説明

抗原パルスして得られた樹状細胞

疾患、主としてB型肝炎の予防、治療に有効な樹状細胞を提供する。 樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含む方法によって得られたHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、B型肝炎の予防、治療に有効である。HBs抗原として、HBワクチンに含まれるHBs抗原を用いることができる。樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含む方法によって得られたワクチンパルス樹状細胞は、患者だけでなく健常者にも用いることができる。パルスに用いるワクチンとしては、様々な種類のワクチンを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の予防又は治療に用いることができる樹状細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
(樹状細胞療法とその問題点)
癌治療等の分野において、細胞免疫療法の一種である樹状細胞療法が注目されている。
【0003】
樹状細胞は、生体内で最も強い抗原提示能を有する抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)であり、取り込んだ抗原エピトープをT細胞に提示することによってT細胞を活性化し、免疫応答を高めることができる。
【0004】
樹状細胞療法は、この樹状細胞を、癌細胞から抽出した物質又は癌特異的抗原を用いて、生体外でパルスし、抗原提示能を亢進させて生体内に戻す治療法である。
【0005】
癌細胞から抽出した物質は、一般に、多種類の物質の混合物である。従って、癌細胞から抽出した物質を用いてパルスした樹状細胞は、細胞抽出物質中の多種類の癌抗原によって樹状細胞がパルスされたと考えられるため、癌に対する強力な免疫反応が誘導されると予想される。しかし、このように多種類の物質の混合物によってパルスした場合は、樹状細胞が提示する抗原を特定することができない。従って、癌患者に対して使用することは許されるが、健常者に対して使用することは許されない。
【0006】
また、癌特異的抗原を用いてパルスした樹状細胞においては、樹状細胞が提示する抗原を特定することができるが、現在同定されている癌特異的抗原の数自体がまだ多くないという問題点がある。
【0007】
樹状細胞に抗原を提示させる別の態様として、例えば、抗原に由来するペプチドをコードする遺伝子を樹状細胞に導入し、発現させる方法が知られている。しかし、このようにして調整した樹状細胞が、特定の抗原に対して強力な免疫応答を引き起こすことが可能であったとしても、現段階では、遺伝子操作を用いた樹状細胞を、疾患の予防等のために健常者に投与することは許されていない。
【0008】
(肝炎について)
肝炎とは、肝臓に起こる炎症であり、主にウイルス、アルコール、薬物が原因となって引き起こされる。最も多い肝炎は肝炎ウイルスが原因のものであり、今日まで、7種類の肝炎ウイルスが見つかっている。また、日本のウイルス性肝炎においては、B型、C型がそのほとんどを占める。
【0009】
肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎に大別でき、慢性肝炎とは、肝炎が6ヶ月以上続くものを言う。A型肝炎は、経口感染し、急性肝炎で留まり慢性化はしない。一方、B型、C型肝炎は、血液を介して感染し、母子間の垂直感染、家族や異性間の水平感染がある。また、B型、C型肝炎は、急性肝炎から慢性肝炎に進行するケースが多く、慢性化すると、肝硬変や肝臓癌等の重い肝臓疾病への移行率が極めて高いと言われている。
【0010】
(B型肝炎について)
B型肝炎の患者は全世界的に分布しており、世界に3億5千万人のB型肝炎ウイルス感染者がいると言われている。特に、中国における感染者は1億2千万人と推定され極めて多く、東南アジア全体で、全世界の感染者数の70%以上を占めるとされる。また、世界で毎年約100万人が、この疾患が原因で死亡していることが報告されている。日本においては、100万人以上のB型肝炎ウイルス感染者がいると推定され、その10%程度が慢性肝炎患者であると推定される。
【0011】
(B型肝炎の治療法とその問題点)
B型肝炎には特効的な治療薬はない。従って、治療は、ウイルスの数を減らしてその活動を抑えることが目的となる。代表的な治療法として、インターフェロン療法とラミブジン療法が知られている。
【0012】
インターフェロン療法は、今から20年ほど前に始められたB型肝炎の最初の治療法で、インターフェロンが免疫系の働きを助けてウイルスの増殖を抑える役割を果たす。インターフェロン療法は、ウイルス数が少ないほど効果が期待できるため、一般的に、ウイルス数がB型肝炎の1000分の1であるC型肝炎の治療に優れた効果を発揮する一方、B型肝炎の治療には、約20%の患者にしか効果を望めない。また、肝硬変に移行すると、よりインターフェロンが効きにくくなる。さらに、治療に用いられるインターフェロンは、開発し製品とするまでに大きなコストがかかり、1クールの治療で患者に200〜300万円の大きな経済的負担をもたらす等の問題点も多い。
【0013】
ラミブジンは、本来、エイズの治療薬として開発された薬剤であるが、B型肝炎の治療にも有効であることが知られている。ラミブジンは、ウイルスDNAの合成を直接抑える働きがあり、B型肝炎の急速な悪化や劇症化を食い止める効果がある。ラミブジンは、インターフェロンが効果を示さなかったB型肝炎患者にも効果を示すことが報告されているが、ウイルスが増殖状態にない時には効果が示されない。さらに、長期投与によってラミブジン耐性ウイルスが現れる等の問題点がある。
【0014】
また、これらのB型肝炎の治療法は、効果の評価方法がそれぞれ異なっているため、一律に効果を比較することができない。また、これらの治療法を用いても、B型肝炎ウイルスを体内から完全になくすことは不可能であると考えられる。従って、前述のようなB型肝炎患者の増加を防ぐためには、B型肝炎を予防することが重要であると考えられる。
【0015】
(B型肝炎の予防法とその問題点)
B型肝炎の予防の観点からは、一般に、HBワクチンが有効である。
【0016】
B型慢性肝炎を予防するためには、健常人であっても、体内に抗HBs抗体を持ち、維持することが重要である。今日のHBワクチンは、B型肝炎ウイルスの表面抗原であるHBs抗原に基づいて作られている。通常、このHBワクチンを3回接種することにより、HBワクチンの効くヒトには、体内に抗HBs抗体ができる。抗体ができたヒトは、その後B型肝炎に感染することがないが、数年後に抗体値が低下した場合でも、一度抗HBs抗体が体内にできていれば感染を免れる可能性があると考えられる。また、追加接種をすることによって、抗体値を再び高めることもできる。
【0017】
しかし、HBワクチンにも、いくつかの問題点が存在する。
【0018】
まず、健常者のうちの約10%はHBワクチンが非奏功(non−responder)であり、HBワクチンを投与しても抗HBs抗体を産生することができない。医療従事者においてもHBワクチンnon−responderは少なくなく、日本には数十万人いると考えられる。
【0019】
また、免疫能の低下を伴う疾患にかかっている人、例えば、HIV患者、肝疾患患者、透析患者においても、HBワクチンが十分に効果を発揮できない。肥満者や喫煙者にも免疫能の低下がみられるが、これらの人々もHBワクチンに対する反応性が低い。
【0020】
さらに、肝移植対象者等の免疫抑制剤投与中の人にも、HBワクチンが効かないため、患者は抗HBs抗体を産生することができない。しかし、B型肝炎関連肝移植においては、抗HBs抗体値を維持することが治療成績に大きな影響を及ぼすため、肝移植後、患者は繰り返し抗HBsヒト免疫グロブリンを投与することが必要となる。投与は2週間に1回の頻度で必要であり、このことは年間250万円という大きな経済的負担をもたらす。これからは、特に患者の多い東南アジアを中心に、B型肝炎関連肝移植が激増すると考えられるため、この経済的な問題の解決が世界的に必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、疾患の予防又は治療に有効な樹状細胞を提供することを目的とし、特に、B型肝炎の予防又は治療に好適に利用できる樹状細胞を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
1、HBs抗原提示能を有する樹状細胞
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含む方法によって得られたHBs抗原提示能を有する樹状細胞である。
【0023】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、HBs抗原エピトープをT細胞に提示することによってT細胞を活性化し、HBs抗原に対する免疫応答を高めることができる。従って、本発明によれば、B型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することができる。
【0024】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞において、前記方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。これによれば、血液由来の樹状細胞から、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することが可能である。また、血液を用いれば、従来公知の方法等を用いて、比較的簡便な操作によって樹状細胞を得ることが可能である。
【0025】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞において、前記方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。
【0026】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞において、前記生物は、ヒトであることが好ましい。これによれば、ヒト由来の樹状細胞を得ることができるため、本発明によるHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、ヒトに投与することが可能である。従って、本発明によって、ヒトのB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することができる。
【0027】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞において、前記HBs抗原は、HBワクチンに含まれるHBs抗原であることが好ましい。例えばヒトの場合、HBワクチンとして実際に販売されるものは、健常者を含むヒトに安全性、有効性が認められ、認可を受けたものである。従って、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞によれば、例えばヒトに安全かつ有効に用いることができるHBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することができる。また、HBワクチンは健常者に対して使用できるものであることから、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、B型肝炎患者等に対するB型肝炎の治療目的のみならず、健常者に対しても、B型肝炎の予防目的で使用することができる。なお、ヒトに限らず他の生物についても、その生物に安全かつ有効なHBワクチンを用いてパルスした樹状細胞を用いることによって、その生物のB型肝炎を予防又は治療することができる。
【0028】
2、HBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法は、樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含むことを特徴とする。これによれば、B型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を得ることができる。
【0029】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。これによれば、血液由来の樹状細胞から、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を得ることが可能である。また、血液を用いれば、従来公知の方法等を用いて、比較的簡便な操作によって樹状細胞を得ることが可能である。
【0030】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。
【0031】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法において、前記生物は、ヒトとすることが好ましい。これによれば、ヒトのB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を得ることが可能である。
【0032】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法において、前記HBs抗原は、HBワクチンに含まれるHBs抗原であることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができるB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することができる。
【0033】
3、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物は、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含むことを特徴とする。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、例えば、他の物質と混合した状態、他の物質に懸濁した状態、他の物質と組み合わせた状態等で使用することができる。具体的には、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、例えば、PBS、生理食塩水、RPMI1640培地等に懸濁した態様や、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞に、例えば、TNF−α、IL−12、HBワクチン、GM−CSF、OK432、その他免疫賦活剤等を添加した態様で用いることができる。従って、本発明によれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、使用目的に適した態様で又は本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の効果を高める態様で使用することが可能になる。
【0034】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物は、さらにHBワクチン添加物を含むことが好ましい。
【0035】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物において、前記組成物の形態としては、例えば、実験試薬又は実験キットがあげられる。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、研究、例えば免疫研究に適した態様で用いることができる。
【0036】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、医薬組成物とすることが好ましい。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、医療、例えば、B型肝炎の予防又は治療に適した態様で用いることができる。
【0037】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、免疫応答活性化製剤であることが好ましい。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、HBs抗原に対する免疫応答を活性化するのに適した投与剤形で用いることができる。
【0038】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、細胞ワクチンであることが好ましい。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、生体内に直接投与することが可能になり、HBs抗原に対する免疫応答を活性化することができる。
【0039】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物において、前記細胞ワクチンは、B型肝炎の予防又は治療ワクチンであることが好ましい。これによれば、前記細胞ワクチンに含まれる本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞が、生体内でHBs抗原に対する免疫応答を活性化することによって、B型肝炎を予防又は治療することが可能になる。
【0040】
4、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療方法
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療方法は、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いることを特徴とする。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞が、HBs抗原に対する免疫応答を活性化することによって、B型肝炎を予防又は治療することができる。例えばヒトの場合、これまでのHBワクチンが非奏功であった健常者又は免疫能の低下を伴う疾患にかかっている人、免疫抑制剤投与中の人等、これまでのHBワクチンが効果を発揮できなかった人が、本発明のB型肝炎の予防又は治療方法によって、抗HBs抗体を産生することができ、B型肝炎を予防又は治療することが可能になる。
【0041】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療方法において、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、生物に投与する工程を含むことが好ましい。これによれば、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞が、生体内で、HBs抗原に対する免疫応答を活性化することによって、B型肝炎を予防又は治療することができる。また、本発明のB型肝炎の予防又は治療方法は、HBワクチンを直接生体内に投与するこれまでのB型肝炎の予防又は治療方法と比較して、高い効果を発揮することが可能である。
【0042】
本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療方法において、前記生物は、ヒトであることが好ましい。これによれば、ヒトのB型肝炎を予防又は治療することが可能である。
【0043】
5、ワクチンパルス樹状細胞
本発明のワクチンパルス樹状細胞は、樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含む方法によって得られたワクチンパルス樹状細胞である。
【0044】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、「ワクチンパルス樹状細胞」とは、ワクチンでパルスする工程を含む方法によって得られた抗原提示能を有する樹状細胞のことを言う。
【0045】
本発明のワクチンパルス樹状細胞は、ワクチンに含まれる抗原エピトープをT細胞に提示することによってT細胞を活性化し、前記抗原に対する免疫応答を高めることができる。従って、本発明によれば、疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0046】
また、例えばヒトの場合、ワクチンとして実際に販売されるものは、ヒトに安全性、有効性が認められ、認可を受けたものである。従って、本発明によれば、例えばヒトに安全かつ有効に用いることができるワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。なお、ヒトに限らず他の生物についても、その生物に安全かつ有効なワクチンを用いてパルスしたワクチンパルス樹状細胞を用いることによって、その生物の疾患を予防又は治療することができる。
【0047】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、前記方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。これによれば、血液由来の樹状細胞から、本発明のワクチンパルス樹状細胞を提供することが可能である。また、血液を用いれば、従来公知の方法等を用いて、比較的簡便な操作によって樹状細胞を得ることが可能である。
【0048】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、前記方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。
【0049】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、前記生物は、ヒトとすることが好ましい。これによれば、ヒト由来の樹状細胞を得ることができるため、本発明によるワクチンパルス樹状細胞を、ヒトに投与することが可能である。従って、本発明によって、ヒト疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0050】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、前記パルスに使用するワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンであることが好ましい。これによれば、これらのワクチンに含まれている、前記疾患に関わる抗原を提示するワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。従って、前記疾患を予防又は治療することができる。
【0051】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、前記パルスに使用するワクチンは、肝炎ワクチンであることが好ましい。肝炎ワクチンとしては、例えば、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン等が知られている。例えばヒトの場合、肝炎ワクチンとして実際に販売されるものは、健常者を含むヒトに安全性、有効性が認められ、認可を受けたものである。従って、本発明によれば、例えばヒトに安全かつ有効に用いることができる肝炎ウイルス抗原提示能を有する肝炎ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。また、肝炎ワクチンは健常者に対して使用できるものであることから、本発明の肝炎ワクチンパルス樹状細胞は、例えば、肝炎患者等に対する肝炎の治療目的のみならず、健常者に対しても、肝炎の予防目的で使用することができる。なお、ヒトに限らず他の生物についても、その生物に安全かつ有効な肝炎ワクチンを用いてパルスした樹状細胞を用いることによって、その生物の肝炎を予防又は治療することができる。
【0052】
本発明のワクチンパルス樹状細胞において、前記肝炎ワクチンは、HBs抗原を含むHBワクチンであることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができるB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有するワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0053】
6、ワクチンパルス樹状細胞の製造方法
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法は、樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含むことを特徴とする。これによれば、疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を得ることができる。
【0054】
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。これによれば、血液由来の樹状細胞から、本発明のワクチンパルス樹状細胞を得ることが可能である。また、血液を用いれば、従来公知の方法等を用いて、比較的簡便な操作によって樹状細胞を得ることが可能である。
【0055】
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。
【0056】
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法において、前記生物は、ヒトであることが好ましい。これによれば、ヒト疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を得ることが可能である。
【0057】
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法において、前記パルスに使用するワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンであることが好ましい。これによれば、前記疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0058】
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法において、前記パルスに使用するワクチンは、肝炎ワクチンであることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができる肝炎の予防又は治療に有効な、肝炎ウイルス抗原提示能を有する肝炎ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0059】
本発明のワクチンパルス樹状細胞の製造方法において、前記肝炎ワクチンは、HBs抗原を含むHBワクチンであることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができるB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有するワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0060】
7、ワクチンパルス樹状細胞を含む組成物
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物は、本発明のワクチンパルス樹状細胞を含むことを特徴とする。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、例えば、他の物質と混合した状態、他の物質に懸濁した状態、他の物質と組み合わせた状態等で使用することができる。具体的には、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、例えば、PBS、生理食塩水、RPMI 1640培地等に懸濁した態様や、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞に、例えば、TNF−α、IL−12、HBワクチン、GM−CSF、OK432、その他免疫賦活剤等を添加した態様で用いることができる。従って、本発明によれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、使用目的に適した態様で又は本発明のワクチンパルス樹状細胞の効果を高める態様で使用することが可能になる。
【0061】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物は、さらにワクチン添加物を含むことが好ましい。
【0062】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、実験試薬又は実験キットであることが好ましい。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、研究、例えば免疫研究に適した態様で用いることができる。
【0063】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、医薬組成物であることが好ましい。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、医療、例えば、疾患の予防又は治療に適した態様で用いることができる。
【0064】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、免疫応答活性化製剤であることが好ましい。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、ワクチンに含まれていた抗原に対する免疫応答を活性化するのに適した投与剤形で用いることができる。
【0065】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物において、前記組成物は、細胞ワクチンであることが好ましい。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、生体内に直接投与することが可能になり、ワクチンに含まれていた抗原に対する免疫応答を活性化することができる。
【0066】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物において、前記細胞ワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンであることが好ましい。これによれば、前記細胞ワクチンに含まれる本発明のワクチンパルス樹状細胞が、生体内で、ワクチンに含まれていた抗原に対する免疫応答を活性化することによって、前記疾患を予防又は治療することが可能になる。
【0067】
8、ワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療方法
本発明のワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療方法は、本発明のワクチンパルス樹状細胞を用いることを特徴とする。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞が、ワクチンに含まれていた抗原に対する免疫応答を活性化することによって、前記疾患を予防又は治療することができる。例えばヒトの場合、前記疾患を予防又は治療するためにこれまで用いられてきたワクチンが非奏功であった健常者又は免疫能の低下を伴う疾患にかかっている人、免疫抑制剤投与中の人等、ワクチンが十分な効果を発揮できなかった人が、本発明の疾患の予防又は治療方法によって、抗体を産生することができるようになり、前記疾患を予防又は治療することが可能になる。
【0068】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療方法において、本発明のワクチンパルス樹状細胞を、生物に投与する工程を含むことが好ましい。これによれば、本発明のワクチンパルス樹状細胞が、生体内で、ワクチンに含まれていた抗原に対する免疫応答を活性化することによって、前記疾患を予防又は治療することができる。また、本発明の疾患の予防又は治療方法は、ワクチンを直接生体内に投与することによるこれまでの疾患の予防又は治療方法と比較して、高い効果を発揮することが可能である。
【0069】
本発明のワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療方法において、前記生物は、ヒトであることが好ましい。これによれば、ヒトの疾患を予防又は治療することが可能である。
【0070】
9、ヒト用ワクチンパルス樹状細胞
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞は、ヒトのB型肝炎の予防又は治療のためのワクチンパルス樹状細胞であり、前記ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得る樹状細胞取得工程および前記樹状細胞をワクチンでパルスするパルス工程を含む製造方法によって得られたワクチンパルス樹状細胞であり、前記パルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンであることを特徴とする。
【0071】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞において、前記ワクチンパルス樹状細胞は、例えば、Th2を誘導し、Th1を誘導しないことが好ましく、さらにCTLを誘導しないことがより好ましい。
【0072】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞は、以下のような利点を有する。癌治療等で行われている樹状細胞療法においては、細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導を目的としているため、Th1の誘導を促進し、Th2を誘導しないように樹状細胞を活性化させている。これに対し、本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞は、例えば、Th2を誘導し、Th1およびCTLを誘導しないため、癌治療等で行われてきた樹状細胞療法とはメカニズムが全く異なる。つまり、本発明におけるワクチンパルス樹状細胞よれば、例えば、CTLを誘導することなく抗体の産生が可能となり、CTLによる肝細胞の攻撃に伴う肝障害(例えば、劇症肝炎等)を引き起こすこともない。従って、本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者およびB型肝炎ウイルスキャリアに極めて有用である。なお、本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞がTh1やCTLを誘導しないというメカニズムは不明である。
【0073】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞において、前記樹状細胞をワクチンでパルスする工程において、パルス時間は、例えば、8時間〜24時間であることが好ましい。また、前記樹状細胞取得工程において、単離した単球をGM−CSFおよびIL−4で共培養することが好ましい。
【0074】
10、ヒト用ワクチンパルス樹状細胞の製造方法
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞の製造方法は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得るヒト由来の血液から樹状細胞を得る樹状細胞取得工程、および、前記樹状細胞をワクチンでパルスして、ヒトのB型肝炎の予防又は治療のためのワクチンパルス樹状細胞を得るパルス工程を含む製造方法であって、前記パルス工程においてパルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンであることを特徴とする。本発明の製造方法により得られたヒト用ワクチンパルス樹状細胞によれば、ヒトにおいて、例えば、Th2を誘導し、Th1を誘導しないことが好ましく、さらにCTLを誘導しないことが好ましい。
【0075】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞の製造方法において、前記ワクチンパルス工程におけるパルス時間は、8時間〜24時間であることが好ましい。
【0076】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞の製造方法の前記樹状細胞取得工程において、単離した単球をGM−CSFおよびIL−4と共培養することが好ましい。
【0077】
11、ヒトB型肝炎のための治療および予防のための医薬品
本発明のヒトB型肝炎のための治療および予防のための医薬品は、前記本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞を含むことを特徴とする。本発明の医薬品において、本発明のワクチンパルス樹状細胞が、例えば、Th2を誘導し、Th1を誘導しないことが好ましく、さらにCTLを誘導しないことが好ましい。このように、CTLを誘導しないため、本発明の医薬品によれば、例えば、CTLによる肝細胞の攻撃等により、劇症肝炎を引き起こすこともない。さらに、本発明の医薬品によれば、B型肝炎患者はもちろんのこと、B型肝炎を予防又は治療するためにこれまで用いられてきたワクチンが非奏功であった健常者等、ワクチンが十分な効果を発揮できなかった人が、抗体を産生することができるようになり、B型肝炎を予防又は治療することが可能になる。前記B型肝炎としては、B型慢性肝炎があげられる。本発明のヒトB型肝炎のための治療および予防のための医薬品の投与形態は特に制限されないが、例えば、皮下投与することが好ましい。
【0078】
12、ワクチンパルス樹状細胞を用いたヒトのB型肝炎の予防又は治療方法
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞を用いたヒトのB型肝炎の予防又は治療方法は、自己の樹状細胞由来のワクチンパルス樹状細胞をB型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアに投与することを含む予防又は治療方法であって、前記ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得る樹状細胞取得工程および前記樹状細胞をワクチンでパルスするパルス工程を含む製造方法によって得られたヒト用ワクチンパルス樹状細胞であり、前記パルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンであることを特徴とする。
【0079】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞を用いたヒトのB型肝炎の予防又は治療方法において、本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞が、例えば、Th2を誘導し、Th1を誘導しないことが好ましく、さらにCTLを誘導しないことが好ましい。本発明の予防又は治療方法によれば、B型肝炎患者はもちろんのこと、B型肝炎を予防又は治療するためにこれまで用いられてきたワクチンが非奏功であった健常者等、ワクチンが十分な効果を発揮できなかった人が、抗体を産生することができるようになり、B型肝炎を予防又は治療することが可能になる。さらに、本発明の予防又は治療方法は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリア自身の樹状細胞を使用しているため、安全性が極めて高いものとなる。前記B型肝炎としては、B型慢性肝炎があげられる。本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞を用いたヒトのB型肝炎の予防又は治療方法において、ヒト用ワクチンパルス樹状細胞の投与形態は特に制限されないが、例えば、皮下投与が好ましい。
【0080】
13、ヒトB型肝炎の治療又は予防のためのヒト用ワクチンパルス樹状細胞の使用
本発明のヒトB型肝炎の治療又は予防のためのヒト用ワクチンパルス樹状細胞の使用は、前記ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得る樹状細胞取得工程および前記樹状細胞をワクチンでパルスするパルス工程を含む製造方法によって得られたヒト用ワクチンパルス樹状細胞であり、前記パルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンであり、前記ワクチンパルス樹状細胞を、末梢血を採取したB型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアに投与することを含むことを特徴とする。
【0081】
本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞をヒトB型肝炎の治療又は予防に使用すれば、B型肝炎患者はもちろんのこと、B型肝炎を予防又は治療するためにこれまで用いられてきたワクチンが非奏功であった健常者等、ワクチンが十分な効果を発揮できなかった人が、抗体を産生することができるようになり、B型肝炎を予防又は治療することが可能になる。さらに、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリア自身の樹状細胞を使用しているため、安全性が極めて高いものとなる。本発明のヒト用ワクチンパルス樹状細胞が、例えば、Th2を誘導し、Th1を誘導しないことが好ましく、さらにCTLを誘導しないことが好ましい。前記B型肝炎としては、B型慢性肝炎があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、実施例1におけるHBワクチンパルス樹状細胞投与前の抗HBs抗体値を示す。
【図2】図2は、前記実施例におけるHBワクチンパルスによる、樹状細胞のHLA−DR及びCD86の変化を示すグラフである。
【図3】図3は、前記実施例におけるHBワクチンパルスによる、樹状細胞のT細胞幼若化補助能の変化を示すグラフである。
【図4】図4は、前記実施例におけるHBsメモリーT細胞を用いた、HBワクチンパルス樹状細胞がHBsメモリーT細胞の増殖能に及ぼす効果を示すグラフである。
【図5】図5は、前記実施例におけるHBsメモリーT細胞を用いた、HBワクチンパルス樹状細胞が抗HBs抗体産生能に及ぼす効果を示すグラフである。
【図6】図6は、前記実施例における血液生化学的検査による、HBワクチンパルス樹状細胞の安全性テストの検査項目を示す。
【図7】図7は、前記実施例におけるALT検査の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、前記実施例におけるCRP検査の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、前記実施例におけるPT検査の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、前記実施例におけるCreatinine検査の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、前記実施例における血清生化学的検査を用いた自己免疫反応に関する安全性テストの結果を示すグラフである。
【図12】図12は、前記実施例におけるHBワクチンパルス樹状細胞投与による、抗HBs抗体値の変化を示す。
【図13】図13は、前記実施例におけるHBワクチンパルス樹状細胞投与による、抗HBs抗体値の変化を示すグラフである。
【図14】図14は、前記実施例におけるHBワクチンパルス樹状細胞投与による、HBワクチンnon−responderの抗HBs抗体値の推移を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例2における血清生化学的検査を用いた自己免疫反応に関する安全性テストの結果を示すグラフである。
【図16】図16は、実施例3におけるHBワクチンパルス樹状細胞投与による、抗HBs抗体値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
以下、本発明の最良の実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。
【0084】
1、HBs抗原提示能を有する樹状細胞
本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含む方法によって得られる。本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞によれば、B型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することができる。
【0085】
本実施の形態において、「樹状細胞を抗原でパルスする」とは、樹状細胞を、抗原を取り込んで前記樹状細胞内で分解し、前記分解した抗原をペプチドとして提示しうる状態にすることを言う。
【0086】
本実施の形態において、樹状細胞を抗原でパルスする具体的な方法としては、例えば、適切なサイトカイン等の存在下に、抗原と樹状細胞とを共存させて培養する方法が挙げられる。
【0087】
樹状細胞を得る方法は、最終的に、抗原を取り込みこの抗原を提示しうる樹状細胞が得られれば特に限定されず、種々の手法を用いることができる。
【0088】
例えば、血液から樹状細胞を得ることができる。具体的には、例えば、当業者に公知の方法を利用して、樹状細胞の前駆細胞を含む血液から樹状細胞を分化誘導する方法又は血液から樹状細胞を直接分離する方法を用いることができる。より具体的には、例えば、骨髄細胞、臍帯血又は末梢血のCD34陽性前駆細胞から主にGM−CSFとTNF−αを用いて誘導する方法、臍帯血単核球又は末梢血単核球から主にGM−CSFとIL−4を用いて誘導する方法、末梢血単核球から主にGM−CSFとIFN−αを用いて誘導する方法、末梢血単核球より直接分離する方法等によって、樹状細胞を得ることができる。
【0089】
また、これらの樹状細胞を得る方法は、必要に応じてさらに、生物から血液を採取する工程を含むこともできる。前記生物は、B型肝炎に感染する可能性の有無によって特に限定されるものではないが、例えば、B型肝炎に感染しうる生物であることが好ましい。前記B型肝炎に感染しうる生物には、B型肝炎に自然に感染しうる生物や、B型肝炎を人工的に感染させることができる生物を含むことが好ましい。具体的には、前記B型肝炎に自然に感染しうる生物としては、例えば、ヒト、チンパンジー等の霊長類や、ウッドチャック、ペキンダック等のアヒル等、前記B型肝炎を人工的に感染させることができる生物としては、例えば、リス、ラット、カモ、ガチョウ、サギ、ツル、マウス等を挙げることができる。特に、B型肝炎による死亡者が世界で増加している点からも、本発明を、前記生物がヒトである場合に使用できる効果は大きい。
【0090】
また、血液を利用せずに樹状細胞を得る方法としては、例えば、ES細胞を分化誘導して樹状細胞を得る方法があげられる。具体的には、例えば、胚盤胞の内部に存在する内部細胞塊から樹立されたES細胞を、適切なフィーダー細胞やサイトカインとともに培養することによって、樹状細胞に分化誘導することができる。
【0091】
本実施の形態において、樹状細胞を培養する培地については、樹状細胞の前駆細胞から樹状細胞への分化誘導、樹状細胞の生存、抗原による樹状細胞のパルス等を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、RPMI 1640培地等を用いることができる。また、好ましくはRPMI 1640培地である。
【0092】
本実施の形態において、樹状細胞の誘導には、サイトカインを使用することができる。樹状細胞の誘導に用いるサイトカインとしては、樹状細胞への分化誘導、樹状細胞の生存、抗原による樹状細胞のパルス等を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、GM−CSF、TNF−α、IL−4、IFN−α等を用いることができる。
【0093】
本実施の形態において、HBs抗原の態様は、最終的に、樹状細胞によって提示されることが可能ならば特に限定されず、完全なタンパク質の抗原でも、ペプチド抗原でもよい。
【0094】
また、本実施の形態に係るHBs抗原は、例えば、様々な物質や液体と組み合わせた態様で用いることができる。具体的には、例えば、HBs抗原をリポソーム等のリン脂質二重膜を用いて樹状細胞内に導入することや、HBs抗原を緩衝液、例えばPBSや、培地、例えばRPMI 1640培地に懸濁して樹状細胞に導入することができる。
【0095】
また、HBs抗原の添加時期は、結果として、HBs抗原が樹状細胞によって提示されることが可能ならば特に限定されず、例えば、樹状細胞を分化誘導した後に添加することができる。また、分化誘導時にHBs抗原を添加して、一緒に培養することもできる。また、HBs抗原のパルス時間も、結果として、HBs抗原が樹状細胞によって提示されることが可能ならば特に限定されず、例えば、8時間から24時間であることが好ましい。また、HBs抗原は、HBワクチンに含まれるHBs抗原であることが好ましい。
【0096】
ワクチンには、例えば、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド等、いくつかの種類が存在する。生ワクチンは、例えば、病原性を弱めたウイルスや細菌を生きたまま接種するワクチンを言う。不活化ワクチンは、例えば、ウイルスの粒子や細菌の菌体等を精製し、加熱やホルマリン等の薬剤を用いて処理して、病原性を消失又は無毒化して作られるワクチンを言う。トキソイドは、例えば、菌の毒素のみを取り出して精製し、ホルマリンを加えて免疫原性を失わせずに無毒化したものを言う。
【0097】
本実施の形態におけるHBワクチンは、HBs抗原が含まれていればその種類が限定されるものではないが、現在日本において、ヒトに使用が許可され販売されているHBワクチンは、不活化ワクチンに分類される。本実施の形態において、不活化ワクチンであるHBワクチンを用いる場合は、例えば、組換え沈降B型肝炎ワクチンや、沈降B型肝炎ワクチンを用いることができる。
【0098】
組換え沈降B型肝炎ワクチンとしては、例えば、B型肝炎ウイルスDNAのHBs抗原に相当する部分を、酵母菌や動物細胞等のDNAに挿入し発現させることで、ワクチンの有効成分であるHBs抗原を作り、免疫増進剤のアルミニウムゲルを加えて調整したワクチンを用いることができる。動物細胞として、例えば、CHO細胞を用いて調整したワクチンを用いることができる。
【0099】
沈降B型肝炎ワクチンとしては、例えば、動物細胞等により生産されたHBs抗原を精製した後、アルミニウムゲルを加えて調整したワクチンを用いることができる。動物細胞として、例えば、huGK−14細胞を用いて調整したワクチンを用いることができる。
【0100】
2、HBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法
本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法は、樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含む。これによれば、B型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を得ることができる。
【0101】
前記製造方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。これによれば、血液由来の樹状細胞から、本発明のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を得ることが可能である。また、血液を用いれば、従来公知の方法等を用いて、比較的簡便な操作によって樹状細胞を得ることが可能である。
【0102】
また、前記製造方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。
【0103】
前記生物は、ヒトであることが好ましい。これによれば、ヒトのB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を得ることが可能である。
【0104】
また、前記HBs抗原は、HBワクチンに含まれるHBs抗原であることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができるB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を提供することができる。
【0105】
3、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物
本実施の形態に係る組成物は、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含むことが好ましい。
【0106】
また、本実施の形態に係る組成物はさらに、HBワクチン添加物を含むことが好ましい。
【0107】
本実施の形態において、「本実施の形態に係る組成物はさらに、HBワクチン添加物を含む」とは、HBワクチン添加物が、本実施の形態に係る組成物全体中のどこかに含まれている状態を言うとする。すなわち、HBワクチン添加物が含まれる場所は、本実施の形態に係る組成物中の樹状細胞の外、中、細胞膜上等どこでもよく、特に限定されない。本実施の形態に係る組成物がワクチン添加物を含むことにより、HBs抗原として、HBワクチンに含まれるHBs抗原を用いて本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を得たことが、判定可能となる。
【0108】
HBワクチン添加物としては、例えば、保存剤、抗生物質、安定剤、防腐剤、免疫増進薬、緩衝剤、等張化剤等を挙げることができる。具体例としては、チメロサール、硫酸アルミニウムカリウム、水酸化ナトリウム、塩化アルミニウム、酢酸、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を挙げることができる。なお、HBワクチン添加物はこれらに限定されない。
【0109】
HBワクチン添加物の検出方法としては、例えば、公知の分析方法を用いることができる。具体的には、例えば、各種クロマトグラフを用いた分離分析、定量分析や、赤外線分光分析、核磁気共鳴分析、質量分析、元素分析などによる構造分析等を挙げることができる。
【0110】
本実施の形態に係る組成物は、実験試薬又は実験キットであることが好ましい。これによって、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、様々な研究に適した態様で用いることができる。用いうる研究分野としては、例えば、免疫応答、免疫寛容、サイトカイン産生に関するシグナル伝達メカニズムについての研究や、樹状細胞を用いた免疫療法についての研究が挙げられる。また、例えば、B型肝炎の予防又は治療に関わる研究、例えば、遺伝子、RNA、ペプチド、タンパク質、化合物、医薬、サイトカイン等のスクリーニング等の目的にも用いることができる。
【0111】
また、本実施の形態に係る組成物は、医薬組成物であることが好ましい。本実施の形態に係る医薬組成物は、例えば、生体内に直接投与する態様や、生体外で他の物質や細胞と混合する態様で用いることができる。
【0112】
また、本実施の形態に係る組成物は、免疫応答活性化製剤であることが好ましい。本実施の形態に係る免疫応答活性化製剤は、例えば、生体内に直接投与する態様や、生体外で他の物質や細胞と混合する態様で用いることができる。
【0113】
本実施の形態に係る組成物を生体外で用いる態様としては、例えば、本実施の形態に係る免疫応答活性化製剤とT細胞を混合して、HBs抗原エピトープをT細胞に提示することによってT細胞を活性化する使用方法が挙げられる。また、このT細胞は生体内に投与して用いることが可能である。
【0114】
また、本実施の形態に係る組成物を生体内に直接投与する態様としては、例えば、細胞ワクチンとしての注射や点滴が挙げられる。細胞ワクチンとしては、好ましくは、B型肝炎の予防又は治療ワクチンである。また、本実施の形態に係る組成物を生体内に直接投与する場所としては、例えば、静脈内投与、動脈内投与、胸腔内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉中投与、組織内(例えば肝臓内)投与、リンパ節投与等が挙げられる。投与の簡潔さの点から、皮下注射が好ましい。
【0115】
4、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療
本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、例えば、B型肝炎の予防又は治療に用いることができる。
【0116】
HBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療は、例えば、従来のB型肝炎の予防又は治療方法と組み合わせて用いることができる。
【0117】
また、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療は、HBs抗原提示能を有する樹状細胞を、生物に投与する工程を含むことが好ましい。前記生物としては、例えば、前述のようなB型肝炎に感染しうる生物を挙げることができる。また、拒絶反応を抑えることができれば、樹状細胞が由来とする生物と、投与対象となる生物が、同種生物でも異種生物でもよい。同種生物の場合においては、本実施の形態に係る樹状細胞を、取り出した自己の体内に投与することも、組織適合性抗原が投与可能な程度に一致している非自己の体内に投与することも可能である。
【0118】
例えば、前記生物は、ヒトであることが好ましい。この場合、HLAの型が可能な限り一致していることが望ましい。従って、樹状細胞の由来は、好ましくは、血縁にあたる提供者に由来する樹状細胞である。自家細胞を用いればHLAの型の適合性を考慮する必要がないため、より好ましくは、投与対象の本人に由来する樹状細胞である。
【0119】
本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、前述のように、生体内に直接投与する態様で用いることや、生体外でT細胞と混合してT細胞を活性化し、このT細胞は生体内に投与する態様で用いることが可能である。しかし、T細胞はエフェクター細胞であるため、一度機能を果たすと短時間で死に、消失してしまう。従って、B形肝炎を予防、治療するためには、T細胞を高頻度で繰り返し投与する必要がある。それに対し、樹状細胞は、ナイーブT細胞やHBsメモリーT細胞、B細胞にも作用し、繰り返し刺激を与えるため、長時間でかつ強力な効果をもたらす。以上のことから、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、生体内に直接投与する態様で用いる方がより好ましいと考えられる。
【0120】
5、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞の使用例及びその効果
以下に、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞の使用例及びその効果について示す。本使用例では、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、ヒトに投与する工程を含むことが好ましい。本使用例は、B型肝炎の予防又は治療に適用することができる。なお、本使用例は、以下の場合に限定されず、本使用例に係る樹状細胞の使用態様は、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。
【0121】
5−1、B型肝炎の予防への適用
健常者のうちの約10%は、HBワクチンに対して非奏功である人(non−responder)であり、HBワクチンを投与しても抗HBs抗体を産生することができないことが知られている。B型肝炎は血液を介して感染するため、医療従事者等は、特に抗HBs抗体の必要性が高いと考えられるが、これらの人々においてもHBワクチンnon−responderが少なくない。
【0122】
そこで、これらのHBワクチンnon−responderに、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を投与することによって、これらの人々が抗HBs抗体を産生することが可能になる。B型肝炎の感染を予防するには、抗HBs抗体値を少なくとも10mIU/mLに維持することが必要であると言われている。後述の実験例11の結果によれば、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を1回投与したことによって、HBワクチンnon−responderの抗HBs抗体値が平均30mIU/mLまで上昇し、10mIU/mL以上の値をおよそ3〜6ヶ月間維持できることがわかった。従って、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞によって、現在のHBワクチンnon−responderが抗HBs抗体を産生できるようになり、B型肝炎に感染するのを予防することができる。
【0123】
また、現在、B型肝炎の予防に用いられているHBワクチンは、一定期間ごとに通常3回の接種を行う必要がある。後述の実験例11の結果によれば、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を1回投与することによって、HBワクチンnon−responderのみならず、HBワクチンが奏功する健常者(responder)の抗HBs抗体値も高めることが可能であることがわかった。従って、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、HBワクチンnon−responderのみならず、HBワクチンresponderに対しても、新たなB型肝炎の予防手段として用いることができ、接種回数と経済的負担を減らすことができる可能性がある。
【0124】
また、HIV患者、肝疾患患者、透析患者、肥満者、喫煙者等の免疫能が低下している人にも、従来のHBワクチンが十分に効果を発揮できないことが知られている。このような人々も、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いることによって、抗HBs抗体を産生することが可能になると考えられる。
【0125】
5−2、B型肝炎の治療への適用
B型肝炎の治療には、これまで主に抗ウイルス剤が用いられてきた。しかし、抗ウイルス剤を長期間投与することにより、抗ウイルス剤が効かない変異ウイルスが高頻度で出現することが知られている。その結果、B型肝炎ウイルス量が再上昇し、肝炎の憎悪をまねく危険性があった。
【0126】
そこで、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いれば、このような変異ウイルスの出現頻度を下げることができると予想され、これはB型肝炎治療において大きな利点であると考えられる。
【0127】
また、肝移植対象者等の免疫抑制剤投与中の人も、免疫抑制状態であるために通常のHBワクチンが効かず、抗HBs抗体を産生できない。しかし、B型肝炎関連肝移植においては、抗HBs抗体値を維持することが治療成績に大きな好影響を及ぼすことが知られているため、患者は移植後、抗HBsヒト免疫グロブリンを2週間に1回の頻度で投与することが必要である。このことは患者に、年間約250万円の負担をもたらしており、この経済的問題の解決が世界的に必要とされている。
【0128】
そこで、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を患者に投与することにより、患者は、抗HBs抗体を産生できるようになると考えられる。さらに、後述の実験例11の結果より、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を、例えば3〜6ヶ月に1回の頻度で投与することで、10mIU/mL以上の抗HBs抗体値を維持できると予想される。このことから、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いれば、抗HBsヒト免疫グロブリンを用いるよりも投与頻度を大幅に減らすことが可能であり、その結果、患者の経済的負担を大幅に軽減できると考えられる。
【0129】
また、従来から存在するHBワクチンは、B型肝炎の予防ワクチンであり、B型肝炎の治療ワクチンは、あくまでも試験的にしか使用されていなかった。
【0130】
それに対して、前述のように、本実施の形態に従ってHBワクチンを用いて製造したHBs抗原提示能を有する樹状細胞は、従来から存在するHBワクチンを、B型肝炎の予防のみならず、治療にも用いることを可能にした。このことは、現在実際に使用されており、安全性、有効性が認められているHBワクチンの使用用途を広げるものであり、さらに、従来から存在するHBワクチンの効果を高める新たな使用態様を見出したものと言える。
【0131】
以上から、本実施の形態に係るHBs抗原提示能を有する樹状細胞には、広い使用用途と大きな利点が認められる。
【0132】
6、ワクチンパルス樹状細胞
本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞は、樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含む方法によって得られる。これによれば、疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0133】
前記方法はさらに、血液から樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。
【0134】
また、前記方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。前記生物は、ヒトであることが好ましい。
【0135】
また、前記方法は、B型慢性肝炎又はキャリアの患者から末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得ることが好ましい。ヒトの場合、末梢血は、安全かつ容易に繰り返し採取することができるからである。
【0136】
また、ワクチンの添加時期は、結果として、ワクチンに含まれる抗原が樹状細胞によって提示されることが可能ならば特に限定されず、例えば、樹状細胞を分化誘導した後に添加することができる。また、分化誘導時にワクチンを添加して、一緒に培養することもできる。また、ワクチンによるパルス時間も、結果として、ワクチンに含まれる抗原が樹状細胞によって提示されることが可能ならば特に限定されず、例えば、8時間から24時間であることが好ましい。
【0137】
ワクチンとしては、結果として、前記ワクチンに含まれる抗原が樹状細胞によって提示されることが可能であれば特に限定されず、例えば、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド、抗毒素等を用いることができる。また、ワクチンの形態も、結果として、前記ワクチンに含まれる抗原が樹状細胞によって提示されることが可能であれば特に限定されず、例えば、液状ワクチン、沈降型ワクチン、凍結乾燥ワクチン等を用いることができる。
【0138】
本実施の形態に用いうるワクチンの例として、百日せきワクチン、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、ポリオワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルエンザワクチン、BCGワクチン等の結核ワクチン、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌ワクチン、黄熱ワクチン、狂犬病ワクチン、コレラワクチン、ワイル病秋やみ混合ワクチン、はぶ抗毒素、まむし抗毒素、ペストワクチン、MMRワクチン、腸チフスワクチン、インフルエンザb菌結合型ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、赤痢ワクチン、マラリアワクチン等が挙げられる。なお、本実施の形態に用いうるワクチンは、ここに例示したものに限定されない。
【0139】
前記パルスに使用するワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンであることが好ましい。例えば、前記パルスに使用するワクチンは、肝炎ワクチンであることが好ましい。前記肝炎ワクチンは、例えば、HBs抗原を含むHBワクチンであることが好ましい。
【0140】
7、ワクチンパルス樹状細胞の製造方法
本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞の製造方法は、樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含む。これによれば、疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を得ることができる。
【0141】
前記製造方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含むことが好ましい。これによれば、血液由来の樹状細胞から、本発明のワクチンパルス樹状細胞を得ることが可能である。また、血液を用いれば、従来公知の方法等を用いて、比較的簡便な操作によって樹状細胞を得ることが可能である。
【0142】
また、前記製造方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含むことが好ましい。
【0143】
前記生物は、ヒトであることが好ましい。これによれば、ヒト疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を得ることが可能である。
【0144】
また、前記パルスに使用するワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンであることが好ましい。これによれば、前記疾患の予防又は治療に有効な、ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0145】
前記パルスに使用するワクチンは、肝炎ワクチンであることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができる肝炎の予防又は治療に有効な、肝炎ウイルス抗原提示能を有する肝炎ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0146】
前記肝炎ワクチンは、例えば、HBs抗原を含むHBワクチンであることが好ましい。これによれば、生物、例えば健常者を含むヒトに、安全かつ有効に用いることができるB型肝炎の予防又は治療に有効な、HBs抗原提示能を有する肝炎ワクチンパルス樹状細胞を提供することができる。
【0147】
8、ワクチンパルス樹状細胞を含む組成物
本実施の形態に係る組成物は、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を含むことが好ましい。
【0148】
また、本実施の形態に係る組成物はさらに、ワクチン添加物を含むことが好ましい。
【0149】
本実施の形態において、「本実施の形態に係る組成物はさらに、ワクチン添加物を含む」とは、ワクチン添加物が、本実施の形態に係る組成物全体中のどこかに含まれている状態を言うとする。すなわち、ワクチン添加物が含まれる場所は、本実施の形態に係る組成物中の樹状細胞の外、中、細胞膜上等どこでもよく、特に限定されない。本実施の形態に係る組成物がワクチン添加物を含むことにより、抗原として、ワクチンに含まれる抗原を用いて、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を得たことが、判定可能となる。
【0150】
ワクチン添加物としては、例えば、保存剤、抗生物質、安定剤、防腐剤、免疫増進薬、緩衝剤、等張化剤、着色剤等を挙げることができる。具体例としては、保存剤としてチメロサール、ホルマリン等、抗生物質としてエリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、硫酸カナマイシン等、及び、他の添加物が挙げられる。他の添加物としては、例えば、精製白糖、L−グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、乳糖、グルタミン酸カリウム、D−ソルビトール、ヒト血清アルブミン、ポリソルベート80、グリシン、ブドウ糖、水酸化ナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、塩化アルミニウム、酢酸、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、フェノールレッド、L−塩酸アルギニン、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、L−アルギニン酸、塩酸リジン等を挙げることができる。これらの他の添加物は、安定剤、防腐剤、免疫増進薬、緩衝剤、等張化剤、着色剤として添加されることができる。なお、ワクチン添加物はこれらに限定されない。
【0151】
本実施の形態に係る組成物は、実験試薬又は実験キットであることが好ましい。これによって、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を、様々な研究に適した態様で用いることができる。用いうる研究分野としては、例えば、その疾患に関するシグナル伝達メカニズムについての研究や、樹状細胞を用いた免疫療法についての研究が挙げられる。また、例えば、その疾患の予防又は治療に関わる研究、例えば、遺伝子、RNA、ペプチド、タンパク質、化合物、医薬、サイトカイン等のスクリーニング等の目的にも用いることができる。
【0152】
また、本実施の形態に係る組成物は、医薬組成物であることが好ましい。本実施の形態に係る医薬組成物は、例えば、生体内に直接投与する態様や、生体外で他の物質や細胞と混合する態様で用いることができる。
【0153】
また、本実施の形態に係る組成物は、免疫応答活性化製剤であることが好ましい。本実施の形態に係る免疫応答活性化製剤は、例えば、生体内に直接投与する態様や、生体外で他の物質や細胞と混合する態様で用いることができる。
【0154】
本実施の形態に係る組成物を生体外で用いる態様としては、例えば、本実施の形態に係る免疫応答活性化製剤とT細胞を混合して、ワクチンに含まれていた抗原エピトープをT細胞に提示することによってT細胞を活性化する使用方法が挙げられる。また、このT細胞は生体内に投与して用いることが可能である。
【0155】
また、本実施の形態に係る組成物を生体内に直接投与する態様としては、例えば、細胞ワクチンとしての注射や点滴が挙げられる。細胞ワクチンとしては、好ましくは、疾患の予防又は治療ワクチンである。また、本実施の形態に係る組成物を生体内に直接投与する場所としては、例えば、静脈内投与、動脈内投与、胸腔内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉中投与、組織内(例えば肝臓等)投与、リンパ節投与等が挙げられる。投与の簡潔さの点から、皮下注射が好ましい。
【0156】
9、ワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療
本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞は、疾患の予防又は治療に用いることができる。前記疾患としては、B型肝炎およびB型慢性肝炎があげられる。
【0157】
本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞は、例えば、従来のその疾患の予防又は治療方法と組み合わせて用いることができる。
【0158】
また、本実施の形態に係る疾患の予防又は治療は、ワクチンパルス樹状細胞を、生物に投与する工程を含むことが好ましい。前記生物としては、例えば、前記疾患に感染しうる生物を挙げることができる。また、拒絶反応を抑えることができれば、樹状細胞が由来とする生物と、投与対象となる生物が、同種生物でも異種生物でもよい。同種生物の場合においては、本実施の形態に係る樹状細胞を、取り出した自己の体内に投与することも、組織適合性抗原が投与可能な程度に一致している非自己の体内に投与することも可能である。
【0159】
例えば、前記生物は、ヒトであることが好ましい。この場合、HLAの型が可能な限り一致していることが望ましい。従って、樹状細胞の由来は、好ましくは、血縁にあたる提供者に由来する樹状細胞である。自家細胞を用いればHLAの型の適合性を考慮する必要がないため、より好ましくは、投与対象の本人に由来する樹状細胞である。
【0160】
本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞は、前述のように、生体内に直接投与する態様で用いることや、生体外でT細胞と混合してT細胞を活性化し、このT細胞を生体内に投与する態様で用いることが可能である。しかし、T細胞はエフェクター細胞であるため、一度機能を果たすと短時間で死に、消失してしまう。従って、疾患を予防、治療するためには、T細胞を高頻度で繰り返し投与する必要がある。それに対し、樹状細胞は、ナイーブT細胞やメモリーT細胞、B細胞にも作用し、繰り返し刺激を与えるため、長時間でかつ強力な効果をもたらす。以上のことから、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を、生体内に直接投与する態様で用いる方がより好ましいと考えられる。
【0161】
10、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞の使用例及びその効果
以下に、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞の使用例及びその効果を示す。本使用例では、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を、ヒトに投与する工程を含むことが好ましい。本使用例は、疾患の予防又は治療に適用することができる。なお、本使用例は、以下の場合に限定されず、本使用例に係る樹状細胞の使用態様は、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。
【0162】
これまで、癌治療等で行われてきた樹状細胞療法においては、樹状細胞を、癌細胞から抽出した物質を用いてパルスしている。背景技術の項で前述したように、細胞から抽出した物質は、一般に、多種類の物質の混合物である。従って、細胞抽出物質を用いてパルスした樹状細胞は、細胞抽出物質中の多種類の抗原によってパルスされたと考えられる。そのように処理した樹状細胞は、特定できない抗原や、疾患に関連のない抗原を提示している樹状細胞を含む抗原提示能を有する多種類の樹状細胞の集団であると考えられる。このようにして作製された樹状細胞は、癌治療等の分野において、すでに疾患にかかった患者の治療に使用することは許されているが、健常者に投与することは許されない。従って、細胞抽出物質を用いてパルスした樹状細胞を、疾患の予防のために、健常者に対して用いることは不可能である。
【0163】
これに対して、本実施の形態におけるワクチンパルス樹状細胞は、ワクチンを用いて樹状細胞をパルスすることによって作製することができる。ワクチンとして実際に販売されるものは、健常者を含むヒトに安全性、有効性が認められ、認可を受けたものである。従って、本実施の形態による、ワクチンでパルスした樹状細胞は、疾患の治療のために患者に使用できるだけでなく、疾患の予防のために健常者にも使用することができる。
【0164】
また、例えば結核について、日本では戦後順調に患者数が減少してきたものの、1980年頃より減少率が鈍化し、1997年から3年連続で患者数が増加した。また、結核の治療には、抗結核剤の長期投与が不可欠だが、それによって薬剤耐性菌が生じる可能性が非常に高く、それを防ぐために2種類以上の多剤併用が鉄則であった。
【0165】
そこで、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を、結核の治療に用いることができる。ここで本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞として、BCGワクチン等の結核ワクチンでパルスする工程を含む方法によって得られたワクチンパルス樹状細胞を用いることができる。これによれば、前述のような薬剤耐性菌の出現頻度を下げることができると予想され、これは結核の治療において大きな利点であると考えられる。また、他の疾患についても、治療にワクチンパルス樹状細胞を用いることによって同様の効果が期待できる可能性があり、その疾患の治療に大きな利点となることが予想される。
【0166】
また、樹状細胞に抗原提示させる別の手法として、抗原をコードする遺伝子を、プラスミドベクター等に組み込んでトランスフェクションすることによって又はウイルスベクター等に組み込んで感染させることによって、樹状細胞内で目的抗原を発現させる方法が知られている。しかし今日では、このように遺伝子操作を施した樹状細胞を、疾患にかかった患者の治療に使用することが許される場合はあっても、健常者に対する疾患の予防のために用いることは許されていない。
【0167】
これに対して、本実施の形態におけるワクチンパルス樹状細胞は、前述のように、患者に対する疾患の治療ワクチンとして使用できるだけでなく、健常者に対する疾患の予防ワクチンとして使用が可能である。
【0168】
また、ワクチンが有効でない患者の原因の一つに、樹状細胞の機能低下が考えられる。すなわち、これまでのような生体へのワクチンの投与のみでは、十分に樹状細胞の活性化ができない状態が考えられる。
【0169】
そこで、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を、例えば、生体内に直接投与する態様や、生体外でT細胞と混合してT細胞を活性化しこのT細胞を生体内に投与する態様で用いることによって、これまでワクチンが効かず抗体を産生できなかった健常者に対しても、目的抗原に対する抗体を産生させることが可能となる。
【0170】
以上から、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞には、広い使用用途と大きな利点が認められる。また、本実施の形態に係るワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療は、従来の樹状細胞療法とは全く区別されると考えられる。
【0171】
なお、この発明を実施するための最良の形態の項において、6、〜10、における、パルスの定義、パルスの具体的な方法、樹状細胞を得る方法、樹状細胞培養のための培地やサイトカイン、ワクチン添加物の検出方法等は、特に記載しない限り、同項の1、〜5、に記したものと同様の解釈、方法、物質を用いることができるものとする。
【実施例1】
【0172】
以下、本発明を実験例に基づき具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0173】
(実験例1)樹状細胞の調製
(1)ヘパリン(ノボ・ヘパリン注1000:アベンティス社製)で内腔をぬらした注射器(テルモシリンジSS−50ESZ:テルモ社製)を用いて、被験者(すでにHBワクチンの投与を繰り返し受けた経験がある健常人ボランティア5人を対象とした。)1人あたり40〜60mLの採血を行った。得られた血液と、血液と同量のphosphate−buffered saline(PBS)を、専用クリーンベンチ内で十分に混合した。次に、Ficoll−Conray液(比重1.077)を用いた比重遠心法により、単核細胞を分離した。遠心は、室温、1800rpm〜3000rpmで30分間行い、遠心後の中間層を単核細胞として取り出した。
【0174】
(2)同時に、以下の手順に従って、それぞれの被験者から自己血清を得た。まず、ヘパリンを使用していない別の注射器(テルモシリンジSS−10ESZ:テルモ社製)を用いて、被験者1人あたり約10mLの採血を行った。次に、得られた血液を滅菌済みバキュテイナ採血管(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて3000rpmで遠心し、血清を分離した。
【0175】
(3)(1)で得られた単核細胞にPBSを加え、十分に混合した。次に、このサンプルを4℃、1800rpm〜2700rpmで10分間遠心し、(1)と同様の手順で、単核細胞を再度回収した。この操作を最低2回繰り返すことによって、単核細胞を十分に洗浄した。
【0176】
(4)(3)によって得られた単核細胞をカウントし、2×10〜2×10/mLの細胞密度で、35mm dishに2mLずつ加えた。培地は、(2)で得られた被験者それぞれの自己血清を1〜5%の濃度で加えたRPMI 1640培地(ニプロ社製)を用いた。培養は、専用培養室にて、37℃、5%CO濃度、75%のairの条件で行った。
【0177】
(5)(4)の単核細胞を90分間培養後、以下の手順に従って、付着細胞を分離した。まず、dishを培養室から取り出し、クリーンベンチ内で5分間静置した。その後、dishを斜めに傾け、培養液を付着細胞全体にゆっくりとかけて洗浄を行い、リンパ球を取り除いた。
【0178】
(6)(5)で得られた付着細胞(単球)を、1枚のdishにつき、GM−CSF(ペプロテックEC社製)を800U/mL、IL−4(ペプロテックEC社製)を500U/mL、自己血清を1〜5%加えたRPMI 1640培地2mLで4日間培養した。
【0179】
(7)培養4日目に、培養上清の1mLを捨て、新たに(6)に記載した組成の培地を1mL加え、さらに4日間培養した。
【0180】
(8)培養8日目に、dishから樹状細胞を回収し、樹状細胞数を測定した。
【0181】
(実験例2)HBワクチンによる樹状細胞のパルス
(1)実験例1で得られた樹状細胞を2つに分けた。一方の樹状細胞に、HBワクチン(r−HBワクチン「ミツビシ」:三菱ウェルファーマ社製)(組成:HBs抗原20μg、チメロサール0.01w/v%、硫酸アルミニウムカリウム5.2g(それぞれ1mLあたり))を最終濃度2.5〜5μg/mLになるように添加して8〜24時間培養し、HBs抗原を含むHBワクチンでパルスした樹状細胞を作製した。(以下、この細胞を「HBワクチンパルス樹状細胞」と記す。)培養は、専用培養室にて、37℃、5%CO濃度、75%のairの条件で行った。もう一方の樹状細胞は、HBワクチンを添加せず、ネガティブコントロールとして培養した。
【0182】
(2)培養後、dishからHBワクチンパルス樹状細胞を回収した。回収した細胞と、PBSを混合して、4℃、1500rpmで5分間遠心後、上清を捨てた。この操作を5回繰り返すことによって、樹状細胞を十分に洗浄した。得られた樹状細胞を、PBS500μLに加えた。また、ネガティブコントロールの樹状細胞についても同様の操作を行った。
【0183】
(実験例3)HBワクチンパルス樹状細胞の投与
(1)HBワクチンパルス樹状細胞投与前の抗HBs抗体を測定した。まず、被験者(すでにHBワクチンの投与を繰り返し受けた経験がある健常人ボランティア)5人から採血を行い、実験例1(2)と同様の方法を用いて、それぞれの被験者から血清を得た。その血清を用いて、CLIA法によって抗HBs抗体値を測定した。結果を図1に示す。図1に示すように、被験者5人のうち、2人が抗HBs抗体を産生することができ(抗HBs抗体陽性,responder)、3人が抗HBs抗体を産生できない(抗HBs抗体陰性,non−responder)ことがわかった。
【0184】
(2)被験者へのHBワクチンパルス樹状細胞の投与を行った。まず、実験例2で得られたHBワクチンパルス樹状細胞500μLのうち50μLを用いて、それぞれの被験者に各自の樹状細胞に対するプリックテストを行った。その結果、すべての被験者においてプリックテストが陰性であった。次に、それぞれの被験者に、各自のHBワクチンパルス樹状細胞を450μL皮下投与した。なお、実験例1から実験例3に示したHBワクチンパルス樹状細胞の作製、投与の過程において、作業者は滅菌ガウン、滅菌マスク、滅菌キャップを着用して作業し、操作は可能な限りクリーンベンチ内で行った。使用試薬は、滅菌済みの試薬を購入して使用し(PBS:インビトロジェン社製、RPMI 1640:ニプロ社製、等)、使用に際して、肉眼及び顕微鏡で、試薬に混濁がないことを確認した。また、培養上清中のエンドトキシン測定等を実施することによって、培養過程での微生物による汚染がないことを確認した。
【0185】
(実験例4)HBワクチンパルス樹状細胞の表面抗原解析
フローサイトメトリーを用いて、細胞表面抗原の解析を行った。
【0186】
(1)実験例2で得られた、HBワクチンパルス樹状細胞、及び、パルスしていない樹状細胞を、5℃、1500rpmで5分間遠心して回収した。回収した細胞をFCM PBS(pH 7.22:ギブコ社製)で洗浄し、再び5℃、1500rpmで5分間遠心して回収した。
【0187】
(2)(1)で得られたそれぞれの樹状細胞を4本のスピッツ管に分け、(a)FITC標識マウスIgG(Cat.No.349041:ベクトン・ディッキンソン社製)を10μL、(b)PE標識マウスIgG(Cat.No.349043:ベクトン・ディッキンソン社製)を2μL、(c)FITC標識マウス抗ヒトHLA−DRモノクローナル抗体(PM−32414X:ベクトン・ディッキンソン社製)を10μL、(d)PE標識抗ヒトCD86(B70/B7−2)(Mat.No.555658:ファーミンジェン社製)を10μL添加したサンプルを作製した。これらを氷中に30分間置き、lysing solution(ベクトン・ディッキンソン社製)を2mL加えて混合し、5℃、2000rpmで5分間遠心した。
【0188】
(3)回収した樹状細胞を、FCM PBS(pH 7.22)を用いて十分に洗浄を繰り返した後、FACScalibur(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて、表面抗原の解析を行った。
【0189】
(4)解析の結果を図2に示す。図2の横軸は解析した表面抗原、縦軸は表面抗原の相対濃度を示す。この結果より、HBワクチンパルス樹状細胞は、パルスしていない樹状細胞と比較して、HLA−DRの発現が1.2倍、CD86の発現が1.6倍に上昇していることがわかった。これらの結果から、HBワクチンパルス樹状細胞が成熟していることがわかった。
【0190】
(実験例5)HBワクチンパルス樹状細胞の機能解析−1
(1)ワクチンを打たない他人の末梢血から、実験例1(1)と同様にして単核細胞を採取した。
【0191】
(2)autoMACS(Miltenyi Biotec社製)、Pan T cell isolation kit(Miltenyi Biotec社製)を用いて、単核細胞からT細胞を単離する操作を行った。まず、1×10あたりの単核細胞にMACS−Bufferを加えて80μLとし、さらに20μLのハプテン標識抗体カクテル(CD11b、CD16、CD19、CD36、CD56)を加えて、6〜12℃にて10分間混和した。次に、MACS−Bufferを加えて洗浄し、上清を除く操作を2回行った。続いて、1×10あたりの単核細胞にMACS−Bufferを加えて80μLとし、さらに20μLのMACS抗ハプテン抗体標識マイクロビーズを加えて、6〜12℃にて15分間混和した。次に、MACS−Bufferを加えて洗浄し、上清を除いた。続いて、1×10あたりの単核細胞にMACS−Bufferを500μL加え、autoMACSのDepleteプログラムにてデプリーションを行い、T細胞を採取した。
【0192】
(3)(a)パルスしていない樹状細胞1×10細胞、(b)HBワクチンパルス樹状細胞1×10細胞に、(2)で得られたT細胞をそれぞれ2×10細胞加えて、108時間培養した。培地は、10%のFCS(フィルトロン社製)を加えたRPMI 1640培地を使用した。
【0193】
(4)それぞれにHで標識したサイミジンを添加してさらに12時間培養した後、dishから細胞を回収した。
【0194】
(5)γ線カウンター(LS6500:ベックマン社製)を用いて、取り込み能の評価を行った結果を図3に示す。図3の縦軸はサイミジンの取り込み能を示し、横軸は左から(3)に示した(a)、(b)の場合を示す。この結果から、HLAの一致していないT細胞に対して、HBワクチンパルス樹状細胞は、パルスしていない樹状細胞と比較して、T細胞の幼若化補助能が1.5〜2倍に亢進していることがわかった。
【0195】
(実験例6)HBワクチンパルス樹状細胞の機能解析−2
(1)被験者(すでにHBワクチンの投与を繰り返し受けた経験がある健常人ボランティアで、かつ、HBワクチンresponder)から1人あたり60mLの採血を行い、実験例1(1)、実験例5(2)の方法を用いて、T細胞を採取した。(以下、このT細胞を「HBsメモリーT細胞」と記す。)
(2)同じ被験者から、実験例1の方法を用いて樹状細胞を採取し、二つに分けた。一方の樹状細胞は、実験例2の方法を用いて、HBワクチンパルス樹状細胞とし、もう一方の樹状細胞は、HBワクチンでパルスせずネガティブコントロールとした。
【0196】
(3)(a)HBsメモリーT細胞1×10細胞とHBワクチン10μg、(b)HBsメモリーT細胞1×10細胞とパルスしていない樹状細胞1×10細胞、(c)HBsメモリーT細胞1×10細胞とHBワクチンパルス樹状細胞1×10細胞を、それぞれ混合培養した。
【0197】
(4)7日後、測定の12時間前にHで標識したサイミジンを投与し、実験例5(5)と同様にγ線カウンターを用いてサイミジン取り込み能を測定した。
【0198】
(5)結果を図4示す。図4の縦軸は相対的cpm比を表し、横軸に左から、(3)に記した(a)、(b)、(c)の場合を示す。この結果から、(b)のパルスしていない樹状細胞と混合培養した場合と比較して、(c)のHBワクチンパルス樹状細胞と混合培養したcpmが、7倍となり、HBsメモリーT細胞が増殖していた。
【0199】
(実験例7)HBワクチンパルス樹状細胞の機能解析−3
(1)被験者(すでにHBワクチンの投与を繰り返し受けた経験がある健常人ボランティアで、かつ、HBワクチンresponder)から1人あたり60mLの採血を行い、実験例1(1)の方法を用いて単核細胞を採取した。
【0200】
(2)単核細胞6×10細胞を、(a)何も混合せず、(b)HBワクチン10μg、(c)パルスしていない樹状細胞1×10細胞、(d)HBワクチンパルス樹状細胞1×10細胞と、それぞれ混合培養した。培養条件は、実験例1(4)と同様の条件で行った。
【0201】
(3)5日後、培養上清を回収し、CLIA法によって抗HBs抗体値を測定した。
【0202】
(4)結果を図5に示す。図5の縦軸は抗HBs抗体値を示し、横軸に左から、(2)に記した(a)、(b)、(c)、(d)の場合を示す。この結果から、HBワクチンやパルスしていない樹状細胞を混合した場合は、抗HBs抗体を産生させることができなかったが、HBワクチンパルス樹状細胞を混合した場合は、抗HBs抗体を15〜56mIU/mL産生させることができることがわかった。
【0203】
(実験例8)HBワクチンパルス樹状細胞投与に伴う過敏性反応テスト(0〜24時間)
(1)実験例3にて、HBワクチンパルス樹状細胞をそれぞれの被験者に皮下投与した後、0〜24時間において、ワクチン投与に伴う炎症等の過敏性反応の有無を確認した。
【0204】
(2)その結果、HBワクチンパルス樹状細胞を投与した被験者5人全例において、発熱、発赤、ショック等の急性期過敏性反応は見られなかった。従って、HBワクチンパルス樹状細胞は安全であることが確認された。
【0205】
(実験例9)血液生化学的検査による安全性テスト(0、1、3、14日目)
(1)実験例3にて被験者に投与したHBワクチンパルス樹状細胞の安全性をさらに確認するために、それぞれの被験者に対し、CBC、肝機能、腎機能等についての50項目以上の検査を行った。代表的な検査項目を図6に示す。
【0206】
(2)ALT、CRP、PT、Creatinine検査の結果を図7〜10に示す。それぞれの図の横軸は投与からの日数を示し、縦軸は検査項目とその値を表す。これらの結果より、HBワクチンパルス樹状細胞を投与した被験者5人全例において、血液生化学的検査で異常は見られなかった。従って、HBワクチンパルス樹状細胞は安全であることがわかった。
【0207】
(実験例10)血清生化学的検査を用いた自己免疫反応に関する安全性テスト(0、14日目)
(1)実験例3にて被験者に投与したHBワクチンパルス樹状細胞による自己免疫反応の有無を検討するために、IgG量、IgM量の測定や、サイロイドテスト、マイクロゾームテスト、抗核抗体などの自己抗体検査を行った。
【0208】
(2)結果を図11に示す。これらの結果より、HBワクチンパルス樹状細胞は、HBワクチンパルス樹状細胞を投与した被験者5人全例で、自己免疫反応は見られなかった。従って、HBワクチンパルス樹状細胞は安全であることがわかった。
【0209】
(実験例11)in vivoにおける、HBワクチンパルス樹状細胞の抗HBs抗体誘導能の評価(0日目、2、3、4、12週間目)
(1)実験例3にてHBワクチンパルス樹状細胞の投与を受けた被験者それぞれから、実験例1(2)の方法を用いて血清を採取し、CLIA法によって抗HBs抗体値を測定した。
【0210】
(2)結果を図12、13、14に示す。図12、14の横軸は投与からの週を示し、縦軸は抗HBs抗体値を示す。また、図13は、図12のグラフの値を数値化したものである。図14は、HBワクチンnon−responderである被験者の、抗HBs抗体値の推移を示すグラフである。図12、13の結果より、1回のHBワクチンパルス樹状細胞投与によって、HBワクチンnon−responderであった被験者3人について2人が、抗HBs抗体を産生できるようになったことがわかった。また、HBワクチンresponderである被験者2人についても、抗HBs抗体値が上昇した。これらの被験者4例は、抗HBs抗体値が10mIU/mL以上であることから、1回のHBワクチンパルス樹状細胞投与によって、B型肝炎予防又は治療に十分な量の抗体を産生できていると考えられる。また、図14の結果より、このHBワクチンresponderであった被験者が、10mIU/mL以上の抗HBs抗体値を少なくとも3ヶ月間は維持できることがわかった。
【実施例2】
【0211】
被験者(B型肝炎患者2人およびB型肝炎肝移植後の患者1人)から血液を採取し、前記実施例1の実験例1と同様にして、その血液を用いて樹状細胞を調製した。次に、得られた樹状細胞を用いて、前記実施例1の実験例2と同様にして、HBワクチンパルス樹状細胞を作製した。
【0212】
前記実施例1の実験例1と同様にして、得られたHBワクチンパルス樹状細胞500μLのうち50μLを用いて、それぞれの被験者に各自の樹状細胞に対するプリックテストを行った。その結果、すべての被験者においてプリックテストが陰性であった。次に、それぞれの被験者に、各自のHBワクチンパルス樹状細胞を450μL皮下投与した。投与後、前記被験者には自覚症状に変化は見られなかった。
【0213】
被験者に投与したHBワクチンパルス樹状細胞の安全性をさらに確認するために、それぞれの被験者に対し、0、3、14および28日目に、CBC、肝機能、腎機能等についての50項目以上の検査を行った。前記全ての被験者において、血液性化学的検査では投与前後で変化はなく、異常はみられなかった。前記被験者のうち、B型肝炎患者1名のALT、CRP、PT、WBC検査の結果を図15に示す。前記図の横軸は投与からの日数を示し、縦軸は検査項目とその値を表す。従って、HBワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者に対しても安全であるこどがわかった。
【実施例3】
【0214】
実施例2において各自のHBワクチンパルス樹状細胞の皮下投与を行った被験者(B型肝炎患者)に対して、前記投与から2週間後、および6週間後に、それぞれ、HBワクチンパルス樹状細胞を450μL皮下投与した。その被験者から血清を採取し、その血清を用いて、CLIA法によって抗HBs抗体値を測定した(0、2、6、10、14、18および22週間目)。その結果を図16に示す。同図に示すように、1回目(0週間目)の投与終了後からHBs抗体が産生し、3回目(6週間目)の投与終了後も、HBs抗体量が上昇した。なお、この測定期間中における肝機能検査の上昇およびトランスアミラーゼの上昇は見られなかった。
【0215】
以上の結果、ワクチンパルス樹状細胞の投与後、トランスアミラーゼの上昇が見られないことから、本発明のワクチンパルス樹状細胞によれば、CTLを誘導することなく、HBs抗体が産生できることがわかった。通常、CTLが誘導されると、トランスアミラーゼが上昇するからである。このCTLを誘導しないことのメカニズムは不明だが、パルスに使用したHBワクチンの組成が、このCTLを誘導しないメカニズムと深く関係しているものと考えられる。また、本発明のワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者であっても、HBs抗体産生を誘導できることから、体液性免疫を中心に誘導していることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含む方法によって得られた、HBs抗原提示能を有する樹状細胞。
【請求項2】
前記方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含む請求項1に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞。
【請求項3】
前記方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含む請求項2に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞。
【請求項4】
前記生物は、ヒトである請求項3に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞。
【請求項5】
前記HBs抗原は、HBワクチンに含まれるHBs抗原である請求項1に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞。
【請求項6】
樹状細胞をHBs抗原でパルスする工程を含むHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法。
【請求項7】
さらに血液から前記樹状細胞を得る工程を含む請求項6に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法。
【請求項8】
さらに生物から前記血液を採取する工程を含む請求項7に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法。
【請求項9】
前記生物は、ヒトである請求項8に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法。
【請求項10】
前記HBs抗原は、HBワクチンに含まれるHBs抗原である請求項6に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を含む組成物。
【請求項12】
さらにHBワクチン添加物が含まれる請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、実験試薬又は実験キットである請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、医薬組成物である請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、免疫応答活性化製剤である請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、細胞ワクチンである請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞ワクチンは、B型肝炎の予防又は治療ワクチンである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のHBs抗原提示能を有する樹状細胞を用いたB型肝炎の予防又は治療方法。
【請求項19】
前記HBs抗原提示能を有する樹状細胞を、生物に投与する工程を含む請求項18に記載のB型肝炎の予防又は治療方法。
【請求項20】
前記生物は、ヒトである請求項19に記載のB型肝炎の予防又は治療方法。
【請求項21】
樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含む方法によって得られた、ワクチンパルス樹状細胞。
【請求項22】
前記方法はさらに、血液から前記樹状細胞を得る工程を含む請求項21に記載のワクチンパルス樹状細胞。
【請求項23】
前記方法はさらに、生物から前記血液を採取する工程を含む請求項22に記載のワクチンパルス樹状細胞。
【請求項24】
前記生物は、ヒトである請求項23に記載のワクチンパルス樹状細胞。
【請求項25】
前記パルスに使用するワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンである請求項21に記載のワクチンパルス樹状細胞。
【請求項26】
前記パルスに使用するワクチンは、肝炎ワクチンである請求項21に記載のワクチンパルス樹状細胞。
【請求項27】
前記肝炎ワクチンは、HBs抗原を含むHBワクチンである請求項26に記載のワクチンパルス樹状細胞。
【請求項28】
樹状細胞をワクチンでパルスする工程を含むワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項29】
さらに血液から前記樹状細胞を得る工程を含む請求項28に記載のワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項30】
さらに生物から前記血液を採取する工程を含む請求項29に記載のワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項31】
前記生物は、ヒトである請求項30に記載のワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項32】
前記パルスに使用するワクチンは、疾患の予防又は治療ワクチンである請求項28に記載のワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項33】
前記パルスに使用するワクチンは、肝炎ワクチンである請求項28に記載のワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項34】
前記肝炎ワクチンが、HBs抗原を含むHBワクチンである請求項33に記載のワクチンパルス樹状細胞の製造方法。
【請求項35】
請求項21に記載のワクチンパルス樹状細胞を含む組成物。
【請求項36】
さらにワクチン添加物が含まれる請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物は、実験試薬又は実験キットである請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物は、医薬組成物である請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物は、免疫応答活性化製剤である請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物は、細胞ワクチンである請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
前記細胞ワクチンが、疾患の予防又は治療ワクチンである請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
請求項21に記載のワクチンパルス樹状細胞を用いた疾患の予防又は治療方法。
【請求項43】
前記ワクチンパルス樹状細胞を、生物に投与する工程を含む請求項42に記載の疾患の予防又は治療方法。
【請求項44】
前記生物は、ヒトである請求項43に記載の疾患の予防又は治療方法。
【請求項45】
ヒト用ワクチンパルス樹状細胞であって、前記ワクチンパルス樹状細胞は、ヒトのB型肝炎の予防又は治療のためのワクチンパルス樹状細胞であり、前記ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得る樹状細胞取得工程および前記樹状細胞をワクチンでパルスするパルス工程を含む製造方法によって得られたワクチンパルス樹状細胞であり、前記パルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンであるヒト用ワクチンパルス樹状細胞。
【請求項46】
前記ワクチンパルス工程において、パルス時間が、8時間〜24時間である請求項45に記載のヒト用ワクチンパルス樹状細胞。
【請求項47】
前記樹状細胞取得工程において、単離した単球をGM−CSFおよびIL−4と共培養する請求項45に記載のヒト用ワクチンパルス樹状細胞。
【請求項48】
ヒトにおいて、Th2を誘導し、Th1を誘導しない請求項45に記載のヒト用ワクチンパルス樹状細胞。
【請求項49】
ヒトにおいて、CTLを誘導しない請求項48に記載のヒト用ワクチンパルス樹状細胞。
【請求項50】
ヒトB型肝炎のための治療および予防のための医薬品であって、請求項49に記載のヒト用ワクチンパルス樹状細胞を含む医薬品。
【請求項51】
前記B型肝炎が、B型慢性肝炎である請求項50に記載の医薬品。
【請求項52】
ヒト用ワクチンパルス樹状細胞の製造方法であって、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得るヒト由来の血液から樹状細胞を得る樹状細胞取得工程、および、前記樹状細胞をワクチンでパルスして、ヒトのB型肝炎の予防又は治療のためのワクチンパルス樹状細胞を得るパルス工程を含み、前記パルス工程においてパルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンである製造方法。
【請求項53】
前記ワクチンパルス工程において、パルス時間が、8時間〜24時間である請求項45に記載の製造方法。
【請求項54】
前記樹状細胞取得工程において、前記単離した単球をGM−CSFおよびIL−4と共培養する請求項45に記載の製造方法。
【請求項55】
前記ヒト用ワクチンパルス樹状細胞が、ヒトにおいて、Th2を誘導し、Th1を誘導しない請求項45に記載の製造方法。
【請求項56】
前記ヒト用ワクチンパルス樹状細胞が、ヒトにおいて、CTLを誘導しない請求項48に記載の製造方法。
【請求項57】
ヒト用ワクチンパルス樹状細胞を用いたヒトのB型肝炎の予防又は治療方法であって、自己の樹状細胞由来のワクチンパルス樹状細胞をB型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアに投与することを含み、前記ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得る樹状細胞取得工程および前記樹状細胞をワクチンでパルスするパルス工程を含む製造方法によって得られたヒト用ワクチンパルス樹状細胞であり、前記パルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンである予防又は治療方法。
【請求項58】
前記ヒト用ワクチンパルス樹状細胞が、Th2を誘導し、Th1を誘導しない請求項58に記載の予防又は治療方法。
【請求項59】
前記ヒト用ワクチンパルス樹状細胞が、CTLを誘導しない請求項59に記載の予防又は治療方法。
【請求項60】
前記B型肝炎が、B型慢性肝炎である請求項59記載の予防又は治療方法。
【請求項61】
ヒトB型肝炎の治療又は予防のためのヒト用ワクチンパルス樹状細胞の使用であって、前記ワクチンパルス樹状細胞は、B型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアから末梢血を採取し、その末梢血から単離した単球を用いて樹状細胞を得る樹状細胞取得工程および前記樹状細胞をワクチンでパルスするパルス工程を含む製造方法によって得られたヒト用ワクチンパルス樹状細胞であり、前記パルスに使用するワクチンは、B型肝炎の予防又は治療のためのワクチンであり、前記ワクチンパルス樹状細胞を、前記末梢血を採取したB型肝炎患者又はB型肝炎ウイルスキャリアに投与することを含む使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【国際公開番号】WO2005/097976
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−512091(P2006−512091)
【国際出願番号】PCT/JP2005/006679
【国際出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【Fターム(参考)】