDa MWCO Vivaspin 20コンセントレーター(Vivascience)にピペットで注入した。蛋白質サンプルを4℃にて5,000×gで遠心(Sigma 4K 15実験室用遠心機)することにより元の容量の10倍まで濃縮した。次に、濃縮したサンプルを新しい緩衝液で元のサンプル容量まで希釈した。遠心/希釈工程を1回繰返し、元のサンプル緩衝液の100倍に希釈した。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0144】
b5)緩衝液交換−方法E
MAK195F溶液のアリコートをビーカーに加えた。30KDa MWCO Vivaspin 50コンセントレーター(Vivascience)を超純水でリンスし、Masterflex EasyLoad IIポンプを使用して元のサンプル容量を4倍に濃縮した。次に蛋白質サンプルを元の容量まで希釈した。濃縮/希釈工程を3回繰返し、元の緩衝液の総希釈倍率256倍とした。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0145】
c)OD280−蛋白質濃度測定
ThermoSpectronics UV1装置を使用し、消光係数1.37cmmg−1を適用して波長280nmで蛋白質濃度を推定した。このために、結晶化スラリーのアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の残留蛋白質濃度を測定した。
【0146】
d)pH測定
pH測定はMettler Toledo MP220 pH計を使用して実施した。 Inlab 413電極とInlab 423微小電極を利用した。
【0147】
e1)マイクロスケール晶析−シッティングドロップ蒸気拡散Hydra II
Hydra II結晶化ロボットとGreiner 96ウェルプレート(3ドロップウェル,Hampton Research)を使用して初期結晶化スクリーニングを実施した。プレートをセットアップ後、ウェルをClearsealフィルム(Hampton Research)で密閉した。
【0148】
e2)マイクロスケール晶析−ハンギングドロップ蒸気拡散法
VDXプレート(シーラント付き,Hampton Research)と夫々OptiClearプラスチックカバースライド(正方形,Hampton Research)又はシリコンコートガラスカバースライド(円形,Hampton Research)を使用してハンギングドロップ蒸気拡散実験を実施した。リザーバ溶液の調製後、カバースライド上でリザーバ溶液1滴を蛋白質溶液1滴と混合し、液滴がリザーバの上に垂れ下がるようにカバースライドを裏返してウェルを密閉した。
【0149】
f1)バッチ晶析−方法A(96/24ウェルプレート)
ウェル内で蛋白質溶液を等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルを接着テープで密閉した。
【0150】
f2)バッチ晶析−方法B(エッペンドルフ反応チューブ)
1.5mL又は2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。
【0151】
f3)バッチ晶析−方法C(ファルコンチューブ,撹拌なし)
50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。
【0152】
f4)バッチ晶析−方法D(ファルコンチューブ,撹拌)
50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。蓋をした直後にチューブを実験室用振盪器(GFL3013又はGFL3015)に載せるか、あるいはローリングにより撹拌した。これらの方法を適用することにより、サンプルに撹拌器を挿入するのを避けた。
【0153】
f5)バッチ晶析−方法E(1リットルポリプロピレン容器,撹拌又は撹拌なし)
滅菌した1リットルポリプロピレンびん内で蛋白質溶液を等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。蓋をした直後に容器をローリングにより撹拌又は撹拌しなかった。これらの方法を適用することにより、サンプルに撹拌器を挿入するのを避けた。
【0154】
g)SDS−PAGE
蛋白質濃度を8μg/20μLに調整することによりサンプルを作製した。ブロモフェノールブルーを添加したSDS/Tris/グリセリンでサンプルを希釈した。
【0155】
Invitrogen NuPage 10%Bis−Tris Gels、NuPage MES SDS Running Buffer及びMark12 Wide Range Protein Standardsを使用して定性的SDS PAGE分析を実施した。サンプル20μLをゲルポケットにピペットで注入した。ゲルを泳動させ、酢酸/メタノール試薬で固定後、Novex Colloidal Blue Stain Kitを使用して染色を実施した。Invitogen Gel−Dry乾燥液を使用してゲルを乾燥した。
【0156】
h)光学顕微鏡分析
Zeiss Axiovert 25又はNikon Labophot顕微鏡を使用して結晶を観察した。後者には偏光フィルターセットとJVC TK C1380カラービデオカメラを接続した。
【0157】
i)概算結晶寸法の推定
Nikon Labophot顕微鏡とJVC Digital Screen Measurement Cometソフトウェアバージョン3.52aを使用して概算結晶寸法を測定した。
【0158】
k)SE−HPLC
MAK195Fサンプルの凝集レベルをSE−HPLCにより推定した。Dionex P680ポンプと、ASI−100オートサンプラーと、UVD170U検出器を使用した。批准Abbott標準プロトコール(Afelimomab(登録商標)−原薬)を適用して2本の直列に接続したAmersham Bioscience Agarose 12 10/300 GLゲル濾過カラムにより凝集種を単量体から分離した。
【0159】
特に指定しない限り、上記一般手順の代わりに当業者に公知の他の任意等価手順を使用することができる。
【0160】
C.蒸気拡散結晶化実験
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液とリザーバ溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0161】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の緩衝液ストック(酢酸又はクエン酸緩衝液)のpHを表す。
【0162】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸又はクエン酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム/クエン酸ナトリウム濃度を表す。
【0163】
(実施例1)
蒸気拡散法による条件の初期スクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。Hydra II結晶化ロボットを使用し、数種類の市販結晶化スクリーニングキットを使用して96ウェルGreinerプレートを周囲温度でセットアップした。蛋白質溶液と結晶化剤を1:1比で混合した。以下のスクリーニングキットを使用した。Hampton Crystal Screen 1及び2(Hampton Research)、Wizard Screen I及びII(Emerald BioStructures)、Hampton Index Screen(Hampton Research)、Jena Screens 1−8(Jena Bioscience)。当分野で周知の結晶化剤に(条件毎に1滴ずつ)蛋白質を添加後、プレートをClearsealフィルムで密閉し、周囲温度で保存した。翌日から7日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0164】
結果:試験した480種類の条件のうち、11種類で結晶が認められた。これらの条件は製造業者により公表されているような以下の結晶化剤に相当した。
−0.1Mカコジル酸ナトリウムpH6.5,0.2M酢酸カルシウム,18% w/v PEG8,000
(Hampton Crystal Screen,D10)
−0.1M MES pH6.5,12% w/v PEG20,000
(Hampton Crystal Screen,F10)
−0.1Mクエン酸塩,pH5.5,20% w/v PEG3,000
(Wizard Screen I & II,A6)
−0.1M酢酸塩,pH4.5,20% w/v PEG3,000
(Wizard Screen I & II,D9)
−0.1M Bis−Tris pH6.5,45% v/vポリプロピレングリコールP400
(Hampton Index,E10)
−0.1M HEPES pH7.5,0.02M塩化マグネシウム,22% w/vポリアクリル酸5,100ナトリウム塩
(Hampton Index,E11)
−0.1M Tris pH8.5,0.2MトリメチルアミンN−オキシド2水和物,20% w/v PEG MME 2000
(Hampton Index,F2)
−0.2Mクエン酸ナトリウム2水和物,20% w/v PEG3,350
(Hampton Index,H10)
−10% PEG4,000,0.1MナトリウムHEPES pH7.5,20%イソプロパノール
(JENA 1−4,E5)
−15% PEG4,000,0.1Mクエン酸ナトリウムpH5.6,0.2M硫酸アンモニウム
(JENA 1−4,F2)
−20% PEG4,000,0.1Mクエン酸ナトリウムpH5.6,0.2M硫酸アンモニウム(JENA 1−4,G6)。
結晶は長さ約10〜150μmの針状形態を示した。
【0165】
(実施例2)
Hampton PEG/イオンスクリーンを使用したハンギングドロップ蒸気拡散法
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。48種類の緩衝液製剤各1mLをウェルにピペットで注入した。蛋白質サンプル約1μLをカバースライドにピペットで滴下した後、特定ウェルのリザーバ溶液約1μLと混合した。カバースライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から7日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0166】
結果:試験した48種類の条件のうち、1種類で結晶が認められた。この条件は製造業者により公表されているように以下の結晶化剤に相当した。
−0.2Mクエン酸三カリウム1水和物,20% w/v PEG3,350 pH8.3。
結晶は寸法約10〜50μmの針束状形態を示した。
【0167】
(実施例3)
Hampton低イオン強度スクリーンを使用したハンギングドロップ蒸気拡散法
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。24%w/v PEG3,350脱水和溶液1mLを108ウェルにピペットで注入した。蛋白質サンプル約2μLをカバースライドにピペットで滴下した後、18種類の特定緩衝液試薬の1種約1μLと混合した。その後、6種類の異なる濃度のうちの1種のPEG3,350沈殿剤約2.5μLを液滴に加えた。カバースライドを裏返してウェルを密閉し、108回の異なるハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から7日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0168】
結果:試験した108種類の条件のうちで結晶は認められなかった。
【0169】
(実施例4)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液と(完全に脱塩し、場合により予め蒸留した)ミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液1mLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約20%w/vで一定に維持した。pHを約4.2から約6.5まで0.1刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。一晩保存後、液滴の顕微鏡観察を実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0170】
結果:一晩保存後に試験した24種類の条件のうちで結晶は認められなかった。
【0171】
(実施例5)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液1mLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約10%w/v、15%w/v、20%w/v及び25%w/vで添加した。pHを約5.0から約6.5まで0.3刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。一晩保存後、液滴の顕微鏡観察を実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0172】
結果:一晩保存後に試験した24種類の条件のうちで結晶は認められなかった。
【0173】
(実施例6)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液1mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000濃度を約20%w/vで一定に維持した。pHを約3.6から約5.6まで0.1刻みで変化させ、21種類の異なる条件を設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から7日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0174】
結果:試験した21種類の条件のうち、夫々pH約4.9、5.0、5.3及び5.6で結晶が認められた。結晶は寸法約30〜300μmの針状又は針束状形態を示した。
【0175】
(実施例7)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液1mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約10%w/v、15%w/v、25%w/v、30%w/v、35%w/v及び40%w/vの濃度で添加した。pHを約3.9、4.2、4.8及び5.1とし、24種類の異なる条件を設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から7日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0176】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約5.1とPEG4,000濃度約15%w/vで結晶が認められた。結晶は長さ約50〜150μmの針状形態を示した。
【0177】
(実施例8)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000濃度を約20%w/vで一定に維持した。pHを約4.2から約6.5まで0.1刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から21日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0178】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約4.6、4.8、4.9、5.1、5.2、5.5及び5.7で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0179】
(実施例9)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約16%w/v、18%w/v、22%w/v及び24%w/vの濃度で添加した。pHを約4.2、4.7、5.2、5.7、6.2及び6.5とし、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から21日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0180】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約6.2とPEG4,000濃度約18%、22%及び24%w/vで結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0181】
(実施例10)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、pHを約5.7で一定に維持した。PEG4,000を約10%w/v、12%w/v、14%w/v、16%w/v、18%w/v及び20%w/vの濃度で添加した。従って、6種類の異なる条件を4回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から21日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0182】
結果:試験した6種類の条件のうち、全PEG4,000濃度で結晶が認められた。4回ずつ行った実験の1〜4個のウェルで結晶が認められた。
結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0183】
(実施例11)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約8%w/v、10%w/v、12%w/v及び14%w/vの濃度で添加した。pHを約4.2、4.7、5.2、5.7、6.2及び6.5とし、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から21日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0184】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約4.7とPEG4,000濃度約8%w/v、10%w/v及び12%w/vで結晶が認められた。更に、pH約5.2とPEG4,000濃度約12%w/v及び14%w/vで結晶が認められた。更に、pH約5.7とPEG4,000濃度約10%w/v、12%w/v及び14%w/vで結晶が認められた。更に、pH約6.2とPEG4,000濃度約10%w/v及び14%w/vで結晶が認められた。更に、pH約6.5とPEG4,000濃度約8%w/v及び12%w/vで結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0185】
(実施例12)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000濃度を約20%w/vで一定に維持した。pHを約4.2から約6.5まで0.1pH刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から9日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0186】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約5.1〜6.5で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0187】
(実施例13)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約16%w/v、18%w/v、22%w/v及び24%w/vの濃度で添加した。pHを約4.2から約6.5まで0.5pH刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から9日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0188】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約4.7とPEG4,000濃度約16%w/vで結晶が認められた。更に、pH約5.2とPEG4,000濃度約16%w/v及び18%w/vで結晶が認められた。更に、pH約5.7とPEG4,000濃度約16%w/v、18%w/v、22%w/v及び24%w/vで結晶が認められた。更に、pH約6.2とPEG4,000濃度約10%w/v及び14%w/vで結晶が認められた。更に、pH約6.5とPEG4,000濃度約16%w/vで結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0189】
(実施例14)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
MAK195Fをその標準原薬緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.01% Pluronic F68,pH7.2中12.39mg/mL MAK195F)中で使用した。Abbottから公表されている緩衝液組成は10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.01% Pluronic F68,pH7.2中12.4mg/mL MAK195Fであった。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約20%w/vの濃度で一定に維持した。pHを約4.2から約6.5まで0.1pH刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から6日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0190】
結果:試験した24種類の条件のうち、約5.3〜約5.9のpH範囲で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0191】
(実施例15)
蛋白質緩衝液を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
MAK195Fをその標準原薬緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.01% Pluronic F68,pH7.2中12.39mg/mL MAK195F)中で使用した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約16%w/v、18%w/v、22%w/v及び24%w/vの濃度で添加した。pHを約4.2から約6.5まで0.5pH刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から6日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0192】
結果:試験した24種類の条件のうち、pH約5.7とPEG4,000濃度約16%w/v及び18%w/vで結晶が認められた。更に、PEG4,000濃度約16%w/vと夫々pH約6.2及び6.5で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0193】
(実施例16)
ハンギングドロップ蒸気拡散法による酢酸亜鉛/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と酢酸亜鉛とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸亜鉛を約0.05M、0.1M、0.5M及び0.9Mの濃度で使用した。pHを約4.2から約6.5まで0.5pH刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から21日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0194】
結果:試験した24種類の条件のうちで結晶は認められなかった。
【0195】
(実施例17)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるマンニトール/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液とマンニトールとミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、マンニトールを約0.05M、0.1M、0.5M及び0.9Mの濃度で使用した。pHを約4.2から約6.5まで0.5pH刻みで変化させ、24種類の異なる条件を設定した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から6日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0196】
結果:試験した24種類の条件のうちで結晶は認められなかった。
【0197】
(実施例18)
温度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約10%w/v、12%w/v、18%w/v及び20%w/vの濃度で添加した。pHは全工程で約5.6とした。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを4℃で保存した。一晩保存後、液滴の顕微鏡観察を実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。陽性対照として、同一条件で第2のプレートをセットアップし、周囲温度で保存した。
【0198】
結果:4℃で一晩保存後に試験した24種類の条件で結晶は認められなかった。陽性対照は10%w/v、12%w/v及び18%w/vのPEG4,000濃度で結晶を含有していた。
【0199】
(実施例19)
蛋白質緩衝液を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000濃度を約12%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を3回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から14日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0200】
結果:評価した24個のウェルのうち、試験した全PEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0201】
D1.1mLまでの容量のバッチ実験
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液と結晶化溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の緩衝液ストック(酢酸又はクエン酸緩衝液)のpHを表す。
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸又はクエン酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウム濃度を表す。
【0202】
(実施例20)
50μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約25μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定結晶化溶液25μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.05Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.7とした。PEG4,000濃度を約12%w/vから約4%w/vまで1%刻みで変化させた。各条件を2回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。3日後にウェルの顕微鏡観察を実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0203】
結果:3日後に試験した18種類の条件で結晶は認められなかった。
【0204】
(実施例21)
設定を変更した50μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約25μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定結晶化溶液25μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.7とした。PEG4,000濃度を約14%w/vから約36%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を2回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から7日間、ウェルの顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0205】
結果:観察した18個のウェルのうち、約22%w/v〜16%w/v PEG4,000でセットアップした条件で結晶が認められた。
【0206】
(実施例22)
300μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約150μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定結晶化溶液150μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.7とした。PEG4,000濃度を約18%w/vから約24%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を2回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から14日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0207】
結果:観察した8個のウェルのうち、試験した全条件で結晶が認められた。約20%w/v PEG4,000バッチでは結晶種以外に沈殿は認めらなかった
【0208】
(実施例23)
蛋白質緩衝液を変更した300μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
MAK195Fをその標準原薬緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.01% Pluronic F68,pH7.2中12.39mg/mL MAK195F)中で使用した。ウェル内で蛋白質溶液約150μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定結晶化溶液150μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.7とした。PEG4,000濃度を約18%w/vから約24%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を1回評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から14日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0209】
結果:観察した4個のウェルのうち、試験した全条件で結晶が認められた。
【0210】
(実施例24)
1mL超までの大規模化の主要条件を見出す150μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約75μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定結晶化溶液75μLを調製した。本実施例では、緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、緩衝液pHを約4.2、4.7、5.2、5.7及び6.2とした。PEG4,000濃度を約6%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。夫々1、2、3及び7日後に液滴の顕微鏡観察を実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。また、1条件3個のウェルのうちの2個から粒状物質の収率をOD280により測定した。100μLアリコートを14,000×gで遠心し、上清の蛋白質濃度を評価した。
【0211】
結果:PEG4,000濃度を約6%w/vから約28%w/vまで変化させることにより、結晶混合物の外観は透明(低PEG濃度)から針状又は針束状結晶(中PEG濃度)を経て沈殿(高PEG濃度)まで変化した。結晶化窓の外観は緩衝液組成(pH、イオン強度、塩)にも依存した。酢酸緩衝液とpH6.2、クエン酸緩衝液とpH4.2及び6.2で結晶は認められなかった。他の全緩衝系は特徴的PEG4,000濃度で結晶化窓を示した。これらの結果から、添加した化学薬品を使用することにより形成されたマトリックスに可能な結晶化条件が広がっており、沈殿を伴わずに結晶を生じる緩衝液組成を選択できることが判明した。
【0212】
(実施例25)
1mL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより特定結晶化溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHを約4.7又は5.2とした。PEG4,000を約16%w/vと約18%w/vの2種類の濃度で添加した。各条件を2回ずつ評価した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、各チューブの1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0213】
結果:14日後に、試験した全条件で針状物が認められた。
【0214】
(実施例26)
蛋白質緩衝液を変更した150μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約75μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定結晶化溶液75μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.5とした。PEG4,000を18%w/vと20%w/vの濃度で使用した。各条件を2回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から12日間、ウェルの顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0215】
結果:どちらの条件でも針状又は針束状形態の結晶が認められた。
(実施例27)
蛋白質緩衝液を変更した1mL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.0又は5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約500μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定結晶化溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.0又は5.5とした。pH5.5に緩衝した蛋白質をpH5.5の結晶化溶液と混合し、pH5.0に緩衝した蛋白質緩衝液でも同様とした。PEG4,000濃度を約16%w/vから約24%w/vまで2%刻みで変化させて使用した。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、ウェルの顕微鏡観察を実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0216】
結果:試験した全条件で針状又は針束状結晶が認められた。
【0217】
(実施例28)
設定を変更した1mL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.0又は5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ウェル内で蛋白質溶液約500μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。各ウェル内で蒸留水と50%w/v PEG4,000溶液を混合することにより特定結晶化溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0Mとし、即ち実験における唯一の酢酸緩衝液は元のMAK195F溶液中に存在するものとした。PEG4,000は約22%w/vから約26%w/vまで2%刻みで濃度を変化させて使用した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、ウェルの顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に条件を分類した。
【0218】
結果:pH5.5緩衝液中に22%w/v PEG4,000と蛋白質を含有するウェルで針状又は針束状結晶が認められた。
【0219】
(実施例29)
ポリソルベート80添加の影響下における1mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。ポリソルベート80を蛋白質溶液に約1%、0.1%、0.01%及び0.001%の濃度で加えた。ポリソルベート80を含有しない溶液を対照として準備した。結晶化実験を開始する前に溶液を一晩インキュベートした。1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を20%w/vの濃度で使用した。各ポリソルベート80濃度を2回ずつ評価した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0220】
結果:全容器で5日後に針状結晶が出現した。結晶形態にも結晶収率にも相違を認めることはできなかった。
【0221】
(実施例30)
結晶化核生成剤としての各種鉱物の影響下における100μLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。49種類の異なる鉱物1組(ミュンヘン州立鉱物学博物館(Mineralogische Staatssammlung Munchen)所有)を結晶化核生成剤として評価した。この実験の背景の思想は標準針状又は針束状形態とは異なる多形結晶形態の成長用表面としてのこのような鉱物の使用可能性を検討することであった。各鉱物を新たに分割し、50〜250μmの寸法の粒子をウェルに入れた。各鉱物を2回ずつ試験し、鉱物を添加しない多数のウェルを対照として準備した。ウェル内で蛋白質溶液約50μLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をウェル内で混合することにより結晶化溶液50μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約16%w/vの濃度で使用した。翌日から2週間、ウェルプレートの顕微鏡観察を実施した。
【0222】
結果:マラカイトは蛋白質の油状沈殿を生じることが判明した。
【0223】
D2.1mL超の容量のバッチ実験
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液と結晶化溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の緩衝液ストック(酢酸又はクエン酸緩衝液)のpHを表す。
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸又はクエン酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウム濃度を表す。
【0224】
(実施例31)
10mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を18%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数カ月間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0225】
結果:一晩保存後に長さ約100〜300μmの針状結晶が出現した。翌日から1カ月間保存中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、10日後に60〜80%であった。
【0226】
(実施例32)
撹拌導入下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を18%w/vの濃度で使用した。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらチューブを周囲温度で保存した。翌日から数カ月間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0227】
結果:1日後に長さ約10〜30μmの針状結晶が出現した。実験中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、10日後に60〜80%であった。
【0228】
(実施例33)
蛋白質緩衝液を変更した10mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約20%w/v及び22%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0229】
結果:どちらのPEG濃度レベルでも2日後に長さ100〜300μmの針状結晶が出現した。翌日から1カ月間の保存中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、10日後に60〜80%であった。
【0230】
(実施例34)
蛋白質緩衝液を変更し、非撹拌下と撹拌下のバッチを比較した10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。非撹拌下と実験室用振盪器で撹拌下にチューブを周囲温度で保存した。翌日から21日間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0231】
結果:どちらの容器でも7日後に針状結晶が出現した。撹拌下のバッチからの針状物は非撹拌下のバッチからの針状物の長さの約10分の1であった。非撹拌下のバッチでは、針の長さは100〜300μmであり、撹拌下のバッチでは針の長さは約10〜30μmであった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、どちらの容器でも10日後に50〜80%であった。
【0232】
(実施例35)
蛋白質緩衝液を変更し、非撹拌下と撹拌下のバッチを比較した10mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。非撹拌下と実験室用振盪器で撹拌下にチューブを周囲温度で保存した。翌日から21日間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0233】
結果:どちらの容器でも7日後に針状結晶が出現した。撹拌下のバッチからの針状物は非撹拌下のバッチからの針状物の長さの約10分の1であった。非撹拌下のバッチでは、針の長さは100〜300μmであり、撹拌下のバッチでは針の長さは約10〜30μmであった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、どちらの容器でも10日後に50〜80%であった。
【0234】
(実施例36)
250mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。1リットルポリプロピレン容器内で蛋白質溶液約125mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液125mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。容器を周囲温度で保存した。容器を約60rpmでローリングすることにより撹拌を実施した。翌日から数カ月間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0235】
結果:3日後に長さ10〜30μmの針状結晶が出現した。翌日から1カ月間保存中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、7日後に60〜70%であった。
【0236】
(実施例37)
容器材料を変更した10mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLガラス(クラスI)バイアル内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。バイアルをテフロン(登録商標)ストッパーで密閉し、実験室用振盪器で撹拌下に周囲温度で保存した。翌日から21日間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0237】
結果:3日後に針状結晶が出現した。
【0238】
(実施例38)
温度を変更した10mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。チューブを実験室用振盪器で撹拌下に周囲温度で保存した。翌日から10日間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。4℃で10日間保存後、バッチを周囲温度に戻した。
【0239】
結果:4℃で保存中に結晶は出現しなかった。バッチを周囲温度に戻すと、一晩で結晶が出現した。
【0240】
(実施例39)
1Lバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。1リットルポリプロピレン容器内で蛋白質溶液約500mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液500mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。容器を周囲温度で保存した。容器を約60rpmでローリングすることにより撹拌を実施した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0241】
結果:2日後に針状結晶が出現した。翌日から1カ月間保存中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、7日後に60〜70%であった。
【0242】
(実施例40)
非撹拌下の400mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。1リットルポリプロピレン容器内で蛋白質溶液約200mLを等量の結晶化溶液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水をチューブ内で混合することにより結晶化溶液200mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.2とした。PEG4,000を約20%w/vの濃度で使用した。容器を周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を推定した。
【0243】
結果:14日後に針束状結晶が認められた。結晶は長さ約100〜300μmであった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、31日後に40〜50%であった。
【0244】
E.結晶処理及び分析方法
(実施例41)
結晶の洗浄
結晶の形成後は、結晶を再溶解させない洗浄工程が有利である。従って、実施例36に記載したような結晶化工程の終了後、結晶スラリーを遠心管に移し、500〜1000×gで20分間遠心した。遠心は4℃又は周囲温度で実施した。遠心後、上清を捨て、約0.1M酢酸ナトリウム中に約24%w/v PEG4,000を含有するpH約5.2の緩衝液に結晶ペレットを容易に再懸濁した。OD280により分析した処、このような洗浄用緩衝液中に測定可能なMAK195F結晶は溶解していなかった。次いで遠心/再懸濁工程を1〜3回繰返し、この洗浄工程後に、ペレットを再懸濁し、保存した。
【0245】
(実施例42)
晶析工程の収率増加
晶析工程の終点は結晶化スラリーの上清のアリコートのOD280測定値が例えばその後3日間一定となる時点として定義することができる。結晶化スラリーの上清に所定量のPEG4,000(pH約5.2の約0.1M酢酸ナトリウム緩衝液中50%w/v溶液)を補充することにより収率増加が可能であることが判明した。最初に晶出した結晶と同一形状の結晶がその後の数日間に形成された。この手順を適用すると、沈殿を導入せずに総収率は容易に90%を超えた。
【0246】
例えば、実施例39の上清のアリコート中でPEG4,000濃度を約10%w/vから約20%w/v、18%w/v、16%w/v、14%w/v及び12%w/vまで増加させた。周囲温度で一晩保存後、約20%w/v、18%w/v及び16%w/v PEG4,000で沈殿種が認められた。約14%w/v及び約12%w/vPEG4,000では、沈殿を伴わずに結晶が認められた。結晶化スラリーの残留上清にPEG4,000を約14%w/vの総濃度まで加えることにより、総結晶収率は2日間で約60%〜約70%から90%超まで増加した。
【0247】
(実施例43)
SDS PAGEによる結晶の分析
結晶の蛋白性を確認するために、実施例41のプロトコルに従って実施例36からの結晶を洗浄した。数回の洗浄段階後、洗浄用緩衝液上清中に測定可能な量の溶解蛋白質が存在していないことをOD280により確認した。上清を捨てた後、結晶を蒸留水に溶解した。この溶液のOD280測定によると、UV吸光度が有意に高いことから、溶解蛋白質が存在するようになったことが判明した。この溶液のSDS−PAGE分析は、MAK195F標準に比較して同一パターンを示した。
【0248】
(実施例44)
SE−HPLCによる結晶の分析
MAK195F結晶の凝集種の含量を調べるために、実施例36からの洗浄した結晶のアリコートを遠心し、標準方法に従ってSE−HPLCランニング緩衝液に再溶解した。晶析工程の完了後(本実施例では周囲温度で7日)に、凝集物含量は約0.9%から約1.3〜1.4%まで僅かに増加した。このような凝集物がMAK195F結晶の固有特徴であるのか、又は例えば非結晶化可溶性MAK195F単量体が結晶表面に凝集したのかはまだ不明である。
【0249】
MAK195F結晶を生じた上記バッチ実験の実験条件を下表2にまとめる。
【0250】
【表3】


【0251】
F.結晶化結果に及ぼす撹拌の影響を検討する実験
これらの実験の目的は抗体(例えばMAD195F)の実施容易なバッチ晶析法に及ぼす撹拌速度の影響を検討することであった。他の全結晶化パラメータを一定に維持することにより、5個の連続バッチ(10、20、40、60及び80rpm)で撹拌の程度を変えた。結晶化速度、総収率、粒子形状及び粒度分布に及ぼす影響を検討した。
【0252】
(実施例45)
制御条件下のMAK195Fの結晶化
材料
−MAK195F,ロットG008.01E/PZ0105P025(Abbott Laboratories)
−無水酢酸ナトリウム(Gruessing)
−氷酢酸(Merck)
−ポリエチレングリコール4,000(Clariant)
−ポリプロピレンびん,直径8cm,高さ10cm。
【0253】
方法
(500mlポリプロピレンびんに入れて−80℃で保存した)凍結MAK195Fを周囲温度で2時間以内に融解させた。融解後、原薬溶液は透明であり、肉眼で汚染性粒子は認められなかった。蛋白質緩衝液を以下のように調製した。酢酸ナトリウム41.02gを精製水に溶解することにより酢酸緩衝液500mLを調製した。容量を500.0mLに調整し、氷酢酸でpHを5.2に調整した。この緩衝液400mLを精製水で総容量4.0Lまで希釈した。この緩衝液を5回の各バッチ晶析前に新たに調製した。
【0254】
バッチ晶析毎に、Slide−A−Lyzer透析カセット(充填容量12〜30mL,10kDa MWCO)を使用することにより25mLのMAK195Fを蛋白質緩衝液で希釈した。次に蛋白質緩衝液で蛋白質濃度を10mg/mLに調整し、0.22μmフィルターディスク(PVDF)を使用して溶液を滅菌濾過した。
【0255】
結晶化溶液は次のように調製した。酢酸ナトリウム41.02gを精製水に溶解することにより酢酸緩衝液500mLを調製した。容量を500.0mLに調整し、氷酢酸でpHを5.2に調整した。200gのPEG4,000を酢酸緩衝液と精製水100mLに溶解した後、容量を1,000mLに調整した。この結晶化溶液を全バッチ晶析に使用し、2〜8℃で保存した。
【0256】
ポリプロピレンびんで蛋白質溶液25mLを結晶化溶液25mLと混合することにより結晶化を開始した。次にびんを20℃で9日間ローリングすることにより撹拌した。5個の結晶化バッチを準備し、夫々10rpm、20rpm、40rpm、60rpm及び80rpm(毎分回転数)で撹拌した。毎日、任意サンプルから200μLのアリコートを取出し、結晶の遠心後にOD280蛋白質濃度測定により結晶収率を求めた:
結晶収率[%]=C(総蛋白質)−C(蛋白質上清)/C(総蛋白質)×100%
結晶の光学顕微鏡写真を次のように撮影した。8日間撹拌後、10μLアリコートを対物レンズホルダーにピペットで滴下した後、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して調製物を分析した。デジタルカメラ(Sony Cybershot DSC S75)を使用して写真撮影した。
【0257】
結晶の粒度測定を以下のように実施した。
I)手動評価
8日間撹拌後、10μLアリコートを対物レンズホルダーにピペットで滴下した後、ガラスカバースライドをかぶせた。CFW 10倍接眼レンズと20倍対物レンズを装着したNikon Labophot顕微鏡を使用した。JVC TK C1380カラービデオカメラを介して顕微鏡写真をコンピュータスクリーンに転送し、JVC Digital Screen Measurement Cometソフトウェアバージョン3.52aにより100個の結晶の長さを測定することにより、結晶寸法(最大長)を推定した。これらの100回の測定から粒度分布と最大長の平均値を特定した。
【0258】
II)自動評価
統計的有意に基づいてサンプルの粒度分布を検討するために、PS Prozesstechnik XPT−C Optical Particle Analysis System(PS Prozesstechnik GmbH,Basel,Switzerland)で更に懸濁液を分析した。Feretmax(全粒子方向の最長距離)値を記録した。サンプル当たりの粒子数は夫々5,000超であった。
【0259】
SE−HPLCデータを次のように評価した。任意結晶化バッチの300μLアリコート2画分を12日後に採取した。アリコートを遠心後、上清を捨てた。蛋白質濃度が1mg/mLとなるように結晶ペレットをMAK195F原薬緩衝液で再溶解した。SE−HPLC分析時までアリコートを−80℃で保存した。標準方法に従ってSE−HPLC分析を実施した。
【0260】
結晶化速度と総収率に及ぼす撹拌速度(直径8cm,高さ10cmポリプロピレンびん,毎分回転数=rpm)の影響を図1に示す。
【0261】
その結果、種々の回転速度を適用することにより、結晶化速度(曲線の形状)にも総収率(ymax)にも影響がないことが判明した。8日間結晶化後に総収率は常に約55%であったが、結晶化曲線の形状から全実験を3つの類似部分に分けることができる。
−誘導期(1日及び2日),収率ゼロ;
−主結晶化期(3〜5日),結晶化率>10%(収率に比較)に達する。
−低結晶化期及び停滞期(6〜8日),結晶化率<10%,SE−HPLC分析による最大MAK195F純度。
【0262】
回転速度が分解物及び/又は凝集物の形成に影響を与えるか否かを調べるために各結晶化バッチにSE−HPLC分析を実施した。表3に示す結果から明らかなように、MAK195F純度は変化しない。
【0263】
【表4】

【0264】
粒子形状と粒度分布
粒子形状に及ぼす撹拌速度の影響を図2に示す。全バッチ晶析は針状の結晶物を生じた。
−写真A:MAK195F結晶,10rpm
−写真B:MAK195F結晶,20rpm
−写真C:MAK195F結晶,40rpm
−写真D:MAK195F結晶,60rpm
−写真F:MAK195F結晶,80rpm。
【0265】
粒度分布に及ぼす撹拌速度の影響を図3に示す(手動評価)。平均粒度は10rpmバッチの39.6μmから80rpmバッチの19.9μmまでであった。
【0266】
XPT−C Optical Particle Analysis Systemを適用する自動法により、以下の値が得られた。10rpm,x(1,2)26.4μm;20rpm,x(1,2)25.9μm;40rpm,x(1,2)20.4μm;60rpm,x(1,2)23.6μm;80rpm,x(1,2)18.7μm。
【0267】
このデータによると、統計的有意により、撹拌レベルが高いほど針長が短いことが判明した。自動測定と手動測定から得られた絶対値のずれは粒子がCCDカメラを装着した測定セル内で必ずしも完全に整列(即ち最大のFeretmax検出)していないという事実により説明することができる。
【0268】
本試験はバッチ回転速度と数種のバッチパラメータの間に関係があるか否かを試験するために開始した。mAb純度、結晶化速度、収率及び基本結晶形態等の因子は変化しないが、結晶寸法は撹拌度の増加により減少することが上記データから立証された。
【0269】
G.その他の実施例
(実施例46)
固体結晶化剤
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でMAK195Fを希釈する。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0270】
2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを酢酸緩衝液(0.1M,pH5.2)約400μLと混合することによりバッチ晶析を実施する。次に、固体ポリエチレングリコールを終濃度10%m/v(100mg/mL)まで加える。次いでチューブを密閉し、結晶化剤の完全な溶解が得られるまで撹拌する。チューブを非撹拌下に周囲温度で保存する。翌日から数週間、結晶化の進行に伴って結晶化混合物のアリコートの顕微鏡観察を複数回実施する。
【0271】
(実施例47)
別の緩衝液調製プロトコール及び結晶の作製
本実施例では、次のように酢酸緩衝液を調製する。氷酢酸60gを精製水約840mLで希釈する。水酸化ナトリウム溶液でpHを調整し、容量を1,000mLに調整する。この場合には、総酢酸塩量を1M(蛋白質溶液、結晶化溶液及び結晶化混合物中100mM)に固定する。
【0272】
実施例36に従って結晶化を実施する。
【0273】
(実施例48)
封入結晶の作製
実施例36で得られた結晶はMalvern Instruments Zetasizer nanoを使用するゼータ電位測定によると正に荷電している。
【0274】
結晶性を維持し、結晶を荷電状態に保つpHをもつ賦形剤を含有する緩衝液で結晶を洗浄懸濁する。次に、適切な封入剤を結晶懸濁液に加える。この点で、適切な封入剤は低毒性で生分解性と対イオン特徴をもつ(ポリマー)物質である。この対イオン特徴により、前記物質は結晶に吸引され、コーティングを可能にする。この技術により、結晶性を維持する他の賦形剤を含有しない溶媒への結晶の溶解を持続することが好ましい。
【0275】
(実施例49)
封入/包埋結晶の作製
実施例36に記載したように結晶を得る。
結晶性を維持する賦形剤を含有する緩衝液で結晶を洗浄懸濁する。
その後、当分野で公知の方法を使用し、
−結晶を乾燥し、これらの乾燥した結晶を例えば圧縮、溶融分散等によりキャリヤーと混合することにより結晶を包埋することができる。
−結晶懸濁液を水不混和性キャリヤー溶液と混合することにより結晶を封入/包埋することができる。キャリヤーから溶媒の除去後にキャリヤーは沈殿する。その後、材料を乾燥する。
−結晶懸濁液を水混和性キャリヤー溶液と混合することにより結晶を封入/包埋することができる。キャリヤーは混合物中でその溶解度限界を越えると沈殿する。
−乾燥した結晶又は結晶懸濁液を水混和性キャリヤー溶液と混合することにより結晶を包埋することができる。
−乾燥した結晶を水不混和性キャリヤー溶液と混合することにより結晶を包埋することができる。
【0276】
H.結晶特性決定
H1.生物活性試験
【0277】
(実施例50)
結晶MAK195Fの生物活性の維持
a)一般方法
指標としてマウスL−929細胞を96ウェルマイクロタイタープレートで規定量のrHuTNFと共に37℃で各種濃度のAfelimomab(登録商標)の存在下に48時間インキュベートすることによりrHuTNFの細胞傷害作用に対するAfelimomab(登録商標)溶液の中和作用を測定する。生存細胞はクリスタルバイオレットで染色される。マイクロタイタープレートの個々のウェルで分光法により色強度を測定し、評価する。IC50、即ち細胞の50%が生存するようにL−929細胞に及ぼすrHuTNFの細胞傷害作用を低減するAfelimomab(登録商標)の濃度を測定する。
【0278】
別の希釈箱で1μg蛋白質/mL希釈液から開始し、9個の滴定曲線測定点(曲線希釈液)をサンプルと参照標準について希釈チューブで個々に調製した。
【0279】
L−929細胞懸濁液を培地で希釈し、細胞60,000個/mLの濃度とした。次に、各細胞濃度の100μL/ウェルを試験プレートの1〜11列にピペットで注入した。12列目のウェルには各々培地100μLのみを加えた。試験プレートで37℃及び5%(v/v)COにて24時間インキュベーションした。
【0280】
24時間インキュベーション後、9個の滴定曲線希釈液各50μLを希釈箱から参照標準又はサンプル用の試験プレートに移し、即ち参照標準用では1〜9列のA〜D行のウェルに移し、サンプル用では1〜9列のE〜H行に移した。
【0281】
培地50μLを10列目にピペットで注入し、各々100μLを11列と12列にピペットで注入した。TNF参照標準(蛋白質12.5ng/mL培地)50μLを1〜10列、A〜H行のウェルにピペットで注入し、10列目が100%溶解値に対応するようにした(TNF対照)。11列は100%増殖対照であり、12列には細胞材料を加えず、従って、ブランクとした。ウェル当たりの最終容量は200μLとした。試験プレートのインキュベーションを37℃、5%CO下に48時間実施した。
【0282】
2日間インキュベーション後、素早く逆さにして1回激しく下向きに震盪することにより試験プレートウェルからの液体を捨てた。次に、クリスタルバイオレット溶液50μLを各ウェルにピペットで注入した。溶液をウェルに15分間残した後、上記のように捨てた。プレートを洗浄し、室温で約30分間乾燥した。次に、試薬溶液100μLを各ウェルにピペットで注入した。プレートを(約300rpmで15分間)撹拌すると、ウェルの各々に均一に着色した溶液が得られた。試験プレートウェル内の色素の吸光度をプレート光度計で620nmにて測定した。個々の値をグラフにプロットし、抗体の夫々の希釈度又は濃度(ng/mL)(x軸)に対して吸光度(y軸)をプロットした。
【0283】
1)阻害効果に対する用量を示す曲線の最低プラトー;2)阻害効果に対する用量を示す曲線の最高プラトー;3)IC50値;及び4)曲線変曲点の傾きの4個のパラメータを生物活性測定に使用した。4パラメータプロットから、細胞の半数が生存し、半数が死滅する濃度(IC50値)を読取った。この濃度は曲線データの4パラメータ関数のパラメータ3により計算した。参照標準濃度の平均値を計算した。参照標準の平均IC50値をサンプルの個々のIC50値で割り、100%を掛けることによりサンプルの相対生物活性を計算した。次に相対活性の平均を求めた。
【0284】
b)結果
参照標準に対するサンプル(洗浄済み結晶;実施例41に記載の洗浄プロトコル,実施例39に記載のバッチに由来する結晶)の生物活性の比較として試験を実施した。吸光度値をAfelimomab(登録商標)の濃度に対してプロットし、4パラメータ非線形回帰により評価した処、抗体によるTNF効果の阻害のIC50値が判明した。両方のサンプルをマイクロプレート1枚で4回ずつ繰返して試験したので、夫々Afelimomab(登録商標)参照標準とサンプルに4個のIC50値を得た。次に、参照標準のIC50値の平均を計算し、参照標準の平均IC50値をサンプルの該当IC50値で割り、100%を掛けることによりサンプルの各反復の相対活性を評価した。
【0285】
サンプル(1.87mg/mL結晶懸濁液)の試験の結果、相対生物活性は102%であり、従って完全に生物学的に活性であることが判明した。
【0286】
H2.顕微鏡による特性決定
(実施例51)
MAK195Fの結晶の顕微鏡による特性決定
a)mAb結晶バッチサンプルの光学分析
均質化後、1〜10μLサンプル容量のアリコートを対物レンズホルダープレートにピペットで滴下し、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと夫々10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して結晶調製物を評価した。デジタルカメラ(Sony Cybershot DSC S75)を使用して写真撮影した。
【0287】
H3.複屈折
複屈折挙動を検出するために、CFW 10倍接眼レンズと4倍、10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したNikon Labophot顕微鏡を使用した。更に、顕微鏡にフィルターセット(検光子及び偏光子ユニット)を装着した。
【0288】
全バッチ実験から生じた結晶は複屈折を示した。
【0289】
H4.注射適性
結晶中に取込まれた蛋白質150mg/mLを実施例41からの洗浄用緩衝液に配合したMAK195F結晶懸濁液は27G針で注射可能である。
【0290】
以下のセクションでは、各種ゲージ針を使用してモノクローナル抗体フラグメントMAK195F(10〜200mg/ml)の(PEG中)結晶懸濁液の注射適性を判定するために実施した実験を要約する。
【0291】
PEG緩衝液:
18% PEG4,000m/v
0.01%ポロキサマー188
10mMリン酸ナトリウム緩衝液
pHを水酸化ナトリウム溶液で7.2に調整した。
【0292】
投与中に患者が手動で実施するようにシリンジ排出(充填容量1mL)を実施した。20〜27.5G針サイズを評価した。
【0293】
シリンジ:20/23/26G:
Henke Sass Wolf GmbH 1mL Norm−Jectシリンジに、
−Henke Sass Wolf GmbH Fine−Ject(登録商標)20G針
−Terumo(登録商標)23G針
−Neopoint(登録商標)26G針
を装着した。
【0294】
27.5G:
BD HyPak SCF(登録商標)1mLの長いシリンジに27.5G RNS針38800 Le Pont du Claixを装着した。
【0295】
その結果(図8)、27.5G針は高濃度の結晶のより低速の送達を可能にすると思われる。
【0296】
I.二次構造
(実施例52)
結晶化/結晶の再溶解後の天然二次構造の維持
Bruker Optics Tensor 27でConfocheckシステムを使用してIRスペクトルを記録した。MicroBiolytics AquaSpecセルを使用して液体サンプルを分析した。Harrick BioATRIIセル(登録商標)を使用して蛋白質懸濁液の測定を実施した。25℃で120〜500個のスキャンの測定を少なくとも2回実施して各サンプルを評価した。ブランク緩衝液スペクトルを蛋白質スペクトルから夫々差し引いた。フーリエ変換により蛋白質二次導関数スペクトルを作成し、相対比較のために1580〜1720cm−1からベクトルを正規化した。
【0297】
結晶の再溶解を次のように実施した。結晶懸濁液を遠心し、上清を捨て、ペレットをpH5.2の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に蛋白質濃度10mg/mLまで溶解した。図4は(実施例39に記載の方法に従って結晶化させ、実施例41に紹介した手順に従って洗浄した)結晶MAK195F懸濁液とこのような前処理した結晶の再溶解後のFT−IR二次導関数スペクトルを示す。スペクトルから明らかなように、結晶固体状態でも再溶解後でも二次構造の顕著な変化は認められなかった。
【0298】
J.安定性データ
(実施例53)
Peg/リン酸緩衝液中の12カ月安定性データ(Se Hplc,Ft−Ir,形態)
実施例39に記載した結晶化手順を使用してMAK195Fを結晶化させた。この場合には18%(w/v)PEG4,000と、0.01%ポロキサマー188と、10mMリン酸ナトリウムを含有する緩衝液(pH7.2)を使用し、実施例41に記載したように結晶を洗浄した。次に、結晶を遠心により夫々5mg/mL及び200mg/mL蛋白質含量まで濃縮し、2〜8℃で保存した。5/200mg/mL結晶MAK195Fを2〜8℃で12カ月間保存後の安定性データは90%を上回る単量体の維持を明白に示す。
【0299】
材料:
分散緩衝液:
18% PEG4,000m/v
0.01%ポロキサマー188
10mMリン酸ナトリウム緩衝液
pHを水酸化ナトリウム溶液で7.2に調整した。
【0300】
SE−HPLC
【0301】
【表5】

【0302】
【表6】

【0303】
Dionex HPLCシステム(P680ポンプ,ASI 100オートサンプラー,UVD170U)を使用した。流速0.5mL/分を適用し、2本の直列に接続したGE Superose(登録商標)12カラムでMAK195Fサンプルを分離した。波長280nmで検出を実施した。ランニング緩衝液は0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.9)中0.5M塩化ナトリウムから構成した。
【0304】
FT−IR
Bruker Optics Tensor 27でConfocheckを使用してIRスペクトルを記録した。MicroBiolytics AquaSpecセルを使用して液体サンプルを分析した。Harrick BioATRIIセル(登録商標)を使用して蛋白質懸濁液の測定を実施した。25℃で120〜500個のスキャンの測定を少なくとも2回実施して各サンプルを評価した。ブランク緩衝液スペクトルを蛋白質スペクトルから夫々差し引いた。フーリエ変換により蛋白質二次導関数スペクトルを作成し、相対比較のために1580〜1720cm−1からベクトルを正規化した。
【0305】
結晶の再溶解を次のように実施した。結晶懸濁液を遠心し、上清を捨て、ペレットをpH5.2の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に蛋白質濃度10mg/mLまで溶解した。
【0306】
図5は結晶MAK195F懸濁液(上記のように調製し、25℃で6カ月間保存した200mg/mL保存安定性サンプル)とこのような前処理した結晶の再溶解後のFT−IR二次導関数スペクトルを示す。スペクトルから明らかなように、結晶固体状態でも再溶解後でも25℃で6カ月間保存後に二次構造の顕著な変化は認められなかった。
【0307】
形態
1〜10μLサンプル容量のアリコートを対物レンズホルダープレートにピペットで滴下し、製剤化用緩衝液(20%PEG)で希釈し、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと夫々10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して調製物を評価した。2〜8℃で12カ月間保存後に結晶の光学顕微鏡分析で顕著な形態変化は認められなかった。
【0308】
K.DSC分析
(実施例54)
DSC分析
200mg/mLのストレスなしのサンプルで示差走査熱量測定(DSC)を実施した。パラグラフ3)に記載したように調製した結晶懸濁液と、液体製剤(0.01%ポロキサマー188、150mM塩化ナトリウム及び10mMリン酸ナトリウム緩衝液,pH7.2を含有する緩衝液中のMAK195F)と、プラセボ18% PEG4,000結晶懸濁緩衝液を比較した。
【0309】
CC 200Lコントローラ、CC 200供給システム及びTASC 414/3Aコントローラに接続したNetzsch DSC 204セルを使用した。液体サンプル又は懸濁液20μLをAlるつぼに移し、るつぼを密閉後、5K/分の加熱速度で0〜100℃に加熱することによりサンプル分析を実施した。図6はサンプルに得られた典型的なサーモグラムを示す。
【0310】
溶液は66〜78℃のかなり広い吸熱反応を示したが、結晶懸濁液は約77℃の著しく先鋭な吸熱ピークを特徴とした。プラセボ懸濁緩衝液の加熱に熱イベントは結び付けられなかった(図6)。
【0311】
以上の結果から、MAK195Fは液体製剤に比較して吸熱ピーク温度が高いため、結晶状態の配座安定性が高く、MAK195Fは溶液よりも結晶状態のほうが吸熱ピークが鋭いため、純度と配座均一性が高いと考えられる(Elkordy,A.et al.(2002)Int.J.Pharmaceutics 247:79−90)。
【0312】
L.MAK195F結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)による特性決定
(実施例55)
MAK195F結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)による特性決定
実施例39に記載したように調製したMAK195F結晶懸濁液のアリコートを遠心した。上清のデカント後、ペレットを無水エタノールに再懸濁した。遠心/エタノール再懸濁工程を数回連続して実施した後、懸濁液1滴をSEMサンプルホルダーに移し、室温で乾燥した。サンプルに炭素スパッタリングし、Oxford Instruments 7418検出器に接続したJEOL JSM 6500F走査型電子顕微鏡でデータを集めた。図7はMAK195F結晶の典型例を示す。
【0313】
L.連続法の適用による収率増加(既存実施例42における設定変更)
(実施例56)
設定を変更して連続法とした晶析工程の収率増加
晶析工程の終点は結晶化スラリーの上清のアリコートのOD280測定値が例えばその後3日間一定となる時点として定義することができる。結晶化スラリーの上清に所定量のPEG4,000(pH約5.2の約0.1M酢酸ナトリウム緩衝液中50%w/v溶液)を補充することにより収率増加が可能である。最初に晶出した結晶と同一晶癖の結晶がその後の数日間形成される。この手順を適用すると、沈殿を導入せずに総収率は容易に90%を超える。
【0314】
本実施例では、(場合により基本レベルとして所定量の結晶化剤を加えた)結晶化バッチに付加的な沈殿剤及び/又は蛋白質を所定速度で「滴定」する。こうして経時的連続結晶化を誘導し、最終的に90%を上回る結晶収率が得られる。
【0315】
M.結晶化バッチの種晶添加
(実施例57)
MAK195F結晶化バッチの種晶添加
実施例39に記載したようにMAK195F結晶化バッチを調製する。蛋白質溶液を結晶化用緩衝液と混合後、混合物に既存MAK195F結晶を均質種晶添加する。例えば、約60〜70%の結晶収率を示す実施例39に記載したように調製した結晶懸濁液のアリコートを例えば1/20比(v/v)で結晶化バッチに加える(本実施例では、50mLを1 ,000mLに加える)。このストラテジーを適用し、より短時間の処理時間で収率を高めるように総結晶収率と処理時間を更に最適化する。
【0316】
P.PK/TOX試験
(実施例58)
ラットにおけるPK/tox試験(下記参照)用サンプルの調製
4種類の異なる製剤を調製した:
−MAK195F液体製剤,50mg/mL
−MAK195F結晶懸濁液,50mg/mL,撹拌下の工程(より短い針状物を生じる)
−MAK195F結晶懸濁液,200mg/mL,撹拌下の工程
−MAK195F結晶懸濁液,200mg/mL,非撹拌下の工程(より長い針状物を生じる)。
【0317】
a)MAK195F液体製剤
MAK195F溶液の融解
MAK195F(LOT G008.01E/PZ0105P025,c=12.4mg/mL)の溶液20mLを撹拌下の25℃の水浴中で2時間以内に融解した。
【0318】
50mg/mLバッチの調製
準備の容易なVivaspin 20チューブ(30kDa PES MWCO)を使用してMAK195F溶液20mLを5mLまで濃縮し、容量が5mLに減少するまで5,000×gで4℃にて遠心した。溶液を滅菌濾過した。
【0319】
濃度測定(OD280)
得られたMAK195F溶液の濃度をOD280により測定し、蒸留水1990mLで希釈した蛋白質溶液10μLを蒸留水に対して測定した。
A=0.353/0.359/0.354,c=51.9mg/mL。
【0320】
溶液を2mLエッペンドルフ反応チューブに充填した。
【0321】
組成
MAK195F 51.9mg/mL
Pluronic F 68 0.1mg/mL
リン酸2水素ナトリウム2水和物 1.56mg/mL
塩化ナトリウム 8.77mg/mL
水酸化ナトリウム pH調整7.2。
【0322】
b)MAK195F結晶懸濁液
1.バッチ晶析:
MAK195F溶液の融解
MAK195F(LOT G008.01 E/PZ0105P025,c=12.4mg/mL)の溶液400mLを撹拌下の25℃の水浴中で2時間以内に融解した。溶液を1000mLビーカーに移した。
【0323】
緩衝液交換装置の作製
水400mLが濾液容器に流入するまでVivaflow 50(30000 MWCO,PES)カートリッジを蒸留水500mLでリンスした。
【0324】
緩衝液の調製
緩衝液A(1M酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.2)
500mLメスフラスコ内で酢酸ナトリウム41.02gを蒸留水約450mLに溶解した。更に蒸留水を加えることにより容量を500mLに調整した。濃酢酸を加えることにより緩衝液のpHを5.2に調整した。
【0325】
緩衝液B(0.1M酢酸ナトリウム pH5.2)
5000mLビーカー内で緩衝液A250mLを蒸留水で総容量2500mLまで希釈した。
【0326】
緩衝液C(0.1M酢酸ナトリウム中20% PEG4000 pH5.2)
緩衝液A150mLと300gのPEG4000を1500mLメスフラスコに移し、蒸留水を総容量1500mLまで充填した。次に緩衝液を層流ベンチ下におき、滅菌濾過した(細孔寸法0.22μmフィルターディスク2枚)。
【0327】
MAK195Fの緩衝液交換
準備の容易なVivaflow 50カートリッジを使用することによりMAK195F溶液400mLを50mLまで濃縮した。この濃縮溶液(c=約100mg/mL)を1000mLビーカー内で緩衝液B450mLで希釈した。準備の容易なVivaflow 50カートリッジを使用し、容量を50mLに戻した。この手順を1回繰返した。最終段階で50mLを緩衝液B450mLで希釈したが、容量は減らさず、蛋白質濃度を約10mg/mLとなるようにした。元のMAK195F緩衝液の総希釈倍率は1000倍である。
【0328】
mAb濃度の測定と10mg/mLに調整(OD280)
得られたMAK195F溶液の緩衝液B中の濃度をOD280により測定し、蒸留水1960μLで希釈した蛋白質溶液40μLを蒸留水に対して測定した。
A=0.258 c=9.4mg/mL
【0329】
バッチ作製
mAb溶液470mLを層流ベンチ下におき、滅菌濾過した(細孔寸法0.22μmフィルターディスク2枚)。溶液260mLを1000mLメスシリンダーに移し、緩衝液C260mLと混合した。混液を1000mLポリプロピレン容器びんに移した。びんをパラフィルムで密閉し、20℃で保存した。びんを約60rpmで撹拌した(「撹拌下の工程」)。溶液210mLを1000mLメスシリンダーに移し、緩衝液C210mLと混合した。混液を1000mLポリプロピレン容器びんに移した。びんをパラフィルムで密閉し、20℃で保存した。びんを撹拌しなかった(「非撹拌下の工程」)。
【0330】
2.「撹拌下の工程」サンプルの作製、バッチ晶析開始後16日:
製剤緩衝液調製
まず、0.5Mリン酸ストック溶液50mLを調製した。リン酸2水素ナトリウム2水和物3.9gを精製水約40mLに溶解した後、水酸化ナトリウムでpHを7.2に調整した。容量を50mLに調整した。360gのPEG4,000とストック溶液40mLと0.2gのPluronic F68を精製水2000mLに溶解した。
【0331】
結晶収率の測定
得られたMAK195F結晶化バッチの濃度をOD280により測定した。150μLアリコートを14,000rpmで20分間遠心した。上清100μLを蒸留水1900μLで希釈し、蒸留水に対して測定した。
上清I:A=0.158
上清II:A=0.154 c=2.3mg/mL 結晶収率54%。
【0332】
濃縮及び緩衝液交換/充填
全遠心工程は容易に再懸濁可能なペレットが形成され、上清中に残留固体が残らないように500〜2,000rpmの速度で実施した。結晶スラリーを滅菌50mLポリプロピレンチューブ10本に分注し、遠心した。上清を捨て、ペレットを夫々18% PEG4,000緩衝液20mLに再懸濁し、全チューブを50mlポリプロピレンチューブ4本にプールした。チューブを再び遠心し、上清を捨て、ペレットを夫々18% PEG4,000緩衝液20mLに再懸濁後、結晶スラリーをチューブ2本にプールし、遠心した。洗浄と遠心を更に1回実施し、緩衝液を捨てた後、新鮮な緩衝液で濃度を50mg/mLに調整した。アリコートの濃度をOD280により測定した(水1990μL中10μL)。
A=0.345/0.358/0.356,c=51.5mg/mL。
このスラリーを15mL滅菌ポリプロピレンチューブ2本に容量2及び3mLで充填した。残りのスラリーを遠心により200mg/mLまで濃縮した。アリコートの濃度をOD280により測定した(水1995μL中5μL)。
A=0.656/0.659/0.652,c=191.4mg/mL。
このスラリーを2mL滅菌エッペンドルフ反応チューブに充填した。
【0333】
組成
MAK195F 51.5/191.4mg/mL
PEG4,000 18% m/v
Pluronic F 68 0.1mg/mL
リン酸2水素ナトリウム2水和物 1.56mg/mL
水酸化ナトリウム pH調整7.2。
【0334】
3.「非撹拌下の工程」サンプルの作製,、バッチ晶析開始後31日:
緩衝液調製(緩衝液MAK195F+PEG)
まず、0.5Mリン酸ストック溶液50mLを調製した。リン酸2水素ナトリウム2水和物3.9gを精製水約40mLに溶解した後、水酸化ナトリウムでpHを7.2に調整した。容量を50mLに調整した。360gのPEG4,000とストック溶液40mLと0.2gのPluronic F68を精製水2000mLに溶解した。
【0335】
結晶収率の測定
得られたMAK195F結晶化バッチの濃度をOD280により測定した。150μLアリコートを14,000rpmで20分間遠心した。上清100μLを蒸留水1900μLで希釈し、蒸留水に対して測定した。
上清I:A=0.192
上清II:A=0.193 c=2.8mg/mL 結晶収率44%。
【0336】
濃縮及び緩衝液交換/充填
全遠心工程は容易に再懸濁可能なペレットが形成され、上清中に残留固体が残らないように500〜2,000rpmの速度で実施した。結晶スラリーを滅菌50mLポリプロピレンチューブ9本に分注し、遠心した。上清を捨て、ペレットを夫々18% PEG4,000緩衝液20mLに再懸濁し、全チューブを50mlポリプロピレンチューブ4本にプールした。チューブを再び遠心し、上清を捨て、ペレットを夫々18% PEG4,000緩衝液20mLに再懸濁後、結晶スラリーをチューブ2本にプールし、遠心した。洗浄と遠心を更に1回実施し、緩衝液を捨てた後、新鮮な緩衝液で濃度を200mg/mLに調整した。アリコートの濃度をOD280により測定した(水1995μL中5μL)。A=0.685/0.652/0.651,c=193.5mg/mL。
【0337】
このスラリーを2mL滅菌エッペンドルフ反応チューブに充填した。
【0338】
組成
MAK195F 193.5mg/mL
PEG4,000 18% m/v
Pluronic F 68 0.1mg/mL
リン酸2水素ナトリウム2水和物 1.56mg/mL
水酸化ナトリウム pH調整7.2。
【0339】
SE−HPLCデータ
サンプルのSE−HPLC分析の結果、全4個のサンプルは97.5%超の単量体種を含有することが判明した。
【0340】
(実施例59)
単回皮下投与後の雄性Sprague−DawleyラットにおけるMAK195F(Afelimomab)結晶の局所耐性及び毒性に関する適性試験
【0341】
1.実験データ
本試験の目的は新規型の製剤におけるTNFαに対する抗体であるMAK195F(afelimomab)の局所耐性を試験することであった。更に、本試験では製剤の全身毒性及び毒物動態データに関する他の情報について検討した。雄性Sprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories,69592 L’Arbresle,France)にMAK195F(afelimomab)の各種製剤の単回皮下注射後に種々の観察期間後にMAK195F(afelimomab)の局所耐性と毒物動態及び病理作用を試験した(表6及び7参照)。投与容量は1mL/kg体重とした。
【0342】
【表7】

【0343】
【表8】

【0344】
1日目に投与後15分、1時間、3時間、5時間及び24時間とその後、少なくとも1日1回ずつ動物の臨床徴候と死亡率を観察した。投与日(1日)及び検視日(夫々3日、15日又は21日)と、適用可能な場合には週2回ずつ体重を測定した。1日(投与後4時間)と、適用可能な場合には2日、3日、5日、8日及び15日に薬物分析用血液サンプルを採取した。検視前に採血し、血液及び臨床化学パラメータを評価した。検視前の各動物の血液塗抹を作製した。検視時に体腔の顕微鏡観察を実施した。肝臓、腎臓、胸腺、脾臓及びリンパ節で臓器重量測定を実施した。注射部位と肝臓、腎臓、胸腺、脾臓及びリンパ節で予備組織病理試験を実施した。全動物は予定した検視まで試験に耐えて生存した。体重に及ぼす試験品目関連作用は認められなかった。血液及び臨床化学値は非常にばらつきが大きかった。血液又は臨床化学値に明白な試験品目関連変化は認められなかった。検尿に試験品目関連変化は認められなかった。臓器重量測定の結果、ばらつきが大きく、臓器重量に明白な試験品目関連変化は認められなかった。他の全変化はこの系統及び年齢のSprague−Dawleyラットに広く認められる自然所見の範囲であった。
【0345】
顕微鏡所見:
−群01、02所見なし。
−群03及び05では軽度〜中度の汎発性皮下炎症。
−群03(8日及び15日)と05群(3日)では最軽度〜軽度の皮下浮腫。
−06群では最軽度の混合細胞浸潤(15日)以外に所見なし。
【0346】
局所反応での汎Tサプレッサー/細胞傷害性T細胞/ナチュラルキラー細胞、汎B細胞及び汎マクロファージマーカーの予備免疫組織化学試験結果によると、主にマクロファージとナチュラルキラー細胞が皮下炎症/浸潤に関与しているらしい。このため、使用した製剤に対する局所免疫応答の徴候は認められなかった。他の全変化はこの系統及び年齢のSprague−Dawleyラットに広く認められる自然所見の範囲であった。
【0347】
試験した全サンプルにおけるAfelimomabの絶対レベルは低かった。サンプル間に大きなばらつきが認められたが、これはサンプリング頻度が低く、使用した動物数が少ないためであると思われる。殆どのサンプルでは、5〜8日後に血清中にAfelimomabを検出することはできなかった。液体及び結晶製剤でも同様のPKプロファイルが観察され、PKプロファイルに及ぼす(撹拌下又は非撹拌下の)結晶法の影響はなかった。大半のサンプルで観察されたT1/2は1〜2日であった。詳細を表8に示す。
【0348】
【表9】

【0349】
各種製剤でMAK195F(Afelimomab)の皮下投与後に、死亡又は試験品目関連臨床徴候は認められなかった。試験品目製剤に対する肉眼的局所反応は認められなかった。血液、臨床化学及び臓器重量試験の結果、数値のばらつきが大きく、試験品目との明白な関係はなかった。肉眼試験により確認された投与部位における局所炎症反応の重篤度はどちらの濃度でも撹拌下に作製した結晶製剤(短い針状)のほうが非撹拌下に作製した結晶製剤(長い針状)及び標準製剤よりも高かった。
【0350】
(文献の援用)
本明細書の随所に引用する全引用文献(文献資料、特許、特許出願及びウェブサイトを含む)の内容を特に本明細書に援用する。特に指定しない限り、本発明の実施には当分野で周知の従来の小規模及び大規模蛋白質結晶化及び製剤化技術を利用する。
【0351】
(等価物)
本発明はその精神又は本質的特徴から逸脱せずに他の特定形態で実施することができる。従って、上記態様は本明細書に記載する発明を制限するものではなく、あらゆる点において例証とみなすべきである。即ち、本発明の範囲は以上の記載により指定されるのではなく、特許請求の範囲により指定され、従って、特許請求の範囲と等価の意味及び範囲内に該当するあらゆる変更も本発明に含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の実質的に均一寸法の抗体結晶の製造方法であって、
a)抗体結晶の形成を可能にする条件下で抗体と少なくとも1種の結晶化剤を含有する水性結晶化混合物を準備する段階と;
a)前記結晶化混合物を制御条件下で撹拌し、所望の平均寸法範囲の抗体結晶を形成する段階を含む前記方法。
【請求項2】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて約1〜約200rpmの範囲の速度で撹拌することに対応する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御条件が前記結晶化混合物を直径約2〜約100cmの範囲のローラー容器に入れて撹拌することに対応する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応し、前記ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することに対応し、前記ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて約30分間〜約20日間撹拌することに対応する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて約−15〜約+50℃の範囲の温度で撹拌することに対応する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記撹拌が前記結晶化混合物のローリング、かき混ぜ、振盪及び/又はタンブリングを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
結晶化剤がポリアルキレンポリオールである請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
結晶化剤がポリアルキレングリコールである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
結晶化剤がポリエチレングリコールである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
結晶が約1〜約1000μmの範囲内の均一な結晶粒径及び/又は粒長を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗体が抗体フラグメントである請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗体フラグメントが抗hTNFα抗体フラグメントである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗体フラグメントがFab又はF(ab’)フラグメントである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
抗体フラグメントが寄託番号ECACC87050801のハイブリドーマ細胞株により産生されるMAK195のF(ab’)フラグメントであるMAK195Fである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
MAK195Fが約0.5〜約280mg/mlの範囲の初期蛋白質濃度で存在しており、ローラー容器に入れて約15〜約25℃の範囲の温度にて約5〜約100rpmの範囲の速度で約1〜約60日間撹拌する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶が約1〜約200μmの範囲の制御された平均結晶粒長を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法により取得可能な抗体結晶。
【請求項20】
抗hTNFα抗体結合フラグメントを結晶化するためのバッチ晶析方法であって、
(a)抗体と、結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含有する水性結晶化混合物を準備する段階と;
(b)前記抗体の結晶が形成されるまで前記水性結晶化混合物をインキュベートする段階を含み、
前記少なくとも1種のポリアルキレングリコールを(a)1段階又は(b)2段階以上で提供し、ある段階で形成された前記抗体結晶を次段階で取出さない前記方法。
【請求項21】
抗体が抗体フラグメントである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水性結晶化混合物のpHが約pH4〜約6.5の範囲である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記水性結晶化混合物が緩衝液を含有している請求項23に記載の方法。
【請求項24】
前記緩衝液が酢酸緩衝液及び/又はクエン酸緩衝液を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記緩衝液が酢酸ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムを含む請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝液が水性結晶化混合物中に約0.5Mまでの濃度で存在する請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ポリアルキレングリコールが約400〜約10,000g/molの範囲の平均分子量をもつ請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ポリアルキレングリコールが総容量の約5〜約30%(w/v)の範囲の最終濃度で結晶化混合物中に存在する請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項29に記載の方法。
【請求項31】
以下の付加的な結晶化条件:
a)インキュベーションを約1時間〜約250日間実施する;
b)インキュベーションを約−15℃〜+約50℃の温度で実施する;
c)抗体混合物が約0.5〜約280mg/mlの範囲の濃度で抗体フラグメントを含有する
のうちの少なくとも1つを満足する請求項1から5及び20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
更に前記結晶を乾燥する段階を含む請求項1から5及び20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
更に前記結晶を乾燥する段階を含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
結晶化混合物が結晶と天然母液を含有しており、方法が更に天然母液を人工母液と交換する段階を含む請求項31に記載の方法。
【請求項35】
結晶化混合物が約1ml〜約20,000リットルの範囲のバッチ容量を含む請求項1から5及び20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
結晶寸法制御条件下で結晶化を実施する請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて約1〜約200rpmの範囲の速度で撹拌することを含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記制御条件が前記結晶化混合物を直径約2〜約100cmの範囲のローラー容器に入れて撹拌することを含む請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することを含み、前記ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて撹拌することを含み、前記ローラー容器の総容積の約1〜約100%に結晶化混合物を充填する請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて約30分間〜約20日間撹拌することを含む請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記制御条件が前記結晶化混合物をローラー容器に入れて約−15〜約+50℃の範囲の温度で撹拌することを含む請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記撹拌が前記結晶化混合物のローリング、かき混ぜ、振盪及び/又はタンブリングを含む請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
抗hTNFα抗体フラグメントの結晶。
【請求項45】
請求項1から5、20から22及び36から40のいずれか一項に記載の方法により取得可能な抗hTNFα抗体フラグメントの結晶。
【請求項46】
結晶が針状形態を含む請求項44に記載の結晶。
【請求項47】
結晶が針状形態を含む請求項45に記載の結晶。
【請求項48】
前記抗体フラグメントがポリクローナル抗体フラグメント又はモノクローナル抗体フラグメントである請求項36に記載の方法により取得可能な結晶。
【請求項49】
前記抗体フラグメントがキメラ抗体、ヒト化抗体、非糖鎖付加抗体、ヒト抗体及びマウス抗体のフラグメントから構成される群から選択される請求項36に記載の方法により取得可能な結晶。
【請求項50】
前記抗体フラグメントがIgG抗体のフラグメントである請求項36に記載の方法により取得可能な結晶。
【請求項51】
前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から構成される群から選択される請求項50に記載の結晶。
【請求項52】
前記抗体がFab又はF(ab’)フラグメントである請求項48から51のいずれか一項に記載の結晶。
【請求項53】
抗体フラグメントが寄託番号ECACC87050801のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体MAK195のF(ab’)フラグメントであるMAK195Fである請求項52に記載の結晶。
【請求項54】
(a)請求項1から5、20から22及び36から40のいずれか一項に記載の方法に従って製造された抗体の結晶と、(b)少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物であって、組成物が固体、半固体又は液体製剤として提供される前記組成物。
【請求項55】
(a)請求項1から5、20から22及び36から40のいずれか一項に記載の方法に従って製造された抗体の結晶と、(b)少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物であって、賦形剤が前記結晶を包埋又は封入する前記組成物。
【請求項56】
前記抗体が約1mg/mlを上回る濃度で存在する請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記抗体が約200mg/mlを上回る濃度で存在する請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記抗体が約1mg/mlを上回る濃度で存在する請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記抗体が約200mg/mlを上回る濃度で存在する請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記組成物が0.1〜99.9%(w/w)の抗体結晶を含有する固体である請求項54又は55に記載の組成物。
【請求項61】
前記賦形剤が少なくとも1種の生分解性もしくは非生分解性ポリマーキャリヤー及び/又は少なくとも1種の油性もしくは脂質キャリヤーを含む請求項54又は55に記載の組成物。
【請求項62】
前記ポリマーキャリヤーがポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマーから構成される群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
請求項1から5、20から22及び36から40のいずれか一項に記載の方法により取得可能な抗体結晶を含有する注射用液体組成物であって、抗体が約10〜約400mg/mlの範囲の濃度で存在する前記組成物。
【請求項64】
請求項1から5、20から22及び36から40のいずれか一項に記載の方法により取得可能な抗体結晶を含有する結晶スラリー組成物であって、抗体が約100mg/mlを上回る濃度で存在する前記組成物。
【請求項65】
請求項1から5、20から22及び36から40のいずれか一項に記載の方法により取得可能な有効量の抗体結晶を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項66】
有効量の請求項54に記載の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項67】
有効量の請求項55に記載の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項68】
非経口経路、経口経路又は注射により組成物を投与する請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
治療有効量の請求項19及び46から51のいずれか一項に記載の抗体結晶を投与する段階を含む対象におけるhTNFα関連疾患の治療方法。
【請求項70】
前記hTNFα関連疾患が自己免疫疾患、特に関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、変形性関節症及び痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎及びネフローゼ症候群;感染症、移植拒絶反応ないし移植片対宿主病、悪性腫瘍、肺障害、腸障害、心臓障害、炎症性骨障害、骨吸収疾患、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、劇症肝炎、凝固障害、熱傷、再潅流障害、ケロイド形成、瘢痕組織形成、発熱、歯周病、肥満症及び放射線傷害;脊椎関節症、肺障害、冠動脈障害、代謝障害、貧血、疼痛、肝障害、皮膚障害、爪障害、又は血管炎、ベーチェット病、強直性脊椎炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、再狭窄、糖尿病、貧血、疼痛、クローン病関連障害、若年性関節リウマチ(JRA)、C型肝炎ウイルス感染、乾癬、乾癬性関節炎、及び慢性プラーク乾癬、加齢性悪液質、アルツハイマー病、脳浮腫、炎症性脳損傷、慢性疲労症候群、皮膚筋炎、薬物反応、脊髄内及び/又は周囲の浮腫、家族性周期性発熱、フェルティ症候群、線維症、糸球体腎炎(例えば連鎖球菌感染後糸球体腎炎やIgA腎症)、人工器官の緩み、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病、多発性骨髄腫、癌及び悪液質、多臓器障害、骨髄異形成症候群、睾丸炎、骨溶解、急性、慢性及び膵膿瘍を含む膵炎、歯周病、多発性筋炎、進行性腎不全、偽痛風、壊疽性膿皮症、再発性多発性軟骨炎、リウマチ性心臓病、サルコイドーシス、硬化性胆管炎、脳卒中、胸腹部大動脈瘤修復(TAAA)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、黄熱病ワクチン接種関連症候群、耳関連炎症性疾患、慢性耳炎症、又は小児耳炎症、ぶどう膜炎、座骨神経痛、前立腺炎、子宮内膜症、脈絡膜血管新生、狼瘡、ショーグレン症候群、並びに滲出型黄斑変性症から構成される群から選択される請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記hTNFα関連疾患が後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全症関連疾患、後天性悪性貧血、急性冠症候群、急性及び慢性疼痛、急性特発性多発性神経炎、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、急性炎症性脱髄性多発根神経炎、急性虚血、急性肝疾患、急性リウマチ熱、急性横断性脊髄炎、アジソン病、成人(急性)呼吸窮迫症候群、成人スティル病、アルコール性肝硬変、アルコール性肝障害、アレルギー性疾患、アレルギー、脱毛症、円形脱毛症、アルツハイマー病、過敏症、強直性脊椎炎、強直性脊椎炎関連肺疾患、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、動脈硬化症、関節症、喘息、アテローム性疾患/動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性水疱症、自己免疫性皮膚炎、自己免疫性糖尿病、連鎖球菌感染に伴う自己免疫疾患、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性聴力低下、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性低血糖症、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫性血小板減少症(AITP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性ぶどう膜炎、閉塞性細気管支炎、ベーチェット病、眼瞼炎、気管支拡張症、水疱性類天疱瘡、悪液質、心血管疾患、劇症型抗リン脂質抗体症候群、セリアック病、頸部脊椎症、クラミジア感染症、胆汁鬱滞、慢性活動性肝炎、慢性好酸球性肺炎、慢性疲労症候群、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、慢性虚血、慢性肝疾患、慢性皮膚粘膜カンジダ症、瘢痕性類天疱瘡、多発性硬化症の危険を伴う最初のエピソードからなる症候群(CIS)、分類不能型免疫不全症、分類不能型低ガンマグロブリン血症、結合組織病関連間質性肺疾患、結膜炎、クームス陽性溶血性貧血、小児期発症型精神障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病、特発性自己免疫性肝炎、特発性線維化性肺胞炎、涙嚢炎、鬱病、強皮症皮膚炎、皮膚筋炎、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、糖尿病網膜症、糖尿病、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス、椎間板ヘルニア、椎間板脱肛、播種性血管内凝固症、薬物性肝炎、薬物性間質性肺疾患、薬物性免疫性溶血性貧血、心内膜炎、子宮内膜炎、眼内炎、腸疾患性滑膜炎、上強膜炎、多形性紅斑、重症多形性紅斑、女性不妊症、線維症、線維性肺疾患、妊娠性類天疱瘡、巨細胞動脈炎(GCA)、糸球体腎炎、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、グッドパスチャー症候群、痛風性関節炎、移植片対宿主病(GVHD)、グレーブス病、B群連鎖球菌(GBS)感染症、ギラン・バレー症候群(GBS)、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、花粉症、心不全、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、B型肝炎、C型肝炎、ヒューズ症候群、ハンチントン舞踏病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、特発性白血球減少症、特発性血小板減少症、特発性パーキンソン病、特発性間質性肺炎、特異体質性肝疾患、IgE介在型アレルギー、免疫性溶血性貧血、封入体筋炎、感染症、感染性眼炎症性疾患、炎症性腸疾患、炎症性脱髄疾患、炎症性心疾患、炎症性腎疾患、インスリン依存性糖尿病、間質性肺疾患、IPF/UIP、虹彩炎、若年性慢性関節炎、若年性悪性貧血、若年性関節リウマチ、川崎病、角膜炎、乾性角結膜炎、クスマウル病ないしクスマウル・マイヤー病、ランドリー麻痺、ランゲルハンス細胞組織球症、線状IgA疾患、網状皮斑、ライム関節炎、リンパ球浸潤性肺疾患、黄斑変性症、特発性又はNOS男性不妊症、悪性腫瘍、顕微鏡的腎血管炎、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病関連肺疾患、強直性脊椎炎、運動ニューロン疾患、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症(全サブタイプ:一次進行型、二次進行型、再発寛解型等)、多臓器不全、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、心筋梗塞、心筋炎、ネフローゼ症候群、神経根障害、神経障害、非アルコール性脂肪肝炎、非A非B肝炎、視神経炎、臓器移植拒絶反応、変形性関節症、骨溶解症、卵巣癌、卵巣不全、膵炎、寄生虫症、パーキンソン病、少関節型JRA、類天疱瘡、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、末梢血管疾患(PVD)、末梢動脈疾患(PAD)、水晶体起因性ぶどう膜炎、静脈炎、結節性多発動脈炎(ないし結節性動脈周囲炎)、多発性軟骨炎、リウマチ性多発筋痛症、白毛症、多関節型JRA、多腺性内分泌不全症候群、多発性筋炎、多腺性内分泌不全症I型及び多腺性内分泌不全症II型、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、感染後間質性肺疾患、炎症後間質性肺疾患、ポストポンプ症候群、早発卵巣不全、原発性胆汁性肝硬変、原発性粘液水腫、原発性パーキンソン病、原発性硬化性胆管炎、原発性硬化性肝炎、原発性血管炎、前立腺癌及び直腸癌及び造血器悪性腫瘍(白血病及びリンパ腫)、前立腺炎、乾癬、1型乾癬、2型乾癬、乾癬性関節炎、乾癬性関節症、結合組織病続発性肺高血圧、結節性多発動脈炎の肺症状、純赤血球形成不全症、原発性副腎不全、放射線線維症、反応性関節炎、ライター病、再発性視神経脊髄炎、NOS腎疾患、再狭窄、関節リウマチ、関節リウマチ関連間質性肺疾患、リウマチ性心臓病、SAPHO(滑膜炎、座瘡、膿疱症、骨化症及び骨炎)、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、強皮症、続発性アミロイドーシス、ショック肺、胸膜炎、座骨神経痛、続発性副腎不全、敗血症症候群、敗血症性関節炎、敗血症性ショック、血清反応陰性関節症、シリコン関連結合組織病、ショーグレン病関連肺疾患、ショーグレン症候群、スネッドン・ウィルキンソン皮膚病、精子自己免疫疾患、脊椎関節症、強直性脊椎炎、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、スティル病、脳卒中、交感性眼炎、全身免疫応答症候群、全身性エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、全身性硬化症、全身性硬化症関連間質性肺疾患、高安病/動脈炎、側頭動脈炎、Th2型及びTh1型介在性疾患、甲状腺炎、中毒性ショック症候群、トキソプラズマ性網膜炎、中毒性表皮壊死、横断性脊髄炎、TRAPS(腫瘍壊死因子受容体)、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、1型アレルギー反応、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性ないしルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、II型糖尿病、潰瘍性大腸炎性関節症、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、通常型間質性肺炎(UIP)、ぶどう膜炎、血管炎性びまん性肺疾患、血管炎、春季カタル、ウイルス網膜炎、白斑、フォークト・小柳・原田症候群(VKH症候群)、ウェゲナー肉芽腫症、滲出型黄斑変性症、創傷治癒、並びにエルシニア及びサルモネラ関連関節症から構成される群から選択される請求項69に記載の方法。
【請求項72】
TNFα関連疾患治療用医薬組成物の製造用としての請求項19に記載の抗体結晶の使用。
【請求項73】
hTNF阻害剤の結晶を含有する医薬組成物であって、結晶の生体利用性又は安全性がhTNF阻害剤の液体組成物に比較して低下していない前記組成物。

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−535771(P2010−535771A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519990(P2010−519990)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/009549
【国際公開番号】WO2009/020654
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】