説明

抗原及びアジュバントを含むナノ粒子、並びに免疫原性構造

アジュバント及び抗原、例えば、腫瘍及び病原体抗原などを含むナノ粒子を開示し、ガン及び感染症の治療などのための適用範囲におけるそれらの使用を開示する。糖鎖リガンドを有するナノ粒子又は抗体に基づく免疫原性構造、並びに治療及び予防目的のため、及び糖鎖構造に対する抗体の単離及び検出のためのそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子、より詳細にはアジュバントと、腫瘍及び病原体抗原などの抗原とを含むナノ粒子に関し、かつ様々な適用におけるその使用に関する。本発明は、さらに、糖鎖リガンド(carbohydrate ligand)を有する免疫原性構造(immunogenic structure)に関し、かつ治療及び予防目的のための、並びに糖鎖構造に対する抗体の単離及び検出のためのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンにおける糖鎖抗原及びペプチド抗原の使用は、患者に直接注入された場合にはその免疫原性を欠如することにより、広く妨げられる。このような抗原は、単独で注入された場合、抗原提示細胞(APC)により通常は無視され、急速に除去されて、免疫反応を誘導しない。
【0003】
ほとんどの場合、アジュバントと組み合わせて抗原を投与することも必要である。アジュバントは、リポソームなどの単純なデリバリーシステムであってよく、これは、抗原のクリアランスを遅らせるものであり、かつ到達させてAPCにより受け入れられる可能性を高める。しかし、それ自体では、あまり効果的ではなく、通常は、免疫系を刺激する薬剤、例えば、サイトカイン形成を刺激する細菌産物などと組み合わされることが必要である。サイトカイン自身はまた、共投与されてもよい。これらの産物の多くは、ヒトに用いるには毒性が高いか、又は多くの実験を必要とし、かつ大部分の効果的なアジュバントはヒトでの使用に到っていない。ヒトでの使用に利用可能なアジュバントの大部分は、限られた有効性のものである。ヒトでの使用に適した効果的なアジュバントの発見は、継続的なチャレンジである。
【0004】
糖鎖抗原は、T細胞反応を刺激せず、B細胞反応のみを刺激できるので、特に弱い免疫原性のものである。これは、通常、糖鎖をタンパク質キャリアに結合させることにより対処されている。しかし、免疫反応を高めるために、アジュバントを使用することも必要である。
【0005】
糖鎖抗原は、正常細胞では隠されるが、腫瘍細胞の表面で暴露されるので、抗ガン免疫療法の潜在的な標的である。多くの細菌及び他の病原体はまた、糖鎖が非常に乏しい免疫原性でない場合に、ワクチンのための良好な標的であり得る糖鎖抗原により区別される。従って、糖鎖抗原の免疫原性を高めることは、広範な治療分野における適用を有するだろう。
【0006】
ガン細胞は、ほとんどの場合、ガン細胞を正常細胞と区別する特徴である、異常な方法でグリコシル化される(Glycoconjugate J.(1997), 14:569;Adv. Cancer Res.(1989), 52:257;Cancer Res.(1996), 56:5309)。ほとんどの場合、異常なグリコシル化は、糖タンパク質及び糖脂質の形態で、細胞の表面上に存在する。従って、これらの変化した糖鎖構造は、腫瘍関連抗原(TAA)と称され、これは、多くの場合、正常細胞では生じない。多くの場合、細胞は均一なグリコシル化を示さず、すなわち、グリカン鎖複合体の異なる糖型が、1つの細胞表面上に存在する(Annu. Rev. Biochem.(1988), 57:785)。
【0007】
大部分の多様な腫瘍関連抗原の発見、及びそれに続く特徴付けの過程において、それらが、ガン細胞に対して重要な機能を有することが研究により示されている。例えば、腫瘍関連抗原は、変性細胞が、増加した接着能力などの悪性の表現型を特徴とする特性を示すことを可能にし、これは、転移の確立に重要な役割を担う。しかし、このような抗原は、あるステージにおいて、正常細胞上にも発現でき、ここで、前記抗原は、これらの細胞の正常な機能に関与する。従って、腫瘍関連抗原は、一般的には細胞膜上又は細胞膜中において、腫瘍細胞により主に提示される構造であって、それらを、非悪性組織と区別することを可能にする。腫瘍関連抗原は、例えば、ポリペプチド、特にグリコシル化タンパク質、又はポリペプチドのグリコシル化パターンであってよい。腫瘍関連抗原を表してよい他の構造には、糖脂質、例えば、GM2などのガングリオシドが含まれる。このような腫瘍関連抗原は、ガン細胞の特徴であってよい細胞膜の脂質組成における変化により表されてもよい。
【0008】
腫瘍関連抗原には以下の例が含まれる。
【0009】
・N−CAM(神経細胞接着分子);多くの場合、神経系の腫瘍上で発現し、同種接着をもたらす(J. Cell Biol. 118(1992), 937)。
【0010】
・ルイスY(Lewis Y)糖鎖抗原;上皮系の腫瘍の大部分で生じるが、上皮組織の胎生期発達の間にも重要な役割を担う。ルイスY陽性ガン細胞は、明らかに、より高い転移潜在性を有していることから、肺ガンにおけるこの抗原の発現が、好ましくない予後と強く関連することが示されている(N. Engl. J. Med. 327(1992), 14)。
【0011】
・CEA(ガン胎児性抗原);多くの場合、胃腸管の上皮性腫瘍で生じ、自己接着(self−adhesion)分子として同定されている(Cell 57(1989), 327)。
【0012】
・Ep−CAM(上皮細胞接着分子);上皮性のほぼ全ての腫瘍で発現しているが、多数の正常上皮でも生じる。自己接着分子として特徴付けられており、それ故、全上皮性(pan−epithelial)接着抗原として分類わけされ得る(J. Cell Biol. 125(1994), 437)。
【0013】
腫瘍関連抗原のさらなる例は、シアリルTn糖鎖、ルイス抗原(ルイス−x、ルイス−b、ルイス−y構造)、グロボ(Globo)H糖鎖、GD2/GD3/GM2などのガングリオシド、前立腺特異抗原(PSA)、CA 125、CA 19−9、CA 15−3、TAG−72、EGFレセプター、Her2/Neuレセプター、p97、CD20、及びCD21である。これらの抗原の全てに対するモノクローナル抗体が入手可能である。腫瘍関連抗原の例はDeVitaらによって記載されている(Eds., 「Biological Therapy of Cancer」,2. Edition, Chapter 3:Biology of Tumor Antigens, Lippincott Compony, ISBN 0−397−51416−6(1995),(Elektrophoresis(1999), 20:362;Curr. Pharmaceutical Design(2000), 6:485, Neoplasma(1996), 43:285))。
【0014】
ガンを治療するための様々な方法が存在するが、現在の治療計画の成功率は、依然として向上されるべきである。外科手術及び化学療法とは別に、免疫療法による治療も知られている。
【0015】
受動免疫療法では、モノクローナル抗体(MAb)を、標的に直接結合するのに適した量で患者に全身投与する。治療の目的は、免疫複合体を形成することであり、一連の免疫反応を介して、標的に苦しめられている細胞又は生物を殺す。治療効果は、循環及びそれらの生物学的半減期によって決まり、これは、通常は非常に短い。従って、適切なタイムフレーム内で投与を繰り返す必要がある。マウス抗体などの異種MAbが用いられる場合には、拒絶反応が予測され、場合によりアナフィラキシーショックが導かれる。この欠点のために、このような免疫療法は、限られた時間のみで実施される。
【0016】
能動免疫療法は、異なる方法で患者の免疫系を活性化する。特異的な標的に類似する抗原を投与した後、患者のホルモン及びT細胞特異的免疫反応が防御機構を誘導し、in vivoにおいて標的に対抗する。様々なタイプのワクチン抗原、及び広範な異なる病気に対するワクチン抗原が、当分野で周知である。例えば、B型肝炎表面抗原を含むワクチンを用いたB型肝炎のワクチン接種が周知である。ワクチン接種のために用いられる高用量範囲の抗原、及び低用量のワクチン接種が、十分な率のセロコンバージョンを生じさせ得ることが示されている(Parish D.C. et al., 1991, Southern Medical Jounal, 84, 426−430;Goudeau A. et al., 1984, The Lancet, 10, 1091−1092)。
【0017】
マンナン−ムチン融合タンパク質もまた知られており、細胞傷害性T細胞を産生するために用いることができる。マウスへ投与される融合タンパク質の用量に応じて、大部分の細胞性免疫のみ(低用量)、又はホルモン免疫のみ(高用量)のいずれかが誘導されることが示されている(Pietersz G.A. et al., 1998, Cancer Immunol. Immunother., 45, 321−326)。
【0018】
能動免疫について、抗原は、通常、ワクチンを提供するために免疫原性製剤(formulation)で与えられる。標的を模倣する抗原は、標的又はその断片の一次配列及び二次配列のいずれかにおける類似性を有する。しかし、ミモトープ(mimotope)、又はミモトープ抗原は、標的の三次構造における類似性を有する。
【非特許文献1】Parish D.C. et al., 1991, Southern Medical Jounal, 84, 426−430
【非特許文献2】Pietersz G.A. et al., 1998, Cancer Immunol. Immunother., 45, 321−326
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ガンを治療するために、多くの製品が開発されているが、既知の物質と比較して高められた特徴を有する物質を提供することが、依然として強く要求されている。
【0020】
WO 02/32404(Consejo Superior de Investigaciones Scientificas)では、金属又は半導体原子から形成されるナノ粒子であって、ここで、糖鎖を含むリガンドが、前記ナノ粒子の核に共有結合されている、ナノ粒子を開示している。これらのナノ粒子は、糖鎖により媒介される相互作用を調節するために用いられ、可溶性及び非毒性である。GB−A−0313259.4の優先権を主張しているPCT出願(Consejo Superior de Investigaciones Scientificas and Midatech Limited)では、受動的(passive)及び磁性の金属原子を含む核を有する磁性ナノ粒子であって、前記核がリガンドと共有結合している、磁性ナノ粒子を開示している。GB出願0411537.4(Consejo Superior de Investigaciones Scientificas and Midatech Limited)では、RNAリガンド、特にsiRNAリガンドと結合した磁性ナノ粒子を含むナノ粒子を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[発明の概要]
概して、本発明は、アジュバントと抗原とを含むナノ粒子、及び糖鎖を有する免疫原性構造に関する。
【0022】
1つの側面において、本発明は、様々な病気の治療のため、特にガンの予防及び治療におけるワクチン接種のために用いられ得る、改善された免疫原性構造を提供する。
【0023】
従って、本発明は、糖鎖リガンド及び少なくとも1つのT細胞ヘルパーペプチドリガンドと共有結合した核分子からなる免疫原性構造を提供する。
【0024】
さらなる側面において、本発明は、複数の糖鎖リガンドと共有結合した核分子であって、前記糖鎖リガンドが少なくとも1つのネオエピトープ構造を含む、核分子からなる免疫原性構造を提供する。
【0025】
核分子は、抗体、又はその誘導体若しくは断片であってよい。別法として、核分子はまた、さらに本明細書で記載するとおり、金属又は半導体原子の核からなるナノ粒子であり得る。例えば、金属核には、Au、Ag、Cu、Pd、又はAlを含めることができる。ナノ粒子及びその製造は、WO 02/32404及びCrespoらによるPhysical Review Letters, 93(8):87204−14、2004に詳細に記載されている。
【0026】
本発明の免疫原性構造は、任意の糖鎖リガンドであってよい。例えば、好ましい実施態様において、これは、シアル化若しくは非シアル化のいずれかであるルイス抗原又はシアリルTn若しくは非シアリルTnなどの糖鎖系腫瘍関連抗原、又は実際には、先の背景技術のセクションで記載した任意の腫瘍関連抗原と、構造的又は機能的類似性を示してよい。
【0027】
単一の糖鎖リガンドはまた、ネオエピトープ構造を含んでもよい。ネオエピトープは、細胞表面タンパク質の抗原のグリコシル化により形成されてよい。糖鎖構造は、単一分子として腫瘍細胞上にめったに配置されないが、主に、複数の糖鎖構造からなるクラスター中にある。これらのクラスターは、単一リガンドが抗体結合及び腫瘍細胞の破壊を媒介しない、ネオエピトープを形成してよいが、代わりに、効果的な免疫反応は、糖鎖クラスターの認識の結果である。腫瘍細胞上で生じるような糖鎖クラスターは、高密度で大量のリガンドが提示されるように、複数の糖鎖リガンドを用いることによってデザイン及び模倣されてよい。これらのリガンドは、核分子と緊密に結合でき、クラスター、すなわち、腫瘍細胞上で提示されるとおりの構造を模倣できる。
【0028】
一例として、抗体は、腫瘍細胞上の異常グリコシル化構造と結合できるが、表面構造上に提示される単一の糖鎖リガンドとは結合できない。従って、これらの糖タンパク質に由来する糖鎖リガンドと、任意選択で、異常グリコシル化のさらなる抗原との本発明の組み合わせが可能であり、これは、ネオエピトープ構造に決定をもたらすことができる。
【0029】
異常グリコシル化の標的を用いた免疫療法により、この異常グリコシル化により特徴付けられる事実上全ての腫瘍特異的レセプターを遮断できる。中でも、例えば、EGFレセプターファミリーの全てのレセプター、CD55(791Tgp72/DAF−分解促進因子)レセプター、トランスフェリンレセプター、及びP−糖タンパク質などである。
【0030】
異常グリコシル化に対する免疫原性構造は、機能的な方法で、EGFレセプターのいくつかのレセプターと結合し、従って、細胞増殖を誘導するための単一カスケードを効果的に遮断できることも発見されている。それにより、受容体への増殖因子の結合は、それぞれ、予防されるか、又は低減された。この治療は、EGFレセプターのタンパク性細胞外部分に対する抗体を用いた免疫療法と比較して、より特異的である。なぜなら、普通でない腫瘍関連糖鎖構造は、正常細胞のEGFレセプター上には見当たらないからである。他方、この治療は、同一の異常グリコシル化を有する異なるレセプターを同時に遮断するので、より普遍的である。
【0031】
異常グリコシル化を対象とする、免疫療法の使用により、EGF又はヘレグリンによるガン細胞の分裂刺激を予防又は低減することも可能となる。ガン細胞の腫瘍関連グリコシル化への抗体の特異的結合は、増殖因子とその生理学的なリガンドとの相互作用を遮断し、かつこれらのレセプターを介したシグナル伝達を阻害し、それ故、細胞増殖を阻害する。
【0032】
同時に、このような抗体は、ホルモン及び細胞免疫系内のその効果により、腫瘍細胞を特異的に攻撃できる。本発明のEGFレセプター又はEGFレセプターファミリーのレセプターをそれぞれ発現する腫瘍細胞は、特異的に結合され、溶解され得るか、又は増殖遮断され得る。
【0033】
ネオエピトープの標的を用いた免疫療法は、正常組織の上皮細胞が影響を受けず、単に腫瘍細胞のみが影響を受ける限りにおいて、改善されている。
【0034】
このようなネオエピトープの例は、Lewis Y糖鎖又は適切なシアル化糖タンパク質を用いたEpCAMタンパク質又はHer−2/neuレセプターのグリコシル化により形成されるエピトープである。これらのネオエピトープへの特異性を有する抗体を産生し調製する場合には、これらは、好ましくは、脱グリコシル化タンパク質と結合もせず、また構造的に異なるタンパク質上の糖鎖モチーフとも結合しない。正確には、非特異的相互作用及び副作用を避けるために、受動免疫療法のためのモノクローナル抗体として好ましくは示唆される、これらの抗体である。ネオエピトープの同定はまた、まさにこのエピトープを有するイムノゲンを提示することにより、ワクチン抗原の開発のための基礎であり得る。このエピトープ又はエピトープの模倣体は、適切なペプチドライブラリーから、又は抗イディオタイプ抗体技術により、あるいはまた天然抗原の誘導体、例えば断片として、容易に産生され得る。選択されたネオエピトープに基づいて、まさにこのネオエピトープ又はこの模倣体を有する抗原調製物を得ることができる。このような抗原調製物は、ガン患者の能動免疫化のための有益な活性物質であるか、又はこれらはまた、診断用調製物として用いられ得る。
【0035】
本発明の免疫原性構造は、トキソイド、例えば、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、又はキーホールリンペットヘモシアニンなどに由来するT細胞ヘルパーペプチドリガンドであってよい。このリガンドは、異なる長さのものであり得、例えば、5〜50アミノ酸長、あるいはまた5〜30アミノ酸長若しくは5〜20アミノ酸長などである。
【0036】
免疫原性構造と結合した免疫原性ペプチドを使用することにより、個体に注入した場合の免疫原性を上昇させることができる。一例として、アミノ酸配列はFKLQTMVKLFNRIKNNVA(配列番号1)であってよい。
【0037】
本発明はまた、ガンを予防的又は治療的に処置するための薬剤を調製するための、1種以上の免疫原性構造を含む組成物にも及ぶ。処置は、さらに以下に述べるとおりの能動又は受動免疫療法によるものであってよい。さらに、腫瘍細胞を検出及び単離するのに適した抗体を単離するために、本発明により開示されるとおりの免疫原性構造を使用することも実施できる。
【0038】
抗体、その誘導体又は断片という用語は、全てのタイプの抗体であることが理解されるべきであり、特に、単一特異性若しくは多特異性モノクローナル抗体、あるいはまた化学的、生化学的、若しくは分子生物学的に調製された抗体、又は特定の特異性を有するポリクローナル抗体、例えば免疫血清又は免疫血清のフラクションなどである。
【0039】
本発明に従って利用される抗体は、好ましくは、天然、すなわち機能的に活性な抗体である。この抗体は、好ましくは、その機能性を弱めないために、結合標識又は他の検出剤を有さない。天然抗体は、患者で自然に発生する抗体の特性を有する。天然抗体は、2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖とからなる、ヘテロ四量体糖タンパク質である。
【0040】
さらにまた、抗体の誘導体を用いてもよく、これは、好ましくは、抗体の断片、結合体、相同体、若しくは誘導体、あるいはまた追加のエフェクター機能との複合体の群から選択される。いずれにしても、抗体の誘導体が、Fabフラグメントの少なくとも部分、好ましくはF(ab')2フラグメントと一緒になって、及び/又はヒンジ領域及び/又はラムダ若しくはカッパ抗体のFc部分の部分を含むことが好ましい。
【0041】
さらに、いわゆる一本鎖抗体などの、一本鎖抗体の誘導体を、本発明に従って用いることもできる。本発明で用いられる抗体は、好ましくは、免疫グロブリンタイプ、例えば、IgG、IgE、IgM、IgA、又はIgDなどのものである。
【0042】
金属又は半導体原子のナノ粒子クラスターという用語は、単一リガンド又は複数のリガンドを固定するための基質として適したものに及び、前記リガンドには糖鎖基が含まれる。適したナノ粒子は、例えば、WO 02/32404、及びCrespo Rらにより(Physical Review Letters, 2004, 93, 8, pp 87204−1−4)記載されており、さらに以下に記載する。
【0043】
金のクラスターを用いる場合には、通常は50〜500個の金原子を用いて、ナノメートル範囲の核径を提供する。例えば、核径は、50〜500 nm、50〜250 nm、50〜150 nmであり得る。
【0044】
リガンドを、粒子の核に共有結合する。この手順を実施するプロトコルは、当分野で既に周知であり、共有結合は、例えば、チオール基を介して生じ得る。
【0045】
糖鎖リガンドはまた、抗体と結合され得る。結合された複数のリガンドを有する抗体を得るために、高密度の反応基を含む分岐したリンカーを用いることができる。これらのリンカーは、複数の糖鎖リガンドと結合でき、これは、ついで、抗体上のクラスター構造として局在され得る。
【0046】
本発明の免疫原性構造は、ガンなどの病気の予防又は治療用薬剤の調製のためであり得る。この医薬調製物は、免疫療法のために用いることができる。
【0047】
さらなる側面において、本発明は、金属及び/又は半導体原子を含む核を有するナノ粒子に関し、前記核は、抗原リガンドと結合している。このリガンドは、典型的には、糖鎖又はペプチド抗原である。ナノ粒子を用いて、抗原をデリバリーでき、広範な適用における適用、特に、治療的適用におけるワクチンとしての適用を有することができる。好ましい実施態様において、ナノ粒子はまた、アジュバンド、例えば、先天性免疫ネットワークを刺激する、Tヘルパー刺激ペプチド又は糖鎖などとも結合される。
【0048】
このデリバリーシステムは、従来技術の方法を超えるいくつかの利点を有する。ナノ粒子自体は、抗原の崩壊又はクリアランスを予防することにより、及び粒子形態で抗原を提供することにより、抗原への免疫反応を高め得る。
【0049】
追加のアジュバントを用いる場合には、本発明は、単一のデリバリービヒクルが、抗原及びアジュバントの両方、又は複数の抗原若しくはアジュバントの両方をデリバリーするために用いられることを可能にする。
【0050】
ナノ粒子は、小さなサイズのものであり、抗原が細胞表面上に提示されることを可能にするために、細胞により取り込まれるのに十分なほど小さい。Tヘルパーペプチドがまた、ナノ粒子と結合している場合には、Tヘルパーペプチドが提示されてもよい。
【0051】
従って、さらなる側面において、本発明は、金属及び/又は半導体原子を含む核を含むナノ粒子であって、ここで前記核は、複数のリガンドと共有結合し、前記リガンドは抗原リガンドを含む、ナノ粒子を提供する。好ましい実施態様において、リガンドはまた、アジュバントを含む。
【0052】
例えば、抗原は、ペプチド又は糖鎖であってよい。好ましい実施態様において、抗原は、腫瘍特異抗原である。好ましい糖鎖腫瘍抗原には、シアリルTn(STn)、シアリルルイスa(Lea)、シアリルルイスx(Lex)、又はシアリルルイスy(Ley)、及びそれらの非シアル化形態が含まれる。別の好ましい実施態様において、抗原は病原体特異抗原であり、例えば、細菌、ウイルス、又は寄生虫の抗原などである。例えば、HIV抗原Manアルファ1−2Man、又は寄生虫抗原Galアルファ1−3Galを用いてよい。
【0053】
アジュバンドは、先天性免疫反応の細胞及び/又は適応性免疫反応の細胞、例えば、T細胞、特にTヘルパー細胞を刺激してよい。アジュバンドは、糖鎖部分又はペプチド部分であってよい。好ましい糖鎖部分には、グルコース、マンノース、フコース、及び/又はN−アセチルグルコサミンが含まれる。好ましいペプチド部分には、Tヘルパー細胞を活性化するペプチド、例えば、細菌毒素由来の免疫原性ペプチドなどが含まれる。特に好ましいペプチド部分には、アミノ酸配列FKLQTMVKLFNRIKNNVA(配列番号1)が含まれる。
【0054】
好ましくは、本発明のナノ粒子は水溶性である。好ましい実施態様において、本発明のナノ粒子は、平均径が0.5〜10 nm、より好ましくは1〜2.5 nmの核を有する。好ましくは、それらのリガンドを含むナノ粒子は、10〜30 nmの平均径を有する。
【0055】
抗原及びアジュバンドに加えて、ナノ粒子には、1つ以上のさらなるタイプのリガンドが含まれてもよい。例えば、さらなるリガンド、又はリガンドの群若しくはドメインには、1つ以上のペプチド、タンパク質ドメイン、核酸分子、脂質基、糖鎖基、任意の有機又はアニオン性若しくはカチオン性基が含まれてよい。糖鎖基は、多糖類、オリゴ糖類、又は単糖類の基であってよい。好ましいリガンドには、複合糖質が含まれ、それにより、グリコナノ粒子を形成する。核酸分子が存在する場合には、核酸分子に、一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAが含まれてよい。特に好ましい実施態様において、ナノ粒子には、膜輸送シグナルが含まれ、それらの細胞膜の通過を助ける。
【0056】
粒子は、それら上に固定された2つ以上のリガンド種、例えば、2、3、4、5、10、20、又は100の異なるリガンドを有してよい。別法として、又は追加として、複数の異なるタイプのナノ粒子を一緒に用いてよい。好ましい実施態様において、粒子の個々の金属核と結合するリガンドの平均総数は、少なくとも1つのリガンド、より好ましくは50のリガンド、最も好ましくは60のリガンドである。
【0057】
ナノ粒子にはまた、標識、例えば、蛍光基、放射性核種、磁気標識、色素、NMR活性原子、又は表面プラズモン共鳴を用いて検出可能な原子を含めてよい。好ましい磁気標識には、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、又はランタニド+3を含む常磁性基が含まれる。好ましいNMR活性原子には、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、又はランタニド+3が含まれる。
【0058】
ナノ粒子の核は、金属核であってよい。好ましくは、金属核には、Au、Ag、又はCuが含まれ、例えば、Au/Ag、Au/Cu、Au/Ag/Cu、Au/Pt、Au/Pd、Au/Ag/Cu/Pd、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/Gd、又はAu/Fe/Cu/Gdから選択される合金が含まれる。
【0059】
ある実施態様において、ナノ粒子の核は磁性である。好ましい磁性ナノ粒子には、核中に、不動態化金属原子及び磁性金属原子が、約5:0.1〜約2:5の割合で含まれてよい。不動態化金属は、例えば、金、白金、銀、又は銅であってよく、磁性金属は、鉄又はコバルトである。
【0060】
別の側面において、本発明は、本明細書に記載の1つ以上のナノ粒子の集団を含む組成物を提供する。ある実施態様において、ナノ粒子の集団は、核と結合した、異なる密度の同一又は異なるリガンドを有してよい。ある場合には、複数のナノ粒子の標的部位へのデリバリーを可能にするために、ナノ粒子を封入することが望ましくてよい。適した封入技術は、当業者に周知である。封入されたナノ粒子の集団は、1つ、2つ、3つ、又は複数の異なるタイプのものであってよい。好ましい実施態様において、組成物には、ナノ粒子と医薬として許容可能なキャリアとが含まれる。
【0061】
さらなる側面において、本発明は、本明細書に記載のナノ粒子の製造方法を提供する。都合よく、本方法には、リンカーを用いてリガンドを誘導体化することにより、リガンドをナノ粒子の核と結合させる工程、及びナノ粒子の核が合成される反応混合物中に前記誘導体化リガンドを含める工程が含まれる。ナノ粒子の自己集合の間に、ナノ粒子の核は、リンカーを介してリガンドと結合する。リンカーには、チオール基、アルキル基、グリコール基、又はペプチド基が含まれてよい。例となるリンカー基は、一般式HO−(CH2n−S−S−(CH2m−OHで表され、式中、n及びmは、独立して、1〜5である。ナノ粒子が合成される場合には、リンカーの−S−S−が分裂し、−S−基を介してナノ粒子の核とそれぞれ共有結合できる、2つのチオリンカーを形成する。好ましい実施態様において、リンカー基には、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、又はC15アルキル、及び/又はC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、又はC15グリコールが含まれる。リンカーは、混合リンカー、例えば、ヘキサエチレングリコール−C11アルキルなどであってよい。
【0062】
異なるリンカーは、ペプチドが放出されるか、又はナノ粒子と結合したままかどうかを調節してよい。例えば、本明細書に記載のBMIX及びBC11ペプチドの場合には、ペプチドの初めの2つの残基はFKであり、これはカテプシン切断部位である。これが、ナノ粒子と十分に離れている場合には(スペーサーを用いて)、TヘルパーペプチドLQTMVKLFNRIKNNVA(配列番号2)は、細胞内プロセッシングのために、放出され得る。
【0063】
一実施態様において、金原子を含む核を有するナノ粒子は、国際公開第02/32404号で初めに記載されたプロトコルを用いて合成されてよく、前記国際公開では、ジスルフィドリンカーを用いて、リガンドを誘導体化し、ナノ粒子を製造するための還元剤の存在下、誘導体化リガンドをHAuCl4(四塩化金酸)と反応させる。この方法では、メタノール又は水中でのジスルフィド保護リガンドを、四塩化金酸の水溶液に添加してよい。好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。この方法のこれらの及び他の特徴は、国際公開第02/32404号に記載されている。
【0064】
さらなる側面において、本発明はまた、予防療法又は一時療法における使用のための、本明細書に記載のナノ粒子を提供する。特に、ナノ粒子は、ワクチンとしての使用のためであってよい。
【0065】
1つの側面において、本発明は、ナノ粒子の投与により改善される病態を治療するための薬剤を調製するための、先に定義したナノ粒子の使用を提供する。例えば、本明細書に記載のナノ粒子、又はその誘導体は、医薬組成物中に配合でき、特に抗原の投与により改善される病態を治療するために、様々な形態で患者に投与できる。
【0066】
一実施態様において、本発明は、ガンを治療するための薬剤の調製における、本発明のナノ粒子の使用を提供する。ガンは、例えば、結腸、膵臓、腸(gut)、肺、肝臓(liner)、卵巣、又は膀胱などのガンであってよい。
【0067】
さらに提供されるものは、感染症を治療するための薬剤の調製における、本発明のナノ粒子の使用である。この病気をもたらす病原体は、ウイルス、細菌、又は寄生虫であってよい。
【0068】
本発明に従って治療されてよい特異的な使用の例を、in vitro及びin vivoにおける使用の両方において、ナノ粒子の他の適用とともに、以下に記載する。
【0069】
本発明の実施例を、添付の図面を参照して、例として以下に記載するが、限定するものではない。
【0070】
[発明の詳細な説明]
(ナノ粒子)
ナノ粒子は、固定化リガンドの基質として使用可能な、小さな粒子、例えば、金属又は半導体原子のクラスターである。
【0071】
本発明のナノ粒子は、大部分の有機溶媒、及び特に水に溶解する。それらの精製にこれを用いることができ、重要なことには、粒子の表面上に固定化されたリガンドを提示するために、溶液中でこれを用いることができることを意味する。ナノ粒子が溶解するという事実は、天然構造でリガンドを提示するという利点を有する。治療的適用のために、ナノ粒子は、生理条件下で、非毒性、溶解性、及び安定である。
【0072】
好ましくは、ナノ粒子は、平均径が、0.5〜50 nm、より好ましくは0.5〜10 nm、より好ましくは0.5〜5 nm、より好ましくは0.5〜3 nm、さらにより好ましくは0.5〜2.5 nmの核を有する。核に加えてリガンドが考えられる場合には、好ましくは、粒子の全体の平均径は、5.0〜100 nm、より好ましくは5〜50 nm、最も好ましくは10〜30 nmである。平均径は、当分野で周知の技術、例えば、透過電子顕微鏡法などを用いて測定できる。
【0073】
核物質は、金属又は半導体であることができ、2つ以上のタイプの原子の形状を成してよい。好ましくは、核物質は、Au、Fe、又はCuから選択される金属である。ナノ粒子核はまた、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/Gd、及びAu/Fe/Cu/Gdを含む合金から形成されてもよく、本発明で用いられてよい。好ましい核物質は、Au及びFeであり、最も好ましい物質はAuである。ナノ粒子の核には、好ましくは、約100〜500原子(例えば、金原子など)が含まれ、ナノメートル範囲の核径を提供する。他の特に有用な核物質は、NMR活性である1つ以上の原子が添加されており(doped)、これは、in vitro及びin vivoの両方において、NMRを用いてナノ粒子を検出することを可能にする。NMR活性原子の例には、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、及びランタニド+3、又はこの出願で他に記載の量子ドットが含まれる。
【0074】
半導体原子を含むナノ粒子核は、ナノメートルスケールの半導体結晶が、量子ドットとして作用でき、すなわち、これらは光を吸収し、それにより、物質中の電子をより高いエネルギーレベルへと励起し、それに続いて、物質の周波数特性で光子を放出するので、検出可能である。半導体核物質の例は、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、カドミウムテルルである。硫化亜鉛などの亜鉛化合物もまた含まれる。
【0075】
ある実施態様において、ナノ粒子の核は磁性であってよく、任意選択で不動態化金属原子と組み合わせて、磁性金属原子を含んでよい。例として、不動態化金属は、金、白金、銀、又は銅であってよく、磁性金属は、鉄又はガドリニウムであってよい。好ましい実施態様において、不動態化金属は金であり、磁性金属は鉄である。この場合において、都合よくは、核中の不動態化金属原子と磁性金属原子との比率は、約5:0.1〜約2:5である。より好ましくは、この比率は、約5:0.1〜約5:1である。本明細書で用いられる場合には、「不動態化金属」という用語は、磁気特性を示さず、酸化に対して化学的に安定な金属を意味する。不動態化金属は、反磁性又は超常磁性であってよい。好ましくは、このようなナノ粒子は、超常磁性である。
【0076】
常磁性金属を含む核を有するナノ粒子の例には、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、及びランタニド+3を含むものが含まれる。
【0077】
他の磁性ナノ粒子は、先に定義したとおりのさらなる核物質の添加の有無に関わらず、ナノ粒子へと形成され得るMnFe(スピネルフェライト)又はCoFe(コバルトフェライト)などの物質(磁性流体)から形成されてよい。このようなナノ粒子を製造するための、自己集合結合化学反応(self−assembly attachment chemistry)の例は、Biotechnol. Prog., 19:1095−100(2003)、J. Am. Che,. Soc. 125:9828−33(2003)、J. Colloid Interface Sci. 255:293−8(2002)に与えられている。
【0078】
ある実施態様において、本発明のナノ粒子又はそのリガンドには、検出可能な標識が含まれる。標識は、ナノ粒子又はリガンドの核の構成要素(element)であってよい。ナノ粒子のその構成要素の固有特性のために、又は検出可能であるさらなる部分と連結、結合、又は関連することにより、標識は検出可能であってよい。標識の好ましい例には、蛍光基、放射性核種、磁気標識、又は色素である標識が含まれる。蛍光基には、フルオレセイン、ローダミン又はテトラメチルローダミン、テキサス−レッド、Cy3、Cy5などが含まれ、蛍光標識の励起及びラマン散乱分光法を用いた放射光の検出により、これらを検出してよい(Y.C. Cao, R. Jin, C.A. Mirkin, Science 2002, 297:1536−1539)。
【0079】
ある実施態様において、例えば、PET、SPECTなどを用いることによる、放射性核種により放射される放射能を用いたナノ粒子の検出における使用のために、又は例えば標的細胞を殺すためなどの、治療のために、ナノ粒子は放射性核種を含んでよい。本発明での使用に容易に適合され得る、当分野で一般に使用される放射性核種の例には、以下が含まれる:最も安定なものはTcO4−であるが、様々な酸化状態で存在する99mTc;32P又は33P;57Co;59Fe;Cu2+塩としてしばしば使用される、67Cu;例えばクエン酸ガリウムなどのGa3+塩として一般に使用される、67Ga;68Ge;82Sr;99Mo;103Pd;In3+塩として一般に使用される、111In;ヨウ化ナトリウムとして一般に使用される、125I又は131I;137Cs;153Gd;153Sm;158Au;186Re;塩化タリウムなどのTl塩として一般に使用される、201Tl;39Y3+71Lu3+;及び24Cr2+。標識及びトレーサーとしての放射性核種の一般的な使用は、当分野で周知であり、本発明の側面における使用のために、当業者により容易に適合され得る。放射性核種は、ナノ粒子の核に添加(dope)することにより、又はナノ粒子上に固定されたリガンドの一部として存在する標識としてそれらを含めることにより、最も容易に用いられてよい。
【0080】
追加として、又は別法として、本発明のナノ粒子、又はそれらと他の種との相互作用の結果物は、先に示したとおりの、ナノ粒子と関連する標識を用いるか、又はそれらの特性を用いることによる、当分野の多数の周知技術を用いて検出可能である。ナノ粒子を検出するこれらの方法は、ナノ粒子が他の種と結合した場合に得られる凝集を、例えば、単純な目視検査により、又は光散乱を用いることにより(ナノ粒子を含む溶液の)検出する工程から、ナノ粒子を可視化するために、透過電子顕微鏡法(TEM)又は原子間力顕微鏡法(AFM)などの極めて高度な技術を用いる工程まで及ぶことができる。金属粒子を検出するさらなる方法は、通常は光学的放射によりもたらされる、金属表面での電子の励起であるプラズモン共鳴を用いることである。表面プラズモン共鳴(SPR)現象は、金属(例えば、Ag又はAuなど)と、空気又は水などの誘電体との界面に存在する。SPRの変化は、分析物がナノ粒子の表面上に固定されたリガンドと結合した場合の界面の屈折率の変化である。SPRのさらなる利点は、リアルタイムの相互作用をモニタリングするために用いることができる点である。上述のとおり、ナノ粒子が、NMR活性である原子を含むか、又は添加されている場合には、当分野で周知の技術を用いて、in vitro又はin vivoの両方において、粒子を検出するためにこの技術を用いることができる。ナノ粒子はまた、ナノ粒子により促進される銀(I)還元を用いて、定量的シグナル増幅に基づくシステムを用いて検出できる。ナノ粒子が蛍光プローブとしての標識を含む場合には、蛍光分光法を用いることができる。さらに、糖鎖の同位体標識を用いて、それらの検出を容易にすることもできる。
【0081】
リガンドには、最終構築物中の抗原及びキャリアの密度を任意に調節することを可能にする、不活性糖鎖成分(例えば、グルコースなど)が含まれてよい。
【0082】
(抗原)
抗原は、適応的免疫反応の細胞、すなわち、T細胞若しくはB細胞、又はその両方により特異的に認識される分子である。
【0083】
抗原には、タンパク質、糖鎖、核酸、又はさらに小さな分子、例えば毒素などが含まれる。本発明の好ましい実施態様において、抗原は、腫瘍特異抗原であり、特に、ペプチド又は糖鎖腫瘍特異抗原である。他の好ましい実施態様において、前記抗原は、病原体、例えば、ウイルス、細菌、又は寄生虫上に発見される抗原である。
【0084】
糖鎖腫瘍特異抗原の例には、腫瘍細胞表面上の糖タンパク質及び糖脂質の糖鎖により運ばれる、シアル化及び非シアル化ルイス構造が含まれる。これらの抗原は、しばしば、腫瘍で過剰発現しており、腫瘍細胞の内皮細胞への接着に関与しているようである。例えば、シアリルルイスaは、ヒト結腸、膵臓、及び胃のガン細胞における接着に関与しており、他方、シアリルルイスxは、肺、肝臓、及び卵巣のガン細胞の結合に関与している。シアリルLeaは、結腸直腸、肝臓、及び胃のガンで過剰発現している(Ugorski and Laskowska (2002), Acta Biochimican Polonica, 49, 303−311を参照されたい)。
【0085】
(アジュバント)
アジュバントは、抗原への免疫反応を増強する薬剤である。アジュバントは、適応的免疫反応の細胞を刺激することにより抗体反応を増強してよく、及び/又は先天性免疫反応の活性を非特異的に押し上げることにより作用してよい。一般に、抗体反応を増強する抗原は、それらが、リンパ球に曝露される適切な部位で抗原を濃縮するか、又はサイトカイン産生を刺激することによるかのいずれかにより、それを行う。
【0086】
ワクチンデリバリープラットフォーム(platform)として用いる場合には、ナノ粒子自体が、粒子形態の抗原を提供することにより、アジュバントとして作用してよく、それにより、抗原提示細胞、例えば、マクロファージなどにより非常に容易に摂取される。しかし、この効果は、免疫系の他の側面を増強する、ナノ粒子と結合した他の薬剤を用いることにより、非常に増強され得る。
【0087】
先天性免疫反応の活性を高めるアジュバントには、キシロース、フコース、マンノース、及びN−アセチルグルコサミンなどの糖鎖部分が含まれる。これらは、いくつかの方法で働く。これらは、血液及びリンパ液中を循環する分泌分子と結合してよく、これが、補体成分の切断を誘発し、補体結合を導く。これらはまた、マクロファージなどの食細胞上の表面レセプター、例えば、CD2−6(MMR)などと結合してもよく、これが、ファゴサイトーシス及びエンドサイトーシスを刺激する。
【0088】
このようなアジュバントはまた、適応性免疫反応を刺激する役割を担っていてもよい。
【0089】
これらは、エフェクター分子(サイトカイン)の放出を導くシグナルを開始する細胞表面レセプターと結合してよい。例えば、樹状細胞表面上のToll様レセプターへの糖鎖の結合は、インターロイキン6(IL−6)を含むサイトカインの分泌をもたらし、これは、抗原に対するエフェクターT細胞の反応を抑制する、制御性T細胞の能力を妨げる。
【0090】
B細胞はまた、Toll様レセプターを有する。レセプターが結合された場合に、B細胞の抗原への反応が増強される。
【0091】
他のアジュバントは、適応性免疫反応の細胞を直接刺激する。例えば、ヘルパーTリンパ球(HTL)反応を刺激するペプチドを用いて、抗原ペプチドに対するCTL反応を増幅させることができる。このようなペプチドは、例えば、非特異的HTL反応を産生する破傷風トキソイド由来の、高い免疫抗原性の抗原であってよい。活性化HTLは、CTLの増殖、生存、及びエフェクター機能を強化する。
【0092】
このようなペプチドは、糖鎖抗原への免疫反応の増強に特に役立つ。糖鎖抗原は、糖鎖−特異的B細胞により結合され、内面化(internalized)され得るが、これらは、ペプチドにより唯一活性化されるHTLを活性化できない。しかし、本発明のナノ粒子は、それらが、糖鎖抗原及びHTL活性化ペプチドの両方に結合しているので、B細胞及びHTL反応の両方を誘発する。これは、非常に改善された免疫反応を提供する。
【0093】
(投与及び治療)
本発明のナノ粒子組成物は、経腸又は非経口を含む、かなり多数の異なる経路により患者に投与されてよい。非経口投与には、以下の経路による投与が含まれる:静脈内、皮膚又は皮下、経鼻、筋内、眼内、経上皮、腹腔内、及び局所(皮膚、眼、直腸、鼻、吸入及びエアロゾルを含む)、並びに直腸の全身経路。
【0094】
投与は、例えば、注入により、又は表皮の外層の経皮的通過を促進するためのデリバリーガンを用いて弾道的(ballistically)に実施する。ついで、ナノ粒子は、例えば、樹状細胞などにより取り込まれ得、それらがリンパ系を介して移動する間に成熟し、結果として、免疫反応の修飾及び抗原に対するワクチン接種がもたらされる。ナノ粒子はまた、エアロゾルでデリバリーされてもよい。これは、小さなサイズのナノ粒子により製造可能である。
【0095】
非常に小さな本発明のナノ粒子は、それらが標的又は治療分子と結合している場合であってさえも細胞により取り込まれ得るので、細胞及び組織へのデリバリーにとって非常に有益である。
【0096】
本発明のナノ粒子は、固体又は液体組成物の形態であってよい医薬組成物として製剤化されてよい。このような組成物には、一般に、ある種のキャリア、例えば、ゼラチン若しくはアジュバント若しくは不活性希釈剤などの固体キャリア、又は水、石油、動物若しくは植物油、鉱物油若しくは合成油などの液体キャリアなどが含まれる。生理食塩水、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、若しくはポリエチレングリコールなどのグリコールも含めてよい。このような組成物及び調製物は、一般に、少なくとも0.1重量%の化合物を含む。
【0097】
静脈内、皮膚若しくは皮下注入、又は苦痛部位での注入のために、活性成分は、非経口として許容可能な水溶液の形態であって、発熱物質を含まず、適したpHを有し、等張性かつ安定性の水溶液の形態であるだろう。当業者ならば、例えば、生理食塩水、グリセロールを用いて調製されたディスパージョン、液体ポリエチレングリコール、又はオイル中、例えば、化合物又はその誘導体の溶液などを用いて、適した溶液をうまく調製できる。
【0098】
任意選択で他の活性成分と組み合わせてもよい1つ以上の化合物に加えて、組成物には、1つ以上の医薬として許容可能な賦形剤、キャリア、バッファー、安定剤、等張化剤(isotonicising agent)、保存料、若しくは抗酸化剤、又は当業者に周知の他の物質を含めることができる。このような物質は非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるべきではない。キャリア又は他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば、経口又は非経口などによって決めてよい。
【0099】
液体医薬組成物は、典型的には、約3.0〜9.0のpH、より好ましくは約4.5〜8.5のpH、さらにより好ましくは約5.0〜8.0のpHを有するように製剤化される。組成物のpHは、典型的には約1 mM〜50 mMの範囲で用いられるバッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、Tris、又はヒスチジンなどの使用により維持できる。組成物のpHは、別の方法では、生理学的に許容可能な酸又は塩基を用いることにより調整できる。
【0100】
保存料は、一般に、微生物増殖を遅らせるために医薬組成物中に含まれ、これにより、組成物の貯蔵期間を延長でき、多重使用(multiple use)パッケージングが可能になる。保存料の例には、フェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸及びそのエステル、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。保存料は、典型的には、約0.1〜1.0%(w/v)の範囲で用いられる。
【0101】
好ましくは、医薬組成物は、予防的に有効な量又は治療的に有効な量(場合によっては、予防が治療と考えられるかもしれないが)で個体に与えられ、これは、個体にとっての利益を示すのに十分なものである。典型的には、これは、個体にとっての利益を提供する、治療的に有用な活性を生じさせなければならないだろう。投与される化合物の実際の量、並びに投与割合及びタイムコースは、治療されるべき病態の性質及び重篤度によって決まるだろう。治療処方、例えば、用量に関する決定などは、通常の開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、治療されるべき疾患、個々の患者の状態、デリバリー部位、投与方法、及び開業医に知られる他の因子を考慮する。上述の技術及びプロトコルの例は、Handbook of Pharmaceutical Additives, 第2版(eds. M, Ash and I. Ash),2001(Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA);Remington's Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkins;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients, 第2版, 1994に発見できる。例として、組成物は、好ましくは、体重1 kg当たり約0.01〜100 mgの活性化合物の用量で、より好ましくは体重1 kg当たり約0.5〜10 mgの活性化合物の用量で、患者に投与される。
【0102】
腫瘍の治療が考えられる場合には、治療には、腫瘍の患者に対する影響を軽減するために、医師による任意の措置が含まれることが理解されるだろう。従って、腫瘍の完全寛解が望ましい目標であるけれども、効果的な治療にはまた、腫瘍の部分寛解、及び転移を含む腫瘍の増殖速度の減速を達成できる任意の措置が含まれるだろう。このような措置は、生活の質を延長及び/又は高め、かつ病気の症状を軽減するのに有効であり得る。
【0103】
(免疫療法)
免疫原性構造などの本発明の組成物は、ガンなどの病気の予防及び治療のため、とりわけ免疫療法のために用いられてよい。
【0104】
本発明において、「ワクチン接種」という用語は、能動免疫を意味し、これは、ワクチン接種された個体により外来物として認識される少量の抗原を、例えば、皮下、皮内、筋内、経口、又は経鼻経路を介して、投与することによる、特異的免疫反応の導入であり、従って、適した配合物中で免疫原性である。従って、抗原は、抗原に対する特異的免疫反応を構築するために、免疫系のための「引き金(trigger)」として用いられる。
【0105】
本発明に従って、ワクチン接種は、全ての抗菌ワクチンと同様に、治療的又は予防的であってよい。例として、ガンに罹患していない個体のワクチン接種により、ガン疾患の突発的発生(breakout)に対する予防的保護を達成することが可能となり得る。このような予防的ワクチン接種が適用されてよい個体の例は、ガン疾患にかかるリスクの高い患者であるが、この適用は、このような個体に限定されるわけではない。ガンのリスクを有する患者は、原発腫瘍又は転移のいずれかとして、腫瘍をすでに患っているか、又はガンに対する素因(predisposition)を示す。
【0106】
本発明に従ったガン患者の能動免疫のために、免疫原性構造は、典型的には、ワクチンとして製剤化される。好ましくは、このような医薬調製物には、医薬として許容可能なキャリアが含まれ、このキャリアには、例として、補助剤、バッファー、塩、及び/又は保存料(preserving agent)がさらに含まれてよい。医薬調製物は、例えば、ガン患者におけるガン関連病態、例えば、転移形成などの予防及び治療のために用いられてよい。その際に、抗原提示細胞が、TAAに対する免疫反応を産生するように、in vivoにおいて又はex vivoにおいても、特異的に調節される。
【0107】
特異抗原又は抗原の組み合わせを用いた能動免疫のために、通常は、イムノゲンを含むワクチン配合物が用いられる。ここで、イムノゲンは、天然TAA若しくはそのエピトープ、模倣体若しくはネオエピトープ模倣体、又は免疫原性抗体であり、主に低濃度で、例えば、0.01μg〜10 mgの範囲の免疫原性量で用いられるが、用量範囲を、100〜500 mgの範囲に増加させることもできる。例えば、外来種の配列又は誘導体化などによって決定されるワクチン接種抗原の免疫原性に応じて、又はさらにそれぞれ用いられる補助剤若しくはアジュバンドに応じて、適した免疫原性用量を選択でき、例えば、0.01μg〜1 mgの範囲で、好ましくは100μg〜500μgの範囲で選択できる。しかし、長期間にわたって生物にデリバリーされるべき持続性ワクチン(depot vaccine)にはまた、さらに多量のワクチン接種抗原が含まれてよく、例えば、少なくとも1 mgから100 mg超のワクチン接種抗原が含まれていてよい。
【0108】
濃度は、投与される液体又は懸濁ワクチンの量によって決まるだろう。ワクチンは、通常、0.01〜1 mLの体積、好ましくは0.1〜0.75 mLの体積を有する、即時使用可能(ready−to−use)なシリンジ又はアンプルで提供される。
【0109】
本発明のキットの構成部品(component)のワクチン接種抗原は、好ましくは、医薬として許容可能なキャリア中に存在し、ここで、前記キャリアは、皮下、筋内、及びさらに皮内、又は経皮投与に適したものである。投与のさらなる形態は粘膜経路を介して機能し、例えば、経鼻又は経口投与によるワクチン摂取などである。固体物質が、ワクチン配合物の補助剤として用いられる場合には、補助剤とワクチン抗原との例えば、それぞれ、吸着物、又は懸濁混合物が投与されるだろう。特定の実施態様において、ワクチンは、水性溶媒中の溶液又は液体ワクチンとして与えられる。
【0110】
好ましくは、腫瘍ワクチンのワクチン接種ユニットは、適した即時使用可能なシリンジ又はアンプルで既に提供されている。ワクチンの安定な配合物は、有利には、即時使用可能な形態で市場に置かれてよい。チメロサール又は高められた耐性を有する他の保存料などの、保存料の含量は、必ずしも必要ではないが、冷蔵温度から最大で室温までの貯蔵温度での、より長い安定性のために、配合物中に提供されてよい。しかし、本発明のワクチンはまた、凍結又は凍結乾燥形態で提供されてもよく、それぞれ、所要時に、解凍されるか、又は再構成されてよい。
【0111】
アジュバントの使用は、本発明で用いられる抗体の免疫原性を高めるのに適していることが証明されている。この目的のために、固体物質又は液体ワクチンアジュバントが用いられ、例えば、水酸化アルミニウム(Alu−Gel)若しくはリン酸アルミニウム、増殖因子、リンフォカイン、サイトカイン、例えば、IL−2、IL−12、GM−CSF、ガンマインターフェロン、又は補体因子、例えば、C3d、さらなるリポソーム調製物、又はさらには、免疫系が、強い免疫反応を既に産生しているものに対するさらなる抗原を有する配合物、例えば破傷風トキソイド、バクテリア毒素、例えば、Pseudomonas外毒素、並びにリピドA及びリポ多糖類の誘導体など、が用いられる。
【0112】
トキソイドペプチドが、核構造と共有結合している場合には、アジュバンドの必要性が低減されるか、又は消滅され得る。
【0113】
[実施例]
[実施例1]
糖鎖抗原、Tヘルパーキャリア、及び金表面に結合したグルコースを負荷したナノ粒子の調製及び特徴付けを以下に記載する。
【0114】
リガンドGlc、STn、及びLey(図1)を用いた。金表面にグルコース残基を結合させるためにC2脂肪族スペーサーを選択し、他方、両方の抗原の接着のためにC5脂肪族リンカーを用いた。
【0115】
アミノ末端基を介した、破傷風トキソイド由来の無差別なT細胞ペプチドエピトープ(FKLQTMVKLFNRIKNNVA)を、C11脂肪族スペーサーに結合させることにより、TヘルパーペプチドリガンドBC11(図2)を調製した。アミノ末端基を介した、同一の破傷風トキソイドT細胞ペプチドエピトープを、ヘキサエチレングリコールとC11脂肪族スペーサーとからなる混合リンカーに結合させることにより、TヘルパーペプチドリガンドBMIX(図3)を調製した。
【0116】
グリコナノ粒子の調製のために、Glc、STn、Ley、及びBC11又はBMIXを、所望の割合で、重水素化メタノールに溶解し、これらの溶液の1H NMRスペクトルを500 MHzで記録した。これらの混合物のスペクトルは、個々の構成成分に明らかに属するシグナルを同定することを可能にし、これらのシグナルの強度が、元の溶液中の異なるリガンドの割合に従って予測されるものと対応することを確認できた(図4)。メタノールを用いて希釈した後、以下に記載するとおりに混合物を処理し、遠心ろ過により繰り返し精製した対応するグリコナノ粒子を得た。重水中のこれらの構築物の1H NMRスペクトル(図4)は、本実験で用いた、以前に確立された実験条件下、元のリガンド割合が、得られたGNP中で維持されることを示した。さらに、上清の1H NMRスペクトルは、提案されるリガンド割合を確認した。
【0117】
上記手順の後、以下のグリコナノ粒子を調製した:BC11 I(Glc:STn:BC11=28:1:1)、BC11 II(Glc:STn:BC11=20:9:1)、BC11 III(Glc:STn:Ley:BC11=18:10:1:1)、BC11 IV(Glc:STn:Ley:BC11=18:1:10:1)、BMIX I(Glc:STn:BMIX=28:1:1)、BMIX II(Glc:STn:BMIX=20:9:1)、BMIX III(Glc:STn:Ley:BMIX=18:10:1:1)、BMIX IV(Glc:STn:Ley:BMIX=18:1:10:1)、BMIX V(Glc:Ley:BMIX=28:1:1)、及びBMIX VI(Glc:Ley:BMIX=20:9:1)。
【0118】
これらの構築物の平均径を、透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて測定したところ(図5)、BC11 I、BC11 II、BC11 III、及びBC11 IVについては、それぞれ、2.25 nm、1.45 nm、2.05 nm、及び1.81 nmであり、BMIX I、BMIX II、BMIX III、BMIX IV、BMIX V、及びBMIX VIについては、それぞれ、1.80 nm、1.55 nm、2.19 nm、1.77 nm、1.64 nm、及び1.79 nmであった。これらの平均径から、クラスター中の金原子の数、金と結合した鎖、及びGNPの概算分子量が推定された[3]。これらの値を以下に示す。
【0119】
いくつかのさらなるグリコナノ粒子(1−4)を調製し、特徴付けた(データは示さず)。これらの構築物の組成は以下のとおりである:1(STn、100%)、2(Ley、100%)、3(Glc:STn:HS(CH210COOHリンカー=20:1:1)、4(Glc:STn:HS(CH211O(CH2CH2O)6CH2COOHリンカー=28:1:1)。
【0120】
[実験セクション]
HAuCl4及びNaBH4を、Aldrich Chemical Companyから購入した。全ての実験及び溶液について、ナノピュア(Nanopure)水(18.1 mΩ)を用いた。
【0121】
(ペプチドBC11−Au−抗原糖鎖ナノ粒子の調製)
a)BC11 I(Glc:STn:BC11=28:1:1)
ペプチドBC11(3.1 mg、1.31μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(8.8 mg、36.7μmol)及びSTn(0.8 mg、1.31μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、及びBC11のシグナル間で28:1:1の比を示した。
【0122】
溶液をMeOH(2.8 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(286μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(157μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[4]。黒色固体を水(700μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、1.2 mgのBC11 Iナノ粒子を得た。TEM:平均径2.25 nm、309金原子、92鎖、MW=90586。
【0123】
b)BC11 II(Glc:STn:BC11=20:9:1)
ペプチドBC11(4.0 mg、1.7μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(8.1 mg、33.9μmol)及びSTn(9.3 mg、15.2μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、及びBC11のシグナル間で20:9:1の比を示した。
【0124】
溶液をMeOH(3.7 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(368μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(202μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[4]。黒色固体を水(500μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、1.8 mgのBC11 IIナノ粒子を得た。TEM:平均径1.45 nm、116金原子、53鎖、MW=45358。
【0125】
c)BC11 III(Glc:STn:Ley:BC11=18:10:1:1)
ペプチドBC11(2.8 mg、1.2μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(5.1 mg、21.3μmol)、Ley(0.9 mg、1.2μmol)、及びSTn(7.3 mg、11.8μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、Ley、及びBC11のシグナル間で18:10:1:1の比を示した。
【0126】
溶液をMeOH(2.4 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(256μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(142μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[4]。黒色固体を水(500μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、0.5 mgのBC11 IIIナノ粒子を得た。TEM:平均径2.05 nm、225金原子、71鎖、MW=76661。
【0127】
d)BC11 IV(Glc:STn:Ley:BC11=18:1:10:1)
ペプチドBC11(2.7 mg、1.1μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(4.9 mg、20.6μmol)、Ley(8.8 mg、11.4μmol)、及びSTn(0.7 mg、1.1μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、Ley、及びBC11のシグナル間で18:1:10:1の比を示した。
【0128】
溶液をMeOH(2.3 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(248μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(137μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[4]。黒色固体を水(500μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、1.2 mgのBC11 IVナノ粒子を得た。TEM:平均径1.81 nm、201金原子、71鎖、MW=75409。
【0129】
(ペプチドBMIX−Au−抗原糖鎖ナノ粒子の調製)
a)BMIX I(Glc:STn:BMIX=28:1:1)
ペプチドBMIX(3.5 mg、1.31μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(8.8 mg、36.6μmol)及びSTn(0.8 mg、1.31μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、及びBMIXのシグナル間で28:1:1の比を示した。
【0130】
溶液をMeOH(2.7 mL、総量:3.2 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(314μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(157μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[2]。黒色固体を水(700μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、1.0 mgのBMIX Iナノ粒子を得た。TEM:平均径1.80 nm、201金原子、71鎖、MW=63300。
【0131】
b)BMIX II(Glc:STn:BMIX=20:9:1)
ペプチドBMIX(3.5 mg、1.31μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(6.3 mg、26.2μmol)及びSTn(7.2 mg、11.7μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、及びBMIXのシグナル間で20:9:1の比を示した。
【0132】
溶液をMeOH(2.7 mL、総量:3.2 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(314μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(157μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうした。この場合、デカンテーションによりメタノール層を分離できなかった。従って、体積を1 mLに減らし、水(700μL)を添加して、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、2.5 mgのBMIX IIナノ粒子を得た。TEM:平均径1.55 nm、140金原子、53鎖、MW=50567。
【0133】
c)BMIX III(Glc:STn:Ley:BMIX=18:10:1:1)
ペプチドBMIX(3.9 mg、1.46μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(6.3 mg、26.2μmol)、Ley(1.1 mg、1.46μmol)、及びSTn(9.0 mg、14.6μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、Ley、及びBMIXのシグナル間で18:10:1:1の比を示した。
【0134】
溶液をMeOH(3.2 mL、総量:3.7 mL)で希釈した。HAuCl4(350μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(193μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[2]。黒色固体を水(500μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、2.8 mgのBMIX IIIナノ粒子を得た。TEM:平均径2.19 nm、309金原子、92鎖、MW=103569。
【0135】
d)BMIX IV(Glc:STn:Ley:BMIX=18:1:10:1)
ペプチドBMIX(3.7 mg、1.38μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(6.0 mg、24.8μmol)、Ley(10.7 mg、13.8μmol)、及びSTn(0.85 mg、1.38μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、STn、Ley、及びBMIXのシグナル間で18:1:10:1の比を示した。
【0136】
溶液をMeOH(3.0 mL、総量:3.5 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(330μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(182μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[2]。黒色固体を水(500μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、1.8 mgのBMIX IVナノ粒子を得た。TEM:平均径1.77 nm、201金原子、71鎖、MW=75934。
【0137】
e)BMIX V(Glc:Ley:BMIX=28:1:1)
ペプチドBMIX(3.7 mg、1.4μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(9.4 mg、39.1μmol)及びLey(1.1 mg、1.4μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、Ley、及びBMIXのシグナル間で28:1:1の比を示した。
【0138】
溶液をMeOH(3.0 mL、総量:3.5 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(331μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(182μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。形成した黒色懸濁液をさらに2時間振とうし、デカンテーションによりメタノール層を分離した[2]。黒色固体を水(700μL)に溶解し、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、0.7 mgのBMIX Vナノ粒子を得た。TEM:平均径1.64 nm、140金原子、53鎖、MW=45568。
【0139】
f)BMIX VI(Glc:Ley:BMIX=20:9:1)
ペプチドBMIX(3.5 mg、1.31μmol)を、CF3COOD(100μL)に溶解し、オイルの形成が観察されるまで、溶液をアルゴン流下で濃縮した。ついで、Glc(6.3 mg、26.2μmol)及びLey(9.2 mg、11.8μmol)を添加し、混合物をCD3OD(500μL)に溶解した。1H NMRスペクトルは、Glc、Ley、及びBMIXのシグナル間で20:9:1の比を示した。
【0140】
溶液をMeOH(2.7 mL、総量:3.2 mL)で希釈し、トリフルオロ酢酸を添加することにより、pHを1に調整した。HAuCl4(314μL、0.025 M)の水溶液を添加した。ついで、NaBH4(157μL)の1 N水溶液を、急速に振とうさせながら、数回に分けて添加した。この場合、デカンテーションによりメタノール層を分離できなかった。従って、体積を1 mLに減らし、水(700μL)を添加して、遠心ろ過(AMICON MW 10000、30分間、14000 rpm)により精製した。ナノ粒子が塩及び出発物質を含まなくなるまで、この手順を2回繰り返した。AMICONフィルター中の残留物を500μLの水に溶解し、凍結乾燥して、1.8 mgのBMIX VIナノ粒子を得た。TEM:平均径1.79 nm、201金原子、71鎖、MW=73864。
【0141】
(免疫反応を誘導するための抗原結合ナノ粒子の使用)
ナノ粒子BC11 I、II、III、及びIVを用いて、マウスに接種し、結合抗原に対する免疫反応をモニタリングした。200μLのアジュバント(Sigma M−6536−MPL+TDM)中、30μgのナノ粒子を注入した。4回の2×100μLの注入を、0、28、40、及び157日目に与えた。初めの3回は、皮下に与え、最後の注入は腹腔内に与えた。39、48、及び67日目に血液(bleed)を回収し、HSA−Leyに対するIgG力価を測定した(図7及び8)。BC11 I/IIとBC11 III/IVで見られた結果の間には大きな差がある。BC11 I/IIにおけるLeyに対する力価の上昇は、アジュバントの使用に起因する、非特異的な効果である。免疫付与を繰り返した場合には、力価は増加せず、減少し始める。対照的に、BC11 III/IVを用いた場合には、力価は追加免疫付与とともに増加し、実際(real)の免疫効果を実証する。
【0142】
破傷風トキソイド初回免疫を用いた接種のために、BC11 IIを用いた。0日目に、Aventis Pasteur MSD−Diftavaxの2.35 IUの破傷風トキソイドを用いて動物に皮下注入した(0.9%の生理食塩水とともに、計3.4 mLに調製した2つのバイアル、100μLを投与)。14日目に、2×100μL中50μgのナノ粒子を、アジュバント(Sigma M−6536)中、皮下注入し、34日目に、2×100μL中50μgのナノ粒子を、アジュバント中、腹腔内注入した。33及び44日目に血液を回収した。5匹のマウスから得られた結果を図9に示す(異なる動物は、異なるシグナルにより表される)。初めの矢印は、破傷風トキソイド初回免疫を示し、2番目の矢印は、ナノ粒子とともに皮下注入したものを示し、3番目の矢印は、ナノ粒子とともに腹腔内注入したものを示す。
【0143】
[実施例2]
(免疫原性構造としての金ナノ粒子)
金ナノ粒子の配合を、国際公開第02/32404号に記載のとおりの技術に従って行う。アルファ−シアリル−Tn:ルイス y=30:3及び3:30の比率を有する、金ナノ粒子の異なる構築物を、様々な密度のペプチド配列FKLQTMVKLFNRIKNNVAを用いて調製する。Glc−C2を用いて、残りのスペースをブロックできる。別法として、リンカーもまた、配列FKFQILYNSIMGのものであり得る。
【0144】
さらに、シアリル−Tn若しくはルイス yのいずれか、又は両方のリンカーの組み合わせの比率を、国際公開第02/32404号に記載の技術を用いて増加させることができる。例えば、最大で数百の糖鎖基を、容易に、核分子と結合できる。異なるリガンドの比率を容易に変えることができる。別法として、さらに、核分子と共有結合した、1つの単一の(one single)シアリルTn又はルイス y糖鎖も可能である。
【0145】
(免疫原性構造としての抗体)
HE2へのシアリルTn糖鎖のカップリング
シアリルTn−O(CH23NH(CH24COO−pNpをHE2にカップリングした。シアリルTn糖鎖リガンドの数を増加させるために、当分野で周知の分岐したリンカーを用いて、抗体上に糖鎖リガンドをカップリングできる。最終生成物を、SEC、LDS−PAGE、ウエスタンブロット、及び異なるELISA試験により分析した。
【0146】
[実験セクション]
(材料及び方法)
・HE2 Panorex、10 mg/mL、ロット番号170901
・シアリルTn−O(CH23NH(CH24COO−pNp、2×5 mg、Fa. Lectinity
・DMF(N,N−ジメチルホルムアミド(無水、Merck))
・カップリングバッファー:0.1 M Na2HPO4+0.15 M NaCl(pH=8)
・フォーミュレーションバッファー(Formulation buffer):NaCl 0.86%+1 mM Na2HPO4(pH=6.0)
【0147】
(手順)
1.最大で〜10 mLの体積で、SEC〜10 mg/mLに応じた濃度で、4℃、20時間、Slide−A−Lyzer透析カセットを用いて、2×700 mLのカップリングバッファーに対して、100 mgのHE2(V=10 mL;Conc:10 mg/mL)を透析した。
2.2×5 mgのシアリルTn−O(CH23NH(CH24COO−pNpを、2×100μLのDMF(100μL/バイアル)で溶解した。
3.シアリルTn(DMF中)の溶液を、〜10 mL(〜100 mg)の氷冷HE2(カップリングバッファー中)に添加した。
4.両方のシアリルTn−バイアルを、100μLのDMF(バイアル1からバイアル2に移す)ですすぎ、これを、反応混合物にさらに添加した。
5.反応混合物を、4℃で一晩(28時間)回転させた。反応物の反応速度をSECにより観察した(5.3.1及び6.3.1を参照されたい)。
6.4℃、20時間、Slide−A−Lyzer透析カセットを用いて、2×800 mLのフォーミュレーションバッファーに対して、HE2−シアリルTn(10 mL、〜10 mg/mL)の最終溶液を透析した。
【0148】
(分析)
サイズ排除クロマトグラフィー
Dionexシステムにおける、ZORBAX GF−250カラム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、HE2−シアリルTnの濃度を定量化した。ゲルろ過標準(Fa. BioRad)を用いてHPLCシステムを試験した。HE2−シアリルTnを定量するための参照標準としてHE2を用いた。保持時間の減少(分子量の増加と相関する)は、HE2へのシアリルTnのカップリング反応の有効性と相関する。受け取ったデータは、カップリングの有効性が、23〜27時間で飽和状態に達する、反応時間とともに増加することを示す。
【0149】
LDS−PAGE(リチウムドデシルサルフェートPAGE)
ビス−Tris−ゲル(4〜12%)「SilverXpress(商標)−染色」を用いたLDS−PAGE:「NuPAGE Bis−Tris−Gel」取扱説明書の13頁を参照されたい。結果を図7に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
ウエスタンブロット
ウサギxマウスIgG2aを用いたウエスタンブロット
手順:
1.ビス−Tris−ゲル(4〜12%)を用いたLDS−ゲル
2.ウエスタントランスファー:「NuPAGE Bis−Tris−Gel」取扱説明書の14〜20頁を参照されたい(Immobilon トランスファーメンブレン PVDF 0.45μm、Fa. Millipore)。
3.メンブレン現像
【0152】
材料:
複合体:ウサギxマウスIgG2a−HRP、#61−0220、Fa. Zymed
染色溶液1:5 mLのMetOH中、15 mgのHRP−Color Reagent(Fa. BioRAD)
染色溶液2:25 mLのPBS def. 1×中、15μLの30%H2O2
【0153】
手順:
・PBS中3%スキムミルク粉末を用いて、室温、1時間、メンブレンをブロッキングする。
・PBSを用いてメンブレンを洗浄する。
・複合体(PBSで1:1000に希釈)とともに、室温、1時間、インキュベートする。
・PBSを用いてメンブレンを洗浄する。
・染色溶液1+2を用いて現像し、水を用いて止める。
【0154】
抗シアリルTn CD175s(IgGタイプ)/ラットxマウスIgG1−HRPを用いたウエスタンブロット
【0155】
手順:
1.ビス−Tris−ゲル(4〜12%)を用いたLDS−PAGEゲル
2.ウエスタントランスファー:「NuPAGE Bis−Tris−Gel」取扱説明書の14〜20頁を参照されたい(Immobilon トランスファーメンブレン PVDF 0.45μm、Fa. Millipore)。
3.メンブレン現像
【0156】
材料:
二次抗体(Secondary Ab):抗−シアリルTn CD175s(IgGタイプ)、90μg/mL、Fa. DAKO、コード番号M0899、ロット089(601)
複合体:ウサギxマウスIgG1−HRP、Fa. Becton Dickinson、Mat.No. 559626、バッチ:37205
PBS def. 1×中、3%のスキムミルク粉末
染色溶液1:5 mLのMetOH中、15 mgのHRP−Color Reagent(Fa. BioRAD)
染色溶液2:25 mLのPBS中、15μLの30%H2O2
【0157】
手順:
・PBS中3%スキムミルク粉末を用いて、室温、1時間、メンブレンをブロッキングする。
・PBSを用いてメンブレンを洗浄する。
・二次抗体(濃度10μg/mL)V=5 mLとともに、室温、1時間、インキュベートする。
・PBSを用いてメンブレンを洗浄する。
・複合体(PBSで1:1000に希釈)とともに、室温、1時間、インキュベートする。
・PBSを用いてメンブレンを洗浄する。
・染色溶液1+2を用いて現像し、水を用いて止める。
【0158】
シアリルTnを用いたカップリング後の、HE2抗体の重鎖の分子量増加を、ウエスタンブロット及びウサギ抗マウスIgG2a−HRPを用いた染色により確認した。
【0159】
(抗−イディオタイプ結合活性(HE2のもの)が、カップリング生成物中にどれだけ保持されているかを示すために、標準的なELISAを実施した)
固定化IGN111は、抗マウスIgG2a−HRPにより検出される抗イディオタイプHE2を捕捉する。HE2は、HE2−シアリルTnよりも、約2〜3倍反応することが示された。これは、非常に緩やかな(very moderate)結合の消失のみが、カップリング後に生じることを示す。
【0160】
さらなる標準的なELISAを実施し、マウス抗−シアリルTn−抗体により、シアリルTnを検出した。そこでは、出発物質HE2と、カップリング生成物HE2−シアリルTnとを固定化した。検出のために、抗−シアリルTn(マウスIgG)/ラット抗マウスIgG1−HRPを用いて、シアリルTnを検出する。
【0161】
結果は、カップリング前のHE2とは対照的に、HE2−シアリルTn反応性生物が、確かにシアリルTnを運ぶことを示す。
【0162】
(結論)
シアリルTnは、首尾よく、HE2抗体とカップリングしている。カップリング反応は、およそ24時間後に飽和状態に達する、かなり長期間の反応速度(kinetic)を有する。視アリルTnは、主に、HE2抗体の重鎖とカップリングしており、一方、軽鎖はシアリルTnと部分的にのみカップリングしている。HE2−シアリルTnカップリング生成物は、HE2の大部分のイディオタイプ特異性を保持しており、この新規糖タンパク質のシアリルTn部分は、シアリルTn特異抗原により認識される。内毒素レベルは、検出限界未満である。
【0163】
[参考文献]
本明細書に記載の参考文献は、その全体が参照として、すべて明確に援用される。

【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1には、リガンドGlc(A)、Stn(B)、及びLey(C)の構造を示す。
【図2】図2には、TヘルパーペプチドリガンドBC11の構造を示す。
【図3】図3には、TヘルパーペプチドリガンドBMIXの構造を示す。
【図4A】図4Aには、BC11 Iナノ粒子のための、出発混合物(上部)及び得られたナノ粒子(下部)のNMRスペクトルを示す。
【図4B】図4Bには、BC11 IIナノ粒子のための、出発混合物(上部)及び得られたナノ粒子(下部)のNMRスペクトルを示す。
【図5A】図5Aには、BC11 Iナノ粒子のための、透過電子顕微鏡写真(左)及びサイズ分布ヒストグラム(右)を示す。
【図5B】図5Bには、BC11 IIナノ粒子のための、透過電子顕微鏡写真(左)及びサイズ分布ヒストグラム(右)を示す。
【図6】図6には、BC11 Iナノ粒子の推定上の略図を示す。
【図7】図7には、BC11 I(円及び四角形)又はBC11 II(三角形)を接種されたマウス由来の、HSA−Leyに対するIgGの血清力価を示す。非接種マウス由来のコントロール血清を、単一の黒四角として示す。矢印は、接種のタイミングを示す。
【図8】図8には、BC11 III(三角形)又はBC11 IV(四角形及び円)を接種されたマウス由来の、HSA−Leyに対するIgGの血清力価を示す。非接種マウス由来のコントロール血清を、白四角として示す。矢印は、接種のタイミングを示す。
【図9】図9には、破傷風毒素初回免疫(priming)を有する、BC11 IIを接種されたマウス由来の、HSA−Leyに対するIgGの血清力価を示す。矢印は、接種のタイミングを示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及び/又は半導体原子を含む核を含むナノ粒子であって、ここで、前記核が複数のリガンドと共有結合しており、かつ前記リガンドが少なくとも1つの抗原と少なくとも1つのアジュバントとを含む、ナノ粒子。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアジュバントが、先天性免疫反応を刺激する、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアジュバントが、T細胞反応を刺激する、請求項1又は2記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記T細胞反応が、Tヘルパー細胞反応を含む、請求項3記載のナノ粒子。
【請求項5】
糖鎖部分であるアジュバントを含む、請求項1又は2記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記糖鎖部分が、グルコース、マンノース、フコース、及び/又はN−アセチルグルコサミンを含む、請求項5記載のナノ粒子。
【請求項7】
ペプチド部分であるアジュバントを含む、請求項1乃至6のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記ペプチド部分が、Tヘルパー細胞を活性化するペプチドである、請求項3又は4記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記ペプチド部分が、プロテアーゼ切断部位を含む、請求項7又は8記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記ペプチドが、アミノ酸配列FKLQTMVKLFNRIKNNVAを含む、請求項9記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記抗原が、腫瘍特異抗原である、請求項1乃至10のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記抗原が、糖鎖抗原である、請求項11記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記抗原が、シアル化されている、請求項12記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記抗原が、シアル化されている、請求項12記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記抗原が、シアリルTn、シアリルルイスa、シアリルルイスx、又はシアリルルイスyである、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記抗原が、病原体特異抗原である、請求項1乃至15のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記病原体が、細菌、ウイルス、又は寄生虫である、請求項16記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記リガンドの少なくとも1つが、リンカー基を介して前記ナノ粒子と結合している、請求項1乃至17のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項19】
前記リンカー基が、チオール基、アルキル基、グリコール基、又はペプチド基を含む、請求項18記載のナノ粒子。
【請求項20】
前記リンカー基が、C2〜C15アルキル及び/又はC2〜C15グリコールを含む、請求項19記載のナノ粒子。
【請求項21】
前記リンカー基が、C2〜C15アルキル又はヘキサエチレングリコール−C11アルキルである、請求項20記載のナノ粒子。
【請求項22】
前記ナノ粒子が、標識を含む、請求項1乃至21のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項23】
前記標識が、蛍光基、放射性核種、磁気標識、色素、NMR活性原子、又は表面プラズモン共鳴を用いて検出可能な原子である、請求項22記載のナノ粒子。
【請求項24】
前記磁気標識が、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、又はランタニド+3を含む常磁性基である、請求項23記載のナノ粒子。
【請求項25】
前記NMR活性原子が、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、又はランタニド+3である、請求項23記載のナノ粒子。
【請求項26】
前記ナノ粒子が水溶性である、請求項1乃至25のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項27】
前記ナノ粒子の核が、0.5〜10 nmの平均径を有する、請求項1乃至26のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項28】
前記ナノ粒子の核が、1〜2.5 nmの平均径を有する、請求項1乃至27のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項29】
そのリガンドを含む前記ナノ粒子が、10〜30 nmの平均径を有する、請求項1乃至28のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項30】
前記核が金属核である、請求項1乃至29のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項31】
前記金属核が、Au、Ag、又はCuを含む、請求項30記載のナノ粒子。
【請求項32】
前記金属核が、Au/Ag、Au/Cu、Au/Ag/Cu、Au/Pt、Au/Pd、Au/Ag/Cu/Pd、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/Gd、又はAu/Fe/Cu/Gdから選択される合金である、請求項30又は31記載のナノ粒子。
【請求項33】
前記ナノ粒子の核が磁性である、請求項30乃至32のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項34】
前記ナノ粒子が、前記核中に、約5:0.1〜約2:5の比率の不動態化金属原子及び磁性金属原子を含む、請求項33記載のナノ粒子。
【請求項35】
前記不動態化金属が、金、白金、銀、又は銅であり、かつ前記磁性金属が、鉄又はコバルトである、請求項34記載のナノ粒子。
【請求項36】
前記核が、半導体原子を含む、請求項1乃至29のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項37】
前記半導体原子が、量子ドットとして作用できる、請求項36記載のナノ粒子。
【請求項38】
前記リガンドが、ペプチド、タンパク質ドメイン、核酸セグメント、糖脂質、又は糖タンパク質をさらに含む、請求項1乃至37のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項39】
前記リガンドが、DNA又はRNAを含む、請求項1乃至38のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項40】
請求項1乃至39のいずれか一項記載のナノ粒子の1つ以上の集団を含む、組成物。
【請求項41】
医薬として許容可能なキャリアをさらに含む、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
糖鎖リガンド及び少なくとも1つのT細胞ヘルパーペプチドリガンドと共有結合した核分子からなる、免疫原性構造。
【請求項43】
複数の糖鎖リガンドと共有結合した核分子からなり、ここで、前記糖鎖リガンドが、少なくとも1つのネオエピトープ構造を含む、免疫原性構造。
【請求項44】
前記核分子が、金属若しくは半導体原子と、抗体又はそれらの誘導体若しくは断片との核からなるナノ粒子から選択される、請求項42又は43記載の免疫原性構造。
【請求項45】
前記金属核が、Au、Ag、Cu、Pd、又はAlを含む、請求項42乃至44のいずれか一項記載のキャリア分子。
【請求項46】
ネオエピトープ構造を含む、請求項42記載の免疫原性構造。
【請求項47】
前記糖鎖リガンドが、ルイス抗原又はシアリルTnである、請求項42乃至46のいずれか一項記載の免疫原性構造。
【請求項48】
前記ルイス抗原が、シアル化されている、請求項47記載の免疫原性構造。
【請求項49】
前記ルイス抗原が、シアル化されている、請求項47記載の免疫原性構造。
【請求項50】
前記T細胞ヘルパーペプチドリガンドが、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、又はキーホールリンペットヘモシアニンからなる群から選択されるトキソイドに由来する、請求項42乃至49のいずれか一項記載の免疫原性構造。
【請求項51】
前記T細胞ヘルパーペプチドリガンドが、アミノ酸配列FKLQTMVKLFNRIKNNVAのものである、請求項42乃至50のいずれか一項記載の免疫原性構造。
【請求項52】
請求項42乃至51のいずれか一項記載の免疫原性構造の1つ以上を含む、医薬組成物。
【請求項53】
少なくとも1つのワクチンアジュバントを含有する、請求項52記載の医薬組成物。
【請求項54】
免疫療法の治療用薬剤を調製するための、請求項52又は53記載の組成物の使用。
【請求項55】
前記薬剤が、ガンの予防又は治療用である、請求項54記載の使用。
【請求項56】
腫瘍細胞の検出及び単離に適した抗体を単離するための、請求項42乃至51のいずれか一項記載の免疫原性構造の使用。
【請求項57】
以下の工程:
・リンカーを用いて抗原を誘導体化する工程;
・リンカーを用いてアジュバントを誘導体化する工程;及び
・前記リンカー誘導体化抗原とアジュバントとを、ナノ粒子の核を製造するための反応物質と反応させて、前記ナノ粒子の自己集合の間に、前記ナノ粒子核が、前記リンカーを介して前記抗原及びアジュバントと結合する工程、
を含む、少なくとも1つの抗原と少なくとも1つのアジュバントとを、ナノ粒子の核に結合させることによる、請求項1乃至39のいずれか一項記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項58】
前記リンカー基が、チオール基、アルキル基、グリコール基、又はペプチド基を含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記リンカー基が、C2〜C15アルキル及び/又はC2〜C15グリコールを含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
前記リンカー基が、C2〜C15アルキル又はヘキサエチレングリコール−C11アルキルである、請求項57記載の方法。
【請求項61】
前記反応混合物が、前記誘導体化抗原、前記誘導体化アジュバント、金属及び/又は半導体原子の塩、及び前記ナノ粒子を製造するための還元剤を含む、請求項57乃至60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
請求項57乃至61のいずれか一項記載の方法により得られる、ナノ粒子。
【請求項63】
予防療法又は一時療法における使用のための、請求項1乃至39のいずれか一項記載のナノ粒子、又は請求項40若しくは41記載の組成物。
【請求項64】
ワクチンとして使用するための、請求項1乃至39のいずれか一項記載のナノ粒子、又は請求項40若しくは41記載の組成物。
【請求項65】
ガンの治療用薬剤を調製するための、請求項11乃至15のいずれか一項記載のナノ粒子の使用。
【請求項66】
前記ガンが、結腸、膵臓、腸、肺、肝臓、卵巣、又は膀胱のガンである、請求項65記載の使用。
【請求項67】
感染症の治療用薬剤を調製するための、請求項16又は17記載のナノ粒子の使用。
【請求項68】
前記病気が、マラリア又は結核症である、請求項67記載の使用。
【請求項69】
前記ナノ粒子が膜輸送シグナルを含み、細胞膜を通過できる、請求項65乃至68のいずれか一項記載の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−514686(P2008−514686A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534089(P2007−534089)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003791
【国際公開番号】WO2006/037979
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(506390085)ミダテック リミテッド (2)
【出願人】(507103765)
【Fターム(参考)】